説明

超微粒層で金属表面を被覆する方法

【課題】 酸化物の超微粒保護膜で金属を被覆するための方法を提供する。
【解決手段】 酸化物のナノ粒子を含む溶液から特定の条件で析出された10〜100nmの厚さの超微粒膜であって、前記溶液中に「改質剤」と呼ばれる化学添加剤が混入されること、この改質剤が被覆の形成を制限する効果を持つことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化物ナノ粒子の超微粒層の析出反応に影響を及ぼす化学添加剤の使用による国際特許出願WO−A−03/048403に記載された方法の改善に関する。かかる化合物の添加は上述の特許出願におけるより一層小さな厚さ、すなわち典型的には100nm未満の層を得ることを可能とする。
【背景技術】
【0002】
出願WO−A−03/048403A1に記載された方法は予めペイントされた金属ストリップの製造コストを下げることを意図した世界的なプロジェクトの一部である。この関係において、金属学者は亜鉛めっきラインの終わりにラッカー吹付け工程を組み込むことを希望する。
【0003】
この結果を得るための主たる困難性は亜鉛めっきとペイント処理の間に置かれるのに十分な速さのストリップのための転換処理を見出すことであった。上述の方法はまた、クロム酸塩に基づく処理に対する代替策として考えられた。
【0004】
亜鉛めっき及びスピニング加工後のストリップの残留熱の使用に基づいているので、この方法は作業のために外部エネルギーの入力を全く必要としない。
【0005】
設備面では、それは亜鉛浴に続く下降部で実施されることが好ましい。実用的観点から、それは水蒸気のジェットにより冷却を完了する脱イオン水タンクの代わりに設置されることができる。ここで考えられる小型の析出システムは浴または噴霧システム(水の波、ジェットによる噴霧等)であることができる。従って、幾らかの修正の助けにより、新しい装置の投資は制限される。
【0006】
第一アプローチ:超微粒層
提案された方法により製造された、典型的には100nm未満の超微粒層は、低濃度の粒子を持つ溶液に対してのみ、低ストリップ温度に対してのみまたは更には両者に対してのみ考えられることができる。高濃度のナノ粒子を持つ溶液に対する及び/または高温度でのこの形式の析出を製造することができる可能性はこの方法の簡単なライン内適合のためには非常に有用であるであろう。
【0007】
更に、この目的は金属に完全に付着する析出物を得るためにかつ酸化物層の良好な内部結合のために重要である。勿論、低濃度を持つ溶液に対しては、懸濁液中のナノ粒子は互いに幾らかの距離があり、従って溶剤が蒸発するとき正しく凝集する傾向が殆どない。
【0008】
しかし、中及び高濃度を持つ溶液の使用に起因する一つの問題は図1に示すような酸化物析出物の表面上の非常にもろい“うね”の網目を形成する局部化された過度な厚さの形成である。これらは図2に概略的に記載されたように、浸漬時に発生する溶液と蒸気相の間の界面での優先的な沈殿からもたらされる。これは浴中で(図2a)または噴霧により(図2b)作られた試料の両者で見ることができ、それは続いてのペイントの付着に有害である。
【0009】
文献JP−A−63 072887は、亜鉛またはアルミニウムから作られた第一層の乾燥前に、溶解したシリカ及び/またはアルミニウム、ケイ酸リチウム等を含む水溶液がSiO,AlまたはLiSiOを別個にまたは混合物で含む酸化物層を形成するためにストリップの表面上に噴霧されるような、優れた耐食性と良好な機械的抵抗性を示す熱浸漬による鋼ストリップの製造方法を教示する。しかし、六価クロムを含まない先の出願WO−A−03/048403の方法とは対照的に、耐食性及び酸化物層の付着を増加するためにクロム酸塩の膜がまた、酸化物層の上に形成されている。
【0010】
文献JP−A−62 166667はストリップの濃灰色変色を防ぐ目的で熱浸漬によりZnまたはZn−Al合金の層で被覆された鋼ストリップの表面上に酸化物層を形成する方法を開示する。酸化物ZrO,Cr,Al,Y,CeO,ZrBiO及びSbの一つまたは複数を含む溶液が浸漬後のストリップ上に噴霧され、従ってその温度は1−100mg/mの範囲の濃度で≧100℃である。水は鋼ストリップの強い熱により蒸発され、酸化物膜が形成される。クロム酸塩の膜が次いで上述の酸化物層の上に形成される。析出物の良好な付着のためには重大であるけれども、層の厚さのチェックは考慮されていないばかりか記述もされていない。クロム酸塩の層はそこではこの省略に対する埋め合わせであると思われる。
【0011】
第二アプローチ:温度に依存する溶液の良好な安定性
ストリップが浴中に沈められると、その熱をコロイド溶液に伝達する。コロイド溶液を過熱し、従って浴に不利な影響を及ぼすことを避けるために、この発明は過剰エネルギーを外部循環及び熱交換器により除去することを明らかに意図する。事実、この装置の存在にもかかわらず、浴が不利な影響を受けることが示された。金属−溶液界面に保持された過剰な熱はこの原因であり、溶液の沈殿を起こすようである。
【0012】
浴の満足すべき使用寿命を保証することができるように、溶媒が沸騰するまで溶液を適切に使用させる方法を見出すことが絶対的に必要である。
【0013】
第三アプローチ:処置のための幅広い限界
経過時間を通じて一定の入口温度を保証することができるようにコロイド溶液を含むタンクに先行する冷却装置または噴霧の積み重ねを適合させることができる。このパラメーターを制御して基板上のナノ粒子の析出の一定の厚さを保証することが必要である。
【0014】
しかし、一般的である浴の制御は別として、同じ場所に置かれる冷間ストリップ処理に関して競合可能であるために、温度の精度に対する要求を取り除くことまたはそれを減らすことができることが好ましいであろう。従って、それが使用者に対してより少ない制約であるように、この方法は温度水準に関して比較的高水準の不確定性を持って機能することができるべきである。
【0015】
冷間法と比べてこのような“浸漬析出”処理の別の欠点は、それが基板の温度の変化により影響されるのに加えて、ストリップの厚さの変動に対して敏感であることである。事実、所定材料に対する所定温度での貯蔵される熱エネルギーの量は本体の容積、従って平坦製品の場合の厚さの関数である。事実、一つの亜鉛めっきラインで、異なる厚さの鋼ストリップが処理されることができる。
【発明の開示】
【0016】
本発明の目的
本発明は酸化物、好ましくはケイ素、チタン、ジルコニウム、セリウム、イットリウムまたはアンチモンの酸化物の超微粒保護膜で金属を被覆するための方法を提供することを目的とする。
【0017】
本発明の追加の目的は浴中へのストリップの入口温度に関してこの方法の融通性を最大にすることである。
【0018】
本発明の別の目的は層の重量の軽重による厚さに関しての析出の再現性を保証することである。
【0019】
本発明の別の目的は冶金学者の要求に合致する溶液の使用寿命を保証することである。
【0020】
本発明の主な特徴的要素
本発明の第一態様は鋼から作られた金属ストリップのような移動中の基板を連続的に被覆する方法に関し、形成された被覆が基板上に:
− 酸化物のナノ粒子を含む溶液から、
− 制御されたpHの条件で、
− 前記基板が120℃を越える温度で、
− 析出の合計時間が5秒未満、好ましくは1秒未満で、
析出された、10〜100nmの厚さの超微粒膜であるものにおいて、
少なくとも一つの化学添加剤(「改質剤」と称する)が前記溶液中に混入され、前記改質剤が必要な変更を加えて前記被覆の形成を制限する効果を持つことにより特徴付けられる。
【0021】
本発明において、被覆される基板は裸金属、好ましくは鋼、ステンレス鋼(または“inox”)、アルミニウム、亜鉛または銅であるか、または第二金属で被覆された第一金属、好ましくは亜鉛、アルミニウム、スズまたはこれらの金属の少なくとも二つの合金で被覆された鋼のストリップである。
【0022】
ナノ粒子は、酸化物、好ましくはSiO,TiO,ZrO,Al,CeO,Sb,Y,ZnO,SnOまたはこれらの酸化物の混合物を含み、親水性及び/または疎水性であり、1〜100nmの寸法を持ち、かつ溶液中に0.1〜10%、好ましくは0.1〜1%の含有量を持つ。
【0023】
改質剤の濃度は溶液のリットル当り1〜20g(g/L)、好ましくは5〜10g/Lである。
【0024】
特に、シリカのナノ粒子の析出のために使用される改質剤はカテキン及びその誘導体、フッ化水素酸及びホウ酸、ホウ酸塩、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム及び炭酸水素塩、水酸化アンモニウム及び水溶性アミンからなる化合物群から選ばれる。酸化第一スズまたは酸化第二スズのナノ粒子の析出のために使用される改質剤はホウ酸塩、炭酸カリウム及び炭酸水素塩、水酸化アンモニウム及び水溶性アミンからなる化合物群から選ばれる。酸化セリウム及び酸化ジルコニウムのナノ粒子の析出のために使用される改質剤はフッ化水素酸、ホウ酸及びカルボン酸、好ましくはギ酸、酢酸、アスコルビン酸及びクエン酸からなる化合物群から選ばれる。
【0025】
更に本発明によれば、溶液のpHは、金属基板が溶液と接触するとき金属基板から表面酸化物の酸洗いを可能とするように、溶液中の凝集を避けるために粒子に最大電荷を与えるように、かつ溶液を不安定化することなくできるだけ粒子を反応性とするように、調整される。
【0026】
特に、SiO,SnO,TiO,ZnOまたはSbのナノ粒子に基づく溶液のpHはアルカリ性でありかつ好ましくは9〜13である。ZrO,CeO,SiOまたはSbのナノ粒子に基づく溶液のpHは酸性でありかつ好ましくは1〜5である。
【0027】
ナノ粒子の混合物に基づく溶液のpHは溶液が時間を通して安定であるように調整される。好ましくは亜鉛、アルミニウム、鉄、スズ、クロム、ニッケルまたは銅の成分を含む基板の表面層の場合において、pHはアルカリ性または酸性のいずれかであるように選ばれる。
【0028】
本発明の第一好適実施態様によれば、析出は制御された時間の間、溶液を含む浸漬タンク内に基板を浸漬することにより達成される。
【0029】
本発明の第二好適実施態様によれば、析出は、ノズル、すなわち加圧下のガスにより補助されたまたは補助されていない溶液の液滴を噴霧する装置、による基板上への溶液の噴霧により達成される。
【0030】
本発明の第三好適実施態様によれば、析出はローラーによる基板上への溶液の付着により作られる。
【0031】
一つの利点として、ストリップと接触する溶液は100℃未満、好ましくは80℃未満の温度に保たれる。
【0032】
更なる利点として、析出開始時の基板の温度は125℃を越えかつ250℃未満である。
【0033】
もし基板が処理前に既に金属被覆を持つなら、析出開始時の基板の温度は有利には125℃を越えかつ被覆金属の融点より30〜100℃だけ低い。
【0034】
もし基板が浸漬による亜鉛めっきにおけるような浸漬により作られた金属被覆を持つなら、析出は基板が冷却する前の金属被覆の付着直後に好ましくは達成される。
【0035】
好ましくは、高過ぎる水準の酸化を受けやすい基板の場合において、析出時にこれを排除するために、基板は窒素(N)またはアルゴンのような中性ガスにより空気との過剰接触から保護される。
【0036】
また好ましくは、析出は、溶液中の析出の場合に浸漬の深さを、または溶液をノズルで噴霧する場合に噴霧される長さを変えることにより、時間を限定される。
【0037】
更に本発明によれば、溶液は水溶液であるかまたは前記ナノ粒子を効果的に分散することができるいずれかの他の溶剤を含む。
【0038】
一つの利点として、耐食性及び/または基板またはペイントへの付着の改善のため及び/または形成時のすべりを改善するための薬剤が溶液に添加される。
【0039】
本発明の方法において、被覆された基板に対し後処理後に水によりまたは有機物と強力な結合を形成する能力を持つカルボン酸または有機シランに基づく溶液によりすすぎ洗いされることが規定されることができる。
【0040】
好ましくは、本発明の方法は:
− pHを連続的に測定しかつ調節するための、
− 溶液の補充及び反応の余剰生成物の排除を確保するための、
− 表面上の乱流を避けるように浴の均質混合を確保するための、
手段を含む。
【0041】
有利な実施態様によれば、ストリップ及び浴の温度、ストリップが浴中に残る時間、浴中のナノ粒子の濃度及び浴のpHが制御される。もし必要なら、ストリップの温度、噴霧時間の長さ、噴霧される溶液中のナノ粒子の濃度、噴霧流及びpHが同様に制御される。
【0042】
本発明の第二態様は鋼ストリップの被覆のための設備に関し、それは熱浸漬によりまたはジェット噴霧により得られた第一被覆層上に上述の方法を実施することにより第二被覆層を得るための装置を含み、前記設備が第一被覆層のスピニング及び凝固操作を確保する要素の後に設けられ、前記第二被覆層がこの設備内で第一被覆層が凝固する温度より少なくとも100℃だけ低い温度で達成されることにより特徴付けられる。
【0043】
本発明の第三態様は上述の方法により超微粒保護層を被覆された、平坦または長い金属製品、好ましくはストリップ、ワイヤー、異形断面またはチューブに関し、前記保護層は酸化物、好ましくはAl,Y,SiO,SnO,TiO,ZnO,Sb,ZrOまたはCeOまたはこれらの酸化物の混合物のナノ粒子を含み、かつ100nm未満の厚さを持つことにより特徴付けられる。
【0044】
一つの利点として、本発明は述べられたようなストリップ被覆形式の金属製品において、その厚さ、おそらく異形断面またはチューブが製造される前の初期厚さが0.15〜5mmである製品に関する。
【0045】
図面の簡略説明
図1は、既述したように、本発明により処理された表面の走査電子顕微鏡画像を示し、SiOの層が2重量%の濃度で析出されている。
【0046】
図2.a及び2.bは既述したように、浴(a)においてまたは噴霧(b)でそれぞれ本発明の方法が実施されるときの可能な沈殿領域を概略的に示す。
【0047】
図3は本発明により実施された亜鉛めっき鋼上のシリカ被覆の厚さの、温度に依存する、XPSで測定した成長を概略的に示す。被覆は改質剤(この場合ホウ酸ナトリウム(5g/L))の影響の有無でのSiOの2%溶液中への浸漬により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明において導入された新規な事項は酸化物のナノ粒子の超微粒層を得る原理に基づいており、そこでは前記層の厚さは析出反応を制限する化学添加剤の浴中への混入により制限され、この理由のためこの化学添加剤は本出願人により“改質剤”と呼ばれる。
【0049】
析出時の沈殿現象及び浴の安定性は同じ化学原理に基づいている。事実、浸漬による沈殿は二つの対向するメカニズム間の競合である。一方では溶液の安定性を提供し、従ってナノ粒子間の結合を破壊させる力があり、他方では沈殿させる力がある。
【0050】
これらの現象をできるだけうまく制御するために、幾つかの高度に特定された化学元素を含む化合物が溶液中に導入される。
【0051】
これらの化合物の役目は超微粒層の溶解を触媒作用し、従って塊状の及び無秩序の沈殿と戦うこと、すなわち例えば酸化物の表面上のうねの網目を排除することである。これらの化合物は本出願人により“改質剤”と呼ばれる。なぜならそれらは析出層の重量を減量させるからである。化学的観点から、それらは析出反応に対してある程度“有毒”である。
【0052】
反応を制限するこれらの化合物の発見は通常の冷間処理により得られる品質に等しいかまたはそれより良い析出の品質を予想させる。
【0053】
それらはストリップの極めて幅広い温度範囲でナノ粒子の析出の均質な厚さを得ること、従って析出層の重量の効果的な制御を可能とすることができる。従って、これらの形式の化学薬品の添加がおそらく120℃程度の低い温度での析出を可能とすることを示すことは興味のあることである。
【0054】
それらの濃度に依存して、それらはまた、ナノ粒子のどのような濃度に対しても超微粒厚さの層を浴中で得させることを可能とする。
【0055】
この形式の化合物は予想されるコロイド溶液のpHの範囲内で溶媒中に可溶でなければならず、かつ懸濁液の不安定化を起こしてはならない。加えて、ナノ粒子間結合を破壊するそれらの能力のおかげで、それらは温度またはpHまたはそれらの両方のいずれかに関してコロイド溶液の安定領域を強化することができる。
【0056】
価値あるものとするために、これらの化合物の有効性は温度と共に増大されなければならない。
【0057】
本発明によれば、無機または有機薬品の形式はナノ粒子の一つまたは幾つかの形式と関連付けられる。従って、シリカに対する改質剤は酸化ジルコニウムに対して必ずしも適していない。
【0058】
シリカナノ粒子の析出のために、最も効果的な形式は主としてカテキン、フッ化水素酸及びホウ酸またはホウ酸塩、炭酸ナトリウム及びカリウム及び炭酸水素塩、水酸化アンモニウム及び水溶性アミンである。
【0059】
酸化第一スズ及び酸化第二スズに対しては、ホウ酸塩、炭酸カリウム及び炭酸水素塩、水酸化アンモニウム及び水溶性アミンが有利に使用されるであろう。
【0060】
最後に、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムに対しては、フッ化水素酸、ホウ酸またはカルボン酸またはギ酸、酢酸、アスコルビン酸及びクエン酸が有利に使用されるであろう。
【0061】
一旦析出物が形成されたら、改質剤の影響下に凝集されなかったナノ粒子の余剰物及び残留改質剤自身はすすぎ洗いにより迅速に排除されることができる。
【0062】
環境を重視する論理に順応するためにこれらの使用される化合物が発癌性でないことを強調することも重要である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明により処理された表面の走査電子顕微鏡像を示す。
【図2】図2.a及び2.bは浴(a)においてまたは噴霧(b)でそれぞれ本発明の方法が実施されるときの可能な沈殿領域を概略的に示す。
【図3】本発明により実施された亜鉛めっき鋼上のシリカ被覆の厚さの、温度に依存する、XPSで測定した成長を概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼から作られた金属ストリップのような移動中の基板を連続的に被覆する方法であって、形成された被覆が基板上に:
− 酸化物のナノ粒子を含む溶液から、
− 制御されたpHの条件で、
− 前記基板が120℃を越える温度で、
− 析出の合計時間が5秒未満、好ましくは1秒未満で、
析出された、10〜100nmの厚さの超微粒膜であるものにおいて、
少なくとも一つの化学添加剤(「改質剤」と称する)が前記溶液中に混入され、前記改質剤が必要な変更を加えて前記被覆の形成を制限する効果を持つことを特徴とする方法。
【請求項2】
被覆される基板が裸金属、好ましくは鋼、ステンレス鋼(または“inox”)、アルミニウム、亜鉛または銅であるか、または第二金属で被覆された第一金属、好ましくは亜鉛、アルミニウム、スズまたはこれらの金属の少なくとも二つの合金で被覆された鋼のストリップであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナノ粒子が、酸化物、好ましくはSiO,TiO,ZrO,Al,CeO,Sb,Y,ZnO,SnOまたはこれらの酸化物の混合物を含み、親水性及び/または疎水性であり、1〜100nmの寸法を持ち、かつ溶液中に0.1〜10%、好ましくは0.1〜1%の含有量を持つことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
改質剤の濃度が溶液のリットル当り1〜20g(g/L)、好ましくは5〜10g/Lであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
シリカのナノ粒子の析出のために使用される改質剤がカテキン及びその誘導体、フッ化水素酸及びホウ酸、ホウ酸塩、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム及び炭酸水素塩、水酸化アンモニウム及び水溶性アミンからなる化合物群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
酸化第一スズまたは酸化第二スズのナノ粒子の析出のために使用される改質剤がホウ酸塩、炭酸カリウム及び炭酸水素塩、水酸化アンモニウム及び水溶性アミンからなる化合物群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
酸化セリウム及び酸化ジルコニウムのナノ粒子の析出のために使用される改質剤がフッ化水素酸、ホウ酸及びカルボン酸からなる群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
酸化セリウム及び酸化ジルコニウムのナノ粒子の析出のために使用される改質剤がギ酸、酢酸、アスコルビン酸及びクエン酸からなる化合物群から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
溶液のpHが、金属基板が溶液と接触するとき金属基板から表面酸化物の酸洗いを可能とするように、溶液中の凝集を避けるために粒子に最大電荷を与えるように、かつ溶液を不安定化することなくできるだけ粒子を反応性とするように、調整されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
SiO,SnO,TiO,ZnOまたはSbのナノ粒子に基づく溶液のpHがアルカリ性でありかつ好ましくは9〜13であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ZrO,CeO,SiOまたはSbのナノ粒子に基づく溶液のpHが酸性でありかつ好ましくは1〜5であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ナノ粒子の混合物に基づく溶液のpHが、溶液が時間を通して安定であるように調整されることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
亜鉛、アルミニウム、鉄、スズ、クロム、ニッケルまたは銅の成分を含む基板の表面層の場合において、pHがアルカリ性であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
亜鉛、アルミニウム、鉄、スズ、クロム、ニッケルまたは銅の成分を含む基板の表面層の場合において、溶液のpHが酸性であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
析出が制御された時間の間の溶液を含む浸漬タンク内の基板の浸漬により形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
析出が、ノズル、すなわち加圧下のガスにより補助されたまたは補助されていない溶液の液滴を噴霧する装置、による基板上への溶液の噴霧により形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
析出がローラーによる基板上への溶液の付着により形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ストリップと接触する溶液が100℃未満、好ましくは80℃未満の温度に保たれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
析出開始時の基板の温度が125℃を越えかつ250℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
もし基板が処理前に既に金属被覆を持つなら、析出開始時の基板の温度が125℃を越えかつ被覆金属の融点より30〜100℃だけ低いことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
もし基板が浸漬により、例えば浸漬による亜鉛めっきで作られた金属被覆を持つなら、析出が基板が冷却する前の金属被覆の付着直後に形成されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
高過ぎる水準の酸化を受けやすい基板の場合において、析出時にこれを排除するために、基板が窒素またはアルゴンのような中性ガスにより空気との過剰接触から保護されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
析出が、溶液中の析出の場合に浸漬の深さを、または溶液をノズルで噴霧する場合に噴霧される長さを変えることにより、時間を限定されることを特徴とする請求項20または21に記載の方法。
【請求項24】
溶液が水溶液であるかまたは前記ナノ粒子を効果的に分散することができるいずれかの他の溶剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
耐食性及び/または基板またはペイントへの付着の改善のため及び/または形成時のすべりを改善するための薬剤が溶液に添加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
被覆された基板が後処理後に水によりまたは有機物と強力な結合を形成する能力を持つカルボン酸または有機シランに基づく溶液によりすすぎ洗いされることができることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
− pHを連続的に測定しかつ調節するための、
− 溶液の補充及び反応の余剰生成物の排除を確保するための、
− 表面上の乱流を避けるように浴の均質混合を確保するための、
手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ストリップ及び浴の温度、ストリップが浴中に残る時間、浴中のナノ粒子の濃度及び浴のpHが制御されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項29】
ストリップの温度、噴霧時間の長さ、噴霧される溶液中のナノ粒子の濃度、噴霧流及びpHが制御されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項30】
鋼ストリップの被覆のための設備であって、熱浸漬によりまたはジェットによる噴霧により形成された第一被覆層上に請求項1から29のいずれかに記載の方法の実施により第二被覆層を得るための装置を含むものにおいて、前記設備が第一被覆層のスピニング及び凝固操作を確保する要素の後に設けられ、前記第二被覆層がこの設備内で第一被覆層が凝固する温度より少なくとも100℃だけ低い温度で形成されることを特徴とする設備。
【請求項31】
請求項1から29のいずれか一つに記載の方法により超微粒保護層を被覆された、平坦または長い金属製品、好ましくはストリップ、ワイヤー、異形断面またはチューブにおいて、前記保護層が酸化物、好ましくはAl,Y,SiO,SnO,TiO,ZnO,Sb,ZrOまたはCeOまたはこれらの酸化物の混合物のナノ粒子を含み、かつ100nm未満の厚さを持つことを特徴とする金属製品。
【請求項32】
金属製品の厚さ、おそらく異形断面またはチューブが製造される前の初期厚さが0.15〜5mmであることを特徴とする請求項31に記載の被覆されたストリップ形式の金属製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−514865(P2007−514865A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544179(P2006−544179)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【国際出願番号】PCT/BE2004/000157
【国際公開番号】WO2005/059196
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(504198991)
【Fターム(参考)】