説明

走行用蓄電機構の充電制御装置

【課題】外部充電機能付きハイブリッド車両の走行バッテリを効率的に充電する。
【解決手段】ECUは、外部電源を用いた走行用バッテリの充電が開始されると(S1000にてYES)、走行用バッテリのSOCを算出するステップ(S2000)と、SOC増加率を算出するステップ(S3000)と、走行用バッテリを電源とする車両補機の使用によりSOC増加率がしきい値(1)以下であると(S4000にてNO)、ユーザに警告を表示するステップ(S5000)と、警告を表示してから所定の時間の経過後にSOC増加率がしきい値(2)以下であると(S8000にてNO)、走行用バッテリを電源とする車両補機をオフにするステップ(S9000)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両や電気自動車(いわゆるプラグイン車両を含む)の充電制御に関し、特に、走行用の蓄電機構を充電する場合において、車両補機の電力消費による充電時間の遅延を回避する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料の燃焼エネルギーで作動するエンジンと、電気エネルギーで作動するモータとを車両走行時の動力源として備えているとともに、その動力源と駆動輪との間に自動変速機(動力分割機構を含む)が設けられているハイブリッド車両が実用化されている。
【0003】
このようなハイブリッド車両においては、たとえば運転状態に応じてエンジンとモータとを使い分けて走行することにより、所定の走行性能を維持しつつ燃料消費量や排出ガス量を低減できる。具体的には、エンジンのみを動力源として走行するエンジン走行モード、モータのみを動力源として(エンジンを停止して)走行するモータ走行モード、エンジンおよびモータの両方を動力源として走行するエンジン+モータ走行モードなど、エンジンおよびモータの作動状態が異なる複数の運転モードを備えており、車速(または動力源回転数)およびアクセル操作量などの運転状態をパラメータとする動力源マップ等の予め定められたモード切換条件に従って自動的に切り換えられるようになっている。
【0004】
このような車両には、モータの駆動源として、蓄電機構(たとえば、二次電池(走行用バッテリ)やキャパシタ等)が搭載される。モータを走行源として用いる場合には、この走行用バッテリからモータへ電力が供給されて、車両が走行する。この走行用バッテリは、回生制動時にモータを発電機として使用して発生した電力により充電される。この走行用バッテリは、残存容量を表わすSOC(State Of Charge)を指標として、SOCが所定範囲に保たれるように制御される。さらに、この走行用バッテリを商用電源で充電する外部充電機能を有するハイブリッド車両も開発が進められている。
【0005】
走行用バッテリには、たとえば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池が採用される。たとえば、このような二次電池は、(以下のバッテリパックの例はニッケル水素電池の場合である)バッテリ1セルあたりの出力電圧は1.2V程度であって、これを6セル直列接続して7.2Vのバッテリモジュールとして、さらに30個〜40個のバッテリモジュールを直列接続して、216V〜288Vのバッテリパックとして車両に搭載される。このようなバッテリパックは、3〜5個のバッテリユニットに分割されて、車両のフロアパネルに搭載されたり、ラゲッジルームの床下に搭載される。
【0006】
この走行用バッテリの電力は、主として走行用のモータに使用されるが、DC/DCコンバータで降圧されてエアコンディショナの電動コンプレッサ(以下、電動エアコンと記載する場合がある)に用いられたり、車両に搭載されたアクセサリ(補機)に用いられたりする。
【0007】
外部充電機能を有するハイブリッド車両や電気自動車においては、車両の停止時、駐車時等、走行用モータが駆動されていないときに、外部の電源を通じて充電器により走行用バッテリを充電し、その充電時に充電器を通じて電動エアコンを動作させ、乗車時刻には、車室内を快適な温湿度条件に設定しておく、プリエアコンディショニング(以下、プリエアコン)という機能を有するものがある。
【0008】
特開平8−65814号公報(特許文献1)は、充電時に確実にバッテリの充電を完了することを可能とするととともに、充電時に電動エアコン等の車載電気負荷を効率的に駆動することを可能とする電気自動車用充電制御装置を開示する。電気自動車用充電制御装置は、外部電源が供給される充電器による車載バッテリへの充電を制御する電気自動車用充電制御装置であって、充電器から出力できる最大出力電流値を判別する充電器最大出力電流値判別手段と、車載電気負荷の起動を指示する指示手段と、この指示手段、充電器および充電器最大出力電流値判別手段に接続される充電制御手段とを備え、この充電制御手段は、充電時に指示手段からの車載電気負荷を起動する指示を検出したときに、充電に必要な充電電流値を車載バッテリに優先的に供給するとともに、充電器最大出力電流値と充電電流値との差分の電流値により車載電気負荷を駆動することを特徴とする。
【0009】
この電気自動車用充電制御装置によると、充電時に、車載電気負荷を起動する指示があったとしても、充電電流を優先的に車載バッテリに供給するとともに、この充電時に車載電気負荷を駆動する場合には、充電器最大出力電流値判別手段により判別した充電器最大出力電流値と充電電流値の差分の電流値により駆動するようにしている。このため、車載バッテリへの充電を優先することができる。
【特許文献1】特開平8−65814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、車載バッテリ(走行用バッテリ)の充電を優先するだけであるので、ユーザが、優先されなかった電動エアコンの効きが良くない(あるいは、電動エアコンの性能が悪化した)と感じたり、車載バッテリの充電が優先されているにしても、充電時間が長いと感じてしまうこともある。
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電気自動車や外部充電機能付きハイブリッド車両において、効率的に走行用の蓄電機構を充電可能な充電制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明に係る走行用蓄電機構の充電制御装置は、走行用蓄電機構を外部電源を用いて充電可能な車両の充電を制御する。この車両には、走行用蓄電機構の電力の供給により作動される電気機器が搭載される。この充電制御装置は、車両の搭乗者が認知できるように情報を出力するための出力手段と、外部電源を用いて走行用蓄電機構が充電されているときに、電気機器の使用により充電の度合いが良好でないと、充電が良好でない旨の情報を出力するように、出力手段を制御するための制御手段とを含む。
【0013】
第1の発明によると、電気自動車や外部充電機能付きハイブリッド車両の走行用蓄電機構(たとえば、二次電池)が外部の商用電源を用いて充電されている時に、走行用蓄電機構の電力の供給により作動される電気機器が使用される場合がある。このような場合には、走行用蓄電機構は、商用電源により充電されながら、電気機器に電力を放電している状態になる。このような状態において電気機器の消費電力量が大きいと、充電の度合いが良好でなくなり、充電時間が長くなってしまう。このため、充電が良好でない旨の情報が、車両の搭乗者が認知できるように出力される。この情報を認知した搭乗者は、電気機器の使用を停止させるか、消費電力が少なくなるようにできる。その結果、電気自動車や外部充電機能付きハイブリッド車両において、効率的に走行用の蓄電機構を充電可能な充電制御装置を提供することができる。
【0014】
第2の発明に係る走行用蓄電機構の充電制御装置は、第1の発明の構成に加えて、出力手段に充電度合いが良好でない旨の情報を出力した後においても、充電度合いが良好でないと、電気機器の作動を停止するための手段をさらに含む。
【0015】
第2の発明によると、充電が良好でない旨の情報が、車両の搭乗者が認知できるように出力されても、搭乗者がこの情報を認知しても電気機器の使用を停止させないまたは消費電力が少なく変更しない場合がある。また、搭乗者がこの情報を認知しない場合もある。このような場合には、電気機器の作動を停止するように電気機器を制御して(強制的に作動を停止させて)、外部からの走行用蓄電機構の充電を優先させる。これにより、電気自動車や外部充電機能付きハイブリッド車両において、効率的に走行用の蓄電機構を充電可能な充電制御装置を提供することができる。
【0016】
第3の発明に係る走行用蓄電機構の充電制御装置においては、第1または第2の発明の構成に加えて、蓄電機構は二次電池であって、充電の度合いはSOCに基づいて判断されるものである。
【0017】
第3の発明によると、走行用蓄電機構として二次電池が搭載された電気自動車や外部充電機能付きハイブリッド車両が、外部の商用電源を用いて充電されているときの充電の度合いをSOCで判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0019】
図1を参照して、本実施の形態に係る走行用蓄電機構の充電制御装置(以下、単に制御装置と記載する場合がある)を含む、ハイブリッド車両全体の制御ブロック図を説明する。なお、本発明は図1に示すハイブリッド車両に限定されない。本発明は、動力源としての、たとえばガソリンエンジン等の内燃機関(以下、エンジンとして説明する)が、車両を走行させる駆動源(走行源)であって、かつ、ジェネレータの駆動源であればよい。さらに、駆動源がエンジンおよびモータジェネレータであって、モータジェネレータの動力により走行可能な車両であればよく(エンジンを停止させても停止させなくても)、走行用のバッテリを搭載した他の態様を有するハイブリッド車両であってもよい(いわゆるシリーズ型やパラレル型等のハイブリッド車両に限定されない)。さらに、走行用バッテリを外部から充電できる機能を有すればハイブリッド車両に限定されるものではなく、たとえば、電気自動車であっても構わない。
【0020】
このバッテリは、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などであって、その種類は特に限定されるものではない。また、蓄電機構としては、バッテリの代わりにキャパシタでも構わない。
【0021】
このハイブリッド車両は、エンジン120と、モータジェネレータ(MG)140とを含む。なお、以下においては、説明の便宜上、モータジェネレータ140を、モータジェネレータ140A(またはMG(2)140A)と、モータジェネレータ140B(またはMG(1)140B)と表現するが、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、モータジェネレータ140Aがジェネレータとして機能したり、モータジェネレータ140Bがモータとして機能したりする。このモータジェネレータがジェネレータとして機能する場合に回生制動が行なわれる。モータジェネレータがジェネレータとして機能するときには、車両の運動エネルギーが電気エネルギーに変換されて、車両が減速される。
【0022】
ハイブリッド車両は、この他に、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪160に伝達したり、駆動輪160の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達したりする減速機180と、エンジン120の発生する動力を駆動輪160とモータジェネレータ140B(MG(1)140B)との2経路に分配する動力分割機構(たとえば、後述する遊星歯車機構)200と、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電する走行用バッテリ220と、走行用バッテリ220の直流とモータジェネレータ140A(MG(2)140A)およびモータジェネレータ140B(MG(1)140B)の交流とを変換しながら電流制御を行なうインバータ240と、走行用バッテリ220の充放電状態(たとえば、SOC)を管理制御するバッテリ制御ユニット(以下、バッテリECU(Electronic Control Unit)という)260と、エンジン120の動作状態を制御するエンジンECU280と、ハイブリッド車両の状態に応じてモータジェネレータ140およびバッテリECU260、インバータ240等を制御するMG_ECU300と、バッテリECU260、エンジンECU280およびMG_ECU300等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御するHV_ECU320等を含む。なお、SOCは、電流積算測定や開放電圧(OCV(Open Circuit Voltage))測定により算出される。
【0023】
本実施の形態において、走行用バッテリ220とインバータ240との間には昇圧コンバータ242が設けられている。これは、走行用バッテリ220の定格電圧が、モータ140A(MG(2)140A)やモータジェネレータ140B(MG(1)140B)の定格電圧よりも低いので、走行用バッテリ220からモータジェネレータ140A(MG(2)140A)やモータジェネレータ140B(MG(1)140B)に電力を供給するときには、昇圧コンバータ242で電力を昇圧する。
【0024】
なお、図1においては、各ECUを別構成としているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい(たとえば、図1に、点線で示すように、MG_ECU300とHV_ECU320とを統合したECUとすることがその一例である)。
【0025】
動力分割機構200は、エンジン120の動力を、駆動輪160とモータジェネレータ140B(MG(1)140B)との両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリーギヤ)が使用される。モータジェネレータ140B(MG(1)140B)の回転数を制御することにより、動力分割機構200は無段変速機としても機能する。エンジン120の回転力はキャリア(C)に入力され、それがサンギヤ(S)によってモータジェネレータ140B(MG(1)140B)に、リングギヤ(R)によってモータジェネレータ140A(MG(2)140A)および出力軸(駆動輪160側)に伝えられる。回転中のエンジン120を停止させる時には、エンジン120が回転しているので、この回転の運動エネルギーをモータジェネレータ140B(MG(1)140B)で電気エネルギーに変換して、エンジン120の回転数を低下させる。
【0026】
図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、車両の状態について予め定められた条件が成立すると、HV_ECU320は、モータジェネレータ140のモータジェネレータ140A(MG(2)140A)のみによりハイブリッド車両の走行を行なうようにモータジェネレータ140A(MG(2)140A)およびエンジンECU280を介してエンジン120を制御する。たとえば、予め定められた条件とは、走行用バッテリ220のSOCが予め定められた値以上であるという条件等である。このようにすると、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合に、モータジェネレータ140A(MG(2)140A)のみによりハイブリッド車両の走行を行なうことができる。この結果、走行用バッテリ220のSOCを低下させることができる(その後の車両停止時に走行用バッテリ220を充電することができる)。
【0027】
また、通常走行時には、たとえば動力分割機構200によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でモータジェネレータ140B(MG(1)140B)を駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータジェネレータ140A(MG(2)140A)を駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータジェネレータ140A(MG(2)140A)に供給してモータジェネレータ140A(MG(2)140A)の出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。一方、減速時には、駆動輪160により従動するモータジェネレータ140A(MG(2)140A)がジェネレータとして機能して回生発電を行ない、回収した電力を走行用バッテリ220に蓄える。なお、走行用バッテリ220の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン120の出力を増加してモータジェネレータ140B(MG(1)140B)による発電量を増やして走行用バッテリ220に対する充電量を増加する。
【0028】
また、走行用バッテリ220の目標SOCはいつ回生が行なわれてもエネルギーが回収できるように、通常は60%程度に設定される。また、SOCの上限値と下限値とは、走行用バッテリ220のバッテリの劣化を抑制するために、たとえば、上限値を80%とし、下限値を30%として設定され、HV_ECU320は、MG_ECU300を介してSOCが上限値および下限値を越えないようにモータジェネレータ140による発電や回生、モータ出力を制御している。なお、ここで挙げた値は、一例であって特に限定される値ではない。
【0029】
さらに、このハイブリッド車両は、外部充電機能として、AC/DCコンバータ222と、コネクタ224とをさらに備える。
【0030】
AC/DCコンバータ222は、HV_ECU320からの指令信号に応じて動作して、コネクタ224に与えられる商用電源228からの電力を走行用バッテリ220の電圧レベルに変換して走行用バッテリ220へ出力する。コネクタ224は、車両の停止モード時に商用電源228を用いて走行用バッテリ220を充電する際に、商用電源228からの電力を入力するための端子である。商用電源228を用いて走行用バッテリ220の充電が行なわれるとき、商用電源228側のコネクタ226がコネクタ224に接続され、コネクタ224に商用電源228の商用電圧が印加される。
【0031】
さらに、このハイブリッド車両の走行用バッテリ220には、降圧コンバータ400が接続され、この降圧コンバータ400を介して、車両補機であるアクセサリ402や電動エアコン404に電力が供給される。この降圧コンバータ400は、たとえば走行用バッテリ220の定格電圧である288Vから、42Vや12Vまで電圧を低下させる。なお、これらの電圧値は一例であって、本発明がこれらの電圧値に限定されるものではない。
【0032】
また、アクセサリ402や電動エアコン404の作動は、HV_ECU320でも制御可能なように構成されている。このハイブリッド車両が、外部の商用電源228を用いて走行用バッテリ220を充電している時に、アクセサリ402や電動エアコン404の作動により走行用バッテリ220の電力が消費されていると、充電効率が低下する。HV_ECU320は、このような状態を検出して、表示装置500を用いてユーザに報知する。表示装置500は、たとえばインストルメントパネルに装備された液晶パネルであったり、警告表示灯である。
【0033】
図2を参照して、動力分割機構200についてさらに説明する。動力分割機構200は、サンギヤ(S)202と(以下、単にサンギヤ202と記載する)、ピニオンギヤ204と、キャリア(C)206(以下、単にキャリア206と記載する)と、リングギヤ(R)208(以下、単にリングギヤ208と記載する)とを含む遊星歯車から構成される。
【0034】
ピニオンギヤ204は、サンギヤ202およびリングギヤ208と係合する。キャリア206は、ピニオンギヤ204が自転可能であるように支持する。サンギヤ202はMG(1)140Bの回転軸に連結される。キャリア206はエンジン120のクランクシャフトに連結される。リングギヤ208はMG(2)140Aの回転軸および減速機180に連結される。
【0035】
エンジン120、MG(1)140BおよびMG(2)140Aが、遊星歯車からなる動力分割機構200を介して連結されることで、エンジン120、MG(1)140BおよびMG(2)140Aの回転数は、共線図において直線で結ばれる関係になる。
【0036】
図1および図2に示されたハイブリッド車両においては、外部の商用電源228を用いて走行用バッテリ220を充電している時に、降圧コンバータ400を介して走行用バッテリ220の電力が消費されていると、充電効率が低下する。HV_ECU320は、このような状態を検出して、ユーザに報知してアクセサリ402や電動エアコン404の作動の停止を促す点が特徴である。さらに、それでも、ユーザに報知してアクセサリ402や電動エアコン404の作動の停止しない場合には、HV_ECU320は、ユーザに報知した上で、アクセサリ402や電動エアコン404の作動を停止して、充電効率を向上させる点が特徴である。このような制御は、デジタル回路やアナログ回路の構成を主体としたハードウェアでも、ECUに含まれるCPUおよびメモリとメモリから読み出されてCPUで実行されるプログラムとを主体としたソフトウェアでも実現することが可能である。一般的に、ハードウェアで実現した場合には動作速度の点で有利で、ソフトウェアで実現した場合には設計変更の点で有利であると言われている。以下においては、ソフトウェアとして制御装置を実現した場合を説明する。なお、このようなプログラムを記録した記録媒体についても本発明の一態様である。
【0037】
図3を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるHV_ECU320で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。さらに、図3に示すフローチャートは、システムが起動された後に開始されることを前提とする。
【0038】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)1000にて、HV_ECU320は、外部商用電源228を用いた走行用バッテリ220の充電が開始されたことを検出したか否かを判断する。走行用バッテリ220の充電が開始されたことを検出すると(S1000にてYES)、処理はS2000へ移される。もしそうでないと(S1000にてNO)、処理はS1000へ戻されて、走行用バッテリ220の充電が開始されたことを検出されるまで待つ。
【0039】
S2000にて、HV_ECU320は、走行用バッテリ220のSOCを算出する。この算出においては、上述のように、走行用バッテリ220における電流積算測定や開放電圧測定により算出される。
【0040】
S3000にて、HV_ECU320は、走行用バッテリ220のSOC増加率を算出する。このとき、HV_ECU320は、たとえば、このサブルーチンプログラムの前回処理時に算出した走行用バッテリ220のSOCと、今回処理時に算出した走行用バッテリ220のSOCとの差分に基づいて、走行用バッテリ220のSOC増加率を算出する。なお、商用電源228から走行用バッテリ220の充電電力量は、走行用バッテリ220から車載アクセサリ402や電動エアコン404への放電電力量よりも大きいとする。このため、SOC増加率が負値になることはここでは想定しない。しかしながら、SOC増加率が負値になる場合には、本発明の適用が除外されることを示すものではない。
【0041】
S4000にて、HV_ECU320は、走行用バッテリ220のSOC増加率がしきい値(1)よりも大きいか否かを判断する。このしきい値(1)は、ユーザが許容できる走行用バッテリ220の充電時間を考慮して決定される。走行用バッテリ220のSOC増加率がしきい値(1)よりも大きいと(S4000にてYES)、処理はS6000へ移される。もしそうでないと(S4000にてNO)、処理はS5000へ移される。
【0042】
S5000にて、HV_ECU320は、表示装置500に警告を表示する。このときの表示内容は、走行用バッテリ220の充電中に補機による電力消費が大きく充電に予定時間より長くなることが、ユーザが認知できるものであれば、特に限定されるものはない。その後、処理は、S6000へ移される。
【0043】
S6000にて、HV_ECU320は、S4000の処理またはS5000の処理後、所定時間が経過したか否かを判断する。この所定時間は、たとえば、表示装置500に表示された警告を認知したユーザが走行用バッテリ220の電力を使用する車載アクセサリ402や電動エアコン404の使用を停止したことが予測される時間程度に設定される。所定時間が経過すると(S6000にてYES)、処理はS7000へ移される。もしそうでないと(S6000にでNO)、処理はS6000へ戻されて、所定時間が経過するまで待つ。
【0044】
S7000にて、HV_ECU320は、再度、SOC増加率を算出する。この処理は、S3000の処理と同じであるので、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0045】
S8000にて、HV_ECU320は、走行用バッテリ220のSOC増加率がしきい値(2)よりも大きいか否かを判断する。このしきい値(2)は、たとえばしきい値(1)よりも小さい値であって、走行用バッテリ220の充電時間がきわめて長くなる時間を考慮して決定される。走行用バッテリ220のSOC増加率がしきい値(2)よりも大きいと(S8000にてYES)、この処理は終了する。もしそうでないと(S8000にてNO)、処理はS9000へ移される。なお、しきい値(1)としきい値(2)との大小関係は限定されるものではない。
【0046】
S9000にて、HV_ECU320は、走行用バッテリ220の電力を使用する(充電関係以外の)補機である車載アクセサリ402や電動エアコン404をオフにする。なお、AC/DCコンバータ222が走行用バッテリ220からの電力により作動されている場合であっても(多くの場合、走行用バッテリとは異なる鉛蓄電池の補機バッテリで作動されている)、走行用バッテリ220を商用電源228を用いて充電するために、AC/DCコンバータ222は作動させる。この後、この処理は終了する。
【0047】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるHV_ECU320により制御される、このハイブリッド車両の外部充電動作について、説明する。
【0048】
この外部充電機能付きハイブリッド車両が停止して、車両側のコネクタ224に車両外部側のコネクタ226が接続されて、商用電源228による走行用バッテリ222の充電が開始される(S1000にてYES)。走行用バッテリ220のSOCが算出されて(S2000)、前回算出されたSOCを用いてSOC増加率が算出される(S3000)。
【0049】
ユーザが走行用バッテリ220を電源とする車載アクセサリ402や電動エアコン404を使用していると、走行用バッテリ220を充電しながら走行用バッテリ220から放電されているので、SOC増加率がしきい値(1)以下になる(S4000にてNO)。すなわち、ユーザが許容できる充電時間よりも長く時間がかかると予測される。このような場合には、表示装置500に、「外部充電中です。車載アクセサリ、電動エアコン灯をオフにして下さい。」と液晶パネル(インフォメーションディスプレイ)に表示したり、外部充電警告灯が点灯したり点滅したりする。
【0050】
表示装置500に表示された内容を認知したユーザが、走行用バッテリ220を電源とする車載アクセサリ402や電動エアコン404をオフにすると、走行用バッテリ220から車載アクセサリ402や電動エアコン404へ放電されなくなり、SOC増加率が上昇する(S8000にてYES)。そのため、ユーザが許容できる充電時間で、走行用バッテリ220の充電が終了する。
【0051】
一方、表示装置500に表示された内容を認知したユーザが、走行用バッテリ220を電源とする車載アクセサリ402や電動エアコン404をオフにしない、または、ユーザが表示装置500に表示された内容を認知しなかった場合には、走行用バッテリ220から車載アクセサリ402や電動エアコン404へ放電され続けて、SOC増加率が上昇しない(S8000にてNO)。そのため、強制的に車載アクセサリ402や電動エアコン404がオフにされる(S9000)。このとき、表示装置500に、車載アクセサリ402や電動エアコン404が強制オフされたことを表示することも望ましい。その結果、ユーザが許容できる充電時間で、走行用バッテリ220の充電が終了する。
【0052】
以上のようにして、本実施の形態に係る制御装置によると、外部充電時において、ユーザが違和感を有することなく、走行用バッテリを充電することができる。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係る制御装置を含む、ハイブリッド車両全体の制御ブロック図である。
【図2】動力分割機構を示す図である。
【図3】図1のHV_ECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
120 エンジン、140 モータジェネレータ、160 駆動輪、180 減速機、200 動力分割機構、220 走行用バッテリ、222 AC/DCコンバータ、224、226 コネクタ、228 商用電源、240 インバータ、242 昇圧コンバータ、260 バッテリECU、280 エンジンECU、300 MG_ECU、320 HV_ECU、400 降圧コンバータ、500 表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用蓄電機構を外部電源を用いて充電可能な車両の充電制御装置であって、
前記車両には、前記走行用蓄電機構の電力の供給により作動される電気機器が搭載され、
前記充電制御装置は、
前記車両の搭乗者が認知できるように情報を出力するための出力手段と、
前記外部電源を用いて前記走行用蓄電機構が充電されているときに、前記電気機器の使用により充電の度合いが良好でないと、充電が良好でない旨の情報を出力するように、前記出力手段を制御するための制御手段とを含む、走行用蓄電機構の充電制御装置。
【請求項2】
前記充電制御装置は、前記出力手段に充電度合いが良好でない旨の情報を出力した後においても、充電度合いが良好でないと、前記電気機器の作動を停止するための手段をさらに含む、請求項1に記載の走行用蓄電機構の充電制御装置。
【請求項3】
前記蓄電機構は二次電池であって、
前記充電の度合いはSOCに基づいて判断される、請求項1または2に記載の走行用蓄電機構の充電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−211955(P2008−211955A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49056(P2007−49056)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】