説明

赤外線発生装置および乾燥機

【課題】被乾燥物の品質を損なうことなく、ランニングコストを下げることの可能な赤外線発生装置およびそれを備えた乾燥機を提供する。
【解決手段】乾燥機1は、筐体10内に、被乾燥物を収容する回転ドラム20を備えている。乾燥機1は、回転ドラム20内の被乾燥物を加熱するものとして、熱交換器40の他に、赤外線発生装置25を備えている。赤外線発生装置25は、回転ドラム20内のフィン24の上面に設置されている(図1参照)。赤外線発生装置25は、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生する複数の粒体37が母材38に分散された第1シート状複合体31および第2シート状複合体32と、複数の粒体37を加熱する発熱体36とを備えている。発熱体36は、第1シート状複合体31と第2シート状複合体32との間に挟まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生する赤外線発生装置およびそれを備えた乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯工場や施設などで使用される乾燥機は、熱交換器で加熱した外気を、被乾燥物を収容する収容室に送り込むことで、収容室内の被乾燥物を乾燥させる。熱交換器は、一般に、重油やガスなどの燃料を燃焼させて得られた蒸気の熱で外気を加熱して高温の熱風を作るようになっている。そのため、熱交換率および乾燥効率が極めて悪く、ランニングコストが極めて高いという問題があった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載されているように、遠赤外線ヒータをさらに設け、遠赤外線を被乾燥物に照射することによって、熱風と遠赤外線の2つの作用により被乾燥物を効率良く乾燥させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−125258号公報
【特許文献2】韓国特許出願公開第2001−0089102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法では、遠赤外線を発生するヒータが回転ドラムの外周面に配置されており、そのヒータから発せられた遠赤外線のほとんどが回転ドラムの外周面で反射されてしまい、回転ドラムの内部に効率良く到達しないという問題があった。
【0006】
そこで、例えば、特許文献2に記載されているように、遠赤外線を発生するヒータを回転ドラムの回転軸上に設けることが考えられる。しかし、そのようにした場合には、被乾燥物がヒータに絡みつき、傷つくという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、被乾燥物の品質を損なうことなく、ランニングコストを下げることの可能な赤外線発生装置およびそれを備えた乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による赤外線発生装置は、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生する複数の粒体が母材に分散された複合体と、複数の粒体を加熱する発熱体とを備えたものである。
【0009】
本発明による乾燥機は、被乾燥物を収容可能な空間を有し、かつ被乾燥物を空間内に投入するか、または空間内から取り出す際に使用する開口を有する収容室を備えている。この乾燥機は、収容室の開口に蓋をする蓋体と、収容室内に所定の波長帯の電磁波を照射することにより被乾燥物を乾燥させる赤外線発生装置とをさらに備えている。この乾燥機に備えられた赤外線発生装置は、上記の赤外線発生装置と同様の構成要素を備えており、収容室の内面および蓋体の内面のうち少なくとも一方に設置されている。
【0010】
本発明による赤外線発生装置および乾燥機では、複合体に対して熱が加えられることにより、複合体内の複数の粒体から、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波が発生する。粒体から発せられた電磁波が被乾燥物に含まれる水に吸収されると、水の分子間振動による自己発熱により水が気化し水蒸気となる。その結果、被乾燥物が乾燥する。さらに、被乾燥物から放出された水蒸気は、粒体から発せられた電磁波を吸収し、分子に分解される。そのため、水蒸気が被乾燥物を湿らせる度合いを低減することができる。
【0011】
ここで、赤外線による被乾燥物の乾燥では、重油やガスなどの燃料を燃焼させて得られた蒸気の熱で外気を加熱し、加熱された外気によって被乾燥物を加熱し乾燥させるよりも、乾燥効率が格段に優れている。また、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生する複数の粒体が複合体内に分散されているので、仮に、複合体が損傷したときに、複数の粒体が収容室内にばら撒かれ、被乾燥物を傷つける虞がない。
【0012】
ところで、本発明において、複合体は、複数の粒体を母材に練り込むことにより形成されたものであってもよい。複数の粒体は、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を高出力で放射することの可能な材料で構成されていることが好ましく、例えば、珪藻土、チタン、アルミナ、または火山灰からなっていることが好ましい。母材は、自由に成型加工の可能な材料で構成されていることが好ましく、例えば、シリコーンからなっていることが好ましい。また、母材が、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生する材料からなっていることが好ましく、例えば、シリコーンからなっていることが好ましい。
【0013】
また、本発明において、複合体が、第1シート状複合体および第2シート状複合体からなっていてもよい。この場合に、第1シート状複合体および第2シート状複合体で、発熱体を挟み込むようにしてもよい。さらに、この場合に、第1シート状複合体の表面に、当該第1シート状複合体の表面よりも摩擦係数の小さな保護体を備えたり、第2シート状複合体の表面に、電磁波を第1シート状複合体側に反射する反射体を備えたりしていることが好ましい。さらに、本発明において、第1シート状複合体、第2シート状複合体、発熱体、保護体および反射体がともに、柔軟性を備えていることが好ましい。その場合には、赤外線発生装置を平坦面だけでなく曲面などのあらゆる面に設置することが容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による赤外線発生装置および乾燥機によれば、複数の粒体が母材に分散された複合体に対して熱を加えることにより、複合体内の複数の粒体から、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波が発生するようにしたので、乾燥効率が格段に優れ、しかも被乾燥物を傷つける虞がない。従って、被乾燥物の品質を損なうことなく、ランニングコストを下げることができる。
【0015】
また、本発明において、複合体を、第1シート状複合体および第2シート状複合体で構成し、これらで発熱体を挟み込むようにした場合には、発熱体から発せられた熱がシート状複合体全体に効率良く伝わる。これにより、乾燥効率をより高めることができるので、ランニングコストをより一層下げることができる。
【0016】
また、本発明において、シート状複合体の上面に、摩擦係数の小さな保護体を設けるようにした場合には、被乾燥物をより痛めにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る乾燥機の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の赤外線発生装置の取り付け位置の第1変形例を表す斜視図である。
【図3】図1の赤外線発生装置の取り付け位置の第2変形例を表す斜視図である。
【図4】図1の赤外線発生装置の取り付け位置の第3変形例を表す斜視図である。
【図5】図1〜図4の赤外線発生装置の一例を表す断面図である。
【図6】図5の発熱体の一例を表す断面図である。
【図7】図1の乾燥機の他の例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る乾燥機の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
回転ドラム式の乾燥機に赤外線発生装置が取り付けられている例
2.第2の実施の形態
静止式の乾燥機に赤外線発生装置が取り付けられている例
3.変形例
熱交換器が省略されている例
【0019】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
図1(A)は、本発明の第1の実施の形態に係る乾燥機1の一例を示す斜視図である。図1(B)は、図1(A)の乾燥機1の内部構成の一例を模式的に表した図である。乾燥機1は、洗濯工場や施設などで好適に使用される業務用の乾燥機であり、被乾燥物を乾燥させる際に使用されるものである。被乾燥物は、例えば、洗濯機で洗濯されると共に脱水されたものであり、例えば、水分を含んだタオルや、衣類、シーツなどである。
【0020】
乾燥機1は、例えば、図1(A),(B)に示したように、筐体10と、筐体10内に設けられた回転ドラム20および駆動部30と、筐体10上部に設けられた熱交換器40および排出器50とを備えている。筐体10は、例えば、前面に投入扉11を有しており、背面に取出扉13を有している。なお回転ドラム20が本発明の「収容室」の一具体例に相当し、取出扉13が本発明の「蓋体」の一具体例に相当する。
【0021】
投入扉11は、回転ドラム20に被乾燥物を投入する際に開閉する扉である。投入扉11は、例えば、図1(A)に示したように、スライド式となっており、回転ドラム20内を視認可能な観察窓12を有している。取出扉13は、被乾燥物を乾燥することにより得られた乾燥物を回転ドラム20から取り出す際に開閉する扉である。取出扉13は、例えば、図1(B)に示したように、取出扉13の上部が取出扉13の下部よりも回転ドラム20寄りとなるように傾いて配置されている。筐体10は、取出扉13の周囲を取り囲むように形成された取出台14を有している。取出台14は、取出扉13を開けて乾燥物を回転ドラム20から取り出したときに、その乾燥物を一時的に置いておく台としての役割を持っている。
【0022】
なお、筐体10において、必ずしも前面および背面の双方に扉が設けられている必要はなく、必要に応じていずれか一方の扉が省略されていてもよい。ただし、その場合に、回転ドラム20に被乾燥物を投入したり、乾燥物を回転ドラム20から取り出したりするときには、1つの扉を開閉すればよい。
【0023】
回転ドラム20は、被乾燥物を収容可能な空間を有するものである。回転ドラム20は、例えば、図1(B)に示したように、水平方向に回転軸を有する筒体21と、筒体21の前面に設けられた環状の前板22と、筒体21の背面に設けられた環状の後板23と、筒体21の内面に設けられた複数のフィン24とを有している。
【0024】
筒体21は、例えば、複数の開口(図示せず)を有している。各開口は、例えば、被乾燥物を回転ドラム20に入れた状態で回転ドラム20を回転させたときに、回転ドラム20内に外気を流入させたり、回転ドラム20内の湿った空気を回転ドラム20の外に排出したりするために設けられたものである。なお、開口は、必要に応じて省略することも可能である。
【0025】
前板22および後板23は、被乾燥物を回転ドラム20内に投入するか、または回転ドラム20内から取り出す際に使用する開口を有している。なお、前板22および後板23に設けられた開口が、本発明の「開口」の一具体例に相当する。前板22および後板23は、例えば、被乾燥物を回転ドラム20に入れた状態で回転ドラム20を回転させたときに、被乾燥物が回転ドラム20から飛び出すのを防止する役割を有している。なお、前板22および後板23の少なくとも一方が省略されていてもよい。
【0026】
フィン24は、被乾燥物を回転ドラム20に入れた状態で回転ドラム20を回転させたときに、被乾燥物を掻き上げるために設けられたものである。フィン24は、例えば、図1(B)に示したように、筒体21の回転軸と平行な方向に延在する断面三角形状の凸部である。フィン24などを含む回転ドラム20全体は、例えば、ステンレスなどの金属材料で構成されている。
【0027】
乾燥機1は、さらに、例えば、図1(B)に示したように、筐体10内に赤外線発生装置25を有している。なお、赤外線発生装置25が、本発明の「赤外線発生装置」の一具体例に相当する。赤外線発生装置25は、回転ドラム20内に所定の波長帯の電磁波を照射することにより回転ドラム20内の被乾燥物を乾燥させるものである。赤外線発生装置25は、シート形態となっている。そのため、赤外線発生装置25は、平坦面だけでなく、曲面などにも設置可能になっている。
【0028】
赤外線発生装置25は、例えば、図1(B)に示したように、フィン24の上面に設置されている。赤外線発生装置25は、例えば、フィン24の上面と赤外線発生装置25の背面とをネジなどの固定具で固定することにより、フィン24の上面に固定されている。なお、赤外線発生装置25は、例えば、図2に示したように、筒体21のうちフィン24で覆われていない部位に設置されていてもよい。また、赤外線発生装置25は、例えば、図3に示したように、前板22および後板23の内面(回転ドラム20の内部空間側の面)に設置されていてもよい。なお、赤外線発生装置25は、前板22および後板23のいずれか一方の内面(回転ドラム20の内部空間側の面)にだけ設置されていてもよい。また、赤外線発生装置25は、例えば、図4に示したように、取出扉13の内面(回転ドラム20の内部空間側の面)に設置されていてもよい。なお、赤外線発生装置25は、下記の(1)〜(5)のうち少なくとも一か所に設置されていればよく、下記の(1)〜(5)の全ての箇所に設置されていることが好ましい。また、赤外線発生装置25は、下記の(1)〜(4)のうち少なくとも一か所に設置されているか、または、下記の(5)に設置されていればよい。
(1)フィン24の上面
(2)筒体21の内面のうちフィン24で覆われていない部位
(3)前板22の内面
(4)後板23の内面
(5)取出扉13の内面
【0029】
図5(A)は、赤外線発生装置25の断面構成の一例を表したものである。赤外線発生装置25は、例えば、図5(A)に示したように、第1シート状複合体31、第2シート状複合体32、発熱体33、保護体34、反射体35、および枠体36を有している。なお、第1シート状複合体31および第2シート状複合体32からなる複合体が、本発明の「複合体」の一具体例に相当する。第1シート状複合体31が本発明の「第1シート状複合体」の一具体例に相当し、第2シート状複合体32が本発明の「第2シート状複合体」の一具体例に相当する。発熱体33が、本発明の「複数の粒体を加熱する発熱体」の一具体例に相当する。
【0030】
第1シート状複合体31および第2シート状複合体32は、柔軟性(屈曲性)を備えたものであり、発熱体33を間にして互いに貼り合わされている。第1シート状複合体31と第2シート状複合体32との貼り合わせは、例えば、接着剤などによってなされている。第1シート状複合体31および第2シート状複合体32は、例えば、図5(B)に示したように、複数の粒体37が母材38に分散されたものであり、例えば、複数の粒体37を母材38に練り込むことにより形成されたものである。
【0031】
粒体37は、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生するものである。粒体37は、例えば、珪藻土、チタン、アルミナ、または火山灰からなる。上記で例示した材料は、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を放射するものであり、特に、珪藻土は、群を抜いて高出力で、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を放射することの可能な材料である。
【0032】
ここで、水および水蒸気の吸収波長は、赤色光の波長よりも大きな波長帯であって、かつミリ波の波長よりも小さな波長帯(つまり赤外線の波長帯)に属しており、おおよそ0.7μm以上1000μm以下の波長帯に属している。水の吸収波長のうち相対的に吸収率の大きな波長は、典型的には、1.4μm、1.45μm、1.95μm、2.5μm、3.0μmなどであり、水の吸収波長のうち吸収率の最も大きな波長は、3.0μmである。従って、水を加熱することだけを目的とする場合には、粒体37は、遠赤外線(波長:4μm以上1000μm以下)を発生するものであってもよい。
【0033】
また、水蒸気の吸収波長のうち相対的に吸収率の大きな波長は、典型的には、0.4μm、1.1μm、1.3μm〜2.0μm、3.0μmなどであり、水蒸気の吸収波長のうち吸収率の最も大きな波長は、1.1μmである。従って、水だけでなく水蒸気にも電磁波を吸収させることを目的とする場合には、粒体37は、遠赤外線の他に、中赤外線(波長:2.5μm以上4μm未満)や、近赤外線(波長:0.7μm以上2.5μm未満)を発生するものであることが好ましい。遠赤外線の他に中赤外線や近赤外線も放射する最も好適な材料としては、上述の珪藻土が挙げられる。
【0034】
母材38は、複数の粒体37を分散した状態で保持するものである。母材38は、粒体37と同様に、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生する材料で構成されていることが好ましく、例えば、シリコーンからなる。シリコーンは、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を放射するものであり、珪藻土などよりも若干短い波長の電磁波を放射することの可能な材料である。粒体37と母材38との体積比は、(粒体37):(母材38)=3:7であることが好ましい。なお、母材38は、シリコーン以外の材料で構成されていてもよく、例えば、ラテックスなどの天然ゴムや、ニトリルゴムなどの合成ゴム、またはセメントなど構成されていてもよい。
【0035】
保護体34は、第1シート状複合体31の表面よりも摩擦係数の小さな材料であって、かつ、柔軟性(屈曲性)と強度(耐摩耗性)を兼ね備えた材料からなり、例えば、ガラスクロスからなる。反射体35は、複数の粒体37から放射された電磁波を第1シート状複合体31側に反射するものである。反射体35は、例えば、鏡面加工された金属からなり、柔軟性(屈曲性)を備えている。反射体35は、発熱体33で生じた熱が枠体36に伝導するのを妨げる断熱機能を有していることが好ましく、例えば、反射体35の裏面に断熱性のガラスクロスを有していてもよい。枠体36は、例えば、第1シート状複合体31および第2シート状複合体32を保護するためのものである。枠体36は、赤外線発生装置25を設置する面の形状に応じて成型加工されたものであり、例えば、シート状の金属を成型加工したものである。なお、枠体36は、必要に応じて省略することも可能である。
【0036】
図6(A)は、発熱体33の一例を表す斜視図である。図6(B)は、図6(A)の発熱体33のA−A矢視方向の断面の一例を表す図である。発熱体33は、複数の粒体37を加熱するものである。発熱体33は、柔軟性(屈曲性)を備えており、例えば、赤外線発生装置25のうち枠体36以外の部分の柔軟性(屈曲性)を損なわない程度の柔軟性(屈曲性)を備えている。発熱体33は、例えば、図6(A),(B)に示したように、面内に蛇行して配置された線状の発熱体43と、発熱体43を覆う母材44と、母材44の上下に配置された保護体45,46と、発熱体43の端部に接続されると共に母材44から引き出された配線42とを有している。発熱体43は、抵抗体をパターン配線したものである。抵抗体は、例えば、ニッケル合金などからなる。母材44は、例えば、シリコーンゴムからなる。保護体45,46は、柔軟性(屈曲性)と強度(耐摩耗性)を兼ね備えた材料からなり、例えば、ガラスクロスからなる。
【0037】
駆動部30は、回転ドラム20を回転させるものであり、例えば、回転ドラム20の外周面に接するローラを回転させることにより回転ドラム20を回転させるようになっている。なお、前板22および後板23のいずれか一方が開口を有さない一枚板となっている場合には、駆動部30は、開口を有さない一枚板に接続された回転棒などを回転させることにより回転ドラム20を回転させるようになっていてもよい。例えば、図7に示したように、後板23が開口を有さない一枚板となっており、駆動部30が後板23に接続された回転棒26を回転させることにより回転ドラム20を回転させるようになっていてもよい。ただし、その場合には、筐体10のうち、前板22および後板23のうち開口を有さない方と対応する部位に、扉を設ける必要ない。駆動部30は、さらに、例えば、発熱体33、熱交換器40および排出器50に電力を供給するようになっている。なお、図7では、赤外線発生装置25の記載が省略されているが、乾燥機1が図7に示したような構成となっている場合には、赤外線発生装置25が後板23の内面全体に配置されていることが好ましい。
【0038】
熱交換器40は、外部から取り込んだ外気を熱し、熱風を回転ドラム20内に送り込むものである。熱交換器40は、例えば、外気を取り込むための吸気口41と、吸気口41と回転ドラム20との間を連通する空間内に設けられた被加熱部材(図示せず)と、被加熱部材を加熱する熱源(図示せず)とを有している。被加熱部材は、例えば、熱源から供給された蒸気の熱を通過させることの可能な管からなり、蒸気で熱された管によって吸気口41から取り込まれた外気を熱するようになっている。熱源は、例えば、重油やガスなどの燃料を燃焼させて蒸気を発生させるものであり、燃焼により得られた蒸気を被加熱部材に供給するようになっている。なお、本実施の形態では、被乾燥物は赤外線発生装置25によっても乾燥されることから、熱交換器40は、旧来から一般的に使われてきた低出力の熱交換器で十分である。
【0039】
排出器50は、回転ドラム20内の湿った空気を外部に排出するものである。排出器50は、例えば、回転ドラム20内の湿った空気を外部に排出するための排気口51と、排気口51と回転ドラム20との間を連通する空間内に設けられた換気扇(図示せず)とを有している。換気扇は、回転ドラム20内の湿った空気を吸い込み、排気口51を介して外部に排出するようになっている。
【0040】
[作用・効果]
本実施の形態の乾燥機1では、被乾燥物が回転ドラム20内に投入されたのち、駆動部30によって回転ドラム20が駆動される。続いて、熱交換器40で外気を加熱し、例えば百数十度程度の熱風が回転ドラム20内に供給される。さらに、発熱体33が例えば100度程度に熱せられ、その熱が第1シート状複合体31および第2シート状複合体32内の複数の粒体37に加えられることにより、複数の粒体37から、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波が発生し、回転ドラム20内に照射される。粒体37から発せられた電磁波が被乾燥物に含まれる水に吸収されると、水の分子間振動による自己発熱により水が気化し水蒸気となる。その結果、被乾燥物が乾燥する。さらに、被乾燥物から放出された水蒸気は、粒体37から発せられた電磁波を吸収し、分子に分解される。そのため、水蒸気が被乾燥物を湿らせる度合いを低減することができる。
【0041】
ところで、赤外線による被乾燥物の乾燥では、重油やガスなどの燃料を燃焼させて得られた蒸気の熱で外気を加熱し、加熱された外気によって被乾燥物を加熱し乾燥させるよりも、乾燥効率が格段に優れている。また、本実施の形態では、赤外線発生装置25はシート状となっており、回転ドラム20の内面や、取出扉13の内面などに設置されており、回転ドラム20の中心軸上に設けられていない。そのため、回転ドラム20の中心軸上に棒状のヒータを設けたときのような作業性の悪さや被乾燥物の損傷が生じる恐れはない。また、複数の粒体37が第1シート状複合体31および第2シート状複合体32内に分散されているので、仮に、第1シート状複合体31および第2シート状複合体32が損傷したときに、粒体37が回転ドラム20内にばら撒かれ、被乾燥物を傷つける虞がない。従って、本実施の形態の乾燥機1では、作業性や被乾燥物の品質を損なうことなく、ランニングコストを下げることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、発熱体33が第1シート状複合体31と第2シート状複合体32との間に設けられている。これにより、発熱体33から発せられた熱が第1シート状複合体31および第2シート状複合体32のそれぞれに効率良く伝わる。これにより、乾燥効率がより高くなるので、低ランニングコストを実現することができる。
【0043】
また、本実施の形態において、複数の粒体37を保持する母材38がシリコーンからなる場合には、母材38からも、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波が発生するので、母材38から発せられた電磁波も被乾燥物の乾燥に寄与する。その結果、乾燥効率がより高くなるので、低ランニングコストを実現することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、赤外線発生装置25の上面に、摩擦係数の小さな保護体34が設けられているので、赤外線発生装置25が被乾燥物を痛める可能性を低減することができる。また、保護体34によって、赤外線発生装置25そのものの劣化も低減することもできる。
【0045】
<2.第2の実施の形態>
[構成]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る乾燥機2について説明する。図8は、乾燥機2の一例を示す斜視図である。乾燥機2は、洗濯工場や施設などで好適に使用される業務用の乾燥機であり、被乾燥物を乾燥させる際に使用されるものである。なお、本実施の形態において、上記実施の形態における構成要素と同一の構成要素については、上記実施の形態で用いられた符号と同一の符号が付されている。
【0046】
本実施の形態における被乾燥物(以下、単に「被乾燥物」と称する。)は、上記実施の形態で言及したものの他、回転ドラム20内で掻き上げられることがあまり好ましくないものも該当する。被乾燥物は、水分を含んだタオルや、衣類、シーツなどの他、例えば、洗濯されると共に脱水された、水分を含むジャケットや、洗浄された車椅子などである。被乾燥物がジャケットである場合には、被乾燥物は、筐体50内に設けられたハンガーなどに吊るされる。また、被乾燥物が車椅子である場合には、被乾燥物は、筐体50内にそのまま置かれる。
【0047】
乾燥機2は、例えば、図8に示したように、筐体50と、筐体50内に設けられた赤外線発生装置25と、駆動部30とを備えている。乾燥機2は、さらに、例えば、図8に示したように、筐体50の上面に、熱交換器40および排出器50を備えている。筐体50は、筐体50に被乾燥物を入れたり筐体50から被乾燥物を出したりすることの可能な出入扉51を有している。出入扉51は、例えば、観音開きタイプの扉であり、例えば、筐体50内の被乾燥物を視認することの可能な観察窓52を有している。赤外線発生装置25は、例えば、図7に示したように、筐体50の内面に貼り合わされている。
【0048】
乾燥機2は、乾燥機1のような回転ドラム20を有していない。従って、本実施の形態では、筐体50そのものが、被乾燥物を収容可能な空間となっており、駆動部30は、例えば、発熱体33、熱交換器40および排出器50に電力を供給するようになっている。なお、乾燥機2は、必要に応じて、被乾燥物を掛けるハンガーを吊るす棒などを備えていてもよい。
【0049】
[作用・効果]
本実施の形態の乾燥機2では、被乾燥物が筐体50内に配置される。続いて、熱交換器40で外気を加熱し、例えば百数十度程度の熱風が筐体50内に供給される。さらに、発熱体33が例えば100度程度に熱せられ、その熱が第1シート状複合体31および第2シート状複合体32内の複数の粒体37に加えられることにより、複数の粒体37から、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波が発生し、筐体50内に照射される。粒体37から発せられた電磁波が被乾燥物に含まれる水に吸収されると、水の分子間振動による自己発熱により水が気化し水蒸気となる。その結果、被乾燥物が乾燥する。さらに、被乾燥物から放出された水蒸気は、粒体37から発せられた電磁波を吸収し、分子に分解される。そのため、水蒸気が被乾燥物を湿らせる度合いを低減することができる。
【0050】
ところで、本実施の形態では、上記実施の形態と同様、熱交換器40と共に赤外線発生装置25が用いられている。これにより、被乾燥物の品質を損なうことなく、ランニングコストを下げることができる。
【0051】
<3.変形例>
なお、上記各実施の形態では、熱交換器40が設けられていたが、必要に応じて省略することも可能である。そのようにした場合には、ランニングコストをさらに下げることが可能となる。
【0052】
ところで、上記各実施の形態では、複数の粒体37は、当該複数の粒体37から発せられた電磁波が被乾燥物に含まれる水に吸収されると、水の分子間振動による自己発熱により水が気化し水蒸気となり、さらに、当該電磁波が被乾燥物から放出された水蒸気に吸収されると、水蒸気が分子に分解されるような電磁波を発生するようになっている。このような作用により被乾燥物を乾燥させる乾燥機は、従来にはなかったものであり、このような作用を奏するからこそ、上記各実施の形態の乾燥機1,2において、極めて高い乾燥効率が得られると言える。
【符号の説明】
【0053】
1,2…乾燥機、10…筐体、11…投入扉、12,62…観察窓、13…取出扉、14…取出台、20…回転ドラム、21,60…筒体、22…前板、23…後板、24…フィン、25…ヒータ、26…回転棒、30…駆動部、31…第1シート状複合体、32…第2シート状複合体、33,43…発熱体、34,45,46…保護体、35…反射体、36…枠体、37…粒体、38,44…母材、40…熱交換器、41…吸気口、42…配線、50…排出器、51…排気口、62…出入扉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生する複数の粒体が母材に分散された複合体と、
前記複数の粒体を加熱する発熱体と
を備えた赤外線発生装置。
【請求項2】
前記複数の粒体は、珪藻土、チタン、アルミナ、または火山灰からなる
請求項1に記載の赤外線発生装置。
【請求項3】
前記母材は、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生する材料からなる
請求項1または請求項2に記載の赤外線発生装置。
【請求項4】
前記母材は、シリコーンからなる
請求項3に記載の赤外線発生装置。
【請求項5】
前記複合体は、第1シート状複合体および第2シート状複合体からなり、
前記第1シート状複合体および前記第2シート状複合体は、前記発熱体を間にして互いに貼り合わされている
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の赤外線発生装置。
【請求項6】
前記第1シート状複合体の表面に、当該第1シート状複合体の表面よりも摩擦係数の小さな保護体を備えた
請求項5に記載の赤外線発生装置。
【請求項7】
前記第2シート状複合体の表面に、前記電磁波を前記第1シート状複合体側に反射する反射体を備えた
請求項6に記載の赤外線発生装置。
【請求項8】
前記複数の粒体は、当該複数の粒体から発せられた電磁波が被乾燥物に含まれる水に吸収されると、水の分子間振動による自己発熱により水が気化し水蒸気となり、さらに、当該電磁波が被乾燥物から放出された水蒸気に吸収されると、水蒸気が分子に分解されるような電磁波を発生するようになっている
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の赤外線発生装置。
【請求項9】
被乾燥物を収容可能な空間を有し、かつ前記被乾燥物を前記空間内に投入するか、または前記空間内から取り出す際に使用する開口を有する収容室と、
前記開口に蓋をする蓋体と、
前記収容室内に所定の波長帯の電磁波を照射することにより前記被乾燥物を乾燥させる赤外線発生装置と
を備え、
前記赤外線発生装置は、水および水蒸気の吸収波長を含む波長帯の電磁波を発生する複数の粒体が母材に分散された複合体と、前記複数の粒体を加熱する発熱体とを有しており、前記収容室の内面および前記蓋体の内面のうち少なくとも一方に設置されている
乾燥機。
【請求項10】
前記収容室は、回転ドラムであり、
前記赤外線発生装置は、前記回転ドラムの内面および前記蓋体の内面のうち少なくとも一方に設置されている
請求項9に記載の乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−237506(P2012−237506A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106795(P2011−106795)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(511115756)株式会社上野商事 (1)
【Fターム(参考)】