赤血球膜脆弱性定量化により血液および赤血球を特徴付ける装置および方法
本開示は、個々に保存された赤血球(RBC)ユニットの品質劣化を定量することで、それらのそれぞれの割り当て、患者適合性、および使用に関する決定を向上させるために情報をもたらすことが可能な、装置および関連方法を説明する。この装置およびその使用方法は臨床実施に従い、かつあらゆる特定のユニットの相対生存率、すなわち予想される有効性を示す。これは、どの、およびいくつのユニットを特定の患者の輸血に使用するかについての決定をするときに、臨床医にRBC品質の実際のデータをもたらす。さらに、サプライチェーンを介してこの試験を展開することで、分配、計画、および在庫管理の決定を向上させ得る。この試験システムの重要な側面は、大量の結果、その他の関連するデータおよびそれの数学的解析を蓄積することによって、アルゴリズムを最適化することが可能である。それによって、できるだけ意味があるようにそれぞれの後の試験結果を特徴付けることが可能である。本発明は血液の品質管理の応用に関すると同時に、「応力によって誘発された溶血ならびにその後の光学的および計算分析を介したRBC脆弱性の定量化」における主要技術は、病気の診断などに幅広く応用可能である。個々の保存(RBC)ユニットの品質劣化を定量化するための装置は、溶血ユニット、光学的分析ユニット、および計算ユニットを含む。同様に、個々の保存(RBC)ユニットの品質劣化を定量化するための関連方法は、溶血段階、光学的分析段階、および計算段階を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2009年1月21日に出願された米国仮特許出願第61/146,145号、および2010年1月20日に出願された米国非仮特許出願第12/690,916号の利益を主張する。また、本出願は2007年5月に出願された米国非仮実用特許出願第11/744643号にも関連する。これらの先行出願の内容はその全体が参照により援用される。
【0002】
本開示は医療装置の技術分野に属する。より詳細には、本開示は血液バンクおよび輸血産業のための、保存された赤血球(RBC)ユニットにおける品質管理の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
輸血は多くの状況下で多種多様な患者のために使用されている。最も多い輸血は、実際のところ赤血球の輸血である。赤血球は赤血球(RBC)ユニットに保存されている。血液バンク産業、輸血産業、および病院は、RBCユニットを監視している。輸血可能なRBCユニットの現在の最高齢は42日である。RBCユニットは一般的に先入れ先出し(FIFO)を基本に管理されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、個々に保存された赤血球(RBC)ユニットの品質劣化を定量することで、それらのそれぞれの割り当て、患者適合性、および使用に関する決定を向上させるために情報をもたらすことが可能な、装置および関連方法を説明する。この装置およびその使用方法は臨床実施に従い、あらゆる特定のユニットの相対生存率、すなわち予想される有効性を示す情報をもたらす。これは、どの、およびいくつのユニットを特定の患者の輸血に使用するかについて決定をするときに、臨床医にRBC品質の実際のデータを提供し得る。さらに、サプライチェーンを介してこの試験を展開することで、分配、計画、および在庫管理の決定を向上させ得る。この試験システムの重要な側面は、大量の結果、その他の関連するデータおよびそれの数学的解析を蓄積することによって、アルゴリズムを最適化することが可能である。それによって、それぞれのその後の試験結果を解釈し、できるだけ意味があるように血液または血液サンプルのそれぞれのユニットを特徴付けることが可能である。本開示は血液の品質管理の応用に関すると同時に、「応力によって誘発された溶血ならびにその後の光学的および計算的分析を介したRBC脆弱性の定量化」における主要技術は、病気の診断などに幅広く応用可能である。
【0005】
個々の保存RBCユニットの品質劣化を定量化するための装置は、溶血ユニット、光学的分析ユニット、および計算ユニットを含む。同様に、個々の保存RBCユニットの品質劣化を定量化するための関連方法は、溶血段階、光学的分析段階、および計算段階を含む。
【0006】
溶血ユニットはRBCユニット(通常450mlのRBCを含む袋)からの(好ましくは外部ストリップからの)小さなサンプルを、浸透圧変化またはせん断力などの、強度および/または持続時間のレベルが制御されてかつ変化する1種以上の物理的応力にさらす。
【0007】
光学的分析ユニットは、光源、サンプルブロック、光分散要素、および光強度が測定可能な検出器を含む、スペクトル解析ユニットである。光学的分析ユニットは溶血によって生じる無細胞ヘモグロビンのレベルを評価可能であり、溶血はサンプルに加えられる様々な応力の結果生じる。この溶血はサンプル中の、すなわちサンプリングされたユニット中の細胞膜脆弱性を示す。
【0008】
計算ユニットはサンプルの脆弱特性を蓄積し、かつサンプルをその他の利用可能なユニットおよび以前の試験から得られた多数の累積データと比較する。以前の試験は、あらゆる特定のバージョンの装置におけるベースライン補正を含む(ため、臨床評価を通して確立および改良され得る)。得られた情報は特定のユニットの相対的な劣化を示し、かつRBCユニットの割り当てまたは使用に関与する臨床医またはその他の人によって判断される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は全応力の大きさにおける単一パラメータを用いて、脆弱性がシグモイド関数で従来法によって描かれたものを示す。
【図2】図2は応力強度および応力持続時間の分離パラメータによって作成された三次元脆弱特性を示す。
【図3】図3は簡易に処分可能な使い捨て構成要素の実施形態を示す。
【図4】図4は付属の使い捨て構成要素が取り付けられた卓上装置の実施形態を示す。
【図5】図5は輸血に関連するユニット当たりの費用を示す。
【図6】図6は誘発されたRBC溶解のせん断応力持続時間およびせん断応力度への依存を示す。
【図7】図7は同齢かつ期限切れ前の3つのRBCユニットから得られた予備データを示す。
【図8】図8は光学的分析ユニットまたは段階によって測定される、それぞれ個々の応力レベルにおいて起こる溶血の割合に対応する一連の対の値におけるグラフ的特性を示す。
【図9】図9はRBC溶解のベースラインにおける変化を示す。
【図10】図10は応力曲線の移動を示す。
【図11】図11はS曲線勾配の対称な増加を示す。
【図12】図12はS曲線勾配の対称な減少を示す。
【図13】図13はS曲線勾配の非対称な変化を示す。
【図14】図14は2つのRBC集団から生じる、1つのS曲線から2つのS曲線への変化を示す。
【図15】図15は特定のせん断応力度におけるRBC生存割合の時間依存性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
保存の間、RBCの品質はRBC中の多数の形態学的および生化学的変化のために劣化する。それはATPの枯渇および内因性RBC抗酸化物質の低下を含み、一般的にRBC細胞骨格タンパク質および膜の損傷の原因となり、結果的に輸血時における生体内でのRBCの生存率の減少をもたらす。このようなRBCの劣化は、RBC膜の変形能障害および脆弱性の増加に反映され、それは輸血後のRBCの生存および組織酸素化の有効性と否定的に関連する。より脆弱な膜は、生体内においてあらゆる特定細胞の溶血傾向を増加させ、かつ(生体内において生存している場合でも)細胞が組織に酸素を運搬する能力を減少させる。
【0011】
(例えば急性期治療における)ある患者群に対して、多数のRBCユニットはそれらの42日の最大日数よりかなり前に危険なほど効果が無くなっていることが調査により示されている。これが起こったときの正確な日数はRBCユニット間で変化し、特定のRBCユニットにおけるこのような生存率の低下に対する試験手段が現在のところない。あらゆる特定のRBCユニットの劣化は、時間に加えて、ドナー間のばらつき、保存状態、および輸送状況などを含む様々な要因によって変化し、それは現在の42日の一定の日数基準を不適切な代用物としている。
【0012】
劣化の程度はある患者群にとって重要であり、もし分かっている場合、医師は情報に基づいてより良い判断を下すことが可能である。例えば、救急患者は輸血が無効力であることによって著しく被害を受けるため、最も生存能力のあるユニットに対して優先されるのは当然であろう。しかしながら、これまでのところ、期限切れではないユニット間で生存率を判別する方法はない。逆に、ゆっくりと劣化しているユニットは42日を経過しても、ある患者に対しては容認され得るが、個別の試験をせずしてこのようなユニットを特定する方法はない。
【0013】
あらゆる特定のRBCユニットの輸血有効性に対して信頼性のある予測因子がない場合、最も脆弱な患者を扱う医師は、時には輸血なしで回復可能であると思われる患者の輸血を差し控える(制限的手法)。このような慣習は、患者の回復を遅らせ、入院日数を延長させ、さらなる過程の必要性が増し、および患者のリスクを増加させる可能性がある。しかしながら、輸血を差し控える医師は、信頼できない生存率の血液を使用することにより起こる潜在的な合併症は、上記の問題よりも重大であると感じているのかも知れない。別の場合では、医師は、即座に組織酸素化を回復するのに十分な生存能力のあるRBCを提供しそこなう危険性を最小化するため、時には必要以上のより多くのユニットを使用せざるを得なくなる。これはその他の患者に適しているであろう追加のユニットを必要とするだけでなく、患者を様々な合併症のリスクにさらす。(血液型適合性エラーなどのいくつかのリスクは遍在しているため、輸血されるユニットの数に比例する。循環血液量の増加などのその他の合併症は過剰なRBCを受け取ることと特に関連している。)実際に、現在いくつかの病院は、外傷外科医からの「より新鮮」な血液に対する個別の要望に対応するよう努めている。患者の安全性および無駄なユニットの問題のほかに、現行の慣習と関連した多額の費用の問題がある。
【0014】
さらに、血液バンクサプライチェーンおよび在庫管理における現在の方法も同様に、特定のRBCユニットの劣化割合を考慮に入れることが不可能であるが、その代わりに「先入れ先出し」(FIFO)システムに依存しなければならない。実際の品質劣化を測定および追跡する手段がないため、保存時間によって提供される不十分な代用物によって、次善の経路選定および分配がもたらされる。
【0015】
赤血球(エリスロサイト(erythrocytes)としても知られている)は、毛細血管網を通って代謝的に活性な細胞に酸素を運搬、かつ代謝的に活性な細胞から二酸化酸素を除去することに関与する非常に特殊化した細胞である。それらは両凹形状であり、直径は平均約8−10ミクロンである。膜は非常に弾力があるため、細胞はたった4−5ミクロンの直径の毛細血管を通過することができる。同時に、膜は破壊または分解を避けながら、流れによって誘発される継続する相当の応力に耐え得るよう十分に強固でなければならない。通常の膜安定性および柔軟性を有する赤血球は、損傷することなく効果的に循環可能であるのに対し、劣化した細胞は生体内において溶血を起こすか、または毛細血管を閉塞する可能性が高い。
【0016】
様々な抗凝固剤および防腐剤(A−P)溶液が、長期保存を可能とするために開発されてきた。液体状態のRBCユニットは、現在のFDAに認可された最大の保存期間である42日間、1−6℃で保存される。かなりの割合の患者は、保存によって相当影響を受けた血液製剤を受け取る。最近の研究では、米国において輸血されたRBCの平均齢は21日であることが示されている。バクダッドにある米国陸軍戦闘支援病院では、RBCの平均保存期間は33日であることが報告された。O型Rhマイナスなどのまれな血液型に対しては、>60%の保存血液ユニットが≧28日齢であることが確認された。
【0017】
保存期間がどれくらい輸血の有効性に影響を与えるかという疑問に研究が分岐する。様々な前臨床試験によって、より長い保存期間とより低い組織酸素化とが関連付けられている。また、保存期間の増加は、死亡率、肺炎、受傷後の多臓器不全、血行動態学的(hemorrheological)疾患、重篤感染症、輸血関連急性肺障害、および微小循環血行動態の悪化の事例の増加に関係している。RBCの保存が輸血の有効性に与える影響を分析している多数の報告書において、保存されたRBCを重病患者に対して使用することの損益特性について疑問が提起されている。
【0018】
一方では、多数の研究において、RBCの保存期間が輸血の有効性に与える悪影響は全く気付かれていなかった。保存期間の不適当な範囲、あらゆる特定の工程における混合/複数RBCユニットの使用、白血球による負荷(burden)の潜在的影響、患者の変化する生理的条件、および保存期間単独ではユニット生存率の次善指標としかなり得ない、いう見解を含めて、様々な仮説がこの矛盾を説明するために提示されてきた。
【0019】
RBCの長期保存は、数々の形態学的および生化学的な変化をもたらす。それは「赤色細胞保存損傷」と総称されて、ATPおよび2,3−ジホスホグリセリン酸(2,3−DPG)レベルの減少、および酸化ストレスの増加と関連する。また、RBCの変形能の減少が保存の第1週目の終わりに開始することが報告されており、その工程は代謝状態における保存によって誘発される酸化的な損傷および変化によってもたらされたものである。したがって、膜の状態は全体の細胞生存率に対する総合指標として機能する能力を有している。
【0020】
観察されるRBC膜の変化の大きさは、時間の他に、使用されるA−P溶液、修飾添加物の存在、袋の材料などの様々な要因に依存するようである。保存期間の終わり頃のRBC溶液の特性(体外溶血を含む)は、製造業者による製造、保存、および/または輸血の状況に大きく依存することを示す結果によって、この問題はさらに複雑化する。また、この変化性は溶液中のその他の有形成分の存在にも関連し得る。様々なドナーからのRBC特性間の変化性は、劣化レベルおよび/または割合に対するさらなる未知のパラメータを追加する。
【0021】
RBC変形能の低下は、マイクロピペット技術、細孔ろ過、光ピンセット、レーザーを利用した回折法(エクタサイトメトリー(ektacytometry))などを含む様々な実験技術によって広く文書化されてきた。ほとんどの場合において、RBCの「変形能」の観点から結果が提示および議論されているが、これらの様々な試験によって測定される基本的な特性は、全く同一である必要はないことに留意すべきである。また、いくつかの技術では、特定のサンプルにおいて全細胞にわたる平均化された特性を測定する一方、その他においては、単一細胞の測定から結果を導き出している。低応力、単一細胞の「変形能」試験は、臨床診断学的応用において長い間追求されてきたが、「脆弱性」は、総合サンプルに加えられる持続高応力下での細胞の溶血傾向を調査する。後者は血液の品質管理の応用に対する関連特性をより良く捕らえることが期待される。
【0022】
RBCにおける変形能の減少は、血流中での輸血後の生存期間および毛細血管網を通過するための細胞の能力の両方に著しく影響することが示されてきた。硬化したRBCは肺血行動態を著しく変化させ、血管抵抗の増加をもたらす。(生理学的にではないが)部分的に硬化した細胞は、その他の<2%と比較して、輸血後25分以内に血液循環から消失していた。また、RBC変形能が減少することで、微小循環のある領域を通る流れを妨げて毛細血管中での細胞捕捉および微小循環閉塞をもたらすということが、研究によって示されている。
【0023】
輸血後にRBCの生存率が減少するということは、生体外保存において十分に確立された結論である。輸血の有効性における1つの認められた基準は、輸血後24時間>70%のRBCが生存していることである。FDA規則では、実際のところこのレベルを75%とすることを要求している。現在、これはA−P溶液の開発においてのみ検証されており、規則遵守を臨床診療において確かめることは不可能である。輸血後のRBCの生存を追跡するには、通常放射性同位元素標識法を必要とし、それは制限された研究環境においてのみ実施される。利用可能なRBCユニットの生存率を予測可能な臨床検査はない。
【0024】
RBC膜の完全性(脆弱性および変形能)を測定することを意図する様々な方法が存在するが、どれも臨床転帰との相関性はなく、または臨床導入につながるよう標準化されていない。RBCの生存率の低下に対する試験または測定基準の確立された「至適基準」はない。その代わり、それぞれの測定基準はそのそれぞれの試験手順の観点から定義されるが、どれも輸血の有効性を予測するよう確立されていない。今日、RBC膜の完全性に関する商業的研究開発のほとんどは、(輸血の有効性と相関する可能性が高い)高応力脆弱性測定よりも、(診断応用を対象とした)低応力変形能測定に最も重点を置いて取り組まれている。
【0025】
特に、臨床的有用性と相関するRBCの劣化に対する試験を開発する価値が、現在のところ争点となっている。現在、血液バンク産業に従事する一部の人は、1)RBCの齢/劣化は臨床的問題である(現在の42日以内の制限)、または2)個々のRBCユニットの劣化を測定することで、それらの使用における決定を向上させることが可能である、という提案に反抗している。両方の論点を支持するテータがまさに存在する一方で、両方ともまだ最終的に確立されておらず、それは臨床的に実施可能な関連試験の手段がいくらか循環的に欠如していることが主な原因である。(米国では最大で1%と規制されている)期限切れに近い自己溶解を試験するためのRBCの小規模なサンプリングを除いて、現在のところ、臨床診療において血液製剤の劣化に対する組織的な評価はない。さらに、一部の専門家は、(RBC膜の脆弱性に対する試験を含めた)あらゆる生体外試験は生体内における細胞の生存および行動を予測可能である、ということに疑問を有している。
【0026】
本開示は、臨床導入および日常的な使用につながる、輸血前に保存血液の劣化レベルを試験するための最初のシステムを示す。
【0027】
本開示は、個々に保存された赤血球(RBC)ユニットの品質劣化を定量することで、それらのそれぞれの割り当て、患者適合性、および使用に関する決定を向上させるように情報をもたらすことが可能な、装置および関連方法を説明する。この装置およびその使用方法は臨床実施に従うと同時に、あらゆる特定のユニットの相対生存率、すなわち予想される有効性を示す。これは、どの、およびいくつのユニットを特定の患者の輸血に使用するかについて決定をするときに、臨床医にRBC品質の実際のデータを提供し得る。さらに、サプライチェーンを介してこの試験を展開することで、分配、計画、および在庫管理の決定を向上させ得る。この試験システムの重要な側面は、大量の結果、その他の関連するデータおよびそれの数学的解析を蓄積することによって、アルゴリズムを最適化することが可能である。それによって、できるだけ意味があるようにそれぞれの後のRBCまたは全血液のユニットを特徴付けることが可能である。本開示は血液の品質管理の応用に関すると同時に、「応力によって誘発された溶血ならびにその後の光学的および計算的分析を介したRBC脆弱性の定量化」における主要技術は、病気および病態の診断、所定の治療中の患者の状態の監視、ならびに生体内(例えば、心室補助装置または人工心臓)および生体外(例えば、透析装置または人工肺)の両方において作動する血液取扱い装置の性能の評価および予測などに幅広く応用可能である。
【0028】
装置および方法の1つの利用案は、膜の脆弱性を基本的な酸素運搬能力に対する総合測定基準として使用して、保存RBCの劣化を追跡することである。現在、「FIFO」(先入れ先出し)は、在庫計画のもっと一般的な方法である。FIFOからの一定の偏差は、(例えば新生児の患者に対して)実在するが、生体内におけるRBCの能力、すなわち輸血の有効性を予想するための基準としての保存期間に圧倒的に基づいている。しかしながら、在庫の全てのユニットに対して定期的に実施されるRBC生存率の試験は、補充に対する品質に基づいた順位付け、(または恐らく最終的には置き換えられるであろう)RBCユニットの時間に基づいた注文および分配を可能とする。例えば、より高い劣化レベルおよび/または割合を有するユニットは、先手を打って過度の品質低下を阻止するためにより早く使用し得る。このような先を見越した実施は、使用前の全体の正味の劣化を最小化することが可能である。さらに、RBCユニット全体の生存率の増加は、患者に対する輸血において、同様の臨床効果を達成するために必要なユニットの量を減少させることが可能なため、使用血液の全体量を減少させ得る。また、あらかじめ設定された一定の最終期限とは対照的な実際の血液品質に基づいたユニットの使用期限を確立するために、RBCの生存率を使用できる可能性がある。そのため、少なくともいくらかの血液の保存期間が増加する可能性があり、かつ期限切れによる血液の損失を減少させ得る。
【0029】
また、輸血時期近くに試験を行った場合、トリアージ方式の適用により、弱い患者から低生存率ユニットを迂回させること、および患者の有効必要性に基づくユニットの選択を可能とすることで、輸血後の合併症を減少させ、ならびに全体の輸血の有効性および臨床転帰を向上させることが可能である。より高い有効性のユニットを、それらを最も必要とする患者と適合させることのほかに、それから利益を受け得ない患者に対してその他のユニットを「浪費」することが避けられる。例えば、正常な赤血球変形能を有する患者において有害であろう輸血は、著しく変化した変形能を有し、特にわずかに酸素が欠乏した患者において実施するときに、なお有効であろう。臨床試験によって、様々な患者のタイプおよびいくつかのRBC脆弱性関連パラメータのための、輸血の結果間における相関性を確立および改善し得る。したがって、効果的なトリアージ方式もまた、患者特有の酸素供給の必要性のためにユニットの選択を調整するために、血液品質の様々な側面を最終的に考慮するであろう。
【0030】
個々の保存(RBC)ユニットの品質劣化を定量化するための装置は、溶血ユニット、光学的分析ユニット、および計算ユニットを含む。同様に、個々の保存(RBC)ユニットの品質劣化を定量化するための関連方法は、溶血段階、光学的分析段階、および計算段階を含む。
【0031】
溶血ユニットまたは段階はRBCユニット(通常450mlのRBCを含む袋)からの(好ましくは外部のストリップからの)小さなサンプルを、浸透圧変化またはせん断力などの、強度および/または持続時間のレベルが制御されてかつ変化する1種以上の物理的応力にさらす。装置のいくつかの実施形態は、RBCを毛細血管を通して押し出すなどして溶血段階を達成するために主に確立された手段を利用し得る。装置のその他の実施形態は、どの手法が最も臨床的な予測結果を得ることができるかの判明に応じた、どちらかのまたは両方の要素のための独自の(または、さらに追加の確立された)手段を包含し得る。さらに、モジュール化および小型化を、費用、速度、便宜さ、多用途性などを考慮して追求することで、臨床的正確さおよび使いやすさを次第に増強することが可能である。
【0032】
溶血ユニットまたは段階に関して、その基本的な要件を実現するための様々な手段が存在する。これまで、それらは単一の総合パラメータのみが制御可能に変化するように他の人によって構成されてきたが、全負荷応力−この構成要素もまた種々の寄与パラメータを制御するように構成された様々な実施形態を包含し、その寄与パラメータはそれぞれのタイプの負荷応力における強度および持続時間に関連する。
【0033】
溶血ユニットまたは段階の主要な特徴は、(標準医療行為において実施可能に得られるよう十分に小さい)RBCサンプルは、様々な範囲の強度および/または持続時間の1以上のタイプの応力に正確かつ制御可能にさらされる。1つの実施形態では、これはサンプルを多数のサブサンプルに分割することによって行われ、それぞれのサブサンプルは種々の組み合わせにおける応力パラメータにさらされる。あるいは、サンプルまたはサブサンプルは、選択時においてリアルタイム解析のための連続して上昇するパラメータレベルにさらされる。特定の種類の応力は、(通常生体内で起こるよりもさらに広い強度範囲の必要性など)その他の制約を受けて、生体内において受ける応力とできるだけ近く理想的に相関すべきである。このような相関性は十分な臨床試験によって証明され得る。装置の初期世代は、臨床的に関連する結果を得るために予測手段を容易に使用可能であろう。
【0034】
変化する応力は、応力が加えられて、または可能な選択サブセットが負荷応力の性質において、もしくは負荷応力の性質に対して変化するようにして、バリエーションを含み得ることに留意すべきである。可変パラメータの強度および持続時間のカテゴリーは、定量的である必要がある。応力の「タイプ」のカテゴリーは、例えば、装置内で方位角を変化させることにおいて定量的であり、または、例えば、応力を引き起こすために使用される運動または抵抗の性質を変化させることにおいて定性的であり得る。応力の強度を変化させるパラメータの例としては、毛細血管を通して液体を押し出すための圧力の増加、または、同心円筒の間の隙間を利用するときの回転速度の増加が挙げられる。応力の持続時間を変化させるパラメータの例としては、特定の応力強度において応力にさらす時間の長さ、または特定量の負荷応力をもたらすいくらかの個別反復可能作用の反復数が挙げられる。
【0035】
応力はRBCの脆弱性および/または変形能の低下に影響するように使用され得る。「脆弱性」試験において含まれる応力は、「変形能」試験において含まれるものよりも強度がより高いことに留意すべきである。前者は血液サンプル中の赤血球に溶血するまで応力を加える一方で、後者は細胞を伸展、または変形させるのに必要な制限された応力のみを提供する。現段階では、高度に正確かつ臨床的に実施可能である両方を備えた脆弱性試験はまだ開発されていない。
【0036】
本開示のために、強度または持続時間に起因しない負荷応力のあらゆる特徴または変化は、応力の「タイプ」に属すると見なされる。また、本開示のために、「カテゴリーパラメータ」または「パラメータのカテゴリー」などのあらゆる無条件の基準は、必然的に強度および持続時間の定量的パラメータのみを指す(すなわち、自動的にタイプを含まない)。
【0037】
強度および持続時間の範囲は、両方が(あらゆる特定の応力のタイプに対して)独立して最小化されるとき、サンプルは比較的わずかに(理想的には0%)溶血し、両方が同時に最大化されるとき、サンプルは比較的多量に(理想的には100%)溶血するように設定されなければならない。重要なことは、両方の強度および持続時間に対してより多い(かつより細かな)段階的変化が可能になると、サンプルを特徴付ける能力がより優れたものとなる。(理想的には、それぞれに対する設定は、精密さを最大限にするために不連続/段階的よりも連続的とする。)
【0038】
溶血ユニットの期待される実施形態は、応力の強度および持続時間の少なくとも1つの可変パラメータを有する少なくとも1つの応力タイプを含む。別の実施形態は、1以上の応力のタイプの選択されたカテゴリーパラメータに対する可変パラメータを有し得る。応力タイプ、強度、および/または持続時間を制御可能なパラメータの組み合わせは、利用される計算論的手法に直接影響し得る。予備試作はそれぞれの構成要素/段階に対して既製の機器を使用し、それは溶解のための商業用ビーズミル、光学的測定のための遠心分離器および分光光度計を含む。どのタイプの生体外溶血が生体内の生存率と最も相関するかが依然として不明であるため、定性的に異なる応力タイプによる試験を実施可能にするように、別の特注設計の溶血ユニットを開発中である。1つの特注手法は同心円筒システムを用い、内側部分が隙間に存在するサブサンプルに細胞−壁の相互作用応力をもたらすように回転する。他には、サンプルを、毛細血管を通過して行き来させるように、圧力勾配応力を利用する毛細血管ベースのシステムを用いる。
【0039】
溶血ユニットの1つの実施形態は、特定のRBCユニットサンプルの溶血を0%(袋内の溶血を考慮しないで)から100%まで変化させるせん断応力を提供する。サンプルの溶血を0から100%に到達させるのに必要なレベルまで応力の大きさを変化させることで、それぞれのサンプルの全ヘモグロビン濃度まで(遊離ヘモグロビン分画によって)観察される溶血を正規化することが可能である。そのため、それぞれの応力の段階的変化において起こる分画溶血(fractional hemolysis)を与えることが可能である。
【0040】
図1は、全応力の大きさにおける単一パラメータを用いて、RBC膜の脆弱特性の二次元表現を示すシグモイド関数によって脆弱性が従来法によって描かれたものを示している。三次元表現は、例えば強度および持続時間などの2つの選択された応力パラメータに依存する溶解をグラフに描くことを可能にする。バックグラウンドの溶解は、RBCの袋内「自己溶解」であり、それは外部負荷圧力ゼロを示す。
【0041】
図2は応力強度および応力持続時間の分離パラメータによって作成された三次元脆特性を示している。両方のパラメータは全せん断応力に寄与するが、直接の関係は必ずしも必要ではないため、それらを分離することは、脆弱特性を高めることが期待される特徴である。また、さらなる応力パラメータは、高次元マトリックスを介したより豊富な脆弱性データのために、追加および/または分離されてもよい。さらに、RBC膜の脆弱性測定は、その他の確立された生体外試験または分析と共に使用可能である。
【0042】
三次元表面、より高次元なマトリックス、またはそれの実験的に有利なサブセット、として表されているかどうかに関わらず、脆弱特性に対する様々な複雑な変化は時間と共に、または病的状態、死亡、もしくは化学的および機械的の両方の人為的影響による細胞の損傷もしくは修飾の結果起こり得る。このような変化は、サンプル中の平均細胞脆弱性の変化、正規に分布した集団の標準偏差の変化、正規性からの偏差、および/または分離した異なる特性を有する細胞亜集団の開発を含み得る。この広範囲に及ぶ潜在的変化は、あらゆる特定のユニットの全体生存率または患者特有の適合性の総合的評価をもたらすために、多変量統計解析を必要とする。
【0043】
最終的には、装置の市販バージョンは、永久卓上ユニットおよび試験されるそれぞれのユニットのための内蔵型使い捨てカートリッジまたはチップを含む完全一体型システムであろう。使い捨て部分は血液サンプルが沈着し得る部分であり、そこから測定値が読み取り可能である。
【0044】
図3は簡易に処分可能な使い捨ての構成要素における実施形態を示す。シリンジドック301はチューブ305を介して溶解チャンバ302に接続される。溶解チャンバ302はチューブ305を介して光学キュベット303に接続される。光学キュベット303はチューブ305を介して廃棄物容器304に接続される。
【0045】
図4は卓上装置401の実施形態を示す。シリンジ402はサンプルをシリンジドック301に注入する。シリンジドック301はチューブ305を介して溶解チャンバ302に接続される。溶解チャンバ302はチューブ305を介して光学キュベット303に接続される。光学キュベット303はチューブ305を介して廃棄物容器304に接続される。構成要素301、302、303、304および305を有する使い捨てカートリッジを減少させることが、商業版に対して期待されている。一体化蠕動ポンプ403は装置401を介してサンプルを移動させる。細胞溶解を可能とする組み込み式モータ、および光学キュベット303内のサンプルの分析を可能とする分光光度計は示されていない。分光光度計は光ファイバー束を介して光源およびキュベットに接続されている。
【0046】
装置の主な初期の使用者は、病院の血液バンクで雇用されている技術者であることが予測され、その人は血液製剤において定期的に実施される一連の試験に装置を組み込むことが可能である。血液バンカーおよび臨床医は、在庫管理の最適化、患者トリアージ方式、血液保存の効率的な最適化、効率的な血液取扱い方法、プロトコルの改良などに対して、試験結果をどのように利用するかを決定し得る。
【0047】
病院はそれぞれのRBCユニットを入手および輸血するために約$800を超える金額を費やしているが、彼らは輸血関連の合併症に対してこれよりもさらに多く費やしており、これは輸血においてよく見落とされる費用であることが、公開データによって示されている。したがって、輸血の有効性におけるいかなる改良によっても、特に試験によって課される比較的安い費用を考慮すると大幅な節約の利益を得ることが可能である。
【0048】
図5は輸血に関連するユニット当たりの費用を示している。病院は通常血液バンクおよび血液採取施設(例えば赤十字)からアレルギー性RBCユニットを、ユニット当たり約$220で入手する。費用は特殊処理されたRBC製剤に対しては相当高い。病院はさらなる血液の保存、試験、患者への注入、および結果の監視のために、ユニット当たり$560で見積もられる追加費用を負担する。これらの費用は複数のユニットの輸血に対してはより安価であろう。また、病院は輸血後の副作用の治療に関連する費用を負担し、その治療自体および長期の入院の両方を引き受ける。ここに含まれないものは、輸血感染症の治療、訴訟、生産性の低下、およびドナーへの負担に関連する費用である。全ての費用は2005年のドルのインフレーション応じて調整されている。
【0049】
記載したように、光学的分析ユニットは、光源、サンプルブロック、および光吸収を検出可能な検出器を含むスペクトル分析ユニットである。光学的分析ユニットは、サンプルに加えられた様々な応力の結果起こる溶血のレベルを評価することが可能である。これはサンプル中の細胞、すなわちサンプリングされたユニットの膜脆弱性を示す。装置のいくつかの実施形態は、市販の分光光度計の使用など、光学的分析段階を達成するために主に確立された手段を利用し得る。装置のその他の実施形態は、どの手法が最も臨床的な予測結果を得ることができるかに応じた、どちらかのまたは両方の要素に対する独自の(または、さらに追加の確立された)手段を包含し得る。さらに、モジュール化および小型化を、費用、速度、便宜さ、多用途性などを考慮して追求することで、臨床的正確さおよび使いやすさを次第に増強することが可能である。
【0050】
1つの実施形態では、光学的分析ユニット/段階は特許出願第11744643号(Michael Tarasev、発明者)に記載される装置を組み込むことを含む。これは光学的分析段階を達成するための1つの予想手段である。
【0051】
他の実施形態では、小規模な適用ではあるが、全ての装置は代わりに市販の分光光度計に依存するよう構成されてもよい。小さな(サブ)サンプルのサイズが要求されるため、NanoDrop(登録商標)(Thermo Scientific社)などの微小体積用の分光光度計が適した分光光度計の例である。
【0052】
光学的分析段階の目的は、適用される応力パラメータのあらゆる特定の組み合わせにより、溶血ユニットまたは段階によって溶解(破壊)されたRBCの割合を決定することである。応力のタイプ、強度、および/または持続時間パラメータの組み合わせは、(サブ)サンプル間で変更可能である。これは、それぞれの特定の組み合わせの応力パラメータを適用することでそれぞれの(サブ)サンプルに対するスペクトル表示を得て、かつそれを予応力サンプル(0%の追加溶解)のベースラインと、サンプルまたはサブサンプル中の全ての細胞が溶解している100%(最大限)の溶解を示す(サブ)サンプルとを比較することによって実行可能である。
【0053】
計算ユニットはサンプルの脆弱特性を蓄積し、かつサンプルをその他の利用可能なユニットおよび以前の試験から得られた多数の累積データと比較する。以前の試験は、あらゆる特定のバージョンの装置に対するベースライン補正を含む(ため、臨床評価を通して確立および改良され得る)。得られた情報は特定のユニットの相対的な劣化を示し、かつRBCユニットの割り当てまたは使用に関与する臨床医またはその他の人によって考慮され得る。
【0054】
計算ユニットまたは段階に関して、最も重要なことは、適用されかつ測定される応力パラメータの範囲下で、どれくらい溶血を起こしやすいかの判明に応じて、それぞれのサンプルを体系的に、完全に、および定量的に特徴付けることである。溶血ユニットまたは段階の特定の手法および実施形態に応じて、多数の計算段階の実施形態が実施可能である。
【0055】
全負荷応力のみを測定する(現在のところ当技術分野において一般的な測定)、または1つのパラメータ(例えば、特定のタイプの応力の強度または持続時間、しかし両方ではない)のみを変化させる溶血ユニットまたは段階のあらゆる実施形態において、あらゆる特定のサンプルは、光学的分析ユニットまたは段階によって測定される、それぞれ個々の応力レベルにおいて起こる溶血の割合に対応する一連の対の値によって特徴付けられるものとする。
【0056】
図8は、光学的分析ユニットまたは段階によって測定される、それぞれ個々の応力レベルにおいて起こる溶血の割合に対応する一連の対の値におけるグラフ的特性を示す。グラフ的特性を二次元プロットまたは曲線において示す。
【0057】
(初期世代において予測される、1つの応力タイプのみの強度および持続時間のそれぞれのカテゴリーパラメータに対するものなどの)ちょうど2つの可変パラメータを有する溶血ユニットまたは段階のあらゆる実施形態において、それぞれのサンプルは(グラフ的には三次元で表現可能であるが)二次元マトリックスによって特徴付けられるものとし、二次元のマトリックスは2つの可変パラメータを表す。マトリックス内のそれぞれの構成要素は、両方の適用パラメータの特定の組み合わせによって溶血ユニットまたは段階において起こり、光学的分析ユニットまたは段階によって測定される溶血の割合(ヘモグロビンをなお内部に含む溶解細胞または無傷細胞の分画)を表す。(著しい相互依存が予測され、あらゆる特定のタイプの応力に関して、あらゆる特定の強度におけるRBCへの影響は、より長い持続時間においてより大きかろうし、逆の場合も同様である。特性化ために少なくとも二次元を有することで、予想されるサンプル生存率を有する予測モデルに基づいて、より加工された完全な特性化をもたらすことが期待される。)
【0058】
(任意の数の応力タイプ、強度パラメータ、および/または持続時間パラメータによる)3(数、n)以上の可変パラメータを有する溶血ユニットまたは段階のあらゆる実施形態において、それぞれのサンプルは三(n)次元以上のマトリックスによって特徴付けられるものとする(直接的にグラフに表すことは不可能である。ハイパーキューブ、複合二次元および/または三次元プロットなどを介して間接的に表現可能である)。マトリックスのそれぞれの次元は(応力タイプ、強度、または持続時間におけるちょうど1つのカテゴリーの下で)可変パラメータを表し、それは一部または3つの全てのカテゴリーに対していくらか存在し得る。多次元マトリックス内のそれぞれの要素は、全ての適用パラメータの特定の組み合わせによって溶血ユニットまたは段階において起こり、光学的分析ユニットまたは段階によって測定される溶血の割合を表す。
【0059】
様々な応力タイプを含むパラメータの組み合わせは、応力タイプにおけるあらゆる可能な変化が、同時に変化するように指定された全てのその他の可変パラメータと適合することを確保しなければならない。また、1つのパラメータを変えることで、他に対する意義または重要性を変化させることが可能であり、それはあらゆる特定の場合において容認可能または不可能である。(例えば、特定の種類の強度を変化させることで、おそらく特定の持続時間の測定において非明示的で不可欠な影響を与え、またはその逆も同様である。)さらに、あらゆる特性マトリックスの全ての要素、ベクトル、面アレイ、またはその他のサブセットが、潜在的パラメータのあらゆる特定の組み合わせに対して完全である必要はない。(例えば、タイプ、強度、および持続時間のそれぞれのカテゴリーにおいて、まさに1つのパラメータを代表する仮想キュービックマトリックスは、ある範囲の強度と不適合である持続時間におけるある値を見出すであろう。あるいは、特定の応力タイプは変化する持続時間とのみ適合して変化する強度とは不適合であるかもしれない。)したがって、例えば、キュービックマトリックスは平面スライスが欠如し、ハイパーキュービックマトリックスは立方体が欠如し得る。他の実例シナリオでは、それぞれのタイプの応力は、(全てのその他のタイプのものとは不適合である)その独自で固有の一連の強度/持続時間パラメータを必要とする可能性がある。このような状況において、確立された数学的(すなわち統計的、数値的)方法を利用した蓄積データの実証的分析により、あらゆる(副次的な)組み合わせの価値を最終的に決定することが可能である。
【0060】
予測モデル(すなわち試験−サンプル特性化の計算)に基づく予想される実験的傾向は、以下のあらゆる組み合わせ、サブセット、または相対的卓立を含む:i)計画的に応力にさらされる前に起こる溶血割合における変化(「ベースライン」溶解または「自己溶解」、応力を加えないときの溶血割合において反映される)、ii)「平均」脆弱性における変化(50%の溶血を達成するために必要な応力パラメータの組み合わせに反映される)、iii)二次元脆弱特性の標準偏差における増加など、サンプルRBCにわたる脆弱性の全体的な分配における変化(適応される応力パラメータの範囲にわたっておこる溶解の分散または分配に反映される)、iv)ベースライン溶解からの境界効果などによる、RBCサンプルの脆弱性における不均一または非対称な変化、およびv)血液循環からの取り出しにおける変化する時間など、あらゆる特定のサンプルにおけるRBCの亜集団に対する上述の様々な組み合わせ。臨床的に関連するデータに対するこれらのまたはその他の観察される相関性のいずれにおいても、高度な統計的モデル化は、このような確立された相関性を考慮してそれぞれの予測サンプルのロバスト特性を構成するために使用可能である。
【0061】
図9から14は、二次元脆弱特性または曲線において仮想サンプルの観察される変化の実施例を表しており、それは非明示的にRBC脆弱性の予測高次元特性を示している。これらの変化は互いに独立して起こり得るため、観察される脆弱特性に同時に影響する。そのため、本明細書において述べられ/示されるように、多数の要素変化を含む性質を有する実験的に観察される特性を作成することが可能である。
【0062】
図9はRBC溶解のベースラインにおける変化を示している。このような変化はRBC溶液中の無細胞ヘモグロビン(Hb)の量を反映している。無細胞Hbの生体内濃度は通常低いが、このような濃度はドナーからそれを収集する間の血液操作によって上昇することが知られている。述べた通り、無細胞Hbの増加は、RBC保存の間に起こり、かつ保存の間のRBCの自己溶解と関連することが文書化されてきた。
【0063】
図10は応力曲線(S曲線)の移動を示している。平均脆弱値が変化した場合、S曲線は応力軸にそって移動する。例としては、特定の応力の大きさにおいて、細胞の50パーセントが溶解するのに必要な持続時間、または特定の応力持続時間(So50)において、細胞の50パーセントが溶解するのに必要な大きさ、として決定される応力レベルは変化する一方で、(例えば、このような分配の標準偏差:σとして与えられる)分配特性は変化しない。RBC保存において、この移動はより低い全応力レベルに向かうことを予測することができ、それは膜をより強固にし(弾力性に乏しい)、そのため負荷応力に抵抗できなくなるという膜の変化を意味することを、既存のデータは示唆している。
【0064】
図11はS曲線の勾配の対称な増加を示している。細胞の平均脆弱性が変化しないままで、細胞集合の脆弱性の分配が変化する場合(例えば、程度の差はあるが均一化する)、S曲線の勾配における変化が予測される。このような変化は脆弱性の分配特性(例えばσ)における変化を反映する一方で、平均値(例えばS50)は変化しない。
【0065】
図12はS曲線の勾配の対称な減少を示している。細胞の平均脆弱性が変化しないままで、細胞集団の脆弱性の分配が変化する場合(例えば程度の差はあるが均一化する)、S曲線の勾配における変化が予測される。このような変化は脆弱性の分配特性(例えばσ)における変化を反映する一方で、平均値(例えばS50)は変化しない。細胞の老化および長い保存期間によってRBC脆弱特性における標準偏差値を増加させ、その結果、垂直方向分が少なくなることが予想される。
【0066】
図13はS曲線の勾配の非対称な変化を示している。RBCの個々の脆弱性の分配における変化は、RBC集団全体に一様に影響しないため、脆弱性の分配特性において非対称な変化をもたらし得る。例えば、細胞脆弱性の分配は、細胞の自己溶解(ゼロ応力における溶解)の境界効果によって非対称となり得る。
【0067】
図14は2つのRBC集団から生じる1つのS曲線から2つのS曲線への変化を示す。溶液中の共通RBC集団は(例えば平均および標準偏差によって定義される)脆弱特性によって適切に説明可能な一方で、RBC膜脆弱性における変化は、(例えば、ドナーの血液循環から細胞を取り出した時点における、形態における変化に続いて、または相対RBC齢を反映して)様々なRBC亜集団によって異なる可能性がある。著しく異なる脆弱特性を有する2以上の亜集団の開発によって、「多相」または「多曲線」性質を示す特性を観察できるであろう。
【0068】
この試験システムに対する、予想され、反復する一連の実施は、上述されるように同時に測定することによって臨床的に実証され、その一方で、輸血患者の臨床転帰および彼らがそれぞれ受け取るRBCユニットの1以上の測定を追跡する。臨床転帰および全ての対応するサンプルのそれぞれの特性に基づいて、候補モデルは後者を前者と相関させるように構成される。最終的に、それぞれのサンプルに対する全ての利用可能な特性データの処理方法は、予測される輸血において、そのユニットの生存率を示すそれぞれのサンプルのある所定値または一連の値を作成するために選択される。この値はRBCの生存率(すなわち予測される有効性)を表すのみであり、臨床医はこのような相対値を、さまざまな状況下にある選択された患者に対してどのユニットが許容されるかまたは好ましいかの決定に変換しなければならないことに留意すべきである。(同様に、供給または在庫管理において、血液バンカーは試験からのデータに基づいて彼らの決定において専門家としての判断力を使用し得る。)再帰的に、このような専門家としての判断は、試験が臨床診療においてより確立されてかつ日常的となるように、時間と共にのみ向上すべきである。
【0069】
本開示において示される利点は、(限定されることなく)使用時近くにおいて臨床医にあらゆる保存RBCユニットの劣化の程度を確認可能とすること、および一般的に稀なユニットを最適に割り当てるための医学的判断における情報を与えることを含む。初めて、臨床医は特定の患者に対してそれを使用するかどうかを決定する前に、ぞれぞれのRBCユニットの生存率および予測有効性を知ることが可能となる。外傷手術などの特に高い有効性を必要とするそれらの患者は、現在のところ、制限的なプロトコルの下で輸血を受けることが示唆されるが、彼らはそれを受けないために迅速かつ楽な回復ならびにより短期の入院が可能となる。その他の場合では、不適切なユニットの生存率または不適切な実施による未知かつ許容し得ないリスクに対して埋め合わせをしようとする試みにおける追加のユニットを輸血する慣習において、多くの血液を必要としなくなるであろう。したがって、過剰な輸血に関連する合併症のリスクも同様に軽減するであろう。追加のユニット、それらの輸血、および記載した合併症に対する医療費用もまた減少し得る。さらに、ある患者に対して、次善の有効性を有する血液製剤を受け取ることは、直接の危害の原因となり得るという調査結果がある。さらに、この測定基準は使用時近くにおいてのみ有用であるだけでなく、在庫の計画および制御を最適化するためにサプライチェーンおよび流通機構全体にわたっても有用である。先入れ先出し(FIFO)システムに代わって、ユニットは(確立されたサプライチェーンおよび在庫管理ツールを利用して)それらのそれぞれの予想生存率および測定劣化割合におけるリアルタイムデータに基づいて、戦略的に送られることが可能である。これは稀で不確かな血液供給の総合利用を改善可能である。全てのこのような考察において、RBC脆弱性の定量化によって血液製剤の劣化を正確に特徴付ける能力の程度は、限られた在庫の効率的なトリアージ方式の可能性に比例する。
【0070】
さらなる利点は、臨床診断目的のためのその他の考案された関連試験によって使用される、一般的な低応力(変形能)による手法とは対照的に、RBC膜の柔軟性の決定するための高応力(脆弱性)に基づく手法を含む。2つの得られる測定結果は相関しているようであるが、高応力を加えること(すなわち意図的に溶血を誘発すること)は、生体内における生理的溶血および輸血の有効性とより相関する可能性がある。さらに、それは、広範囲に及び、効率的な、および/または多重パラメータのデータ収集ならびに解析プロトコル、ロバスト、標準化、および/またはすぐに使える血液製剤の開発につながり得る。また、このような考察は、特定の診断市場など、血液品質管理の主要目的を超えたさらなる応用に関連する。
【0071】
前に述べたように、1つの実施形態は、RBCを含むサンプルまたはサブサンプルを様々な強度および/または持続時間における1以上のタイプの物理的応力にさらすこと、さらす段階の間に行われた溶血のレベルを定量化すること、およびRBC脆弱性に対する臨床的に意味のある評価を表す値または一連の値を出力するために定量化の段階からのデータを処理すること、を含む方法である。
【0072】
本発明におけるこれらの記載によって、当業者に全てのそれぞれの側面において最良の形態であると現在のところ考えられているものを作り使用することを可能とする一方で、この分野における彼らはまた、使用される具体的な実施形態、方法、および/または実施例における変更、組み合わせ、およびそれらと同等なものの存在を理解かつ認識するであろう。形式上および使用における多数の変更が、当業者によってなされ得る。潜在的な変更は、RBCサンプルを応力にさらすこと、またはサンプルを前記応力にさらした後に溶血がどれくらい起こるかを定量化することに対する、様々な代替手段を含む。その他の変更は、試験結果に属する指数または値を変化させ得る。全てのこのようなかつその他の変更は、発明の精神および範囲内にあることが意図され、さらに以下の実施例によって説明される。
【実施例1】
【0073】
臨床現場におけるRBCユニットの利用を改善する段階(限定的)。
1.RBCユニットの実際の脆弱特性を評価する。このような評価は、保存(老化)RBCと抽出したてのRBCとの実際の脆弱特性の違いを決定することを含む。このような特性は、応力の変化する強度および/または持続時間、ならびに細胞−壁の相互作用、外部の機械的圧力変動、浸透性せん断応力(osmotic shear stress)、またはその他の物理的応力などのせん断応力を加える種々の方法を包含し、RBC溶解の一因となる、少なくとも1つの次元のパラメータに従って構成可能である。
2.実際のRBCの脆弱特性を生体内におけるRBCの予想性能特性と相関させる。脆弱特性評価から生じる性能特性は、限定されるものではないが、
・輸血後の血流中における予想RBC生存レベル
・毛細血管網を移動することでおそらく酸素を組織に運搬可能である細胞の分画における予想時間依存性
・生体内におけるRBC溶解の予想される割合
・無細胞ヘモグロビンの初期濃度
を含み得る。
3.それぞれのRBCユニットの予想性能特性を、それぞれの臨床状態における輸血のための最適な特別要件と相関させる。臨床状態と関連する特別要件は、
・ユニット中の活性RBCの初期濃度
・RBCユニット中の無細胞ヘモグロビンの初期濃度
・輸血後のRBCの要求される短期間生存
・輸血後のRBCの要求される短期間生存(輸血RBCの劣化/溶解の割合として表される)
を含み得る。
4.それぞれの患者の臨床状態に対して最適な特別要件と最も密接に相関する予想性能特性を有するRBCユニットを選択して、それぞれの患者に輸血する。それぞれの臨床状態において、輸血RBCが患者の正常な天然RBCと同様に機能することが望ましいが、このような目標に到達することは現在の医療行為において実行不可能である。したがって、それぞれの患者がそれぞれのRBC輸血から最大限可能な利益を得られるように、このような方法で輸血の全ての有効性を最適化することが望ましい。
【実施例2】
【0074】
選択された患者の状態に対する実施例1の段階の実施。
【0075】
特定の患者群(例として、急性病治療患者および鎌状赤血球貧血患者)の特別要件を考慮して、輸血のためのRBCユニットを選択する。最良かつ最も有効なRBCの使用が状況にかかわらず全ての患者に対して優遇される一方で、血液の分配および割り当ての必要性と結び付けられる血液保存の必要性により、患者の特別な必要性に基づいた血液供給におけるトリアージの必要性が作り出される。特別に特定されるおよび/または予想される膜脆弱特性を有するRBCと、輸血を考慮したRBCの脆弱特性に対して所定の特別な要求を有する病的状態との整合は、外傷患者の急性失血の事例において証明することが可能である。
【0076】
外傷患者における輸血の有効性に対する主な要件は、彼らの血液の酸素運搬能力の即時かつ効率的な回復である。同時に、もし必要な場合、血流におけるRBCの長期生存(輸血RBCの長期酸素運搬能力)については妥協の余地があり得る。外傷における急性失血の場合、組織への酸素の運搬は不可逆的な組織の損傷または患者の死亡を避けるために、すぐに回復させなければならない。同時に、輸血が血液の酸素運搬能力の即時の回復をもたらすかぎり、患者の内部でどれくらいの間輸血細胞が損傷を受けずに活性であるかはそれほど重要ではない。したがって、即時の酸素運搬能力を最大限に回復させることが可能なユニットは、(仮に)全ての輸血RBCが輸血後の最初の24時間で血液循環から取り除かれたとしても、容認されると考えられる。循環血液量の増加による合併症がなければ、このような患者は貧血症状を和らげる必要がある場合、追加のユニットを輸血することが可能である。
【0077】
この特定の状況(外傷被害者)と関連する要求事例である:
・血管収縮と関連する遊離ヘモグロビン関連亜酸化窒素(NO)減少の可能性を減少させるための、サンプル中における最小限の遊離ヘモグロビン、
・ゼロ時(輸血時)における最大量の活性(酸素を運搬/毛細血管網を通過可能)RBC、
・最大の短期間(すなわち24時間)におけるRBC生存割合。
【0078】
そして、これらは利用可能なRBCユニットの適切な予想性能特性と相関する。例えば、図15は、特定のせん断応力度におけるRBC生存割合の時間依存曲線を示す。この状態は3つのシナリオのいずれかによって表されるであろう。両方の曲線1501および1502によって表される特性を示すサンプルは、現在のFDA基準に基づいて両方とも許容され得るが、曲線1501によって表されるサンプルは上記の場合において好ましいであろう。あるいは、曲線1503によって表されるサンプルは、鎌状赤血球貧血に対して好ましい可能性があり(以下の実施例を参照のこと)、その代わり、そこでは長期のRBC生存が主に考慮される。
【0079】
酸素運搬における長期間の支援はその他の実例:鎌状赤血球貧血患者、に対する輸血の基本的要件であろう。状態に応じて、このような患者は、重症な貧血の兆候を示し、それは輸血によって軽減させることが可能である。より重症な場合では、年間50を超える輸血が必要とされ得る。明確に、患者の血流における輸血RBC生存の持続時間はここで極めて重要である。同時に、組織酸素化に対する最初(輸血後即時)の寄与は、外傷被害者と大いに異なり、次に重要であろう。例えば、鎌状赤血球貧血患者のために、現在のFDA基準では容認されないが、50%の活性RBCおよび生体内における長期の生存期間を有するユニット(図15における曲線1503)は、輸血時において100%の活性RBCを有するがより短期の生存期間を有するユニット(図15における曲線1501)よりも実際に好ましいことが想定される。それは最初の24時間後の血流中においてRBCの総数の25%より少ない減少を示すことで、現在のFDA基準によって容認されるであろう。当然、血液の割り当てにおけるさらなる改善は、FDA基準を変更しなくとも達成可能であるが、個別の調整およびトリアージの可能性によって、将来におけるこのような変更はまさに保障されたものとなるでしょう。
【0080】
上述の実施例では、RBC集団の分画によって示される著しく高い安定性(図15の曲線1503)によって、それぞれの曲線の下方の領域によって表されるように、第1週にわたって約3.5倍高い全酸素の運搬、および図15の曲線1501に示される膜脆弱性を有するRBCと比較して、最初の1か月にわたって約8倍高い運搬を可能とする。これは患者の安定な酸素供給に対する必要性とは別に、図15の曲線1501において示される劣化を表すRBCにおいては不可能なことである。同時に、最初の24時間で、曲線1501のような特性を有するRBCユニットの輸血は、曲線1503のような特性を有するものの約40パーセント多い酸素を組織に運搬することが期待され、それは患者にさらに強力な短期の利益をもたらすことが可能である。これらの実施例は意図的に極端な潜在的シナリオを選択しているが、それらは実際のRBC輸血における、概念、問題、および可能性のある解決法を強調している。
【0081】
その他の病理学的および臨床的状態は、輸血後に生体内においてRBCの機能を存続かつ実行させるRBCの能力に対して同様の制約を課し得る。上記の実施例によって示されるように、輸血によって提供される酸素化促進の大きさ、またはこのような酸素化促進における時間変化に対して種々の強調を置くことで、様々な状況を想定することが可能である。したがって、種々のRBC生存要件は、RBCがさらされる生体内応力の様々なパラメータに関連し得る。外傷患者に対する必要な迅速な酸素化促進は、高い初期応力に抵抗するRBCの能力を強調するであろう(あらゆる特性における応力強度パラメータ/次元をより顕著に特徴としている)。その一方で、長期間、低度の応力に抵抗する細胞の能力をそれほど重要視しない(持続時間に関するそれらのパラメータをあまり特徴としない)。同時に、長期の細胞生存から利益を得る鎌状赤血球貧血患者は、長期の持続時間において低強度の応力に抵抗するRBC能力から利益を得ることが可能である。
【0082】
前述の実施例によって、様々な患者集団群の特定の要件および必要性のために、輸血(または輸血されるRBCの脆弱特性)を調整することによって血液供給をトリアージ方式で決めることに対して、かなりの可能性が存在していることが示される。
【0083】
本発明において詳しく述べられた手段を介してRBC脆弱性を決定するための手法を、市販のビーズミル(Quiagen社のTissueLyser LT)、およびNanoDrop ND100分光光度計を使用してあらかじめ試験した。TissueLyserは、振動数および持続時間の可変パラメータを用いて、サンプルをせん断応力にさらす。特注設計の溶解ユニットおよび独自の光学ユニットは依然開発途中であるが、この試験的なシステムによって、基本概念における簡易な卓上試験が可能となる。
【0084】
図6は誘発されたRBC溶解のせん断応力持続時間およびせん断応力度への依存を示す。1つのユニット(期限切れ前の21日目)から得られた1.5mlの純粋RBCサンプルを、1つ5mmのスチールビーズを用いてTissueLyser LT(Quiagen社)を使用して溶解した。サンプルを3つの異なる振動数にて溶解した:50Hz601、35Hz602および15Hz603。短時間の遠心分離の後、上清の一定分量を必要に応じて0.1MのHEPES、pH7.8を用いて希釈し、そして放出されたヘモグロビン(Hb)の総量を、NanoDrop ND100分光光度計を使用してA577−A700の吸光度差に基づいて測定した。液体窒素を使用したサンプルの反復凍結融解を介して決定される既知の全Hb容量と比較して、上清中に放出されるHbの分画(溶解割合)によって結果を表す。予想されるように、より高い応力は遊離ヘモグロビンの得られた濃度において反映されるように、より多くの溶血をもたらした。図6のものと同様の数々の二次元特性は、上述したように、三次元特性を構成するために使用可能である。
【0085】
図7は同齢かつ期限切れ前のRBCユニットから得られた予備データを示している。試験された6ユニットのうちの、3ユニットをそれぞれ曲線701、702、および703として示す。溶解段階には、50Hzの固定強度を用いた変化する応力持続時間を使用した。結果によると、同齢の6つの無作為に選択されたRBCユニットの間で、細胞の脆弱性において統計的に著しい変動性があり、それは記載された手法によって再現性良く検出される。
【0086】
図7において、(期限の10日前に)ユニットの試験片から得られたRBCサンプルを、溶解の前に、30g/Lのウシ血清アルブミンで補いながらAS3保存溶液を用いて希釈して、25μMの全ヘモグロビン濃度とした。溶解サンプルは350μLであり、溶解後には希釈しなかった。その他の、溶解およびその後のスペクトル解析は図6と同様に行った。それぞれのデータ点は3つの独立した測定を表している。平均σ=4%、(袋内の溶解を表す)「ゼロ」持続時間における測定を除いて、σ=10%。
【0087】
この試験が一般的に受け入れられる前に、2つの明確な障害が残っている。第1に、生体外での広範囲に及ぶ試験を、膜脆弱性によって反映されるRBC劣化の時間依存性の側面を確認するために実施しなければならない。第2に、生体内での臨床試験は、測定されたRBCの脆弱性と関連する臨床転帰とを関連付けるために必要であろう。この関連付けは、輸血の有効性に対する容認された「至適基準」がまだないため、確実に確立するのは困難であろう。適切な性能測定基準および適した患者群の選択は、複数の血液バンカーおよび臨床医との継続した連携および協議が必要であろう。事業の複雑さおよび範囲にもかかわらず、広範囲の支持を最終的に得たこのような研究の先例が実際にある(例えば、TRICC試験)。
【0088】
患者との接触または製品の交換は含まれず、かつ患者は現在のプロトコルの下でまだ認可されていないものを受け取らないので、予測される規制障害はわずかである。将来は、最大で42日間の保存期間が、(例えば、RBC脆弱性試験による)予想される血液生存率および血液の品質を確かめるためのその他の試験に基づいたリアルタイム品質追跡によって完全に置き換え可能であるが、最初は、試験は現在のところFIFOまたは無作為に割り当てられた血液の利用を単に改善するだけであることが考えられる。
【0089】
血液製剤は価値が高くかつ希少な資源であり、それらの利用可能性および有効性を最大化するために、最大限努力すべきである。RBC保存の必要性は現時点において不可避であるが、正味の品質低下を最小化し、かつ全ての血液供給の利用を増加させるための段階を踏むべきであろう。総合的な品質低下測定としてのRBC脆弱特性の簡易、手頃な試験によって、RBCの放出、選択および使用に関して、十分な情報に基づいて決定を下せるよう医療専門家を支援することが可能である。
【0090】
本開示のために、血液は全血または濃厚赤血球として定義される。
【0091】
本開示のために、無細胞ヘモグロビンは、赤血球から血漿またはRBC保存溶液に放出されるヘモグロビンとして定義される。
【0092】
本開示のために、ヘモグロビンは、限定されるものではないが、酸素化−、脱酸素化−、一酸化炭素化−、およびメトキシ化−型のヘモグロビンを含む様々な形状のヘモグロビン、および全てのその型の集合体と見なされる全ヘモグロビン、として定義される。
【0093】
本開示のために、トリアージは相対的な患者の必要性に基づく優先順位づけの医療資源として定義される。
【0094】
本開示のために、赤血球としても知られているエリスロサイトは、ヘモグロビンを含む血液細胞であり、体内組織への酸素の運搬に関与している。大文字化された用語、赤血球、またはRBCは、輸血において使用される保存溶液中のエリスロサイトに対する適切な名称である。
【0095】
本発明が実施形態およびそれの様々な代替を参照しながら本明細書において説明されてきたが、本発明がこのような実施形態に限定されないことは明らかである。それどころか、本明細書および特許請求の範囲に定義されるように、多数の変更が本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者とって明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2009年1月21日に出願された米国仮特許出願第61/146,145号、および2010年1月20日に出願された米国非仮特許出願第12/690,916号の利益を主張する。また、本出願は2007年5月に出願された米国非仮実用特許出願第11/744643号にも関連する。これらの先行出願の内容はその全体が参照により援用される。
【0002】
本開示は医療装置の技術分野に属する。より詳細には、本開示は血液バンクおよび輸血産業のための、保存された赤血球(RBC)ユニットにおける品質管理の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
輸血は多くの状況下で多種多様な患者のために使用されている。最も多い輸血は、実際のところ赤血球の輸血である。赤血球は赤血球(RBC)ユニットに保存されている。血液バンク産業、輸血産業、および病院は、RBCユニットを監視している。輸血可能なRBCユニットの現在の最高齢は42日である。RBCユニットは一般的に先入れ先出し(FIFO)を基本に管理されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、個々に保存された赤血球(RBC)ユニットの品質劣化を定量することで、それらのそれぞれの割り当て、患者適合性、および使用に関する決定を向上させるために情報をもたらすことが可能な、装置および関連方法を説明する。この装置およびその使用方法は臨床実施に従い、あらゆる特定のユニットの相対生存率、すなわち予想される有効性を示す情報をもたらす。これは、どの、およびいくつのユニットを特定の患者の輸血に使用するかについて決定をするときに、臨床医にRBC品質の実際のデータを提供し得る。さらに、サプライチェーンを介してこの試験を展開することで、分配、計画、および在庫管理の決定を向上させ得る。この試験システムの重要な側面は、大量の結果、その他の関連するデータおよびそれの数学的解析を蓄積することによって、アルゴリズムを最適化することが可能である。それによって、それぞれのその後の試験結果を解釈し、できるだけ意味があるように血液または血液サンプルのそれぞれのユニットを特徴付けることが可能である。本開示は血液の品質管理の応用に関すると同時に、「応力によって誘発された溶血ならびにその後の光学的および計算的分析を介したRBC脆弱性の定量化」における主要技術は、病気の診断などに幅広く応用可能である。
【0005】
個々の保存RBCユニットの品質劣化を定量化するための装置は、溶血ユニット、光学的分析ユニット、および計算ユニットを含む。同様に、個々の保存RBCユニットの品質劣化を定量化するための関連方法は、溶血段階、光学的分析段階、および計算段階を含む。
【0006】
溶血ユニットはRBCユニット(通常450mlのRBCを含む袋)からの(好ましくは外部ストリップからの)小さなサンプルを、浸透圧変化またはせん断力などの、強度および/または持続時間のレベルが制御されてかつ変化する1種以上の物理的応力にさらす。
【0007】
光学的分析ユニットは、光源、サンプルブロック、光分散要素、および光強度が測定可能な検出器を含む、スペクトル解析ユニットである。光学的分析ユニットは溶血によって生じる無細胞ヘモグロビンのレベルを評価可能であり、溶血はサンプルに加えられる様々な応力の結果生じる。この溶血はサンプル中の、すなわちサンプリングされたユニット中の細胞膜脆弱性を示す。
【0008】
計算ユニットはサンプルの脆弱特性を蓄積し、かつサンプルをその他の利用可能なユニットおよび以前の試験から得られた多数の累積データと比較する。以前の試験は、あらゆる特定のバージョンの装置におけるベースライン補正を含む(ため、臨床評価を通して確立および改良され得る)。得られた情報は特定のユニットの相対的な劣化を示し、かつRBCユニットの割り当てまたは使用に関与する臨床医またはその他の人によって判断される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は全応力の大きさにおける単一パラメータを用いて、脆弱性がシグモイド関数で従来法によって描かれたものを示す。
【図2】図2は応力強度および応力持続時間の分離パラメータによって作成された三次元脆弱特性を示す。
【図3】図3は簡易に処分可能な使い捨て構成要素の実施形態を示す。
【図4】図4は付属の使い捨て構成要素が取り付けられた卓上装置の実施形態を示す。
【図5】図5は輸血に関連するユニット当たりの費用を示す。
【図6】図6は誘発されたRBC溶解のせん断応力持続時間およびせん断応力度への依存を示す。
【図7】図7は同齢かつ期限切れ前の3つのRBCユニットから得られた予備データを示す。
【図8】図8は光学的分析ユニットまたは段階によって測定される、それぞれ個々の応力レベルにおいて起こる溶血の割合に対応する一連の対の値におけるグラフ的特性を示す。
【図9】図9はRBC溶解のベースラインにおける変化を示す。
【図10】図10は応力曲線の移動を示す。
【図11】図11はS曲線勾配の対称な増加を示す。
【図12】図12はS曲線勾配の対称な減少を示す。
【図13】図13はS曲線勾配の非対称な変化を示す。
【図14】図14は2つのRBC集団から生じる、1つのS曲線から2つのS曲線への変化を示す。
【図15】図15は特定のせん断応力度におけるRBC生存割合の時間依存性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
保存の間、RBCの品質はRBC中の多数の形態学的および生化学的変化のために劣化する。それはATPの枯渇および内因性RBC抗酸化物質の低下を含み、一般的にRBC細胞骨格タンパク質および膜の損傷の原因となり、結果的に輸血時における生体内でのRBCの生存率の減少をもたらす。このようなRBCの劣化は、RBC膜の変形能障害および脆弱性の増加に反映され、それは輸血後のRBCの生存および組織酸素化の有効性と否定的に関連する。より脆弱な膜は、生体内においてあらゆる特定細胞の溶血傾向を増加させ、かつ(生体内において生存している場合でも)細胞が組織に酸素を運搬する能力を減少させる。
【0011】
(例えば急性期治療における)ある患者群に対して、多数のRBCユニットはそれらの42日の最大日数よりかなり前に危険なほど効果が無くなっていることが調査により示されている。これが起こったときの正確な日数はRBCユニット間で変化し、特定のRBCユニットにおけるこのような生存率の低下に対する試験手段が現在のところない。あらゆる特定のRBCユニットの劣化は、時間に加えて、ドナー間のばらつき、保存状態、および輸送状況などを含む様々な要因によって変化し、それは現在の42日の一定の日数基準を不適切な代用物としている。
【0012】
劣化の程度はある患者群にとって重要であり、もし分かっている場合、医師は情報に基づいてより良い判断を下すことが可能である。例えば、救急患者は輸血が無効力であることによって著しく被害を受けるため、最も生存能力のあるユニットに対して優先されるのは当然であろう。しかしながら、これまでのところ、期限切れではないユニット間で生存率を判別する方法はない。逆に、ゆっくりと劣化しているユニットは42日を経過しても、ある患者に対しては容認され得るが、個別の試験をせずしてこのようなユニットを特定する方法はない。
【0013】
あらゆる特定のRBCユニットの輸血有効性に対して信頼性のある予測因子がない場合、最も脆弱な患者を扱う医師は、時には輸血なしで回復可能であると思われる患者の輸血を差し控える(制限的手法)。このような慣習は、患者の回復を遅らせ、入院日数を延長させ、さらなる過程の必要性が増し、および患者のリスクを増加させる可能性がある。しかしながら、輸血を差し控える医師は、信頼できない生存率の血液を使用することにより起こる潜在的な合併症は、上記の問題よりも重大であると感じているのかも知れない。別の場合では、医師は、即座に組織酸素化を回復するのに十分な生存能力のあるRBCを提供しそこなう危険性を最小化するため、時には必要以上のより多くのユニットを使用せざるを得なくなる。これはその他の患者に適しているであろう追加のユニットを必要とするだけでなく、患者を様々な合併症のリスクにさらす。(血液型適合性エラーなどのいくつかのリスクは遍在しているため、輸血されるユニットの数に比例する。循環血液量の増加などのその他の合併症は過剰なRBCを受け取ることと特に関連している。)実際に、現在いくつかの病院は、外傷外科医からの「より新鮮」な血液に対する個別の要望に対応するよう努めている。患者の安全性および無駄なユニットの問題のほかに、現行の慣習と関連した多額の費用の問題がある。
【0014】
さらに、血液バンクサプライチェーンおよび在庫管理における現在の方法も同様に、特定のRBCユニットの劣化割合を考慮に入れることが不可能であるが、その代わりに「先入れ先出し」(FIFO)システムに依存しなければならない。実際の品質劣化を測定および追跡する手段がないため、保存時間によって提供される不十分な代用物によって、次善の経路選定および分配がもたらされる。
【0015】
赤血球(エリスロサイト(erythrocytes)としても知られている)は、毛細血管網を通って代謝的に活性な細胞に酸素を運搬、かつ代謝的に活性な細胞から二酸化酸素を除去することに関与する非常に特殊化した細胞である。それらは両凹形状であり、直径は平均約8−10ミクロンである。膜は非常に弾力があるため、細胞はたった4−5ミクロンの直径の毛細血管を通過することができる。同時に、膜は破壊または分解を避けながら、流れによって誘発される継続する相当の応力に耐え得るよう十分に強固でなければならない。通常の膜安定性および柔軟性を有する赤血球は、損傷することなく効果的に循環可能であるのに対し、劣化した細胞は生体内において溶血を起こすか、または毛細血管を閉塞する可能性が高い。
【0016】
様々な抗凝固剤および防腐剤(A−P)溶液が、長期保存を可能とするために開発されてきた。液体状態のRBCユニットは、現在のFDAに認可された最大の保存期間である42日間、1−6℃で保存される。かなりの割合の患者は、保存によって相当影響を受けた血液製剤を受け取る。最近の研究では、米国において輸血されたRBCの平均齢は21日であることが示されている。バクダッドにある米国陸軍戦闘支援病院では、RBCの平均保存期間は33日であることが報告された。O型Rhマイナスなどのまれな血液型に対しては、>60%の保存血液ユニットが≧28日齢であることが確認された。
【0017】
保存期間がどれくらい輸血の有効性に影響を与えるかという疑問に研究が分岐する。様々な前臨床試験によって、より長い保存期間とより低い組織酸素化とが関連付けられている。また、保存期間の増加は、死亡率、肺炎、受傷後の多臓器不全、血行動態学的(hemorrheological)疾患、重篤感染症、輸血関連急性肺障害、および微小循環血行動態の悪化の事例の増加に関係している。RBCの保存が輸血の有効性に与える影響を分析している多数の報告書において、保存されたRBCを重病患者に対して使用することの損益特性について疑問が提起されている。
【0018】
一方では、多数の研究において、RBCの保存期間が輸血の有効性に与える悪影響は全く気付かれていなかった。保存期間の不適当な範囲、あらゆる特定の工程における混合/複数RBCユニットの使用、白血球による負荷(burden)の潜在的影響、患者の変化する生理的条件、および保存期間単独ではユニット生存率の次善指標としかなり得ない、いう見解を含めて、様々な仮説がこの矛盾を説明するために提示されてきた。
【0019】
RBCの長期保存は、数々の形態学的および生化学的な変化をもたらす。それは「赤色細胞保存損傷」と総称されて、ATPおよび2,3−ジホスホグリセリン酸(2,3−DPG)レベルの減少、および酸化ストレスの増加と関連する。また、RBCの変形能の減少が保存の第1週目の終わりに開始することが報告されており、その工程は代謝状態における保存によって誘発される酸化的な損傷および変化によってもたらされたものである。したがって、膜の状態は全体の細胞生存率に対する総合指標として機能する能力を有している。
【0020】
観察されるRBC膜の変化の大きさは、時間の他に、使用されるA−P溶液、修飾添加物の存在、袋の材料などの様々な要因に依存するようである。保存期間の終わり頃のRBC溶液の特性(体外溶血を含む)は、製造業者による製造、保存、および/または輸血の状況に大きく依存することを示す結果によって、この問題はさらに複雑化する。また、この変化性は溶液中のその他の有形成分の存在にも関連し得る。様々なドナーからのRBC特性間の変化性は、劣化レベルおよび/または割合に対するさらなる未知のパラメータを追加する。
【0021】
RBC変形能の低下は、マイクロピペット技術、細孔ろ過、光ピンセット、レーザーを利用した回折法(エクタサイトメトリー(ektacytometry))などを含む様々な実験技術によって広く文書化されてきた。ほとんどの場合において、RBCの「変形能」の観点から結果が提示および議論されているが、これらの様々な試験によって測定される基本的な特性は、全く同一である必要はないことに留意すべきである。また、いくつかの技術では、特定のサンプルにおいて全細胞にわたる平均化された特性を測定する一方、その他においては、単一細胞の測定から結果を導き出している。低応力、単一細胞の「変形能」試験は、臨床診断学的応用において長い間追求されてきたが、「脆弱性」は、総合サンプルに加えられる持続高応力下での細胞の溶血傾向を調査する。後者は血液の品質管理の応用に対する関連特性をより良く捕らえることが期待される。
【0022】
RBCにおける変形能の減少は、血流中での輸血後の生存期間および毛細血管網を通過するための細胞の能力の両方に著しく影響することが示されてきた。硬化したRBCは肺血行動態を著しく変化させ、血管抵抗の増加をもたらす。(生理学的にではないが)部分的に硬化した細胞は、その他の<2%と比較して、輸血後25分以内に血液循環から消失していた。また、RBC変形能が減少することで、微小循環のある領域を通る流れを妨げて毛細血管中での細胞捕捉および微小循環閉塞をもたらすということが、研究によって示されている。
【0023】
輸血後にRBCの生存率が減少するということは、生体外保存において十分に確立された結論である。輸血の有効性における1つの認められた基準は、輸血後24時間>70%のRBCが生存していることである。FDA規則では、実際のところこのレベルを75%とすることを要求している。現在、これはA−P溶液の開発においてのみ検証されており、規則遵守を臨床診療において確かめることは不可能である。輸血後のRBCの生存を追跡するには、通常放射性同位元素標識法を必要とし、それは制限された研究環境においてのみ実施される。利用可能なRBCユニットの生存率を予測可能な臨床検査はない。
【0024】
RBC膜の完全性(脆弱性および変形能)を測定することを意図する様々な方法が存在するが、どれも臨床転帰との相関性はなく、または臨床導入につながるよう標準化されていない。RBCの生存率の低下に対する試験または測定基準の確立された「至適基準」はない。その代わり、それぞれの測定基準はそのそれぞれの試験手順の観点から定義されるが、どれも輸血の有効性を予測するよう確立されていない。今日、RBC膜の完全性に関する商業的研究開発のほとんどは、(輸血の有効性と相関する可能性が高い)高応力脆弱性測定よりも、(診断応用を対象とした)低応力変形能測定に最も重点を置いて取り組まれている。
【0025】
特に、臨床的有用性と相関するRBCの劣化に対する試験を開発する価値が、現在のところ争点となっている。現在、血液バンク産業に従事する一部の人は、1)RBCの齢/劣化は臨床的問題である(現在の42日以内の制限)、または2)個々のRBCユニットの劣化を測定することで、それらの使用における決定を向上させることが可能である、という提案に反抗している。両方の論点を支持するテータがまさに存在する一方で、両方ともまだ最終的に確立されておらず、それは臨床的に実施可能な関連試験の手段がいくらか循環的に欠如していることが主な原因である。(米国では最大で1%と規制されている)期限切れに近い自己溶解を試験するためのRBCの小規模なサンプリングを除いて、現在のところ、臨床診療において血液製剤の劣化に対する組織的な評価はない。さらに、一部の専門家は、(RBC膜の脆弱性に対する試験を含めた)あらゆる生体外試験は生体内における細胞の生存および行動を予測可能である、ということに疑問を有している。
【0026】
本開示は、臨床導入および日常的な使用につながる、輸血前に保存血液の劣化レベルを試験するための最初のシステムを示す。
【0027】
本開示は、個々に保存された赤血球(RBC)ユニットの品質劣化を定量することで、それらのそれぞれの割り当て、患者適合性、および使用に関する決定を向上させるように情報をもたらすことが可能な、装置および関連方法を説明する。この装置およびその使用方法は臨床実施に従うと同時に、あらゆる特定のユニットの相対生存率、すなわち予想される有効性を示す。これは、どの、およびいくつのユニットを特定の患者の輸血に使用するかについて決定をするときに、臨床医にRBC品質の実際のデータを提供し得る。さらに、サプライチェーンを介してこの試験を展開することで、分配、計画、および在庫管理の決定を向上させ得る。この試験システムの重要な側面は、大量の結果、その他の関連するデータおよびそれの数学的解析を蓄積することによって、アルゴリズムを最適化することが可能である。それによって、できるだけ意味があるようにそれぞれの後のRBCまたは全血液のユニットを特徴付けることが可能である。本開示は血液の品質管理の応用に関すると同時に、「応力によって誘発された溶血ならびにその後の光学的および計算的分析を介したRBC脆弱性の定量化」における主要技術は、病気および病態の診断、所定の治療中の患者の状態の監視、ならびに生体内(例えば、心室補助装置または人工心臓)および生体外(例えば、透析装置または人工肺)の両方において作動する血液取扱い装置の性能の評価および予測などに幅広く応用可能である。
【0028】
装置および方法の1つの利用案は、膜の脆弱性を基本的な酸素運搬能力に対する総合測定基準として使用して、保存RBCの劣化を追跡することである。現在、「FIFO」(先入れ先出し)は、在庫計画のもっと一般的な方法である。FIFOからの一定の偏差は、(例えば新生児の患者に対して)実在するが、生体内におけるRBCの能力、すなわち輸血の有効性を予想するための基準としての保存期間に圧倒的に基づいている。しかしながら、在庫の全てのユニットに対して定期的に実施されるRBC生存率の試験は、補充に対する品質に基づいた順位付け、(または恐らく最終的には置き換えられるであろう)RBCユニットの時間に基づいた注文および分配を可能とする。例えば、より高い劣化レベルおよび/または割合を有するユニットは、先手を打って過度の品質低下を阻止するためにより早く使用し得る。このような先を見越した実施は、使用前の全体の正味の劣化を最小化することが可能である。さらに、RBCユニット全体の生存率の増加は、患者に対する輸血において、同様の臨床効果を達成するために必要なユニットの量を減少させることが可能なため、使用血液の全体量を減少させ得る。また、あらかじめ設定された一定の最終期限とは対照的な実際の血液品質に基づいたユニットの使用期限を確立するために、RBCの生存率を使用できる可能性がある。そのため、少なくともいくらかの血液の保存期間が増加する可能性があり、かつ期限切れによる血液の損失を減少させ得る。
【0029】
また、輸血時期近くに試験を行った場合、トリアージ方式の適用により、弱い患者から低生存率ユニットを迂回させること、および患者の有効必要性に基づくユニットの選択を可能とすることで、輸血後の合併症を減少させ、ならびに全体の輸血の有効性および臨床転帰を向上させることが可能である。より高い有効性のユニットを、それらを最も必要とする患者と適合させることのほかに、それから利益を受け得ない患者に対してその他のユニットを「浪費」することが避けられる。例えば、正常な赤血球変形能を有する患者において有害であろう輸血は、著しく変化した変形能を有し、特にわずかに酸素が欠乏した患者において実施するときに、なお有効であろう。臨床試験によって、様々な患者のタイプおよびいくつかのRBC脆弱性関連パラメータのための、輸血の結果間における相関性を確立および改善し得る。したがって、効果的なトリアージ方式もまた、患者特有の酸素供給の必要性のためにユニットの選択を調整するために、血液品質の様々な側面を最終的に考慮するであろう。
【0030】
個々の保存(RBC)ユニットの品質劣化を定量化するための装置は、溶血ユニット、光学的分析ユニット、および計算ユニットを含む。同様に、個々の保存(RBC)ユニットの品質劣化を定量化するための関連方法は、溶血段階、光学的分析段階、および計算段階を含む。
【0031】
溶血ユニットまたは段階はRBCユニット(通常450mlのRBCを含む袋)からの(好ましくは外部のストリップからの)小さなサンプルを、浸透圧変化またはせん断力などの、強度および/または持続時間のレベルが制御されてかつ変化する1種以上の物理的応力にさらす。装置のいくつかの実施形態は、RBCを毛細血管を通して押し出すなどして溶血段階を達成するために主に確立された手段を利用し得る。装置のその他の実施形態は、どの手法が最も臨床的な予測結果を得ることができるかの判明に応じた、どちらかのまたは両方の要素のための独自の(または、さらに追加の確立された)手段を包含し得る。さらに、モジュール化および小型化を、費用、速度、便宜さ、多用途性などを考慮して追求することで、臨床的正確さおよび使いやすさを次第に増強することが可能である。
【0032】
溶血ユニットまたは段階に関して、その基本的な要件を実現するための様々な手段が存在する。これまで、それらは単一の総合パラメータのみが制御可能に変化するように他の人によって構成されてきたが、全負荷応力−この構成要素もまた種々の寄与パラメータを制御するように構成された様々な実施形態を包含し、その寄与パラメータはそれぞれのタイプの負荷応力における強度および持続時間に関連する。
【0033】
溶血ユニットまたは段階の主要な特徴は、(標準医療行為において実施可能に得られるよう十分に小さい)RBCサンプルは、様々な範囲の強度および/または持続時間の1以上のタイプの応力に正確かつ制御可能にさらされる。1つの実施形態では、これはサンプルを多数のサブサンプルに分割することによって行われ、それぞれのサブサンプルは種々の組み合わせにおける応力パラメータにさらされる。あるいは、サンプルまたはサブサンプルは、選択時においてリアルタイム解析のための連続して上昇するパラメータレベルにさらされる。特定の種類の応力は、(通常生体内で起こるよりもさらに広い強度範囲の必要性など)その他の制約を受けて、生体内において受ける応力とできるだけ近く理想的に相関すべきである。このような相関性は十分な臨床試験によって証明され得る。装置の初期世代は、臨床的に関連する結果を得るために予測手段を容易に使用可能であろう。
【0034】
変化する応力は、応力が加えられて、または可能な選択サブセットが負荷応力の性質において、もしくは負荷応力の性質に対して変化するようにして、バリエーションを含み得ることに留意すべきである。可変パラメータの強度および持続時間のカテゴリーは、定量的である必要がある。応力の「タイプ」のカテゴリーは、例えば、装置内で方位角を変化させることにおいて定量的であり、または、例えば、応力を引き起こすために使用される運動または抵抗の性質を変化させることにおいて定性的であり得る。応力の強度を変化させるパラメータの例としては、毛細血管を通して液体を押し出すための圧力の増加、または、同心円筒の間の隙間を利用するときの回転速度の増加が挙げられる。応力の持続時間を変化させるパラメータの例としては、特定の応力強度において応力にさらす時間の長さ、または特定量の負荷応力をもたらすいくらかの個別反復可能作用の反復数が挙げられる。
【0035】
応力はRBCの脆弱性および/または変形能の低下に影響するように使用され得る。「脆弱性」試験において含まれる応力は、「変形能」試験において含まれるものよりも強度がより高いことに留意すべきである。前者は血液サンプル中の赤血球に溶血するまで応力を加える一方で、後者は細胞を伸展、または変形させるのに必要な制限された応力のみを提供する。現段階では、高度に正確かつ臨床的に実施可能である両方を備えた脆弱性試験はまだ開発されていない。
【0036】
本開示のために、強度または持続時間に起因しない負荷応力のあらゆる特徴または変化は、応力の「タイプ」に属すると見なされる。また、本開示のために、「カテゴリーパラメータ」または「パラメータのカテゴリー」などのあらゆる無条件の基準は、必然的に強度および持続時間の定量的パラメータのみを指す(すなわち、自動的にタイプを含まない)。
【0037】
強度および持続時間の範囲は、両方が(あらゆる特定の応力のタイプに対して)独立して最小化されるとき、サンプルは比較的わずかに(理想的には0%)溶血し、両方が同時に最大化されるとき、サンプルは比較的多量に(理想的には100%)溶血するように設定されなければならない。重要なことは、両方の強度および持続時間に対してより多い(かつより細かな)段階的変化が可能になると、サンプルを特徴付ける能力がより優れたものとなる。(理想的には、それぞれに対する設定は、精密さを最大限にするために不連続/段階的よりも連続的とする。)
【0038】
溶血ユニットの期待される実施形態は、応力の強度および持続時間の少なくとも1つの可変パラメータを有する少なくとも1つの応力タイプを含む。別の実施形態は、1以上の応力のタイプの選択されたカテゴリーパラメータに対する可変パラメータを有し得る。応力タイプ、強度、および/または持続時間を制御可能なパラメータの組み合わせは、利用される計算論的手法に直接影響し得る。予備試作はそれぞれの構成要素/段階に対して既製の機器を使用し、それは溶解のための商業用ビーズミル、光学的測定のための遠心分離器および分光光度計を含む。どのタイプの生体外溶血が生体内の生存率と最も相関するかが依然として不明であるため、定性的に異なる応力タイプによる試験を実施可能にするように、別の特注設計の溶血ユニットを開発中である。1つの特注手法は同心円筒システムを用い、内側部分が隙間に存在するサブサンプルに細胞−壁の相互作用応力をもたらすように回転する。他には、サンプルを、毛細血管を通過して行き来させるように、圧力勾配応力を利用する毛細血管ベースのシステムを用いる。
【0039】
溶血ユニットの1つの実施形態は、特定のRBCユニットサンプルの溶血を0%(袋内の溶血を考慮しないで)から100%まで変化させるせん断応力を提供する。サンプルの溶血を0から100%に到達させるのに必要なレベルまで応力の大きさを変化させることで、それぞれのサンプルの全ヘモグロビン濃度まで(遊離ヘモグロビン分画によって)観察される溶血を正規化することが可能である。そのため、それぞれの応力の段階的変化において起こる分画溶血(fractional hemolysis)を与えることが可能である。
【0040】
図1は、全応力の大きさにおける単一パラメータを用いて、RBC膜の脆弱特性の二次元表現を示すシグモイド関数によって脆弱性が従来法によって描かれたものを示している。三次元表現は、例えば強度および持続時間などの2つの選択された応力パラメータに依存する溶解をグラフに描くことを可能にする。バックグラウンドの溶解は、RBCの袋内「自己溶解」であり、それは外部負荷圧力ゼロを示す。
【0041】
図2は応力強度および応力持続時間の分離パラメータによって作成された三次元脆特性を示している。両方のパラメータは全せん断応力に寄与するが、直接の関係は必ずしも必要ではないため、それらを分離することは、脆弱特性を高めることが期待される特徴である。また、さらなる応力パラメータは、高次元マトリックスを介したより豊富な脆弱性データのために、追加および/または分離されてもよい。さらに、RBC膜の脆弱性測定は、その他の確立された生体外試験または分析と共に使用可能である。
【0042】
三次元表面、より高次元なマトリックス、またはそれの実験的に有利なサブセット、として表されているかどうかに関わらず、脆弱特性に対する様々な複雑な変化は時間と共に、または病的状態、死亡、もしくは化学的および機械的の両方の人為的影響による細胞の損傷もしくは修飾の結果起こり得る。このような変化は、サンプル中の平均細胞脆弱性の変化、正規に分布した集団の標準偏差の変化、正規性からの偏差、および/または分離した異なる特性を有する細胞亜集団の開発を含み得る。この広範囲に及ぶ潜在的変化は、あらゆる特定のユニットの全体生存率または患者特有の適合性の総合的評価をもたらすために、多変量統計解析を必要とする。
【0043】
最終的には、装置の市販バージョンは、永久卓上ユニットおよび試験されるそれぞれのユニットのための内蔵型使い捨てカートリッジまたはチップを含む完全一体型システムであろう。使い捨て部分は血液サンプルが沈着し得る部分であり、そこから測定値が読み取り可能である。
【0044】
図3は簡易に処分可能な使い捨ての構成要素における実施形態を示す。シリンジドック301はチューブ305を介して溶解チャンバ302に接続される。溶解チャンバ302はチューブ305を介して光学キュベット303に接続される。光学キュベット303はチューブ305を介して廃棄物容器304に接続される。
【0045】
図4は卓上装置401の実施形態を示す。シリンジ402はサンプルをシリンジドック301に注入する。シリンジドック301はチューブ305を介して溶解チャンバ302に接続される。溶解チャンバ302はチューブ305を介して光学キュベット303に接続される。光学キュベット303はチューブ305を介して廃棄物容器304に接続される。構成要素301、302、303、304および305を有する使い捨てカートリッジを減少させることが、商業版に対して期待されている。一体化蠕動ポンプ403は装置401を介してサンプルを移動させる。細胞溶解を可能とする組み込み式モータ、および光学キュベット303内のサンプルの分析を可能とする分光光度計は示されていない。分光光度計は光ファイバー束を介して光源およびキュベットに接続されている。
【0046】
装置の主な初期の使用者は、病院の血液バンクで雇用されている技術者であることが予測され、その人は血液製剤において定期的に実施される一連の試験に装置を組み込むことが可能である。血液バンカーおよび臨床医は、在庫管理の最適化、患者トリアージ方式、血液保存の効率的な最適化、効率的な血液取扱い方法、プロトコルの改良などに対して、試験結果をどのように利用するかを決定し得る。
【0047】
病院はそれぞれのRBCユニットを入手および輸血するために約$800を超える金額を費やしているが、彼らは輸血関連の合併症に対してこれよりもさらに多く費やしており、これは輸血においてよく見落とされる費用であることが、公開データによって示されている。したがって、輸血の有効性におけるいかなる改良によっても、特に試験によって課される比較的安い費用を考慮すると大幅な節約の利益を得ることが可能である。
【0048】
図5は輸血に関連するユニット当たりの費用を示している。病院は通常血液バンクおよび血液採取施設(例えば赤十字)からアレルギー性RBCユニットを、ユニット当たり約$220で入手する。費用は特殊処理されたRBC製剤に対しては相当高い。病院はさらなる血液の保存、試験、患者への注入、および結果の監視のために、ユニット当たり$560で見積もられる追加費用を負担する。これらの費用は複数のユニットの輸血に対してはより安価であろう。また、病院は輸血後の副作用の治療に関連する費用を負担し、その治療自体および長期の入院の両方を引き受ける。ここに含まれないものは、輸血感染症の治療、訴訟、生産性の低下、およびドナーへの負担に関連する費用である。全ての費用は2005年のドルのインフレーション応じて調整されている。
【0049】
記載したように、光学的分析ユニットは、光源、サンプルブロック、および光吸収を検出可能な検出器を含むスペクトル分析ユニットである。光学的分析ユニットは、サンプルに加えられた様々な応力の結果起こる溶血のレベルを評価することが可能である。これはサンプル中の細胞、すなわちサンプリングされたユニットの膜脆弱性を示す。装置のいくつかの実施形態は、市販の分光光度計の使用など、光学的分析段階を達成するために主に確立された手段を利用し得る。装置のその他の実施形態は、どの手法が最も臨床的な予測結果を得ることができるかに応じた、どちらかのまたは両方の要素に対する独自の(または、さらに追加の確立された)手段を包含し得る。さらに、モジュール化および小型化を、費用、速度、便宜さ、多用途性などを考慮して追求することで、臨床的正確さおよび使いやすさを次第に増強することが可能である。
【0050】
1つの実施形態では、光学的分析ユニット/段階は特許出願第11744643号(Michael Tarasev、発明者)に記載される装置を組み込むことを含む。これは光学的分析段階を達成するための1つの予想手段である。
【0051】
他の実施形態では、小規模な適用ではあるが、全ての装置は代わりに市販の分光光度計に依存するよう構成されてもよい。小さな(サブ)サンプルのサイズが要求されるため、NanoDrop(登録商標)(Thermo Scientific社)などの微小体積用の分光光度計が適した分光光度計の例である。
【0052】
光学的分析段階の目的は、適用される応力パラメータのあらゆる特定の組み合わせにより、溶血ユニットまたは段階によって溶解(破壊)されたRBCの割合を決定することである。応力のタイプ、強度、および/または持続時間パラメータの組み合わせは、(サブ)サンプル間で変更可能である。これは、それぞれの特定の組み合わせの応力パラメータを適用することでそれぞれの(サブ)サンプルに対するスペクトル表示を得て、かつそれを予応力サンプル(0%の追加溶解)のベースラインと、サンプルまたはサブサンプル中の全ての細胞が溶解している100%(最大限)の溶解を示す(サブ)サンプルとを比較することによって実行可能である。
【0053】
計算ユニットはサンプルの脆弱特性を蓄積し、かつサンプルをその他の利用可能なユニットおよび以前の試験から得られた多数の累積データと比較する。以前の試験は、あらゆる特定のバージョンの装置に対するベースライン補正を含む(ため、臨床評価を通して確立および改良され得る)。得られた情報は特定のユニットの相対的な劣化を示し、かつRBCユニットの割り当てまたは使用に関与する臨床医またはその他の人によって考慮され得る。
【0054】
計算ユニットまたは段階に関して、最も重要なことは、適用されかつ測定される応力パラメータの範囲下で、どれくらい溶血を起こしやすいかの判明に応じて、それぞれのサンプルを体系的に、完全に、および定量的に特徴付けることである。溶血ユニットまたは段階の特定の手法および実施形態に応じて、多数の計算段階の実施形態が実施可能である。
【0055】
全負荷応力のみを測定する(現在のところ当技術分野において一般的な測定)、または1つのパラメータ(例えば、特定のタイプの応力の強度または持続時間、しかし両方ではない)のみを変化させる溶血ユニットまたは段階のあらゆる実施形態において、あらゆる特定のサンプルは、光学的分析ユニットまたは段階によって測定される、それぞれ個々の応力レベルにおいて起こる溶血の割合に対応する一連の対の値によって特徴付けられるものとする。
【0056】
図8は、光学的分析ユニットまたは段階によって測定される、それぞれ個々の応力レベルにおいて起こる溶血の割合に対応する一連の対の値におけるグラフ的特性を示す。グラフ的特性を二次元プロットまたは曲線において示す。
【0057】
(初期世代において予測される、1つの応力タイプのみの強度および持続時間のそれぞれのカテゴリーパラメータに対するものなどの)ちょうど2つの可変パラメータを有する溶血ユニットまたは段階のあらゆる実施形態において、それぞれのサンプルは(グラフ的には三次元で表現可能であるが)二次元マトリックスによって特徴付けられるものとし、二次元のマトリックスは2つの可変パラメータを表す。マトリックス内のそれぞれの構成要素は、両方の適用パラメータの特定の組み合わせによって溶血ユニットまたは段階において起こり、光学的分析ユニットまたは段階によって測定される溶血の割合(ヘモグロビンをなお内部に含む溶解細胞または無傷細胞の分画)を表す。(著しい相互依存が予測され、あらゆる特定のタイプの応力に関して、あらゆる特定の強度におけるRBCへの影響は、より長い持続時間においてより大きかろうし、逆の場合も同様である。特性化ために少なくとも二次元を有することで、予想されるサンプル生存率を有する予測モデルに基づいて、より加工された完全な特性化をもたらすことが期待される。)
【0058】
(任意の数の応力タイプ、強度パラメータ、および/または持続時間パラメータによる)3(数、n)以上の可変パラメータを有する溶血ユニットまたは段階のあらゆる実施形態において、それぞれのサンプルは三(n)次元以上のマトリックスによって特徴付けられるものとする(直接的にグラフに表すことは不可能である。ハイパーキューブ、複合二次元および/または三次元プロットなどを介して間接的に表現可能である)。マトリックスのそれぞれの次元は(応力タイプ、強度、または持続時間におけるちょうど1つのカテゴリーの下で)可変パラメータを表し、それは一部または3つの全てのカテゴリーに対していくらか存在し得る。多次元マトリックス内のそれぞれの要素は、全ての適用パラメータの特定の組み合わせによって溶血ユニットまたは段階において起こり、光学的分析ユニットまたは段階によって測定される溶血の割合を表す。
【0059】
様々な応力タイプを含むパラメータの組み合わせは、応力タイプにおけるあらゆる可能な変化が、同時に変化するように指定された全てのその他の可変パラメータと適合することを確保しなければならない。また、1つのパラメータを変えることで、他に対する意義または重要性を変化させることが可能であり、それはあらゆる特定の場合において容認可能または不可能である。(例えば、特定の種類の強度を変化させることで、おそらく特定の持続時間の測定において非明示的で不可欠な影響を与え、またはその逆も同様である。)さらに、あらゆる特性マトリックスの全ての要素、ベクトル、面アレイ、またはその他のサブセットが、潜在的パラメータのあらゆる特定の組み合わせに対して完全である必要はない。(例えば、タイプ、強度、および持続時間のそれぞれのカテゴリーにおいて、まさに1つのパラメータを代表する仮想キュービックマトリックスは、ある範囲の強度と不適合である持続時間におけるある値を見出すであろう。あるいは、特定の応力タイプは変化する持続時間とのみ適合して変化する強度とは不適合であるかもしれない。)したがって、例えば、キュービックマトリックスは平面スライスが欠如し、ハイパーキュービックマトリックスは立方体が欠如し得る。他の実例シナリオでは、それぞれのタイプの応力は、(全てのその他のタイプのものとは不適合である)その独自で固有の一連の強度/持続時間パラメータを必要とする可能性がある。このような状況において、確立された数学的(すなわち統計的、数値的)方法を利用した蓄積データの実証的分析により、あらゆる(副次的な)組み合わせの価値を最終的に決定することが可能である。
【0060】
予測モデル(すなわち試験−サンプル特性化の計算)に基づく予想される実験的傾向は、以下のあらゆる組み合わせ、サブセット、または相対的卓立を含む:i)計画的に応力にさらされる前に起こる溶血割合における変化(「ベースライン」溶解または「自己溶解」、応力を加えないときの溶血割合において反映される)、ii)「平均」脆弱性における変化(50%の溶血を達成するために必要な応力パラメータの組み合わせに反映される)、iii)二次元脆弱特性の標準偏差における増加など、サンプルRBCにわたる脆弱性の全体的な分配における変化(適応される応力パラメータの範囲にわたっておこる溶解の分散または分配に反映される)、iv)ベースライン溶解からの境界効果などによる、RBCサンプルの脆弱性における不均一または非対称な変化、およびv)血液循環からの取り出しにおける変化する時間など、あらゆる特定のサンプルにおけるRBCの亜集団に対する上述の様々な組み合わせ。臨床的に関連するデータに対するこれらのまたはその他の観察される相関性のいずれにおいても、高度な統計的モデル化は、このような確立された相関性を考慮してそれぞれの予測サンプルのロバスト特性を構成するために使用可能である。
【0061】
図9から14は、二次元脆弱特性または曲線において仮想サンプルの観察される変化の実施例を表しており、それは非明示的にRBC脆弱性の予測高次元特性を示している。これらの変化は互いに独立して起こり得るため、観察される脆弱特性に同時に影響する。そのため、本明細書において述べられ/示されるように、多数の要素変化を含む性質を有する実験的に観察される特性を作成することが可能である。
【0062】
図9はRBC溶解のベースラインにおける変化を示している。このような変化はRBC溶液中の無細胞ヘモグロビン(Hb)の量を反映している。無細胞Hbの生体内濃度は通常低いが、このような濃度はドナーからそれを収集する間の血液操作によって上昇することが知られている。述べた通り、無細胞Hbの増加は、RBC保存の間に起こり、かつ保存の間のRBCの自己溶解と関連することが文書化されてきた。
【0063】
図10は応力曲線(S曲線)の移動を示している。平均脆弱値が変化した場合、S曲線は応力軸にそって移動する。例としては、特定の応力の大きさにおいて、細胞の50パーセントが溶解するのに必要な持続時間、または特定の応力持続時間(So50)において、細胞の50パーセントが溶解するのに必要な大きさ、として決定される応力レベルは変化する一方で、(例えば、このような分配の標準偏差:σとして与えられる)分配特性は変化しない。RBC保存において、この移動はより低い全応力レベルに向かうことを予測することができ、それは膜をより強固にし(弾力性に乏しい)、そのため負荷応力に抵抗できなくなるという膜の変化を意味することを、既存のデータは示唆している。
【0064】
図11はS曲線の勾配の対称な増加を示している。細胞の平均脆弱性が変化しないままで、細胞集合の脆弱性の分配が変化する場合(例えば、程度の差はあるが均一化する)、S曲線の勾配における変化が予測される。このような変化は脆弱性の分配特性(例えばσ)における変化を反映する一方で、平均値(例えばS50)は変化しない。
【0065】
図12はS曲線の勾配の対称な減少を示している。細胞の平均脆弱性が変化しないままで、細胞集団の脆弱性の分配が変化する場合(例えば程度の差はあるが均一化する)、S曲線の勾配における変化が予測される。このような変化は脆弱性の分配特性(例えばσ)における変化を反映する一方で、平均値(例えばS50)は変化しない。細胞の老化および長い保存期間によってRBC脆弱特性における標準偏差値を増加させ、その結果、垂直方向分が少なくなることが予想される。
【0066】
図13はS曲線の勾配の非対称な変化を示している。RBCの個々の脆弱性の分配における変化は、RBC集団全体に一様に影響しないため、脆弱性の分配特性において非対称な変化をもたらし得る。例えば、細胞脆弱性の分配は、細胞の自己溶解(ゼロ応力における溶解)の境界効果によって非対称となり得る。
【0067】
図14は2つのRBC集団から生じる1つのS曲線から2つのS曲線への変化を示す。溶液中の共通RBC集団は(例えば平均および標準偏差によって定義される)脆弱特性によって適切に説明可能な一方で、RBC膜脆弱性における変化は、(例えば、ドナーの血液循環から細胞を取り出した時点における、形態における変化に続いて、または相対RBC齢を反映して)様々なRBC亜集団によって異なる可能性がある。著しく異なる脆弱特性を有する2以上の亜集団の開発によって、「多相」または「多曲線」性質を示す特性を観察できるであろう。
【0068】
この試験システムに対する、予想され、反復する一連の実施は、上述されるように同時に測定することによって臨床的に実証され、その一方で、輸血患者の臨床転帰および彼らがそれぞれ受け取るRBCユニットの1以上の測定を追跡する。臨床転帰および全ての対応するサンプルのそれぞれの特性に基づいて、候補モデルは後者を前者と相関させるように構成される。最終的に、それぞれのサンプルに対する全ての利用可能な特性データの処理方法は、予測される輸血において、そのユニットの生存率を示すそれぞれのサンプルのある所定値または一連の値を作成するために選択される。この値はRBCの生存率(すなわち予測される有効性)を表すのみであり、臨床医はこのような相対値を、さまざまな状況下にある選択された患者に対してどのユニットが許容されるかまたは好ましいかの決定に変換しなければならないことに留意すべきである。(同様に、供給または在庫管理において、血液バンカーは試験からのデータに基づいて彼らの決定において専門家としての判断力を使用し得る。)再帰的に、このような専門家としての判断は、試験が臨床診療においてより確立されてかつ日常的となるように、時間と共にのみ向上すべきである。
【0069】
本開示において示される利点は、(限定されることなく)使用時近くにおいて臨床医にあらゆる保存RBCユニットの劣化の程度を確認可能とすること、および一般的に稀なユニットを最適に割り当てるための医学的判断における情報を与えることを含む。初めて、臨床医は特定の患者に対してそれを使用するかどうかを決定する前に、ぞれぞれのRBCユニットの生存率および予測有効性を知ることが可能となる。外傷手術などの特に高い有効性を必要とするそれらの患者は、現在のところ、制限的なプロトコルの下で輸血を受けることが示唆されるが、彼らはそれを受けないために迅速かつ楽な回復ならびにより短期の入院が可能となる。その他の場合では、不適切なユニットの生存率または不適切な実施による未知かつ許容し得ないリスクに対して埋め合わせをしようとする試みにおける追加のユニットを輸血する慣習において、多くの血液を必要としなくなるであろう。したがって、過剰な輸血に関連する合併症のリスクも同様に軽減するであろう。追加のユニット、それらの輸血、および記載した合併症に対する医療費用もまた減少し得る。さらに、ある患者に対して、次善の有効性を有する血液製剤を受け取ることは、直接の危害の原因となり得るという調査結果がある。さらに、この測定基準は使用時近くにおいてのみ有用であるだけでなく、在庫の計画および制御を最適化するためにサプライチェーンおよび流通機構全体にわたっても有用である。先入れ先出し(FIFO)システムに代わって、ユニットは(確立されたサプライチェーンおよび在庫管理ツールを利用して)それらのそれぞれの予想生存率および測定劣化割合におけるリアルタイムデータに基づいて、戦略的に送られることが可能である。これは稀で不確かな血液供給の総合利用を改善可能である。全てのこのような考察において、RBC脆弱性の定量化によって血液製剤の劣化を正確に特徴付ける能力の程度は、限られた在庫の効率的なトリアージ方式の可能性に比例する。
【0070】
さらなる利点は、臨床診断目的のためのその他の考案された関連試験によって使用される、一般的な低応力(変形能)による手法とは対照的に、RBC膜の柔軟性の決定するための高応力(脆弱性)に基づく手法を含む。2つの得られる測定結果は相関しているようであるが、高応力を加えること(すなわち意図的に溶血を誘発すること)は、生体内における生理的溶血および輸血の有効性とより相関する可能性がある。さらに、それは、広範囲に及び、効率的な、および/または多重パラメータのデータ収集ならびに解析プロトコル、ロバスト、標準化、および/またはすぐに使える血液製剤の開発につながり得る。また、このような考察は、特定の診断市場など、血液品質管理の主要目的を超えたさらなる応用に関連する。
【0071】
前に述べたように、1つの実施形態は、RBCを含むサンプルまたはサブサンプルを様々な強度および/または持続時間における1以上のタイプの物理的応力にさらすこと、さらす段階の間に行われた溶血のレベルを定量化すること、およびRBC脆弱性に対する臨床的に意味のある評価を表す値または一連の値を出力するために定量化の段階からのデータを処理すること、を含む方法である。
【0072】
本発明におけるこれらの記載によって、当業者に全てのそれぞれの側面において最良の形態であると現在のところ考えられているものを作り使用することを可能とする一方で、この分野における彼らはまた、使用される具体的な実施形態、方法、および/または実施例における変更、組み合わせ、およびそれらと同等なものの存在を理解かつ認識するであろう。形式上および使用における多数の変更が、当業者によってなされ得る。潜在的な変更は、RBCサンプルを応力にさらすこと、またはサンプルを前記応力にさらした後に溶血がどれくらい起こるかを定量化することに対する、様々な代替手段を含む。その他の変更は、試験結果に属する指数または値を変化させ得る。全てのこのようなかつその他の変更は、発明の精神および範囲内にあることが意図され、さらに以下の実施例によって説明される。
【実施例1】
【0073】
臨床現場におけるRBCユニットの利用を改善する段階(限定的)。
1.RBCユニットの実際の脆弱特性を評価する。このような評価は、保存(老化)RBCと抽出したてのRBCとの実際の脆弱特性の違いを決定することを含む。このような特性は、応力の変化する強度および/または持続時間、ならびに細胞−壁の相互作用、外部の機械的圧力変動、浸透性せん断応力(osmotic shear stress)、またはその他の物理的応力などのせん断応力を加える種々の方法を包含し、RBC溶解の一因となる、少なくとも1つの次元のパラメータに従って構成可能である。
2.実際のRBCの脆弱特性を生体内におけるRBCの予想性能特性と相関させる。脆弱特性評価から生じる性能特性は、限定されるものではないが、
・輸血後の血流中における予想RBC生存レベル
・毛細血管網を移動することでおそらく酸素を組織に運搬可能である細胞の分画における予想時間依存性
・生体内におけるRBC溶解の予想される割合
・無細胞ヘモグロビンの初期濃度
を含み得る。
3.それぞれのRBCユニットの予想性能特性を、それぞれの臨床状態における輸血のための最適な特別要件と相関させる。臨床状態と関連する特別要件は、
・ユニット中の活性RBCの初期濃度
・RBCユニット中の無細胞ヘモグロビンの初期濃度
・輸血後のRBCの要求される短期間生存
・輸血後のRBCの要求される短期間生存(輸血RBCの劣化/溶解の割合として表される)
を含み得る。
4.それぞれの患者の臨床状態に対して最適な特別要件と最も密接に相関する予想性能特性を有するRBCユニットを選択して、それぞれの患者に輸血する。それぞれの臨床状態において、輸血RBCが患者の正常な天然RBCと同様に機能することが望ましいが、このような目標に到達することは現在の医療行為において実行不可能である。したがって、それぞれの患者がそれぞれのRBC輸血から最大限可能な利益を得られるように、このような方法で輸血の全ての有効性を最適化することが望ましい。
【実施例2】
【0074】
選択された患者の状態に対する実施例1の段階の実施。
【0075】
特定の患者群(例として、急性病治療患者および鎌状赤血球貧血患者)の特別要件を考慮して、輸血のためのRBCユニットを選択する。最良かつ最も有効なRBCの使用が状況にかかわらず全ての患者に対して優遇される一方で、血液の分配および割り当ての必要性と結び付けられる血液保存の必要性により、患者の特別な必要性に基づいた血液供給におけるトリアージの必要性が作り出される。特別に特定されるおよび/または予想される膜脆弱特性を有するRBCと、輸血を考慮したRBCの脆弱特性に対して所定の特別な要求を有する病的状態との整合は、外傷患者の急性失血の事例において証明することが可能である。
【0076】
外傷患者における輸血の有効性に対する主な要件は、彼らの血液の酸素運搬能力の即時かつ効率的な回復である。同時に、もし必要な場合、血流におけるRBCの長期生存(輸血RBCの長期酸素運搬能力)については妥協の余地があり得る。外傷における急性失血の場合、組織への酸素の運搬は不可逆的な組織の損傷または患者の死亡を避けるために、すぐに回復させなければならない。同時に、輸血が血液の酸素運搬能力の即時の回復をもたらすかぎり、患者の内部でどれくらいの間輸血細胞が損傷を受けずに活性であるかはそれほど重要ではない。したがって、即時の酸素運搬能力を最大限に回復させることが可能なユニットは、(仮に)全ての輸血RBCが輸血後の最初の24時間で血液循環から取り除かれたとしても、容認されると考えられる。循環血液量の増加による合併症がなければ、このような患者は貧血症状を和らげる必要がある場合、追加のユニットを輸血することが可能である。
【0077】
この特定の状況(外傷被害者)と関連する要求事例である:
・血管収縮と関連する遊離ヘモグロビン関連亜酸化窒素(NO)減少の可能性を減少させるための、サンプル中における最小限の遊離ヘモグロビン、
・ゼロ時(輸血時)における最大量の活性(酸素を運搬/毛細血管網を通過可能)RBC、
・最大の短期間(すなわち24時間)におけるRBC生存割合。
【0078】
そして、これらは利用可能なRBCユニットの適切な予想性能特性と相関する。例えば、図15は、特定のせん断応力度におけるRBC生存割合の時間依存曲線を示す。この状態は3つのシナリオのいずれかによって表されるであろう。両方の曲線1501および1502によって表される特性を示すサンプルは、現在のFDA基準に基づいて両方とも許容され得るが、曲線1501によって表されるサンプルは上記の場合において好ましいであろう。あるいは、曲線1503によって表されるサンプルは、鎌状赤血球貧血に対して好ましい可能性があり(以下の実施例を参照のこと)、その代わり、そこでは長期のRBC生存が主に考慮される。
【0079】
酸素運搬における長期間の支援はその他の実例:鎌状赤血球貧血患者、に対する輸血の基本的要件であろう。状態に応じて、このような患者は、重症な貧血の兆候を示し、それは輸血によって軽減させることが可能である。より重症な場合では、年間50を超える輸血が必要とされ得る。明確に、患者の血流における輸血RBC生存の持続時間はここで極めて重要である。同時に、組織酸素化に対する最初(輸血後即時)の寄与は、外傷被害者と大いに異なり、次に重要であろう。例えば、鎌状赤血球貧血患者のために、現在のFDA基準では容認されないが、50%の活性RBCおよび生体内における長期の生存期間を有するユニット(図15における曲線1503)は、輸血時において100%の活性RBCを有するがより短期の生存期間を有するユニット(図15における曲線1501)よりも実際に好ましいことが想定される。それは最初の24時間後の血流中においてRBCの総数の25%より少ない減少を示すことで、現在のFDA基準によって容認されるであろう。当然、血液の割り当てにおけるさらなる改善は、FDA基準を変更しなくとも達成可能であるが、個別の調整およびトリアージの可能性によって、将来におけるこのような変更はまさに保障されたものとなるでしょう。
【0080】
上述の実施例では、RBC集団の分画によって示される著しく高い安定性(図15の曲線1503)によって、それぞれの曲線の下方の領域によって表されるように、第1週にわたって約3.5倍高い全酸素の運搬、および図15の曲線1501に示される膜脆弱性を有するRBCと比較して、最初の1か月にわたって約8倍高い運搬を可能とする。これは患者の安定な酸素供給に対する必要性とは別に、図15の曲線1501において示される劣化を表すRBCにおいては不可能なことである。同時に、最初の24時間で、曲線1501のような特性を有するRBCユニットの輸血は、曲線1503のような特性を有するものの約40パーセント多い酸素を組織に運搬することが期待され、それは患者にさらに強力な短期の利益をもたらすことが可能である。これらの実施例は意図的に極端な潜在的シナリオを選択しているが、それらは実際のRBC輸血における、概念、問題、および可能性のある解決法を強調している。
【0081】
その他の病理学的および臨床的状態は、輸血後に生体内においてRBCの機能を存続かつ実行させるRBCの能力に対して同様の制約を課し得る。上記の実施例によって示されるように、輸血によって提供される酸素化促進の大きさ、またはこのような酸素化促進における時間変化に対して種々の強調を置くことで、様々な状況を想定することが可能である。したがって、種々のRBC生存要件は、RBCがさらされる生体内応力の様々なパラメータに関連し得る。外傷患者に対する必要な迅速な酸素化促進は、高い初期応力に抵抗するRBCの能力を強調するであろう(あらゆる特性における応力強度パラメータ/次元をより顕著に特徴としている)。その一方で、長期間、低度の応力に抵抗する細胞の能力をそれほど重要視しない(持続時間に関するそれらのパラメータをあまり特徴としない)。同時に、長期の細胞生存から利益を得る鎌状赤血球貧血患者は、長期の持続時間において低強度の応力に抵抗するRBC能力から利益を得ることが可能である。
【0082】
前述の実施例によって、様々な患者集団群の特定の要件および必要性のために、輸血(または輸血されるRBCの脆弱特性)を調整することによって血液供給をトリアージ方式で決めることに対して、かなりの可能性が存在していることが示される。
【0083】
本発明において詳しく述べられた手段を介してRBC脆弱性を決定するための手法を、市販のビーズミル(Quiagen社のTissueLyser LT)、およびNanoDrop ND100分光光度計を使用してあらかじめ試験した。TissueLyserは、振動数および持続時間の可変パラメータを用いて、サンプルをせん断応力にさらす。特注設計の溶解ユニットおよび独自の光学ユニットは依然開発途中であるが、この試験的なシステムによって、基本概念における簡易な卓上試験が可能となる。
【0084】
図6は誘発されたRBC溶解のせん断応力持続時間およびせん断応力度への依存を示す。1つのユニット(期限切れ前の21日目)から得られた1.5mlの純粋RBCサンプルを、1つ5mmのスチールビーズを用いてTissueLyser LT(Quiagen社)を使用して溶解した。サンプルを3つの異なる振動数にて溶解した:50Hz601、35Hz602および15Hz603。短時間の遠心分離の後、上清の一定分量を必要に応じて0.1MのHEPES、pH7.8を用いて希釈し、そして放出されたヘモグロビン(Hb)の総量を、NanoDrop ND100分光光度計を使用してA577−A700の吸光度差に基づいて測定した。液体窒素を使用したサンプルの反復凍結融解を介して決定される既知の全Hb容量と比較して、上清中に放出されるHbの分画(溶解割合)によって結果を表す。予想されるように、より高い応力は遊離ヘモグロビンの得られた濃度において反映されるように、より多くの溶血をもたらした。図6のものと同様の数々の二次元特性は、上述したように、三次元特性を構成するために使用可能である。
【0085】
図7は同齢かつ期限切れ前のRBCユニットから得られた予備データを示している。試験された6ユニットのうちの、3ユニットをそれぞれ曲線701、702、および703として示す。溶解段階には、50Hzの固定強度を用いた変化する応力持続時間を使用した。結果によると、同齢の6つの無作為に選択されたRBCユニットの間で、細胞の脆弱性において統計的に著しい変動性があり、それは記載された手法によって再現性良く検出される。
【0086】
図7において、(期限の10日前に)ユニットの試験片から得られたRBCサンプルを、溶解の前に、30g/Lのウシ血清アルブミンで補いながらAS3保存溶液を用いて希釈して、25μMの全ヘモグロビン濃度とした。溶解サンプルは350μLであり、溶解後には希釈しなかった。その他の、溶解およびその後のスペクトル解析は図6と同様に行った。それぞれのデータ点は3つの独立した測定を表している。平均σ=4%、(袋内の溶解を表す)「ゼロ」持続時間における測定を除いて、σ=10%。
【0087】
この試験が一般的に受け入れられる前に、2つの明確な障害が残っている。第1に、生体外での広範囲に及ぶ試験を、膜脆弱性によって反映されるRBC劣化の時間依存性の側面を確認するために実施しなければならない。第2に、生体内での臨床試験は、測定されたRBCの脆弱性と関連する臨床転帰とを関連付けるために必要であろう。この関連付けは、輸血の有効性に対する容認された「至適基準」がまだないため、確実に確立するのは困難であろう。適切な性能測定基準および適した患者群の選択は、複数の血液バンカーおよび臨床医との継続した連携および協議が必要であろう。事業の複雑さおよび範囲にもかかわらず、広範囲の支持を最終的に得たこのような研究の先例が実際にある(例えば、TRICC試験)。
【0088】
患者との接触または製品の交換は含まれず、かつ患者は現在のプロトコルの下でまだ認可されていないものを受け取らないので、予測される規制障害はわずかである。将来は、最大で42日間の保存期間が、(例えば、RBC脆弱性試験による)予想される血液生存率および血液の品質を確かめるためのその他の試験に基づいたリアルタイム品質追跡によって完全に置き換え可能であるが、最初は、試験は現在のところFIFOまたは無作為に割り当てられた血液の利用を単に改善するだけであることが考えられる。
【0089】
血液製剤は価値が高くかつ希少な資源であり、それらの利用可能性および有効性を最大化するために、最大限努力すべきである。RBC保存の必要性は現時点において不可避であるが、正味の品質低下を最小化し、かつ全ての血液供給の利用を増加させるための段階を踏むべきであろう。総合的な品質低下測定としてのRBC脆弱特性の簡易、手頃な試験によって、RBCの放出、選択および使用に関して、十分な情報に基づいて決定を下せるよう医療専門家を支援することが可能である。
【0090】
本開示のために、血液は全血または濃厚赤血球として定義される。
【0091】
本開示のために、無細胞ヘモグロビンは、赤血球から血漿またはRBC保存溶液に放出されるヘモグロビンとして定義される。
【0092】
本開示のために、ヘモグロビンは、限定されるものではないが、酸素化−、脱酸素化−、一酸化炭素化−、およびメトキシ化−型のヘモグロビンを含む様々な形状のヘモグロビン、および全てのその型の集合体と見なされる全ヘモグロビン、として定義される。
【0093】
本開示のために、トリアージは相対的な患者の必要性に基づく優先順位づけの医療資源として定義される。
【0094】
本開示のために、赤血球としても知られているエリスロサイトは、ヘモグロビンを含む血液細胞であり、体内組織への酸素の運搬に関与している。大文字化された用語、赤血球、またはRBCは、輸血において使用される保存溶液中のエリスロサイトに対する適切な名称である。
【0095】
本発明が実施形態およびそれの様々な代替を参照しながら本明細書において説明されてきたが、本発明がこのような実施形態に限定されないことは明らかである。それどころか、本明細書および特許請求の範囲に定義されるように、多数の変更が本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者とって明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球膜の脆弱性を決定するための装置であって、
赤血球を含むサンプルを制御された物理的応力にさらす溶血ユニット、
前記制御された物理的応力から生じる溶血を最適に評価するための光学的分析ユニット、および
前記光学的分析ユニットから得られる結果を計算処理するための計算処理ユニットを含む装置。
【請求項2】
請求項1の装置であって、前記計算処理ユニットは、数学的、統計的、および数値的な処理から成る群より選択される少なくとも1つの数学的処理を含む装置。
【請求項3】
請求項1の装置であって、前記光学的分析ユニットは、
光を放出するように構成された光源、
前記光が前記サンプルを通過可能なように構成されたサンプルユニット、ここで約390−460nmの波長範囲内の光の第1部分は無細胞ヘモグロビンによって吸収され、第2部分は赤血球内に含まれるヘモグロビンによって吸収される、
約390−460nmの波長範囲内での光吸収を検出するように構成された少なくとも1つの検出器、および
前記無細胞ヘモグロビン部分と前記赤血球内に含まれるヘモグロビン部分との間の光吸収の差を比較するように構成された装置を含む装置。
【請求項4】
赤血球膜の脆弱性を決定するための方法であって、
赤血球を含むサンプルを制御された物理的応力にさらすことによって赤血球の少なくとも一部分において溶血をもたらす段階、
前記溶血を光学的に評価する段階、および
前記光学的評価の結果を計算的に処理する段階を含む方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、前記溶血を光学的に評価する段階は、
光を放出するように構成された光源を使用する段階、
前記光が前記サンプルを通過可能なように構成されたサンプルユニットを使用する段階、ここで約390−460nmの波長範囲内の光の第1部分は無細胞ヘモグロビンによって吸収され、第2部分は赤血球内に含まれるヘモグロビンによって吸収される、
約390−460nmの波長範囲内での光吸収を検出するように構成された少なくとも1つの検出器を使用する段階、および
前記無細胞ヘモグロビン部分と前記赤血球内に含まれるヘモグロビン部分との間の光吸収の差を比較するように構成された装置を使用する段階を含む方法。
【請求項6】
請求項4の方法であって、前記光学的評価の結果を計算的に処理する段階は、
時間との相関関係で膜脆弱性を測定する段階、または
時間との相関関係で膜脆弱性の変化割合を測定する段階を含む方法。
【請求項7】
請求項4の方法であって、赤血球膜の脆弱性に基づいて血液ユニットの在庫を管理する段階をさらに含む方法。
【請求項8】
請求項4の方法であって、患者の赤血球膜の脆弱性に基づいて臨床的に有意な医学的状態を診断する段階をさらに含む方法。
【請求項9】
請求項4の方法であって、前記赤血球膜の脆弱性は血液保存および取扱い方法を評価または改善するために使用される方法。
【請求項10】
請求項4の方法であって、輸血のための赤血球適合性を表す数値を作成する段階をさらに含む方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、前記数値は負荷応力に関連する可変パラメータとの相関関係で溶血を表す2以上の次元を含む方法。
【請求項12】
請求項10の方法であって、前記数値は血液の在庫管理を改善するために使用される方法。
【請求項13】
請求項10の方法であって、前記数値はトリアージ方式における血液の使用を改善するために使用される方法。
【請求項14】
請求項10の方法であって、前記数値は患者の必要性または状態に応じて、血液の使用を調整または特注するために使用される方法。
【請求項15】
請求項4の方法であって、前記赤血球膜の脆弱性は、あらゆる医療装置または治療が患者の血液に与える影響を評価または予測するために使用される方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、前記医療装置または治療からの影響は生体内において起こる方法。
【請求項17】
請求項15の方法であって、前記医療装置または治療からの影響は生体外において起こる方法。
【請求項18】
請求項4の方法であって、前記光学的評価の結果を計算的に処理する段階は、赤血球膜の脆弱性、形態学的赤血球パラメータ、および/または代謝性赤血球パラメータの組み合わせを利用する段階を含む方法。
【請求項1】
赤血球膜の脆弱性を決定するための装置であって、
赤血球を含むサンプルを制御された物理的応力にさらす溶血ユニット、
前記制御された物理的応力から生じる溶血を最適に評価するための光学的分析ユニット、および
前記光学的分析ユニットから得られる結果を計算処理するための計算処理ユニットを含む装置。
【請求項2】
請求項1の装置であって、前記計算処理ユニットは、数学的、統計的、および数値的な処理から成る群より選択される少なくとも1つの数学的処理を含む装置。
【請求項3】
請求項1の装置であって、前記光学的分析ユニットは、
光を放出するように構成された光源、
前記光が前記サンプルを通過可能なように構成されたサンプルユニット、ここで約390−460nmの波長範囲内の光の第1部分は無細胞ヘモグロビンによって吸収され、第2部分は赤血球内に含まれるヘモグロビンによって吸収される、
約390−460nmの波長範囲内での光吸収を検出するように構成された少なくとも1つの検出器、および
前記無細胞ヘモグロビン部分と前記赤血球内に含まれるヘモグロビン部分との間の光吸収の差を比較するように構成された装置を含む装置。
【請求項4】
赤血球膜の脆弱性を決定するための方法であって、
赤血球を含むサンプルを制御された物理的応力にさらすことによって赤血球の少なくとも一部分において溶血をもたらす段階、
前記溶血を光学的に評価する段階、および
前記光学的評価の結果を計算的に処理する段階を含む方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、前記溶血を光学的に評価する段階は、
光を放出するように構成された光源を使用する段階、
前記光が前記サンプルを通過可能なように構成されたサンプルユニットを使用する段階、ここで約390−460nmの波長範囲内の光の第1部分は無細胞ヘモグロビンによって吸収され、第2部分は赤血球内に含まれるヘモグロビンによって吸収される、
約390−460nmの波長範囲内での光吸収を検出するように構成された少なくとも1つの検出器を使用する段階、および
前記無細胞ヘモグロビン部分と前記赤血球内に含まれるヘモグロビン部分との間の光吸収の差を比較するように構成された装置を使用する段階を含む方法。
【請求項6】
請求項4の方法であって、前記光学的評価の結果を計算的に処理する段階は、
時間との相関関係で膜脆弱性を測定する段階、または
時間との相関関係で膜脆弱性の変化割合を測定する段階を含む方法。
【請求項7】
請求項4の方法であって、赤血球膜の脆弱性に基づいて血液ユニットの在庫を管理する段階をさらに含む方法。
【請求項8】
請求項4の方法であって、患者の赤血球膜の脆弱性に基づいて臨床的に有意な医学的状態を診断する段階をさらに含む方法。
【請求項9】
請求項4の方法であって、前記赤血球膜の脆弱性は血液保存および取扱い方法を評価または改善するために使用される方法。
【請求項10】
請求項4の方法であって、輸血のための赤血球適合性を表す数値を作成する段階をさらに含む方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、前記数値は負荷応力に関連する可変パラメータとの相関関係で溶血を表す2以上の次元を含む方法。
【請求項12】
請求項10の方法であって、前記数値は血液の在庫管理を改善するために使用される方法。
【請求項13】
請求項10の方法であって、前記数値はトリアージ方式における血液の使用を改善するために使用される方法。
【請求項14】
請求項10の方法であって、前記数値は患者の必要性または状態に応じて、血液の使用を調整または特注するために使用される方法。
【請求項15】
請求項4の方法であって、前記赤血球膜の脆弱性は、あらゆる医療装置または治療が患者の血液に与える影響を評価または予測するために使用される方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、前記医療装置または治療からの影響は生体内において起こる方法。
【請求項17】
請求項15の方法であって、前記医療装置または治療からの影響は生体外において起こる方法。
【請求項18】
請求項4の方法であって、前記光学的評価の結果を計算的に処理する段階は、赤血球膜の脆弱性、形態学的赤血球パラメータ、および/または代謝性赤血球パラメータの組み合わせを利用する段階を含む方法。
【図3】
【図4】
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−515898(P2012−515898A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546447(P2011−546447)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/021559
【国際公開番号】WO2010/090848
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511159897)
【出願人】(511159901)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/021559
【国際公開番号】WO2010/090848
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511159897)
【出願人】(511159901)
【Fターム(参考)】
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