説明

超電導ケーブルの接続構造

【課題】組付作業性、解体作業が良好で良品撤去が可能であり再組立作業も容易な超電導ケーブルの接続構造を提供する。
【解決手段】超電導導体を有するケーブルコアを二重の断熱管2,3内に収納して内側断熱管2内に冷却媒体を流通させると共に、内側断熱管2と外側断熱管3の間に真空層を形成して超電導導体を超電導状態に冷却するように構成された超電導ケーブル同士を接続するための超電導ケーブルの接続構造1であって、超電導ケーブル同士の接続部全体を覆うために超電導ケーブルの外側断熱管3に対して着脱自在に取り付けられる外側ケース4と、該外側ケース4と外側断熱管3との間に真空状態を形成するために該外側ケース4の端部と外側断熱管3との間に設けられるリング状の弾性パッキン5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの接続構造に関し、特に、組付作業性と解体作業性、再組立作業性を向上させた超電導ケーブルの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブル21は、例えば図3に示すように、超電導導体22aを有する3心のケーブルコア22を二重の断熱管23,24内に収納して内側断熱管23内に冷却媒体を流通させると共に、内側断熱管23と外側断熱管24の間に真空層を形成して超電導導体22aを超電導状態に冷却するように構成される(例えば特許文献1参照)。このような超電導ケーブルを長距離の電力供給用として用いる場合、製造、輸送、布設等の条件によりケーブル長が制約されるため、線路途中でケーブル同士を接続しなければならない。
【0003】
その中間接続部では、ケーブルコア同士の接続部における超電導状態を確保するために、例えば超電導ケーブルの接続部全体を接続ケースで気密状態に覆い、その内部を真空引きするようにしている。従って、従来では、例えば図4に示すように、接続ケース25の端部を超電導ケーブルの外側断熱管24に形成した溶接台座26に対して溶接していた。尚、図示の例では、溶接台座26に溶接した鍔状部材27に対して接続ケース25の端部を隅肉溶接により接合している。このような溶接による接合では、接続ケース25と外側断熱管24との間を高い気密状態に接合できるため信頼性の高い施工が可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−331894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような中間接続部を解体する際に、グラインダー等の解体工具を用いて各溶接箇所を取り外す場合、外側断熱管24や溶接台座26等の良品撤去したい部分が損傷を受けて再使用ができなくなることがあった。即ち、溶接台座26から接続ケース25を分離する際には、溶接台座26が損傷して再使用できなくなったり、外側断熱管24が損傷して真空リークが発生するようなことも懸念される。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされ、組付作業性、解体作業が良好で良品撤去が可能であり再組立作業も容易な超電導ケーブルの接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超電導ケーブルの接続構造は、超電導導体を有するケーブルコアを二重の断熱管内に収納して内側断熱管内に冷却媒体を流通させると共に、内側断熱管と外側断熱管の間に真空層を形成して超電導導体を超電導状態に冷却するように構成された超電導ケーブルの接続構造であって、
超電導ケーブルの外側断熱管に対して着脱自在に取り付けられて超電導ケーブルの接続部全体を覆う外側ケースと、該外側ケース内を真空状態に維持するために該外側ケースの端部と外側断熱管との間に介装される弾性パッキンと、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、外側ケースを外側断熱管に取り付ける際に、外側ケースの端部と外側断熱管の間にリング状の弾性パッキンを介在させることによって、外側ケースと外側断熱管の間にシールを施すことができるため、外側ケース内を真空引きすることにより高い真空状態を確保することができる。その外側ケースは、例えばボルト締結等の締結手段によって外側断熱管に対して着脱自在に取り付けるようにすれば、作業性よく組み付けることができる。また、解体時には、ボルト締結等を解除すれば、容易に解体することができ良品撤去が可能となる。弾性パッキンには、例えば断面が台形状のゴムパッキンを用いるのが好ましいがO−リングを用いることもできる。このような超電導ケーブルの接続構造は、線路の中間接続部だけでなく常電導側との終端接続構造にも適用することができる。
【0009】
前記弾性パッキンは、断面が台形状に形成され、該断面の上底をなす外周面が外側ケースの端部内周面に当接し、台形断面の下底をなす内周面が、外側断熱管の外周に設けられたリング状のパッキン台座に当接するようにしてもよい。このようにすれば、弾性パッキンが安定な状態に保持されるため、高いシール性を安定に確保することができる。
【0010】
前記弾性パッキンを、ケーブル軸方向に圧縮するための弾発部材を設けてもよい。このようにすれば、例えばコイルスプリング等の弾発部材によって弾性パッキンをケーブル軸方向に圧縮することで、弾性パッキンの外周面と内周面に対して所要の面圧を付与することができる。
【0011】
前記外側ケースの端部は、外側断熱管に一体化されたねじ付き台座に螺装されているねじ部材を介して外側断熱管に対してケーブル軸方向に位置調整自在かつ着脱自在に固定されるようにしてもよい。そのねじ付き台座は、例えばエポキシパテ等の常温硬化性の樹脂材を用いて現場で外側断熱管に対して所望の位置に固定した状態に取り付けることができる。そして、そのねじ部材によって、外側断熱管に対する外側ケースの対応位置の調整が自在となり、現場での施工作業性が向上する。
【0012】
前記外側ケースの端部には、パッキン押込みリングがケーブル軸方向に位置調整自在かつ着脱自在に締結され、該パッキン押込みリングには、前記弾性パッキンの一側面に当接する受け部材が一体化される一方、前記弾性パッキンの他側面に当接する押し金具と、前記外側ケースの端部に形成された内向きフランジと、の間には、前記弾発部材が配設されるようにしてもよい。このようにすれば、弾発部材の弾発力が作用する押し金具と、受け部材との間に挟まれた弾性パッキンが、ケーブル軸方向に圧縮されることによって、弾性パッキンに所要の面圧が付与され、外側ケースと外側断熱管の間をシールすることができる。また、パッキン押込みリングのケーブル軸方向の位置を調整することによって、弾性パッキンに作用する弾発部材の弾発力を調整することができ、これにより適切な面圧の調整が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の超電導ケーブルの接続構造は、超電導ケーブルの外側断熱管に対して着脱自在に取り付けられる外側ケースと、該外側ケース内を真空状態にするために該外側ケースの端部と外側断熱管との間に設けられるリング状の弾性パッキンと、を備えるので、外側ケースを外側断熱管に取り付ける際に、外側ケースの端部と外側断熱管との間に弾性パッキンを介在させることによって、外側ケースと外側断熱管との間にシールを施すことができるため、外側ケース内を真空引きすることにより高い真空状態を確保することができる。その外側ケースは、例えばボルト締結等の締結手段によって外側断熱管に対して着脱自在に取り付けるようにすれば、作業性よく組み付けることができる。また、解体時には、ボルト締結等の締結手段を解除すれば、解体作業が容易であり良品撤去が可能となり、再組立も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルの接続構造について説明する。
図1は、超電導ケーブルの接続構造の要部構成を示す。この接続構造1は、超電導ケーブルの中間部(又は端末部)を接続するものである。超電導ケーブルは、例えば超電導導体を有する3本のケーブルコアを、SUSコルゲート管等からなる二重の断熱管2,3内に収納して内側断熱管2内には冷却媒体を流通させると共に、内側断熱管2と外側断熱管3の間には高性能断熱材を積層して真空層を形成し、超電導導体を超電導状態に冷却するように構成される。このような超電導ケーブル同士を接続するための接続構造1は、外側断熱管3に対して着脱自在に取り付けられてケーブル接続部全体を覆う外側ケース4と、該外側ケース4の端部と外側断熱管3との間に介装されるリング状の弾性パッキン5と、を備えている。尚、図示は、左右対称に形成される超電導ケーブルの接続構造1の左側端部における要部構成を示す。また、この接続構造1は、その軸方向長さが例えば5m程度になるため、外側ケース4は、ケーブル軸方向に例えば3分割等に分割されたものを溶接等によって接合して形成するのが好ましい。
【0015】
外側ケース4は、例えばSUS板材等からなるケース本体4aの端部に同一素材からなる接続リング6を溶接等によって一体化して形成され、弾性パッキン5は、例えば合成ゴムからなり、断面が台形状に形成され、該断面の上底をなす外周面が接続リング6の内周面6aに当接し、台形断面の下底をなす内周面が、外側断熱管3の外周に溶接等によって固設されたリング状のパッキン台座7のパッキン面7aに当接する。接続リング6の内周面6a及びパッキン台座7のパッキン面7aは、弾性パッキン5の外周面と内周面との間に所要の面圧が作用した際に完全な気密状態を形成できるように、鏡面仕上げ(平滑化)されている。尚、パッキン台座7は、例えば外側断熱管3と同一素材からなり、予め工場等で外側断熱管3に溶接されるのが好ましい。
【0016】
一方、接続リング6の端部には、パッキン押込みリング8に形成されたボルト孔に嵌挿されるボルト9によって、パッキン押込みリング8がケーブル軸方向に位置調整自在かつ着脱自在となるように取り付けられている。パッキン押込みリング8の下部内側には、弾性パッキン5の一側面に当接する受け部材10が一体化され、その受け部材10は接続リング6の内側に挿入されている。また、接続リング6の外側端部近傍の外側断熱管3には、エポキシパテ等からなるねじ付き台座11が現場施工によって設けられ、そのねじ付き台座11の上向きフランジ部11aに形成されたボルト孔に嵌挿されるねじ部材12が、パッキン押込みリング8に螺着されることによって、接続リング6と一体の外側ケース4が外側断熱管3に対してケーブル軸方向に相対的な位置調整自在かつ着脱自在となるように固定される。他方、弾性パッキン5の他側面には、パッキン台座7のパッキン面7a上を摺動自在な押し金具13が当接し、その押し金具13と、接続リング6に形成された内向きフランジ6bとの間には、コイルスプリングからなる弾発部材14が介設されている。尚、弾発部材14は、板ばね等であってもよく、また、パッキン押込みリング8の側に弾発部材14が配設されるようにしてもよい。
【0017】
このような構成により、ボルト9のねじ込み量を調整することによって、受け部材10と押し金具13の間に挟まれた弾性パッキン5に作用する弾発部材14の弾発力を調整して、弾性パッキン5の外周面と内周面に所要の面圧を付与することができ、接続リング6の内周面6aと、パッキン台座7のパッキン面7aとの間に緊密なシールを施すことができる。従って、外側ケース4内を真空引きすることにより、高い真空状態を確保することができる。また、ねじ付き台座11のねじ部材12のねじ込み量を調整することによって、外側断熱管3に対する外側ケース4のケーブル軸方向の相対位置を調整することができる。尚、この接続構造1は、左右対称に形成されるため、左右のねじ部材12を締結すれば、外側断熱管3に対する外側ケース4の対応位置を固定することができる。
【0018】
このような超電導ケーブルの接続構造1は、パッキン台座7に弾性パッキン5を被嵌させてその外周に外側ケース4を被せ、その弾性パッキン5を受け部材10と、弾発部材14で付勢される押し金具13の間に挟み込む工程と、ボルト9を締結してパッキン押込みリング8を外側ケース4に一体化された接続リング6に接続する工程と、外側断熱管3にねじ付き台座11を固設する工程と、ねじ部材12を締結してパッキン押込みリング8を介して外側ケース4を外側断熱管3に固定する工程と、による無火気工法での組み付け作業を完了することができる。また、メンテナンス時等には、ボルト9とねじ部材12の締結を解除することによって、パッキン台座7や外側断熱管3に損傷を与えることなく容易に解体することができ、真空リークを発生させることなく、良品撤去が可能となる。従って、再組立も容易である。
【0019】
図2は、超電導ケーブルの接続構造1を吊持するための吊持具16を示す。この吊持具16は、半割れの円弧状に形成された上部リング体17と、下部リング体18とからなり、上部リング体17の頂上部には、アイボルト締結用の雌ねじが形成されたボス部19が設けられ、その両端には、ボルト孔を有するフランジ部17a、17aが形成されている。このフランジ部17a、17aに対応して、下部リング体18の両端にも、ボルト孔を有するフランジ部18a、18aが形成されている。また、上部リング体17と、下部リング体18の内周面には、硬質ゴム等の内装材(図示省略)を貼り付けるのが好ましい。このような吊持具16を、接続構造1に被嵌させた状態で締結して、例えば天井クレーンから垂下させたチェーンの端末に取り付けたアイボルト(図示省略)を、ボス部19のねじ部に螺合させることによって、接続構造1を吊り上げることができる。また、このような吊持具16によって、接続部の両側の超電導ケーブルを吊持することもできる。尚、本発明は、実施の形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜、必要に応じて改良、変更等は自由であり、例えば本発明の超電導ケーブルの接続構造は、線路の中間部だけでなく、図示は省略するが、超電導ケーブルの端末部にも適用することができる。また、弾性パッキンとしてO−リング等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の超電導ケーブルの接続構造は、組付作業性、解体作業が良好で良品撤去が可能であり再組立も容易であるため、解体を伴うメンテナンスが必要とされる超電導ケーブルの接続構造等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルの接続構造の一例を示す構成説明図である。
【図2】(a)は同接続構造を吊持するための吊持具の側面図、(b)は正面図である。
【図3】超電導ケーブルの構成の一例を示す断面図である。
【図4】従来の超電導ケーブルの接続構造の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 接続構造 2 内側断熱管 3 外側断熱管 4 外側ケース
4a ケース本体 5 弾性パッキン 6 接続リング 6a 内周面
6b 内向きフランジ 7 パッキン台座 7a パッキン面
8 パッキン押込みリング 9 ボルト 10 受け部材
11 ねじ付き台座 11a 上向きフランジ部 12 ねじ部材
13 押し金具 14 弾発部材 16 吊持具 17 上部リング体
17a フランジ部 18 下部リング体 18a フランジ部
19 ボス部 21 超電導ケーブル 22 ケーブルコア
22a 超電導導体 23 内側断熱管 24 外側断熱管
25 接続ケース 26 溶接台座 27 鍔状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導導体を有するケーブルコアを二重の断熱管内に収納して内側断熱管内に冷却媒体を流通させると共に、内側断熱管と外側断熱管の間に真空層を形成して超電導導体を超電導状態に冷却するように構成された超電導ケーブルの接続構造であって、
超電導ケーブルの外側断熱管に対して着脱自在に取り付けられて超電導ケーブルの接続部全体を覆う外側ケースと、該外側ケース内を真空状態に維持するために該外側ケースの端部と外側断熱管との間に介装される弾性パッキンと、を備えることを特徴とする超電導ケーブルの接続構造。
【請求項2】
前記弾性パッキンは、断面が台形状に形成され、該断面の上底をなす外周面が外側ケースの端部内周面に当接し、台形断面の下底をなす内周面が、外側断熱管の外周に設けられたリング状のパッキン台座に当接することを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの接続構造。
【請求項3】
前記弾性パッキンを、ケーブル軸方向に圧縮するための弾発部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブルの接続構造。
【請求項4】
前記外側ケースの端部は、外側断熱管に一体化されたねじ付き台座に螺装されているねじ部材を介して外側断熱管に対してケーブル軸方向に位置調整自在かつ着脱自在に固定されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の超電導ケーブルの接続構造。
【請求項5】
前記外側ケースの端部には、パッキン押込みリングがケーブル軸方向に位置調整自在かつ着脱自在に締結され、該パッキン押込みリングには、前記弾性パッキンの一側面に当接する受け部材が一体化される一方、前記弾性パッキンの他側面に当接する押し金具と、前記外側ケースの端部に形成された内向きフランジとの間には、前記弾発部材が配設されることを特徴とする請求項3又は4に記載の超電導ケーブルの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−43626(P2009−43626A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208536(P2007−208536)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】