説明

走行距離改竄検出システム

【課題】 走行距離の改竄を検出することができる走行距離改竄検出システムを提供する。
【解決手段】 車輪側記憶手段11f〜14fを有し所定のデータ信号を通信可能な車輪側通信手段11〜14と、車体側通信手段21〜24と、制御手段30と、走行距離検出手段40とを備え、第1の所定時期に、制御手段30は、走行距離検出手段40により検出された第1の走行距離データを車体側通信手段21〜24を介して車輪側通信手段11〜14へ送信し、車輪側通信手段11〜14は、第1の走行距離データを車輪側記憶手段11f〜14fに記憶し、第1の所定時期より遅い第2の所定時期に、制御手段30は、走行距離検出手段40により検出された第2の走行距離データと、車輪側記憶手段11f〜14fから取得した第1の走行距離データとを照合し、第1の走行距離データよりも第2の走行距離データが小さいと判定した場合に走行距離の改竄を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の積算沿走行距離が不正に改竄された場合に、その改竄を検出する走行距離改竄検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の走行距離を検出して記憶し、その積算走行距離を表示する電子式走行距離積算計が用いられている。このような走行距離積算計には、走行距離の積算値を書き込み更新するEEPROMが採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、走行距離積算計は、当該車両がどのように使用されてきたかを把握するために重要なものである。例えば、中古車市場では、総走行距離が短い車両に人気があり、このような車両は高価格で取引されることが多い。したがって、走行距離計による当該車両の走行距離の積算値がどのようになっているかは、重要なことである。
【0004】
このため、中古車としての売買にあたりその価格を高くすべく、EEPROMへの書き込み更新値である走行距離の積算値を小さい値に書き換えたり、あるいは、EEPROMを新品に取り替えたりして、当該中古車の総走行距離を改竄するという事態が生ずる。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、走行距離の改竄を検出することができる走行距離改竄検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、タイヤを備える各車輪(1〜4)のそれぞれに配置され、各種データを記憶する車輪側記憶手段(11f〜14f)を有し、所定のデータ信号を通信可能な車輪側通信手段(11〜14)と、車体に配置され、車輪側通信手段(11〜14)との間で通信可能な車体側通信手段(21〜24)と、車体に配置され、車体側通信手段(21〜24)で受信したデータ信号が入力される制御手段(30)と、車体に配置され、車両の走行距離を検出する走行距離検出手段(40)とを備え、第1の所定時期に、制御手段(30)は、走行距離検出手段(40)により検出された第1の走行距離データを、車体側通信手段(21〜24)を介して車輪側通信手段(11〜14)へ送信し、車輪側通信手段(11〜14)は、第1の走行距離データを車輪側記憶手段(11f〜14f)に記憶し、第1の所定時期より遅い第2の所定時期に、制御手段(30)は、走行距離検出手段(40)により検出された第2の走行距離データと、車輪側記憶手段(11f〜14f)から取得した第1の走行距離データとを照合し、第1の走行距離データよりも第2の走行距離データが小さいと判定した場合に、走行距離の改竄を検出するように構成されていることを特徴としている。
【0007】
このように、第1の走行距離データを車輪側に記憶させ、その後検出された第2の走行距離データと照合することによって、走行距離の不正な改竄を検出することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、制御手段(30)は、各種データを記憶する車体側記憶手段(50)を備えており、制御手段(30)は、走行距離の改竄を検出した場合に、車体側記憶手段(50)に走行距離の改竄を検出した旨のデータを記憶させるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、制御手段(30)には、ユーザに警報を行う警報手段(60)が接続されており、制御手段(30)は、走行距離の改竄を検出した場合に、警報手段(60)に警報を行わせるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
これにより、走行距離の改竄の可能性がある車両が中古車として売りに出された場合、買い手は、当該車両の車体側記憶手段(50)に記憶されたデータや、警報手段(60)に表示された警告表示により、当該車両の走行距離が改竄された可能性を知ることができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、制御手段(30)は、走行距離の改竄を検出した場合に、複数の車両との間で通信可能であるとともに、複数の車両における走行距離改竄に関するデータを保持可能な管理センタに対して、走行距離の改竄が検出された旨の走行距離改竄検出情報を送信可能に構成されていることを特徴としている。
【0012】
これにより、走行距離の改竄の可能性がある車両が中古車として売りに出された場合、買い手は、走行距離改竄検出情報を受け取った管理センタに当該車両の情報を問い合わせることで、走行距離の改竄の可能性があることを知ることができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明では、各車輪(1〜4)にタイヤ状態を検出するタイヤ状態検出手段(11a〜14a)が配置され、車輪側通信手段(11〜14)は、データ信号にタイヤ状態に関する情報を含めて車体側通信手段(21〜24)に送信可能に構成されていることを特徴としている。
【0014】
このように、タイヤ状態監視装置の構成要素を、走行距離改竄の検出のために用いるようにすれば、部品の共有化を図ることができるため、部品点数を増加させなくても走行距離の改竄を検知することができる。
【0015】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図4に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態を示す車両の概略斜視図で、図2は本実施形態の走行距離改竄検出システムの概略構成を示すブロック図である。図1および図2に示すように、本実施形態の走行距離改竄検出システムは、車輪側通信機11〜14と、車体側通信機21〜24と、制御装置30、メータECU40、表示装置60とを備えている。なお、車輪側通信機11〜14が本発明の車輪側通信手段に相当し、車体側通信機21〜24が本発明の車体側通信手段に相当し、制御装置30が制御手段に相当し、メータECU40が走行距離検出手段に相当し、表示装置60が警報手段に相当している。
【0018】
車輪側通信機11〜14は、各車輪1〜4にそれぞれ設けられている。図3は、本実施形態の車輪側通信機の概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、車輪側通信機11〜14は、センサ部11a〜14a、送信アンテナ11b〜14b、受信アンテナ11c〜14c、内蔵電池11d〜14d、車輪側制御部11e〜14e、車輪側メモリ11f〜14fを備えている。なお、センサ部11a〜14aが本発明のタイヤ状態検出手段に相当し、車輪側メモリ11f〜14fが本発明の車輪側記憶手段に相当している。
【0019】
センサ部11a〜14aは、タイヤ状態を検出するものであり、本実施形態ではタイヤ空気圧を検出する圧力センサを用いている。センサ部11a〜14aの検出信号は車輪側制御部11e〜14eに出力される。センサ部11a〜14aとしては、圧力センサに加えて、あるいは圧力センサに代えて、例えばタイヤ状態としてタイヤ温度を検出する温度センサを用いることもできる。
送信アンテナ11b〜14bは、センサ部11a〜14aにて検出したタイヤ空気圧をタイヤ状態情報として、車体側通信機21〜24に電波で送信するように構成されている。受信アンテナ11c〜14cは、車体側通信機21〜24からの電波を受信するように構成されている。内蔵電池11d〜14dは、車輪側通信機11〜14の各構成要素に電源供給するものである。
車輪側制御部11e〜14eは、周知のマイクロコンピュータとして構成することができる。車輪側メモリ11f〜14fは、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ等から構成され、車輪側制御部11e〜14eで実行されるコンピュータプログラム以外に、各種データを記憶する。
【0020】
車体側通信機21〜24は、車輪側通信機11〜14に電波を送信する送信アンテナと、車輪側通信機から送信される電波を受信する受信アンテナを備えており、各車輪1〜4にそれぞれ隣接した車体側部位に取り付けられる。より具体的には、車体側通信機21〜24は、車体側の各ホイールハウス70内に1つずつ取り付けられている。各車体側通信機21〜24は、それぞれ信号線80で制御装置30と接続されている。そして、各車体側通信機21〜24は、各送信機11〜14から送信された電波を受信した場合、受信した電波に応じた電圧信号を制御装置30に送信する。なお、各車体側通信機21〜24のそれぞれから制御装置30への信号の送信は、図2のような有線式に限らず、無線式とすることもできる。
【0021】
制御装置30は、CPU、ROM、I/O等を備えた周知のマイクロコンピュータを用いることができ、ROM内に記憶されたプログラムに従って所定の処理を実行するようになっている。また、制御装置30は、RAM、フラッシュメモリ等から構成される車体側メモリ(車体側記憶手段)50を含んでいる。
【0022】
制御装置30は、車輪側通信機11〜14から送信されるタイヤ状態情報を、車体側通信機21〜24を介して受け取る。制御装置30は、車両走行距離の検出を行うメータECU40から走行距離に関する情報を受け取る。
【0023】
また、制御装置30は、例えば、車載バッテリ(図示せず)により給電され、各車体側通信機21〜24は制御装置30から給電される。
【0024】
さらに、制御装置30は、車両の走行距離の改竄が検出された場合に、管理センタに対して、走行距離の改竄が検出された旨の情報を当該車両を特定する車両識別情報と共に送信可能に構成されている。
【0025】
メータECU40は、図示しない車速センサから走行距離に応じたパルス信号が入力され、このパルス信号に基づいて車両の積算走行距離を演算するものである。
【0026】
表示装置60は、車両の走行距離を表示するものであり、例えば液晶パネルが用いられる。この表示装置60には、メータECU40により検出された走行距離データが制御装置30から入力され、この走行距離データに基づいて車両の走行距離が表示される。また、制御装置30によって走行距離の改竄が検出された場合、制御装置30からその旨の信号が表示装置60に入力され、走行距離の改竄が検出された旨のエラーメッセージが表示されるようになっている。
【0027】
次に、図4を参照しながら、本実施形態の走行距離改竄検出システムによる走行距離の改竄検出制御について説明する。図4は、本実施形態における走行距離改竄検出システムの制御装置30のCPUがROMに格納されたプログラムに従って行う処理内容を示すフローチャートである。
【0028】
まず、車両の運行が停止したか否かを判定する(S100)。これは、イグニションスイッチがオフになったか否かで判定できる。この結果、車両の運行が停止したと判定された場合は(S100:YES)、メータECU40から受け取った第1の走行距離データを、車体側通信機21〜24を介して車輪側通信機11〜14に送信する(S110)。
【0029】
次に、ステップS110において送信された第1の走行距離データを車輪側通信機11〜14で受信し、車輪側メモリ11f〜14fに記憶させる(S120)。なお、車両運行停止時が、本発明の第1の所定時期に相当する。
【0030】
次に、車両の運行が開始した否かを判定する(S130)。これは、イグニションスイッチがオンになったか否かで判定できる。この結果、車両の運行が開始したと判定された場合は(S130:YES)、車輪側通信機11〜14に要求信号を送信し、車輪側制御部11e〜14eが車輪側通信機11〜14を介して送信した車輪側メモリ56に記憶されている第1の走行距離データを、車体側通信機21〜24を介して受け取る(S140)。そして、第1の走行距離データと、メータECU40から受け取った第2の走行距離データを照合する(S150)。この結果、第1の走行距離データよりも第2の走行距離データが小さかった場合は(S150:YES)、車体側メモリ50に走行距離が改竄された可能性がある旨の改竄検出情報を記憶させる(S160)。続いて、表示装置60に走行距離の改竄が検出された旨のエラーメッセージを表示させる(S170)。さらに、走行距離の改竄が検出された旨の走行距離改竄検出情報を管理センタに送信する(S180)。なお、車両運行開始時が、本発明の第2の所定時期に相当する。
【0031】
以上説明したような走行距離改竄検出システムの構成により、走行距離の不正な改竄を検出することができる。
【0032】
また、走行距離データを、ユーザが気づきにくい車輪1〜4側の車輪側メモリ11f〜14fに記憶させることで、走行距離の改竄を困難にすることができる。さらに、車輪1〜4は複数あり、その各車輪1〜4それぞれの車輪側メモリ11f〜14fに走行距離データが記憶されるため、走行距離の改竄をより困難にすることができる。
【0033】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、第1の所定時期を車両運行停止時とし、第2の所定時期を車両運行開始時としたが、これらは任意に設定できる。例えば、車両の走行距離が所定距離に達するごとに、第1の走行距離データと第2の走行距離データとを照合して、走行距離の改竄を検出するようにしてもよい。このようにすることで、定期的に走行距離の改竄を検出することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、走行距離の改竄が行われた旨を知らせる警報手段として表示装置60を用いたが、車両に備えられたスピーカから警告音を出して知らせるような音声出力装置を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の走行距離改竄検出システムを示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における走行距離改竄検出システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態における車輪側通信機の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態における走行距離改竄検出システムの制御装置のCPUが行う処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1〜4…車輪、11〜14…車輪側通信機、11f〜14f…車輪側メモリ(車輪側記憶手段)、21〜24…車体側通信機、30…制御装置、40…メータECU(走行距離検出手段)、50…車体側メモリ(車体側記憶手段)、60…表示装置(警報手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを備える各車輪(1〜4)のそれぞれに配置され、各種データを記憶する車輪側記憶手段(11f〜14f)を有し、所定のデータ信号を通信可能な車輪側通信手段(11〜14)と、
車体に配置され、前記車輪側通信手段(11〜14)との間で通信可能な車体側通信手段(21〜24)と、
前記車体に配置され、前記車体側通信手段(21〜24)で受信した前記データ信号が入力される制御手段(30)と、
前記車体に配置され、車両の走行距離を検出する走行距離検出手段(40)とを備え、
第1の所定時期に、前記制御手段(30)は、前記走行距離検出手段(40)により検出された第1の走行距離データを、前記車体側通信手段(21〜24)を介して前記車輪側通信手段(11〜14)へ送信し、前記車輪側通信手段(11〜14)は、前記第1の走行距離データを前記車輪側記憶手段(11f〜14f)に記憶し、
前記第1の所定時期より遅い第2の所定時期に、前記制御手段(30)は、前記走行距離検出手段(40)により検出された第2の走行距離データと、前記車輪側記憶手段(11f〜14f)から取得した前記第1の走行距離データとを照合し、前記第1の走行距離データよりも前記第2の走行距離データが小さいと判定した場合に、走行距離の改竄を検出するように構成されていることを特徴とする走行距離改竄検出システム。
【請求項2】
前記制御手段(30)は、各種データを記憶する車体側記憶手段(50)を備えており、
前記制御手段(30)は、前記走行距離の改竄を検出した場合に、前記車体側記憶手段(50)に前記走行距離の改竄を検出した旨のデータを記憶させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の走行距離改竄検出システム。
【請求項3】
前記制御手段(30)には、ユーザに警報を行う警報手段(60)が接続されており、
前記制御手段(30)は、前記走行距離の改竄を検出した場合に、前記警報手段(60)に警報を行わせるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の走行距離改竄検出システム。
【請求項4】
前記制御手段(30)は、前記走行距離の改竄を検出した場合に、複数の車両との間で通信可能であるとともに、前記複数の車両における走行距離改竄に関するデータを保持可能な管理センタに対して、前記走行距離の改竄が検出された旨の走行距離改竄検出情報を送信可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の走行距離改竄検出システム。
【請求項5】
前記各車輪(1〜4)にタイヤ状態を検出するタイヤ状態検出手段(11a〜14a)が配置され、前記車輪側通信手段(11〜14)は、前記データ信号に前記タイヤ状態に関する情報を含めて前記車体側通信手段(21〜24)に送信可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の走行距離改竄検出システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−47002(P2006−47002A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225606(P2004−225606)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】