赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサ
【課題】金属表面の溝の幅が狭くて深いので、溝の加工が困難である従来の赤外光源に対して、加工のし易い赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】発熱体15と、最表面が金属からなる放射体14とを備えた赤外線光源101であって、前記放射体14の表面には、一定方向に延びる矩形状の断面を有する溝14が一定周期で形成されており、当該一定周期をP、当該溝14の幅をW 、当該溝14の深さをDとした場合に、W >0.5P、D/W<0.5である、P、W及びDに対して、前記赤外線光源101から放射される赤外線の強度のピーク波長が、所望の特定波長と一致するようにP、W及びDを定めたことを特徴としている。
【解決手段】発熱体15と、最表面が金属からなる放射体14とを備えた赤外線光源101であって、前記放射体14の表面には、一定方向に延びる矩形状の断面を有する溝14が一定周期で形成されており、当該一定周期をP、当該溝14の幅をW 、当該溝14の深さをDとした場合に、W >0.5P、D/W<0.5である、P、W及びDに対して、前記赤外線光源101から放射される赤外線の強度のピーク波長が、所望の特定波長と一致するようにP、W及びDを定めたことを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサに赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線光源は、医療分野や自動車分野等で検出器やセンサとして広く用いられており、抵抗体に通電することにより発熱して放射される放射光を赤外線光源として用いることが一般的に知られている。図9に示す特許文献1では、通電によって発熱し所定の強度の赤外線を発するフィラメントを用いた光源712を有する赤外線検知式ガスセンサ710が提案されている(従来例1)。赤外線検知式ガスセンサ710は、図9に示すように、被測定ガスが流入できるように設けられたケース711と、ケース711の外部に配置され赤外線を放出する光源712と、光源712により放出された赤外線の集光部材であるコリメータレンズ713と、赤外線の特定の波長のみを透過するバンドパスフィルタ714と、バンドパスフィルタ714を透過した特定の波長の赤外線を受光し電気信号を発生する検出素子715とにより構成されている。
【0003】
また、図10に示す特許文献2では、特許文献1の従来例1と同じようなフィラメント式の赤外線光源808を備えたガスセンサ801が提案されている(従来例2)。ガスセンサ801は、図10に示すように、センサ本体802、CPU803、メモリ804、D/A(Digital to Analog)変換器805、A/D(Analog to Digital)変換器806A,806B、及び電圧制御回路807を備えており、センサ本体802には、筐体811の内部に赤外線光源808、赤外線検出器809A,809B、及び光学フィルタ810A,810Bを備えて構成されている。
【0004】
しかしながら、従来例1や従来例2にように、特定波長の赤外線を用いるようなセンサ等の用途の場合、抵抗体に通電することにより発熱して放射される幅広い波長の放射光をバンドパスフィルタ714や光学フィルタ(810A、810B)を通して、その一部を用いている。これにより、他の波長は利用されなくエネルギー効率が悪い上に、フィルタを通すことにより実際に有用な特定波長の赤外線の一部が吸収されてしまうと言う問題があった。このため、センサの出力変化を確保して十分な感度を得るために、赤外線光源から放射される特定波長の赤外線エネルギーを大きくしたいという要望があった。
【0005】
そこで、特許文献3では、図11に示すようなプラズモン共鳴を利用した回折格子型の赤外光源900が提案されている(従来例3)。赤外光源900は、特定波長の赤外線を発する赤外線光源であって、図11に示すように、格子901とセラミックヒータ等の発熱体907とを備え、格子901には、金属等の負の誘電体材料部903と中空またはシリコンなどの半導体を用いた正の誘電体材料部905とから構成されている。そして、格子901の周期をP、格子901の深さをD、正の誘電体材料部905の幅をT、特定の波長をλとした場合に、0<P<2.0λ及びT<0.5PであるP、TおよびDに対して、赤外光源900から発せられる赤外線強度のピーク波長が所望の波長と一致するようにP、T及びDを定めるとしている。そして、具体的には、非特許文献1に記されているように、幅Tと深さDの関係は、D>5Tになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−002284号公報
【特許文献2】特開2010−139299号公報
【特許文献3】特開2007−324126号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Appl,Phys.92,141114(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来例3では、金属等の負の誘電体材料部903と正の誘電体材料部905から構成される格子901を作製するために、金属の表面を加工しなければならないが、格子901の周期Pに対して溝の幅Tが狭く(T<0.5P)、しかも溝の幅Tに対して深さDが深い(D>5T)ので、加工が困難と言う問題があった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するもので、加工のし易い赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明の請求項1による赤外線光源は、発熱体と、最表面が金属からなる放射体とを備えた赤外線光源であって、前記放射体の表面には、一定方向に延びる矩形状の断面を有する溝が一定周期で形成されており、当該一定周期をP、当該溝の幅をW 、当該溝の深さをDとした場合に、W >0.5P、D/W<0.5であるP、W及びDに対して、前記赤外線光源から放射される赤外線の強度のピーク波長が、所望の特定波長と一致するようにP、W及びDを定めたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項2による赤外線光源は、前記金属が金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項3によるセンサは、請求項1または請求項2に記載の赤外線光源と、前記赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備えたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項4によるガスセンサは、請求項1または請求項2に記載の赤外線光源と、前記赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備え、前記赤外線光源は、測定ガスの吸収波長とした前記特定波長を放射することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項5によるガスセンサは、前記赤外線光源は、前記測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の前記特定波長を放射することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、本発明の赤外線光源は、赤外線光源から放射される赤外線の強度のピーク波長が所望の特定波長と一致するように、放射体の表面に形成された矩形状の溝の幅をW、深さをD、一定周期をPとした場合に、W >0.5PとD/W<0.5の条件で、P、W及びDを定めた。このため、従来例3の赤外光源と比較して、溝の深さDと溝の幅Wのアスペクト比を小さくすることができ、幅が広くて浅い溝を作製することになる。このことにより、最表面が金属からなる放射体の表面に形成する矩形状の溝の加工を容易に行うことができる。したがって、加工のし易い赤外線光源を提供することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、本発明の赤外線光源は、金属の材質が金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含むので、レアアースのような稀少金属を用いることが無く、容易に放射体を形成することができる。特に、金以外の金属を用いると、安価に作製することができる。更に、高融点金属のタングステンや金より融点が大幅に高いクロムやチタニウムを用いると、放射体をより一層高温にすることができるので、放射体から放射される赤外線の放射強度をより強くすることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、本発明のセンサは、赤外線光源と赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備えているので、赤外線光源と受光素子との間に被測定物を配置するだけで、受光素子が受光する赤外線の強度が被測定物により変化する。このことにより、容易にセンサとして用いることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、本発明のガスセンサは、測定ガスの吸収波長とした特定波長を放射する赤外線光源と赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備えているので、赤外線光源と受光素子との間に測定ガスを配置するだけで、受光素子が受光する赤外線の強度が測定ガスの濃度によって変化する。このことにより、容易にガスセンサとして用いることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、本発明のガスセンサは、赤外線光源が、測定ガスの吸収波長とした特定波長以外に、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長を放射するので、受光されるそれぞれの特定波長の赤外線の強度を比較することができる。このことにより、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長をリファレンスとして用いることができ、温度変化による受光強度の変動をキャンセルできるので、より正確な測定が行えるガスセンサが得られる。
【0020】
したがって、本発明の赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサは、加工のし易い赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の赤外線光源を説明する斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の赤外線光源と従来例3の赤外光源900とを比較した図であって、図2(a)は、図1に示すP部分のY2側から見た側面図であり、図2(b)は図2(a)と比較した赤外光源900の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の赤外線光源のシミュレーション結果と従来例3の赤外光源900のシミュレーション結果とを比較した波長と強度のグラフであって、図3(a)は、本発明の赤外線光源の構造を用いた結果であり、図3(b)は、従来例3の赤外光源900の構造を用いた結果である。
【図4】本発明の第1実施形態の赤外線光源の溝の部分における電界強度を従来例3の赤外光源900と比較したシミュレーション結果であって、図4(a)は、本発明の赤外線光源の電界強度分布の模式図であり、図4(b)は、非特許文献1の赤外光源900の電界強度分布の模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態のガスセンサを説明する構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態のセンを説明する構成図である。
【図7】本発明の第1実施形態の赤外線光源の変形例を説明する構成図であって、図7(a)は、図2(a)と比較した変形例1あって、図7(b)は、放射体の溝部分を変えた変形例2の放射体の上面図である。
【図8】本発明の第2実施形態のガスセンサの変形例を説明する構成図であって、図8(a)は、変形例4のガスセンサであり、図8(b)は、変形例5のガスセンサである。
【図9】従来例1における赤外線検知式ガスセンサの要部構成断面図である。
【図10】従来例2におけるガスセンサの構成図である。
【図11】従来例3における赤外光源の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101を説明する斜視図であり、その一部分を示している。図2は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101と従来例3の赤外光源900とを比較した図であって、図2(a)は、図1に示すP部分のY2側から見た側面図であり、図2(b)は図2(a)と比較した赤外光源900の側面図である。なお、赤外線光源101の凹部分の形状は、深さDと幅Wとのアスペクト比が最大になっており、一方、赤外光源900の凹部分の形状は、赤外線光源101の一定周期Pと同じにし、深さDと幅Tとのアスペクト比が最小になるようにしている。
【0024】
本発明の第1実施形態の赤外線光源101は、図1に示すように、発熱体15と、最表面が金属からなる放射体13とを備えて構成され、放射体13の表面には、一定方向に延びる溝14が一定周期Pで形成されており、溝14は、幅W、深さDの矩形状の断面を有する凹状の形状をしている。
【0025】
発熱体15は、板状の形状をしており、アルミナ等のセラミックヒータを用いている。発熱体15は、放射体13の裏面側に密着させて配置し、放射体13を加熱するためのヒータである。なお、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の発熱体15に、セラミックヒータを用いたが、放射体13を加熱できれば良く、電熱線ヒータやハロゲンヒータ等でも良い。
【0026】
放射体13は、金からなる金属で作製されており、最表面には、微細な溝14が一定の周期Pで刻み込まれている。このため、発熱体15による放射体13の加熱により、溝14の内部でプラズモン共鳴が生じ、特定の波長の赤外線IRだけが放射するようになる。放射される赤外線IRの強度のピーク波長は、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選ぶことで任意に設定できる。その際には、本発明の第1実施形態の赤外線光源101は、図2(a)に示すように、W >0.5P、及びD/W<0.5の条件を満たしている。なお、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の放射体13に、金からなる金属を用いたが、プラズモン共鳴が生じる金属として、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含む金属を用いても良い。これにより、レアアースのような稀少金属を用いることが無く、容易に放射体13を形成することができる。特に、金以外の金属を用いると、安価に作製することができる。更に、高融点金属のタングステンや金より融点が大幅に高いクロムやチタニウムを用いると、放射体13をより一層高温にすることができるので、ステファン・ボルツマンの法則により、放射体13から放射される赤外線IRの放射強度より強くすることができる。
【0027】
次に、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の作製方法について説明する。先ず、発熱体15上に真空蒸着やスパッタリング法により金を成膜し、フォトリソグラフィー法によって金膜上にレジスト膜をパターニングする。そして、ヨウ素が含まれたエッチング液でエッチング加工を行い、レジスト膜を隔離すると、表面に凹状の溝14が形成された放射体13を有した赤外線光源101が得られる。このようにして作製される本発明の第1実施形態の赤外線光源101は、図2に示すように、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の深さDと溝14の幅Wのアスペクト比を小さくすることができ、幅が広くて浅い溝を作製することになるので、最表面が金属からなる放射体13の表面に形成する矩形状の溝14の加工を容易に行うことができる。
【0028】
また、金以外の金属を用いた場合は、エッチング液でエッチング加工(ウェットエッチング加工)する以外に、エッチングガスを用いた、所謂ドライエッチング加工が利用できる。ドライエッチング加工は、ウェットエッチング加工と比較して、加工精度がでやすいので、溝14を所望の形状に近づけることができる。このことにより、放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致させ易くすることができる。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態の赤外線光源101から放射される赤外線IRについて検証を行うため、モデルを作成しシミュレーションを行った。本発明の第1実施形態のシミュレーションは、解析手法にRCWA法(Rigorous Coupled Wave Analysis)を用い、解析計算モデルとして、外部から放射体に、ある波長の光を入射した際の吸収効率を求め、その結果が放射効率と等価であるとし、ある波長に対する強度とした。
【0030】
図3は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101のシミュレーション結果と従来例3の赤外光源900のシミュレーション結果とを比較した波長と強度のグラフであって、図3(a)は、本発明の赤外線光源101の構造を用いた結果であり、図3(b)は、従来例3の赤外光源900の構造を用いた結果である。図3のグラフは、横軸が波長、縦軸が赤外線の強度を示している。また、赤外線光源101の溝14の構造は、二酸化炭素ガス(CO2ガス)が吸収する波長λCO2=4.26μm、一酸化炭素ガス(COガス)が吸収する波長λCO=4.65μm及びCO2ガス及びCOガスが吸収しない波長λref=3.95μmが放射される赤外線IRの強度のピーク波長になるように、赤外線光源101の溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを選定した。具体的には、波長λCO2の場合(図3(a)に示すA)、P=4.2μm、W=2.2μm、D=0.26μmとし、波長λCOの場合(図3(a)に示すB)、P=4.6μm、W=2.6μm、D=0.27μmとし、波長λrefの場合(図3(a)に示すC)、P=3.95μm、W=2.26μm、D=0.19μmとした。同様にして、特許文献1の赤外光源900についてもシミュレーション行い、具体的には、波長λCO2の場合(図3(b)に示すE)、P=4.05μm、T=0.1μm、D=0.66μmとし、波長λCOの場合(図3(b)に示すF)、P=4.4μm、T=0.1μm、D=0.74μmとし、波長λrefの場合(図3(b)に示すG)、P=3.8μm、W=0.1μm、D=0.6μmとした。ちなみに、溝14の一定方向に延びた長さは、100μm前後である。
【0031】
図3(a)に示すように、赤外線光源101は、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選ぶことで、赤外線光源101から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長、具体的には波長λCO2=4.26μm、波長λCO=4.65μm及び波長λref=3.95μmと一致するようにできる。また、図3(b)に示す従来例3と比較して、この強度波形は、半値幅が狭く、よりピークが鋭くなっており、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の方が、より良い赤外線の光源と言える。
【0032】
また、上述したシミュレーションに用いた赤外線光源101の溝14の形状は、溝14の深さDと溝14の幅Wとのアスペクト比が約0.15と小さく、従来例3の赤外光源900のアスペクト比が約10と比較して、格段に幅が広くて浅い溝14の形状になっている。このことにより、最表面が金属からなる放射体13の表面に形成する矩形状の溝14の加工を容易に行うことができると言える。
【0033】
また、溝14の深さDと溝14の幅Wとのアスペクト比が小さいことは、幅が広くて浅い溝加工を行うことになるので、幅方向及び深さ方向の寸法の精度を良くして加工することができる。このため、設計された所望の溝14の幅W及び溝14の深さDに加工された放射体13が得られるので、放射体13から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致するようにできる。
【0034】
更に、溝14の寸法のバラツキによる所望の特定波長への影響を検証するため、溝14の寸法を変化させてシミュレーションを行った。比較として、従来例3の赤外光源900についても行った。その結果をまとめて表1に示す。表1は、特定波長を波長λCO2=4.26μmとし、波長λCO2から±0.1μm以内の波長を許容波長とし、そのときの中心寸法と、最小寸法及び最大寸法を示しており、溝の一定周期P、溝の幅W及び溝の深さD、更には凹の側壁のテーパー角度θについて各々示している。
【0035】
【表1】
※ここに表を挿入して下さい。
表1に示すように、赤外線光源101は、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の幅W、溝の深さD及びテーパー角度θにおいて、許容されるバラツキ寸法が大きく、加工による寸法バラツキの影響が小さくなるので、放射体13から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致させ易くできる。特に、深さDとテーパー角度θの加工による寸法バラツキの影響が小さい。
【0036】
次に、一般にプラズモン共鳴が起きるとされている金、銀以外の金属について、同様な解析手法によりシミュレーションを行った。その結果、赤外線光源101は、放射体13の最表面に、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウム、ベリリウム、パラジウム、白金の金属を用いても、プラズモン共鳴が起きる。本発明においてはピークが鋭く半値幅が狭い特性が得られるため、金、銀に比べてピークがブロードになる他の金属を用いても十分な特性を得ることができる。
【0037】
次に、放射体13の溝14の近傍におけるプラズモン共鳴の状態について電界解析によりシミュレーションを行った。図4は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の溝14の部分における電界強度を従来例3の赤外光源900と比較したシミュレーション結果であって、図4(a)は、本発明の赤外線光源101の電界強度分布の模式図であり、図4(b)は、従来例3の赤外光源900の電界強度分布の模式図である。なお、図中の破線は、強度分布を模式的に表したものである。図4(b)に示す従来例3の赤外光源900と違い、赤外線光源101は、図4(a)に示すように、深さ方向の共鳴に加え、幅方向の共鳴が起きている。このことが、溝14の深さDと溝14の幅Wとのアスペクト比が小さくても、プラズモン共鳴が生じている一因と考えられる。
【0038】
以上により、本発明の赤外線光源101は、赤外線光源101から放射される赤外線IRの強度のピーク波長が所望の特定波長と一致するように、放射体13の表面に形成された矩形状の溝14の幅をW、深さをD、一定周期をPとした場合に、W >0.5PとD/W<0.5の条件で、一定周期P、幅W及び深さDを定めた。このため、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の深さDと溝14の幅Wのアスペクト比を小さくすることができ、幅が広くて浅い溝14を作製することになる。このことにより、最表面が金属からなる放射体13の表面に形成する矩形状の溝14の加工を容易に行うことができる。したがって、加工のし易い赤外線光源101を提供することができる。
【0039】
また、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の深さDと溝14の幅Wとのアスペクト比が小さいので、幅が広くて浅い溝加工を行うことになるので、幅方向及び深さ方向の寸法の精度を良くして加工することができる。このことにより、設計された所望の溝14の幅W及び溝14の深さDに加工された放射体13が得られるので、放射体13から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致するようにできる。
【0040】
また、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の幅W、溝14の深さD及びテーパー角度θにおいて、許容されるバラツキ寸法が大きく、加工による寸法バラツキの影響が小さくなるので、放射体13から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致させ易くできる。
【0041】
また、金属の材質が金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含むので、レアアースのような稀少金属を用いることが無く、容易に放射体13を形成することができる。特に、金以外の金属を用いると、安価に作製することができる。更に、高融点金属のタングステンや金より融点が大幅に高いクロムやチタニウムを用いると、放射体13をより一層高温にすることができるので、ステファン・ボルツマンの法則により、放射体13から放射される赤外線IRの放射強度をより強くすることができる。
【0042】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態のガスセンサ201を説明する構成図である。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
本発明の第2実施形態のガスセンサ201は、図5に示すように、赤外線光源101と、赤外線光源101から放射された赤外線IRを受光し電気信号を発生する受光素子26とを備えて構成され、他に、被測定ガスが流入及び排出できるように設けられた筐体11と、赤外線光源101が収容されたケース12と、受光素子26が収容されたケース22とが備えられている。
【0044】
ガスセンサ201は、光源として、本発明の第1実施形態と同じ構成の赤外線光源101を用いており、測定ガス(被測定ガス中のガス種を言う)の吸収波長とした特定波長を放射する赤外線光源101Aと、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長を放射する赤外線光源101Bとの2種類の光源を用いている。例えば、ガスセンサ201が測定ガスとして一酸化炭素ガス(COガス)を測定するセンサの場合、赤外線光源101Aから放射される赤外線IRの強度のピーク波長が、COガスが吸収する波長λCO=4.65μmに一致するように、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選定している。また、赤外線光源101Bから放射される赤外線IRの強度のピーク波長は、COガスが吸収しない波長λref=3.95μm一致するように、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選定している。
【0045】
また、ガスセンサ201は、受光素子26として、一般に広く利用されている赤外線受光素子を用いており、赤外線光源101Aから放射された赤外線IRを受光する受光素子26Aと、赤外線光源101Bから放射された赤外線IRを受光する受光素子26Bとを有している。
【0046】
筐体11は、金属製の筒形状を有しており、図5に示すように、筐体11には、一定量に調整された被測定ガスを導入させる導入部11aと排出させる排出部11bが取り付けられており、所定の流量で被測定ガスが筐体11の内部に送り込まれるとともに、排出されるようになっている。これにより、被測定ガスが順次置換されることになり、被測定ガス中の測定対象であるガス種(測定ガス)の濃度の経時な変化を連続的に分析することが可能となる。また、筐体11には、カバー51aとカバー51bが設けられており、赤外線光源101より放射された赤外線IRがカバー51aを通して筐体11内に入射し、被測定ガス中を透過した後、カバー51bを透過して出射し、受光素子26で受光される。なお、カバー51aとカバー51bは、波長が2〜15μm帯の赤外線IRに対して透過性を有していれば良く、硫化物を主体としたガラス等を用いている。
【0047】
このように構成されたガスセンサ201は、赤外線光源101Aから放射された赤外線IRを受光した受光素子26Aからの電気信号と、赤外線光源101Bから放射された赤外線IRを受光した受光素子26Bからの電気信号との差を比較して、被測定ガス中のガス種によって吸収された赤外線IRの量から、被測定ガス中のガス種の濃度を測定することができる。これにより、赤外線光源101Aと受光素子26Aとの間に測定ガスを配置するだけで、受光素子26Aが受光する赤外線IRの強度がガス種の濃度によって変化し、容易にガスセンサとして用いることができる。さらに、ガスセンサ201は、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長を放射する赤外線光源101Bを有しているので、受光素子26Aと受光素子26Bとで受光される赤外線IRの強度を比較することができる。このことにより、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長をリファレンスとして用いることができ、温度変化による受光強度の変動をキャンセルできるので、より正確な測定が行える。
【0048】
また、ガスセンサ201は、赤外線IRの強度のピーク波長が所望の特定波長と一致する赤外線光源101を用いているので、従来例1や従来例2と比較して、バンドパスフィルタ714や光学フィルタ(810A、810B)等のフィルタを必要としない。このことにより、ガスセンサ201を安く作製することができる。さらに、フィルタを通すことで実際に有用な特定波長の赤外線の一部が吸収されてしまう問題や、不要な他の波長を利用しないと言う問題を解決することができる。
【0049】
以上により、本発明の赤外線光源101を用いたガスセンサ201は、測定ガスの吸収波長とした特定波長を放射する赤外線光源101Aと赤外線光源101Aから放射された赤外線IRを受光する受光素子26Aとを備えているので、赤外線光源101Aと受光素子26Aとの間に測定ガスを配置するだけで、受光素子26Aが受光する赤外線IRの強度が測定ガスの濃度によって変化する。このことにより、容易にガスセンサ201として用いることができる。
【0050】
また、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長を放射する赤外線光源101Bを有しているので、受光素子26Aと受光素子26Bとで受光される赤外線IRの強度を比較することができる。このことにより、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長をリファレンスとして用いることができ、温度変化による受光強度の変動をキャンセルできるので、より正確な測定が行えるガスセンサ201が得られる。
【0051】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態のセンサ301を説明する構成図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
本発明の第3実施形態のセンサ301は、図6に示すように、赤外線光源101と、赤外線光源101から放射された赤外線IRを受光し電気信号を発生する受光素子26とを備えて構成され、他に、赤外線光源101及び受光素子26を収容し、被測定物Mを載置できる載置部31aを有した筐体31とが備えられている。
【0053】
センサ301は、光源として、本発明の第1実施形態と同じ構成の赤外線光源101を用いており、赤外線光源101は、被測定物Mにより吸収される帯域の波長を有している。例えば、センサ301が被測定物Mとして果物等の糖度を測定するセンサの場合、赤外線光源101から放射される赤外線IRの強度のピーク波長が、0.8〜2.5μmの間になるように、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選定している。
【0054】
筐体31は、合成樹脂製の箱形状を有しており、図6に示すように、筐体31には、被測定物Mを配置する載置部31aが設けられており、赤外線光源101より放射された赤外線IRがカバー71aを通して被測定物Mに入射し、被測定物M中を透過した後、カバー71bを透過して出射し、受光素子26で受光される。なお、カバー71aとカバー71bは、波長が0.8〜2.5μm帯の赤外線IRに対して透過性を有していれば良く、或いは、カバー71aとカバー71bを設けなく、赤外線IRが透過できるように、筐体31に穴がおいていても良い。
【0055】
このように構成されたセンサ301は、赤外線光源101から放射された赤外線IRが被測定物Mを透過し、赤外線IRの一部が被測定物Mにより吸収され、この透過した赤外線IRを受光素子26で受光し、赤外線IRの透過量若しくは吸収量から、被測定物M中の糖度を測定することができる。これにより、赤外線光源101と受光素子26との間に被測定物Mを配置するだけで、受光素子26が受光する赤外線IRの強度が被測定物Mによって変化し、容易にセンサとして用いることができる。
【0056】
また、センサ301は、赤外線IRの強度のピーク波長が所望の特定波長と一致する赤外線光源101を用いているので、通常用いられているハロゲンランプと比較して、小型で低消費電力のセンサを作製することができ、熱による被測定物Mに与える影響も低減することができる。
【0057】
以上により、本発明の赤外線光源101を用いたセンサ301は、赤外線光源101と赤外線光源101から放射された赤外線IRを受光する受光素子26とを備えているので、赤外線光源101と受光素子26との間に被測定物Mを配置するだけで、受光素子26が受光する赤外線IRの強度が被測定物Mにより変化する。このことにより、容易にセンサとして用いることができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0059】
図7は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の変形例を説明する構成図であって、図7(a)は、図2(a)と比較した変形例1であって、図7(b)は、放射体C33の溝部分を変えた変形例3の放射体C33の上面図である。図8は、本発明の第2実施形態のガスセンサ201の変形例を説明する構成図であって、図8(a)は、変形例4のガスセンサC241であり、図8(b)は、変形例5のガスセンサC251である。
【0060】
<変形例1>
上記第1実施形態では、塊状の金属の最表面に微細な溝14を形成して、放射体13とした構成であったが、図7(a)に示すように、溝C14が形成された合成樹脂からなる基体C9の表面に真空蒸着やスパッタリング法により金属膜C8を成膜し、放射体C13とした構成であっても良い。
【0061】
<変形例2>
上記第1実施形態では、放射体13の裏面側に密着させて配置した発熱体15を用いた構成であったが、放射体に通電することにより放射体を加熱し、発熱体15を用いない構成であっても良い。
【0062】
<変形例3>
上記第1実施形態では、一定方向に延びる溝14を設けた放射体13であったが、図7(b)に示すように、溝14の他に、溝14一定方向と直交する方向にのびた溝C24や一定周期P、幅W及び深さDを変えた溝C34を設けた放射体C33であっても良い。これにより、溝C24を設けたことで、溝14から放射される赤外線と違った偏光を有した赤外線を新たに放射させることができ、溝C34を設けたことで、溝14から放射される赤外線と違ったピーク波長の赤外線を新たに放射させることができる。
【0063】
<変形例4>
上記第2実施形態では、赤外線光源101Aと受光素子26A、赤外線光源101Bと受光素子26Bを設けた構成であったが、図8(a)に示すように、赤外線光源101Aと受光素子26Aだけの構成のガスセンサC241であっても良い。その際には、受光素子26Aの近傍に温度センサCTを配置し、温度による影響をフィードバックできるようにするとより良い。また、より精度の高い測定を行うため、ノイズ除去フィルタCFをカバー51bと受光素子26Aとの間に配置する構成であっても良い。
【0064】
<変形例5>
上記第2実施形態では、赤外線光源101Aと受光素子26A、赤外線光源101Bと受光素子26Bを設けた構成であったが、図8(b)に示すように、赤外線光源C151、受光素子26A及び受光素子26Bを設けた構成であっても良い。その際には、変形例3の放射体C33のような溝加工が施された赤外線光源C151を用い、赤外線光源C151とカバー51aとの間に分光フィルタDF及びミラーMRを設けた構成にする。
【0065】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
13、C13、C33 放射体
14、C14、C24、C34 溝
15 発熱体
26、26A、26B 受光素子
101、101A、101B、C151 赤外線光源
201、C241、C251 ガスセンサ
301 センサ
P 一定周期P
W 幅
D 深さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサに赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線光源は、医療分野や自動車分野等で検出器やセンサとして広く用いられており、抵抗体に通電することにより発熱して放射される放射光を赤外線光源として用いることが一般的に知られている。図9に示す特許文献1では、通電によって発熱し所定の強度の赤外線を発するフィラメントを用いた光源712を有する赤外線検知式ガスセンサ710が提案されている(従来例1)。赤外線検知式ガスセンサ710は、図9に示すように、被測定ガスが流入できるように設けられたケース711と、ケース711の外部に配置され赤外線を放出する光源712と、光源712により放出された赤外線の集光部材であるコリメータレンズ713と、赤外線の特定の波長のみを透過するバンドパスフィルタ714と、バンドパスフィルタ714を透過した特定の波長の赤外線を受光し電気信号を発生する検出素子715とにより構成されている。
【0003】
また、図10に示す特許文献2では、特許文献1の従来例1と同じようなフィラメント式の赤外線光源808を備えたガスセンサ801が提案されている(従来例2)。ガスセンサ801は、図10に示すように、センサ本体802、CPU803、メモリ804、D/A(Digital to Analog)変換器805、A/D(Analog to Digital)変換器806A,806B、及び電圧制御回路807を備えており、センサ本体802には、筐体811の内部に赤外線光源808、赤外線検出器809A,809B、及び光学フィルタ810A,810Bを備えて構成されている。
【0004】
しかしながら、従来例1や従来例2にように、特定波長の赤外線を用いるようなセンサ等の用途の場合、抵抗体に通電することにより発熱して放射される幅広い波長の放射光をバンドパスフィルタ714や光学フィルタ(810A、810B)を通して、その一部を用いている。これにより、他の波長は利用されなくエネルギー効率が悪い上に、フィルタを通すことにより実際に有用な特定波長の赤外線の一部が吸収されてしまうと言う問題があった。このため、センサの出力変化を確保して十分な感度を得るために、赤外線光源から放射される特定波長の赤外線エネルギーを大きくしたいという要望があった。
【0005】
そこで、特許文献3では、図11に示すようなプラズモン共鳴を利用した回折格子型の赤外光源900が提案されている(従来例3)。赤外光源900は、特定波長の赤外線を発する赤外線光源であって、図11に示すように、格子901とセラミックヒータ等の発熱体907とを備え、格子901には、金属等の負の誘電体材料部903と中空またはシリコンなどの半導体を用いた正の誘電体材料部905とから構成されている。そして、格子901の周期をP、格子901の深さをD、正の誘電体材料部905の幅をT、特定の波長をλとした場合に、0<P<2.0λ及びT<0.5PであるP、TおよびDに対して、赤外光源900から発せられる赤外線強度のピーク波長が所望の波長と一致するようにP、T及びDを定めるとしている。そして、具体的には、非特許文献1に記されているように、幅Tと深さDの関係は、D>5Tになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−002284号公報
【特許文献2】特開2010−139299号公報
【特許文献3】特開2007−324126号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Appl,Phys.92,141114(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来例3では、金属等の負の誘電体材料部903と正の誘電体材料部905から構成される格子901を作製するために、金属の表面を加工しなければならないが、格子901の周期Pに対して溝の幅Tが狭く(T<0.5P)、しかも溝の幅Tに対して深さDが深い(D>5T)ので、加工が困難と言う問題があった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するもので、加工のし易い赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明の請求項1による赤外線光源は、発熱体と、最表面が金属からなる放射体とを備えた赤外線光源であって、前記放射体の表面には、一定方向に延びる矩形状の断面を有する溝が一定周期で形成されており、当該一定周期をP、当該溝の幅をW 、当該溝の深さをDとした場合に、W >0.5P、D/W<0.5であるP、W及びDに対して、前記赤外線光源から放射される赤外線の強度のピーク波長が、所望の特定波長と一致するようにP、W及びDを定めたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項2による赤外線光源は、前記金属が金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項3によるセンサは、請求項1または請求項2に記載の赤外線光源と、前記赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備えたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明の請求項4によるガスセンサは、請求項1または請求項2に記載の赤外線光源と、前記赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備え、前記赤外線光源は、測定ガスの吸収波長とした前記特定波長を放射することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項5によるガスセンサは、前記赤外線光源は、前記測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の前記特定波長を放射することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、本発明の赤外線光源は、赤外線光源から放射される赤外線の強度のピーク波長が所望の特定波長と一致するように、放射体の表面に形成された矩形状の溝の幅をW、深さをD、一定周期をPとした場合に、W >0.5PとD/W<0.5の条件で、P、W及びDを定めた。このため、従来例3の赤外光源と比較して、溝の深さDと溝の幅Wのアスペクト比を小さくすることができ、幅が広くて浅い溝を作製することになる。このことにより、最表面が金属からなる放射体の表面に形成する矩形状の溝の加工を容易に行うことができる。したがって、加工のし易い赤外線光源を提供することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、本発明の赤外線光源は、金属の材質が金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含むので、レアアースのような稀少金属を用いることが無く、容易に放射体を形成することができる。特に、金以外の金属を用いると、安価に作製することができる。更に、高融点金属のタングステンや金より融点が大幅に高いクロムやチタニウムを用いると、放射体をより一層高温にすることができるので、放射体から放射される赤外線の放射強度をより強くすることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、本発明のセンサは、赤外線光源と赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備えているので、赤外線光源と受光素子との間に被測定物を配置するだけで、受光素子が受光する赤外線の強度が被測定物により変化する。このことにより、容易にセンサとして用いることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、本発明のガスセンサは、測定ガスの吸収波長とした特定波長を放射する赤外線光源と赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備えているので、赤外線光源と受光素子との間に測定ガスを配置するだけで、受光素子が受光する赤外線の強度が測定ガスの濃度によって変化する。このことにより、容易にガスセンサとして用いることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、本発明のガスセンサは、赤外線光源が、測定ガスの吸収波長とした特定波長以外に、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長を放射するので、受光されるそれぞれの特定波長の赤外線の強度を比較することができる。このことにより、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長をリファレンスとして用いることができ、温度変化による受光強度の変動をキャンセルできるので、より正確な測定が行えるガスセンサが得られる。
【0020】
したがって、本発明の赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサは、加工のし易い赤外線光源、該赤外線光源を用いたセンサ及びガスセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の赤外線光源を説明する斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の赤外線光源と従来例3の赤外光源900とを比較した図であって、図2(a)は、図1に示すP部分のY2側から見た側面図であり、図2(b)は図2(a)と比較した赤外光源900の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の赤外線光源のシミュレーション結果と従来例3の赤外光源900のシミュレーション結果とを比較した波長と強度のグラフであって、図3(a)は、本発明の赤外線光源の構造を用いた結果であり、図3(b)は、従来例3の赤外光源900の構造を用いた結果である。
【図4】本発明の第1実施形態の赤外線光源の溝の部分における電界強度を従来例3の赤外光源900と比較したシミュレーション結果であって、図4(a)は、本発明の赤外線光源の電界強度分布の模式図であり、図4(b)は、非特許文献1の赤外光源900の電界強度分布の模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態のガスセンサを説明する構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態のセンを説明する構成図である。
【図7】本発明の第1実施形態の赤外線光源の変形例を説明する構成図であって、図7(a)は、図2(a)と比較した変形例1あって、図7(b)は、放射体の溝部分を変えた変形例2の放射体の上面図である。
【図8】本発明の第2実施形態のガスセンサの変形例を説明する構成図であって、図8(a)は、変形例4のガスセンサであり、図8(b)は、変形例5のガスセンサである。
【図9】従来例1における赤外線検知式ガスセンサの要部構成断面図である。
【図10】従来例2におけるガスセンサの構成図である。
【図11】従来例3における赤外光源の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101を説明する斜視図であり、その一部分を示している。図2は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101と従来例3の赤外光源900とを比較した図であって、図2(a)は、図1に示すP部分のY2側から見た側面図であり、図2(b)は図2(a)と比較した赤外光源900の側面図である。なお、赤外線光源101の凹部分の形状は、深さDと幅Wとのアスペクト比が最大になっており、一方、赤外光源900の凹部分の形状は、赤外線光源101の一定周期Pと同じにし、深さDと幅Tとのアスペクト比が最小になるようにしている。
【0024】
本発明の第1実施形態の赤外線光源101は、図1に示すように、発熱体15と、最表面が金属からなる放射体13とを備えて構成され、放射体13の表面には、一定方向に延びる溝14が一定周期Pで形成されており、溝14は、幅W、深さDの矩形状の断面を有する凹状の形状をしている。
【0025】
発熱体15は、板状の形状をしており、アルミナ等のセラミックヒータを用いている。発熱体15は、放射体13の裏面側に密着させて配置し、放射体13を加熱するためのヒータである。なお、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の発熱体15に、セラミックヒータを用いたが、放射体13を加熱できれば良く、電熱線ヒータやハロゲンヒータ等でも良い。
【0026】
放射体13は、金からなる金属で作製されており、最表面には、微細な溝14が一定の周期Pで刻み込まれている。このため、発熱体15による放射体13の加熱により、溝14の内部でプラズモン共鳴が生じ、特定の波長の赤外線IRだけが放射するようになる。放射される赤外線IRの強度のピーク波長は、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選ぶことで任意に設定できる。その際には、本発明の第1実施形態の赤外線光源101は、図2(a)に示すように、W >0.5P、及びD/W<0.5の条件を満たしている。なお、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の放射体13に、金からなる金属を用いたが、プラズモン共鳴が生じる金属として、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含む金属を用いても良い。これにより、レアアースのような稀少金属を用いることが無く、容易に放射体13を形成することができる。特に、金以外の金属を用いると、安価に作製することができる。更に、高融点金属のタングステンや金より融点が大幅に高いクロムやチタニウムを用いると、放射体13をより一層高温にすることができるので、ステファン・ボルツマンの法則により、放射体13から放射される赤外線IRの放射強度より強くすることができる。
【0027】
次に、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の作製方法について説明する。先ず、発熱体15上に真空蒸着やスパッタリング法により金を成膜し、フォトリソグラフィー法によって金膜上にレジスト膜をパターニングする。そして、ヨウ素が含まれたエッチング液でエッチング加工を行い、レジスト膜を隔離すると、表面に凹状の溝14が形成された放射体13を有した赤外線光源101が得られる。このようにして作製される本発明の第1実施形態の赤外線光源101は、図2に示すように、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の深さDと溝14の幅Wのアスペクト比を小さくすることができ、幅が広くて浅い溝を作製することになるので、最表面が金属からなる放射体13の表面に形成する矩形状の溝14の加工を容易に行うことができる。
【0028】
また、金以外の金属を用いた場合は、エッチング液でエッチング加工(ウェットエッチング加工)する以外に、エッチングガスを用いた、所謂ドライエッチング加工が利用できる。ドライエッチング加工は、ウェットエッチング加工と比較して、加工精度がでやすいので、溝14を所望の形状に近づけることができる。このことにより、放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致させ易くすることができる。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態の赤外線光源101から放射される赤外線IRについて検証を行うため、モデルを作成しシミュレーションを行った。本発明の第1実施形態のシミュレーションは、解析手法にRCWA法(Rigorous Coupled Wave Analysis)を用い、解析計算モデルとして、外部から放射体に、ある波長の光を入射した際の吸収効率を求め、その結果が放射効率と等価であるとし、ある波長に対する強度とした。
【0030】
図3は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101のシミュレーション結果と従来例3の赤外光源900のシミュレーション結果とを比較した波長と強度のグラフであって、図3(a)は、本発明の赤外線光源101の構造を用いた結果であり、図3(b)は、従来例3の赤外光源900の構造を用いた結果である。図3のグラフは、横軸が波長、縦軸が赤外線の強度を示している。また、赤外線光源101の溝14の構造は、二酸化炭素ガス(CO2ガス)が吸収する波長λCO2=4.26μm、一酸化炭素ガス(COガス)が吸収する波長λCO=4.65μm及びCO2ガス及びCOガスが吸収しない波長λref=3.95μmが放射される赤外線IRの強度のピーク波長になるように、赤外線光源101の溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを選定した。具体的には、波長λCO2の場合(図3(a)に示すA)、P=4.2μm、W=2.2μm、D=0.26μmとし、波長λCOの場合(図3(a)に示すB)、P=4.6μm、W=2.6μm、D=0.27μmとし、波長λrefの場合(図3(a)に示すC)、P=3.95μm、W=2.26μm、D=0.19μmとした。同様にして、特許文献1の赤外光源900についてもシミュレーション行い、具体的には、波長λCO2の場合(図3(b)に示すE)、P=4.05μm、T=0.1μm、D=0.66μmとし、波長λCOの場合(図3(b)に示すF)、P=4.4μm、T=0.1μm、D=0.74μmとし、波長λrefの場合(図3(b)に示すG)、P=3.8μm、W=0.1μm、D=0.6μmとした。ちなみに、溝14の一定方向に延びた長さは、100μm前後である。
【0031】
図3(a)に示すように、赤外線光源101は、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選ぶことで、赤外線光源101から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長、具体的には波長λCO2=4.26μm、波長λCO=4.65μm及び波長λref=3.95μmと一致するようにできる。また、図3(b)に示す従来例3と比較して、この強度波形は、半値幅が狭く、よりピークが鋭くなっており、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の方が、より良い赤外線の光源と言える。
【0032】
また、上述したシミュレーションに用いた赤外線光源101の溝14の形状は、溝14の深さDと溝14の幅Wとのアスペクト比が約0.15と小さく、従来例3の赤外光源900のアスペクト比が約10と比較して、格段に幅が広くて浅い溝14の形状になっている。このことにより、最表面が金属からなる放射体13の表面に形成する矩形状の溝14の加工を容易に行うことができると言える。
【0033】
また、溝14の深さDと溝14の幅Wとのアスペクト比が小さいことは、幅が広くて浅い溝加工を行うことになるので、幅方向及び深さ方向の寸法の精度を良くして加工することができる。このため、設計された所望の溝14の幅W及び溝14の深さDに加工された放射体13が得られるので、放射体13から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致するようにできる。
【0034】
更に、溝14の寸法のバラツキによる所望の特定波長への影響を検証するため、溝14の寸法を変化させてシミュレーションを行った。比較として、従来例3の赤外光源900についても行った。その結果をまとめて表1に示す。表1は、特定波長を波長λCO2=4.26μmとし、波長λCO2から±0.1μm以内の波長を許容波長とし、そのときの中心寸法と、最小寸法及び最大寸法を示しており、溝の一定周期P、溝の幅W及び溝の深さD、更には凹の側壁のテーパー角度θについて各々示している。
【0035】
【表1】
※ここに表を挿入して下さい。
表1に示すように、赤外線光源101は、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の幅W、溝の深さD及びテーパー角度θにおいて、許容されるバラツキ寸法が大きく、加工による寸法バラツキの影響が小さくなるので、放射体13から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致させ易くできる。特に、深さDとテーパー角度θの加工による寸法バラツキの影響が小さい。
【0036】
次に、一般にプラズモン共鳴が起きるとされている金、銀以外の金属について、同様な解析手法によりシミュレーションを行った。その結果、赤外線光源101は、放射体13の最表面に、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウム、ベリリウム、パラジウム、白金の金属を用いても、プラズモン共鳴が起きる。本発明においてはピークが鋭く半値幅が狭い特性が得られるため、金、銀に比べてピークがブロードになる他の金属を用いても十分な特性を得ることができる。
【0037】
次に、放射体13の溝14の近傍におけるプラズモン共鳴の状態について電界解析によりシミュレーションを行った。図4は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の溝14の部分における電界強度を従来例3の赤外光源900と比較したシミュレーション結果であって、図4(a)は、本発明の赤外線光源101の電界強度分布の模式図であり、図4(b)は、従来例3の赤外光源900の電界強度分布の模式図である。なお、図中の破線は、強度分布を模式的に表したものである。図4(b)に示す従来例3の赤外光源900と違い、赤外線光源101は、図4(a)に示すように、深さ方向の共鳴に加え、幅方向の共鳴が起きている。このことが、溝14の深さDと溝14の幅Wとのアスペクト比が小さくても、プラズモン共鳴が生じている一因と考えられる。
【0038】
以上により、本発明の赤外線光源101は、赤外線光源101から放射される赤外線IRの強度のピーク波長が所望の特定波長と一致するように、放射体13の表面に形成された矩形状の溝14の幅をW、深さをD、一定周期をPとした場合に、W >0.5PとD/W<0.5の条件で、一定周期P、幅W及び深さDを定めた。このため、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の深さDと溝14の幅Wのアスペクト比を小さくすることができ、幅が広くて浅い溝14を作製することになる。このことにより、最表面が金属からなる放射体13の表面に形成する矩形状の溝14の加工を容易に行うことができる。したがって、加工のし易い赤外線光源101を提供することができる。
【0039】
また、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の深さDと溝14の幅Wとのアスペクト比が小さいので、幅が広くて浅い溝加工を行うことになるので、幅方向及び深さ方向の寸法の精度を良くして加工することができる。このことにより、設計された所望の溝14の幅W及び溝14の深さDに加工された放射体13が得られるので、放射体13から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致するようにできる。
【0040】
また、従来例3の赤外光源900と比較して、溝14の幅W、溝14の深さD及びテーパー角度θにおいて、許容されるバラツキ寸法が大きく、加工による寸法バラツキの影響が小さくなるので、放射体13から放射される赤外線IRの強度のピーク波長を所望の特定波長と一致させ易くできる。
【0041】
また、金属の材質が金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含むので、レアアースのような稀少金属を用いることが無く、容易に放射体13を形成することができる。特に、金以外の金属を用いると、安価に作製することができる。更に、高融点金属のタングステンや金より融点が大幅に高いクロムやチタニウムを用いると、放射体13をより一層高温にすることができるので、ステファン・ボルツマンの法則により、放射体13から放射される赤外線IRの放射強度をより強くすることができる。
【0042】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態のガスセンサ201を説明する構成図である。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
本発明の第2実施形態のガスセンサ201は、図5に示すように、赤外線光源101と、赤外線光源101から放射された赤外線IRを受光し電気信号を発生する受光素子26とを備えて構成され、他に、被測定ガスが流入及び排出できるように設けられた筐体11と、赤外線光源101が収容されたケース12と、受光素子26が収容されたケース22とが備えられている。
【0044】
ガスセンサ201は、光源として、本発明の第1実施形態と同じ構成の赤外線光源101を用いており、測定ガス(被測定ガス中のガス種を言う)の吸収波長とした特定波長を放射する赤外線光源101Aと、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長を放射する赤外線光源101Bとの2種類の光源を用いている。例えば、ガスセンサ201が測定ガスとして一酸化炭素ガス(COガス)を測定するセンサの場合、赤外線光源101Aから放射される赤外線IRの強度のピーク波長が、COガスが吸収する波長λCO=4.65μmに一致するように、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選定している。また、赤外線光源101Bから放射される赤外線IRの強度のピーク波長は、COガスが吸収しない波長λref=3.95μm一致するように、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選定している。
【0045】
また、ガスセンサ201は、受光素子26として、一般に広く利用されている赤外線受光素子を用いており、赤外線光源101Aから放射された赤外線IRを受光する受光素子26Aと、赤外線光源101Bから放射された赤外線IRを受光する受光素子26Bとを有している。
【0046】
筐体11は、金属製の筒形状を有しており、図5に示すように、筐体11には、一定量に調整された被測定ガスを導入させる導入部11aと排出させる排出部11bが取り付けられており、所定の流量で被測定ガスが筐体11の内部に送り込まれるとともに、排出されるようになっている。これにより、被測定ガスが順次置換されることになり、被測定ガス中の測定対象であるガス種(測定ガス)の濃度の経時な変化を連続的に分析することが可能となる。また、筐体11には、カバー51aとカバー51bが設けられており、赤外線光源101より放射された赤外線IRがカバー51aを通して筐体11内に入射し、被測定ガス中を透過した後、カバー51bを透過して出射し、受光素子26で受光される。なお、カバー51aとカバー51bは、波長が2〜15μm帯の赤外線IRに対して透過性を有していれば良く、硫化物を主体としたガラス等を用いている。
【0047】
このように構成されたガスセンサ201は、赤外線光源101Aから放射された赤外線IRを受光した受光素子26Aからの電気信号と、赤外線光源101Bから放射された赤外線IRを受光した受光素子26Bからの電気信号との差を比較して、被測定ガス中のガス種によって吸収された赤外線IRの量から、被測定ガス中のガス種の濃度を測定することができる。これにより、赤外線光源101Aと受光素子26Aとの間に測定ガスを配置するだけで、受光素子26Aが受光する赤外線IRの強度がガス種の濃度によって変化し、容易にガスセンサとして用いることができる。さらに、ガスセンサ201は、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長を放射する赤外線光源101Bを有しているので、受光素子26Aと受光素子26Bとで受光される赤外線IRの強度を比較することができる。このことにより、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長をリファレンスとして用いることができ、温度変化による受光強度の変動をキャンセルできるので、より正確な測定が行える。
【0048】
また、ガスセンサ201は、赤外線IRの強度のピーク波長が所望の特定波長と一致する赤外線光源101を用いているので、従来例1や従来例2と比較して、バンドパスフィルタ714や光学フィルタ(810A、810B)等のフィルタを必要としない。このことにより、ガスセンサ201を安く作製することができる。さらに、フィルタを通すことで実際に有用な特定波長の赤外線の一部が吸収されてしまう問題や、不要な他の波長を利用しないと言う問題を解決することができる。
【0049】
以上により、本発明の赤外線光源101を用いたガスセンサ201は、測定ガスの吸収波長とした特定波長を放射する赤外線光源101Aと赤外線光源101Aから放射された赤外線IRを受光する受光素子26Aとを備えているので、赤外線光源101Aと受光素子26Aとの間に測定ガスを配置するだけで、受光素子26Aが受光する赤外線IRの強度が測定ガスの濃度によって変化する。このことにより、容易にガスセンサ201として用いることができる。
【0050】
また、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長を放射する赤外線光源101Bを有しているので、受光素子26Aと受光素子26Bとで受光される赤外線IRの強度を比較することができる。このことにより、測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の特定波長をリファレンスとして用いることができ、温度変化による受光強度の変動をキャンセルできるので、より正確な測定が行えるガスセンサ201が得られる。
【0051】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態のセンサ301を説明する構成図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
本発明の第3実施形態のセンサ301は、図6に示すように、赤外線光源101と、赤外線光源101から放射された赤外線IRを受光し電気信号を発生する受光素子26とを備えて構成され、他に、赤外線光源101及び受光素子26を収容し、被測定物Mを載置できる載置部31aを有した筐体31とが備えられている。
【0053】
センサ301は、光源として、本発明の第1実施形態と同じ構成の赤外線光源101を用いており、赤外線光源101は、被測定物Mにより吸収される帯域の波長を有している。例えば、センサ301が被測定物Mとして果物等の糖度を測定するセンサの場合、赤外線光源101から放射される赤外線IRの強度のピーク波長が、0.8〜2.5μmの間になるように、溝14の一定周期P、溝14の幅W及び溝14の深さDを適切に選定している。
【0054】
筐体31は、合成樹脂製の箱形状を有しており、図6に示すように、筐体31には、被測定物Mを配置する載置部31aが設けられており、赤外線光源101より放射された赤外線IRがカバー71aを通して被測定物Mに入射し、被測定物M中を透過した後、カバー71bを透過して出射し、受光素子26で受光される。なお、カバー71aとカバー71bは、波長が0.8〜2.5μm帯の赤外線IRに対して透過性を有していれば良く、或いは、カバー71aとカバー71bを設けなく、赤外線IRが透過できるように、筐体31に穴がおいていても良い。
【0055】
このように構成されたセンサ301は、赤外線光源101から放射された赤外線IRが被測定物Mを透過し、赤外線IRの一部が被測定物Mにより吸収され、この透過した赤外線IRを受光素子26で受光し、赤外線IRの透過量若しくは吸収量から、被測定物M中の糖度を測定することができる。これにより、赤外線光源101と受光素子26との間に被測定物Mを配置するだけで、受光素子26が受光する赤外線IRの強度が被測定物Mによって変化し、容易にセンサとして用いることができる。
【0056】
また、センサ301は、赤外線IRの強度のピーク波長が所望の特定波長と一致する赤外線光源101を用いているので、通常用いられているハロゲンランプと比較して、小型で低消費電力のセンサを作製することができ、熱による被測定物Mに与える影響も低減することができる。
【0057】
以上により、本発明の赤外線光源101を用いたセンサ301は、赤外線光源101と赤外線光源101から放射された赤外線IRを受光する受光素子26とを備えているので、赤外線光源101と受光素子26との間に被測定物Mを配置するだけで、受光素子26が受光する赤外線IRの強度が被測定物Mにより変化する。このことにより、容易にセンサとして用いることができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0059】
図7は、本発明の第1実施形態の赤外線光源101の変形例を説明する構成図であって、図7(a)は、図2(a)と比較した変形例1であって、図7(b)は、放射体C33の溝部分を変えた変形例3の放射体C33の上面図である。図8は、本発明の第2実施形態のガスセンサ201の変形例を説明する構成図であって、図8(a)は、変形例4のガスセンサC241であり、図8(b)は、変形例5のガスセンサC251である。
【0060】
<変形例1>
上記第1実施形態では、塊状の金属の最表面に微細な溝14を形成して、放射体13とした構成であったが、図7(a)に示すように、溝C14が形成された合成樹脂からなる基体C9の表面に真空蒸着やスパッタリング法により金属膜C8を成膜し、放射体C13とした構成であっても良い。
【0061】
<変形例2>
上記第1実施形態では、放射体13の裏面側に密着させて配置した発熱体15を用いた構成であったが、放射体に通電することにより放射体を加熱し、発熱体15を用いない構成であっても良い。
【0062】
<変形例3>
上記第1実施形態では、一定方向に延びる溝14を設けた放射体13であったが、図7(b)に示すように、溝14の他に、溝14一定方向と直交する方向にのびた溝C24や一定周期P、幅W及び深さDを変えた溝C34を設けた放射体C33であっても良い。これにより、溝C24を設けたことで、溝14から放射される赤外線と違った偏光を有した赤外線を新たに放射させることができ、溝C34を設けたことで、溝14から放射される赤外線と違ったピーク波長の赤外線を新たに放射させることができる。
【0063】
<変形例4>
上記第2実施形態では、赤外線光源101Aと受光素子26A、赤外線光源101Bと受光素子26Bを設けた構成であったが、図8(a)に示すように、赤外線光源101Aと受光素子26Aだけの構成のガスセンサC241であっても良い。その際には、受光素子26Aの近傍に温度センサCTを配置し、温度による影響をフィードバックできるようにするとより良い。また、より精度の高い測定を行うため、ノイズ除去フィルタCFをカバー51bと受光素子26Aとの間に配置する構成であっても良い。
【0064】
<変形例5>
上記第2実施形態では、赤外線光源101Aと受光素子26A、赤外線光源101Bと受光素子26Bを設けた構成であったが、図8(b)に示すように、赤外線光源C151、受光素子26A及び受光素子26Bを設けた構成であっても良い。その際には、変形例3の放射体C33のような溝加工が施された赤外線光源C151を用い、赤外線光源C151とカバー51aとの間に分光フィルタDF及びミラーMRを設けた構成にする。
【0065】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
13、C13、C33 放射体
14、C14、C24、C34 溝
15 発熱体
26、26A、26B 受光素子
101、101A、101B、C151 赤外線光源
201、C241、C251 ガスセンサ
301 センサ
P 一定周期P
W 幅
D 深さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、最表面が金属からなる放射体とを備えた赤外線光源であって、
前記放射体の表面には、一定方向に延びる矩形状の断面を有する溝が一定周期で形成されており、
当該一定周期をP、当該溝の幅をW 、当該溝の深さをDとした場合に、W >0.5P、D/W<0.5であるP、W及びDに対して、前記赤外線光源から放射される赤外線の強度のピーク波長が、所望の特定波長と一致するようにP、W及びDを定めたことを特徴とする赤外線光源。
【請求項2】
前記金属が金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の赤外線光源。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の赤外線光源と、前記赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備えたことを特徴とするセンサ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の赤外線光源と、前記赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備え、
前記赤外線光源は、測定ガスの吸収波長とした前記特定波長を放射することを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
前記赤外線光源は、前記測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の前記特定波長を放射することを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項1】
発熱体と、最表面が金属からなる放射体とを備えた赤外線光源であって、
前記放射体の表面には、一定方向に延びる矩形状の断面を有する溝が一定周期で形成されており、
当該一定周期をP、当該溝の幅をW 、当該溝の深さをDとした場合に、W >0.5P、D/W<0.5であるP、W及びDに対して、前記赤外線光源から放射される赤外線の強度のピーク波長が、所望の特定波長と一致するようにP、W及びDを定めたことを特徴とする赤外線光源。
【請求項2】
前記金属が金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロム、チタニウムのいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の赤外線光源。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の赤外線光源と、前記赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備えたことを特徴とするセンサ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の赤外線光源と、前記赤外線光源から放射された赤外線を受光する受光素子とを備え、
前記赤外線光源は、測定ガスの吸収波長とした前記特定波長を放射することを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
前記赤外線光源は、前記測定ガスの吸収波長ではない波長とした他の前記特定波長を放射することを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−83478(P2013−83478A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222026(P2011−222026)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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