説明

超純水の純度を測定する方法および装置

これは、精製装置からの排出口における水の純度を分析する方法である。この方法は、a)その抵抗率値ρUPWを決定するために、フィルタ手段(1)からの排出口にある液体を抵抗率測定セル(4)に送るステップと、b)与えられた数の著しく異なる時間の間、液体の一部を前記酸化手段に曝露することによって、参照モードを確立するステップと、c)この参照モードにおいて、前記液体の無限大における抵抗率ρ∞REFを、回帰によって決定するステップと、d)分析されるべき前記液体を抵抗率測定セル(4)に通過させることによって、分析モードを確立するステップと、e)逐次代入法によって、この分析モードで前記液体の無限大における抵抗率ρを決定するステップと、f)無限大における抵抗率ρおよび少なくともρUPWおよびρ∞REFの値から、前記精製済み液体に含まれる有機化合物の量を計算するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製処理後に得られた液体の純度を分析する方法、具体的にはいわゆる超純水(十億分の10(ppb)未満)の純度分析方法に関する。本発明は、この方法を実行することが可能な装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
水、またはその他の液体を精製するために一般的に採用される方法は、活性炭濾過、イオン交換樹脂濾過、または逆浸透濾過タイプの濾過および精製手段を含む第一装置の通過から始まる。第一処理手段の排出口において、超純水は非常にわずかなイオンを含有し、18.2MΩ・cmに近いかまたは等しい抵抗率を特徴とするが、それでもまだ有機化合物を含有している。これはその後、これらの有機化合物がイオン化のために酸化される第二装置を通過させられる。この酸化の間、有機化合物は分解され、炭素原子はその後二酸化炭素ガスの形で存在するが、これは水に溶解して重炭酸イオンHCO3を形成する。この酸化は、紫外線ランプの前を通過すること、または過酸化水素を添加することによって実現される。
【0003】
第三精製ステップは、水を磨く(polishing)こと、すなわち、先のステップの間に発生したイオンを遮断するイオン交換樹脂にこれを通過させることを含み、こうして水の精製を完了する。このステップの間、酸化段階で分解されなかった有機化合物は、影響を受けない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0581157号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】EPA/600/3−91/021、米国環境保護庁、1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この処理の最後に得られた水の純度は、判定されないままである。一般的に採用される一方法は、溶解二酸化炭素ガス含有量、すなわち重炭酸イオンの数と直接関連づけられた、酸化手段からの排出口における抵抗率を測定し、その後、酸化処理が最後まで継続していれば、すなわちその有機化合物の全てが分解されていれば、有したであろう抵抗率を決定する。この処理は、無限大の時間を必要とするので、明らかに使用不可能であり、したがって、この限界抵抗率を推測する方法を採用する必要がある。
【0007】
特にMillipore Corporationの特許である欧州特許第0581157号明細書より、無限大におけるこの抵抗率を推測するために、酸化手段の上流側と下流側との間の水の抵抗率の差を利用する、水の純度を分析する装置および方法が、既に知られている。この方法は、様々な時間にわたって酸化手段に曝露された水標本において、酸化手段の上流側と下流側との間の抵抗率差を測定するために、第一または参照モードで装置を使用する。曝露時間は、通常およそ10、20、30、40、50、および60秒である。得られた曲線からの推定により、無限大曝露時間の後にどの程度の水の抵抗率が得られるか、すなわち全ての炭素原子が分解されるかどうかを判断することができる。米国環境保護庁の刊行物EPA/600/3−91/021(1991)に記載されているMINTEQA2プログラムのような、適切なモデリングプログラムを使用することで、無限大における抵抗率から、参照水の全有機炭素(TOC)含有量を判定することができる。
【0008】
有機化合不純物の含有量を判定するため、およびそれゆえにその純度が公称値のままであることを検証するために、超純水が与えられた流量で酸化手段を通過させられる、第二または精製または分析モードがその後使用される。酸化手段の上流側と下流側との間の抵抗率差は継続的に測定され、有機化合物の総量は、精製モードで測定された抵抗率差と参照モードで推測された無限大における抵抗率差との間の予想線形関係によって、そこから推定される。
【0009】
本発明は、先行技術において使用される水の純度を測定する方法を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、フィルタ手段、酸化手段、および磨き手段を直列に含み、前記フィルタ手段の排出口および前記酸化手段の排出口で水の抵抗率を測定する手段をさらに含む精製装置からの排出口において、超純水などの液体の中に存在する有機化合物の量を分析する本発明の方法は:
a)フィルタ手段の排出口における液体の抵抗率ρUPWを測定するステップと、
b)所定の数の著しく異なる時間の間、前記酸化手段に液体の一部を曝露し、前記酸化手段へのその曝露の後に液体の対応する抵抗率値を測定することによって、参照モードを確立するステップと、
c)時間tの関数としてその抵抗率ρを表す式を回帰によって確立することによって、前記液体の無限大における抵抗率ρ∞REFを、この参照モードにおいて決定し、前記式はρ=ρ∞REF+(ρUPW−ρ∞REF)e−t/Tのタイプの少なくとも1つの指数関数を含むステップと、
d)酸化手段からの排出口におけるその抵抗率ρを決定するために、分析されるべき前記液体を前記抵抗率測定手段の1つに通過させることによって、分析モードを確立するステップと、
e)測定された抵抗率ρ、フィルタ手段からの排出口における水の抵抗率ρUPW、および参照モードで推測された無限大における抵抗率ρ∞REFから、水の純度を判定するステップとを含み、
純度を決定する前記ステップe)が:
ステップc)において確立された指数関数の時定数Tを決定するサブステップと、
このパラメータが収束するまで逐次代入法(successive iteration)によってこの分析モードでの前記液体の無限大における抵抗率ρを決定し、tを反復変数とする、ρ=ρ+(ρUPW−ρ)e−t/Tのタイプの少なくとも1つの指数関数を含む式によって、および無限大に向かって反復変数tを変化させることによって、無限大におけるこの抵抗率ρの関数として測定抵抗率ρを表すサブステップと、
無限大におけるこの抵抗率ρから、前記精製済み液体に含まれる有機化合物の量を判定するサブステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
この方法は、従来技術によって与えられるよりもはるかに良好な精製水の無限大における抵抗率の近似値を提供するという具体的な利点を有し、したがって水の瞬間的な純度のより良い指示を提供する。無限大における抵抗率値のこのより良い近似値は、測定抵抗率と無限大におけるそれとの間の理論的指数関係に基づく方程式を解くことによって計算することで得られ、これまで使用された線形近似値は、参照モードで使用された水のそれと検査されている水のそれとの間の限られた純度差においてのみ有効であった。たとえば、3ppbの純度を有する水が参照モードで使用される場合、方法は20ppb未満の純度を有する水にのみ適用可能である。
【0012】
無限大における抵抗率のさらに良い近似値または計算の簡素化の理由のために好ましい特徴によれば、ステップc)で使用される前記式は、tの指数関数とtの線形関数との和である。
【0013】
この特徴は、方法を、プラスチック材料部品を含む低コストの反応装置とともに使用できるようにする。先行技術による参照モードは、酸化手段において費やした時間の関数としての抵抗率の変化が純粋な指数関数であると仮定している。この簡素化は、酸化手段の紫外線反応装置を構成するプラスチックによる水の汚染を考慮に入れておらず、これらのプラスチックは、自らが受ける光イオン化の結果として有機化合物を放出し、これらの化合物は既に水の中に存在する化合物に加えられる。提案される方法は、この特徴を考慮しており、ステンレス鋼の中で生成された範囲反応装置の上部に制限がなく、これらが望ましくない種類の劣化を受けないことを意味する。
【0014】
無限大における抵抗率のさらに良い近似値または計算の簡素化の理由のために好ましいその他の特徴によれば:
ステップb)で使用される異なる時間の数は6以上であって、
分析モードにおける無限大での抵抗率を表すためにステップe)で使用される前記式は指数形式のtの単一関数を含む式であって、
分析モードにおける無限大での抵抗率を表すためにステップe)で使用される式はtの指数関数とtの線形関数の和であって、
全ての抵抗率測定値は同じ抵抗率測定手段において行われる。
【0015】
方法は、たった1つの抵抗率測定セルを使用し、計算がセル数の差の値を使用する場合に直面する不確かさの問題を回避すること、および、その複雑さのため、これらのセルは装置の全体的なコストの大部分を占めるので、何よりもコストを削減することを目的とする。
【0016】
本発明はまた、超純水などの液体の中に存在する有機化合物の量を分析する装置にも関連し、これは、フィルタ手段、酸化手段、および磨き手段を直列に含み、前記フィルタ手段からの排出口および前記酸化手段からの排出口で水の抵抗率を測定する手段を含み、さらに:
所定の数の著しく異なる時間の間、前記酸化手段に液体の一部を曝露する制御手段と、
前記曝露時間の後に酸化手段からの排出口において測定された抵抗率から、前記液体の無限大における抵抗率ρ∞REFを、回帰によって決定する手段とをさらに含み、
前記曝露時間の後に酸化手段からの排出口において測定された抵抗率から、酸化手段からの排出口における抵抗率ρの時間関数として、変化の曲線の時定数Tを決定し、ρUPWをフィルタ手段からの排出口において測定された液体の抵抗率として、ρ=ρ∞REF+(ρUPW−ρ∞REF)e−t/Tのタイプの少なくとも1つの指数関数を含む式によって表される手段と、
このパラメータが収束するまで、酸化手段からの排出口での液体の無限大における抵抗率ρを逐次代入法によって決定し、tを反復変数とする、ρ=ρ+(ρUPW−ρ)e−t/Tのタイプの少なくとも1つの指数関数を含む式によって、および無限大に向かって反復変数tを変化させることによって、無限大におけるこの抵抗率ρの関数として測定抵抗率ρを表す手段と、
無限大におけるこの抵抗率ρから前記精製済み液体に含まれる有機化合物の量を判定する手段と、
得られた結果を表示する手段とをさらに含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の開示は、非限定的な説明によって、および添付図面を参照して、以下に与えられる好適な実施形態の説明とともに続けられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】先行技術による水精製装置の図である。
【図2】本発明の一実施形態の水精製装置の図である。
【図3】先行技術による近似法を使用して、反応装置において費やされた時間の関数として、参照モードで、いずれかの値からの水の抵抗率の減少を表す曲線である。
【図4】本発明の近似法を使用して、反応装置において費やされた時間の関数として、参照モードで、いずれかの値からの水の抵抗率の減少を表す曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、フィルタ手段1、酸化手段2、および水磨き手段3を直列に含む、先行技術による水精製装置を示す。水の抵抗率を測定するための2つのセル4が、それぞれフィルタ手段1の排出口および酸化手段2の排出口の回路に挿入されている。
【0020】
フィルタ手段1は通常、Q−GARD(R)の商標の下でMillipore Corporation社より市販されているものなど、活性炭に基づくフィルタからなる。これらのフィルタ手段の排出口において、水はおよそ10ppbの純度、および18.2MΩ・cmに近いかまたは等しい抵抗率を有する。
【0021】
ここで酸化手段2は、185から254ナノメートルの範囲で放射する水銀蒸気紫外線ランプからなる。精製装置を流れる水は、2から120秒の間、この放射に曝露される。
【0022】
磨き手段3は通常、イオン交換樹脂からなり、およそ1から5ppbの最終純度を有する水を生成する。
【0023】
水は、フィルタ手段の注入点11から装置に進入する。フィルタ手段の排出点12は、パイプによって第一抵抗率セル4の注入点41に接続され、その排出口は三方弁16に接続されている。この三方弁16は、一方では酸化手段の注入点21に接続され、他方では排出回路(図示せず)に接続されている。これは、フィルタ手段を離れる水を酸化手段2に進入させるか、または回路から水を排出させる。
【0024】
酸化手段の排出口22は、パイプによって、第二抵抗率セル4の注入点41に接続され、その排出点42自体は、磨き手段の注入点31に接続されている。得られた超純水はその後、磨き手段の排出点32において入手可能である。
【0025】
図2は、上記のようにフィルタ手段1、酸化手段2、および水磨き手段3を直列に含む、本発明の一実施形態の水精製装置を示す。この回路は、酸化手段2の排出口22と磨き手段3の注入点31との間に直列に配置された測定セル4を1つしか含まない点、および三方弁16が、より低コストでより使いやすい、開と閉の2つの位置を有する単純な分析弁6に置き換えられている点において、先行技術の回路と異なる。
【0026】
フィルタ手段の排出口における水は2つのパイプの間で分割され、そのうちの1つは上述のように分析弁6に流れ、バイパス回路を形成する2つ目は特定の値を超えると開くように較正された逆止め弁5を経由して、抵抗率測定セル4に直接流れる。
【0027】
フィルタ手段1からの水は、完全に分析弁6に対する作用によって、酸化手段2へ、または逆止め弁5を備える分岐回路を経由して直接測定セル4へ向けられる。分析弁6が開位置にあるときには、液体を酸化手段まで通すことができ、分岐回路内の圧力が下がり、逆止め弁5は閉鎖したままとなる。分析弁6が閉鎖されているときには、分岐回路内の圧力が上昇し、逆止め弁5が開放されて、水を抵抗率測定セル4まで通すことができる。
【0028】
図2はまた、制御および計算部7、および得られた純度に関する情報をリアルタイムで操作者に提供するようになっている表示装置8を含む、水精製装置の制御手段も示す。この制御および計算部7は、制御モジュール9によって分析弁6の位置を制御し、計算モジュール10の抵抗率測定セル4によって供給される情報を所有する。計算モジュール10は、水純度計算法を実行し、得られた結果を表示装置8に送信する。
【0029】
先行技術と同様に、水の純度を測定する方法は、フィルタ手段の排出口での水の抵抗率の第一測定を含み、精製装置の2つの異なる操作モード、すなわち参照モードおよび分析モードの使用がこれに続く。フィルタ手段1によって供給される水の抵抗率を評価するために、分析弁6が閉鎖され、逆止め弁の上流側の圧力が上昇し、圧力が公称開放値に到達すると弁が開放され、液体の流れが逆止め弁5を経由して分岐回路内で循環する。分析弁が開放されているとき、分析モードまたは参照モードにおいて、逆止め弁5は、分岐回路内の液体の循環を妨げ、その注入口における圧力は公称開放圧力を下回ったままとなる。分析弁は、分析モードにおいて継続的に開放されている。しかしながら、参照モードでは、その間は酸化手段の中に存在する水が紫外線放射に曝露され続ける所定時間の間、閉鎖されたままである。分析弁はその後、放射された水を測定セル4に送るために開放される。著しく異なる時間の結果、参照モジュールは、酸化手段の中で費やした時間の関数として、水の抵抗率の変化を決定する。
【0030】
逆止め弁5および分析弁6の構成は、フィルタ手段1の排出口および酸化手段2の排出口における抵抗率を測定するために、単一の測定セル4が使用されることが可能であることを意味する。これは、第一に装置を製造するコストの大幅な削減に反映され、第二に装置の水圧動作条件下で使用するには複雑な先行技術の三方弁の、はるかな使いやすさが反映される。
【0031】
図3は、これらの手段において、費やした時間の関数としての、酸化手段2の排出口における水の抵抗率を示す多くの点を示す。図3はまた、ρ(t)=ρ+(ρ−ρ)e−t/Tのタイプの指数関数によって、これらの点と近似する曲線も提供する。図4は、同じ点の抵抗率値、および混合(指数および線形)関数によって生成された近似曲線を提供し、これは以下のように表されることが可能である:
ρ(t)=ρ+(ρ−ρ)e−t/T+(ρslopet+ρintercept)・ustart,length(t)、ここでρslopeおよびρinterceptは線形関数の勾配および原点における縦座標であり、ustart,length(t)は、純粋な指数関数に対応する横軸の第一部分で値0を有し、横軸の残りの部分では値1を有する関数であって、この関数は指数関数と線形関数との和として扱われることが可能である。
【0032】
図4の曲線は、特に紫外線反応装置が、水と接触してこの放射を受けるプラスチック材料部品を有する場合に、紫外線放射時間の関数としての抵抗率の変化のより良い近似値である。曲線の直線部は、これらの物質の光イオン化によって、または周囲空気からの二酸化炭素ガスを溶解することによって発生する有機化合物の、水の中における存在を考慮に入れている。この新しい近似曲線は、最小二乗法を使用してもたらされる調整を50%減少させる。
【0033】
精製装置を通過した後に得られる水の純度の測定にいたる過程が、次に記載される。
【0034】
第一操作は、分析弁6を閉鎖することによって、フィルタ手段1の排出口における水の抵抗率を測定することである。水はその後、分岐回路および逆止め弁5を経由して抵抗率測定セル4に直接流れ、これがフィルタ手段1の排出口における水の抵抗率の値を与える。この値ρUPWは、精製前の液体の特性にのみ依存するので、精製操作を通じて演えき的な定数のままである。
【0035】
次に、いわゆる参照モードにおける一連の操作が始まる。このモードの目的は、測定値の残余のための参照流体の役割を果たすことになる水の無限大における抵抗率ρ∞REFを決定することである。分析弁6は、酸化手段の中に存在する水をフィルタ手段から流れてくる新しい水と交換する時間の間、一時的に開放され、その後この分析弁6は閉鎖される。この弁は、特定の第一時間の間、閉鎖されたままであり、その後、酸化手段内に残留している水が抵抗率測定セル4まで通るように、開放され、この水の抵抗率値が記録され、その後、酸化手段内で水によって費やされる時間を変えながら、同じ操作が再び開始される。時間関数としての抵抗率の一連の測定値がこのようにして得られ、時間関数としての抵抗率を与える図中のこれらの点を通過する最良の近似曲線を推定するために、回帰技術が使用される。次いで、これまで未知であった、関数ρ(t)=ρ∞REF+(ρ−ρ∞REF)e−t/T+(ρslope+ρintercept)・ustart,length(t)のパラメータの解、すなわちパラメータρ∞REF、ρ、T、ρslope、ρintercept、および関数ustart,lengthのカットオフポイントが得られる。6つの未知のパラメータを含むこの関数は、少なくとも6つの異なる期間で実験を行う必要がある。これは特に、無限大の時間にわたって酸化手段内に残留した場合に、言い換えるとその有機物成分が全て分解して重炭酸イオンになった場合に、水が有するであろう抵抗率値を与えるパラメータρ∞REFを決定する。
【0036】
これら2つの値(フィルタ手段の排出口における抵抗率の値ρUPWおよび完全に酸化した後の無限大における抵抗率の値ρ∞REF)の知識は、精製装置から流れてくる水を分析し、いつでもその炭素原子の濃度、すなわちその純度を知る段階を開始できるようにする。この目的のため、分析弁は継続的に開放したままにされる。
【0037】
フィルタ手段を通過した水は、その有機物成分の部分分解を受けて、このようにして発生した二酸化炭素ガスの溶解のためにその抵抗率が発生する、酸化手段を、与えられた流量で通過する。酸化手段の排出口において、その抵抗率ρは、測定セル4によって測定され、酸化手段2による放射に曝露され続けた滞留時間tの関数である。
【0038】
抵抗率変化モデルとして単一の指数曲線を使用すると、ρ(t)=ρ+(ρUPW−ρ)e−t/Tと記述することができる。ここで適用される近似値は、時間関数としての抵抗率の変化を示す曲線の指数部分のみを維持することからなり、プラスチック材料部品を含む反応装置を使用する参照モードにおいて考慮されなかったであろうが、紫外線反応装置内の水の曝露時間が短いままであって、これは参照モードの場合には該当しないので、ここでは許容範囲内である。
【0039】
次に決定される値は、精製装置からの排出口における水の純度を得るために使用される値ρである。このパラメータは、以下に説明される分析的外挿法によって計算される。
【0040】
簡素化のため、kαによって項ρ(t)とρとの間の比率を指定し、e−αによって式e−t/Tを指定することにより、
1/kα=1+(ρUPW/ρ−1)e−α
を得る。
【0041】
この式が参照モードにも等しく適用されると主張することにより、同じ滞留時間を示すその曲線の左側の部分(ustart,length(t)=0)において、
REF=ρ(t)REF/ρ∞REF、および
−α=(1−KREF)/KREF×ρ∞REF/(ρUPW−ρ∞REF
を得る。
【0042】
次いで、ρおよび参照モードの使用を通じて知られるパラメータ(KREF、ρUPW、およびρ∞REF)の関数として、kαを表すことが可能となる。
【0043】
無限大に向かうように意図された作業パラメータとして滞留時間tを使用することにより、標準的な反復法を使用して、kαおよびρを後者のパラメータが収束するまで、連続的に変化させることが可能である。
【0044】
このようにして、無限大の時間にわたってその内部に残留した場合に、すなわちその有機化合物の酸化が完了するまで継続した場合に、酸化手段内の水が有するであろう抵抗率の値が得られる。
【0045】
たとえばMINTEQA2プログラムによって使用されるものなど、標準的な方法はその後、無限大における抵抗率値から、水の全有機炭素(TOC)濃度、すなわちppbで表されるその純度へ戻す。
【0046】
時間関数としての抵抗率変化曲線の指数部分のみを維持すると説明された方法の変形例において、分析モードで、指数部分と線形部分とを関連づける完全な式を使用すること、および対応する等式を解くことは、明らかに可能である。
【0047】
数多くのその他の変形例が、環境の関数として可能であり、この点において、本発明は、記載および表示された例に限定されないことが指摘されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ手段(1)、酸化手段(2)、および磨き手段(3)を直列に含み、前記フィルタ手段(1)の排出口および前記酸化手段(2)の排出口で水の抵抗率を測定する手段(4)をさらに含む精製装置からの排出口において、超純水などの液体の中に存在する有機化合物の量を分析する方法において、
a)フィルタ手段(1)の排出口における液体の抵抗率ρUPWを測定するステップと、
b)所定の数の著しく異なる時間の間、前記酸化手段(2)に液体の一部を曝露し、前記酸化手段への曝露の後に液体の対応する抵抗率値を測定することによって、参照モードを確立するステップと、
c)時間tの関数としてその抵抗率ρを表す式を回帰によって確立することによって、前記液体の無限大における抵抗率ρ∞REFを、この参照モードにおいて決定し、前記式がρ=ρ∞REF+(ρUPW−ρ∞REF)e−t/Tのタイプの少なくとも1つの指数関数を含むステップと、
d)酸化手段(2)からの排出口におけるその抵抗率ρを決定するために、分析されるべき前記液体を前記抵抗率測定手段(4)の1つに通過させることによって、分析モードを確立するステップと、
e)測定された抵抗率ρ、フィルタ手段(1)からの排出口における水の抵抗率ρUPW、および参照モードで推測された無限大における抵抗率ρ∞REFから、水の純度を判定するステップとを含み、
純度を決定する前記ステップe)が、
ステップc)において確立された指数関数の時定数Tを決定するサブステップと、
このパラメータが収束するまで逐次代入法によってこの分析モードでの前記液体の無限大における抵抗率ρを決定し、tを反復変数とする、ρ=ρ+(ρUPW−ρ)e−t/Tのタイプの少なくとも1つの指数関数を含む式によって、および無限大に向かって反復変数tを変化させることによって、無限大におけるこの抵抗率ρの関数として測定抵抗率ρを表すサブステップと、
無限大におけるこの抵抗率ρから、前記精製済み液体に含まれる有機化合物の量を判定するサブステップとを含むことを特徴とする、分析方法。
【請求項2】
ステップc)で使用される式が、tの指数関数とtの線形関数との和である、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
ステップb)で使用される異なる時間の数が6以上である、請求項2に記載の分析方法。
【請求項4】
分析モードにおける無限大での抵抗率を表すためにステップe)で使用される式が、指数形式のtの単一関数を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項5】
分析モードにおける無限大での抵抗率を表すためにステップe)で使用される式が、tの指数関数とtの線形関数とも和である、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項6】
全ての抵抗率測定値が同じ抵抗率測定手段(4)において行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項7】
フィルタ手段(1)、酸化手段(2)、および磨き手段(3)を直列に含み、前記フィルタ手段(1)からの排出口および前記酸化手段(2)からの排出口で水の抵抗率を測定する手段(4)を含む、超純水などの液体の中に存在する有機化合物の量を分析する装置において、
所定の数の著しく異なる時間の間、前記酸化手段(2)に液体の一部を曝露する制御手段(9)と、
前記曝露時間の後に酸化手段(2)からの排出口において測定された抵抗率から、前記液体の無限大における抵抗率ρ∞REFを回帰によって決定する手段(10)とをさらに含み、
前記曝露時間の後に酸化手段(2)からの排出口において測定された抵抗率から、酸化手段(2)からの排出口における抵抗率ρの時間関数として、変化の曲線の時定数Tを決定し、ρUPWをフィルタ手段(1)からの排出口において測定された液体の抵抗率として、ρ=ρ∞REF+(ρUPW−ρ∞REF)e−t/Tのタイプの少なくとも1つの指数関数を含む式によって表される手段(10)と、
このパラメータが収束するまで、酸化手段(2)からの排出口での液体の無限大における抵抗率ρを逐次代入法によって決定し、tを反復変数とする、ρ=ρ+(ρUPW−ρ)e−t/Tのタイプの少なくとも1つの指数関数を含む式によって、および無限大に向かって反復変数tを変化させることによって、無限大におけるこの抵抗率ρの関数として測定抵抗率ρを表す手段(10)と、
無限大におけるこの抵抗率ρから前記精製済み液体に含まれる有機化合物の量を判定する手段(10)と、
得られた結果を表示する手段(8)とをさらに含むことを特徴とする、分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−522274(P2011−522274A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512236(P2011−512236)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005849
【国際公開番号】WO2009/147511
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】