説明

赤外遮蔽フィルム及びそれを設けた赤外遮蔽体

【課題】本発明の目的は、可視光透過率が高く、低屈折率層と高屈折率層の界面がはっきりとしていて赤外遮蔽率が高い赤外遮蔽フィルム及び赤外遮蔽体を提供することである。
【解決手段】第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層、および空隙を形成する空隙形成成分を含む低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つと、
前記ユニットを支持する基板と、を有し、
前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率差が0.1以上であり、
前記空隙形成成分により前記低屈折率層内に空隙を有し、かつ前記高屈折率層に増粘多糖類を含有することを特徴とする赤外遮蔽フィルム。
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外遮蔽性、可視光透過性および耐久性に優れた赤外遮蔽フィルムと、その赤外遮蔽体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策への関心の高まりから、冷房設備にかかる負荷を減らす観点から、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する赤外遮蔽フィルムの要望が高まってきている。
【0003】
赤外遮蔽フィルムの形成方法としては、主には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜を、蒸着法、スパッタ法などのドライ製膜法を用いて形成する方法が提案されている。しかし、ドライ製膜法は、形成に用いる真空装置等が大型になり、製造コストが高く、大面積化が困難であり、しかも、基材として耐熱性素材に限定される等の課題を抱えている。
【0004】
上記のような課題を有しているドライ製膜法に代えて、湿式塗布法を用いて赤外遮蔽フィルムを形成する方法が知られている。例えば、(1)有機溶媒中に金属酸化物や金属化合物微粒子を含む熱硬化型シリコーン樹脂または紫外線硬化型アクリル樹脂を分散させた屈折率層塗布液を、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)や、(2)ルチル型の酸化チタン、複素環系窒素化合物(例えば、ピリジン)、熱硬化型バインダーおよび有機溶剤から構成される屈折率塗膜形成用組成物を、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【0005】
一方、赤外遮蔽フィルムの赤外遮蔽効果を向上させるには、より高い屈折率層と、より低い屈折率層との組み合わせが必要となる。そのため、例えば、低屈折率層をバインダー成分と微粒子によりナノポーラス構造を作成し、屈折率1の空気が充填されることにより屈折率を低下させる方法が知られている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−110401号公報
【特許文献2】特開2004−123766号公報
【特許文献3】特開2008−9347号公報
【特許文献4】特開2009−244684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および2の湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法では、低屈折率層と高屈折率層との界面が混合する問題に加えて、金属酸化物粒子や金属化合物粒子の層間凝集が起こる。これにより、低屈折率層と高屈折率層との界面やフィルム表面における凹凸が大きくなり、当該界面での層間剥離、赤外遮断フィルムのヘイズ値の上昇、赤外遮蔽フィルムとガラスとの密着力の低下などの問題も生じる。
【0008】
また、特許文献3および4のようなバインダー成分および微粒子によりナノポーラス構造を有する低屈折率層を赤外遮蔽フィルムに使用すると、屈折率低下の観点では好ましい。しかし、上記湿式塗布方式によりナノポーラス構造を有する低屈折率層を備えた赤外遮蔽フィルムを作製する場合において、隣接層(高屈折率層)を塗布する際には、前記微粒子の空隙に隣接層の塗布液がどうしても入り込んでしまい、低屈折率層と高屈折率層との界面が乱れて両者の塗布液がより混合しやすくなる。特に薄膜の場合には、界面が混合することで期待した反射率が得られなくなってしまうという問題が生じる。
【0009】
そこで本発明では、かかる問題を解決するために、隣接層(高屈折率層)に増粘多糖類を含有することで適度な保水性とゲル化を付与することができ、空隙がある低屈折率層に塗布しても隣接層の液が入り込みにくくなり、高い赤外遮蔽率を得ることができることを見出した。
【0010】
以上のことから、本発明の目的は、可視光透過率が高く、低屈折率層と高屈折率層の界面がはっきりとしていて赤外遮蔽率が高い赤外遮蔽フィルム及び赤外遮蔽体を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る赤外遮蔽フィルムは、低屈折率層に空隙を含有し、かつ当該低屈折率層に隣接する高屈折率層において増粘多糖類を含むことで空隙への高屈折率層の成分の拡散が抑えられる。
【0012】
本発明に係る赤外遮蔽フィルムは、前記低屈折率層は屈折率が低くなり赤外遮蔽率および可視光透過率が高く、表面の凹凸も少ないフィルムであるため、界面混合性、表面均一性(ヘイズ)、密着性に優れた赤外遮蔽フィルムを実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ有し、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上である赤外遮蔽フィルムにおいて、該低屈折率層が空隙を含有し、かつ該高屈折率層に増粘多糖類を含有することで、低屈折率層は屈折率が低くなり赤外遮蔽率及び可視光透過率が高く、界面混合性、表面均一性(ヘイズ)に優れた赤外遮蔽フィルム及び赤外遮蔽フィルムを設けた赤外遮蔽体を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0014】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0015】
1.第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層、および空隙を形成する空隙形成成分を含む低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つと、
前記ユニットを支持する基板と、を有し、
前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率差が0.1以上であり、
前記空隙形成成分により前記低屈折率層内に空隙を有し、かつ前記高屈折率層に増粘多糖類を含有する、赤外遮蔽フィルム。
【0016】
2.前記低屈折率層の空隙率は、3〜60体積%である、上記1に記載の赤外遮蔽フィルム。
【0017】
3.前記空隙の平均空隙径は、3〜100nmである、上記1または2に記載の赤外遮蔽フィルム。
【0018】
4.前記空隙形成成分は、鎖状体、および数珠状体からなる群から選択される少なくとも1種である、上記1〜3のいずれか1つに記載の赤外遮蔽フィルム。
【0019】
5.前記空隙形成成分は、第2の金属酸化物粒子である、上記1〜4のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
【0020】
6.前記第2の金属酸化物粒子は、カチオン化処理されている、上記5に記載の赤外遮蔽フィルム。
【0021】
7.前記増粘多糖類は、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、およびグアーガムから選択される少なくとも1種である、上記1〜6のいずれか1つに記載の赤外遮蔽フィルム。
【0022】
8.前記低屈折率層および前記高屈折率層に、さらに水溶性高分子を含有する、上記1〜7のいずれか1つに記載の赤外遮蔽フィルム。
【0023】
9.上記1〜8のいずれか1つに記載の赤外遮蔽フィルムが少なくとも1方の面に設けられた赤外遮蔽体。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第一は、第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層、および空隙を形成する空隙形成成分を含む低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つと、
前記ユニットを支持する基材と、を有し、
前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率差が0.1以上であり、
前記空隙形成成分により前記低屈折率層内に空隙を有し、かつ前記高屈折率層に増粘多糖類を含有することを特徴とする赤外遮蔽フィルムである。
【0025】
低屈折率層に空隙を含有し、かつ当該低屈折率層に隣接する高屈折率層において増粘多糖類を含むことで空隙への高屈折率層の成分の拡散が抑えられる。
【0026】
次いで、本発明の赤外遮蔽フィルムにおける高屈折率層と低屈折率層の光学的な構成概要について説明した後、前記高屈折率層、および前記低屈折率層の詳細について説明する。
【0027】
本発明に係る赤外遮蔽フィルムの基本光学特性としては、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることを特徴とする。また、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては、50%以上で、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
【0028】
一般に、赤外遮蔽フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差は大きいほど、少ない層数で赤外遮蔽率を高くすることができる観点で好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つが、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることを特徴とし、好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.4以上である。
【0029】
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外遮蔽率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、100層を越える層数が必要となり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
【0030】
本発明の赤外遮蔽フィルムにおいては、基材上に、高屈折率層と低屈折率層から構成され、該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であるユニットを少なくとも1つ積層した構成であればよいが、好ましい高屈折率層と低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。また、本発明の赤外遮蔽フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層とが交互に密着して積層されるサンドイッチ構造が好ましい。
【0031】
なお、本発明の赤外遮蔽フィルムは、1層の高屈折率層および1層の低屈折率層から構成されるユニットを少なくとも1つ有していればよく、当該赤外遮断フィルムにおいて高屈折率層と低屈折率層との数が同一でも異なっていてもよい。
【0032】
本発明の赤外遮蔽フィルムにおいては、基材に隣接する層が、酸化珪素を含む低屈折率層で、最表層も酸化珪素を含む低屈折率層である層構成が好ましい。
【0033】
また、本発明の赤外遮蔽フィルムにおいては、高屈折率層の好ましい屈折率としては1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。また、低屈折率層の好ましい屈折率としては1.10〜1.60であり、より好ましくは1.20〜1.50である。
【0034】
本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
【0035】
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求めることができる。
【0036】
本発明の赤外遮蔽フィルムを構成する各層の膜厚方向の金属酸化物の量を特定する方法としては、例えば、積層膜を切断しその切断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)にエネルギー分散型X線分光検出器(EDX)を組み込んだ装置を用いて測定する方法や、スパッタ法により層表面から膜厚方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、層表面から0.5nm/minの速度でスパッタしながら測定する方法などが挙げられる。
【0037】
EDX分析装置としては、特に制限されず、例えば、株式会社日立製作所製 走査電子顕微鏡 S−4800に対して、EDAX社製、EDX Apollo40を搭載した装置が挙げられる。また、XPS表面分析装置としては、特に制限されず、いかなる機種も使用することができるが、例えば、VGサイエンティフィックス社製、ESCALAB−200Rが挙げられる。このXPS表面分析装置を用いる場合には、例えば、X線アノードにMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)の条件により、測定を行うことができる。
【0038】
本発明の赤外遮蔽フィルムは、基材の下または基材と反対側の最表面層の上に、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上を有していてもよい。
【0039】
次に、本発明の赤外遮蔽フィルムの各構成要素、上記高屈折率層、および低屈折率層の詳細に付いて説明する。
【0040】
「赤外遮蔽フィルムの構成要素」
(基材)
本発明に係るフィルム支持体の厚みは、10〜300μmであることが好ましく、より好ましくは20〜150μmである。また、本発明のフィルム支持体は、2枚を重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
【0041】
本発明の赤外遮蔽フィルムに適用する基材としては、フィルム支持体であることが好ましく、フィルム支持体は、透明であっても不透明であってもよく、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
【0042】
(高屈折率層)
本発明に係る高屈折率層の1層あたりの厚み(乾燥後の厚み)は、20〜1000nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましい。
【0043】
本発明に係る高屈折率層は、第1の水溶性樹脂をさらに含むことが好ましく、当該高屈折率層には、増粘多糖類、第1の金属酸化物粒子、第1の水溶性高分子を含む第1樹脂成分、および界面活性剤を含むことがより好ましい。
【0044】
以下、本発明に係る高屈折率層に含まれる増粘多糖類、第1の金属酸化物粒子、第1の水溶性高分子を含む第1樹脂成分、界面活性剤について詳説する。
【0045】
〔増粘多糖類〕
本発明に係る近赤外遮蔽フィルムの高屈折率層において、第1の金属酸化物粒子と共に増粘多糖類を含有することを特徴の1つとする。
【0046】
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
【0047】
本発明でいう増粘多糖類とは、金属酸化物を含む屈折率層塗布液に添加した際に、未添加の屈折率層塗布液に対し、塗布液粘度を上昇させる特性を備えた多糖類であり、粘度上昇幅としては、添加することにより40℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
【0048】
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。なお、本発明においては、1種の増粘多糖類または2種類以上の増粘多糖類を併用してもよく、2種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
【0049】
上記増粘多糖類の含有量としては、高屈折率層全体の質量100%に対して、3質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましい。但し、水溶性高分子あるいはエマルジョン等と併用する場合には、増粘多糖類/水溶性高分子あるいはエマルジョン=1以上であることが好ましい。増粘多糖類が少ないと塗膜乾燥時に膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
【0050】
[第1の金属酸化物粒子]
本発明に係る高屈折率層は、第1の金属酸化物粒子を含有する。高屈折率層中での第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径としては、100nm以下であることが好ましい。前記金属酸化物としては、TiO、ZnO、ZrOが好ましく、高屈折率層を形成するための後述の第1の金属酸化物粒子含有組成物の安定性の観点ではTiO(二酸化チタン)がより好ましい。また、TiOの中でもルチル型が、触媒活性が低いために高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。
【0051】
本発明に係る第1の金属酸化物粒子の好ましい一次粒子径は、4nm〜50nmであり、より好ましくは4nm〜30nmである。
【0052】
本発明に係る第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する粒子状の金属酸化物の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0053】
本発明に係る第1の金属酸化物粒子は、表面被覆成分により表面コーティングされていることが好ましい。第1の金属酸化物粒子の表面を表面被覆成分によりコーティングすると、第1の水溶性樹脂との相溶性や分散性が向上すると考えられる。
【0054】
当該表面被覆成分としては、ピコリン酸などのアミノカルボン酸類、アミノポリカルボン酸、ピリジン誘導体およびコラーゲンペプチド、低分子ゼラチン等が好ましい。なかでも、ピリジン誘導体、平均分子量が3万以下である低分子量ゼラチン、またはコラーゲンペプチドが最も好ましいが、低分子ゼラチン等を添加する際のショックを軽減する為に、あらかじめ粒子状の第1の金属酸化物粒子の表面をポリ塩化アルミニウム等で被覆するというように2種類以上で被覆することも可能である。
【0055】
第1の金属酸化物粒子の高屈折率層における含有量としては、高屈折率層の全質量に対して、40〜90質量%であることが好ましく、50〜85質量%であることが特に好ましい。当該含有量を40質量%以上とすることにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易となり、当該含有量を90質量%以下とすることにより、膜の柔軟性が得られ、赤外遮蔽フィルムを形成することが容易となる。
【0056】
上記低分子量ゼラチンまたは上記コラーゲンペプチドは、重量平均分子量が3万以下であることが好ましい。
【0057】
本明細書における「コラーゲンペプチド」とは、ゼラチンに低分子化処理を施して、ゾルゲル変化を発現させなくしたタンパク質であると定義する。
【0058】
本発明に係る低分子量ゼラチンやコラーゲンペプチドは、重量平均分子量が3万以下のものであるが、より好ましくは2,000〜30,000であり、特に好ましくは5,000〜25,000である。
【0059】
低分子量ゼラチンやコラーゲンペプチドの重量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。低分子量ゼラチンあるいはコラーゲンペプチドは、通常用いられる平均分子量10万程度の高分子ゼラチンの水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸またはアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下または加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
【0060】
より具体的には、本発明に係る低分子量ゼラチンやコラーゲンペプチドは、次のようにして調製することができる。
【0061】
通常用いられる重量平均分子量が10万以上の高分子ゼラチンを水に溶かし、ゼラチン分解酵素を加えて、ゼラチン分子を酵素分解する。この方法については、R.J.Cox.Photographic Gelatin II,Academic Press,London,1976年、P233〜251、P335〜P346の記載を参考にすることができる。この場合、酵素が分解する結合位置は決まっているため、比較的分子量分布の狭い低分子量ゼラチンが得られ、好ましい。この場合、酵素分解時間を長くする程、より低分子量化する。その他、低pH(pH1〜3)もしくは高pH(pH10〜12)雰囲気下で加熱し、加水分解する方法もある。平均分子量が3万を超えると、本発明の効果が少なくなる。平均分子量が2000未満ではゼラチンやコラーゲンペプチドの製造上、難点がある。
【0062】
本発明に係る低分子ゼラチンやコラーゲンペプチドにおいては、上記低分子ゼラチンやコラーゲンペプチドの調製工程において、原料として用いる平均分子量が10万以上の高分子ゼラチンの分解を十分に行い、その含有量を1.0質量%以下となる様に、高分子ゼラチン分子の酵素分解を最適に行う様に、ゼラチン分解酵素の種類、添加量や、酵素分解時の温度や時間等の条件を適宜設定することが好ましい。
【0063】
[第1樹脂成分]
本発明に係る赤外遮蔽フィルムの高屈折率層において、第1の水溶性高分子を含む第1樹脂成分を含有することが好ましい。当該第1樹脂成分には、第1の水溶性高分子を含み、必要により硬化剤を含んでもよい。
【0064】
<第1の水溶性高分子>
本明細書における「水溶性高分子」でいう「水溶性」とは、水媒体に対し1質量%以上溶解する化合物であり、好ましくは3質量%以上である。
【0065】
本発明に係る第1の水溶性高分子としては、反応性官能基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ゼラチン類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中では、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体、ゼラチン類が挙げられるがゼラチン類あるいはポリビニルアルコールを含むことがより好ましい。なお、本発明に係る第1の水溶性高分子は、1種でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0066】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールの重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上100,000以下がより好ましい。
【0067】
また、ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0068】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0069】
上記カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0070】
上記カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0071】
上記アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0072】
また、上記ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0073】
本発明においては、反応性官能基を有するポリマーを使用する場合には、硬化剤を使用してもよい。反応性官能基を有するポリマーがポリビニルアルコールの場合には、後述するホウ酸及びその塩やエポキシ系硬化剤が好ましい。
【0074】
本発明に適用可能なゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを適用することができ、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー誌第176巻、No.17643(1978年12月)のIX項に記載されているゼラチンを挙げることができる。
【0075】
本発明においては、重量平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンを用いることが好ましく、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン等を挙げることができる。
【0076】
本発明において、ゼラチンの重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法によって測定することができる。ゼラチンの分子量分布及び平均分子量についても、一般的な公知の方法であるゲルパーミエーションクロマトグラ法(GPC法)によって測定することができる。
【0077】
ゼラチンの分子量については、D.Lorry and M.Vedrines,Proceedings of the 4th IAG Conference,Sept.1983,P.35、大野隆司、小林裕幸、水澤伸也、日本写真学会誌、47,237(1984)等に記載されているように、コラーゲンの構成単位であるα成分(分子量約10万)及び、その二量体、三量体であるβ成分、γ成分、単量体である高分子両性分、更にはこれらの成分が不規則に切断された低分子量成分からなるのが一般的である。
【0078】
本発明に係る重量平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンとしては、上記各成分の中でも、コラーゲンの構成単位であるα成分(分子量約10万)及び、その二量体、三量体であるβ成分、γ成分が主体のゼラチンである。
【0079】
また、本発明に係る重量平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンの製法としては、例えば、下記の方法などが挙げられる。
(1)ゼラチン製造中の抽出操作で、抽出後期の抽出物を使用して抽出初期のもの(低分子量成分)は排除する。
(2)前記製法において、抽出以後乾燥までの工程において、処理温度を40℃未満とする。
(3)ゼラチンを冷水(15℃)透析する。
【0080】
上記の方法を単独又は併用して用いることにより、重量平均分子量が10万以上の高分子量ゼラチンを得ることができる。
【0081】
本発明に係る高屈折率層における第1の水溶性高分子の含有量は、高屈折率層の全質量に対して、0.1〜25質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、バインダーの役割と液の透明性の観点から2〜10質量%が好ましい。
【0082】
また、高屈折率層および低屈折率層において、金属酸化物(F)と各層を構成する樹脂成分に含まれる水溶性高分子(B)との質量比(F/B)としては、0.5〜20の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10である。
【0083】
<硬化剤>
本発明においては、バインダーである水溶性高分子を硬化させるため、硬化剤を使用することが好ましい。
【0084】
本発明に適用可能なる硬化剤としては、水溶性高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、一般的には水溶性高分子と反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性高分子が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性高分子の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬、カルボジイミド化合物(日清紡製カルボジライトV−02,V−02−L2,SV−02等)、オキサゾリン、ホウ酸またはその塩等が挙げられる。
【0085】
前記ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0086】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0087】
上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性高分子1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0088】
〔カチオン系界面活性剤〕
本発明の赤外遮蔽フィルムを構成する高屈折層および低屈折率層の少なくとも1層は、塗布性の観点からカチオン系界面活性剤を含有することが好ましい。特に、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0089】
本発明に適用可能な4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤としては、特に制限はないが、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニウムブロマイド(TOAB)、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
【0090】
また、本発明に係る4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤は、市販品として入手することもでき、例えば、代表例としては、花王社製のコータミン24P(C1225(CH Cl)、同コータミン86P(C1837(CH Cl)、日油社製のニッサンカチオン2−ABT(C18371837(CH Cl)、同ニッサンカチオン2−OLR(C18351835(CH Cl)、同ニッサンカチオン2−DB−500E(C10211021(CH Cl)、日光ケミカルズ社製のNIKKOL CA3475V(C18371837(CH Cl)等を挙げることができる。
【0091】
本発明においては、上記各界面活性剤の中では、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤が好ましく、特に好ましくは、ジアルキル型の4級アンモニウム塩が好ましい。好ましい界面活性剤の具体例としては、日油社製のニッサンカチオン2−ABT(C18371837(CH Cl)、同ニッサンカチオン2−OLR(C18351835(CH Cl)、同ニッサンカチオン2−DB−500E(C10211021(CH Cl)、日光ケミカルズ社製のNIKKOL CA3475V(C18371837(CH Cl)等を挙げることができる。さらには、アルキルの炭素数はC17以下である界面活性剤が少量でも効果が高いためより好ましい。
【0092】
(低屈折率層)
本発明に係る低屈折率層は、空隙を有するものであり、通常は、複数の空隙が層内に形成されている。
【0093】
当該空隙は、空隙形成成分により形成される。ここでいう「空隙形成成分により形成される空隙」とは、空隙形成成分の存在により低屈折率層内に形成される空間状の隙間を全て含む概念であり、比表面積が大きい空隙形成成分に取り込まれた気体が低屈折率層形成段階で当該層中に拡散して生じる空間、ならびに空隙形成成分同士の凝集および/もしくは当該空隙形成成分とそれ以外の成分との接触により生じる隙間をいう。そのため、本発明に係る空隙は、所望の大きさおよび所望の体積の範囲内であれば、独立していても、連続していても良い。
【0094】
本発明に係る低屈折率層の空隙の空隙率は、3〜60体積%であることが好ましく、5〜20体積%がさらに好ましい。
【0095】
当該空隙率が3体積%以上とすると屈折率低下の効果は十分に期待でき、60体積%以下とすると膜厚均一性が良好となりやすい為である。当該空隙の空隙径としては150nm以下であることが望ましい。平均空隙径としては、3〜150nmが好ましく、3〜100nmがより好ましく、3〜40nmがさらに好ましい。3nm以上であると低屈折化の効果が十分に期待でき、150nm以下とすると密着性及び透明性が十分に良好となる為である。
【0096】
上記の平均空隙径や空隙率は、空隙形成成分の形状、大きさ、低屈折率層を構成する他の材料、空隙形成成分の低屈折率層用塗布液中の濃度、低屈折率層用塗布液乾燥時の乾燥温度などで制御することができる。
【0097】
本発明でいう空隙率とは、低屈折率層の断面積に対する空隙の断面積の比率であり、サンプルをミクロトームなどで切断して、その断面を電子顕微鏡で撮影し、画像処理装置で処理することによって求めることが可能である。また、空隙径については走査型電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡観察(観察条件:拡大倍率50000倍)から求めた。
【0098】
本発明における空隙径は、空隙の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最大の距離と最小の距離との和の平均を意味する。平均空隙径は、上記空隙径をランダムに50個以上を求め、その数平均値を求めることにより得られる。
【0099】
本発明に係る低屈折率層の1層あたりの厚み(乾燥後の厚み)は、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。
【0100】
本発明に係る低屈折率層は、第2の水溶性高分子を含む第2樹脂成分をさらに含むことが好ましく、当該低屈折率層には、空隙形成成分、空隙、第2樹脂成分、および界面活性剤を含むことがより好ましく、前記空隙形成成分としては、第2の金属酸化物粒子であることがさらに好ましい。
【0101】
以下、本発明に係る低屈折率層に含まれる、空隙形成成分、第2の水溶性高分子を含む第2樹脂成分、および界面活性剤について詳説する。
【0102】
[空隙形成成分]
本発明に係る空隙形成成分を層内に含有することで、低屈折率層内に空隙を形成する成分である。空隙の形成は、この空隙形成成分が単独でその構造や凝集などにより構成するものであってもよいし、低屈折率層中の他の成分、例えば第2樹脂成分などとの界面で構成されてもよい。空隙形成成分は、具体的には、金属酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物などの無機粒子や、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、アクリル系ポリマーなどの有機粒子などが挙げられ、金属酸化物粒子が好ましい。
【0103】
前記空隙形成成分の形状は、層内の空隙形成に寄与する限り特に制限はないが、その形態、構造、凝集状態、膜内部での分散状態により、表面の少なくとも一部に空隙構造の形成が可能な微粒子が好ましく挙げられる。さらに好ましくは、鎖状体、数珠状体である。このような形状により、低屈折率層内における空隙を容易に形成することが可能であるほか、層内に空隙を生み出すことにより低屈折率層の屈折率の低下に貢献する。当該鎖状体・数珠状体は通常一次粒子が連結して構成されており、この連結された長さ(連結長さともいう)は平均長さとして、30〜200nmが好ましく、40〜120nmが透明性の観点で好ましい。また、これら鎖状体、数珠状体を構成する1次粒子の平均粒子径は5〜100nm、好ましくは10〜50nmが望ましい。
【0104】
なお、本発明において、低屈折率層に含まれる金属酸化物(粒子)を便宜上、第2の金属酸化物粒子とし、高屈折率層に含まれる金属酸化物を第1の金属酸化物粒子とする。以下、本発明に係る空隙形成成分の好ましい形態である第2の金属酸化物粒子について説明する。
【0105】
<第2の金属酸化物粒子>
本発明に係る第2の金属酸化物粒子の形状は、層内の空隙形成に寄与する限り特に制限はないが、鎖状体、数珠状体がより好ましい。
【0106】
また、本発明では上述したように、高屈折率層において増粘多糖類を有するため、製造工程中において、隣接層である高屈折率層を形成する塗布液が低屈折率層に形成された空隙内に入り込んでしまい、低屈折率層と高屈折率層との界面が乱れて両者の塗布液がより混合しやすくなる点を抑制・防止することができる。
【0107】
本発明に係る第2の金属酸化物粒子の材料は、例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライト等を挙げることができ、なかでもシリカを含むことが好ましい。
【0108】
当該シリカとしては、気相法シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられるが、透明性およびヘイズ(表面均一性)の観点からコロイダルシリカが好ましく、鎖状シリカあるいは数珠状シリカを用いることがより好ましい。当該鎖状シリカとしては、日産化学工業社のスノーテックス−UPシリーズ、数珠状シリカとしては日産化学工業のスノーテックス−PSシリーズが挙げられる。
【0109】
前記第2の金属酸化物粒子の当該鎖状体・数珠状体の好ましい連結長さ及びこれら鎖状体、数珠状体を構成する1次粒子の平均粒子径は上記に述べたものと同様である。
【0110】
なお、本発明において用いられる空隙形成成分(第2の金属酸化物粒子)の平均粒子径、連結長さあるいは一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
【0111】
また、電子顕微鏡から求める場合、空隙形成成分の平均粒径および一次粒子の平均径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、100個以上の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。平均連結長さを求める場合は、任意の100個以上の連結長さを測定し、その単純平均値(個数平均)として求める。
【0112】
なお、このような、鎖状シリカや数珠状シリカの製造方法としては、特開2008−115060号公報および特開2010−143784号公報などで記載される技術が挙げられる。
【0113】
本発明に係る低屈折率層中の第2の金属酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の全質量に対して30〜80質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。
【0114】
さらに、本発明に係る第2の金属酸化物粒子は、カチオン化処理されていることが好ましい。カチオン化処理をしないと空隙率が小さくなりすぎる、または高屈折率層と積層した際に凝集等が起こり膜面のヘイズが悪くなる恐れがある。
【0115】
本発明に係る第2の金属酸化物粒子をカチオン化処理する方法としては、当該第2の金属酸化物粒子をカチオン性化合物で分散させることが好ましい。
【0116】
上記カチオン性化合物の例としては、カチオン性ポリマー、多価金属塩等が挙げられるが、吸着力・透明性の観点から多価金属塩が好ましい。多価金属塩としては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、スカンジウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛等の金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、クロロ酢酸塩等が挙げられる。中でもアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウムからなる水溶性塩はその金属イオンが無色のため好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物、水溶性ジルコニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物の具体例としてはポリ塩化アルミニウム(塩基性塩化アルミニウム)、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム等を挙げることができる。ここで、水溶性多価金属化合物における水溶性とは、20℃の水に1質量%以上、より好ましくは3質量%以上溶解することを意味する。その中でも塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウムがより好ましい。さらに最も好ましいのは塩基度80%以上の塩基性塩化アルミニウムであり、次の分子式で表すことができる。〔Al(OH)l6−n (ただし、0<n<6、m≦10)塩基度はn/6×100(%)で表される。水溶性ジルコニウム化合物の具体例としては、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましい。炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニルは特に好ましい。特に酸塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニルが好ましい。第2の金属酸化物粒子に対しては、第2の金属酸化物粒子の形状や粒径にもよるが、1質量%〜15質量%であることが好ましい。
【0117】
[第2樹脂成分]
本発明に係る赤外遮蔽フィルムの低屈折率層において、第2の水溶性高分子を含む第2樹脂成分を含有することが好ましい。当該第2樹脂成分には、第2の水溶性高分子を含み、必要により硬化剤を含んでもよい。
【0118】
本発明に係る第2の水溶性高分子の具体例、好ましい重量平均分子量、および第2の水溶性成分の硬化剤は、上記の第1の水溶性高分子の欄で説明した内容と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0119】
ただし、低屈折率層と高屈折率層とを効率良く形成させるという観点から、第1の水溶性高分子と第2の水溶性高分子との組み合わせを選択することが肝要であり、低屈折率層と高屈折率層との密着性を考慮すると、同一の水溶性高分子を使用することが好ましい。
【0120】
低屈折率層中の第2の水溶性高分子の含有量は、低屈折率層の全質量に対して3〜60質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましい。
【0121】
[界面活性剤]
本発明に係る低屈折率層に適用できる界面活性剤の具体例や添加量などは、上記の界面活性剤の欄で説明した内容と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0122】
(屈折率層のその他の添加剤)
本発明に係る高屈折率層および低屈折率層には上述した成分に加えて、さらに添加剤を加えても良く、本発明に係る高屈折率層と低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0123】
以下、本発明に係る赤外遮蔽フィルムの製造方法について説明する。
【0124】
(赤外遮蔽フィルムの製造方法)
本発明の赤外遮蔽フィルムの製造方法は、特に制限されないが、基材上に、高屈折率層用塗布液と、低屈折率層用塗布液と、を塗布する工程を有する製造方法が好ましい。
【0125】
すなわち、例えば、(1)基材上に、前記高屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成した後、前記低屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成し、赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(2)基材上に、前記低屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成した後、前記高屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成し、赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(3)基材上に、前記高屈折率層用塗布液と、前記低屈折率層用塗布液と、を交互に逐次重層塗布した後乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(4)前記高屈折率層用塗布液と、前記低屈折率層用塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む赤外遮蔽フィルムを形成する方法;などが挙げられる。なかでも、より簡便な製造プロセスとなる上記(4)の方法が好ましい。
【0126】
尚、基材との密着性を向上するとの観点から、基材上には低屈折率層塗布液から塗布することが好ましい。
また、高屈折率層用塗布液は、上記各成分を同時に混合しても、予め第1の金属酸化物粒子の表面を表面被覆成分でコーティングする工程した後調製してもよく、および/または低屈折率層用塗布液は、上記各成分を同時に混合しても、予め第2の金属酸化物粒子の表面をカチオン化処理する工程を行った後、調製してもよい。
【0127】
また、低屈折率層との積層との観点から、高屈折率層用塗布液と低屈折率層用塗布液とのpHの差が2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。
【0128】
また、低屈折率層用塗布液は、pHは酸性であることが好ましい。なぜなら、第2の金属酸化物粒子として鎖状シリカ、または数珠状シリカを使用する場合、アルカリ性のシリカでは空隙ができにくいためである。
【0129】
上記塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0130】
以下、本発明の好ましい製造方法(塗布方法)である同時重層塗布法について詳細に説明する。
【0131】
[溶媒]
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。
【0132】
前記有機溶媒としては、水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)、およびケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)、プロピレンモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0133】
環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましい。
【0134】
このような水もしくは水と水に相溶する溶媒とを混合した溶媒を含む塗布液を形成することにより、溶剤を中心とした塗布液に比べ、塗布粘度を高くすることができ、塗布後の塗布表面の乱れを最小に抑えることが可能となる。すなわち、塗布面の表面均一性が向上し、光学特性の均一化(ムラ防止)の効果が得られる。
【0135】
<塗布液の調製方法>
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、水溶性高分子、金属酸化物、増粘多糖類、および界面活性剤、硬化剤を添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際添加する材料の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調製される。
【0136】
[塗布液の粘度]
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0137】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜80,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜80,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜80,000mPa・sである。
【0138】
<塗布および乾燥方法>
塗布および乾燥方法は、特に制限されないが、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30℃以上に加温して、基材上に高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を好ましくは1〜15℃に一旦冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件である。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0139】
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗布厚は、上記の各層の欄で示したような好ましい乾燥時の厚みとなるように塗布すればよい。
【0140】
ここで、前記セットとは、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め各層間および各層内の物質の流動性を低下させる工程のことを意味する。冷風を塗布膜に表面から当てて、塗布膜の表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった状態を、セット完了の状態と定義し、膜面温度が20℃以下になるまで冷風を吹き付ける。セット時間が短すぎると、層中の成分の混合が不十分となる虞がある。一方、セット時間が長すぎると、金属酸化物粒子の層間拡散が進み、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が不十分となる虞がある。
【0141】
セット時間の調整は、水溶性高分子、硬化剤の濃度や、金属酸化物の濃度を調整することにより適宜調整することができる。冷風の温度は、20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。
【0142】
〔赤外遮蔽フィルムの応用〕
本発明の赤外遮蔽フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
【0143】
特に、本発明に係る近赤外遮蔽フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
【0144】
すなわち、本発明の第2は、本発明の赤外遮蔽フィルム、または本発明の製造方法により得られる赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けた、赤外遮蔽体である。
【0145】
前記基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでも良く、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。本発明で使用されうる基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。また、当該基体の厚みは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
【0146】
本発明に適用可能な赤外遮蔽フィルムと基体とを貼り合わせるための接着剤または粘着剤としては、光硬化性または熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤または粘着剤が挙げられる。
【0147】
接着剤は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、近赤外遮蔽フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また近赤外遮蔽フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の近赤外遮蔽フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0148】
接着剤または粘着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0149】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい
【実施例】
【0150】
(実施例1)
「低屈折率層用塗布液1の調製」
ポリ塩化アルミニウム(多木化学製、タキバイン#1500、表1にはPACと略記)の23.5質量%水溶液を9.18部と、コロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックスOUP)の15質量%水溶液を340部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液の103.4部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液の4.75部とを、混合、分散し、純水で1000部に仕上げて、酸化ケイ素分散液1を調製した。
【0151】
次いで、上記酸化ケイ素分散液1を45℃に加熱し、純水100部及びポリビニルアルコール(PVA235、クラレ社製)の4.0質量%溶液の400部を添加、混合した後、更にカチオン性界面活性剤として、5%CA−3475V(日光ケミカルズ社製)を0.50部添加し、低屈折率層用塗布液1を調製した。
【0152】
「低屈折率層の形成」
上記低屈折率層用塗布液1を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、乾燥膜厚が170nmになるようワイヤーバー塗布を行った。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、基材上に低屈折率層1を形成した。
【0153】
「高屈折率層用塗布液1の調製」
純水の10.3部に、増粘多糖類として1.0質量%のタマリンドシードガムを130部と、ポリビニルアルコール(PVA217、クラレ社製)の5.0質量%溶液の10.3部と、14.8質量%のピコリン酸(例示化合物LI−22)水溶液を17.3部と、ホウ酸の5.5質量%水溶液の2.58部とを、それぞれ添加、混合した後、下記酸化チタン分散液1の38.2部を添加、混合して、更にカチオン性界面活性剤として、5%CA−3475V(日光ケミカルズ社製)を0.050部添加し、最後に純水で223部に仕上げて、高屈折率層用塗布液1を調製した。また、当該高屈折率層用塗布液1には、12.63質量%の増粘多糖類が含まれている。
【0154】
「酸化チタン分散液1の調製」
体積平均粒径が35nmのルチル型酸化チタン微粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾルの28.9部と、14.8質量%のピコリン酸(例示化合物LI−22)水溶液を5.41部と、水酸化リチウムの2.1質量%水溶液の3.92部とを、混合、分散して酸化チタン分散液を調製した。
【0155】
「高屈折率層の形成」
上記高屈折率層用塗布液1を45℃に保温しながら、45℃に加温した低屈折率層を形成済みの厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、乾燥膜厚が130nmになるようにワイヤーバー塗布を行った。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、基材上に高屈折率層1を形成した。
【0156】
「赤外遮蔽層積層体の形成」
上記の低屈折率層と高屈折率層を交互に積層し、計20層を形成した。
【0157】
(実施例2)
実施例1から低屈折率層のポリビニルアルコール量を350部にした以外は同様にして作製した。
【0158】
(実施例3)
実施例1から低屈折率層のポリビニルアルコール量を300部にした以外は同様にして作製した。
【0159】
(実施例4)
実施例1から低屈折率層のシリカをカチオン処理しなかった以外は同様にして作製した。
【0160】
(実施例5)
実施例1から高屈折率層のタマリンドシードガムをグアーガムに変更した以外は同様にして作製した。
【0161】
(実施例6)
実施例4からシリカをスノーテックスOUPからUPに変更した以外は同様にして作製した。
【0162】
(実施例7)
実施例1からシリカをスノーテックスOUPからPS−SOに変更した以外は同様にして作製した。
【0163】
(実施例8)
実施例1からシリカをスノーテックスOUPからPS−MOに変更した以外は同様にして作製した。
【0164】
(実施例9)
実施例1から低屈折率層の水溶性樹脂であるポリビニルアルコールをUV硬化型アクリル樹脂に変更し、シリカをオルガノシリカゾルであるIPA−ST−UP(鎖状)(日産化学工業社製)に変更した以外は同様にして作製した。
【0165】
(比較例10)
実施例1から低屈折率層のシリカをST−OUP(日産化学工業社製)からST−OS(日産化学工業社製)に変更した以外は同様にして作製した。
【0166】
(比較例11)
実施例1から高屈折率層のタマリンドシードガムをポリビニルアルコールPVA217に変更した以外は同様にして作製した。
【0167】
(比較例12)
実施例1からシリカをシリナックス(日鉄鉱業株式会社)に変更した以外は同様にして作製した。
【0168】
《赤外遮蔽フィルムの評価》
上記作製した各近赤外遮蔽フィルムについて、下記の特性値の測定及び性能評価を行った。
【0169】
〈表面均一性(ヘイズ値)の測定〉
ヘイズ値は、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)により測定した。
【0170】
0.7%以下 ◎
0.7%超〜1%以下 ○
1%超〜3%以下 △
3%超 ×
(可視光透過率及び近赤外透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各近赤外遮蔽フィルムの300nm〜2000nmの領域における透過率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を、近赤外透過率は1200nmにおける透過率の値を用いた。
【0171】
(密着性)
JIS−K5400のクロスカット密着試験方法に従って行った。試料についてクロス状のカット線を引き、日東電工(株)製のセロハンテープNo.29を貼り付けて、テープをはがし、膜の剥離状態を調べた。膜残存率をFとし、クロスカットしたマス目の数をn、テープ剥離後に膜がまだ付着しているマス目の数をnとしたとき、F=n/n×100(%)を計算し、以下の基準で評価した。
【0172】
○:F≧80%
△:80%>F≧70%(実技上問題なし)
×:70%>F
以上の実験結果を以下の表に示す。
【0173】
【表1】

【0174】
(空隙径の測定)
電子顕微鏡(FE−SEM)として、S−5000H型(日立製作所製)を用いて加速電圧2.0kVにて低屈折率層の断面の空隙の個数が1000個以上となるように視野数を選び観察した。測定した低屈折率層は支持体(基板)側から2番目の低屈折率層を選択した。画像は、デジタル化し接続されたファイリング装置(VIDEOBANK)に転送しMOディスク中に保存した。続いて、LUZEX−III型(ニレコ社製)画像処理装置にて空隙の重なりや接触がある場合はマニュアル操作にて空隙を抽出し、それぞれの空隙径について測定を行い、その平均空隙径を求めた。
【0175】
(空隙率の測定)
電子顕微鏡(FE−SEM)としてS−5000H型(日立製作所製)を用いて、加速電圧2.0kVにて低屈折率層の断面の空隙の個数が1000個以上となるように視野数を選び観察した。画像は、デジタル化し接続されたファイリング装置(VIDEOBANK)に転送しMOディスク中に保存した。続いて、画像処理装置にて空隙部分のコントラストを調整し、空隙の面積を求め全体の面積で割ることで空隙率を計算した。
【0176】
〈空隙の確認〉
上記比較例10〜12で作製した各サンプルの空隙の有無について、下記の方法を用いて確認した。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、各サンプルの断面観察をして低屈折率層の空隙の有無を確認したところ、いずれの比較例でも空隙は見られなかった(観察条件:拡大倍率50000倍)。
【0177】
表1より明らかなように、本発明例の赤外遮蔽フィルムは、赤外遮蔽性、可視光線透過性と共に、表面均一性、密着性にも優れたものであることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層、および空隙を形成する空隙形成成分を含む低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つと、
前記ユニットを支持する基板と、を有し、
前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率差が0.1以上であり、
前記空隙形成成分により前記低屈折率層内に空隙を有し、かつ前記高屈折率層に増粘多糖類を含有する、赤外遮蔽フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層の空隙率は、3〜60体積%である、請求項1に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項3】
前記空隙の平均空隙径は、3〜150nmである、請求項1または2に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項4】
前記空隙形成成分は、鎖状体、および数珠状体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項5】
前記空隙形成成分は、第2の金属酸化物粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項6】
前記第2の金属酸化物粒子は、カチオン化処理されている、請求項5に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項7】
前記増粘多糖類は、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、およびグアーガムから選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項8】
前記低屈折率層および前記高屈折率層に、さらに水溶性高分子を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルムが少なくとも1方の面に設けられた赤外遮蔽体。

【公開番号】特開2013−3293(P2013−3293A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133021(P2011−133021)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】