説明

走査型顕微鏡

【課題】光刺激をしながら蛍光観察を行なう場合において、標本の劣化を抑制する。
【解決手段】標本17の観察時において、刺激用レーザユニット15から射出された刺激光は、両面ミラー52Aで反射されてスキャニング部53により偏向される。一方、励起用レーザユニット16から射出された励起光は、両面ミラー52Aにおける、刺激光が反射された面とは異なる面で反射され、スキャニング部54により偏向される。そして、これらの刺激光と励起光は、ハーフミラー55Aで合成されて、標本17に照射される。このように、刺激光と励起光を両面ミラー52Aの異なる面で反射させ、ハーフミラー55Aで合成することで、刺激光と励起光を異なる点光源から導入することが可能となる。本発明は、走査型の共焦点顕微鏡に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光刺激をしながら蛍光観察を行なう場合において、標本の劣化を抑制することができるようにした走査型顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観察対象の標本を刺激光で刺激しつつ、標本を励起光で走査して標本の観察画像を取得する走査型顕微鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この走査型顕微鏡では、ダイクロイックミラーで分離された刺激光と励起光が、それぞれ異なるスキャナを介して後段のダイクロイックミラーで合成され、標本に照射される。これにより、刺激光の走査と、励起光の走査とを独立に行なうことができる。
【0004】
例えば、このような走査型顕微鏡を用いた観察では、標本としての細胞内にPA-GFP(Photo Activatable-Green Fluorescent Protein)と呼ばれる蛍光試薬が導入され、細胞の一部に405nmの強い光量の刺激光が照射される。そして、細胞における刺激光で刺激された部位周辺が変化する様子が、488nmの励起光で励起されながら、高速で捉えられる。
【0005】
一方、細胞内に導入した蛍光タンパク質GFPの拡散現象を捉えるための手法として、FRAP(Fluorescence Recovery After Photobleaching)と呼ばれる手法が知られている。このFRAPは、細胞の一部に488nmの強い刺激光を照射しながら、その刺激光により周囲が変化する様子を同一波長である488nmの励起光で励起させて、蛍光観察を行なう手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2008/004336号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した走査型顕微鏡でFRAPによる標本観察をしようとすると、同一光源からの488nmのレーザ光を、ハーフミラーで分離して励起光および刺激光とすることになるので、励起光と刺激光の光量を独立して調整することはできなかった。そのため、刺激光の光量を多くして、細胞に強い刺激を与えようとすると、刺激による反応を観察するための励起光の光量も多くなってしまい、細胞内の刺激したい部位以外の部位にも強い光が照射されることになる。そうすると、余計な退色が生じて、細胞が劣化してしまう。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、光刺激をしながら蛍光観察を行なう場合において、標本の劣化を抑制することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の走査型顕微鏡は、入射した光で観察対象の標本を走査する第1のスキャニング部と、入射した光で前記標本を走査する第2のスキャニング部と、第1の点光源から入射した第1の光を反射面で反射して、前記第1のスキャニング部に入射させるとともに、前記第1の点光源とは異なる第2の点光源から入射した第2の光を前記反射面とは異なる他の反射面で反射して、前記第2のスキャニング部に入射させる反射部と、前記第1のスキャニング部から入射した前記第1の光の少なくとも一部を透過させるとともに、前記第2のスキャニング部から入射した前記第2の光の少なくとも一部を反射することで、前記第1の光と前記第2の光を前記標本に照射する合成部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光刺激をしながら蛍光観察を行なう場合において、標本の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した観察システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】ダイクロイックミラーの光学特性を示す図である。
【図3】観察システムの他の構成例を示す図である。
【図4】観察システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態について説明する。
【0013】
〈第1の実施の形態〉
[観察システムの構成]
図1は、本発明を適用した観察システムの一実施の形態の構成例を示す図である。この観察システムは、コンピュータ11、コントローラ12、顕微鏡13、コンフォーカルヘッド14、刺激用レーザユニット15、および励起用レーザユニット16から構成される。
【0014】
顕微鏡13には、共焦点観察のためのコンフォーカルヘッド14が接続されており、これにより顕微鏡13は、走査型の共焦点顕微鏡として機能し、図示せぬステージ上に載置された標本17を光刺激しながら蛍光観察することが可能となる。
【0015】
また、コンフォーカルヘッド14には、光刺激用の刺激光を射出する刺激用レーザユニット15と、蛍光観察用の励起光を射出する励起用レーザユニット16とが、光ファイバ18および光ファイバ19により接続されている。ユーザは、コンピュータ11を操作することで、コンピュータ11にコントローラ12を制御させ、コンフォーカルヘッド14乃至励起用レーザユニット16を動作させることができる。
【0016】
刺激用レーザユニット15には、刺激光としてのレーザ光を射出するレーザ光源31とレーザ光源32が設けられており、レーザ光源31から射出された刺激光は、ミラー33で反射され、さらにダイクロイックミラー34で反射する。一方、レーザ光源32から射出された刺激光は、そのままダイクロイックミラー34を透過する。レーザ光源31とレーザ光源32からは、互いに異なる波長の刺激光が射出されるようになされており、何れか一方、または両方の波長の刺激光を射出させることが可能である。
【0017】
なお、レーザ光源31とレーザ光源32から、同じ波長のレーザ光を射出させる場合には、ダイクロイックミラー34に代えて、ハーフミラーがレーザ光の光路上に配置され、レーザ光源31とレーザ光源32からのレーザ光が同一光路に合成される。
【0018】
また、ダイクロイックミラー34からの刺激光は、音響光学フィルタ35において適宜、波長選択および強度変調され、シャッタ36を通ってコリメートレンズ37により光ファイバ18に導かれる。そして、光ファイバ18に入射した刺激光は、光ファイバ18を通ってコンフォーカルヘッド14に入射する。
【0019】
同様に、励起用レーザユニット16には、レーザ光源41、レーザ光源42、ミラー43、ダイクロイックミラー44、音響光学フィルタ45、シャッタ46、およびコリメートレンズ47が設けられている。これらのレーザ光源41乃至コリメートレンズ47は、刺激用レーザユニット15に設けられたレーザ光源31乃至コリメートレンズ37に対応し、これらの部材と同じ機能を有している。
【0020】
励起用レーザユニット16においても、レーザ光源41とレーザ光源42からは、互いに異なる波長の励起光が射出されるようになされており、それらの何れか一方、または両方の波長の励起光を射出させることが可能である。また、コリメートレンズ47により集光された励起光は、光ファイバ19に導かれてコンフォーカルヘッド14に入射する。
【0021】
刺激用レーザユニット15から光ファイバ18を介して、コンフォーカルヘッド14に入射した刺激光は、コリメートレンズ51を通って光路選択部52に入射する。すなわち、光ファイバ18とコンフォーカルヘッド14の接続部分が点光源となり、この点光源からの刺激光がコリメートレンズ51により集光されて、光路選択部52に入射する。
【0022】
光路選択部52は、刺激光と励起光の光路上に設けられ、入射した光の光路を選択する。すなわち、光路選択部52は、モータにより回転駆動するターレットと、刺激光および励起光の光路上に配置され、ターレットに保持される光学部材とから構成される。
【0023】
光路選択部52のターレットには、光学部材として、対向する表面と裏面の両方がミラーとなっている両面ミラー52Aと、入射した光をそのまま通過させる中空な中空ブロック52Bとが保持されている。光路選択部52に入射した刺激光や励起光等の光は、その光の波長と、光の光路上に配置された光学部材によって、スキャニング部53またはスキャニング部54へと導かれる。
【0024】
例えば、図1の例では、刺激光の光路上には両面ミラー52Aが配置されているので、コリメートレンズ51から光路選択部52に入射した刺激光は、両面ミラー52Aにより反射されてスキャニング部53に入射する。なお、光路選択部52のターレットに保持される光学部材は、その他、ダイクロイックミラーや素ガラス、ハーフミラーなどとされてもよい。
【0025】
このように、光路上に両面ミラー52Aを配置すれば、コンフォーカルヘッド14の外部から、独立して波長および光量を制御したレーザ光を、コンフォーカルヘッド14の光路に導入し、合成することができる。
【0026】
スキャニング部53に入射した刺激光は、スキャニング部53により偏向されて光路選択部55に入射する。例えば、スキャニング部53は、刺激光を偏向させる2つのガルバノスキャナにより構成される。
【0027】
また、光路選択部55も光路選択部52と同じ構成とされており、光路選択部55には、ハーフミラー55Aとダイクロイックミラー55Bが保持されている。図1の例では、刺激光の光路上には、ハーフミラー55Aが配置されているので、光路選択部55に入射した刺激光の一部は、ハーフミラー55Aを透過し、結像レンズ56および対物レンズ57を通って、標本17に照射される。
【0028】
これにより、標本17が刺激光により刺激されることになる。なお、光路選択部55のターレットにも、光学部材としてミラー、素ガラス、中空ブロックなどが保持されるようにしてもよい。また、コリメートレンズ51は、刺激光の光路方向、すなわちコリメートレンズ51の光軸方向に移動可能とされており、コリメートレンズ51が光軸方向に移動されると、標本17における刺激光の集光位置が対物レンズ57の光軸方向に変化する。これにより、標本17の深さ方向(対物レンズ57の光軸方向)の任意の位置を、刺激光により光刺激することが可能となる。
【0029】
さらに、励起用レーザユニット16から光ファイバ19を介して、コンフォーカルヘッド14に入射した励起光は、コリメートレンズ58を通ってダイクロイックミラー59に入射する。すなわち、光ファイバ19とコンフォーカルヘッド14の接続部分が点光源となり、この点光源からの励起光がコリメートレンズ58により集光されて、ダイクロイックミラー59で反射し、光路選択部52に入射する。
【0030】
図1の例では、励起光の光路上には両面ミラー52Aが配置されているので、光路選択部52に入射した励起光は、両面ミラー52Aで反射され、スキャニング部54に入射する。ここで、刺激光と励起光は、それぞれ両面ミラー52Aの異なる反射面に入射して、反射される。
【0031】
スキャニング部54に入射した励起光は、スキャニング部54により偏向されて光路選択部55に入射する。例えば、スキャニング部54は、励起光を偏向させるガルバノスキャナ、およびレゾナントスキャナから構成される。このスキャニング部54によれば、スキャニング部53と比べて、より高速に走査を行なうことができる。
【0032】
また、スキャニング部54から光路選択部55に入射した励起光の一部は、光路選択部55のハーフミラー55Aにより反射され、結像レンズ56および対物レンズ57を通って標本17に照射される。
【0033】
励起光が標本17に照射されると、標本17からは蛍光が生じ、この蛍光は対物レンズ57および結像レンズ56を通って光路選択部55に入射する。図1の例では、蛍光を検出する光路上には、ハーフミラー55Aが配置されているので、蛍光の半分がハーフミラー55Aで反射され、さらにスキャニング部54でデスキャンされて、光路選択部52に入射する。
【0034】
さらに光路選択部52に入射した蛍光は、光路選択部52の両面ミラー52Aで反射するとともに、ダイクロイックミラー59を透過し、集光レンズ60により集光される。ダイクロイックミラー59は、励起光の波長の光を反射させ、蛍光の波長の光を透過するようになされている。
【0035】
また、集光レンズ60により集光された蛍光は、ピンホール61を通って光検出器62に入射し、受光される。ピンホール61は、対物レンズ57の焦点位置、つまり標本17の観察面と共役な位置に配置されており、ピンホール61の位置に集光された蛍光だけが光検出器62に入射するようになされている。
【0036】
光検出器62は、入射した蛍光を受光して光電変換することで、蛍光を、蛍光の受光強度を示す電気信号に変換する。光電変換により得られた電気信号は、光検出器62からコントローラ12へと供給される。コントローラ12は、光検出器62から供給された電気信号に基づいて、標本17の観察面の画像である観察画像を生成し、コンピュータ11に供給する。また、コンピュータ11は、コントローラ12から供給された観察画像をディスプレイに表示する。
【0037】
[観察システムの動作の説明1]
次に、図1の観察システムの動作について説明する。
【0038】
まず、波長が488nmの刺激光で標本17を刺激しながら、波長が488nmの励起光で標本17を走査して、標本17を蛍光観察する場合について説明する。
【0039】
この場合、ユーザがコンピュータ11を操作して、標本17の観察開始を指示すると、コントローラ12は、コンピュータ11の指示に従って、光路選択部52および光路選択部55を動作させる。光路選択部52は、コントローラ12の制御に基づいてターレットを回転させ、両面ミラー52Aを刺激光および励起光の光路上に配置する。また、光路選択部55は、コントローラ12の制御に基づいてターレットを回転させ、ハーフミラー55Aを刺激光および励起光の光路上に配置する。
【0040】
また、コントローラ12は、刺激用レーザユニット15および励起用レーザユニット16に、波長が488nmの刺激光および励起光を射出させるとともに、音響光学フィルタ35と音響光学フィルタ45を制御して、刺激光と励起光の光量調整を行なわせる。このように、観察システムでは、同じ波長の刺激光と励起光の光量調整を、それぞれ独立に行なうことができる。したがって、標本17に照射される光が必要以上に強くなることを防止し、その結果、退色等による標本17の劣化を抑制することができる。
【0041】
刺激用レーザユニット15から射出された刺激光は、光ファイバ18およびコリメートレンズ51を通って両面ミラー52Aで反射され、スキャニング部53に入射する。そして、両面ミラー52Aからの刺激光は、スキャニング部53で偏向されてハーフミラー55A、結像レンズ56、および対物レンズ57を通って、標本17に照射される。このとき、スキャニング部53は、刺激光を偏向することにより、刺激光で標本17の観察面を走査する。
【0042】
また、励起用レーザユニット16から射出された励起光は、光ファイバ19およびコリメートレンズ58を通ってダイクロイックミラー59で反射され、両面ミラー52Aに入射する。そして、両面ミラー52Aに入射した励起光は、両面ミラー52Aの刺激光が反射された面とは異なる面で反射されて、さらにスキャニング部54で偏向される。スキャニング部54で偏向された励起光は、ハーフミラー55Aで反射され、結像レンズ56、および対物レンズ57を通って、標本17に照射される。このとき、スキャニング部54は、励起光を偏向することにより、励起光で標本17の観察面を走査する。
【0043】
このように、観察システムでは、異なる点光源から入射した刺激光と励起光とを、両面ミラー52Aの異なる面で反射させて、スキャニング部53とスキャニング部54に入射させ、ハーフミラー55Aで合成することで、刺激光と励起光の光量調整を独立して行なうことができる。
【0044】
また、観察システムでは、刺激光と励起光を異なるスキャニング部で走査するので、標本17の所望する部位を刺激すると同時に、刺激を与える部位とは異なる部位に励起光を照射することができる。これにより、標本17の特定の部位に刺激光を照射する光刺激時に、標本17全体に余計なレーザ光が照射されずに済むので、標本17の退色を防止することができる。また、観察の自由度を向上させることもできる。
【0045】
このようにして、標本17に励起光が照射されると、標本17からは蛍光が生じ、この蛍光は、対物レンズ57と結像レンズ56を通ってハーフミラー55Aで反射され、さらにスキャニング部54でデスキャンされる。そして、スキャニング部54から射出された蛍光は、両面ミラー52Aで反射されて、ダイクロイックミラー59乃至ピンホール61を通り、光検出器62に受光される。
【0046】
蛍光が光電変換されると、光検出器62からコントローラ12には、蛍光の受光量に応じた電気信号が供給されるので、コントローラ12は、この電気信号から観察画像を生成してコンピュータ11に供給する。これにより、ユーザは、コンピュータ11に表示される観察画像を見て、標本17を観察することができる。
【0047】
なお、以上においては、光路選択部55が、光路上にハーフミラー55Aを配置する例について説明したが、この例では、標本17からの蛍光の光量は、ハーフミラー55Aにおいて半分に減ってしまう。そこで、蛍光の光量のロスを低減させるために、光路選択部55が、光路上にダイクロイックミラー55Bを配置するようにしてもよい。
【0048】
例えば、蛍光の波長が500nm以上であるとすると、ダイクロイックミラー55Bは、図2に示すように、入射した490nm未満の波長の光の半分を透過させ、残りの半分の光を反射させるとともに、入射した500nm以上の波長の光を反射させる特性を有するものとされる。このようなダイクロイックミラー55Bを光路上に配置すれば、標本17から入射した蛍光の殆どが、ダイクロイックミラー55Bで反射されることになり、蛍光の光量低下を抑制できる。
【0049】
なお、図2において、縦軸はダイクロイックミラー55Bの反射面における光の反射率を示しており、横軸は光の波長を示している。図2の例では、波長が490nm乃至500nmの間の光は、その波長が長いものほど反射率が高くなっている。
【0050】
[観察システムの動作の説明2]
さらに、光刺激を行なわず、励起光だけを標本17に照射する場合には、コントローラ12は、スキャニング部54とスキャニング部53の何れを用いて励起光の走査を行なうかによって、光路上に配置される光路選択用の光学部材を切り替える。
【0051】
例えば、励起光の走査をスキャニング部54により行なう場合、コントローラ12は、光路選択部52に両面ミラー52Aあるいは、図示せぬミラーを励起光の光路上に配置させるとともに、光路選択部55にも図示せぬミラーを励起光の光路上に配置させる。
【0052】
そうすると、励起用レーザユニット16から射出された励起光は、光ファイバ19およびコリメートレンズ58を通ってダイクロイックミラー59で反射され、光路選択部52に入射する。そして、光路選択部52に入射した励起光は、光路選択部52のミラーにより反射され、スキャニング部54により偏向されて光路選択部55に入射する。さらに、光路選択部55に入射した励起光は、光路選択部55のミラーで反射され、結像レンズ56および対物レンズ57を通って標本17に照射される。
【0053】
また、標本17で生じた蛍光は、励起光と逆の光路を通ってダイクロイックミラー59に入射する。すなわち、蛍光は、光路選択部55のミラーで反射されて、スキャニング部54でデスキャンされ、さらに光路選択部52のミラーで反射される。そして、蛍光は、ダイクロイックミラー59乃至ピンホール61を通って光検出器62に受光される。
【0054】
さらに、例えば、励起光の走査をスキャニング部53により行なう場合、コントローラ12は、光路選択部52に中空ブロック52Bを励起光の光路上に配置させるとともに、光路選択部55にも図示せぬ中空ブロックを励起光の光路上に配置させる。
【0055】
そうすると、励起用レーザユニット16から射出された励起光は、ダイクロイックミラー59で反射された後、中空ブロック52Bをそのまま通ってスキャニング部53に入射する。この励起光は、スキャニング部53により偏向されて光路選択部55の中空ブロック、結像レンズ56、および対物レンズ57を通って標本17に照射される。
【0056】
また、標本17で生じた蛍光は、励起光と逆の光路を通ってダイクロイックミラー59に入射する。すなわち、蛍光は、光路選択部55の中空ブロックを通って、スキャニング部53でデスキャンされ、さらに中空ブロック52Bを通過する。そして、中空ブロック52Bを通過した蛍光は、ダイクロイックミラー59乃至ピンホール61を通って光検出器62に受光される。
【0057】
さらに、例えば励起用レーザユニット16からのみレーザ光を射出させ、光路選択部52と光路選択部55とが、光路上にハーフミラーおよびハーフミラー55Aを配置するようにしてもよい。この場合、スキャニング部53とスキャニング部54を用いて、同じ波長の異なる光路のレーザ光で、それぞれ標本17を走査することができる。
【0058】
例えば、このような場合には、光路選択部52を透過したレーザ光が刺激光とされ、光路選択部52で反射されたレーザ光が励起光とされる。この例において、例えば光路選択部52とスキャニング部53の間に音響光学フィルタを配置するとともに、光路選択部52とスキャニング部54の間に音響光学フィルタを配置すれば、これらの音響光学フィルタによって、刺激光と励起光の光量調整を独立して行なうことができる。
【0059】
以上のように、観察システムでは、励起光や刺激光が標本17の観察目的に合った光路を通るように、つまり所望のスキャニング部に入射するように、それらの光の光路上に光路選択部52と光路選択部55に保持されている光路選択用の光学部材が選択的に配置される。これにより、簡単な構成で標本17の観察の自由度を向上させることができる。
【0060】
[観察システムの動作の説明3]
次に、蛍光タンパク質であるKAEDEを標本17としての細胞に導入し、波長が405nmの刺激光で標本17を刺激しながら、波長が488nmの励起光で標本17を走査して、標本17を蛍光観察する場合について説明する。なお、観察される蛍光の波長は、500nm以上とされる。
【0061】
このような場合、コントローラ12は、コンピュータ11の指示に従って、光路選択部52に、両面ミラー52Aを刺激光および励起光の光路上に配置させ、光路選択部55に、ダイクロイックミラー55Bを刺激光および励起光の光路上に配置させる。そして、コントローラ12は、刺激用レーザユニット15に波長が405nmの刺激光を射出させるとともに、励起用レーザユニット16に、波長が488nmの励起光を射出させる。
【0062】
すると、刺激用レーザユニット15から射出された刺激光は、光ファイバ18およびコリメートレンズ51を通って両面ミラー52Aで反射され、スキャニング部53に入射する。そして、両面ミラー52Aからの刺激光は、スキャニング部53で偏向されてダイクロイックミラー55B乃至対物レンズ57を通って、標本17に照射される。このとき、スキャニング部53は、刺激光を偏向することにより、刺激光で標本17の観察面を走査する。
【0063】
また、励起用レーザユニット16から射出された励起光は、光ファイバ19乃至ダイクロイックミラー59を通って両面ミラー52Aで反射され、スキャニング部54で偏向される。スキャニング部54で偏向された励起光は、ダイクロイックミラー55B乃至対物レンズ57を通り、標本17に照射される。このとき、スキャニング部54は、励起光を偏向することにより、励起光で標本17の観察面を走査する。
【0064】
ここで、ダイクロイックミラー55Bは、入射した410nm未満の波長の光を透過させ、入射した450nm以上の波長の光を反射させる特性を有するものとされる。
【0065】
このようなダイクロイックミラー55Bを光路上に配置すれば、波長が405nmの刺激光はダイクロイックミラー55Bを透過し、波長が488nmの励起光、および波長が500nm以上である蛍光は、ダイクロイックミラー55Bで反射することになる。したがって、この場合においても、ダイクロイックミラー55Bにおける蛍光の光量低下を抑制することができる。
【0066】
このようにして、標本17に励起光が照射されると、標本17からは蛍光が生じ、この蛍光は、対物レンズ57と結像レンズ56を通ってダイクロイックミラー55Bで反射され、さらにスキャニング部54でデスキャンされる。そして、スキャニング部54から射出された蛍光は、両面ミラー52Aで反射されて、ダイクロイックミラー59乃至ピンホール61を通り、光検出器62に受光される。
【0067】
光検出器62により蛍光が光電変換されて電気信号が得られると、コントローラ12で、この電気信号から観察画像が生成され、コンピュータ11で観察画像が表示される。
【0068】
なお、励起用レーザユニット16には、レーザ光源41とレーザ光源42が設けられているので、刺激光と励起光の波長が異なる場合に、刺激光と励起光を励起用レーザユニット16から射出させるようにしてもよい。
【0069】
そのような場合、例えば、光路選択部52は、図示せぬダイクロイックミラーを刺激光と励起光の光路上に配置し、光路選択部55は、ダイクロイックミラー55Bを刺激光と励起光の光路上に配置する。
【0070】
これにより、ダイクロイックミラー59から光路選択部52に入射した刺激光と励起光のうちの一方の光を、光路上に配置されたダイクロイックミラーによりスキャニング部53に入射させ、他方の光をスキャニング部54に入射させることができる。同様に、ダイクロイックミラー55Bでは、互いに異なる光路を通って入射した刺激光と励起光を合成し、結像レンズ56に入射させることができる。
【0071】
〈第2の実施の形態〉
[観察システムの構成]
なお、以上においては、外部の刺激用レーザユニット15と励起用レーザユニット16から、刺激光と励起光をコンフォーカルヘッド14に入射させると説明したが、刺激光と励起光の両方の光源、または何れか一方の光源がコンフォーカルヘッド14内に設けられるようにしてもよい。
【0072】
例えば、刺激光の光源がコンフォーカルヘッド14内に設けられる場合、観察システムは、図3に示すように構成される。なお、図3において、図1における場合と対応する部分には、同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0073】
図3の観察システムには、図1の観察システムの刺激用レーザユニット15に代えて、コンフォーカルヘッド14内部にレーザ光源91が設けられており、その他の構成は、図1の観察システムと同じとされている。
【0074】
レーザ光源91は、例えばレーザダイオードなどの点光源からなり、コントローラ12の制御に基づいて標本17の光刺激に用いられる刺激光を射出する。レーザ光源91から射出された刺激光は、コリメートレンズ51により集光されて、光路選択部52に入射する。
【0075】
なお、図3の観察システムの動作は、刺激光を射出する光源がレーザ光源91である点を除いて、図1の観察システムと同様であるので、その動作の説明は省略する。
【0076】
〈第3の実施の形態〉
[観察システムの構成]
さらに、図1の例では、異なるレーザユニットからの刺激光と励起光をコンフォーカルヘッド14に入射させると説明したが、1つのレーザユニットから、刺激光と励起光をコンフォーカルヘッド14に入射させるようにしてもよい。
【0077】
そのような場合、観察システムは、例えば図4に示すように構成される。なお、図4において、図1における場合と対応する部分には、同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0078】
図4の観察システムには、図1の観察システムの刺激用レーザユニット15および励起用レーザユニット16に代えて、刺激光と励起光を射出するレーザユニット121が設けられており、その他の構成は、図1の観察システムと同じとされている。
【0079】
レーザユニット121には、同じ波長のレーザ光を射出するレーザ光源131とレーザ光源132とが設けられており、レーザ光源131から射出されたレーザ光は、ミラー133で反射され、さらにハーフミラー134でその一部が反射する。一方、レーザ光源132から射出されたレーザ光の一部は、ハーフミラー134を透過する。
【0080】
このように、レーザ光源131とレーザ光源132から射出されたレーザ光は、ハーフミラー134で同一光路に合成され、ハーフミラー135に入射する。ハーフミラー134からハーフミラー135に入射したレーザ光は、その一部がハーフミラー135で反射されてミラー136に入射し、残りのレーザ光はハーフミラー135を透過する。
【0081】
ハーフミラー135で反射されたレーザ光は、ミラー136で反射され、音響光学フィルタ137において適宜、波長選択および強度変調され、シャッタ138を通ってコリメートレンズ139により光ファイバ18に導かれる。そして、光ファイバ18に入射したレーザ光は、刺激光としてコンフォーカルヘッド14のコリメートレンズ51に入射する。
【0082】
一方、ハーフミラー135を透過したレーザ光は、音響光学フィルタ140において適宜、波長選択および強度変調され、シャッタ141を通ってコリメートレンズ142により光ファイバ19に導かれる。そして、光ファイバ19に入射したレーザ光は、励起光としてコンフォーカルヘッド14のコリメートレンズ58に入射する。
【0083】
このように、レーザユニット121では、同じ波長のレーザ光をハーフミラー135で分離することで、分離されたレーザ光を、それぞれ刺激光および励起光としてコンフォーカルヘッド14に入射させることができる。
【0084】
また、レーザユニット121では、ハーフミラー135で分離されたレーザ光の光路に、それぞれ音響光学フィルタ137と音響光学フィルタ140を設けたので、1つのレーザユニット121内で、刺激光と励起光の強度(光量)の調整を独立に行なうことができる。
【0085】
なお、図4の観察システムの動作は、刺激光と励起光を射出する光源がレーザユニット121である点を除いて、図1の観察システムと同様であるので、その動作の説明は省略する。例えば、刺激光と励起光として、波長が488nmのレーザ光を用い、標本17を光刺激しながら、蛍光観察する場合には、両面ミラー52Aとハーフミラー55Aが、刺激光と励起光の光路上に配置される。
【0086】
また、図4の観察システムでは、レーザ光源131とレーザ光源132とから、互いに異なる波長のレーザ光を射出させれば、異なる波長のレーザ光を刺激光および励起光として利用することができる。そのような場合、ハーフミラー134では、レーザ光源131およびレーザ光源132からの互いに異なる波長のレーザ光を合成する。
【0087】
そして、音響光学フィルタ137は、ミラー136から入射したレーザ光のうち、刺激光とすべき波長のレーザ光のみを、コントローラ12により指定された強度で射出し、シャッタ138およびコリメートレンズ139を介して、光ファイバ18に入射させる。
【0088】
同様に、音響光学フィルタ140は、ハーフミラー135から入射したレーザ光のうち、励起光とすべき波長のレーザ光のみを、コントローラ12により指定された強度で射出し、シャッタ141およびコリメートレンズ142を介して、光ファイバ19に入射させる。
【0089】
なお、スキャニング部53の位置にスキャニング部54が配置され、スキャニング部54の位置にスキャニング部53が配置されるようにしてもよい。また、スキャニング部53とスキャニング部54が、ともに2つのガルバノスキャナから構成されてもよいし、2つのレゾナントスキャナから構成されてもよい。
【0090】
さらに、刺激光や励起光として、可視光以外の400nm以下の波長のUV光、700nm以上の波長の近赤外光や極短パルスレーザ光が用いられてもよい。
【0091】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
11 コンピュータ, 12 コントローラ, 13 顕微鏡, 14 コンフォーカルヘッド, 15 刺激用レーザユニット, 16 励起用レーザユニット, 17 標本, 35 音響光学フィルタ, 45 音響光学フィルタ, 51 コリメートレンズ, 52 光路選択部, 53 スキャニング部, 54 スキャニング部, 55 光路選択部, 91 レーザ光源, 121 レーザユニット, 135 ハーフミラー, 137 音響光学フィルタ, 140 音響光学フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光で観察対象の標本を走査する第1のスキャニング部と、
入射した光で前記標本を走査する第2のスキャニング部と、
第1の点光源から入射した第1の光を反射面で反射して、前記第1のスキャニング部に入射させるとともに、前記第1の点光源とは異なる第2の点光源から入射した第2の光を前記反射面とは異なる他の反射面で反射して、前記第2のスキャニング部に入射させる反射部と、
前記第1のスキャニング部から入射した前記第1の光の少なくとも一部を透過させるとともに、前記第2のスキャニング部から入射した前記第2の光の少なくとも一部を反射することで、前記第1の光と前記第2の光を前記標本に照射する合成部と
を備えることを特徴とする走査型顕微鏡。
【請求項2】
前記反射部を含む複数の第1の光学部材を保持するとともに、前記複数の前記第1の光学部材のうちの何れかを、前記第1の光および前記第2の光の光路上に配置する第1の光路選択部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型顕微鏡。
【請求項3】
前記第1の光路選択部は、前記第1の光と前記第2の光の波長が同じである場合、前記反射部を前記光路上に配置する
ことを特徴とする請求項2に記載の走査型顕微鏡。
【請求項4】
前記合成部を含む複数の第2の光学部材を保持するとともに、前記複数の前記第2の光学部材のうちの何れかを、前記第1の光および前記第2の光の光路上に配置する第2の光路選択部をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の走査型顕微鏡。
【請求項5】
前記第1の点光源と前記第1のスキャニング部との間に配置され、前記標本における前記第1の光の集光位置を、前記第1の光の光路方向に変化させる集光部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型顕微鏡。
【請求項6】
光源から射出されたレーザ光を、前記第1の光と前記第2の光とに分離する分離部と、
前記分離部からの前記第1の光の光量を調整して、光量調整後の前記第1の光を前記反射部に入射させる第1の光量調整部と、
前記分離部からの前記第2の光の光量を調整して、光量調整後の前記第2の光を前記反射部に入射させる第2の光量調整部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の走査型顕微鏡。
【請求項7】
前記反射部の前記他の反射面は、前記反射面の裏面である
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−13995(P2012−13995A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151102(P2010−151102)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】