説明

走行台車

【課題】第二取入口35cの防塵部材36cに付着する藁屑等の粉塵を、機外からの冷却風の流量を維持しつつ除去し、冷却風が良好に取り入れられる状態を保持することができる走行台車1の提供を目的とする。
【解決手段】エンジン31と、エンジン31を冷却するラジエータ34と、エンジン31により回転駆動され、冷却風をエンジン31に当てる冷却ファン31aと、複数の各冷却風の第一取入口35b、および第二取入口35cに設けられ、冷却ファン31aの回転にともなって冷却風を機外からラジエータ34に向かって通過させる防塵部材36b・36cと、第一取入口35b、および第二取入口35cから取り入れられた冷却風を防塵部材36cへラジエータ34側から送るための配管37と、を備え、配管37からの冷却風を、防塵部材36cに機外からの冷却風の通過方向と反対方向に向かって通過可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行台車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロールベーラ装置等の各種作業機を搭載可能な走行台車においては、エンジンが走行装置により支持された走行機台の内側に設けられ、このエンジンの冷却風を機外から走行機台の内側に取り入れるための取入口が走行台車の外側面と後側面とに設けられている。このように走行台車は、複数の取入口から冷却風を取り入れることで、取入口に発生する吸引力を分散させて、取入口の防塵部材に付着する粉塵の量を低減させる。
【0003】
作業機が走行台車に搭載される場合、作業機の種類によっては、当該作業機が前記後側面の取入口の後方に位置することがある。この場合、作業機の稼働時に、粉塵(刈取後の草や藁屑等)が発生すると、この粉塵が前記後側面の取入口に設けられた防塵部材に付着しやすくなっていた。そのため、防塵部材の清掃等のメンテナンスを随時行う必要があった。
【0004】
そこで、冷却風を機外から取り入れる冷却ファン(回転ファン)の送風羽根の向きを変更自在に構成し、冷却風の流れ方向を機外から前記エンジンを冷却するラジエータに向かう流れ(吸気向き)と、前記ラジエータから機外に向かう流れ(排気向き)とに切り替える技術が提案されている。この技術によれば、冷却風の流れ方向を排気向きに切り替えて、取入口(吸気口)の防塵部材(防塵具)に付着した藁屑等の粉塵を冷却風により吹き落とすことが可能なり、メンテナンスを容易に行うことができる。例えば公知文献1の如くである。
【0005】
しかし、公知文献1の技術では、冷却風の流れ方向を排気向きに切り替えた場合、エンジンルーム内の熱せられた空気をラジエータに向けて送ることになるため、ラジエータの冷却効率が低下する。よって、エンジンの運転に問題が出ないようラジエータの冷却効率を維持するために、機外からの冷却風を所定量ラジエータに供給する必要がある。つまり、エンジンを冷却するために必要な機外からの冷却風の流量を維持するために、冷却風の流れ方向を排気向きとする時間が限定される。このため、防塵具に付着した粉塵を十分に除去できず、冷却風が良好に取り入れられる状態を保持できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−2692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、取入口の防塵部材に付着する藁屑等の粉塵を、機外からの冷却風の流量を維持しつつ除去し、冷却風が良好に取り入れられる状態を保持することができる走行台車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1においては、エンジンと、前記エンジンを冷却するラジエータと、前記エンジンにより回転駆動され、冷却風を前記ラジエータに当てる冷却ファンと、複数の各冷却風の取入口に設けられ、前記冷却ファンの回転にともなって冷却風を機外から前記ラジエータに向かって通過させる防塵部材と、前記取入口から取り入れられた冷却風を少なくとも一つの前記防塵部材へ前記ラジエータ側から送るための配管と、を備え、前記配管からの冷却風を、少なくとも一つの前記防塵部材に機外からの冷却風の通過方向と反対方向に向かって通過可能とするものである。
【0009】
請求項2においては、少なくとも一つの前記防塵部材と前記配管との間に配置され、機外から少なくとも一つの前記防塵部材を通過して前記ラジエータへ向かう冷却風の流れを遮断可能な切替部材を備えるものである。
【0010】
請求項3においては、前記切替部材は、前記冷却風の流れを遮断しないとき、前記配管から少なくとも一つの前記防塵部材へ向かう冷却風の流れを遮断するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1の如く構成したので、複数の取入口から取り入れられた冷却風をラジエータ側から少なくとも一つの防塵部材へ配管を介して送ることができる。これにより、少なくとも一つの防塵部材に付着する粉塵の付着量が所定量以上に増えると、少なくとも一つの取入口から取り入れられる冷却風の風量が減り、その代わりに配管からの冷却風が少なくとも一つの防塵部材を通過して少なくとも一つの取入口から機外へ排出される。そして、配管からの冷却風は、少なくとも一つの防塵部材に付着する粉塵が所定量よりも減るまで継続して通過する。また、この際には別の取入口から冷却風が取り入れられるため、冷却風はラジエータに継続して供給されることとなる。この結果、取入口の防塵部材に付着する藁屑等の粉塵を、機外からの冷却風の流量を維持しつつ容易に除去し、冷却風が良好に取り入れられる状態を保持することができる。
【0013】
請求項2の如く構成したので、請求項1に係る発明の効果に加え、少なくとも一つの取入口から取り入れられる冷却風の流れを遮断した状態で、他の取入口から取り入れられる冷却風をラジエータ側から少なくとも一つの防塵部材へ送ることができる。この結果、取入口の防塵部材に付着した藁屑等の粉塵を効率を向上させつつ除去することができる。
【0014】
請求項3の如く構成したので、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、少なくとも一つの取入口から取り入れられる冷却風の流れが、ラジエータ側から送られる冷却風で阻害されることがない。この結果、防塵部材に付着した藁屑等の粉塵を除去しない場合に、少なくとも一つの取入口から取り入れられる冷却風の流れを阻害することがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態に係る走行台車を示す全体側面図。
【図2】本発明の第一実施形態に係る走行台車を示す全体後面図。
【図3】本発明の第一実施形態に係る走行台車を示す全体上面図。
【図4】本発明の第一実施形態に係る走行台車にロールベーラ装置を装備した状態を示す側面図。
【図5】本発明の第一実施形態に係る冷却風ダクトを示す後面図。
【図6】本発明の第一実施形態に係る冷却風ダクトを示す左側面図。
【図7】本発明の第一実施形態に係る冷却風ダクト、切替部材を示す斜視図。
【図8】(a)本発明の第一実施形態に係る切替部材が開口位置にある場合における冷却風の流れの様子を示す左側面図。(b)本発明の第一実施形態に係る切替部材が閉口位置にある場合における冷却風の流れの様子を示す左側面図。
【図9】(a)本発明の第二実施形態に係る切替部材が開口位置にある場合における冷却風の流れの様子を示す左側面図。(b)本発明の第二実施形態に係る切替部材が閉口位置にある場合における冷却風の流れの様子を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、本発明の第一実施形態に係る走行台車1の全体構成について、図1から図3を用いて説明する。なお、以下では矢印A方向を前方向として前後左右上下方向を規定する。
【0017】
走行台車1は、ロールベーラ装置等の各種作業機を積載し、走行しながら作業機によって作業を行うものである。走行台車1は、走行機台9に対して走行部10、操作部20、原動機部30等、を具備する。
【0018】
図1、および図2に示すように、走行部10は、走行機台9を移動可能にするものである。走行部10は、走行機台9の下部に設けられる。走行部10は、左右一対のクローラ11aを有するクローラ式走行装置11を具備し、走行機台9を前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0019】
図1から図3に示すように、操作部20は、走行部10、原動機部30、および図示しない作業機等を操作するものである。操作部20は、走行機台9の前部右側方であって後述のエンジン31の右側方に配置される。操作部20は、ステアリングハンドル21、運転席22、クラッチレバー23等を具備する。
【0020】
操作部20の前方であって略左右中央部には、ハンドルコラム21aが配置され、その上面にステアリングハンドル21が配置される。ステアリングハンドル21の後方には、運転席22が配置される。運転席22の右側方には操縦者を保護するプロテクタ24が配置される。運転席22の左側方には、サイドコラム25が立設され、その上面にクラッチレバー23等が配置される。このように、操作部20は、運転席22に運転者を着座させ、操作具類により運転者が各部の装置を操作できるように構成される。
【0021】
図2、および図3に示すように、原動機部30は、走行部10や図示しない作業機に動力を伝達するものである。原動機部30は、エンジン31、トランスミッション32、燃料タンク33、カウンタユニット等を具備して走行機台9に設けられる。
【0022】
エンジン31は、走行機台9の前方であって左右両側方に立設される側面視アーチ型の支持フレーム9aと、支持フレーム9aを連結する連結フレーム9bとから構成されるエンジンルーム内の略中央部分に配置される。エンジン31の前方であって左右一対のクローラ11a間には、トランスミッション32が配置される。エンジン31の動力が走行部10などの各装置へ供給される前に、トランスミッション32により当該動力を変速することができるように構成される。エンジン31の左側方には、燃料タンク33等が配置され、その後方にロールベーラ装置等の作業機に動力を伝達するためのカウンタユニットが配置される。
【0023】
このようにして、走行台車1は、操作部20での操作具類の操作によって、原動機部30のエンジン31の動力を走行部10やロールベーラ装置等の作業機に伝達して、走行部10にて走行機台9を走行させながら、各種作業を行うことができるように構成される。
【0024】
次に上記の如く構成される走行台車1に装備される作業機の一実施形態であるロールベーラ装置40について図4を用いて説明する。なお、以下では矢印A方向を前方向として前後左右上下方向を規定する。
【0025】
図4に示すように、ロールベーラ装置40は、飼料作物を刈り取り、ロールベールを成形するものである。ロールベーラ装置40は、刈取部41、搬送部42、成形部43等を具備する。
【0026】
刈取部41は、飼料作物を刈り取るものである。刈取部41は、カバー411、駆動軸412、フレール刃413、固定刃414等を有し、走行機台9の前方に配置される。
【0027】
刈取部41は、カバー411内に左右水平方向に向けて駆動軸412が回動自在に軸支される。駆動軸412には、フレール刃413が放射状に所定間隔、かつ所定角度で位置をずらして配置される。カバー411内には、固定刃414が水平方向にフレール刃413と対向して配置される。これにより、フレール刃413は、立毛状態の飼料作物(稈)を切断可能であるとともに、回動により搬送部42方向に向かう搬送風を発生させて切断された飼料作物を搬送部42内に跳ね上げるように構成される。
【0028】
搬送部42は、刈取部41で刈り取られた飼料作物を成形部へ搬送するものである。搬送部42は、搬送ダクト421、支持アーム422、揺動軸423、昇降シリンダ424等を有し、走行機台9の前部上側方に配置される。
【0029】
搬送ダクト421の一側端部は、刈取部41の後部上側面に連通するようにして固設される。搬送ダクト421は、一側端部から後上方に向かって延設され、側面視略逆J字状に形成される。搬送ダクト421の他側端部は、刈り取られた飼料作物の排出口42aとして、成形部43の前部上側面から成形部43内部に挿入されている。これにより、搬送部42は、刈取部41で刈り取られた飼料作物を、搬送風によって搬送ダクト421を通じて成形部43内に投入可能に構成される。
【0030】
搬送ダクト421の後側側面には、支持アーム422が後方に向かって略水平に立設され、その後側端部を走行機台9の連結フレーム9bに軸方向を左右方向として設けられる揺動軸423に軸支される。また、搬送ダクト421の後側側面には、伸縮方向を略上下方向として昇降シリンダ424が設けられ、走行機台9の前端部に連結されている。従って、搬送ダクト421、および搬送ダクト421の一側端部に固設される刈取部41は、昇降シリンダ424が伸縮されることにより、揺動軸423を中心として昇降回動自在に構成される。昇降シリンダ424には、刈取部41の昇降位置を検知する検知装置として、昇降シリンダ424の伸縮量から刈取部41の昇降位置を検知する昇降位置検知センサー425が設置される。
【0031】
成形部43は、刈り取られた飼料作物をロールベールに成形するものである。成形部43は、固定側筐体431、開閉側筐体432、揺動軸433、開閉シリンダ434、ロールベール形成装置435等を有し、エンジン31の後方である走行機台9上の後部に配置される。
【0032】
成形部43は、固定側筐体431と開閉側筐体432とによって前後半割状に構成される。開閉側筐体432は、その前側上端部を固定側筐体431の後側上端部に軸方向を左右方向として設けられる揺動軸433に軸支される。固定側筐体431の上側面には、伸縮方向を前後方向として開閉シリンダ434が設けられ、開閉側筐体432の上側面に連結されている。よって、開閉側筐体432は、開閉シリンダ434が伸縮されることにより、揺動軸433を中心として開閉回動自在に構成される。固定側筐体431の前部上側面には、刈り取られた飼料作物の投入口43aとして、搬送ダクト421(搬送部42の排出口42a)が挿入されている。
【0033】
成形部43の内部には、軸方向を左右方向として軸支される複数の回転ローラ436を、側面視略C字状に配置し、その開口部分を投入口43aに向けたロールベール形成装置435が構成される。複数の回転ローラ436は、エンジン31から図示しないカウンタユニットを介して伝達される動力により同一方向に回動可能に構成される。よって、投入口43aから投入された飼料作物は、ロールベール形成装置435の内側に投入されて複数の回転ローラ436によって円柱上に形成される。新たに投入される飼料作物は、すでにロールベール形成装置435の内側で円柱上に形成された飼料作物の外径部分に順次巻きつけられ、所定の外径のロールベールに形成される。
【0034】
ロールベール形成装置435の後側部分を構成する複数の回転ローラ436は、開閉側筐体432に配置されている。すなわち、ロールベール形成装置44の後部は、開閉側筐体432の開閉に伴って開閉される。すなわち、ロールベール形成装置435は、形成したロールベールを機外に放出可能に構成される。
【0035】
開閉シリンダ434には、ロールベールの放出を検知する放出検知装置として、開閉シリンダ434の伸縮量によって開閉側筐体432の開放状態と閉鎖状態とを検知する開閉状態検知センサー437が設置される。ロールベールを放出する際に開放される開閉側筐体432の開放状態を検知することで、ロールベールの放出を検出するように構成される。
【0036】
以上より、走行台車1は、走行部10の上部に配置される走行機台9の前部に原動機部30が配置され、その右側方に操作部20が配置される。そして、走行機台9の後部には、ロールベーラ装置40が配置される。このようにして、走行台車1は、操作部20での操作具類の操作によって、原動機部30のエンジン31の動力を走行部10やロールベーラ装置40に伝達して、走行部10にて走行機台9を走行させながら、ロールベーラ装置40でロールベールの成形、および放出を行うことができるように構成される。
【0037】
次に、図2、および図5から図7を用いて、原動機部30の構成について具体的に説明する。
【0038】
図2に示すように、原動機部30のエンジン31は、吸気ユニット311、排気ユニット312を有し、冷却装置としてラジエータ34等が具備される。
【0039】
吸気ユニット311は、外気を浄化してエンジン31に送給するものである。吸気ユニット311は、エアクリーナー311a、吸気通路311b、図示しない給気マニホールド等を具備する。エアクリーナー311aは、操作部20の後方に配置され、吸気通路311bを介してエンジン31の図示しない吸気マニホールドに接続される。
【0040】
排気ユニット312は、排気を機外へ排出するものである。排気ユニット312は、マフラー312a、テールパイプ312b、図示しない排気マニホールド等を具備する。マフラー312aは、エンジン31の上方に配置され、一側端に図示しない排気マニホールドが接続される。マフラー312aの他側端には、走行機台9の左側方であって操作部20から離間した位置まで延設されたテールパイプ312bが接続される。エンジン31の右側方には、エンジン31からの動力によって回転駆動される冷却ファン31aが具備される。
【0041】
ラジエータ34は、エンジン31本体の冷却水を冷却風によって冷却するものである。ラジエータ34は、エンジン31の右側方に配置され、エンジン31からの動力によって回転駆動される冷却ファン31aと相対して配置される。ラジエータ34の右側方には、冷却風ダクト35が配置される。ラジエータ34は、冷却ファン31aの回転により機外からの冷却風がラジエータ34に送られるよう構成される。
【0042】
冷却風ダクト35は、機外からの冷却風をラジエータ34まで導くための通路を構成するものである。冷却風ダクト35は、ラジエータ34の右側方であって操作部20の運転席22の下部に配置される。
【0043】
図5から図7に示すように、冷却風ダクト35の左側面には、ラジエータ34と相対するようにして冷却風出口35aが形成される。冷却風ダクト35の右側面には、第一取入口35bが形成され、冷却風ダクト35の後側面には、第二取入口35cが形成される。つまり、冷却風ダクト35の側面には、開口方向が異なる複数の取入口35b・35cが形成される。第一取入口35bには防塵部材36bが設けられ、第二取入口35cには防塵部材36cが設けられる。防塵部材36b・36cは、冷却風のみを通過させ、藁屑等の粉塵を通過させないように構成される。
【0044】
冷却風ダクト35は、冷却ファン31aの回転にともなって、機外からの冷却風が第一取入口35b、および第二取入口35cの防塵部材36b・36cを通過して冷却風出口35aからラジエータ34に送られるよう構成される。
【0045】
冷却風ダクト35には、第二取入口35cから取り入れられる冷却風の流れを遮断する状態と遮断しない状態とに切り替える切替部材38が配置される。切替部材38は、側面視略台形の箱状に形成され、大きい方の底面が開口されている。但し、側面視における形状は限定するものではなく、三角形状や半円状に構成することもできる。
【0046】
切替部材38は、大きい方の底面の面積が第二取入口35cよりも大きく形成し、つまり、大きい方の底面で第二取入口35cの全体を覆う大きさとし、大きい方の底面が第二取入口35cに密接するように冷却風ダクト35の内部に配置される。すなわち、切替部材38は、第二取入口35cを切替部材38で覆い、第二取入口35cから取り入れられる冷却風の流れを遮断した状態になるように配置される。
【0047】
切替部材38の上端部には、揺動軸38aが左右方向にむけて切替部材38を貫通するようにして固設される。切替部材38は、冷却風ダクト35の上側面から冷却風ダクト35の内側に突設される支持部材35dによって揺動軸38aの両側端部を揺動自在に軸支される。揺動軸38aの左側端部は冷却風ダクト35の外部まで延設され、その端部に大径ギア38bが固設され、後述する駆動モータ39の出力軸に固設した小径ギア39aと噛合される。
【0048】
切替部材38は、駆動モータ39の作動により第二取入口35cから取り入れられる冷却風の流れを遮断する状態(以下、単に「閉口位置」という)と(図8(b)参照)、切替部材38が揺動軸38aを揺動中心として、閉口位置から時計回りに揺動され第二取入口35cから離間することで、第二取入口35cから取り入れられる冷却風の流れを遮断しない状態(以下、単に「開口位置」という)と(図8(a)参照)、に切り替え可能に構成される。
【0049】
切替部材38の左側面には、冷却風送入口38cが形成される。また、切替部材38が閉口位置にある場合において、冷却風送入口38cと重複する冷却風ダクト35の左側面に配管接続口35eが形成される。切替部材38が開口位置にある場合に、切替部材38の左側面によって配管接続口35eを閉塞しないように、冷却風送入口38cは、切替部材38の左側面の後側端に近接するように形成される。配管接続口35eには、配管37の一側端が接続される。配管37の他側端は、冷却ファン31aの左側方に、その開口部を冷却ファン31aに向けて(冷却風の流れ方向において上流側に向けて)配置される(図2参照)。
【0050】
冷却風ダクト35の左側面には、切替部材38の位置を切り替える駆動モータ39が配置される。駆動モータ39の出力軸には、小径ギア39aが固設される。この小径ギア39aが揺動軸38aの大径ギア38bと噛合されることで、駆動モータ39の出力軸と切替部材38の揺動軸38aとが連動連結される。よって、駆動モータ39は、切替部材38を、閉口位置と開口位置とに切り替え自在に構成される。駆動モータ39は、操作部20に具備される操作具類と配線され、当該操作具類を介して操作可能に構成されている。なお、切替部材38は、ワイヤーやリンク機構によってロールベーラ装置40の開閉側筐体432と連動連結され、開閉側筐体432が開放されると閉口位置に切り替えられ、開閉側筐体432が閉鎖されると開口位置に切り替えられる構成としてもよい。
【0051】
次に、図8を用いて、切替部材38の動作態様について説明する。
【0052】
走行台車1に搭載された図示しない作業機が稼動されると、エンジン31の負荷が増大するため燃料消費量が増加する。これに伴い、エンジン31の冷却水温度が上昇する。よって、図8(a)に示すように、冷却ファン31aの回転によって効率的に機外から冷却風を取り入れるために、切替部材38は、駆動モータ39により開口位置に切り替えられる。
【0053】
図8(a)に示すように、切替部材38が開口位置にある場合、冷却風送入口38cが配管接続口35eよりも前方に位置するため、配管接続口35eは、その大部分が切替部材38の左側面に重複されない状態となる。よって、配管37から配管接続口35eに送られるラジエータ34を通過した後の冷却風は、配管接続口35eのうち切替部材38の左側面と重複していない部分、および配管接続口35eのうち冷却風送入口38cと重複している部分を通じてハッチング矢印方向に流れて、冷却風ダクト35の内部へ送られる。そして、第一取入口35b、および第二取入口35cから取り入れられる機外からの冷却風とともに白矢印方向に流れて、再びラジエータ34へ送られる。従って、防塵部材36cは、冷却風を機外からラジエータ34に向かって通過させる。
【0054】
ロールベーラ装置40等の作業機が稼動することで藁屑等の粉塵が発生する。これに伴い、冷却風ダクト35の第二取入口35cから取り込まれる冷却風とともに、粉塵が吸い寄せられて防塵部材36cに付着する。防塵部材36cに付着する粉塵の量が増大すると第二取入口35cから取り込まれる冷却風の流量が減少する。よって、図8(b)に示すように、第二取入口35cに付着した粉塵を除去して機外から取り入れられる冷却風の流量を増加させるために、切替部材38は、駆動モータ39により閉口位置に切り替えられる。この際、冷却風は、主に第一取入口35bから取り入れられて、ラジエータ34に送られる。
【0055】
図8(b)に示すように、切替部材38が閉口位置にある場合、配管接続口35eは、冷却風送入口38cと重複している状態となる。すなわち、配管接続口35eと冷却風送入口38cとが連通している。よって、配管37から配管接続口35eに送られるラジエータ34を通過した後の冷却風は、冷却風送入口38cを通じてハッチング矢印方向に流れて、切替部材38の内部に送られる。従って、防塵部材36cは、冷却風を機外から取り入れられる冷却風の流れ方向と反対方向に向かって通過させる。この結果、防塵部材36cに付着していた粉塵は、冷却風によって吹き飛ばされ、防塵部材36cから除去される。
【0056】
以上の如く、本発明に係る走行台車の第一実施形態である走行台車1は、エンジン31と、エンジン31を冷却するラジエータ34と、エンジン31により回転駆動され、冷却風をエンジン31に当てる冷却ファン31aと、複数の各冷却風の第一取入口35b、および第二取入口35cに設けられ、冷却ファン31aの回転にともなって冷却風を機外からラジエータ34に向かって通過させる防塵部材36b・36cと、第一取入口35b、および第二取入口35cから取り入れられた冷却風を防塵部材36cへラジエータ34側から送るための配管37と、を備え、配管37からの冷却風を、防塵部材36cに機外からの冷却風の通過方向と反対方向に向かって通過可能とするものである。
【0057】
このように構成することで、第一取入口35b、および第二取入口35cから取り入れられた冷却風をラジエータ34側から防塵部材36cへ配管37を介して送ることができる。これにより、粉塵の防塵部材36cへの付着量が所定量以上に増えると、第二取入口35cから取り入れられる冷却風の風量が減り、その代わりに配管37からの冷却風が防塵部材36cを通過して第二取入口35cから機外へ排出される。そして、配管37からの冷却風は、防塵部材36cに付着している粉塵の付着量が所定量よりも減るまで防塵部材36を通過する。また、この際には第一取入口35bから冷却風が取り入れられるため、冷却風はラジエータ34に継続して供給されることとなる。この結果、第二取入口35cの防塵部材36cに付着した藁屑等の粉塵を、機外からの冷却風の流量を維持しつつ除去し、冷却風が良好に取り入れられる状態を保持することができる。
また、開口方向が異なる複数の取入口35b・35cのうち、作業機側を向かない取入口ではなく、作業機側を向く取入口に、配管37からの冷却風が通過可能とされる。配管37からの冷却風を、粉塵が付着しやすい防塵部材36c、即ち比較的粉塵の除去頻度が高い防塵部材36cに通過させ、粉塵の防塵部材36cからの除去を効率よく行うことができる。
【0058】
また、防塵部材36cと配管37との間に配置され、機外から第二取入口35cの防塵部材36cを通過してラジエータ34へ向かう冷却風の流れを遮断可能な切替部材38を備えるものである。
【0059】
このように構成することで、前述の効果に加え、第二取入口35cから取り入れられる冷却風の流れを遮断した状態でラジエータ34側から冷却風を防塵部材36cへ送ることができる。この結果、第二取入口35cの防塵部材36cに付着した藁屑等の粉塵を効率を向上させつつ除去することができる。
【0060】
以下では、図2、および図9を用いて、本発明に係る走行台車の第二実施形態である走行台車2について説明する。なお、以下の実施形態において、既に説明した第一実施形態と同様の点に関しては同一符号を付してその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0061】
図2に示すように、冷却風ダクト55は、機外からの冷却風をラジエータ34まで導くための通路を構成するものである。冷却風ダクト55は、ラジエータ34の右側方であって操作部20の運転席22の下部に配置される。
【0062】
図9に示すように、冷却風ダクト35の左側面には、ラジエータ34と相対するようにして冷却風出口55aが形成される。冷却風ダクト55の右側面には、第一取入口55bが形成され、冷却風ダクト55の後側面には、第二取入口55cが形成される。第一取入口55bには防塵部材56bが設けられ、第二取入口55cには防塵部材56cが設けられる。防塵部材56b・56cは、冷却風のみを通過させ、藁屑等の粉塵を通過させないように構成される。
【0063】
冷却風ダクト55は、冷却ファン31aの回転にともなって、機外からの冷却風が第一取入口55b、および第二取入口55cの防塵部材56b・56cを通過して冷却風出口55aからラジエータ34に送られるよう構成される。
【0064】
冷却風ダクト55には、第二取入口55cから取り入れられる冷却風の流れを遮断する状態と遮断しない状態とに切り替える切替部材58が配置される。切替部材58は、側面視略台形の箱状に形成され、大きい方の底面が開口されている。但し、側面視における形状は限定するものではなく、三角形状や半円状に構成することもできる。
【0065】
切替部材58は、大きい方の底面の面積が第二取入口55cよりも大きく形成し、つまり、大きい方の底面で第二取入口55cの全体を覆う大きさとし、大きい方の底面が第二取入口55cと密接するように冷却風ダクト55の内部に配置される。すなわち、切替部材58は、第二取入口55cを切替部材58で覆い、第二取入口55cから取り入れられる冷却風の流れを遮断した状態になるように配置される。
【0066】
切替部材58の左側面には、冷却風送入口58cが形成される。また、切替部材58が閉口位置にある場合において、冷却風送入口58cと重複する冷却風ダクト55の左側面に配管接続口55eが形成される。この際、切替部材58が開口位置にある場合に、切替部材58の左側面によって配管接続口55eを閉塞するように、冷却風送入口58cは、切替部材58の左側面の前側端近傍に形成される。
【0067】
次に、図9を用いて、切替部材58の動作態様について説明する。
【0068】
図9(a)に示すように、切替部材58が開口位置にある場合、冷却風送入口58cが配管接続口55eよりも前方に位置するため、配管接続口55eは、冷却風送入口58cと重複することなく、切替部材58の左側面の後側部分によって閉塞される。よって、配管37から配管接続口55eに送られるラジエータ34を通過した後の冷却風は、その流れを遮断される。つまり、機外からの冷却風のみが白矢印方向に流れて、ラジエータ34へ送られる。従って、第二取入口55cの防塵部材56cは、配管37からの冷却風に影響されないので効率よく冷却風を機外からラジエータ34に向かって通過させる。
【0069】
図9(b)に示すように、切替部材58が閉口位置にある場合、配管接続口55eは、冷却風送入口58cと重複している状態となる。すなわち、配管接続口55eと冷却風送入口58cとが連通している。よって、配管37から配管接続口55eに送られるラジエータ34を通過した後の冷却風は、切替部材58の左側面によって閉塞されることなく、冷却風送入口58cを通じてハッチング矢印方向に流れて、切替部材58の内部に送られる。従って、防塵部材56cは、冷却風を機外から取り入れられる冷却風の流れ方向と反対方向に向かって通過させる。この結果、防塵部材56cに付着していた粉塵は、冷却風によって吹き飛ばされ、防塵部材56cから除去される。
【0070】
以上の如く、本発明に係る走行台車の第二実施形態である走行台車2は、切替部材58が冷却風の流れを遮断しないとき、配管37から防塵部材56cへ向かう冷却風の流れを遮断するものである。
【0071】
このように構成することで、前述の効果に加え、第二取入口55cから取り入れられる冷却風の流れが、ラジエータ34側から送れられる冷却風で阻害されることがない。この結果、防塵部材56cに付着した藁屑等の粉塵を除去しない場合に、第二取入口55cから取り入れられる冷却風の流れを阻害することがない。
【符号の説明】
【0072】
1 走行台車
31 エンジン
31a 冷却ファン
34 ラジエータ
35b 第一取入口
35c 第二取入口
36c 防塵部材
37 配管
38 切替部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンを冷却するラジエータと、
前記エンジンにより回転駆動され、冷却風を前記ラジエータに当てる冷却ファンと、
複数の各冷却風の取入口に設けられ、前記冷却ファンの回転にともなって冷却風を機外から前記ラジエータに向かって通過させる防塵部材と、
前記取入口から取り入れられた冷却風を少なくとも一つの前記防塵部材へ前記ラジエータ側から送るための配管と、を備え、
前記配管からの冷却風を、少なくとも一つの前記防塵部材に機外からの冷却風の通過方向と反対方向に向かって通過可能とする走行台車。
【請求項2】
少なくとも一つの前記防塵部材と前記配管との間に配置され、機外から少なくとも一つの前記防塵部材を通過して前記ラジエータへ向かう冷却風の流れを遮断可能な切替部材を備える請求項1に記載の走行台車。
【請求項3】
前記切替部材は、前記冷却風の流れを遮断しないとき、前記配管から少なくとも一つの前記防塵部材へ向かう冷却風の流れを遮断する請求項2に記載の走行台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143894(P2011−143894A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8423(P2010−8423)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】