説明

赤外線検出器

【課題】各素子の出力を選択的あるいは同時に取り出し、検知対象の温度分布もしくは平均温度を知ることが可能な赤外線検出器を得る。
【解決手段】行方向および列方向に各々複数配置されてアレイ状に形成される複数の赤外線検出素子(9)、行方向毎の赤外線検出素子の出力を取り出す行選択スイッチ(21〜23)、列方向毎の赤外線検出素子の出力を取り出す列選択スイッチ(11〜19)、及びモード選択信号(30)に基づいて複数の赤外線検出素子を同時出力させる同時出力モードと複数の赤外線検出素子の各々を選択出力させる選択出力モードとの切替えを行うモード切替スイッチ(31〜34)を備えるセンサー部と、同時出力モードまたは選択出力モードに基づいて行選択スイッチおよび列選択スイッチのオンオフを切り替える制御部(41〜46)と、を有し、同時出力モードは行方向毎又は列方向毎に並列接続された赤外線検出素子を互いに直列に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多素子型の赤外線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱型赤外線検出器には、焦電効果を利用する焦電型や、温度による抵抗変化を利用するボロメータ型、温度差による熱起電力の発生を利用するサーモパイル型などがある。この内、サーモパイル型は複数の熱電対を直列に接続して構成されたもので、比較的単純な制御手段で、検知対象の温度状態を安定して測定できるという利点がある。
【0003】
サーモパイルによる多素子型の赤外線検出器は、サーモパイル素子を多数配置することによって、検知対象の各エリアに対応する各サーモパイル素子の出力から各エリアの温度を知ることができる。また、多素子型の赤外線検出器は、検知対象の各エリアから検出した出力を演算することによって、全エリアの平均温度を知ることができる。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−304655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、検知対象の平均温度を演算によって得るためには外部から演算回路を設ける必要があり、演算回路の演算によって全サーモパイル素子の平均出力を求めると、各サーモパイル素子からの出力を順次取り出すために時間的なズレが生じ、平均の出力を正確に得ることはできない。また、各サーモパイル素子を互いに接続して全サーモパイル素子の出力を同時に得ようとしても、単体のサーモパイル素子の抵抗値と全サーモパイル素子の合成抵抗値に違いがあるために、外来雑音や、接続される容量との相関によるフィルター効果などに差異が生じてしまい、使い勝手がよくない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、各赤外線検出素子の出力を選択的に取り出して検知対象の温度分布を知ることができ、かつ、全赤外線検出素子の出力を同時に取り出して検知対象の正確な平均温度を知ることができる赤外線検出器を提供することを目的とする。また、各赤外線検出素子の出力を選択的に取り出す場合と全赤外線検出素子の出力を同時に取り出す場合とで同じ抵抗値を有する多素子型の赤外線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る赤外線検出器は、行方向および列方向に各々複数配置されてアレイ状に形成される複数の赤外線検出素子と、前記行方向毎の赤外線検出素子の出力を取り出すための行選択スイッチと、前記列方向毎の赤外線検出素子の出力を取り出すための列選択スイッチと、モード選択信号に基づいて前記複数の赤外線検出素子を同時出力させる同時出力モードと前記複数の赤外線検出素子の各々を選択出力させる選択出力モードとの切替えを行うモード切替スイッチとを具備するセンサー部と、前記同時出力モードあるいは前記選択出力モードに基づいて前記行選択スイッチおよび前記列選択スイッチのオンオフを切り替える制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の観点に係る赤外線検出器は、前記複数の赤外線検出素子が、前記行方向毎あるいは列方向毎に並列接続され、前記並列接続された行方向毎あるいは列方向毎の赤外線検出素子が互いに直列接続されることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の観点に係る赤外線検出器は、前記行方向および列方向の赤外線検出素子が各々同数配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、個々の赤外線検出素子の出力を選択的に取り出すことで検知対象の温度分布を知ることができ、また、全赤外線検出素子の出力を同時に取り出すことで検知対象の正確な平均温度を知ることができる多素子型の赤外線検出器を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良な形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る多素子型の赤外線検出器を図面に基づいて説明する。本発明の実施例を図1に示す。
【0011】
本発明に係る図1の多素子型の赤外線検出器は、3行3列のアレイ状に配置されるサーモパイル素子1〜9、列選択スイッチ11〜19、行選択スイッチ21〜23、サーモパイル素子1〜9を同時に出力させる同時出力モードとサーモパイル素子1〜9の各々を選択的に出力させる選択出力モードとをモード切替スイッチに基づいて切り替えるモード切替スイッチ31〜34、モード選択信号が入力されるモード選択信号入力端子30、基準電圧入力端子10、出力端子50、及び制御信号入力端子41〜46から構成されるセンサー部と、行選択スイッチ又は列選択スイッチをオンオフ制御するための制御信号を制御信号入力端子41〜46に出力する制御部(図示せず)と、からなる。
【0012】
列選択スイッチ11〜19の各々の一端は出力端子50に接続され、各々の他端はサーモパイル素子1〜9それぞれの一端に接続される。列選択スイッチ11、14、17は制御信号入力端子44からの制御信号によってオンオフ制御され、列選択スイッチ12、15、18は制御信号入力端子45からの制御信号によってオンオフ制御され、列選択スイッチ13、16、19、は制御信号入力端子46からの制御信号によってオンオフ制御される。
行選択スイッチ21はサーモパイル素子1〜3のそれぞれの他端と基準電圧入力端子10との間に配置され、制御信号入力端子41からの制御信号によってオンオフ制御される。行選択スイッチ22はサーモパイル素子4〜6のそれぞれの他端と基準電圧入力端子10との間に配置され、制御信号入力端子42からの制御信号によってオンオフ制御される。行選択スイッチ23はサーモパイル素子7〜9のそれぞれの他端と基準電圧入力端子10との間に配置され、制御信号入力端子43からの制御信号によってオンオフ制御される。
【0013】
モード切替スイッチ33は列選択スイッチ11〜13の各々の一端とサーモパイル素子4〜6の各々の他端との間に配置され、モード切替スイッチ34は列選択スイッチ14〜16のそれぞれの一端とサーモパイル素子7〜9のそれぞれの他端との間に配置される。モード切替スイッチ33、34はモード選択信号によって制御される。
モード切替スイッチ31は列選択スイッチ11〜13のそれぞれの一端と出力端子50との間に配置され、モード切替スイッチ32は列選択スイッチ14〜16のそれぞれの一端と出力端子50との間に配置される。モード切替スイッチ31,32はインバータを介して入力されるモード選択信号によって制御される。
【0014】
モード選択信号がLレベルの場合は、モード切替スイッチ31、32はオン、モード切替スイッチ33、34はオフし、図2のような接続状態をとる選択出力モードになる。
ここで、例えばサーモパイル素子1の出力を得ようとする場合、制御信号入力端子41、44に入力される制御信号によって、行選択スイッチ21、列選択スイッチ11、14、及び17をオンさせる。他の行選択スイッチ及び列選択スイッチは全てオフであるため、サーモパイル素子1の出力だけを得ることができる。同様に、他のサーモパイル素子2〜9の出力も個々に得ることができ、検知対象の各エリアの温度を知ることが可能である。
【0015】
モード選択信号がHレベルとなり、かつ制御信号入力端子41、及び44〜46に入力される制御信号によって、モード切替スイッチ33、34、行選択スイッチ21、及び列選択スイッチ11〜19がオンすると、図3のような接続状態をとる同時出力モードになる。すなわち、並列接続されたサーモパイル素子1〜3と、並列接続されたサーモパイル素子4〜6と、並列接続されたサーモパイル素子7〜9とが互いに直列に接続され、全サーモパイル素子の出力を同時に出力することができる。
【0016】
サーモパイル素子1〜9の抵抗値が全て同様の値であって、それぞれの抵抗値をRとすると、並列接続されたサーモパイル素子1〜3の合成抵抗値はR/3である。同様に、並列接続されたサーモパイル素子4〜6及びサーモパイル素子7〜9の合成抵抗値もR/3であるから、これらの並列接続されたサーモパイル素子を互いに直列に接続すると、全サーモパイル素子の合成抵抗値はRとなり、個々のサーモパイル素子の抵抗値と同じになる。
また、サーモパイル素子1つの出力をSとすると、並列接続されたサーモパイル素子1〜3、4〜6、7〜9における出力もそれぞれSである。全体の出力は、これら並列接続されたサーモパイル素子群が3つ直列に接続されているので、3Sとなる。
【0017】
このように、本実施例の多素子型の赤外線検出器において、全サーモパイル素子の合成抵抗値と個々のサーモパイル素子の抵抗値とは同じ値をとるために、同時出力モードと選択出力モードとでは、外来雑音や、接続される容量との相関によるフィルター効果に差異がなくなる。また、全サーモパイル素子の出力は単体のサーモパイル素子の出力と比べて3倍の値をとるため、特に同時出力モードにおいては、外来雑音の影響を抑制することができる。
【0018】
尚、本発明を実施するにあたっては、上記実施の形態に限られるものではない。上記実施の形態ではサーモパイル素子を3行3列のアレイ状に配置したが、行、列ともに2素子以上であればよい。このとき、行方向(または列方向)にm個並列接続されたサーモパイル素子を直列にn列(又はn行)接続すると、全体の合成抵抗値はnR/mとなり、全体としての出力はnSとなる。
nとmが同じ数を取るとき、すなわち行方向及び列方向に同数配置される場合、全体の合成抵抗値はRであり、全体としての出力はnSであることから、全サーモパイル素子の合成抵抗値は個々のサーモパイル素子の抵抗値と比べても変わらないが、全サーモパイル素子の出力は単体のサーモパイル素子の出力と比べてn倍になる。すなわち、同時出力モードと選択出力モードとでは、外来雑音や、接続される容量との相関によるフィルター効果に違いはなく、特に同時出力モードにおいては、相対的に外来雑音の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明の実施形態に係る赤外線検出器の回路図である
【図2】 本発明において検知対象の温度分布を検知する形態の回路図である
【図3】 本発明において検知対象の平均出力を検知する形態の回路図である
【符号の説明】
【0020】
1〜9 サーモパイル素子
11〜19 列選択スイッチ
21〜23 行選択スイッチ
30 モード選択信号入力端子
31〜34 モード切替スイッチ
41〜46 制御信号入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向および列方向に各々複数配置されてアレイ状に形成される複数の赤外線検出素子と、前記行方向毎の赤外線検出素子の出力を取り出すための行選択スイッチと、前記列方向毎の赤外線検出素子の出力を取り出すための列選択スイッチと、モード選択信号に基づいて前記複数の赤外線検出素子を同時出力させる同時出力モードと前記複数の赤外線検出素子の各々を選択出力させる選択出力モードとの切替えを行うモード切替スイッチとを具備するセンサー部と、前記同時出力モードあるいは前記選択出力モードに基づいて前記行選択スイッチおよび前記列選択スイッチのオンオフを切り替える制御部と、を有することを特徴とする赤外線検出器。
【請求項2】
前記複数の赤外線検出素子は、前記行方向毎あるいは列方向毎に並列接続され、前記並列接続された行方向毎あるいは列方向毎の赤外線検出素子が互いに直列接続されることを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出器。
【請求項3】
前記行方向および列方向の赤外線検出素子が各々同数配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の赤外線検出器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−76373(P2008−76373A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286953(P2006−286953)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】