説明

赤外線発生材を混入した網状体

【課題】安価に製造できて、簡単にあらゆる場所に設置可能であり、落雪の防止や土壌の凍結防止などに用いることができる網状体を提供する。
【解決手段】赤外線発生材を含む混合材からなる網状体、該網状体を用いた土壌凍結防止具および落雪防止具とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線発生材を混入した網状体に関する。
【背景技術】
【0002】
降雪地帯、特に豪雪地帯では、屋根やトンネル、カルバートなどの上に積もった大量の雪が雪塊を形成し、これを放置することによって様々な問題を起こしていた。例えば、屋根の上に形成された雪塊は、太陽光や屋内からの熱によって下面が融かされ、突如滑落することがあった。その際、落下した雪塊によって物損事故や人身事故を起こすことがあった。また、屋根の上に形成された雪塊によって危険な雪庇やつららが形成されることや、雪の巻き込みによって直下既存壁を破壊することもあった。さらに、融水が軒先を伝って、すが漏れを発生させることもあった。
【0003】
上記のように、屋根などの上に形成された雪塊を放置すると様々な問題を生じる虞があるため、従来から数多くの対策が提案されている。例えば、特許文献1には、屋根上の雪が滑落するのを防止するとともに、融雪水の滞留を防いで融雪を促進することができる、屋根用落雪防止具が開示されている。また、特許文献2には、小孔を複数有する板状体によって屋根上の雪の落下を防止するとともに、該板状体と屋根との間に形成した空洞に外気を導入して融雪することができる、屋根用雪止め融雪具が開示されている。さらに、特許文献3には、既存の屋根に設置されるロープ状のヒータと、該ヒータを屋根に固定する固定部材とを備えた融雪装置が開示されている。
【0004】
また、冬季には、特に寒冷地において土壌の凍結が問題となることがあった。そのため、これまでに土壌の凍結を防止する様々な手段が提案されている。例えば、特許文献4には、土壌の酸性化や鋼製品の錆発生促進等の二次的公害による環境への影響を低減できる融雪剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−270222号公報
【特許文献2】特開2002−30769号公報
【特許文献3】特開2004−176489号公報
【特許文献4】特開2005−344056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている屋根用落雪防止具は、設置が容易ではないという問題や、融雪水の滞留を防ぐだけでは融雪を促す効果が十分ではないなどの問題があった。上記特許文献2に開示されている屋根用雪止め融雪具は、瓦屋根を対象としており、その他の場所に適用することが困難であるなどの問題があった。上記特許文献3に開示されている融雪装置のような加熱装置を用いる場合は、設置費用が高くなる、取り付け作業やメンテナンス作業が煩雑になるなどの問題があった。上記特許文献4に開示されているような融雪剤は、効果が恒久的でなく、度々散布しなければ効果が得られないため、手間がかかるなどの問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、安価に製造できて、簡単にあらゆる場所に設置可能であり、落雪の防止や土壌の凍結防止などに用いることができるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図面の形態に限定されるものではない。
【0009】
第1の本発明は、赤外線発生材を含む混合材からなる網状体(10、50)を提供することによって、上記課題を解決する。
【0010】
本発明において、「赤外線発生材」とは、熱伝導と赤外線の放射率が高い材料を意味する。赤外線発生材は、熱を与えられたとき赤外線を放射する性質がある。本発明に用いることができる赤外線発生材の具体例としては、炭素の微粉体や水酸化アルミニウムとシリカとからなる微粉体など、公知のものを特に限定することなく用いることができる。
【0011】
上記第1の本発明の網状体(10、50)において、網状体を構成する混合材は、合成樹脂を主原料とすることが好ましい。本発明において「主原料」とは、混合材を構成する材料のうち、赤外線発生材以外で最も多くを占める材料を意味する。かかる形態とすることによって、網状体の凍結を防止するとともに、軽量化を図ることができる。
【0012】
第2の本発明は、地盤に埋設された上記第1の本発明の網状体(10、50)を備える土壌凍結防止具を提供することによって、上記課題を解決する。
【0013】
第3の本発明は、上記第1の本発明の網状体(10、50)と、該網状体を建築物(40)の屋外側上面(42、70)に固定する固定部材と、を備え、網状体は、建築物の屋外側上面に固定された姿勢において、建築物の屋外側上面の端(42a、70a)側または谷側に前端(10a、50a)を有するとともに、該前端に対向する側に後端(10b、50b)を有し、後端側から前端側に向かうにつれて建築物の屋外側上面との距離が開くように傾斜している傾斜部(13、53)を有する、落雪防止具(100、200)を提供することによって、上記課題を解決する。
【0014】
本発明において、「建築物の屋外側上面」とは、建物の屋根の上面、庇などの張り出しの上面、トンネルやカルバートの上面など、雪が積もると想定される場所を意味する。さらに、「建築物の屋外側上面に固定する」とは、網状体を建築物の屋外側上面に直接固定することの他、後述する枠体などを介して間接的に固定することも含めた意味である。さらに、「建築物の屋外側上面の谷」とは、建築物の屋外側上面において、二つ以上の傾斜面の流れが合う部分を意味する。
【0015】
上記第3の本発明の落雪防止具(100)において、網状体(10)が傾斜部(13)の前端側に連設された導水部(14)を有しており、長手方向に垂直な方向の断面視において、導水部は、弧を描きつつ傾斜部の前端側から建築物の屋外側上面(42)に向けて形成されていることが好ましい。かかる形態とすることによって、網状体上の雪が融けてできる融水を、導水部に沿わせて効率良く排水することができる。
【0016】
上記第3の本発明の落雪防止具(200)を、建築物の屋外側上面に山部(71)と谷部(72)とが交互に形成されている折板屋根に設置する場合に、網状体(50)の傾斜部(53)が、谷部の長手方向を遮蔽するように設置され、山部と面一になるように谷部を覆う被覆部(54)が設けられ、該被覆部が傾斜部の前端側から建築物の屋外側上面(70)の端(70a)側に向かって延設されることが好ましい。かかる形態とすることによって、網状体を折板屋根の形状に沿って配置することができる。
【0017】
上記第3の本発明の落雪防止具(100、200)において、網状体(10、50)の設置時の形状を維持することができる枠体(20、60)を備えることが好ましい。かかる形態とすることによって、落雪防止具に十分な強度が備えられ、積雪の重みによる変形や破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の網状体は赤外線発生材を含むため、外部から熱を与えられることで赤外線を放射することができる。したがって、周囲から熱を得られる環境に本発明の網状体を設置することによって、その周囲の凍結防止や融雪などに効果を発揮することができる。例えば、本発明の網状体を地盤に埋設すれば、網状体の周囲の土から赤外線発生材が熱を得て赤外線を放射し、土壌の凍結を防止することができる。また、建築物、トンネルなどの屋外側上面に設置すれば、建築物内、トンネル内などの熱が屋根などを介して網状体内の赤外線発生材に伝達され、網状体から赤外線が放射される。そのため、網状体付近での融雪が促進される。また、網状体を建築物の屋外側上面に対して傾斜させて設置したり、丸めて形成して設置したりすることによって、網状体と建築物の屋外側上面との間、もしくは網状体の間に空洞部が形成される。空洞部の上に雪が積もれば、空洞部が雪洞のようになり、保温効果が期待される。そして、その空洞部内の熱が網状体内の赤外線発生材に伝達されることによっても、網状体から赤外線が放射され、網状体付近での融雪が促進される。このように、本発明の網状体は構成が簡単であり、安価に作製できて、あらゆる場所に簡単に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の落雪防止具を概略的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の落雪防止具に備えられる枠体を概略的に示す斜視図である。(b)は、本発明の網状体を概略的に示す平面図である。
【図3】図1に示した落雪防止具の設置した姿勢での鉛直断面を概略的に示す図である。
【図4】本発明の落雪防止具の設置した姿勢での鉛直断面を概略的に示す図である。
【図5】本発明の落雪防止具の設置した姿勢を概略的に示す斜視図である。
【図6】図5に示した落雪防止具に注目して概略的に示した斜視図である。
【図7】図6に示した落雪防止具の分解斜視図である。
【図8】図5に示したVIII−VIIIでの鉛直断面を概略的に示す図である。
【図9】(a)は屋外に設置された支柱を概略的に示す図である。(b)は(a)に示した支柱に本発明の網状体を取り付けた場合の鉛直断面を概略的に示す図である。
【図10】(a)は屋外に設置された箱形標識を概略的に示す斜視図である。(b)は(a)に示した箱型標識に本発明の網状体を取り付けた場合の鉛直断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0021】
<網状体>
本発明の網状体の外形および網目の形状は特に限定されず、用途に応じて適宜設計することができる。なお、本発明の網状体は、網目を備えていることによって、シート状や板状のものに比べて比表面積が大きくなり、外部から熱を得ることができる部分の面積が大きくなるとともに、赤外線を放射できる分部の面積も大きくなる。
【0022】
本発明の網状体を構成する材料は、少なくとも赤外線発生材を含んだ混合材であり、使用時の環境に耐え得るものであれば特に限定されず、金属に赤外線発生材を混合させた混合材でもよく、合成樹脂に赤外線発生材を混合させた混合材でもよい。ただし、凍結の抑制、軽量化を図るなどの観点からは、合成樹脂を主原料として、赤外線発生材を混合させた混合材を用いることが好ましい。
【0023】
本発明に用いることができる赤外線発生材は、熱伝導と赤外線の放射率が高い材料であって、熱を与えられたとき赤外線を放射する性質があるものであれば特に限定されない。本発明に用いることができる赤外線発生材の具体例としては、炭素の微粉体や水酸化アルミニウムとシリカとからなる微粉体など、公知のものを挙げることができる。
【0024】
合成樹脂に赤外線発生材を混合させた混合材を用いる場合、混合材中の赤外線発生材の含有量は10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。混合材中の赤外線発生材の含有量が多すぎれば、赤外線発生材を混合させた網状体の曲げ剛性及び形状保持性能などが低下する。逆に少なすぎれば、赤外線発生材を混入させることによる効果が十分でなくなる。また、赤外線発生材の粒径は、150μm以下が好ましく、50μm以下であることがより好ましい。赤外線発生材の粒径が大きすぎる場合、合成樹脂と赤外線発生材がなじまず、網状体を形成することが困難になる。
【0025】
本発明に用いることができる合成樹脂の具体例としては、ビニル系の塩化ビニルや酢酸ビニル、オレフィン系のポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂、これら合成樹脂の混合体、またはこれら合成樹脂とエチレン−酢酸ビニルなどの共重合体の熱可塑性樹脂などを挙げることができる。ただし、設置環境に応じて耐候剤や耐熱剤などを添加したポリエチレンなどのオレフィン系樹脂が、経済性、強度、無公害の面から好ましい。
【0026】
本発明の網状体の作製方法は特に限定されず、合成樹脂に赤外線発生材を混合させた混合材を用いる場合は、例えば、溶融押し出しによって作製することができる。
【0027】
本発明の網状体は赤外線発生材を含むため、外部から熱を与えられることで赤外線を放射することができる。したがって、周囲から熱を得られる環境に本発明の網状体を設置することによって、その周囲の凍結防止や融雪などに効果を発揮することができる。また、本発明の網状体は構成が簡単であり、安価に作製できて、あらゆる場所に簡単に設置することができる。本発明の網状体は、例えば、以下に説明するように、土壌凍結防止具や、落雪防止具に好適に用いることができる。
【0028】
<土壌凍結防止具>
本発明の土壌凍結防止具は、上記した本発明の網状体を備えている。上記したように、本発明の網状体は赤外線発生材を含んでおり、外部から熱を得ることで赤外線を放射することができる。したがって、本発明の網状体を地盤に埋設すれば、網状体に含まれる赤外線発生材が周囲の土から熱を得て赤外線を放射することができる。そのため、寒冷地など、土壌が凍結する虞がある場所に本発明の網状体を埋設すれば、土壌の凍結を防止することができる。
【0029】
<落雪防止具>
1.第一実施形態
図面を参照しつつ、第一実施形態にかかる本発明の落雪防止具100について以下に説明する。
【0030】
図1は、本発明の落雪防止具100を概略的に示す斜視図である。図1に示すように、落雪防止具100は、本発明の網状体10と枠体20とを備えており、網状体10は、枠体20に沿うようにして設置される。まず、網状体10および枠体20について説明した後、落雪防止具100について説明する。
【0031】
図2(a)は、落雪防止具100に備えられる枠体20を概略的に示す斜視図であり、図2(b)は、本発明の網状体10を概略的に示す平面図である。
【0032】
(枠体20)
図2(a)に示すように、枠体20は、環状に形成された環部21を複数有しており、それら環部21、21、…の端部21a、21a、…のそれぞれから環部21が備えられる側とは反対側に、平板22、22、…が延在している。環部21と平板22とは、夫々独立して作製した後に溶接などによって連結しても良いが、1本の平板を曲げることによって一体のものとして作製する方が、容易に作製できるため好ましい。環部21が備えられていることによって、後に説明する空洞部30や網状体10の傾斜部13および導水部14(図3参照)を容易に形成することができる。環部21の大きさおよび形状は、空洞部30の大きさ、傾斜部13の角度および導水部14の形状などに応じて適宜決定することができる。
【0033】
枠体20には、さらに、複数の平板22、22、…の端部22a、22a、…を渡すように連結された平板23、複数の端部21a、21a、…を渡すように連結された平板24、および、複数の環部21、21、…を渡すように連結された平板25、26を有する。端部22a、22a、…と平板23との連結方法、端部21a、21a、…と平板24との連結方法、環部21、21、…と平板25との連結方法、および、環部21、21、…と平板26との連結方法は特に限定されず、溶接など公知の方法によって連結することができる。
【0034】
枠体20を作製する方法は特に限定されず、枠体20を構成する材料は、積雪の重みに耐え得る強度を枠体20に備えさせることができるものであれば特に限定されない。枠体20を構成する材料の具体例としては、一般鋼、ステンレス鋼、硬質プラスチック、樹脂などを挙げることができる。ただし、耐食性などを考慮すれば、ステンレス鋼が好ましい。
【0035】
(網状体10)
図2(b)に示すように、網状体10は外形が略矩形であり、複数の網目を有する。落雪防止具100を屋根などに設置する際、網状体10は、枠体20の環部21、21、…の外側に沿うようにして配置して(図3参照)、枠体20に固定される。網状体10を枠体20に固定する方法は特に限定されない。例えば、網状体10で環部21、21、…を包むようにして、平板24より平板23側において、網状体10の端部11および端部12を連結することによって、網状体10で環部21、21、…を包んだ姿勢で固定することができる。また、網状体10で環部21、21、…を包むようにして、網状体10の端部11および端部12をそれぞれ平板24に連結させることによっても、網状体10で環部21、21、…を包んだ姿勢で固定することができる。このとき、端部11および端部12の連結方法や、端部11および端部12をそれぞれ平板24に連結させる方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0036】
網状体10の網目の形状は特に限定されず、矩形、丸形、亀甲形などのいずれでも良い。網状体10上の雪を網目に引っ掛けて雪の移動を抑制するという観点や屋根面42と網状体10との間の空洞部30(図3参照)を形成しやすくするという観点からは、網目の大きさは、例えば、4cm〜25cmの範囲となるように設計することが好ましい。
【0037】
網状体10を構成する材料や網状体10の製造方法については、上記した本発明の網状体と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
(落雪防止具100)
図3は、図1に示した落雪防止具100を設置した姿勢での鉛直断面を概略的に示す図である。図3に示すように、落雪防止具100は、建築物40の屋根41の端部に固定して用いられる。その際、枠体20は図示しない固定部材によって屋根41の上面(以下、「屋根面」という。)42に固定される。枠体20を屋根面42固定する方法は特に限定されない。例えば、屋根面に設けたフック(不図示)に平板23を引っ掛けるなどして設置することができる。
【0039】
図3に示すように、落雪防止具100が屋根面42に設置された際、網状体10は、屋根面42の端42a側に前端10aを有するとともに、前端10aに対向する側に後端10bを有し、後端10b側から前端側10aに向かうにつれて屋根面42との距離が開くように傾斜している傾斜部13を有する。屋根面42に対する傾斜部13の傾斜角は、屋根面42上に積もった雪が滑り落ちることを抑制できる角度であれば、特に限定されない。このように、網状体10の少なくとも一部が屋根面42に対して角度を有するように落雪防止具100を設置することによって、網状体10と屋根面42との間に空洞部30が形成される。なお、傾斜部13および空洞部30は、上記したように網状体10を枠体20の環部21、21、…の外側に沿って配置することによって容易に形成できる。
【0040】
傾斜部13が備えられていることによって、屋根面42上に図3に一点鎖線で示すような積雪があっても、雪が傾斜部13に支えられるとともに傾斜部13の網目に絡んで滑落が抑制され、落雪を防止することができる。また、空洞部30が備えられていることによって、傾斜部13上に溜まった雪を空洞部30の空気層によって融かし、軒先の積雪量を減らすことができる。そのため、雪庇の形成を抑制して落雪を防止することができる。また、降雪時においては、網状体10の網目を通して雪が空洞部30に取り込まれ、素早く融かされる。このように、空洞部30の存在によって常に融雪現象が生じるので、融水の流下が増大し、つらら、雪庇、すが漏れの発生を防止することができる。
【0041】
さらに、網状体10には赤外線発生材が含まれているため、建築物40内の熱が屋根41などを介して網状体10内の赤外線発生材に伝達され、網状体10から赤外線が放射される。そのため、網状体10付近での融雪がさらに促進される。また、空洞部30上に雪が積もれば、空洞部30が雪洞のようになり、保温効果が期待される。そして、その空洞部30内の熱が網状体10内の赤外線発生材に伝達されることによっても、網状体10から赤外線が放射され、網状体10付近での融雪がさらに促進される。
【0042】
さらに、網状体10は、傾斜部13の前端10a側に連設された導水部14を有する。導水部14は、落雪防止具100が屋根面42に固定された姿勢での長手方向に垂直な方向の断面視において、傾斜部13の前端10a側に連設され、弧を描くようにして屋根面42に近付くように形成された部分である。網状体10に導水部14が備えられていることによって、網状体10上で雪が融かされてできた融水を導水部14に伝わらせて図3に示した矢印の方向に流すことができ、雨樋43などに効率よく排水することができる。
【0043】
これまでに説明したように、落雪防止具100は構造が簡単なため故障が少なく、安価に製造することが可能であり、脱着作業が容易であるといった特徴を有する。
【0044】
これまでの落雪防止具100の説明では、網状体10を折り曲げて筒状にして設置した形態を例示して説明したが、本発明はかかる形態に限定されず、少なくとも、建築物の屋外側上面に固定された姿勢において、網状体が、後端側から前端側に向かうにつれて建築物の屋外側上面との距離が開くように傾斜している傾斜部を有していれば良い。したがって、図4に示す落雪防止具101のように、網状体10が環部21の一部を覆うようにして、網状体10と枠体20とを適当な方法で固定された形態であっても良い。図4は、本発明の落雪防止具101の設置した姿勢での鉛直断面を概略的に示す図であり、図4において、図3と同様の構成のものには同符号を付している。落雪防止具101も落雪防止具100と同様に、傾斜部13、導水部14、空洞部30を有しており、落雪防止具100と同様の効果を奏することができる。
【0045】
また、図3および図4では、屋根面42の端部に落雪防止具100または落雪防止具101が設置される形態について例示しており、屋根面42の端42a側に網状体10の前端10aが向けられている形態について説明したが、落雪防止具100または落雪防止具101は、建築物の屋外側上面において二つ以上の傾斜面の流れが合う谷にも設置することができる。落雪防止具100または落雪防止具101を屋根面の谷に設置する場合には、該谷側に網状体10の前端10aが向けられるように設置する。屋根面の谷には雪解け水が多く集まるため、大きな氷柱ができやすい。落雪防止具100または落雪防止具101を屋根面の谷に設置することによって、該谷付近の融雪が促進されるとともに融水が効率良く排水され、氷柱の形成を抑制することができる。
【0046】
2.第二実施形態
図面を参照しつつ、第二実施形態にかかる本発明の落雪防止具200について以下に説明する。
【0047】
図5は、落雪防止具200の設置した姿勢を概略的に示す斜視図である。図5に示すように、落雪防止具200は、屋根面70が山部71と谷部72とを交互に設けた形態である折板屋根に適用することができ、屋根面70の先端部に設置される。
【0048】
図6は、図5に示した落雪防止具200に注目して概略的に示す斜視図である。図7は、図6に示した落雪防止具200の分解斜視図である。図8は、図5に示したVIII−VIIIでの鉛直断面を概略的に示す図である。図6〜図8に示すように、落雪防止具200は、本発明の網状体50と枠体60とを備えており、網状体50は、枠体60に沿うようにして設置される。まず、網状体50および枠体60について説明した後、落雪防止具200について説明する。
【0049】
(枠体60)
枠体60は、屋根面70の山部71と面一になるように谷部72を覆う平面枠部61と、落雪防止具200を屋根面70に設置した際に屋根面70の中央側になる平面枠部61の端部に連設され、谷部72の長手方向を遮蔽するように谷部72内に挿入される傾斜枠部62と、を有している。
【0050】
平面枠部61は、谷部72に長手方向に対して垂直であり、屋根面72に平行である2本の平板61a、61bと、その中央部で平板61a、61bを連結する1本の平板61cによって形成されている。また、傾斜枠部62は、平板61bと、平板61bに対して平行に配置された平板62aと、平板61bおよび平板62aを連結する平板62b、62cによって、谷部72に沿うような外形を有する台形状の平面を形成しており、中央部には補強用として、平板61bおよび平板62aを渡すように連結された平板62eと、平板62bおよび平板62cを渡すように連結された平板62dとが備えられている。
【0051】
これらの平板は夫々独立して作製した後に溶接などによって連結しても良く、1本の平板を曲げることによって複数の平板の働きを兼ねるようにしても良く、複数の平板が連続した形態を作製しても良い。
【0052】
さらに、枠体60には、平面枠部61の前端60a側の平板61aと、傾斜枠部62の後端60b側の平板62aとを連結する2本の補強部材63、64が備えられていることが好ましい。補強部材63、64は上面視においてV字状になっており、枠体60は側面視において三角形状のフレームを構成している(図8参照)。かかる形態とすることによって、枠体60に十分な強度を備えさせることが可能となり、積雪の重みや滑り圧力による変形や破損を防止することができるとともに、保管中や運搬時においても枠体60の変形や破損を防止することができる。
【0053】
なお、枠体60の形状は、十分は強度を発揮できれば、図示したものに限定されない。
【0054】
枠体60を構成する材料としては、積雪の重みに耐え得る強度を枠体60に備えさせることができるものであれば特に限定されず、一般鋼、ステンレス鋼、硬質プラスチック、樹脂などを挙げることができる。ただし、耐食性などを考慮すれば、ステンレス鋼が好ましい。
【0055】
(網状体50)
落雪防止具200を屋根面70に設置する際、網状体50は、枠体60に沿うようにして設置される。また、網状体50は、傾斜枠部62に沿って配置された部分の先端から谷部72に沿って屋根面70の上に配置される延長網部51を有している。延長網部51は、幅が谷部72の底の幅と同程度であることが好ましく、長さは10cm〜20cm程度とすることができる。この延長網部51に雪解け水が絡むことで雪ずれの加速を抑えることができる。また、排水を誘導して氷塊が形成されることを抑制するので、すが漏れの発生を防止し、さらには積雪の浮力の発生も防止することができる。
【0056】
網状体50の網目の形状および大きさ、網状体50を構成する材料および製造方法、枠体60との接合方法などは、上記した網状体10と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
(落雪防止具200)
落雪防止具200が屋根面70に設置される際、枠体60は図示しない固定部材によって屋根面70に固定される。このとき、枠体60は、上面視において前端60aが屋根面70の先端70aに一致し、後端60bは谷部72の底に接するように設置されることが好ましい。枠体60を屋根面70に設置する方法は特に限定されないが、平面枠部61の平板61a、61bの長さを隣接する山部71、71間の幅(谷部72の幅)より長くして、ネジやビスなどの締結部材(不図示)によって山部71、71に締結固定することができる。このような方法で固定すれば、枠体60の取り付けや取り外しが容易になる。一方、落雪防止具200が屋根面70に設置される際に、網状体50は、図示しない固定部材によって枠体60および/または屋根面70に固定される。網状体50を固定する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0058】
図5に示すように、落雪防止具200が屋根面70に設置された際、網状体50は、屋根面70の端70a側に前端50aを有するとともに、前端50aに対向する側に後端50bを有し、後端50b側から前端50a側に向かうにつれて屋根面70(谷部72の底)との距離が開くように傾斜している傾斜部53を有する。屋根面70(谷部72の底)に対する傾斜部53の傾斜角は、谷部72に積もった雪が滑り落ちることを抑制できる角度であれば、特に限定されない。また、山部71と面一になるように谷部72を覆う被覆部54が、傾斜部53の前端50a側から屋根面70の端70a側に向かって延設される。このように、網状体50が傾斜部53と被覆部54を有することによって、網状体50と屋根面70(谷部72の底)との間に空洞部80が形成される(図8参照)。なお、傾斜部53、被覆部54および空洞部80は、上記した枠体60上に網状体50を沿わせることによって容易に形成できる。
【0059】
傾斜部53が備えられていることによって、屋根面70上に図8に一点鎖線で示すような積雪があっても、雪が傾斜部53に支えられるとともに傾斜部53の網目に絡んで滑落が抑制され、落雪を防止することができる。また、空洞部80が備えられていることによって、傾斜部53および被覆部54上に溜まった雪を空洞部80の空気層によって融かし、軒先の積雪量を減らすことができる。そのため、雪庇の形成を抑制して落雪を防止することができる。また、降雪時においては、網状体50の網目を通して雪が空洞部80に取り込まれ、素早く融かされる。このように、空洞部80の存在によって常に融雪現象が生じるので、融水の流下が増大し、つらら、雪庇、すが漏れの発生を防止することができる。
【0060】
さらに、網状体50には赤外線発生材が含まれているため、建築物内の熱が屋根面70などを介して網状体50内の赤外線発生材に伝達され、網状体50から赤外線が放射される。そのため、網状体50付近での融雪がさらに促進される。また、空洞部80上に雪が積もれば、空洞部80が雪洞のようになり、保温効果が期待される。そして、その空洞部80内の熱が網状体50内の赤外線発生材に伝達されることによっても、網状体50から赤外線が放射され、網状体50付近での融雪がさらに促進される。
【0061】
これまでに説明したように、落雪防止具200は構造が簡単なため故障が少なく、安価に製造することが可能であり、脱着作業が容易であるといった特徴を有する。
【0062】
なお、図5では、図が煩雑になるのを防ぐため、1つの谷部72に1つの落雪防止具200が設置された形態を図示しているが、実際には、全ての谷部72に落雪防止具200が設置されていることが好ましい。また、全ての谷部72に落雪防止具200を設置する場合、山部71上にも網状体50および/または枠体60の一部が設置されるようにして、複数の落雪防止具200を一連のものとすることもできる。
【0063】
これまでの本発明の落雪防止具の説明では、建築物の屋根やガソリンスタンドなどで用いられている折板屋根に適用する場合について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。具体的には、庇などの張り出しの上、トンネルやカルバートの上など、積雪が予想されるあらゆる場所に適用可能である。
【0064】
<本発明の網状体のその他の利用形態>
これまでの本発明の説明では、本発明の網状体を土壌凍結防止具と落雪防止具に適用する場合について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。本発明の網状体は、外部から熱を得られる環境に設置されることによって赤外線を放射し、周囲を暖めることができる。したがって、本発明の網状体は、外部から熱を得られる形態で設置されさえすれば、いかなる場所であっても保温、凍結防止、融雪などの効果を発揮することができる。
【0065】
本発明の網状体の利用形態としては、例えば、舗装路下に埋設することが考えられる。舗装路下に本発明の網状体を埋設することによって、網状体に含まれる赤外線発生材が周囲の土から熱を得て、保温効果を発揮することができる。
【0066】
また、屋外に設置された支柱などに設置することもできる。図9(a)に示すように、屋外に設置された支柱90から支柱91を介して標識などが設置されている場合、支柱91の上に雪が積もり、つらら92が形成される虞がある。このような場合に、支柱91に本発明の網状体を適当な形態で設置することによって、支柱91上に積もった雪の融雪を促進し、つららの形成を抑制することができる。具体的な設置形態を、図9(b)を用いて説明する。図9(b)は、支柱91に本発明の網状体94を設置した場合の、鉛直断面を概略的に示す図である。図9(b)に示すように、スペーサー93、93、…を介して支柱91に網状体94を設置することによって、支柱91と網状体94との間に空洞部95、95、…が形成される。網状体94は、この空洞部95、95、…内の空気から熱を得ることによって、赤外線を放射し、支柱91の上に積もった雪を融かすことができる。
【0067】
また、屋外に設置された箱形標識の上面に設置することもできる。図10(a)に箱形標識96の斜視図を示す。図10(a)に示すように、屋外に設置された従来の箱形標識96は、その上に雪が積もるのを防ぐために、三角部97を設けていることがあった。しかしながら、このような対策を施しても雪は積もっていた。このような場合に、三角部97に替えて本発明の網状体を適当な形態で設置することによって、箱形標識96上に積もった雪の融雪を促進することができる。具体的な設置形態を、図10(b)を用いて説明する。図10(b)は、箱型標識96に本発明の網状体98を取り付けた場合の鉛直断面を概略的に示す図である。図10(b)に示すように、箱形標識96と網状体98との間に空洞部99が形成されるように、箱形標識96上に網状体98を設置することによって、網状体98は空洞部99内の空気から熱を得て赤外線を放射し、箱形標識96の上に積もった雪を融かすことができる。箱形標識96と網状体98との間に空洞部99を形成する方法は特に限定されず、例えば、網状体98の形状を維持できるような枠体を別途、箱形標識96上に設置することなどが考えられる。
【0068】
以上、現時点において最も実践的で好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う網状体、土壌凍結防止具、および落雪防止具もまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0069】
10、50 網状体
10a、50a 網状体の前端
10b、50b 網状体の後端
13、53 傾斜部
14 導水部
20、60 枠体
40 建築物
42、70 建築物の屋外側上面(屋根面)
42a、70a 建築物の屋外側上面の端
71 山部
72 谷部
54 被覆部
100、200 落雪防止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線発生材を含む混合材からなる網状体。
【請求項2】
前記混合材が合成樹脂を主原料とする、請求項1に記載の網状体。
【請求項3】
地盤に埋設された請求項1または2に記載の網状体を備える、土壌凍結防止具。
【請求項4】
請求項1または2に記載の網状体と、該網状体を建築物の屋外側上面に固定する固定部材と、を備え、
前記網状体は、前記建築物の屋外側上面に固定された姿勢において、前記建築物の屋外側上面の端側または谷側に前端を有するとともに、該前端に対向する側に後端を有し、前記後端側から前記前端側に向かうにつれて前記建築物の屋外側上面との距離が開くように傾斜している傾斜部を有する、落雪防止具。
【請求項5】
前記網状体が前記傾斜部の前記前端側に連設された導水部を有しており、
長手方向に垂直な方向の断面視において、前記導水部は、弧を描きつつ前記傾斜部の前記前端側から前記建築物の屋外側上面に向けて形成されている、請求項4に記載の落雪防止具。
【請求項6】
前記建築物の屋外側上面に山部と谷部とが交互に形成されている折板屋根に設置する場合に、
前記網状体の前記傾斜部が、前記谷部の長手方向を遮蔽するように設置され、
前記山部と面一になるように前記谷部を覆う被覆部が設けられ、該被覆部は前記傾斜部の前記前端側から前記建築物の屋外側上面の端側に向かって延設される、請求項4に記載の落雪防止具。
【請求項7】
前記網状体の設置時の形状を維持することができる枠体を備える、請求項4〜6のいずれかに記載の落雪防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−281052(P2010−281052A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133331(P2009−133331)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(391007460)中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社 (47)
【出願人】(509145864)沢田建設株式会社 (2)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】