説明

走行車システム

【課題】走行車システムにおいて、走行経路に沿って配置される走行車関連設備に給電するための給電線を効率的に配設することを目的とする。
【解決手段】走行車システム10は、スタッカークレーン15と、スタッカークレーン15の走行経路11に配設され、スタッカークレーン15に給電するための給電線13と、スタッカークレーン15の走行経路11に沿って配置されるコンベア17と、給電線13から分岐され、コンベア17に電力を分配するための分配給電線14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路を走行する走行車を備える走行車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面等に予め設けられた走行経路を、コンピュータ制御によって無人で走行する走行車を備える走行車システムが実用化されている。具体的には、例えば、ラックに沿って設けられた走行経路を自動走行するスタッカークレーンを備える走行車システムが実用化されている。このような走行車システムにおいて、スタッカークレーン等の走行車が走行するために必要な電力が、走行車用の給電線を介して供給される(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の走行車システムでは、走行経路に配設されたトロリー線から走行車に給電される。
【0003】
ところで、走行車システムは、走行経路の途中から物品を受け渡しするためのコンベアなどの走行車関連設備を備える場合がある。従来、走行車関連設備には、走行車関連設備用の給電線を介して電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−242138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、走行車関連設備が電源あるいは分電盤などから離れた位置にある場合には、給電線の配線長が長くなり給電線の配設に無駄が多いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、走行車システムにおいて、走行経路に沿って配置される走行車関連設備に給電するための給電線を効率的に配設することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様である走行車システムは、走行車と、前記走行車の走行経路に配設され、前記走行車に給電するための給電線と、前記走行車の走行経路に沿って配置される走行車関連設備と、前記給電線から分岐され、前記走行車関連設備に電力を分配するための分配給電線とを備える。
【0008】
これによって、走行車に給電するための給電線から分岐された分配給電線から走行車関連設備へ給電することができるので、走行車関連設備に給電するための給電線を効率的に配設することが可能となる。
【0009】
ここで、さらに、前記走行車関連設備と前記分配給電線との間に設けられ、前記走行車関連設備への電力の供給を制御する制御盤を備えることが好ましい。
【0010】
これによって、走行車関連設備に異常が発生した場合などに、走行車への給電を停止することなく、走行車関連設備への給電を停止することが可能となる。
【0011】
また、さらに、前記走行車の消費電力と前記走行車関連設備の消費電力との和が、前記給電線から供給可能な電力の上限値を超えないように、前記走行車及び前記走行車関連設備の少なくとも一方の動作を制御するコントローラを備えることが好ましい。
【0012】
これによって、給電線から供給可能な電力の上限を超えることなく安定して稼働することが可能となる。また、走行車及び走行車関連設備のすべてが最大消費電力を消費するときの供給能力を有する必要がなくなるので、コストの削減などが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る走行車システムでは、走行車に給電するための給電線から分岐された分配給電線から走行車関連設備へ給電することができるので、走行車関連設備へ給電するための給電線を効率的に配設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る走行車システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る走行車システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る走行車システムの構成を示す図である。本実施の形態に係る走行車システム10は、物品を収納するための収納棚を縦横に複数有するラック(一部図示せず)に物品を収納する自動倉庫に関するシステムである。
【0017】
図1に示すように走行車システム10は、走行経路11、軌道12、給電線13、分配給電線14、スタッカークレーン15、コンベア17、及び制御盤18を備える。
【0018】
走行経路11は、ラックに沿って自動倉庫内に設けられる、スタッカークレーン15の通路である。
【0019】
軌道12は、走行経路11の床面及び天井に上下一対に設けられたレールであり、スタッカークレーン15を水平方向に案内する。
【0020】
給電線13は、走行車に給電するためのものであり、本実施の形態ではトロリー線である。給電線13は、電源又は分電盤に接続され、走行経路11に配設される。
【0021】
分配給電線14は、給電線13から分岐され、コンベア17に電力を分配するための電線である。分配給電線14は、コンベア17の近傍において、給電線13から分岐される。つまり、分配給電線14は、電源又は分電盤に直接接続された場合よりも、その長さが短くなる位置から分岐される。
【0022】
なお、分配給電線14は、2つの給電線13が互いに接続される位置において分岐されることが望ましい。これにより、分配給電線14を給電線13から容易に分岐することが可能となる。
【0023】
スタッカークレーン15は、走行車の一例であり、上下一対に設けられた軌道12に案内されて走行する。また、スタッカークレーン15は、複数の収納棚のいずれかに物品を収納する。
【0024】
また、スタッカークレーン15は、集電部16を備える。集電部16は、給電線13と接触することにより、給電線13から電力を得る。スタッカークレーン15は、給電線から得た電力を用いてモータを動作させることにより、動力を発生させる。そして、スタッカークレーン15は、発生させた動力を用いて床面の軌道12に接する車輪を回転させることにより、走行経路11を走行する。
【0025】
コンベア17は、例えばチェーンコンベア、ベルトコンベア、ローラコンベアなどであり、走行車関連設備の一例である。コンベア17は、ラックの背面を横断するように設けられ、倉庫の外部から内部へ、又は倉庫の内部から外部へ物品を移送する。具体的には、コンベア17は、分配給電線14から得られる電力を用いてモータを動作させることにより動力を発生させる。そして、コンベア17は、発生させた動力を用いてチェーン、ベルト又はローラなどを駆動させることにより、物品を移送する。
【0026】
ここで、コンベア17によって倉庫の外部から内部へ入庫された物品は、スタッカークレーン15によってラックが有する複数の収納棚のいずれかに収納される。また、スタッカークレーン15によって複数の収納棚のいずれかからコンベア17まで搬送された物品は、コンベア17によって倉庫の内部から外部へ出庫される。
【0027】
制御盤18は、コンベア17と分配給電線14との間に設けられ、コンベア17への電力の供給を制御する。具体的には、制御盤18は、例えばコンベア17に異常が発生した場合に、スタッカークレーン15への給電に影響を与えることなく、コンベア17への電力の供給を停止することができる。
【0028】
なお、本実施の形態において、コンベア17は、ラックの背面を横断するように設けられているが、必ずしもこのように設けられる必要はない。例えば、コンベア17は、走行経路11の端部から物品を入出庫できるように設けられてもよい。
【0029】
以上のように本実施の形態に係る走行車システム10は、スタッカークレーン15に給電するための給電線13から分岐された分配給電線14からコンベア17へ給電することができるので、コンベア17に給電するための給電線を効率的に配設することが可能となる。
【0030】
さらに、走行車システム10は、分配給電線14とコンベア17との間に制御盤18を備えるので、コンベア17に異常が発生した場合などに、スタッカークレーン15への給電を停止することなく、コンベア17への給電を停止することが可能となる。
【0031】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態2に係る走行車システムの構成を示す図である。本実施の形態に係る走行車システム20は、走行経路21、軌道22、給電線23、分配給電線24、走行車25、ステーション26、及びコントローラ27を備える。
【0033】
走行経路21は、複数の走行車25が一方通行で走行する経路であり、複数の周回経路を有する。
【0034】
軌道22は、走行経路21の天井又は床面等にあらかじめ設けられた、互いに平行に配置された2本のレールである。
【0035】
給電線23は、走行経路21に配設され、走行車25に給電するためのものである。本実施の形態では、給電線23は、電磁誘導作用により給電ブロック28内を走行する走行車25に非接触で電力を供給する。また、給電線23は、給電ブロック28ごとに絶縁され、給電ブロック28ごとに電源29に接続される。なお、給電ブロック28ごとに、給電線23によって供給可能な電力の上限があらかじめ定められている。
【0036】
分配給電線24は、給電線13から分岐され、ステーション26が有する動力装置に電力を分配するための電線である。
【0037】
走行車25は、例えば天井走行車であり、コントローラ27からの指示にしたがって、軌道22を一方向に走行する。具体的には、走行車25は、例えば、コントローラ27から受信した搬送指示にしたがって、複数のステーション26のいずれかのステーションから他のステーションへ物品を搬送する。
【0038】
ステーション26は、走行車関連設備の一例であり、走行経路21に沿って配置され、走行車25によって搬送される物品又は搬送された物品が載置される。つまり、ステーション26において、走行車25は物品の受渡しを行う。さらに、ステーション26は、載置された物品を移動するための動力装置を備える。
【0039】
この動力装置は、例えば、コンベアあるいはクレーンなどであり、分配給電線24から供給された電力によって動作する。動力装置は、走行車25と同様に電磁誘導作用を用いて電力を受電する。なお、動力装置は、分配給電線24と直接接続されてもよい。この場合、動力装置は、分配給電線24から供給される電力を周波数変換した後に使用することが好ましい。
【0040】
コントローラ27は、例えば、プロセッサ及びメモリなどを備えるコンピュータであり、走行車25及びステーション26に有線又は無線で指示を送信することにより、走行車25及びステーション26の動作を制御する。具体的には、コントローラ27は、給電ブロック28ごとに、走行車25の消費電力及びステーション26の消費電力の和が、給電線23から供給可能な電力の上限値を超えないように、走行車25及びステーション26の少なくとも一方の動作を制御する。
【0041】
より具体的には、コントローラ27は、給電ブロック28内に存在する走行車25の台数に応じて、ステーション26の動作を制御する。例えば、コントローラ27は、給電ブロック28内に存在する走行車25の台数が一定台数を超える場合、消費電力の大きい動作(例えば加速動作)を禁止する指示をステーション26に送信する。
【0042】
なお、コントローラ27は、例えば、ステーション26が消費する電力を確保するために、給電ブロック28内に存在する走行車25の台数が一定台数を超えないように、走行車25の給電ブロック28への進入を制限してもよい。具体的には、コントローラ27は、給電ブロック28内に存在する走行車25の台数が一定台数を超えない場合に、給電ブロック28への進入を許可する指示を走行車25に送信してもよい。
【0043】
さらに、コントローラ27は、例えば、給電ブロック28内に存在する走行車25の台数が一定台数を超えないように走行車25の給電ブロック28への進入を制限するとともに、給電ブロック28内に存在する走行車25の台数に応じてステーション26の動作を制御してもよい。
【0044】
以上のように、本実施の形態に係る走行車システム20は、走行車25に給電するための給電線23から分岐された分配給電線24からステーション26へ給電することができるので、ステーション26に給電するための給電線を効率的に配設することが可能となる。
【0045】
さらに、走行車システム20は、コントローラ27が給電線23から供給可能な電力の上限を超えないように走行車25及びステーション26の少なくとも一方の動作を制御することができるので、安定して稼働することが可能となる。また、走行車システム20において、電源29及び給電線23は、走行車25及びステーション26のすべてが最大消費電力を消費するときの供給能力を有する必要がなくなるので、コストの削減などが可能となる。
【0046】
以上、本発明に係る走行車システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、又は異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
例えば、実施の形態1に係る走行車システム10が、実施の形態2に係る走行車システム20が備えるコントローラ27と同様のコントローラを備えてもよい。この場合、コントローラは、例えば、スタッカークレーン15とコンベア17とが一定量以上の加速動作を同時に行わないように制御すればよい。
【0048】
また、実施の形態2に係る走行車システム20が、実施の形態1に係る走行車システム10が備える制御盤18と同様の制御盤を備えてもよい。これにより、実施の形態2に係る走行車システム20においても、実施の形態1に係る走行車システム10と同様に、ステーション26に異常が発生した場合などに、走行車25への給電を停止することなく、ステーション26への給電を停止することが可能となる。
【0049】
また、上記実施の形態において、走行車関連設備はコンベアなどであったが、走行車関連設備は必ずしもコンベアである必要はない。例えば、走行車関連設備は、走行経路もしくは走行車関連設備などを照らす照明装置、走行経路に沿って設けられた安全柵のセンサ、又は走行車とは異なる経路を走行する電動台車などであってもよい。つまり、走行車関連設備は、走行経路に沿って設けられた、電力を消費する設備であればよい。
【0050】
特に好ましくは、走行車関連設備は、コンベアあるいは電動台車などのモータを有する動力設備であればよい。さらに好ましくは、走行車関連設備は、走行車と同一の電気方式(例えば、三相3線200Vなど)によって給電される搬送設備であればよい。これにより、走行車関連設備は、走行車用の給電線から分配された電力を用いる場合に電気方式の変換装置を別途備える必要がないので、より部品点数及びコストの削減が可能となる。
【0051】
また、上記実施の形態において、走行経路には軌道が設けられていたが、本発明に係る走行車システムは必ずしも軌道を備える必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る走行車システムは、走行経路に沿って設けられた走行車関連設備に給電するための給電線を効率的に配設できる走行車システムとして、特に、自動倉庫システム、天井走行車システム等として有用である。
【符号の説明】
【0053】
10、20 走行車システム
11、21 走行経路
12、22 軌道
13、23 給電線
14、24 分配給電線
15 スタッカークレーン
16 集電部
17 コンベア
18 制御盤
25 走行車
26 ステーション
27 コントローラ
28 給電ブロック
29 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車と、
前記走行車の走行経路に配設され、前記走行車に給電するための給電線と、
前記走行車の走行経路に沿って配置される走行車関連設備と、
前記給電線から分岐され、前記走行車関連設備に電力を分配するための分配給電線とを備える
走行車システム。
【請求項2】
さらに、
前記走行車関連設備と前記分配給電線との間に設けられ、前記走行車関連設備への電力の供給を制御する制御盤を備える
請求項1に記載の走行車システム。
【請求項3】
さらに、
前記走行車の消費電力と前記走行車関連設備の消費電力との和が、前記給電線から供給可能な電力の上限値を超えないように、前記走行車及び前記走行車関連設備の少なくとも一方の動作を制御するコントローラを備える
請求項1又は2に記載の走行車システム。

【図1】
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【図2】
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