説明

超速硬セメント組成物、超速硬モルタル組成物、及び超速硬グラウトモルタル

【課題】 流動性、ブリージングの防止、充分な可使時間の確保等の要求性能をより高めることに加えて、安定した初期膨張性の付与や乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性の向上を達成できる超速硬グラウトモルタルを提供する。
【解決手段】 セメント、カルシウムアルミネート、セッコウ類、過酸化物質、凝結調整剤、及び流動化剤を含有する超速硬セメント組成物、セメント、カルシウムアルミネート、及びセッコウ類からなる結合材100部中、セメントが50〜90部、カルシウムアルミネートが5〜25部、セッコウ類が5〜25部で、結合材100部に対して、過酸化物質0.005〜0.5部を配合の該超速硬セメント組成物、該超速硬セメント組成物と細骨材とを含有してなる超速硬モルタル組成物、該超速硬モルタル組成物と水とを混練してなる超速硬グラウトモルタル、並びに、該超速硬グラウトモルタルを用いてなるセメント硬化体を構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界において使用される超速硬セメント組成物、超速硬モルタル組成物、及び超速硬グラウトモルタルに関する。
【0002】
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
【背景技術】
【0003】
超速硬性で自己充填性やセルフレベリング性をもつ超速硬グラウトモルタルは合理化施工には欠かすことのできない材料である。
超速硬グラウトモルタルは、材齢3時間で所要の強度を発現し、硬化後に程よい膨張性を示すことから、構造物との強固な一体化を早期に実現可能な魅力ある材料であり、様々なものが提案されている(特許文献1〜特許文献4参照)。
【0004】
しかしながら、従来の超速硬グラウトモルタルは、場合によっては、硬化するまでに沈下が認められ、安定した初期膨張性が得られない場合があるという課題を有するものであった。また、硬化時には程よい膨張性を呈すること、さらに硬化が迅速に進むことから、通常のグラウトモルタルと比べるとひび割れが生じにくい材料であるが、硬化する前のまだ固まらない状態の段階で極度の乾燥状態におかれると、ひび割れを生じる場合もあり、そのひび割れ抵抗性のさらなる向上が求められていた。
【0005】
近年では、超速硬グラウトモルタルに対する要求は益々高まっており、従来の超速硬グラウトモルタルの要求性能である、優れた流動性、ブリージングの防止、及び充分な可使時間の確保等についてもさらなる向上が求められている現状にある。
【0006】
そこで、本発明者は、前記課題を解決すべく、種々の努力を重ねた結果、特定の材料を組み合わせて調製したモルタル組成物が、流動性、ブリージングの防止、及び充分な可使時間の確保等の要求性能をより高めることに加えて、安定した初期膨張性の付与や、乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性の向上が達成できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【特許文献1】特開平03−012350号公報
【特許文献2】特開平01−230455号公報
【特許文献3】特開平11−021160号公報
【特許文献4】特開平11−139859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、流動性、ブリーディングの防止、及び充分な可使時間の確保等の要求性能をより高めることに加えて、安定した初期膨張の付与や、乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性の向上が達成できる超速硬グラウトモルタルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、セメント、カルシウムアルミネート、セッコウ類、過酸化物質、凝結調整剤、及び流動化剤を含有する超速硬セメント組成物であり、セメント、カルシウムアルミネート、及びセッコウ類からなる結合材100部中、セメントが50〜90部、カルシウムアルミネートが5〜25部、セッコウ類が5〜25部であり、結合材100部に対して、過酸化物質0.005〜0.5部を配合の該超速硬セメント組成物であり、カルシウムアルミネートが、非晶質カルシウムアルミネートである該超速硬セメント組成物であり、カルシウムアルミネートの強熱減量が1%以上である該超速硬セメント組成物であり、過酸化物質が過炭酸塩である該超速硬セメント組成物であり、該超速硬セメント組成物と細骨材とを含有してなる超速硬モルタル組成物であり、該超速硬モルタル組成物と水とを混練してなる超速硬グラウトモルタルであり、J14ロート流下値が8±3秒である該超速硬グラウトモルタルであり、該超速硬グラウトモルタルを用いてなるセメント硬化体である。
【0010】
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、また、石灰石粉末等や高炉徐冷スラグ微粉末を混合したフィラーセメント、各種の産業廃棄物を主原料として製造される環境調和型セメント、いわゆる、エコセメントなどが挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が併用可能である。
本発明では、初期強度発現性や材料分離抵抗性の観点から、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントを選定することが好ましい。
【0011】
本発明で使用するカルシウムアルミネートは、CaOとAl2O3を主成分とする化合物を総称するものであり、その具体例としては、例えば、CaO・2Al2O3、CaO・Al2O3、12CaO・7Al2O3、11CaO・7Al2O3・CaF2、及び3CaO・3Al2O3・CaF2などと表される結晶性のカルシウムアルミネートや、CaOとAl2O3成分を主成分とする非晶質の化合物が挙げられる。このうち、CaO/Al2O3モル比が0.75〜3の範囲にあるカルシウムアルミネートが好ましく、CaO/Al2O3モル比が1〜2のものがより好ましい。CaO/Al2O3モル比が0.75未満では充分な初期強度発現性が得られない場合があり、逆に、CaO/Al2O3モル比が3を超えると充分な流動性や可使時間が得られない場合がある。
また、カルシウムアルミネートは、非晶質が好ましく、結晶質では充分な強度発現が得られない場合がある。
【0012】
カルシウムアルミネート(以下、CAという)を得る方法としては、CaO原料とAl2O3原料等をロータリーキルンや電気炉等によって熱処理して得る方法が挙げられる。
CAを製造する際のCaO原料としては、例えば、石灰石や貝殻等の炭酸カルシウム、消石灰等の水酸化カルシウム、あるいは生石灰等の酸化カルシウムを挙げることができる。
また、Al2O3原料としては、例えば、ボーキサイトやアルミ残灰と呼ばれる産業副産物等が挙げられる。
【0013】
CAを工業的に得る場合、不純物が含まれることがある。その具体例としては、例えば、SiO2、Fe2O3、MgO、TiO2、MnO、Na2O、K2O、Li2O、S、P2O5、及びFなどが挙げられるが、これらの不純物の存在は本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。具体的には、これらの不純物の合計が10%以下の範囲では特に問題とはならない。
【0014】
また、本発明のCAは、化合物として、4CaO・Al2O3・Fe2O3、6CaO・2Al2O3・Fe2O3、及び6CaO・Al2O3・2Fe2O3などのカルシウムアルミノフェライト、2CaO・Fe2O3やCaO・Fe2O3などのカルシウムフェライト、ゲーレナイト2CaO・Al2O3・SiO2やアノーサイトCaO・Al2O3・2SiO2などのカルシウムアルミノシリケート、メルビナイト3CaO・MgO・2SiO2、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2、及びモンチセライトCaO・MgO・SiO2などのカルシウムマグネシウムシリケート、トライカルシウムシリケート3CaO・SiO2、ダイカルシウムシリケート2CaO・SiO2、ランキナイト3CaO・2SiO2、及びワラストナイトCaO・SiO2などのカルシウムシリケート、カルシウムチタネートCaO・TiO2、遊離石灰、並びに、リューサイト(K2O、Na2O)・Al2O3・SiO2などを含む場合があり、本発明ではこれらの結晶質又は非晶質が混在することも可能である。
【0015】
本発明のCAの粒度は特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で3,000〜9,000cm2/gが好ましく、4,000〜8,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では初期強度発現性が充分でない場合があり、9,000cm2/gを超えると流動性や可使時間の確保が困難になる場合がある。
【0016】
本発明では、CAの強熱減量が1%以上のものを使用することが好ましく、強熱減量が2%以上のCAを使用することがより好ましい。CAの強熱減量が1%未満では、流動性や可使時間の確保が困難となったり、“はんてん”が発生しやすくなる場合がある。
強熱減量を1%以上とする方法は特に限定されるものではないが、水分や湿分を供給する方法や炭酸ガスを供給する方法等が挙げられる。
【0017】
本発明で使用するセッコウ類は、無水、半水、又は二水の各セッコウを総称するものであり特に限定されるものではないが、強度発現性の観点から、無水セッコウ又は半水セッコウの使用が好ましく、無水セッコウの使用がより好ましい。
【0018】
セッコウ類の粒度は特に限定されるものではないが、通常、ブレーン値で3,000〜9,000cm2/gが好ましく、4,000〜8,000cm2/gがより好ましい。3,000cm2/g未満では寸法安定性が悪くなる場合があり、9,000cm2/gを超えると流動性の確保が困難になる場合がある。
【0019】
本発明の超速硬セメント組成物におけるセメント、CA、及びセッコウ類からなる結合材100部中の配合割合は、セメント50〜90部、CA5〜25部、及びセッコウ5〜25部が好ましい。各材料の配合割合が前記の範囲にないと、本発明の効果を満たす超速硬セメント組成物が得られない場合がある。即ち、流動性に優れ、充分な可使時間を確保しつつ材齢3時間で所要の強度を発現する超速硬セメント組成物を得ることができない場合がある。
【0020】
ここで、CAとセッコウ類の配合割合は、CAとセッコウ類からなる急硬成分100部中、CA30〜70部で、セッコウ類70〜30部が好ましく、CA40〜60部で、セッコウ類60〜40部がより好ましい。CAが30部未満で、セッコウ類が70部を超えると初期強度の発現性が充分でない場合や寸法安定性が悪くなる場合がある。また、CAが70部を超え、セッコウ類が30部未満では可使時間の確保が困難となる場合がある。
【0021】
急硬成分の配合割合は、結合材100部中、10〜50部が好ましく、20〜40部がより好ましい。10部未満では初期強度発現性や材料分離抵抗性が良好とならない場合があり、50部を超えると可使時間の確保が困難になったり、寸法安定性が悪くなる場合がある。
【0022】
本発明で使用する過酸化物質は、本発明の超速硬セメント組成物をグラウト材料として利用する場合、構造物と一体化させるために、まだ固まらない状態のグラウトモルタルが沈下や収縮するのを抑止する働きや、乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性を向上させるために使用できるものであれば特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、及び過炭酸アンモニウムなどの過炭酸塩、過ホウ酸ナトリウムや過ホウ酸カリウムなどの過ホウ酸塩、過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩、並びに、過酸化水素等が挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用可能である。
【0023】
過酸化物質の配合割合は特に限定されるものではないが、通常、結合材100部に対して、0.005〜0.5部が好ましく、0.01〜0.1部がより好ましい。0.005部未満では充分な初期膨張効果を付与することができない場合があり、0.5部を超えると強度発現性が悪くなる場合がある。
【0024】
本発明で使用する凝結調整剤は特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及びコハク酸等のオキシカルボン酸又はそれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、及びアルミニウムなどの塩の有機酸、さらに、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸リチウムのアルカリ炭酸塩、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム、並びに、重炭酸アンモニウムなどが挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用可能である。
本発明では、充分な可使時間と初期強度発現性の双方を満足する観点から、有機酸とアルカリ炭酸塩の併用が好ましい。
【0025】
凝結調整剤の使用量は特に限定されるものではないが、通常、結合材100部に対して、0.1〜2部が好ましく、0.3〜1部がより好ましい。0.1部未満では可使時間の確保が困難な場合があり、2部を超えると強度発現性が悪くなる場合がある。
【0026】
本発明で使用する流動化剤は特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、ナフタレン系としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP-9シリーズ」、花王社製商品名「マイティ2000シリーズ」、及び日本製紙社製商品名「サンフローHS-100」などが挙げら、また、メラミン系としては、日本シーカ社製商品名「シーカメント1000シリーズ」や日本製紙社製商品名「サンフローHS-40」などが挙げられる。さらに、アミノスルホン酸系としては、藤沢薬品工業社製商品名「パリックFP-200シリーズ」などが挙げられる。そして、ポリカルボン酸系としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP-8シリーズ」、グレースケミカルズ社製商品名「ダーレックススーパー100PHX」、及び竹本油脂社製商品名「チューポールHP-8シリーズ」や「チューポールHP-11シリーズ」などが挙げられ、本発明ではこれら流動化剤のうちの一種又は二種以上が使用可能である。
流動化剤には粉末状のものも存在する。具体的には、ナフタレン系としては、花王社製商品名「マイティ100」、三洋化成工業社製商品名「三洋レベロンP」、及び第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」などが、また、メラミン系のものとしては、シーカ社製「シーカメントFF」などが、そして、ポリカルボン酸系としては、例えば、三菱化成社製商品名「クインフロー750」や花王社製商品名「CAD9000P」などが挙げられる。
【0027】
流動化剤の使用量は特に限定されるものではないが、通常、結合材100部に対して、固形分換算で0.1〜2部が好ましい。0.1部未満では流動性が充分でない場合があり、2部を超えると材料分離を起す場合がある。
【0028】
細骨材は発熱量や寸法変化の低減や耐久性の確保の観点で重要な役割を果たすもので、具体例としては、例えば、ケイ砂系、石灰石系、高炉水砕スラグ系、及び再生骨材系等が挙げられ、本発明では、耐酸性等の観点からケイ砂系を選定することが好ましい。
【0029】
細骨材の使用量は、セメント、カルシウムアルミネート、及びセッコウ類からなる結合材100部に対して、50〜300部が好ましく、100〜200部がより好ましい。50部未満では、発熱量が大きすぎる場合や、収縮が大きくなり、ひび割れが生じやすい場合がある。逆に、300部を超えると優れた流動性や初期強度発現性が得られない場合がある。
【0030】
水の使用量は、使用する目的・用途や各材料の配合割合によって変化するため特に限定されるものではないが、通常、水結合材比で28〜60%が好ましく、30〜45%がより好ましい。水結合材比が28%未満では流動性を得ることが難しい場合や、発熱量が極めて大きくなる場合があり、逆に60%を超えると強度発現性を確保することが困難な場合がある。
【0031】
本発明では、セメント、CA、セッコウ類、過酸化物質、凝結調整剤、及び流動化剤とともに、強度発現性の改善や耐酸性の向上、可使時間の確保に加えて、寸法安定性を良好にする観点から、シリカ質微粉末を併用することが可能である。
【0032】
シリカ質微粉末としては、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ、及びシリカフュームなどの潜在水硬性物質やポゾラン物質を挙げることができ、本発明では、シリカフュームの使用が好ましい。
【0033】
シリカ質微粉末の粉末度は特に限定されるものではないが、通常、高炉水砕スラグ微粉末とフライアッシュは、ブレーン値で3,000〜9,000cm2/g程度の範囲にあり、シリカフュームは、BET比表面積で2〜20万m2/g程度の範囲にある。
【0034】
シリカフュームの種類は限定されるものではないが、流動性の観点から、不純物としてZrO2を10%以下含有するシリカフュームや酸性シリカフュームの使用がより好ましい。
酸性シリカフュームとは、シリカフューム1gを純粋100ccに入れて攪拌した時の上澄み液のpHが5.0以下の酸性を示すものを言う。
【0035】
シリカ質微粉末の使用量は、CAとセッコウ類からなる急硬成分100部に対して、5〜100部が好ましく、10〜50部がより好ましい。5部未満では、強度発現性の改善、耐酸性の向上、可使時間の確保、及び寸法安定性を良好にするなどの効果が得られない場合があり、逆に、100部を超えると、流動性が得られにくい場合や、初期の強度発現性が低下する場合もある。
【0036】
本発明では、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、及びパルプスラッジ焼却灰等の混和材料、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、スチールファイバー、ビニロンファイバー、炭素繊維、及びワラストナイト繊維等の繊維物質、ポリマー、ベントナイトなどの粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0037】
本発明において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
【0038】
混合装置としては、既存のいかなる装置、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサなどの使用が可能である。
【発明の効果】
【0039】
本発明の超速硬セメント組成物を使用することにより、流動性、ブリーディングの防止、及び充分な可使時間の確保等の要求性能をより高めることに加えて、安定した初期膨張性の付与や乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性の向上を達成できる超速硬グラウトモルタルを提供することが可能となる。
【実施例1】
【0040】
セメント70部、表1に示すCA15部、及びセッコウ類A15部、過酸化物質a0.05部、凝結調整剤0.7部、及び流動化剤1.2部を配合して超速硬セメント組成物を調製した。
調製した超速硬セメント組成物100部に対して、細骨材150部を配合してモルタル組成物を調製し、セメント、カルシウムアルミネート、及びセッコウ類からなる結合材100部に対して、38部の水で混練し超速硬モルタルを調製した。
調製したモルタルの流動性、可使時間、ブリーディング、圧縮強度、及び初期膨張率を測定し、ひび割れについて観察した。結果を表1に併記する。
【0041】
<使用材料>
セメント :早強ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値4,500cm2/g
CAイ :CaO/Al2O3モル比1.0、強熱減量1.0%、結晶質、主成分CaO・Al2O3、ブレーン値5,000cm2/g
CAロ :CaO/Al2O3モル比1.50、強熱減量1.0%、結晶質、主成分CaO・Al2O3と12CaO・7Al2O3、ブレーン値5,000cm2/g
CAハ :CaO/Al2O3モル比1.70、強熱減量1.0%、結晶質、主成分CaO・Al2O3と12CaO・7Al2O3、ブレーン値5,000cm2/g
CAニ :CaO/Al2O3モル比2.00、強熱減量1.0%、結晶質、主成分CaO・Al2O3と12CaO・7Al2O3、ブレーン値5,000cm2/g
CAホ :CaO/Al2O3モル比1.50、強熱減量1.0%、非晶質、CAハに試薬1級のシリカを3%添加して、1,650℃で溶融後、急冷して合成、ブレーン値5,000cm2/g
CAヘ :CaO/Al2O3モル比1.70、強熱減量1.0%、非晶質、CAハに試薬1級のシリカを3%添加して、1,650℃で溶融後、急冷して合成、ブレーン値5,000cm2/g
CAト :CaO/Al2O3モル比2.0、強熱減量1.0%、非晶質、CAハに試薬1級のシリカを3%添加して、1,650℃で溶融後、急冷して合成、ブレーン値5,000cm2/g
CAチ :CAヘに湿分を与え、強熱減量を2.0%としたもの、ブレー値5,000cm2/g
セッコウ類A:無水セッコウ、市販品、ブレーン値4,000cm2/g
過酸化物質a:過炭酸ナトリウム、試薬1級
流動化剤 :ナフタレン系流動化剤、市販品
凝結調整剤 :試薬1級のクエン酸25部と試薬1級の炭酸カリウム75部の混合物
水 :水道水
細骨材 :珪砂、3号20部、4号50部、及び6号30部の混合品
【0042】
<測定方法>
流動性 :JSCE-F541に準じて、J14ロート流下値を測定
可使時間 :自記温度記録計により測定し、練上りからモルタルの温度が2℃上昇するまでの時間
ブリーディング:JSCE-F522に準じブリーディングを測定、ブリーディングの有無により材料分離抵抗性を評価
圧縮強度 :モルタルを型枠に詰めて4cm×4cm×16cmの成形体を作成し、材齢3時間の圧縮強度をJIS R 5201に準じて測定
初期膨張率:φ5×10cmの型枠に練混ぜたモルタルを型詰し光センサーにて打設直後から材齢3時間までの鉛直方向の長さ変化率を測定、表中の−は収縮側、+は膨張側
ひび割れ :プラスティックひび割れ抵抗性、既設コンクリート上にグラウトモルタルを厚さ2cm、縦2m、横50cmの面積で打設し、送風機によって打設したグラウトモルタル表面に温風を吹き込んだ。材齢3時間後にひび割れの有無を観察した。×は3本以上ひび割れが発生、△はひび割れが1〜2本発生、○はひび割れの発生なし
【0043】
【表1】

【実施例2】
【0044】
CAチを使用し、CAとセッコウ類からなる急硬成分100部中、表2に示すセッコウ類を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0045】
<使用材料>
セッコウ類B:半水セッコウ、市販品、ブレーン値4,000cm2/g
セッコウ類C:二水セッコウ、市販品、ブレーン値4,000cm2/g
【0046】
【表2】

【実施例3】
【0047】
CAチを使用し、結合材100部中、表3に示す急硬成分を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0048】
【表3】

【実施例4】
【0049】
CAチを使用し、表4に示す過酸化物質を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。なお、比較のため、炭素物質の代わりに、従来のガス発泡物質であるアルミ粉(Al粉)についても同様に行った。結果を表4に併記する。
【0050】
<使用材料>
過酸化物質b:過ホウ酸ナトリウム、試薬1級
過酸化物質c:過マンガン酸ナトリウム、試薬1級
過酸化物質d:過マンガン酸カリウム、試薬1級
Al粉 :従来のガス発泡物質、アルミ粉、市販品
【0051】
【表4】

【実施例5】
【0052】
CAチを使用し、表5に示す細骨材と水を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0053】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の超速硬セメント組成物は、流動性、ブリージングの防止、及び充分な可使時間の確保等の要求性能をより高めることに加えて、安定した初期膨張性の付与や乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性の向上を達成できる超速硬グラウトモルタルが得られるため、橋脚の鋼板巻き立て工法、大型しゅう座の充填工法、その他の間隙充填、セルフレベリング床材等、並びに、土木・建築用途に広範に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、カルシウムアルミネート、セッコウ類、過酸化物質、凝結調整剤、及び流動化剤を含有してなる超速硬セメント組成物。
【請求項2】
セメント、カルシウムアルミネート、及びセッコウ類からなる結合材100部中、セメントが50〜90部、カルシウムアルミネートが5〜25部、セッコウ類が5〜25部であり、結合材100部に対して、過酸化物質0.005〜0.5部を配合してなる請求項1に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項3】
カルシウムアルミネートが、非晶質カルシウムアルミネートであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項4】
カルシウムアルミネートの強熱減量が1%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちの一項に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項5】
過酸化物質が過炭酸塩であることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちの一項に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に記載の超速硬セメント組成物と細骨材とを含有してなる超速硬モルタル組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の超速硬モルタル組成物と水とを混練してなる超速硬グラウトモルタル。
【請求項8】
J14ロート流下値が8±3秒であることを特徴とする請求項7に記載の超速硬グラウトモルタル。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の超速硬グラウトモルタルを用いてなるセメント硬化体。

【公開番号】特開2006−104013(P2006−104013A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292190(P2004−292190)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】