説明

超伝導ワイヤおよびケーブルならびにその製造方法

超伝導体構造物は、基板の表面に沿って、基板内にチャネルを形成することと、基板のチャネル内に材料を堆積させることであって、材料は、超伝導体材料および超伝導体材料の前駆体のうちの1つを含む、ことと、単一の凝集構造物として形成される細長い超伝導体ワイヤを形成するように基板のチャネル内で物質を熱処理することとによって製造される。基板は、チャネル内に形成された超伝導体ワイヤを有する複数のチャネルをさらに含み得る。さらに、互いに対して異なる空間位置に配列された個別の超伝導体ワイヤの束を含むケーブルが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への参照)
本願は、「Method of Manufacturing Superconducting Wire and Cable」という名称で、2008年3月30日に出願された米国仮特許出願第61/040,675号からの優先権を主張し、上記仮特許出願の開示は、その全体が本明細書において参照により援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、超伝導ワイヤおよびケーブルを製造する方法に関し、同様に、このような方法に関連する製品に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
超伝導性は、わずかに電気抵抗を有するかまたは電気抵抗を有しない電気伝導性と、絶対零度に近い温度で反磁性とを有するようになる特定の金属、合金および他の材料の特性である。材料が、超伝導性を有するようになるために、材料は、その材料に対する超伝導転移または臨界温度未満に冷却されなければならず、この臨界温度は異なる材料に対して異なる。元素水銀は、約4度の絶対温度または4ケルビン(4K)の温度で超伝導性を提示することが発見された最初の材料のうちの1つであった。超伝導性は、(鉛、スズおよびアルミニウム、様々な金属合金およびいくつかの高濃度ドーピングされた半導体材料を含む)広範囲の他の材料において起こることもまた発見されている。高温超伝導性セラミック材料(例えば、ビスマスストロンチウムカルシウム銅酸化物(BSCCO)およびイットリウムバリウム銅酸化物(YBCO))と呼ばれる他のタイプの材料もまた、約30Kより上の温度で超伝導特性を有することが決定されてきた。
【0004】
近年、二ホウ化マグネシウム(MgB)は、約39Kの温度において超伝導特性を示すことが決定されてきた。二ホウ化マグネシウムは、約650度以上の温度において、ホウ素粉末とマグネシウム粉末との間の高温反応によって、合成することが、比較的安価で容易であるため、二ホウ化マグネシウムは、超伝導材料の使用に焦点を当てて注目されてきた。
【0005】
超伝導性二ホウ化マグネシウムワイヤは、パウダーインチューブプロセスを用いて製造され得、このパウダーインチューブプロセスにおいて、ホウ素粉末とマグネシウム粉末との混合物が金属製チューブ(または、部分的に形成され、開放しているチューブであって、粉末で充填された後、閉鎖される)に注入され、その後、チューブは、従来の線引き技術によって直径が低減される。チューブは、次いで、反応温度まで加熱され、チューブ内にMgBを形成する。あるいは、チューブはMgB粉末で充填され得、線引きプロセスによって直径が低減され、その後、上昇した温度で焼結され得る。MgBを有する線引きされたチューブは、選択された直径のワイヤを形成する。このような多くのMgBワイヤは、大きな直径のチューブ内に適合し得、同一の全体的に長手方向に延びるワイヤの束を含むケーブルを形成し、結果として、ケーブルを通って延びる超伝導性MgBの小さなフィラメントを提供する。超伝導性ファイバと、このような超伝導性ファイバを含むケーブルとを形成する例が、特許文献1に記載されている。
【0006】
超伝導性ワイヤの束を含むケーブルを形成するためのパウダーインチューブプロセスはわずらわしく、高価である。さらに、MgBは、かなり脆い材料であるので、このようなワイヤに対して所望される直径を達成するために十分に個別のワイヤを線引きすることは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,687,975号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、超伝導性ワイヤと、このような超伝導性ワイヤの束を含むケーブルとを形成するための改善されたプロセスを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明に従うと、超伝導体構造物を形成する方法は、基板の表面に沿って基板内にチャネルを形成することと、基板のチャネル内に材料を堆積させることであって、この材料は、超伝導体材料および超伝導体材料の前駆体のうちの1つを含む、ことと、単一の凝集構造物を含む細長い超伝導体ワイヤを形成するように、この基板のチャネル内で物質を熱処理することとを包含する。
【0010】
本発明の別の実施形態に従うと、超伝導体構造物は、基板であって、この基板内に、基板の表面に沿って形成されたチャネルを含む、基板と、この基板のチャネル内に配置された細長い超伝導体ワイヤであって、超伝導体ワイヤは、チャネル内に、単一の凝集構造物として形成された超伝導体材料を含む、細長い超伝導体ワイヤとを備えている。
【0011】
上記基板は、超伝導体材料から形成された超伝導体ワイヤをそれぞれが含む複数のチャネルを有してさらに形成され得る。一実施形態において、この超伝導体ワイヤは二ホウ化マグネシウムを含む。
【0012】
本発明に従って、ケーブルもまた形成され、このケーブルは、互いに対して異なる空間位置に配列された個別の超伝導体ワイヤの束を含む。一実施形態において、ケーブルは、基板のチャネル内に配置された個別の超伝導体ワイヤが互いから回転方向にかつ半径方向に分離され、細長いコアの長手方向軸に延びるように、複数のチャネルを含む基板を細長いコアの周りに巻き付けることによって形成される。別の実施形態において、超伝導体ケーブルは、コアの周りに巻き付けられる代わりに、基板を基板自身の上に巻いたり、または巻き付けたりすることによって形成され得る。さらに別の実施形態において、超伝導体ワイヤが配置されたチャネルを含む複数の基板が互いにスタックされる。
【0013】
本発明は、超伝導体ケーブルのための複数の超伝導体ワイヤと、ワイヤの束とを同時に形成するための容易で効率的な方法を提供する。
【0014】
本発明の上記の特徴およびさらなる特徴ならびに利点が、以下の定義、説明および本発明の特定の実施形態の説明的な図面の考慮の際に明らかとなり、この図面においては、さまざまな図面における同様の参照数字が、同様の構成要素を指定するために利用される。これらの説明は、本発明の特定の詳細を検討しているが、変化形が存在し得、実際に存在し、本明細書の説明に基づいて当業者に明らかになることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1〜図6は、基板の横方向の寸法に沿ってとられた断面図であり、本発明の一実施形態に従う一連の処理ステップを示し、ここで基板は、チャネルを含むように修正され、このチャネルは、チャネル内で超伝導体ワイヤを形成するように、チャネル内に提供または形成された超伝導性材料を有している。
【図2】図1〜図6は、基板の横方向の寸法に沿ってとられた断面図であり、本発明の一実施形態に従う一連の処理ステップを示し、ここで基板は、チャネルを含むように修正され、このチャネルは、チャネル内で超伝導体ワイヤを形成するように、チャネル内に提供または形成された超伝導性材料を有している。
【図3】図1〜図6は、基板の横方向の寸法に沿ってとられた断面図であり、本発明の一実施形態に従う一連の処理ステップを示し、ここで基板は、チャネルを含むように修正され、このチャネルは、チャネル内で超伝導体ワイヤを形成するように、チャネル内に提供または形成された超伝導性材料を有している。
【図4】図1〜図6は、基板の横方向の寸法に沿ってとられた断面図であり、本発明の一実施形態に従う一連の処理ステップを示し、ここで基板は、チャネルを含むように修正され、このチャネルは、チャネル内で超伝導体ワイヤを形成するように、チャネル内に提供または形成された超伝導性材料を有している。
【図5】図1〜図6は、基板の横方向の寸法に沿ってとられた断面図であり、本発明の一実施形態に従う一連の処理ステップを示し、ここで基板は、チャネルを含むように修正され、このチャネルは、チャネル内で超伝導体ワイヤを形成するように、チャネル内に提供または形成された超伝導性材料を有している。
【図6】図1〜図6は、基板の横方向の寸法に沿ってとられた断面図であり、本発明の一実施形態に従う一連の処理ステップを示し、ここで基板は、チャネルを含むように修正され、このチャネルは、チャネル内で超伝導体ワイヤを形成するように、チャネル内に提供または形成された超伝導性材料を有している。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に従って形成された超伝導性ケーブルの断面図である。
【図8】図8は、処理ステップを描き、この処理ステップにおいて、図7の超伝導性ケーブルが、超伝導性ケーブルの長手方向に沿って線引きされる。
【図9】図9は、二層の基板に沿った断面図であり、この二層の基板は、2つの層においてチャネルを含み、この2つの層は、互いに向かい合い、本発明の別の実施形態に従って、互いに組み合わされて、チャネル内に一連の超伝導性ワイヤを形成する。
【図10】図10は、図9の基板を利用する本発明に従って形成された超伝導性ケーブルの断面図である。
【図11】図11は、本発明のさらなる実施形態に従う、複数の基板のうちの1つを通って延びる複数のチャネル内で超伝導性ワイヤを形成するために使用されるスタックされた基板の横方向の寸法に沿った断面図である。
【図12】図12は、本発明に従って形成された基板の上部平面図であり、ここでは一連のチャネルが基板の長手方向の寸法に沿って延び、超伝導性材料で充填されている。
【図13】図13は、超伝導性材料を有する複数のチャネルを含む一連の基板の横方向の寸法に沿ってとられた断面図であり、基板はスタックされた配列である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に従って、細長いコアの周りにらせん状の態様で形成された複数の超伝導体ワイヤを含むケーブルの側面立面図である。
【図15】図15は、本発明に従って形成された基板の上部平面図であり、ここでは一連の異なる形状のチャネルが基板の長手方向の寸法に沿って延び、超伝導性材料で充填されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(好適な実施形態の説明)
本発明に従うと、超伝導性ワイヤ(超伝導体ワイヤともいう)と、超伝導性ワイヤの束を含むケーブルとが、このようなワイヤおよびケーブルを形成する従来の方法に対して、より効率的で、よりわずらわしくなく、時間のかからない態様で形成される。特に、従来のパウダーインチューブアプローチとは有意に異なる超伝導性ワイヤおよびケーブルを形成する固有のアプローチが本明細書に記載され、このパウダーインチューブアプローチにおいては、超伝導性粉末がチューブに挿入され、超伝導性ワイヤを形成するために処理される。一連の溝またはチャネルが、薄いシート、プレートまたはフォイルの形態で基板内に形成され、溝は、超伝導性材料(または超伝導性材料を形成するために溝内でその後処理され得る前駆体材料)で充填され、シートは、次いで、個別の超伝導性ワイヤを形成するように処理される。一実施形態において、以下でさらに詳細に記載されるように、チャネルは、シートの長手方向の(すなわち長さ方向の)寸法に沿って形成され、次いで、シートは、超伝導性ケーブルを形成するように、らせん状の態様で、横方向に(すなわち幅に沿って)、それ自身の上に、折り畳まれるか、または巻かれ、超伝導性ケーブルにおいて、複数の別個で個別の超伝導性ワイヤまたはフィラメントがケーブルを通って長手方向に延び、互いから半径方向および角度方向の両方において間隔を空けられている。
【0017】
任意の適切な超伝導性材料が、基部基板のチャネル内に提供され得る。あるいは、任意の1つ以上の前駆体材料が、基部基板のチャネル内に提供され得、ここで前駆体材料は、超伝導性材料を形成するためにチャネル内でさらに処理される。本明細書で使用される場合、用語「超伝導性材料」は、電気抵抗における低減を示し(例えば、ゼロ抵抗または非常にゼロに近い抵抗を示し)、そして/または絶対零度に近い温度(例えば、約150K未満の温度)で反磁性になる任意の材料をいう。任意の適切な超伝導性材料は、本発明のワイヤおよびケーブルを形成するために使用され得る。本発明に従って超伝導性ワイヤおよびケーブルを形成するために使用され得る低温超伝導体材料および高温超伝導体材料の両方の非限定的な例は、以下の化合物、イットリウムバリウム銅酸化物(例えば、YBaCu)、ビスマスストロンチウムカルシウム銅酸化物(例えば、BiSrCaCuまたはBiSrCaCu10)、水銀バリウムカルシウム銅酸化物(例えば、HgBaCaCu)、タリウムバリウムカルシウム銅酸化物(例えば、TlBaCaCuO)、モリブデン硫化物(例えば、Mo、LaMoS、LaMo、CuMo、Yb1.2Mo、Pb0.9Mo7.5、PbMo、HoMoおよびBrMo)、YPdC、ErRh、SrRuO、MoC、NbC、NbN、NbTi、NbSn、NbGe、ZrN、VSi、CaRh、CaIr、ZrV、HfVおよびMgBを含む。一例において、超伝導体材料は、特定の形態または粉末の形態で、基板のチャネルに適用され得、次いで、各チャネル内でフィラメントまたはワイヤの形態で、単一の凝集性の単一式超伝導材料を形成するように、粒子を接着または溶融するようにさらに処理(例えば、焼結あるいは任意の他の化学的および/または熱処理を介して)され得る。二ホウ化マグネシウム(MgB)は、MgB粉末として、または代替的にマグネシウム粉末およびホウ素粉末として(マグネシウム粉末およびホウ素粉末は約650℃以上に加熱されるとMgBの形成をもたらす)適用され得るこのような材料の1つである。しかしながら、超伝導体材料は、チャネル内に任意の適切な1つまたは複数の形態で(例えば、固体堆積、液体堆積および/または蒸着によって)堆積され得ることが留意される。例えば、特定の実施形態において、超伝導体材料は、基板のチャネル内にスラリーの形態で、またはペーストとして堆積され得る。
【0018】
ドーピング材料は、また、材料の物理特性および電気性能を向上させるために超伝導体材料に適切な量で組み合わされ得る。MgBに対する適切なドーピング材料の例は、シリコンカーバイド(SiC)である。
【0019】
チャネルを形成するための基板は、複数の適切な材料のうちの任意の1つまたは組み合わせを含み得る。例えば、基板材料は、銅、銀、金、白金、パラジウム、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、マグネシウム、チタン、モリブデン、タングステン、鉛、および、このような金属で形成され得る合金(例えば、ステンレス鋼などの鉄合金)を含むこれらの任意の組み合わせを限定することなしに含む金属から形成され得る。
【0020】
さらに、使用される金属基板のタイプに依存して、超伝導材料と基板との間の直接的な接触および潜在的に起こり得る化学反応を防ぐために、基板の少なくとも1つの表面またはチャネルを含む表面部分の少なくとも上にコーティングを提供することが望ましくあり得る。特に、望ましくない化学反応(例えば、酸化反応)が、基板チャネル内の材料の熱処理の間に、銅基板表面とMgBまたは他の超伝導性材料との間で起こり得る。このような反応を防ぐために、MgBおよび銅に対して比較的不活性かまたは反応しない別の材料のコーティングが、基板表面上に提供され得る。例えば、ホウ素のコーティングが、チャネル内に超伝導性材料を形成する粉末材料の堆積の前に、チャネルを含む基板上に(例えば、化学蒸着プロセスまたは物理蒸着プロセスを介して)蒸着され得る。あるいは、チャネルを含む銅基板の表面が、別の金属材料(例えば、ニッケル、鉄、ニッケル合金または鉄合金(例えば、ステンレス鋼))でコーティングされ得、これら別の金属材料は全てMgBと反応せず、そのため、銅表面がMgBと反応することを防ぐ。
【0021】
基板内で超伝導性フィラメントまたはワイヤを形成する例示的なプロセスが、図1〜図6に関して記載される。この例示的なプロセスにおいて、MgBは、基板のチャネル内に形成された超伝導性材料である。しかしながら、任意の他の超伝導性材料(または超伝導体材料を形成する前駆体材料)もまた、基板チャネル内でワイヤを形成するために使用され得ることが留意される。基板は、ステンレス鋼シートを含む。しかしながら、上述したように、基板は、また、上述した材料のうちの任意の材料などの任意の他の適切な材料で形成され得る。
【0022】
図1を参照すると、適切な厚さ(t)を有するステンレス鋼基部シート2が提供される。シート厚(t)は、シート内での適切な寸法の溝またはチャネルの形成を容易にし、以下に記載されるプロセスステップにおいて、シートを折り畳むかまたはシートを複数の区画に分離するなどのシートの操作をさらに容易にする任意の適切な寸法であり得る。シートは、約25マイクロメートル(ミクロン)〜約1,000マイクロメートル(ミクロン)の厚さを有する薄いプレートまたはフォイルであり得る。シートは、特定の長手方向の寸法を有し得るか、または代替的に、2つのリール間で起こる連続的なシートの処理によって、1つのリールから長手方向に巻き付けられ、別のリールに巻き付けるために運搬される連続的なシートであり得る。
【0023】
溝またはチャネル6は、図2に示されるようなシート2の表面内に形成され、ここでチャネル6の深さ(d)は、シート2の厚さ(t)よりも小さい。チャネル6は、シートの長手方向の寸法にほぼ平行または実質的に平行な方向に延びるほぼ直線または実質的に直線のチャネルとして形成され、チャネルは、シートの幅に沿って横断方向に互いから適切な距離の間隔を空けられる。しかしながら、非直線の構成(湾曲した構成、ジグザク構成、正弦波形の構成などを含むがこれらに限定されない)を有するチャネルが、また、形成され得る。代替的に、ほぼ直線または実質的に直線であり、シートの長手方向の寸法を横断する方向に延びるチャネル(例えば、対角線のパターンで整列されるかまたはシートの長手方向の寸法に対して垂直であるチャネル)が形成され得る。(化学エッチング、放電加工、レーザ加工またはエッチング、フライス削り、圧延およびステンシル加工(stenciling)を含むがこれらに限定されない)任意の適切な技術が、シートの表面内にチャネルを形成するために使用され得る。例えば、連続的なシートに対して、任意の従来のまたは他の巻き返し(reel−to−reel)エッチングプロセスが、シートの表面内に長手方向に整列したチャネルを提供するために使用され得る。
【0024】
各チャネル1つ以上の他の隣り合うチャネルから、1つ以上の適切な距離で間隔を明けられ得、ここでこのような距離は、形成されるワイヤの寸法およびこのようなワイヤを用いて形成されるケーブルの寸法に基づいて選択され得る。さらに、任意の適切な幅(d)および深さ(d)を有するチャネルが形成され得、ここで、チャネルの寸法はチャネル内に形成される超伝導体ワイヤの所望の寸法に基づいて選択される。例えば、各チャネルの幅(d)は、約20マイクロメートル〜約5,000マイクロメートルであり得、各チャネルの深さ(d)も、また、約20マイクロメートル〜約5,000マイクロメートルであり得る。シート2の表面内に形成されたチャネル6は、凹型でほぼ半円形の断面を有しているが、チャネルは、任意の他の断面幾何学的構成(V形状、マルチファセット(例えば、正方形、長方形または多角形状)構成を含むがこれらに限定されない)を有するように形成され得る。さらに、各チャネルは、変化した幅または可変の幅、変化した深さおよびチャネルに沿った変化した断面の寸法のうちの少なくとも1つを有するように形成され得る。
【0025】
マグネシウムおよびホウ素粉末が基板の形成されたチャネル内に、任意の適切な態様で提供される。例えば、図3および図4を参照すると、マグネシウムおよびホウ素(そしてオプションでSiCなどのドーピング材料)を含む粉末混合物12は、チューブまたは漏斗10を介して表面上に、そしてシート2のチャネル6内に堆積され、余分な粉末12は、次いで、粉末12がチャネル6内には残るが、シート2の他の表面部分からは実質的に除去されるようにワイピングブレード14を用いて表面から拭き取られる。代替的に、粉末は、シートの他の表面部分に沿った堆積を実質的に回避しながら、個別のチャネルに直接的に堆積され得る。この例は、上述されたように、マグネシウムおよびホウ素が、チャネル内に粉末または微粒子の形態で堆積することが描かれているが、超伝導性材料は、また、シートのチャネル内に任意の他の形態で(例えば、固体堆積、液体堆積および/または蒸着)堆積され得る。
【0026】
粉末12は、2つの圧縮ローラの間にシートを転がすことによって、そして/または任意の適切な圧密機器および圧縮/圧密技術を用いることによってチャネル6内に圧縮および圧密され得る。チャネル内の粉末の圧縮は、好適には真空で行われ、その結果、粉末内または粉末とチャネル内のシート表面区画との間の任意の空気および潜在的な間隙を除去する。圧縮後、チャネルから押し出された任意の余分の粉末が、(例えば、図4に示されるようなワイピングブレード14を用いて)基板表面から除去され得る。
【0027】
図5に示されているように、第二のシート20は、粉末12で充填されたチャネル6を含むシート2の表面上に配置され、その結果、2つのシートの隣接する表面間に充填されたチャネルを閉じ込める。第二のシートは、第一のシートに対して上記された材料のうちの任意の材料を含むがこれらに限定されない任意の適切な材料で形成され得る。図5に示されているように、第二のシート20は、その係合面上に任意の溝またはチャネルを含まないが、代わりに、溝を閉じ込めるために、シート2のチャネルのある表面を係合する実質的に平坦な表面を含む。2つのシートは、オプションで、任意の適切な接着剤または他の結合材料を含み得、2つのシートを一緒に結合することと、2つのシート間にチャネルを閉じ込めることとを改善する。シート2がリールから転がされていない連続的シートであるとき、シート20は、図6に示されるようなシート2に適用され得、ここではシート20がリール22から転がされ、2つの圧密ローラ24の間にシート2を係合する。
【0028】
図5の組み合わされた(シート間でチャネル内に密封されたマグネシウム/ホウ素粉末を有する)シート構造物は、化学反応と焼結とを促進するために、適切な温度(例えば、約650℃以上)において、適切な期間の間、(例えば、1つ以上のオーブンまたは炉内で)熱処理を受け、シート2の各チャネル6内に単一または単一式の凝集性フィラメントまたはワイヤを有するMgB超伝導性材料を形成する。加熱処理は、好適には、反応/加熱プロセスの間に形成される超伝導性材料内の間隙の形成を防ぎ、そして/または除外するために、適切な圧力下で実行される。代替的に、加熱処理は、2つのシート2と20との間の結合またはロウ付けを促進するために十分な温度および持続時間であり、その結果、2つの接合されたシートから一体化された構造物または融合された構造物を形成する。2つのシートは、また、任意の他の適切な方法を用いて一緒に接合され得る。
【0029】
マグネシウムおよびホウ素の粉末の混合を提供することに対する代替案として、MgB超伝導性材料は、第一のシートのチャネル内に直接的に堆積され得る。この実施形態において、加熱するステップは、シートの各チャネル内に単一式の凝集性フィラメントまたはワイヤを形成するためにMgB粉末を焼結するように提供される。
【0030】
超伝導性MgBワイヤを含む組み合わされたシートは、複数の超伝導性ワイヤまたは超伝導性ワイヤの束を含むケーブルを形成するようにさらに処理され得る。図7に示される一例において、ケーブル30は、シートの横断方向に(すなわちシートの幅に沿って)、そして細長いコアまたはロッド26の周りに、組み合わされたシート2および20を、自身の上に折り畳むか、または巻くことによって形成される。特に、シート2および20は、シートの長手方向の寸法がロッド26の長手方向軸と整列するように配向され、ここで、シート2の表面部分の長手方向エッジは、ロッド26上に配置されたチャネルのある表面と対向する。接合されたシート2および20は、次いで、ロッド26の周りに巻かれるか、または巻き付けられ、その結果、シートが中心に位置するロッド26から連続的な外向きのらせんを形成する。この巻くプロセスにおいて、シート2の表面部分は、外向きのらせんがシート2の第二の長手方向エッジで終了するまで、シートがらせん状に巻き付けられ、増加する半径方向に延びるときに、シート20の表面部分を係合し得る。シート2のチャネル内に形成されるMgBを含む超伝導体ワイヤは、ケーブル30の長手方向軸に実質的に平行に配向され、ケーブルの厚さ全体にわたり、半径方向および角度的に間隔の空いた位置(すなわち、互いから分離された個別の長手方向に延びたワイヤ)に配列される。超伝導性ワイヤ13は、ケーブルを通ってほぼ直線方向または実質的に直線方向に、ケーブルの長手方向とほぼ平行または実質的に平行な方向にさらに延びる。しかしながら、以下に示されるように、シート2および20のロッド26の周りの巻き付き、および/またはシート2内の超伝導性ワイヤ13の形成は、ワイヤ13が、ロッド26の対向する長手方向端部の間の種々の異なる非直線の経路内に延び得るように修正され得る。
【0031】
任意の適切な接着剤は、ロッド26の周りに形成された連続的ならせんの隣接する表面部分の間の接着を容易にするように、シート2とシート20のいずれかまたはその両方の露出された表面に塗布され得る。代替的に、形成されたケーブル30は、シート2の隣接する表面部分の間の接合を容易にするように、ステープリング、溶接および/またはさらなる熱処理に供され得、ケーブルが単一式の一体化された凝集性ユニットとして形成されることを確実にする。
【0032】
ロッド26は、任意の適切な材料(基板に対して上記された材料のうちの任意の材料を含むがこれに限定されない)であり得る。さらに、ロッド26は、(図7に示されるような)円形の断面形状を有し得るか、あるいは代替的に任意の他の適切な断面形状(例えば、三角形、楕円形、例えば、正方形形状または長方形形状のようなマルチファセットつき形状、不規則形状など)を有し得る。ロッドは、ケーブルの構造的支持のための硬いコアを提供し、その長手方向寸法に沿って任意の数の屈曲または湾曲を有して設計され得、ケーブルに対する所望の湾曲または屈曲した構造的構成を達成する。中央に位置するロッドは、(図7の実施形態に示されるような)ケーブルの一部を形成し得るか、または代替的にロッドは、結果的に生じるケーブルが、その中心において長手方向に延びる開放区画または中空区画を有するようにらせん状に巻き付けられたシート構造物および超伝導体ワイヤから除去され得ることがさらに留意される。
【0033】
ロッド26は、また、電気伝導性材料(例えば、銅)で形成され得、その結果、ケーブル30アセンブリは、ケーブルを通して延びる超伝導体ワイヤ13と、ロッド26の形態である別の電気伝導体との両方を含み、別の電気伝導体もまた、ケーブルを通して延び、超伝導体材料が電気伝導性の状態にないときに(超伝導体材料が非超伝導性になる期間に)、別の電気伝導性経路を提供する。この目的で、ロッド26は、固体の部材であり得るか、またはしっかりと編み組みされた銅または他の電気伝導性ワイヤのアセンブリであり得る。代替的に、上述されたように、シート2およびシート20の一方または両方が、また、電気伝導性材料で形成され得、ケーブルを通す超伝導体ワイヤ経路に加えて、ケーブル30に対する代替的な電気経路を提供する。
【0034】
ケーブル30は、任意の態様でさらに処理され得、所望の長さおよび/または所望の断面寸法のケーブルを達成する。例えば、ケーブル30は、銅などの金属で形成されたシース31内に配置され得、次いで、図8に示されるように線引きプロセスを受け、ここではケーブルが、ケーブルを伸張し、その断面寸法を低減するように、2つの圧延ローラ32の間で、その長手方向寸法に沿って線引きされる。ケーブル30は、また、シースの使用なしに、任意の他の態様で線引きされ得るか、または処理され得る。この線引きプロセスのために、基板チャネル6内の粉末材料12は、好適には、線引きプロセスの後まで超伝導体材料13を形成するように処理されないか、または熱処理されない。この態様でのケーブルの伸張は、ケーブル内で超伝導体ワイヤの寸法をさらに修正し得る(例えば、ワイヤの横断寸法を低減し、長手方向寸法を伸張すること)。
【0035】
上記され、図1〜図7に描かれた実施形態に対する修正において、第二のシートが特定の実施形態に対して除外され、ここで第一のシートのチャネルは、第二のシートによって閉じ込められないが、代わりに第一のシートは、細長いコアまたはロッドの周りに第一のシート自身の上で折り畳まれるかまたは巻かれる/包まれることにより、ケーブルを形成することが留意される。さらに、超伝導体材料(または超伝導体材料を形成する前駆体材料)を含むチャネルを有する第一のシートは、長手方向寸法に沿ってシートを線引きすることによって伸張させられ得ることにより、溝の厚さを低減し(このことが形成されるワイヤの厚さを低減する)、また、粉末内の任意の間隙をさらに除外する。
【0036】
図7に示されるケーブル30に類似するケーブル30は、また、細長いコアの仕様なしに形成され得ることがさらに留意される。このような実施形態において、材料で充填されたチャネルを含むシートが、シート自身の上に折り畳まれ得るか、または巻かれ得る(例えば、シートの1つの長手方向エッジで開始し、シートの反対側の長手方向エッジに向かって、このエッジからシート上にシートを巻いていく)。折り畳まれるか、または巻かれたシートは、超伝導体ワイヤを含む細長いケーブルを形成し、この超伝導体ワイヤは、ケーブルの長手方向端部の間に延び、ケーブルの中心軸に対して角度方向および半径方向の両方に互いから分離されている。これらの実施形態において、シートは、また、任意の適切な態様で折り畳まれ得、種々の異なる断面形状(円形、三角形または多角形を含むがこれらに限定されない)を有するケーブルを形成する。さらに、シートは、代替的なパターンで折り畳まれ得、折り畳まれたシートの断面に沿ってとられた波状のまたはアコーディオン形状のパターンを形成する。
【0037】
上述されたように、第一のシート内に規定されたチャネルは、任意の適切な断面形状で形成され得、相補的な断面形状を有する超伝導性ワイヤを形成することを容易にする。図7の実施形態において、超伝導性ワイヤ13は、チャネルの形状から生じるほぼ半円形の断面形状を有し、このチャネルの内でワイヤが形成される。
【0038】
別の実施形態において、ワイヤ13は、図9および図10に示されるようなほぼ円形の断面を有して形成され得る。このことは、図4に示される処理ステップの後に、横断寸法に沿って、シート2をそれ自身の上に折り畳むことによって達成され、その結果、チャネル6は、シート2の折り畳まれた表面部分の互いに押下する際に、互いに対して面しており、互いに整列している。他の半円形状のチャネル6と整列する半円形状のチャネル6は、円形の断面で、圧密された粉末を含む結果生じるチャネルを規定する。上に折り畳まれたシート2は、次いで、加熱され、各チャネルにおいて単一式の凝集性超伝導体ワイヤ構造13を形成し、各チャネルは、ほぼ円形の断面と円筒形形状とを有する。この実施形態において、第二シートは、必要とされない。なぜならば、第二のシートが第二のシート自身の上に折り畳まれることが、チャネルを閉じ込めることになるからである。図9に示される上に折り畳まれたシート2は、次いで、(上記されたような)ケーブル30が形成される態様と同一の態様でケーブル40を形成する。図9および図10に示される実施形態における、シート2自身にシート2を折り畳むことの代替案として、同様のチャネル寸法およびチャネル形状を有する第二のシートは、2つのシートが一緒に押下されるとき、両方のシートに対するチャネルが互いに面し、互いに整列するようにシート2に適用され得、このことは、第一のシートおよび第二のシートの組み合わされたチャネル形状に相補的な形状を有する超伝導体ワイヤの形成をもたらす。
【0039】
図11に示される別の実施形態において、シート102は、チャネル106を有して形成され得、このチャネル106は、チャネルのあるシートを完全に通って延びる。チャネルは、任意のエッチング、フライス削り、または他の適切な技術を用いて形成され得る。下部または基部シート114は、シート102の下部表面に接着され、そして/またはロウ付けされるか、もしくは結合され、チャネル内の粉末12の堆積を容易にするためにシート102の1つの表面に沿ってチャネル106を閉じ込める。シート102および114は、上記された基板材料などの任意の適切な基板材料で形成され得る。さらに、粉末は、超伝導性粉末または超伝導性材料を形成する1つ以上の前駆体材料を含む。超伝導体ワイヤおよびケーブルは、上記され、図1〜図6に描かれた態様と同様の態様で、図11に示されるシート配列を用いて形成され得、ここで、粉末12で充填し、図7に描かれるケーブルと同様のケーブルを形成するためにさらなる処理が実行された後に、チャネルを閉じ込めるためにさらなるシートがシート102に適用され得る。
【0040】
別の実施形態において、図4または図5において形成されるシートは、シートのチャネル内に規定および/またはカプセル化される個別の超伝導体ワイヤを形成するように、複数のチャネル間で分割、分離また切断され得る。図12に示されるように、シート2(このシート2は、また、チャネルを閉じ込めるために、シート2に接着、ロウ付けまたは結合されたシート20を含み得る)は、個別で別個の超伝導性ワイヤ構造物を形成するように、チャネルと同一の長手方向に延びるが、チャネルを横断しない切断線50に沿って分割され得る。シート2は、チャネル内に1つか2つ以上の超伝導体ワイヤを含む任意の数の区画に分割され得る。
【0041】
図13に示されるさらなる実施形態において、シートの表面に沿って長手方向に延びるチャネル内に配置された超伝導体材料13を含む一連のシート2は、超伝導体ワイヤの束を含むケーブル構造物を形成するように互いの上に垂直配列でスタックされ得、結合され得る。超伝導体材料13で充填されたチャネル6を含む任意の選択された数のシート2(例えば、2つのシート、3つのシートまたはそれ以上のシート)は、互いの上にスタックされ得る。上部シートは、オプションで、シート2で閉じ込められ得る。シートのチャネルは、整列された水平方向の行および整列された垂直方向の列の同一の断面形状または同様の断面形状を有する超伝導性ワイヤを含むグリッドを形成するように、互いの間に同一の間隔または同様の間隔で配列され得る。代替的に、シートのチャネルは、食い違いの構成または任意の他の選択された構成と、同一のシート内の超伝導性ワイヤ間および/または異なるスタックされたシート間の感覚とを提供するように、異なる間隔および/または異なる断面形状で配列され得る。
【0042】
上記されたように、基板内に形成され、本発明の超伝導性ワイヤを形成するために使用されるチャネルは、直線状チャネルであり得、または代替的に任意の非直線構成を有するチャネル(湾曲チャネル、正弦波形チャネル、ジグザグチャネル、任意の閉鎖または開放幾何学形状またはパターンを形成するチャネルなど)であり得る。非直線状チャネルおよび結果生じるチャネル内の非直線状超伝導体ワイヤを提供することは、多くの異なる固有のケーブル構成の形成をもたらし得、この構成において、基板は、細長いコアの周りにコイル状にされるか、または巻き付けられ(あるいは、基板は基板自身の上に折り畳まれるか、または巻かれ、この場合には、細長いコアはケーブル内に存在しない)、基板チャネル内に形成された超伝導性ワイヤは、コアの対向する長手方向端部の間で、細長いコアの長手方向と、種々の異なる空間方向との両方に延びる。例えば、基板は、基板内に1つ以上の湾曲した超伝導性ワイヤを形成する1つ以上の湾曲したチャネルを提供され得、その結果、ケーブルを形成するために、基板が細長いコアの周りに巻き付けられるか、コイル状にされるとき、1つ以上の湾曲したワイヤはコアの対向する長手方向端部の間で、細長いコアの周りにらせんパターンで延びる。ワイヤは、基板内に適切な湾曲を有して形成され、その結果、基板をコアの周りに巻き付ける際に、超伝導体ワイヤの2つのらせんまたは偶数の複数のらせんがコアの周りに形成される。
【0043】
細長いコアの周りに形成されたこのような非直線状(例えば、らせんまたはコイル状)のパターンの超伝導体ワイヤが、また、基板内に形成されたほぼ直線の形状の超伝導体ワイヤを含む基板を用いて達成され得ることが留意される。このような実施形態において、コイルの2つの長手方向端部間に非直線状の方向に延びる1つ以上の超伝導体ワイヤをもたらすように、基板の長手方向エッジ間で細長いコアの周りに巻き付けられるかまたはコイル状にされるとき、わずかなねじれが、基板に適用され得る。基板は、また、基板の長手方向端部に位置するエッジの間で細長いコアの周りに巻き付けられるか、またはコイル状にされ得、ここで、コアの表面に沿って長手方向に前進している間に、基板が基板自身の上を部分的にのみ覆うかまたは包むように、細長いコアの周りに巻き付けられるとき、基板はさらにわずかにねじられる。このことは、また、細長いコアの対向する長手方向端部間に非直線状の態様で延びる1つ以上の超伝導体ワイヤをもたらす。
【0044】
細長いコア26の周りに延びている超伝導体ワイヤ13のらせん構造を含むケーブルが図14に描かれている。上述したように、多くの異なる基板およびチャネル構成が、基板が細長いコアの周りを包むかまたは細長いコアの周りに巻き付けられる異なる方法と共に、提供され得、コアの周りの超伝導体ワイヤのらせん状の巻き線を達成する。例示を簡単にするために、基板は図14には示されていない。しかしながら、ワイヤ13は、図14のケーブルに対してコア26の周りに巻き付けられるか、コア26の周りを包む基板2内に形成されることが理解されるべきである。
【0045】
本発明は上記された実施形態に限定されないが、超伝導性ワイヤが基板のチャネル内の超伝導性材料の堆積によって形成される任意の実施形態において実装され得る。
【0046】
上記されたプロセス技術は、超伝導性ワイヤの形成をもたらし、超伝導性ワイヤは、広範囲の断面および長手方向寸法を有し、同様に広範囲の異なる断面形状を有し得る。なぜならば、このような寸法および形状は、超伝導性ワイヤが形成される基板またはシート内の適切なチャネル寸法および断面幾何学形状を選ぶことによって、比較的容易に達成され得るからである。特に、本発明にしたがって、約5マイクロメートル程度そしてそれよりもさらに小さい断面寸法を執する超伝導性ワイヤが、形成され得る。
【0047】
超伝導体ワイヤおよびこのようなワイヤで形成されるケーブルの長手方向の寸法は、実質的に任意の長さのチャネルを有する基板を提供することによって(例えば、連続的なシートロールと、連続的なエッチングまたはシートロール内にチャネルを形成する他のチャネル形成プロセスを用いて)、容易に設定され得る。したがって、超伝導体ワイヤが形成された後に超伝導体を圧密し、線引きすること(これはパウダーインチューブプロセスなどの他の超伝導体ワイヤ形成プロセスに対して典型的に必要とされる)は除外され得る。超伝導体ワイヤおよび超伝導体ワイヤの束を含むケーブルを形成するプロセスは、本発明を用いると非常に単純で費用対効果が良く、ここでは複数の別々で個別の超伝導体ワイヤが、単一の基板を用いてケーブルを形成するために同時に形成され、組み合わされ得る。これは、パウダーインチューブおよび超伝導体ワイヤおよびこのようなワイヤの束を形成する他の従来の方法に対する有意な改善である。
【0048】
さらに、チャネル幅、チャネルの深さおよびチャネルの幾何学形状を含むチャネル寸法は、チャネルが基板に渡って延びるとき1つ以上のチャネルに対して変化し得、その結果、ワイヤの長さに沿った異なる位置において、異なる幅、厚さおよび/または異なる断面を有する1つ以上の超伝導体ワイヤを形成する。2つ以上のチャネルの間の間隔は、また、基板に沿った異なる位置において修正され得、その結果、例えば、基板内に形成された2つ以上の超伝導体ワイヤが、1つの位置においては互いに接近し得、基板に沿った別の位置においては互いに離れ得る。チャネル寸法および/または間隔の変化は、したがって、細長いコアの周りに巻き付けられた基板(または基板自身の上に巻かれた基板)によって形成されたケーブルなどの実施形態をもたらし得、ここでは、2つ以上の超伝導体ワイヤが、1つの位置において(例えば、ケーブルに沿った中央の長手方向の位置またはその付近において)互いに接近した間隔であり、別の位置において(例えば、ケーブルの長手方向端部において)互いから離れて間隔を空けられる。上述したように、基板内に形成されるチャネルおよび結果生じる超伝導体ワイヤは直線状または非直線状であり得、種々の異なる構成を有する超伝導体ワイヤおよびケーブルの形成を容易にするように、基板に沿って任意の1つ以上の異なる方向に形成され得る。超伝導体材料13を含む基板2上の異なる形状のチャネルのいくつかの非限定的な例が図15に描かれている。これらの非限定的な例は、多くの異なる方法のうちのわずかな方法のみを示し、これらの方法において、異なる超伝導体ワイヤサイズ、間隔、ならびに基板内およびこのような基板内に形成されるケーブル内の互いに対する配向が、本発明の概念を用いて、そしてパウダーインチューブおよび超伝導体ワイヤ構造物を形成する他の従来の方法に比べて比較的容易な態様で修正され得る。
【0049】
上述したように、任意の適切な超伝導性材料または超伝導体材料を形成する前駆体材料は、基板チャネル内に提供され得る。一実施形態において、材料は、粉末形態で堆積され得、次いで、基板チャネル内で処理され得、超伝導体ワイヤを形成し、ここで、各ワイヤは単一の単一式の凝集性構造物を有する。上述されたように、超伝導性材料は、また、基板チャネル内に、任意の他の形態および態様で堆積され得る。基板は、また、任意の他の材料で形成され得、任意の他の材料は、所望の寸法を有するチャネルの形成を容易にし、超伝導体ワイヤを形成するために充填されたチャネルの処理をさらに容易にする。超伝導体ケーブルは、また、任意の選択された数の超伝導体ワイヤを含んで形成され得、ここで、超伝導体ケーブルは、前述の実施形態に記載された構成などの構成を有し得るか、2つ以上の超伝導体ワイヤがケーブル構造物を形成するように組み合わされ得る任意の他の適切な構成を有し得る。
【0050】
新規で改善された超伝導性ファイバおよびケーブルと、超伝導性ファイバおよびケーブルを形成する方法との好適な実施形態が記載されてきたが、他の修正、変形および変更が、本明細書に述べられた教示に関して当業者に示唆されることが考えられる。従って、このような変形、修正および変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内に含まれると考えられることが理解されるべきである。特定の用語が本明細書において用いられているが、これらは限定する目的ではなく、一般的で説明的な意味で使用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導体構造物を形成する方法であって、該方法は、
基板の表面に沿って該基板内にチャネルを形成することと、
該基板のチャネル内に材料を堆積させることであって、該材料は、超伝導体材料および超伝導体材料の前駆体のうちの1つを含む、ことと、
単一の凝集構造物を含む細長い超伝導体ワイヤを形成するように該基板のチャネル内で物質を熱処理することと
を包含する、方法。
【請求項2】
前記材料は、粉末として堆積する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超伝導体ワイヤは二ホウ化マグネシウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料は、ホウ素粉末と組み合わされたマグネシウム粉末を含み、前記物質は、二ホウ化マグネシウムを含む前記超伝導体ワイヤを形成するように前記チャネル内で熱処理される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
複数のチャネルが前記基板内で形成され、前記材料は、該複数のチャネル内に堆積し、複数の細長い超伝導体ワイヤを形成するように熱処理され、各超伝導体ワイヤは単一の凝集構造物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記チャネル含む前記基板の表面に第2の基板を固定することにより、該基板の間に該チャネルを閉じ込めることをさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の基板は該第2の基板内に、該第2の基板の表面に沿って形成された複数の第2のチャネルを含み、該複数の第2のチャネル内で前記材料は堆積され、超伝導体ワイヤを形成するように熱処理され、第2のチャネル内の各超伝導体ワイヤは単一の凝集構造物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の基板は、該第2の基板の該第2のチャネルを含む前記表面が、前記第1の基板の前記チャネルを含む前記表面を係合するように、該基板に固定され、該第2の基板の少なくとも1つの第2のチャネルは、該第1の基板のチャネルと組み合わされるように整列されることによって、該基板の該組み合わされたチャネル内に配置された材料から単一の凝集性の超伝導体ワイヤを形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基板の前記チャネル内に配置された個別の超伝導体ワイヤが、互いから回転方向にかつ半径方向に分離され、細長いコアの長手方向に延びるように、該基板を該細長いコアの周りに巻き付けることによって、ワイヤ束を形成することをさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記ワイヤ束を該ワイヤ束の長手方向軸に沿って伸張させるように該ワイヤ束を線引きすることをさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細長いコアは、電気伝導性材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記細長いコアは、銅を含み、前記基板は、ニッケル、鉄、ニッケル合金または鉄合金のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板を複数の区画に、線に沿って分離することをさらに包含し、該線は、少なくとも2つの超伝導体ワイヤを異なる区画に分離するように2つのチャネル間であるが該2つのチャネルを横断せずに延びる、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記基板は、銅、銀、金、白金、パラジウム、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、マグネシウム、チタン、モリブデン、タングステンおよび鉛のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記基板の前記チャネル内に前記材料を堆積させる前に、該チャネルの表面部分を、該材料に反応しない組成物でコーティングすることをさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記チャネルは非直線である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のチャネルおよび超伝導体ワイヤは、前記基板の長手方向の寸法に沿って実質的に平行な関係で延び、前記方法は、
該基板の該チャネル内に配置された個別の超伝導体ワイヤが互いから回転方向にかつ半径方向に分離され、細長いコアの長手方向に延びるように、該長手方向の寸法を横断する方向に、該基板を該細長いコアの周りに巻き付けることによって、ワイヤ束を形成することをさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の超伝導体ワイヤのうちの少なくとも1つは、前記細長いコアの対向する長手方向端部の間に直線方向に延びる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の超伝導体ワイヤのうちの少なくとも1つは、前記細長いコアの対向する長手方向端部の間に非直線方向に延びる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の超伝導体ワイヤのうちの少なくとも1つは、前記細長いコアの周りにらせん形状を形成する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記基板の前記チャネル内に配置された個別の超伝導体ワイヤが、互いから回転方向にかつ半径方向に分離され、細長いワイヤ束の長手方向に延びるように、該基板の第1のエッジから該基板の第2のエッジまで、該基板をそれ自身の上に巻くことによって細長いワイヤ束を形成することをさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項22】
基板であって、該基板内に、該基板の表面に沿って形成されたチャネルを含む、基板と、
該基板の該チャネル内に配置された細長い超伝導体ワイヤであって、該超伝導体ワイヤは、該チャネル内に、単一の凝集構造物として形成された超伝導体材料を含む、細長い超伝導体ワイヤと
を備えている、超伝導体構造物。
【請求項23】
前記基板は、銅、銀、金、白金、パラジウム、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、マグネシウム、チタン、モリブデン、タングステンおよび鉛のうちの少なくとも1つを含む、請求項22に記載の超伝導体構造物。
【請求項24】
前記チャネルは、前記超伝導体材料とは反応しない組成物でコーティングされる、請求項23に記載の超伝導体構造物。
【請求項25】
前記超伝導体材料は、二ホウ化マグネシウムを含む、請求項22に記載の超伝導体構造物。
【請求項26】
前記基板は、該基板内に、該基板の前記表面に沿って形成された複数のチャネルと、該基板の該チャネル内に配置された複数の細長い超伝導体ワイヤとを含み、各超伝導体ワイヤは、該チャネル内に単一の凝集構造物として形成された超伝導体材料を含む、請求項22に記載の超伝導体構造物。
【請求項27】
前記チャネルを含む前記基板の前記表面に固定された第2の基板をさらに備え、前記超伝導体ワイヤを該基板の間の該チャネル内に閉じ込める、請求項26に記載の超伝導体構造物。
【請求項28】
前記第2の基板は該第2の基板内に、該第2の基板の表面に沿って形成された複数の第2のチャネルと、該第2の基板の該第2のチャネル内に配置された複数の細長い超伝導体ワイヤとを含み、各超伝導体ワイヤは、該第2のチャネル内に単一の凝集構造物として形成された超伝導体材料を含む対応する第2のチャネル内に配置される、請求項27に記載の超伝導体構造物。
【請求項29】
前記チャネルが非直線である、請求項22に記載の超伝導体構造物。
【請求項30】
請求項26に記載の超伝導体構造物を備えている超伝導体ケーブルであって、
前記複数のチャネルを含む前記基板は、該基板の前記チャネル内に配置された個別の超伝導体ワイヤが、互いから回転方向にかつ半径方向に分離され、細長いワイヤ束の長手方向に延びる、該細長いワイヤ束を形成するように、該基板の第1のエッジから該基板の第2のエッジまで、該基板自身の上に巻かれる、超伝導体ケーブル。
【請求項31】
細長いコアをさらに備え、前記超伝導体構造物の前記基板は、前記細長いワイヤ束を形成するように該細長いコアの周りに巻き付けられる、請求項30に記載の超伝導体ケーブル。
【請求項32】
前記細長いコアは電気伝導性材料を含む、請求項31に記載の超伝導体ケーブル。
【請求項33】
前記細長いコアは、銅を含み、前記基板は、ニッケル、鉄、ニッケル合金または鉄合金のうちの少なくとも1つを含む、請求項31に記載の超伝導体ケーブル。
【請求項34】
前記複数の超伝導体ワイヤの少なくとも1つは、前記細長いワイヤ束の対向する長手方向端部の間に直線方向に延びる、請求項30に記載の超伝導体ケーブル。
【請求項35】
前記複数の超伝導体ワイヤの少なくとも1つは、前記細長いワイヤ束の対向する長手方向端部の間に非直線方向に延びる、請求項30に記載の超伝導体ケーブル。
【請求項36】
前記複数の超伝導体ワイヤの少なくとも1つは、前記細長いコアの周りにらせん形状を形成する、請求項31に記載の超伝導体ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−518409(P2011−518409A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502131(P2011−502131)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/038796
【国際公開番号】WO2009/134567
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(505428097)ヒルズ, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】