説明

起歪体

【課題】 二つの部材を連結した状態で二つの部材間の力を精度よく測定することのできる起歪体を提供することを課題とする。
【解決手段】 二つの部材のそれぞれに直接的又は間接的に連結される一対の連結部と、両端が一対の連結部に連結され、厚み方向の少なくとも何れか一方の面に歪みゲージが取り付けられるゲージ取付部が設定されたプレート状の起歪部と、一対の連結部間で起歪部の厚み方向の面に対して間隔をあけて配置されるとともに両端が一対の連結部に連結され、起歪部を基準にして対称的に形成された一対の連結支持部とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードセル用の起歪体に関し、特には、歪みゲージを用いて二つの部材間に加わる荷重を測定するための起歪体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧縮荷重や引張荷重を測定する装置として、ロードセルが知られている。かかるロードセルは、図8に示す如く、筒状部101と、該筒状部101の一端開口を閉塞した起歪部102と、起歪部102の内面に取り付けられ、荷重を算出するためのパラメータ(例えば、ブリッジ電圧)を出力するブリッジ回路に電気的に接続される歪みゲージGとを備えている。
【0003】
そして、この種のロードセル100には、筒状部101の中心線上に位置するように前記起歪部102の外面に突設されたピン状の支持部103を備えたものがある。
【0004】
かかるロードセル100は、荷重測定の対象とされる測定対象物P’を支持部103の先端で支持することで、測定対象物P’側からの曲げモーメントや回転モーメント、斜め方向の力等を作用させないようになっており、支持部103を介して測定対象物P’側から起歪部102に力が作用したときに、起歪部102に曲げモーメント等を大きく作用させることなく、筒状部101の軸線方向の力を起歪部102に作用させることができるようになっている。
【0005】
これにより、上記構成のロードセル100は、曲げモーメント等を逃がした上で筒状部101の軸線方向の力で起歪部102に歪みを生じさせることができるため、該起歪部102に取り付けられた歪みゲージGの出力(ブリッジ回路に対する入力)が軸線方向の力に対応したものとなる結果、ブリッジ回路から出力される荷重を算出するためのパラメータ(例えば、ブリッジ電圧)も高精度のものとなり、荷重を精度良く測定(算出)することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の如く、起歪部102に支持部103が突設されたロードセル100は、高精度の測定が可能であるが、測定対象物P’側からの曲げモーメント等を作用させないように、支持部103の先端で測定対象物P’を点支持しなければならないため、ロードセル100と測定対象物P’とを連結した態様にすることができず、例えば、ロードセル100と測定対象物P’とを連結状態で維持させる必要のある装置に採用できないとの指摘がある。
【0007】
具体的に説明すると、足の一部を失った人や足の機能が停止した人がその機能を補うために義肢や装具(以下、総称して義肢という)を用いることがあるが、従来の義肢は、単に造型したものや構造物的に形成されたもの等であったため、使用者に大きな負担が生じるとして、近年、使用者の動作状態に連動して足首等をスムーズに動作させるアクチュエータを装備したものが提案されている。
【0008】
かかる義肢は、該義肢(骨格としてのフレーム)に生じる荷重(上下方向の力)を測定し、その測定結果を基にアクチュエータを動作させ、使用者の動作の補助を行うといった画期的なものである。
【0009】
そして、前記義肢は、使用者の安全を確保する観点からも、アクチュエータを高精度で制御する必要があるため、荷重測定に精度が要求される。このことから、上述のような高精度なロードセル100を採用することが考えられるが、上記構成のロードセル100は、測定対象物P’と連結できない構成であるため、義肢のフレームの一部に介設すると、その部分での剛性を確保することができないといった問題がある。
【0010】
すなわち、従来のロードセル100は、義肢のフレームを上下に分断して下側のフレーム上にロードセル100を固定しても、上側のフレームにロードセル100を連結することができずにフレームが上下に分断された状態になってしまうため、二つの部材を連結した状態(二つの部材を互いに固定した状態)で荷重を測定することができないといった問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、二つの部材を連結した状態で二つの部材間の力を精度よく測定することのできる起歪体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る起歪体は、二つの部材のそれぞれに直接的又は間接的に連結される一対の連結部と、両端が一対の連結部に連結され、厚み方向の少なくとも何れか一方の面に歪みゲージが取り付けられるゲージ取付部が設定されたプレート状の起歪部と、一対の連結部間で起歪部の厚み方向の面に対して間隔をあけて配置されるとともに両端が一対の連結部に連結され、起歪部を基準にして対称的に形成された一対の連結支持部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
上記構成の起歪体によれば、一対の連結部に一対の連結支持部の両端が連結されているため、二つの部材を各連結部に直接的又は間接的に連結することで、当該起歪体を介して二つの部材を互いに連結した状態にすることができる。また、起歪体(一対の連結部)に圧縮荷重或いは引張荷重(以下、単に荷重という)が作用すると、一対の連結部間において、その荷重の略全てを一対の連結支持部が受けることになる。
【0014】
これにより、起歪部には、起歪体に作用した荷重のごく僅かな力だけが作用して歪みを生じさせることになる。従って、起歪部のゲージ取付部に取り付けられた歪みゲージの出力から精度良く荷重量を算出することができる。
【0015】
そして、上述のように起歪体に荷重が作用する際には、起歪体に曲げモーメント等が作用する場合があるが、上記構成の起歪体は、一対の連結支持部が起歪部を基準に対称的に形成されることで、起歪部には曲げ作用が大きく影響することがなく、ゲージ取付部に取り付けた歪みゲージから精度の良い出力を得ることができる。すなわち、一対の連結支持部が起歪部を基準に対称的に形成さることで、曲げ作用が生じた際の起歪体における引っ張り側と圧縮側との境界(中立軸)上に起歪部が位置するため、曲げ作用に大きく影響を受けることなく起歪部に歪みを生じさせることができ、その結果、荷重を算出するための出力を歪みゲージから精度良く得ることができる。
【0016】
本発明の一態様として、前記一対の連結支持部は、一対の連結部間の中間位置で起歪部から最も離間するように湾曲形状又は屈曲形状に形成されてもよい。このようにすれば、起歪体(一対の連結部)に荷重が作用した場合、連結部と連結支持部との連結部分や連結支持部の曲げ部分(頂部や屈曲部)に曲げ作用が生じる。これにより、連結支持部がクッション的な役割をなし、大きな荷重を効率良く吸収することができため、起歪部に必要な力だけ効率的に作用させることができる。
【0017】
さらに、本発明の他態様として、ゲージ取付部と対向する連結支持部には、起歪部と面交差する方向に貫通した開口が形成されてもよい。このようにすれば、歪みゲージの取り付けや交換を容易に行うことができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る起歪体によれば、二つの部材を連結した状態で二つの部材間の力を精度よく測定することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る起歪体について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係る起歪体は、図1及び図2に示す如く、二つの部材のそれぞれに直接的又は間接的に連結される一対の連結部20,21と、両端が一対の連結部20,21に連結され、厚み方向の少なくとも何れか一方の面に歪みゲージが取り付けられるゲージ取付部22a,22bが設定されたプレート状の起歪部23と、一対の連結部20,21間で起歪部23の厚み方向の面に対して間隔をあけて配置されるとともに両端が一対の連結部20,21に連結され、起歪部23を基準にして対称的に形成された一対の連結支持部24,25とを備えている。
【0021】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る起歪体Aは、一方の部材に固定される第一固定部1と、第一固定部1に連設された第一受感部2と、該第一受感部2に連設された第二受感部3と、該第二受感部3に連設され、他方の部材に固定される第二固定部4とを備えており、これらが一列をなして形成されている。
【0022】
前記第一固定部1は、外観円柱状に形成されている。本実施形態に係る第一固定部1は、螺子等を用いて一方の部材に固定するようになっている。本実施形態に係る第一固定部1は、軽量化を図るべく、一端から他端側に向けて非貫通孔が形成されており、有底筒状をなしている。
【0023】
前記第一受感部2は、第一固定部1と第二固定部4との間で生じる圧縮荷重及び引張荷重を測定するためのパラメータを取得する(歪みを測定)するための部位である。かかる第一受感部2は、第一固定部1に連設された一方の連結部20(以下、第一連結部20という)と、第二固定部4に連設された他方の連結部21(以下、第二連結部21という)と、一端が第一連結部20に連結されるとともに他端が第二連結部21に連結され、厚み方向の両面に歪みゲージR1,R2が取り付けられるゲージ取付部22a,22bが設定されたプレート状の起歪部23と、一対の連結部20,21間で起歪部23の厚み方向の面に対して間隔をあけて配置され、一端が第一連結部20に連結されるとともに他端が第二連結部21に連結されて起歪部23を基準にして対称的に形成された一対の連結支持部24,25とを備えている。
【0024】
前記第一連結部20は、第一固定部1の他端に連設されており、第一固定部1の軸心と直交する方向の断面(横断面)が略四角形状をなし、第一固定部1の軸心が横断面の中央を通過するように形成されている。なお、以下において、便宜上、第一固定部1の軸心を当該起歪体Aの基準となる中心線CLとして説明することとし、特段の説明を要する場合を除いて単に中心線CLということとする。
【0025】
前記起歪部23は、略四角形状をなす薄板の如く形成されており、四角形状を画定する四辺のうちの一辺(一端)が第一連結部20に固定(固着)され、前記一辺と平行な他辺(他端)が第二連結部21に固定(固着)されている。なお、起歪部23は、第一連結部20と略同幅に設定されている。
【0026】
該起歪部23は、厚み方向の略中央に中心線CLが通るように配置され、両面が中心線CLと略平行になっている。そして、該起歪部23は、上述の如く、両面に歪みゲージR1,R2を取り付けるゲージ取付部22a,22bが設けられており、各ゲージ取付部22a,22bは、起歪部23の平面略中央部に設定されている。なお、ゲージ取付部22a,22bは、歪みゲージR1,R2を取り付ける領域を意味するもので、本実施形態においては、起歪部23の平面の一部の領域を意味しているが、例えば、起歪体Aの平面上に歪みゲージR1,R2を配置するための目印を設けたり、歪みゲージR1,R2を配置するための凹部を形成したりすることで構成してもよい。
【0027】
前記一対の連結支持部24,25は、起歪部23(中心線CL)を基準にそれぞれ対称になるように形状及び配置が設定されている。
【0028】
前記一対の連結支持部24,25のそれぞれは、二つの部材に圧縮荷重又は引張荷重(荷重)が作用した際にその荷重の略全てを受けるべく、起歪部23よりも圧肉に形成されている。
【0029】
本実施形態に係る連結支持部24,25は、第一連結部20と第二連結部21との間の中間位置で起歪部23から最も離間するように屈曲形状(くの字状)に形成されている。そして、各連結支持部24,25は、一端が第一連結部20に固定(固着)され、他端が第二連結部21に固定(固着)されている。
【0030】
本実施形態においては、上述の如く、各連結支持部24,25がくの字状に形成されることを前提に、各連結支持部24,25の一端は、起歪部23の一端に接近するように配置され、また、各連結支持部24,25の他端は、起歪体Aの他端に接近するように配置されている。従って、本実施形態において、一対の連結支持部24,25は、第一連結部20と第二連結部21とを連結した状態でパンタグラフの如き態様をなしている。
【0031】
本実施形態に係る起歪体Aは、一対の連結支持部24,25がくの字状を呈し、その間に起歪部23が配置されることで、起歪部23と連結支持部24,25との間に三角形状をなす孔が起歪体Aの中心線CLと直交する方向に貫通して形成されている。そして、該起歪体Aは、三角形状の孔を画定する面(連結支持部24,25の内面と該内面と対向する起歪部23の面が連続して環状をなす面)において、三角形状の各角部を形成する部分が円弧面をなしている。また、連結支持部24,25と第一連結部20とが連結された境界部分の外側に向く面においても円弧面をなしている。
【0032】
そして、本実施形態に係る連結支持部24,25は、最も外側に突出した部分が中心線CLと略平行をなすように形成されている。すなわち、連結支持部24,25は、起歪部23から最も離間した部分の外面が中心線CLと平行な平面になっている。これにより、該連結支持部24,25は、屈曲部分での厚みがその両側(第一連結部20側及び第二連結部21側)よりも薄肉に形成されている。
【0033】
また、各連結支持部24,25には、起歪部23と面交差する方向に貫通した開口26が形成されている。これにより、開口26を介して起歪部23のゲージ取付部22a,22bに歪みゲージR1,R2を着脱でき、メンテナンス性を向上させることができるようになっている。
【0034】
前記第二受感部3は、第一固定部1と第二固定部4との間で生じる曲げ荷重を測定するためのパラメータを取得する(歪みを測定)するための部位である。前記第二連結部21は、中心線CLと直交する方向の断面(横断面)が略四角形状をなし、中心線CLが横断面の中央を通過するように形成されている。該第二連結部21は、起歪部23の中央を通る仮想線(一対の連結支持部24,25の最も外側に位置する屈曲部を通る仮想線)を基準に第一連結部20と対称となるように形状及びサイズが設定されている。従って、前記起歪部23は、第一連結部20、第二連結部21及び一対の連結支持部24,25のそれぞれに対して略同幅に設定されている。なお、連結支持部24,25と第二連結部21とが連結された境界部分の外側に向く面においても円弧面をなしている。
【0035】
前記第二受感部3は、前記第二連結部21に連結されており、外観ブロック形状をなしている。該第二受感部3には、第一受感部2の三角形状の孔30と直交する方向に貫通した孔30が形成されている。該第二受感部3の孔30は、中心線CLの延びる方向で間隔をあけて配置された一対の拡大孔部31,32と、該一対の拡大孔部31,32同士を連通させる連通孔部33とで構成されている。
【0036】
一対の拡大孔部31,32は、中心線CLと直交する方向に延びる長孔状に形成されており、連通孔部33は、中心線CL上を通るように拡大孔部31,32の長手方向の径よりも狭い幅で両拡大孔部31,32を連通させている。これにより、第二受感部3は、孔30の貫通する方向と直交する方向で、中心線CLを挟んで対向する一対の対向部34,34が形成されている。
【0037】
該一対の対向部34,34は、中心線CLを基準に互いに対称的になっており、一対の拡大孔部31,32をそれよりも幅狭な連通孔部33で連通させることで、各対向部34,34には、相手側に向けて突出した突出部35が形成されている。
【0038】
上記構成の第二受感部3は、孔30の貫通した方向と直交する方向で外側に向く面上に歪みゲージを取り付けるようになっている。
【0039】
前記第二固定部4は、第一固定部1と同様に、外観円柱状に形成されており、軸心の延びる方向の一端が第二受感部3に連結されている。該第二固定部4は、軽量化を図るべく、他端から一端に向けて非貫通孔が形成されており、有底筒状をなしている。本実施形態においては、第二固定部4についても、螺子等を用いて一方の部材に固定するようになっている。
【0040】
上記構成の起歪体Aは、鉄、鋼鉄、ステンレス合金、アルミ合金等の金属材料や、セラミック等の種々の材料で作製することができるが、本実施形態においては、軽量化や耐腐食性、剛性等を考慮してアルミ合金(ジュラルミン)で作製されている。
【0041】
そして、該起歪体Aは、金属材料で構成されており、切削加工や鋳造等の金属加工により作製されるもので、本実施形態においては、金属を削り出す(切削加工する)ことで上記各構成(第一固定部1、第一受感部2、第二受感部3、第二固定部4)が一体的に作製されている。
【0042】
本実施形態に係る起歪体Aは、以上の構成からなり、次に、上記構成の起歪体Aに採用されるブリッジ回路について説明する。なお、第二受感部3及びこれに採用されるブリッジ回路は、公知の構成(例えば、特開平5−141907号公報参照)であるため、ここでは、第一受感部2に適用されるブリッジ回路についてのみ説明する。
【0043】
図3(a)に示す如く、上記構成の起歪体Aが起歪部23の両面に設定されたゲージ取付部22a,22bに歪みゲージR1,R2が取り付けられるものであることを前提に、該第一受感部2用のブリッジ回路は、図3(b)に示す如く、四点を四つのブリッジで接続して四角形状に形成されたもので、そのうちの一つのブリッジ上にゲージ取付部22a,22bに取り付けた二つの歪みゲージR1,R2が直列に配置されるとともに、残りの三つのブリッジ上に固定抵抗R,Rが配置され、対角位置にある二点間に電源が接続され、残りの対角位置にある二点にブリッジ電圧を測定する電圧計が接続される。
【0044】
かかるブリッジ回路によれば、表1に示す如く、起歪体A(起歪部23)に圧縮荷重が作用したときに、二つの歪みゲージR1,R2の抵抗が小さくなり、ブリッジ電圧eが小さくなる一方、起歪体Aに引張荷重が作用したときに、二つの歪みゲージR1,R2の抵抗が大きくなり、ブリッジ電圧eが大きくなるので、そのブリッジ電圧eから荷重を算出することができる。そして、起歪体A(起歪部23)に曲げ作用が生じたときには、何れか一方の歪みゲージR1,R2の抵抗が大きくなる一方で、他方の歪みゲージR1,R2の抵抗が小さくなるため、これらの抵抗の相殺でブリッジ電圧eが略ゼロになり、曲げ作用の影響を受けることがない。
【0045】
【表1】

なお、図3(b)において、R1,R2は、歪みゲージ、Rは、固定抵抗を示し、上記表1において、R1,R2:図3(b)に示す歪みゲージ、R:図3(b)に示す固定抵抗、V1,V2:図3(b)に示すV1,V2、e:図3(b)に示す電圧計の測定値(ブリッジ電圧)、r:一定(固定抵抗)、E:電源の電圧(入力電圧)、+:抵抗値増加、−:抵抗値減少を示す。また、表1のV1の算出式は、V1=((R1+R2)・E)/(R1+R2+R)であり、この式において、R1,R2=歪みゲージの抵抗値、R=固定抵抗の抵抗値、E=電源の電圧(入力電圧)である。
【0046】
次に、本実施形態に係る起歪体Aの使用態様について説明する。なお、本実施形態に係る起歪体Aは、種々の用途に適用できるが、ここでは、図4に示す如く、従来技術で説明したアクチュエータを備えた義肢Pに採用する場合を一例にして説明することとする。なお、義肢Pの具体的な構成についてはここでの説明を割愛することとする。
【0047】
本実施形態に係る起歪体Aは、第一固定部1及び第二固定部4を上下に配置するようにして用いられる。すなわち、本実施形態に係る起歪体Aは、上述の如く、義肢Pに採用されるため、義肢Pの骨格としてのフレームの途中部分に介設される。具体的には、義肢Pのフレームを構成する構造材を上下に分断し、上下に分断された二つの構造材(部材)P1,P2のうちの一方(上側の部材)P1に第一固定部1を連結し、他方(下側の部材)P2に第二固定部4を連結する。このとき、一対の連結支持部24,25が義肢Pの前後に位置するようにしておく。
【0048】
そして、義肢Pで歩行する際に、該義肢P(フレーム)に対して圧縮作用や引張作用、曲げ作用が生じることになるため、第一受感部2で圧縮荷重及び引張荷重を算出するためのパラメータである歪みを測定し、第二受感部3で曲げ荷重を算出するためのパラメータである歪みを測定する。
【0049】
第一受感部2は、一対の連結部20,21に一対の連結支持部24,25の両端が連結されているため、歩行や起立の際に、起歪体A(一対の連結部20,21)に圧縮荷重或いは引張荷重(以下、単に荷重という)が作用すると、一対の連結部20,21間において、その荷重の略全てを一対の連結支持部24,25が受けることになる。
【0050】
本実施形態においては、一対の連結支持部24,25が一対の連結部20,21間の中間位置で起歪部23から最も離間するように屈曲形状に形成されているため、起歪体A(一対の連結部20,21)に上下方向の荷重や曲げ荷重が作用した場合、連結部20,21と連結支持部24,25との連結部分や連結支持部24,25の曲げ部分(屈曲部)に曲げ作用や引っ張り作用が生じ、連結支持部24,25がクッション的な役割をなす。これにより、一対の連結支持部24,25が大きな荷重を効率良く吸収するため、起歪部23に対して歪みを生じさせるのに必要な力だけが作用することになる。
【0051】
そして、上述のように起歪体Aに荷重が作用する際には、起歪体Aに曲げモーメント等が作用する場合があるが、第一受感部2は、一対の連結支持部24,25が起歪部23を基準に対称的に形成されることで、起歪部23には曲げ作用が大きく影響することがない。すなわち、一対の連結支持部24,25が起歪部23を基準に対称的に形成さることで、曲げ作用が生じた際の起歪体Aにおける引っ張り側と圧縮側との境界(中立軸)上に起歪部23が位置するため、曲げ成分に大きく影響を受けることなく上下方向での荷重で歪みを生じさせることになる。
【0052】
これにより、第一受感部2において、曲げ作用の影響を受けることなく、上下方向の荷重を算出するための出力が歪みゲージR1,R2から精度良く得られる。従って、曲げ作用に大きく影響されていない出力がブリッジ回路に入力されることで、上下方向に作用する荷重を精度良く算出(測定)することができる。
【0053】
以上のように本実施形態に係る起歪体Aによれば、二つの部材P1,P2のそれぞれに直接的又は間接的に連結される一対の連結部20,21と、両端が一対の連結部20,21に連結され、厚み方向の少なくとも何れか一方の面に歪みゲージR1,R2が取り付けられるゲージ取付部22a,22bが設定されたプレート状の起歪部23と、一対の連結部20,21間で起歪部23の厚み方向の面に対して間隔をあけて配置されるとともに両端が一対の連結部20,21に連結され、起歪部23を基準にして対称的に形成された一対の連結支持部24,25とを備えているため、二つの部材P1,P2を各連結部20,21に直接的又は間接的に連結することで、当該起歪体Aを介して二つの部材P1,P2を互いに連結した状態にすることができる上に、荷重を測定するための出力を歪みゲージR1,R2から精度良く得ることができる。
【0054】
また、前記一対の連結支持部24,25は、一対の連結部20,21間の中間位置で起歪部23から最も離間するように屈曲形状に形成されているため、起歪体A(一対の連結部20,21)に荷重が作用した場合に、連結支持部24,25がクッション的な役割を果たし、起歪部23に必要最小限の力を効率的に作用させることができる。
【0055】
さらに、ゲージ取付部22a,22bと対向する連結支持部24,25に起歪部23と面交差する方向に貫通した開口26が形成されているため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0056】
尚、本発明の起歪体は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0057】
例えば、上記実施形態において、起歪体Aの使用態様として義肢に適用する場合を一例に挙げたが、これに限定されるものではなく、二つの部材を連結することを前提とするものであれば適宜採用することができる。
【0058】
上記実施形態において、第二受感部3を設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示す如く、歪みを測定する(荷重を算出するためのパラメータを得る)部位として第一受感部2のみ設けるようにしてよい。
【0059】
上記実施形態において、第一連結部20に第一固定部1を連設するとともに、第二連結部21に第二受感部3を介して第二固定部4を連設するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、第一連結部20を一方の部材と一体的に形成するとともに、第二連結部21を他方の部材と一体的に形成するようにしてもよい。また、第一連結部20に第一固定部1を連設する一方、第二連結部21と他方の部材とを一体的に形成するようにしてもよいし、第二連結部21に第二固定部4を連設する一方、第一連結部20と一方の部材とを一体的に形成するようにしてもよい。この場合において、第一連結部20又は第二連結部21に第二受感部3を連設し、この第二受感部3を介して第一固定部1又は第二固定部4を連設したり、第二受感部3を介して一方又は他方の部材を一体的に形成したりしてもよい。
【0060】
上記実施形態において、起歪部23の両面にゲージ取付部22a,22bを設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、一方の面のみにゲージ取付部22aを設けるようにしてもよい。また、起歪部23のみにゲージ取付部22a,22bを設けたものに限定されるものではなく、例えば、図6(a)に示す如く、起歪部23の両面に設定されたゲージ取付部22a,22bに歪みゲージR1,R2を設けるとともに、第一連結部20又は第二連結部21であって、起歪部23と直交する側面に中心線CLの延びる方向に間隔をあけて二つの歪みゲージR3,R4を取り付けるようにしてもよい。
【0061】
この場合のブリッジ回路は、図6(b)に示すようにすればよい。具体的には、四点を四つのブリッジで接続して四角形状に形成し、起歪部23のゲージ取付部22a,22bに取り付けられた二つの歪みゲージR1,R2が対向するブリッジのそれぞれに接続するとともに、第一連結部20又は第二連結部21に取り付けられた二つの歪みゲージR3,R4を残りの対向するブリッジのそれぞれに接続し、さらに、対角位置にある二点に電源を接続するとともに、残りの対角位置にある二点にブリッジ電圧を測定する電圧計を接続するようにすればよい。
【0062】
かかるブリッジ回路によれば、表2に示す如く、起歪体A(起歪部23)に圧縮荷重が作用したときに、起歪部23に取り付けた二つの歪みゲージR1,R2の抵抗が小さくなり、ブリッジ電圧eが小さくなる一方、起歪体Aに引張荷重が作用したときに、起歪部23に取り付けた二つの歪みゲージR1,R2の抵抗が大きくなり、ブリッジ電圧eが大きくなるので、そのブリッジ電圧eから荷重を算出することができる。そして、起歪体A(起歪部23)に曲げ作用が生じたいときには、起歪部23に取り付けた何れか一方の歪みゲージR1,R2の抵抗が大きくなる一方で、他方の歪みゲージR1,R2の抵抗が小さくなるため、これらの抵抗の相殺でブリッジ電圧eが略ゼロになり、曲げ作用の影響を受けることがない。
【0063】
【表2】

なお、図6(b)において、R1,R2,R3,R4は、歪みゲージを示し、上記表2において、R1,R2,R3,R4:図6(b)に示す歪みゲージ、V1,V2:図6(b)に示すV1,V2、e:図6(b)に示す電圧計の測定値(ブリッジ電圧)、r=一定(固定抵抗)、+:抵抗値増加、−:抵抗値減少を示す。また、上記表2のV1,V2の算出式は、V1=(R1・E)/(R1+R3)、V2=(R4・E)/(R2+R4)であり、これらの式において、R1,R2,R3,R4=歪みゲージの抵抗値であり、E=電源の電圧(入力電圧)である。
【0064】
上記実施形態において、一対の連結支持部24,25を屈曲形状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、一対の連結支持部24,25を湾曲形状に形成してもよい。このようにしても、各連結支持部24,25にクッション機能を持たせることができ、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。また、一対の連結支持部24,25を連結部20,21間で真っ直ぐに延びるように形成してもよい。但し、一対の連結支持部24,25を真っ直ぐに形成すると、クッション性を失うため、大きな荷重を吸収しにくくなるので、一対の連結支持部24,25を屈曲形状又は湾曲形状に形成することが好ましいことは言うまでもない。
【0065】
上記実施形態において、連結支持部24,25に歪みゲージR1,R2を着脱するための開口26を設けたが、これに限定されるものでなく、例えば、連結支持部24,25に開口26を形成することなく、連結支持部24,25と起歪部23との間に形成される孔から起歪部23に歪みゲージR1,R2を取り付けるようにしてもよい。
【参考例】
【0066】
ここで、本発明の参考例に係る起歪体について概略説明する。本参考例に係る起歪体は、図7に示す如く、上記実施形態のものと同様、第一固定部1’、第一受感部2’、第二受感部3’、及び第二固定部(図示しない)を備えており、第一固定部1’、第二受感部3’、第二固定部は、上記実施形態のものと同一形状に形成されている。従って、第一固定部、第二受感部3’、第二固定部は、上記実施形態の各構成と同様の機能を有するものである。
【0067】
これに対し、本参考例に係る第一受感部2’は、上記実施形態と同様、第一固定部1’と第二固定部との間で生じる圧縮荷重及び引張荷重を測定するためのパラメータを取得するための部位であるが、構成が上記実施形態と異なる。
【0068】
具体的には、本参考例の第一受感部2’は、第一固定部1’に連設された一方の連結部20’(第一連結部20’)と、第二受感部3’を介して第二固定部に連設された他方の連結部21’(第二連結部21’)と、一端が第一連結部20’に連結されるとともに他端が第二連結部21’に連結され、互いに間隔をあけて配置される一対の連結支持部24’,25’と、一端が一方の連結支持部24’に連結されるとともに他端が他方の連結支持部25’に連結され、厚み方向の少なくとも何れか一方の面に歪みゲージR1’,R2’が取り付けられるゲージ取付部22a’,22b’が設定されたプレート状の起歪部23’とを備えている。
【0069】
前記第一連結部20’及び第二連結部21’は、上記実施形態と同様に構成されており、第一連結部20’は第一固定部1に連設され、第二連結部21’は第二受感部3’に連結されている。そして、第一連結部20’及び第二連結部21’は、起歪体A’の中心線CL’と直交する方向の断面(横断面)が略四角形状をなし、中心線CL’が横断面の中央を通過するように形成されている。
【0070】
前記一対の連結支持部24’,25’は、当該起歪体A’の中心線CL’を基準にそれぞれ対称になるように形成されており、第一連結部20’と第二連結部21’との間の中間位置で中心線CL’から最も離間するように屈曲形状(くの字状)に形成されている。
【0071】
本参考例においては、上述の如く、各連結支持部24’,25’がくの字状に形成されることを前提に、一対の連結支持部24’,25’は、一端同士が互いに接近するように配置されるとともに他端同士が互いに接近するように配置されている。従って、本参考例においても、一対の連結支持部24’,25’は、第一連結部20’と第二連結部21’とを連結した状態でパンタグラフの如き態様をなしている。
【0072】
そして、本参考例に係る起歪部23’は、略四角形状をなす薄板の如く形成されており、四角形状を画定する四辺のうちの一辺(一端)が一方の連結支持部24’の屈曲部分に固定(固着)され、前記一辺と平行な他辺(他端)が他方の連結支持部25’の屈曲部分に固定(固着)されている。すなわち、本参考例の起歪部23’は、中心線CL’が面交差する(直交する)ように両端部が一対の連結支持部24’,25’の最も外側に位置する角部に連結されている。なお、本参考例においても、第一連結部20’、第二連結部21’、一対の連結支持部24’,25’、及び起歪部23’は略同幅に設定されている。
【0073】
そして、該起歪部23’は、両面に歪みゲージR1’,R2’を取り付けるゲージ取付部22a’,22b’が設けられており、各ゲージ取付部22a’,22b’は、起歪部23’の平面略中央部に設定されている。なお、本参考例においても、ゲージ取付部22a’,22b’は、歪みゲージR1’,R2’と取り付ける領域を意味するもので、本参考例においては、起歪部23’の平面の一部の領域を意味しているが、例えば、起歪体A’の平面上に歪みゲージR1’,R2’を配置するための目印を設けたり、歪みゲージR1’,R2’を配置する凹部を形成したりして構成してもよい。
【0074】
本参考例に係る起歪体A’は、以上の構成からなり、一対の連結部20’,21’に一対の連結支持部24’,25’の両端が連結されているため、二つの部材を第一固定部1’と第二固定部とに固定(二つの部材を各連結部20’,21’に直接的又は間接的に連結)することで、当該起歪体A’を介して二つの部材を互いに連結した状態にすることができる。また、起歪体A’(一対の連結部20’,21’)に圧縮荷重或いは引張荷重(荷重)が作用すると、一対の連結部20’,21’間において、その荷重の全てを一対の連結支持部24’,25’が受けることになる。
【0075】
そして、一対の連結支持部24’,25’が中心線CL’を基準に対称となるようにくの字状に形成されているため、該起歪体A’に中心線CL’方向の荷重が作用すると、各連結支持部24’,25’における屈曲部分に曲げ作用が生じることから、両連結支持部24’,25’の屈曲部分が互いに接離しようとする。すなわち、起歪体A’に圧縮荷重が作用すると、一対の連結支持部24’,25’のそれぞれは、両端が接近する方向に曲がろうとする結果、それぞれの屈曲部分が互いに離間しようとする一方、起歪体A’に引張荷重が作用すると、一対の連結支持部24’,25’のそれぞれは、両端が離間する方向に曲がろうとする結果、それぞれの屈曲部分が互いに接近しようとする。
【0076】
従って、一対の連結支持部24’,25’の屈曲部分に起歪部23’の両端が連結されることで、起歪体A’に圧縮荷重が作用したときに起歪部23’は中心線CL’と交差する方向に引っ張られる一方、起歪体A’に引張荷重が作用したときに起歪部23’は中心線CL’と交差する方向に圧縮される。これにより、該起歪部23’のゲージ取付部22a’,22b’に取り付けた歪みゲージR1’,R2’から起歪体A’に対する荷重を算出するためのパラメータ(抵抗値)を精度よく得ることができる。
【0077】
なお、本参考例に係る起歪体A’においても、歪みを測定する(荷重を算出するためのパラメータを得る)部位として第一受感部2’のみ設けるようにしてよい。また、第一固定部1’や第二固定部を設けることなく、第一受感部2’の一対に連結部20’、21’のそれぞれに対し、連結する部材を一体的に形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る起歪体の全体斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る起歪体の説明図であって、(a)は、側面図を示し、(b)は、正面図を示す。
【図3】同実施形態に係る起歪体の説明図であって、(a)は、歪みゲージの取り付け位置を説明するための説明図を示し、(b)は、ブリッジ回路を示す。
【図4】同実施形態に係る起歪体の使用態様を説明するための説明図を示す。
【図5】本発明の他実施形態に係る起歪体の説明図であって、(a)は、側面図を示し、(b)は、正面図を示す。
【図6】本発明の別の実施形態に係る起歪体の説明図であって、(a)は、歪みゲージの取り付け位置を説明するための説明図を示し、(b)は、ブリッジ回路を示す。
【図7】本発明の参考例に係る起歪体の説明図を示す。
【図8】従来のロードセルを説明するための説明図を示す。
【符号の説明】
【0079】
1…第一固定部、2…第一受感部、3…第二受感部、4…第二固定部、20…第一連結部(連結部)、21…第二連結部(連結部)、22a,22b…ゲージ取付部、23…起歪部、24,25…連結支持部、26…開口、30…孔、31,32…拡大孔部、33…連通孔部、34…対向部、35…突出部、A…起歪体、CL…中心線、P…義肢、P1,P2…部材、R…固定抵抗、R1,R2,R3,R4…歪みゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの部材のそれぞれに直接的又は間接的に連結される一対の連結部と、両端が一対の連結部に連結され、厚み方向の少なくとも何れか一方の面に歪みゲージが取り付けられるゲージ取付部が設定されたプレート状の起歪部と、一対の連結部間で起歪部の厚み方向の面に対して間隔をあけて配置されるとともに両端が一対の連結部に連結され、起歪部を基準にして対称的に形成された一対の連結支持部とを備えていることを特徴とする起歪体。
【請求項2】
前記一対の連結支持部は、一対の連結部間の中間位置で起歪部から最も離間するように湾曲形状又は屈曲形状に形成されている請求項1に記載の起歪体。
【請求項3】
ゲージ取付部と対向する連結支持部には、起歪部と面交差する方向に貫通した開口が形成されている請求項1又は2に記載の起歪体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−25574(P2010−25574A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183689(P2008−183689)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(591056547)ビー・エル・オートテック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】