説明

超電導ケーブルの端末接続構造

【課題】電力損失を低減することが可能な超電導ケーブルの端末接続構造を提供する。
【解決手段】本発明の超電導ケーブルの端末接続構造J1は、複数の超電導線材を巻回させて形成したn層(4層)の超電導導体層102を有するケーブルコアと、超電導導体層102と常電導電力機器とを接続するための常電導端末金具F1とを備える。そして、超電導導体層が常電導端末金具F1と接触する直前箇所で、超電導導体層がn層(4層)である巻回部2を備える。また、超電導導体層が常電導端末金具F1と接触する箇所で、超電導線材の巻きが解かれてn-1層以下(2層)に再配置され、最内層の内径が巻回部2の超電導導体層の最内層の内径よりも大きく、各層の超電導線材の端部が実質的に揃えられた再配置部3を備える。更に、再配置部3の超電導導体層と常電導端末金具F1とが半田付け接合により接続された接合部4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの端末接続構造に関する。特に、電力損失を低減することが可能な超電導ケーブルの端末接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、既存の常電導ケーブルと比較して、コンパクトな形状で、かつ、大容量の電力を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、送電線路の一部に超電導ケーブルを布設し、実証試験が行われつつある。
【0003】
超電導ケーブルは、超電導導体層を有するケーブルコアを二重管構造の断熱管内に収納し、この断熱管内に冷媒(例、液体窒素(LN2))を流通させることで、超電導導体層を冷却して超電導状態とする構造のものが代表的である。
【0004】
図6は、超電導ケーブルの代表的な基本構造を示す概略図である。超電導ケーブルCは、3心のケーブルコア100を撚り合わせた状態で断熱管200内に一括に収納した構造である。断熱管200は、ステンレス製の内管201と外管202とからなる二重管構造のコルゲート管であり、両管201、202の間が真空引きされると共に、その間にスーパーインシュレーション(商品名)などの断熱材203が配置されている。また、断熱管200(外管202)の表面には防食層204が形成されている。
【0005】
ケーブルコア100は、中心から順にフォーマ101、超電導導体層102、絶縁層103、超電導シールド層104、常電導保護層105を同軸状に配置した構造である。フォーマ101は、絶縁被覆を施した銅素線を複数本撚り合わせて形成されている。また、超電導導体層102は、フォーマ101上にテープ状の超電導線材110を複数本らせん状に巻き付けて形成されており、図示するように、ケーブルコアの径方向に超電導線材110が積層された多層構造である。超電導線材110としては、例えばBi系銀シース線材やRE123系薄膜線材が利用されている。
【0006】
ところで、既存の送電線路の一部区間を超電導ケーブルに置き換える場合、超電導ケーブルの端末において、超電導ケーブルと常電導電力機器(例えば、常電導ケーブル)とを接続する端末接続構造が必要となる。通常、この端末接続構造の形成は、断熱管の端部からケーブルコアを引き出し、ケーブルコアの端部を段剥ぎして、フォーマ及び超電導導体層の各層をケーブルコアの軸方向に階段状に露出させる。次に、露出させたフォーマ及び超電導導体層を筒状の常電導端末金具に挿入し、超電導導体層と常電導端末金具とを半田付けすることで行われている。常電導端末金具は、銅やアルミニウムといった常電導材料からなる。そして、常電導端末金具に取り付けられた取出部に常電導導体を接続し、常電導端末金具を介して、超電導ケーブルと常電導電力機器とが接続される(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10‐275641号公報
【特許文献2】特開2005‐12915号公報
【特許文献1】特開2009‐170275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の超電導ケーブルの端末接続構造は、発生する電力損失が大きい、或いは電力損失を十分に低減できない問題がある。
【0009】
従来の端末接続構造では、超電導導体層と常電導端末金具とを接続する際、超電導導体層を段剥ぎするため、各超電導導体層と常電導端末金具との接続長が段剥ぎした長さ分ずつずれる。そのため、外層の超電導導体層と内層の超電導導体層とでは、常電導端末金具から又は常電導端末金具への電流の流れ込み距離(以下、単に流れ込み距離と呼ぶ)が異なり、各超電導導体層への電流にばらつきが生じるため、端末接続構造(常電導端末金具)での電力損失が大きくなる。超電導ケーブルの大電流化に伴う超電導導体層の多層化が進むにつれて、電力損失は更に大きくなる。特に、超電導ケーブルの区間が短い(例えば数百m以下)場合には、その区間全体での電力損失に対する端末接続構造での電力損失の割合が大きくなることから、端末接続構造での電力損失を低減することが望まれる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、電力損失を低減することが可能な超電導ケーブルの端末接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、超電導導体層と常電導端末金具とを接続する際、多層構造である超電導導体層の層数を出来るだけ減らして、上記流れ込み距離の異なりを低減することで上記目的を達成する。
【0012】
本発明の超電導ケーブルの端末接続構造は、複数の超電導線材を巻回させて形成したn層の超電導導体層を有するケーブルコアと、上記超電導導体層と常電導電力機器とを接続するための常電導端末金具とを備える。そして、上記超電導導体層が上記常電導端末金具と接触する直前箇所で、上記超電導導体層がn層である巻回部を備える。また、上記超電導導体層が上記常電導端末金具と接触する箇所で、上記超電導線材の巻きが解かれてn-1層以下に再配置され、最内層の内径が上記巻回部の超電導導体層の最内層の内径よりも大きく、各層の超電導線材の端部が実質的に揃えられた再配置部を備える。更に、上記再配置部の超電導導体層と上記常電導端末金具とが半田付け接合により接続された接合部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の超電導ケーブルの端末接続構造によれば、超電導導体層をそのままn層で常電導端末金具と接続するのではなく、n-1層以下に再配置することで、流れ込み距離の異なりを低減、或いはなくすことができる。ここで流れ込み距離とは、ケーブルコアの軸方向に沿って最も長い長さの超電導導体層の端部を基準にして、各層の超電導導体層の端部までの距離のことをいう。再配置部の超電導導体層の層数を巻回部の層数よりも減らすことで、異なる流れ込み距離を有する超電導導体層数を減らすことができる。よって、各超電導導体層の電流のばらつきを低減することができ、端末接続構造(常電導端末金具)における電力損失の低減を図ることができる。
【0014】
本発明の一形態として、上記再配置部の超電導導体層が多層であり、各超電導導体層の先端領域が上記常電導端末金具と接触するように、内周又は外周の一方側の層から他方側の層に向かって各超電導導体層が段階的に形成されていることが挙げられる。
【0015】
超電導ケーブルでは、大電流容量を確保する観点から、超電導線材を多層(n層)に巻回して超電導導体層を形成することがある。この積層数nが大きい場合、超電導導体層を単層に再配置すると、再配置部の超電導導体層の径が大きくなる。そこで、再配置部の超電導導体層の径を考慮し、その超電導導体層をn-1層以下の多層とすることで、端末接続構造における電力損失の低減を図ることができ、かつ常電導端末構造の大型化を防ぐことができる。そして、再配置部の超電導導体層が多層の場合、各超電導導体層の先端領域を常電導端末金具と接触するように形成することで、各層と常電導端末金具との導通をとることができる。
【0016】
本発明の一形態として、上記再配置部の超電導導体層が多層である場合、上記巻回部の超電導導体層で同一層の超電導線材が、上記再配置部で異なる超電導導体層に分けて再配置されることが挙げられる。
【0017】
巻回部の超電導導体層で同一層の超電導線材を、再配置部で異なる超電導導体層に分けて再配置することによって、再配置部の超電導導体層の径を小さくすることができる。例えば、巻回部の超電導導体層が3層である場合、内側の層から順に第1層、第2層、第3層とすると、再配置部の超電導導体層は、第2層の超電導導体層を構成する超電導線材の一部を第1層と再配置して新第1層とし、残部を第3層と再配置して新第2層として配置することが挙げられる。第2層を第1層と第3層に分けて再配置することによって、第1層と第2層とを新第1層に再配列した場合や、第2層と第3層とを新第2層に再配列した場合に比べて新第1層と新第2層の径を小さくすることができる。
【0018】
本発明の一形態として、上記再配置部の超電導導体層が単層であることが挙げられる。
【0019】
再配置部の超電導導体層が単層であることによって、流れ込み距離の異なりをなくすことができ、端末接続構造における電力損失の低減を図ることができる。
【0020】
本発明の一形態として、上記常電導端末金具の一端側は、上記再配置部の超電導導体層が挿入される挿入穴を備えることが挙げられる。
【0021】
常電導端末金具の一端側には、ケーブルコアの端部を剥いで露出させたフォーマを挿入する穴が設けられており、その穴の中でフォーマは常電導端末金具と接合される。常電導端末金具の一端側に、この穴と共に再配置部の超電導導体層を挿入する挿入穴が設けられていると、フォーマを常電導端末金具に設けられた穴に挿入すると同時に、超電導導体層を上記挿入穴に挿入すればよく、端末構造の形成作業が行い易い。
【0022】
本発明の一形態として、上記常電導端末金具の一端側は、上記再配置部の超電導導体層が上記常電導端末金具の外周面に沿って配置されるように、上記一端側から他端側に向けて径が大きくなる傾斜面を有するテーパ部を備えることが挙げられる。
【0023】
再配置部の超電導導体層が常電導端末金具と接触する箇所が常電導端末金具の外周面であると、超電導導体層を構成する超電導線材の再配置作業が行い易い。また、テーパ部を設けることで、巻回部から再配置部への移行箇所において、超電導線材に対して過度の曲げが加わることを抑制できる。
【0024】
本発明の一形態として、上記常電導端末金具の一端側は、上記再配置部の超電導導体層を構成する超電導線材の一部が挿入される挿入穴と、上記再配置部の超電導導体層を構成する超電導線材の残部が上記常電導端末金具の外周面に沿って配置されるように、上記一端側から他端側に向けて径が大きくなる傾斜面を有するテーパ部とを備えることが挙げられる。
【0025】
再配置部の超電導導体層を構成する超電導線材の一部を上記挿入穴に挿入し、超電導線材の残部を上記テーパ部に沿って配置することによって、流れ込み距離の異なりを低減、或いはなくすことができる。例えば、巻回部の超電導導体層が4層である場合、内側の層から順に第1層、第2層、第3層、第4層とすると、再配置部の超電導導体層は、第1層と第2層を再配置して新第1層とし、第3層と第4層を再配置して新第2層として配置する多層構造が挙げられる。新第1層を上記挿入穴に挿入し、新第2層を上記テーパ部に沿って配置する。そうすることで、新第1層の超電導導体層が常電導端末金具と接触する接触長と、新第2層の超電導導体層が常電導端末金具と接触する接触長とをほぼ同じにすることができる。よって、両者の流れ込み距離を同じにすることができ、各超電導導体層の電流のばらつきを低減することができる。その結果、端末接続構造における電力損失の低減を図ることができる。他に、再配置部の超電導導体層が単層である場合、その超電導導体層を構成する超電導線材の一部を上記挿入穴に挿入し、超電導線材の残部を上記テーパ部に配置することも挙げられる。
【0026】
本発明の一形態として、上記常電導端末金具は、上記再配置部の超電導導体層との接触箇所において、上記再配置部の超電導導体層の形状に対応して階段状の縦断面形状を有することが挙げられる。
【0027】
再配置部の超電導導体層を上記挿入穴に挿入する場合、挿入穴の内部にその超電導導体層の形状に対応して階段状の縦断面形状を有することで、超電導導体層を常電導端末金具に対して実質的に隙間なく接触させることができる。例えば、再配置部の超電導導体層が多層であり最内層の超電導導体層の長さが最も長い場合、挿入穴の内周面が上記階段状の縦断面形状を有していないと、最内層の超電導導体層の外側は常電導端末金具と接触することができない。よって、特に、再配置部の超電導導体層が多層構造の場合、その超電導導体層の形状に対応して階段状に縦断面形状を形成することが好ましい。一方、再配置部の超電導導体層を上記テーパ部に沿って配置する場合も、テーパ部にその超電導導体層の形状に対応して階段状の縦断面形状を有することで、超電導導体層を常電導端末金具に対して実質的に隙間なく接触させることができる。外側の超電導導体層が内側の超電導導体層よりも長い場合、テーパ部が超電導導体層の形状に対応しているので再配置部の超電導線材をテーパ部に配置し易い。階段状のテーパ部に超電導導体層を沿って配置すれば、常電導端末金具の外周面から再配置部の最外層の超電導導体層にかけて段差を生じず平坦面になっているので、配置した超電導導体層を構成する超電導線材、特に最外層の超電導線材の剥離を防止することができる。
【0028】
本発明の一形態として、上記常電導端末金具は、上記常電導電力機器と接続される本体部と、この本体部に対して着脱可能な整列保持部とを備え、この整列保持部の外周面に上記再配置部の超電導線材が保持されることが挙げられる。
【0029】
常電導電力機器と接続される本体部とは別に整列保持部を設けることで、整列保持部を個別に扱うことができるので、挿入穴の外部で超電導線材の再配置作業することができ、この作業が行い易い。また、再配置部の超電導導体層を整列保持部に保持して挿入穴に挿入することができるので、挿入穴内で超電導線材がばらつくことを防止できる。
【0030】
本発明の一形態として、上記整列保持部は、上記再配置部の超電導導体層との接触箇所において、上記再配置部の超電導導体層の形状に対応して階段状の縦断面形状を有することが挙げられる。
【0031】
再配置部の超電導導体層を上記挿入穴に挿入する場合、整列保持部にその超電導導体層の形状に対応して階段状の縦断面形状を有することで、再配置部の超電導導体層が多層であり最内層の超電導導体層の長さが最も短い場合でも、各超電導導体層を常電導端末金具に対して実質的に隙間なく接触させることができる。また、最内層の超電導導体層の長さが最も長い場合、再配置部の超電導導体層を上記階段状の縦断面形状に配置することで、その超電導導体層と整列保持部の外周を段差のない円筒面或いは円錐面にでき、本体部の内周面を段差状にする必要がない。
【発明の効果】
【0032】
本発明の超電導ケーブルの端末接続構造は、超電導導体層と常電導端末金具とを接続する際、多層構造である超電導層体層の層数を出来るだけ減らすことで、流れ込み距離の異なりを低減、或いはなくすことができる。その結果、端末接続構造(常電導端末金具)における電力損失の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1に係る端末接続構造の一部縦断面図である。
【図2】実施形態2に係る端末接続構造の一部縦断面図である。
【図3】実施形態3に係る端末接続構造の一部縦断面図である。
【図4】実施形態4に係る端末接続構造の一部縦断面図である。
【図5】実施形態5に係る端末接続構造の一部縦断面図である。
【図6】超電導ケーブルのカットモデルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明についての実施形態を図面に基づいて説明する。図面において同一符号は同一部材を示す。なお、図面において、各超電導導体層の厚みは説明上誇張して図示しており、実際の超電導導体層の厚みは0.1〜0.2μm程度である。また、常電導端末金具の厚みは1.0cm程度であり、フォーマ外径は約19mm(通常、10〜20mm程度)である。実施形態で説明するケーブルコア100(超電導ケーブルC)の構造は、図6を用いて説明したものと同様であり、超電導導体層102の端部における積層数が各実施形態で異なる。
【0035】
<実施形態1>
本発明の実施形態1に係る超電導ケーブルの端末接続構造J1について、図1に基づいて説明する。この端末接続構造J1は、複数の超電導線材を巻回させて形成した4層の超電導導体層を有するケーブルコアと、この超電導導体層と常電導ケーブルなどの常電導電力機器(図示せず)とを接続するための常電導端末金具F1とを備える。以下、端末接続構造J1の各構成をより詳細に説明する。
【0036】
[超電導導体層]
超電導導体層は、その超電導導体層が常電導端末金具F1と接触する直前の巻回部2と、超電導導体層が常電導端末金具F1と接触する再配置部3とを備える。巻回部2は、ケーブルコアの超電導導体層102を構成する超電導線材自体からなって、その超電導線材は超電導導体層102と同じ配列である。そのため、巻回部2の内外径はケーブルコアの超電導導体層102のそれと共通である。一方、再配置部3は、巻回部2の超電導線材につながる線材を、その線材の端部側で配列し直した箇所である。再配置部3の内外径はケーブルコアの超電導導体層の内外径よりも大きい。巻回部2では超電導導体層は4層であり、再配置部3では超電導導体層は2層である。巻回部2の超電導導体層を内側の層から順に第1層121、第2層122、第3層123、第4層124とすると、再配置部3の超電導導体層は、第1層121と第2層122とを再配置した新第1層131と、第3層123と第4層124とを再配置した新第2層132となる。再配置部3の新第1層131は、巻回部2の第1層121と第2層122とがケーブルコアの周方向に並列されており、再配置部3の新第2層132は、巻回部2の第3層123と第4層124とがケーブルコアの周方向に並列された構成となっている。このように、巻回部2で4層であった超電導導体層を再配置部3では2層の超電導導体層に層数を減らしている。そして、再配置部3の各超電導導体層の先端領域が常電導端末金具F1と接触するように、新第2層132の超電導導体層の長さは新第1層131の超電導導体層の長さよりも短い。
【0037】
巻回部2の超電導導体層が4層であり、再配置部3の超電導導体層を2層に再配置することで、異なる流れ込み距離を有する超電導導体層の層数を減らすことができる。ここで流れ込み距離とは、ケーブルコアの軸方向に沿って最も長い長さの超電導導体層の端部を基準にして、各層の超電導導体層の端部までの距離のことをいう。例えば、巻回部2の超電導導体層が4層であり、この超電導導体層をそのまま4層で常電導端末金具F1と接続する場合、超電導導体層の先端領域を内側の層から順に段剥ぎして、ケーブルコアの軸方向に階段状に各層を露出させる。このとき、第1層の超電導導体層の長さが一番長く、第4層の超電導導体層の長さが一番短い。第1層の超電導導体層の端部から第2層の超電導導体層の端部までの距離a、第1層の超電導導体層の端部から第3層の超電導導体層の端部までの距離b、第1層の超電導導体層の端部から第4層の超電導導体層の端部までの距離cとすると、a<b<cとなる。よって、各流れ込み距離が異なるので、例えば、常電導端末金具F1から各超電導導体層に流れる電流値にばらつきが生じてしまう。特に、距離aと距離cとの距離差が大きく、この流れ込み距離差に伴う第1層と第4層との電流値のばらつきが顕著になる。この異なる流れ込み距離を有する超電導導体層の層数を減らすことによって、流れる電流値が異なる超電導導体層の層数を減らすことができる。
【0038】
そして、再配置部3の超電導導体層を構成する各層の超電導線材の端部を実質的に揃える。この「実質的に揃える」とは、ケーブルコアの軸方向に沿って、最長の長さの超電導線材と最短の長さの超電導線材との距離差が10mm以下、より好ましくは5mm以下、特に好ましくは3mm以下とすることをいう。勿論、上記距離差の全くないことが最良である。
【0039】
[常電導端末金具]
常電導端末金具F1は、超電導導体層と常電導ケーブルなどの常電導電力機器(図示せず)とを接続するためのものであり、一端側に、再配置部3の超電導導体層が挿入される挿入穴10を備える。そして、再配置部3の超電導導体層を上記挿入穴10に挿入し易いように、常電導端末金具F1は、常電導電力機器と接続される本体部F1aと、この本体部F1aに対して着脱可能な整列保持部F1bとを備える。
【0040】
(本体部)
本体部F1aは、銅やアルミニウムといった常電導材料からなる。本体部F1aは略円筒状であり、一端側に開口した第1穴11を備える。この第1穴11に、ケーブルコアの端部を剥いで露出させたフォーマ101を挿入する。また、この第1穴11の外側に、後述する整列保持部F1bを挿入する第2穴12を第1穴11と連続して形成する。更に、この第2穴12の外側に、上記再配置部3の超電導導体層を挿入する挿入穴10を第2穴12と連続して形成する。つまり、これら3つの穴は繋がっており、一端側から見れば一つの穴として見える。第1穴11の横断面形状は円状である。第2穴12の横断面形状は、第1穴11の外周を第2穴12の内周とし、第1穴11と同軸で第1穴11の外周径よりも若干大きい外径のリング状である。挿入穴10の横断面形状は、第2穴12の外周を挿入穴10の内周とし、第1穴11と同軸で第2穴12の外周径よりも若干大きい外径のリング状である。これら3つの穴の深さ(ケーブルコアの軸方向の長さ)は、第1穴11が一番深く、次に第2穴12、挿入穴10が一番浅くなっている。挿入穴10の深さは、再配置部3の超電導導体層と常電導端末金具F1とを接続するのに十分である深さであればよい。そして、第2穴12の深さは、挿入穴10の深さと同じ、もしくは若干深いことが好ましい。本体部F1aと超電導導体層とが接触する箇所(接合部4)において、本体部F1aの開口側内周面は上記再配置部3の超電導導体層の形状に対応して階段状の縦断面形状を有する。再配置部3の超電導導体層は、新第1層131の超電導導体層の長さが新第2層132の超電導導体層の長さよりも長いので、本体部F1aの開口側内周面は、一端側から他端側に向かって内径が一段分小さくなっている縦断面形状となる。また、巻回部2の第1層121と第2層122とを再配置して再配置部3の新第1層131としたので、再配置部3の超電導導体層の最内層(新第1層131)の内径が巻回部2の超電導導体層の最内層(第1層121)の内径よりも大きくなっている。しかし、通常、常電導端末金具F1は超電導導体層102と同等の電流容量を確保する必要上、その導体層102の径よりも相当程度大きい。そのため、本発明の構成を採用しても、常電導端末金具F1は従来のそれと比較して過剰に大きくはならない。特に、従来の端末構造では、常電導端末金具における厚み方向の内周側に超電導導体層を寄せて配置していたが、本発明端末構造では、常電導端末金具F1の厚み方向の中間位置又は外周側に超電導導体層を寄せて配置するため、常電導端末金具F1の太さを従来のそれと同等の太さとすることも期待できる。
【0041】
また、本体部F1aは、その外周面から突出された取出部30、他端側に形成された固定部40、及び取出部30と固定部40との間に位置する圧縮部50とを備える。取出部30は、平板状の常電導材料からなり、本体部F1aの外周面において挿入穴10の深さ位置から他端側に隣接するように取り付け、本体部F1aと一体に溶接又は銀ロー付けにて接合する。この取出部30は、常電導電力機器(例えば、常電導ケーブル)に接続された常電導導体と接続する。固定部40は、他端側から所定の長さに亘って雄ねじが形成されている。この固定部40は、例えば、端末接続構造(常電導端末金具F1)を収納する終端接続箱の内壁に連結部(図示せず)を介してねじ止めする。圧縮部50は、本体部F1aの外径が大きくなっている部分であり、外側から図示しない圧縮機で圧縮して、第1穴11内のフォーマ101と本体部F1aとを圧縮接合する。さらに、本体部F1aの外周面の上方には、超電導導体層を挿入する挿入穴10に向かって、超電導導体層の各層に対応する位置に挿入穴10まで貫通する貫通孔61、62を形成する。これら貫通孔61、62の利用方法については後述する。
【0042】
(整列保持部)
整列保持部F1bは、各超電導線材がばらつかないように保持するためのものであり、その外周面に上記再配置部3の各超電導導体層を構成する各超電導線材を沿って配置する。整列保持部F1bは、略円柱状の一端側において、その一端側から他端側に向かって径が緩やかに大きくなる傾斜面を有しており、軸方向中心にフォーマ101が貫通する孔を備える。この孔の内径は、上記第1穴11の外径と同等である。ここでは、整列保持部F1bは上記本体部F1aに設けた第2穴12に嵌る形状となっている。整列保持部F1bは、上記円柱状に一体成形してもよいし、半円柱状でフォーマ101の外周から取り付けられる分割片を組み合わせて上記円柱状に成形してもよい。一体成形した場合は、フォーマ101の一端から整列保持部F1bを嵌め込みスライドさせてフォーマ101上の所定位置に配置し、分割成形した場合は、フォーマ101の外周から各分割片を取り付けてフォーマ101上の所定位置に配置する。整列保持部F1bの材料としては、後述する接続手順において半田付け接合を行う際に、その半田の融点(約300℃)に対応でき、冷媒(例、液体窒素(LN2))の使用に対しても耐えることができるものがよい。その材料としては金属が挙げられ、より好ましくは本体部F1aの材料と同じ金属であり、特に好ましくは銅である。整列保持部F1bが金属であると、後述する半田付け作業が行い易い。また、本体部F1aと同じ材料であることで、本体部F1aとの熱収縮の相違を低減できる。交流送電を行う場合には、整列保持部F1bの材料として、絶縁性材料も挙げられる。絶縁性材料で形成することで、交流損失の増加を抑制できる。絶縁性材料からなる整列保持部F1bとして、例えば、FRPの成形体や、PPLP(住友電気工業株式会社の登録商標)の巻回部材などが挙げられる。
【0043】
超電導端末金具F1は、上記本体部F1aと整列保持部F1bとが一体成形されたものであっても構わない。
【0044】
(接合部)
上記再配置部3の超電導導体層と上記常電導端末金具F1とを後述する半田付け接合によって接合部4で接続する。この接合部4は、各超電導線材と挿入穴10の隙間及び各超電導線材同士の隙間に充填される半田により構成される。この半田は、各超電導線材の電気特性を低下させないよう、低温半田を用いることが好ましい。この接合部4において、超電導導体層と常電導端末金具F1とが半田付け接合によって接続されることで、超電導導体層と常電導ケーブルなどの常電導電力機器(図示せず)とが電気的に接続される。接合部4は、溶融半田を上記隙間に充填するか、予め上記隙間に塗布しておいたクリーム半田をリフローすることなどで形成できる。
【0045】
[接続手順]
次に、上記端末接続構造J1の接続手順を説明する。この説明において、超電導ケーブルの各構成部材は図6を参照する。まず、ケーブルコアの端部における絶縁層103までを剥いで超電導導体層102を露出する。図6における超電導導体層102と、図1における巻回部2の超電導導体層とは同じである。超電導導体層の端部から所定長さに亘って、その各超電導導体層の各超電導線材の巻きを解き、更にフォーマ101を露出する。そのフォーマ101の端部に保持部F1bの軸方向中心に設けられた孔を嵌め、フォーマ101の外周に整列保持部F1bを配置する。この整列保持部F1bの上に上記再配置部3の超電導導体層を配置する。
【0046】
再配置部3の超電導導体層の再配置方法は、まず、上記巻回部2の超電導導体層の第1層121と第2層122の各超電導線材の端部を実質的に揃え、第3層123と第4層124の各超電導線材の端部を実質的に揃える。更に、第3層123と第4層124とは、第1層121(第2層122)の長さよりも短く切断する。次に、整列保持部F1bの外周に、第1層121の各超電導線材の間隔を広げて配置し、その各間隔に第2層122の各超電導線材を入れ込んで並べて新第1層131とする。この新第1層131の超電導導体層の外周に、第3層123の各超電導線材の間隔を広げて配置し、その各間隔に第4層124の各超電導線材を入れ込んで並べて新第2層132とする。この状態で、各層の各超電導線材を半田又はクリーム半田で仮止めしたり、導電テープを貼って仮止めしたりすることで、各超電導線材をばらけることなく保持する。なお、導電テープによる仮止めを行った場合は、後述する半田付け接合完了後に導電テープを取り外してもよい。この再配置部3の超電導導体層を保持した整列保持部F1bはフォーマ101に配置されているので、本体部F1aに形成された第1穴11をフォーマ101に嵌めこみ、本体部F1aを整列保持部F1b側にスライドすることで、整列保持部F1bの外側に本体部F1aを嵌め込むことができる。そうすることで、再配置部3の超電導導体層を挿入穴10に挿入することになり、この各層を構成する各超電導線材の外周面が、挿入穴10を形成する本体部F1aの内周面に接触する。
【0047】
挿入したフォーマ101は、圧縮部50を圧縮することで本体部F1aに圧縮接合される。次いで、本体部F1aを加熱した状態で、貫通孔61,62の少なくとも一つに溶かした半田を流し込み、接合部4において、挿入した再配置部3の各超電導導体層を半田付け接合する。このとき、整列保持部F1bも本体部F1aに半田付け接合される。必要に応じて、整列保持部F1b上で再配置部3の超電導導体層が配置されていない箇所において、本体部F1aを貫通して整列保持部F1bに達するボルト(図示せず)などで、本体部F1aと整列保持部F1bとを機械的に固定することで、両者が組み合わさり常電導端末金具F1となる。半田付け方法として、例えば、一方の貫通孔62を半田の流し込み孔として利用し、もう一方の貫通孔61を空気抜き孔として利用することができる。このとき、本体部F1aの一端側において、挿入した再配置部3の超電導導体層と挿入穴10の開口との間に形成された隙間を半田付け接合して埋めておくと、この隙間から半田が流出することを防止できる。また、隙間を残しておくことで、接合部4が半田で埋まると、その半田がこの隙間から出てくるので、接合部4における半田付け接合の完了の目安にすることもできる。
【0048】
最後に、端末接続構造J1の形成が完了した後、取出部30に常電導導体(図示せず)を接続すると共に、固定部40を終端接続箱の内壁に取り付け部材(図示せず)を介してねじ止めする。取出部30に常電導導体を接続するときは、例えば、常電導導体の端子金具(図示せず)を取出部30に重ね、この端子金具と取出部30のボルト孔31をボルト(図示せず)で貫通し、ボルト先端にナットをネジ結合させることで、端子金具を取出部30に固定することが挙げられる。
【0049】
[効果]
上記構成を備える超電導ケーブルの端末接続構造J1によれば、巻回部2の超電導導体層の層数でそのまま常電導端末金具F1と接続するのではなく、層数を少しでも減らすことで、流れ込み距離の異なりを低減することができる。よって、各超電導導体層の電流のばらつきを低減できることが期待できる。その結果、端末接続構造(常電導端末金具)における電力損失の低減を図ることができる。
【0050】
<実施形態2>
本発明の実施形態2に係る超電導ケーブルの端末接続構造J2について、図2に基づいて説明する。実施形態2では、常電導端末金具F2と接触する再配置部3の超電導導体層が単層である点が実施形態1と異なる。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は実施形態1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
[超電導導体層]
超電導導体層は、巻回部2では2層であり、再配置部3では1層(単層)である。巻回部2の超電導導体層を内側の層から順に第1層121、第2層122とすると、再配置部3の超電導導体層は、第1層と第2層とを再配置した新第1層131となる。再配置部3の新第1層131は、巻回部2の第1層121と第2層122とがケーブルコアの周方向に並列されている。再配置部3の超電導導体層は単層であるので、常電導端末金具F2と接触する超電導導体層を構成する各超電導線材の端部は、実質的に揃った状態にできる。つまり、異なる流れ込み距離を有する超電導導体層をなくすことができる。
【0052】
[常電導端末金具]
常電導端末金具F2は、常電導電力機器と接続される本体部F2aと、この本体部F2aに対して着脱可能な整列保持部F2bとを備えるが、本体部F2aの開口部内周面は、段差のない縦断面形状となっている。
【0053】
[効果]
上記構成を備える超電導ケーブルの端末接続構造J2によれば、再配置部3の超電導導体層を単層としているので、流れ込み距離の異なりをなくすことができる。その結果、端末接続構造(常電導端末金具)における電力損失の低減を図ることができる。
【0054】
<実施形態3>
本発明の実施形態3に係る超電導ケーブルの端末接続構造J3について、図3に基づいて説明する。実施形態3では、常電導端末金具F3の形状と、再配置部3の超電導導体層と常電導端末金具F3との接続形態が実施形態1と異なる。再配置部3の超電導導体層は、常電導端末金具F3に各超電導導体層を挿入する挿入穴を設けて挿入するのではなく、常電導端末金具F3の外周面に各超電導線材を沿って配置する。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は実施形態1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
[超電導導体層]
超電導導体層は、巻回部2では4層であり、再配置部3では2層である。巻回部2の超電導導体層を内側の層から順に第1層121、第2層122、第3層123、第4層124とすると、再配置部3の超電導導体層は、第1層121と第2層122を再配置した新第1層131と、第3層123と第4層124を再配置した新第2層132となる。再配置部3の新第1層131は、巻回部2の第1層121と第2層122とがケーブルコアの周方向に並列されており、再配置部3の新第2層132は、巻回部2の第3層123と第4層124とがケーブルコアの周方向に並列された構成となっている。そして、再配置部3の各超電導導体層の先端領域が常電導端末金具F3と接触するように、新第2層132の超電導導体層の長さは新第1層131の超電導導体層の長さよりも長い。また、再配置部3の各層の超電導線材の端部は実質的に揃っている。
【0056】
[常電導端末金具]
常電導端末金具F3は、銅やアルミニウムといった常電導材料からなる。常電導端末金具F3は略円筒状であり、一端側に開口した第1穴11を備える。この第1穴11に、ケーブルコアの端部を剥いで露出させたフォーマ101を挿入する。実施形態3の特徴とするところは、常電導端末金具F3の外周面に、一端側から他端側に向けて径が大きくなる傾斜面を有するテーパ部20を備える点にある。
【0057】
(テーパ部)
テーパ部20は、再配置部3の超電導導体層を構成する各超電導線材を沿って配置するために形成する。再配置部3の超電導導体層は、巻回部2の第1層121と第2層122とを再配置しているので、最内層(新第1層131)の内径は巻回部2の超電導導体層の最内層(第1層121)の内径よりも大きくなっている。テーパ部20は、この再配置部3の超電導導体層に対応して一端側から他端側に向けて径が大きくなる傾斜面とすることが好ましい。傾斜面の角度は、巻回部2から再配置部3に至る超電導線材に過度の屈曲が生じない程度の大きさを選択すれば良い。傾斜面の長さは、再配置部3の超電導導体層と常電導端末金具F3とを接続するのに十分である長さであればよい。このテーパ部20には、テーパ部20と超電導導体層とが接触する箇所(接合部4)において、上記再配置部3の超電導導体層の形状に対応して階段状の縦断面形状を有する。再配置部3の超電導導体層は、新第2層132の超電導導体層の長さが新第1層131の超電導導体層の長さよりも長いので、テーパ部20は、一端側から他端側に向かって二段階の階段状の縦断面形状となる。
【0058】
常電導端末金具F3の他の構成(取出部30、固定部40、圧縮部50)に関しては、実施形態1における本体部F1aと同様である。実施形態1で設けていた常電導端末金具F3の内部に半田を流し込むための貫通孔は、実施形態3においては設けていない。
【0059】
(接合部)
上記再配置部3の超電導導体層と上記常電導端末金具F3とを後述する半田付け接合によって接合部4で接続する。この接合部4は、各超電導線材とテーパ部20との隙間及び各超電導線材同士の隙間に充填される半田により構成される。
【0060】
[接続手順]
まず、常電導端末接続金具F3に形成された第1穴11をフォーマ101に嵌めこみ、圧縮部50を圧縮することで、挿入したフォーマ101は常電導端末金具F3に圧縮接合される。次いで、再配置部3の超電導導体層の再配置を行う。再配置部3の超電導導体層の再配置方法は、まず、上記巻回部2の超電導導体層の第1層121と第2層122の各超電導線材の端部を実質的に揃え、第3層123と第4層124の各超電導線材の端部を実質的に揃える。更に、第1層121と第2層122とは、第3層123(第4層124)の長さよりも短く切断する。上記テーパ部20の表面に、クリーム半田をあらかじめ塗布しておく。次に、テーパ部20の表面上に、第1層121の各超電導線材の間隔を広げて配置し、その各間隔に第2層122の各超電導線材を入れ込んで並べて新第1層131とする。この新第1層131の超電導導体層の外周に、第3層123の各超電導線材の間隔を広げて配置し、その各間隔に第4層124の各超電導線材を入れ込んで並べて新第2層132とする。配置した各層の超電導線材を、外周から保護部材(図示せず)で保護することによって、露出された各超電導線材を保護することができ、各超電導線材がばらつくのを防ぐこともできる。そして、この超電導導体層の外周に熱源を配置して、外部から加熱することによってクリーム半田を溶かして、接合部4において、再配置部3の超電導導体層を常電導端末金具F3と半田付け接合する。
【0061】
最後に、端末接続構造J3の形成が完了した後、取出部30に常電導導体(図示せず)を接続すると共に、固定部40を終端接続箱の内壁に取り付け部材(図示せず)を介してねじ止めする。取出部30への常電導導体の接続方法などは、実施形態1と同様である。
【0062】
[効果]
上記構成を備える超電導ケーブルの端末接続構造J3によれば、再配置部3の超電導線材をテーパ部20の外周面に再配置できるため、この再配置作業が行い易い。また、テーパ部20を設けることで、巻回部2から再配置部3への移行箇所において、超電導線材に対して過度の曲げが加わることを抑制できる。テーパ部20が階段状の縦断面形状を有することで、その階段状のテーパ部20に超電導導体層を沿って配置するので、常電導端末金具F3の外周面から再配置部3の最外層の超電導導体層にかけて段差を生じず平坦面になっているので、配置した超電導導体層を構成する超電導線材、特に最外層の超電導線材の剥離を防止することができる。
【0063】
<実施形態4>
本発明の実施形態4に係る超電導ケーブルの端末接続構造J4について、図4に基づいて説明する。実施形態4では、常電導端末金具F4と接触する再配置部3の超電導導体層が単層である点が実施形態3と異なる。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は実施形態3の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
[超電導導体層]
超電導導体層は、巻回部2では2層であり、再配置部3では1層(単層)である。巻回部2の超電導導体層を内側の層から順に第1層121、第2層122とすると、再配置部3の超電導導体層は、第1層と第2層とを再配置した新第1層131となる。再配置部3の新第1層131は、巻回部2の第1層121と第2層122とがケーブルコアの周方向に並列されている。再配置部3の超電導導体層は単層であるので、常電導端末金具F2と接触する超電導導体層を構成する各超電導線材の端部は、実質的に揃った状態にできる。つまり、異なる流れ込み距離を有する超電導導体層をなくすことができる。
【0065】
[常電導端末金具]
常電導端末金具F4は、外周面に形成されたテーパ部20が一端側から他端側に向かって一段階の縦断面形状を有する。この縦断面形状に上記再配置部3の超電導導体層を沿って配置する。
【0066】
[効果]
上記構成を備える超電導ケーブルの端末接続構造J4によれば、再配置部3の超電導導体層を単層としているので、流れ込み距離の異なりをなくすことができる。その結果、端末接続構造(常電導端末金具)における電力損失の低減を図ることができる。
【0067】
<実施形態5>
本発明の実施形態5に係る超電導ケーブルの端末接続構造J5について、図5に基づいて説明する。実施形態5では、常電導端末金具F5の形状と、再配置部3の超電導導体層と常電導端末金具F5との接続形態が実施形態1、実施形態3と異なる。実施形態5は、実施形態1の挿入穴10と実施形態3のテーパ部20とを両方備えたものである。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は実施形態1、実施形態3との構成と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
[超電導導体層]
超電導導体層は、巻回部2では4層であり、再配置部3では2層である。巻回部2の超電導導体層を内側の層から順に第1層121、第2層122、第3層123、第4層124とすると、再配置部3の超電導導体層は、第1層121と第2層122を再配置した新第1層131と、第3層123と第4層124を再配置した新第2層132となる。再配置部3の新第1層131は、巻回部2の第1層121と第2層122とがケーブルコアの周方向に並列されており、再配置部3の新第2層132は、巻回部2の第3層123と第4層124とがケーブルコアの周方向に並列された構成となっている。そして、新第1層131の超電導導体層の長さと新第2層132の超電導導体層の長さとは同じである。また、再配置部3の各超電導線材の端部は実質的に揃っている。
【0069】
[常電導端末金具]
常電導端末金具F5は、常電導電力機器と接続される本体部F5aと、この本体部F5aに対して着脱可能な整列保持部F5bとを備える。本体部F5aの一端側は、再配置部3の超電導導体層を構成する超電導線材の一部が挿入される挿入穴10を備える。また、本体部F5aの上記一端側の外周面は、上記超電導線材の残部がその外周面に沿って配置されるように、上記一端側から他端側に向けて径が大きくなる傾斜面を有するテーパ部20を備える。
【0070】
(本体部)
本体部F5aは、銅やアルミニウムといった常電導材料からなる。本体部F5aは、略円筒状であり、一端側に開口した第1穴11を備える。この第1穴11に、ケーブルコアの端部から剥いで露出させたフォーマ101を挿入する。また、この第1穴11の外側に、後述する整列保持部F5bを挿入する第2穴12を第1穴11と連続して形成する。更に、この第2穴12の外側に、上記再配置部3の超電導導体層を構成する超電導線材の一部を挿入する挿入穴10を第2穴12と連続して形成する。つまり、これら3つの穴は繋がっており、一端側から見れば一つの穴として見える。第1穴11と第2穴12の形状やサイズについては、実施形態1と同様である。挿入穴10については、挿入する超電導線材が並列して挿入できるサイズである。また、本体部F5aの開口部内周面は、段差のない縦断面形状となっている。
【0071】
そして、本体部F5aの上記一端側の外周面に、再配置部3の超電導導体層を構成する超電導線材の残部を沿って配置するためにテーパ部20を備える。テーパ部20は、配置する超電導導体層に対応して一端側から他端側に向けて径が大きくなる傾斜面とすることが好ましい。傾斜面の長さは、配置する超電導導体層と本体部F5aとを接続するのに十分である長さであればよい。また、テーパ部20は、一端側から他端側に向かって一段階の縦断面形状を有する。
【0072】
本体部F5aの他の構成(取出部30、固定部40、圧縮部50)に関しては、実施形態1における本体部F1aと同様である。常電導端末金具F5の内部に半田を流し込むための貫通孔(図示せず)は、再配置部3の新第2層132に配置する超電導線材に影響がないようにテーパ部20に形成する。
【0073】
(整列保持部)
整列保持部F5bは、外周面に上記再配置部3の各超電導導体層を構成する各超電導線材の一部を沿って配置し、各超電導線材がばらつかないように保持するためのものである。整列保持部F5bの形状やサイズについては、実施形態1と同様である。
【0074】
(接合部)
上記再配置部3の超電導導体層と上記常電導端末金具F5とを後述する半田付け接合によって接合部4で接続する。この接合部4は、本体部F5a内においては、各超電導線材と挿入穴10の隙間及び各超電導線材同士の隙間に充填される半田により構成され、本体部F5aの外周面においては、各超電導線材とテーパ部20との隙間及び各超電導線材同士の隙間に充填される半田により構成される。
【0075】
[接合手順]
再配置部3の超電導導体層の再配置方法は、初めに、上記巻回部2の各超電導導体層(第1層121、第2層122、第3層123、第4層124)の各超電導線材の長さと端部を実質的に揃える。
【0076】
まず、再配置部3の新第1層131の超電導導体層を挿入穴10内に配置する。フォーマ101の端部に整列保持部F5bの軸方向中心に設けられた穴を嵌め、フォーマ101の外周に整列保持部F5bを配置する。この整列保持部F5bの外周に、第1層121の各超電導線材の間隔を広げて配置し、その各間隔に第2層122の各超電導線材を入れ込んで並べて新第1層131とする。この状態で、新第1層131の各超電導線材を半田で仮止めしたり、導電テープを貼って仮止めしたりすることで、各超電導線材をばらけることなく保持する。本体部F5aに形成された第1穴11をフォーマ101の外周に嵌めこみ、本体部F5aを整列保持部F5b側にスライドすることで、整列保持部F5bの外側に本体部F5aを嵌め込むことができる。そうすることで、新第1層131の超電導線材を挿入穴10に挿入することになる。そして、挿入したフォーマ101は、圧縮部50を圧縮することで本体部F5aに圧縮接合される。
【0077】
次に、再配置部3の新第2層132の超電導導体層をテーパ部20に配置する。テーパ部20の表面に、クリーム半田をあらかじめ塗布しておく。その上に、第3層123の各超電導線材の間隔を広げて配置し、その各間隔に第4層124の各超電導線材を入れ込んで並べて新第2層132とする。配置した新第2層132の超電導線材を、外周から保護部材(図示せず)で保護することによって、露出された各超電導線材を保護することができ、各超電導線材がばらつくのを防ぐこともできる。
【0078】
そして、本体部F5aを加熱した状態で、テーパ部20から挿入穴10に至る貫通孔(図示せず)に半田を流し込み、本体部F5a内の接合部4において、挿入穴10に挿入した新第1層131の超電導線材を本体部F5aに半田付け接合する。その後、本体部F5aを再度加熱した状態で、本体部F5aの外周面の接合部4において、テーパ部20に配置した新第2層132の超電導線材を本体部F5aに半田付け接合する。この場合、挿入穴10に挿入した新第1層131の超電導導体層の半田付けに用いる半田と、テーパ部20に配置した新第2層132の超電導導体層の半田付けに用いた半田の溶融温度を異なるものとすることが好ましい。例えば、新第1層131の超電導導体層の半田付けには溶融温度の高い方の半田を、新第2層132の超電導導体層の半田付けには溶融温度の低い方の半田を用いることで、新第2層132の超電導導体層を半田付けする際に新第1層131の超電導導体層を半田付けした半田が再度溶融することを防止できる。また、テーパ部20と挿入穴10の双方に同じクリーム半田を塗布しておくことで、一度の加熱でクリーム半田を溶かして、接合部4において、再配置部3の超電導導体層を常電導端末金具F5と半田付け接合できる。
【0079】
最後に、端末接続構造J5の形成が完了した後、取出部30に常電導導体(図示せず)を接続すると共に、固定部40を終端接続箱の内壁に取り付け部材(図示せず)を介してねじ止めする。取出部30への常電導導体の接続方法などは、実施形態1と同様である。
【0080】
[効果]
上記構成を備える超電導ケーブルの端末接続構造J5によれば、新第1層131の超電導導体層が常電導端末金具F5と接触する接触長と、新第2層132の超電導導体層が常電導端末金具F5と接触する接触長とを実質的に同じにすることができる。よって、両者の流れ込み距離を同じにすることができ、各超電導導体層の電流のばらつきを低減することが期待できる。その結果、端末接続構造(常電導端末金具)における電力損失の低減を図ることができる。
【0081】
<実施形態6>
上記実施形態1,3,5では、再配置部3の超電導導体層が多層である場合、巻回部2の超電導導体層で同一層の超電導線材は、再配置部3でも同じ超電導導体層に再配置する形態を説明した。その他、巻回部2の超電導導体層で同一層の超電導線材を、再配置部3で異なる超電導導体層に分けて再配置することができる。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は実施形態1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
[超電導導体層]
超電導導体層は、巻回部では3層であり、再配置部では2層である。巻回部の超電導導体層を内側の層から順に第1層、第2層、第3層とすると、再配置部の超電導導体層は、第2層の超電導導体層を構成する超電導線材の一部を第1層と再配置した新第1層と、上記第2層の超電導線材の残部を第3層と再配置した新第2層とする。再配置部の新第1層は、巻回部の第1層と第2層の超電導線材の一部とがケーブルコアの周方向に並列されており、再配置部の新第2層は、巻回部の第3層と第2層の超電導線材とがケーブルコアの周方向に並列された構成となっている。再配置部の超電導導体層を構成する各層の超電導線材の端部は実質的に揃える。
【0083】
例えば、第1層、第2層、第3層を構成する超電導線材の本数をそれぞれ13本、14本、15本とする。第2層の超電導線材を8本と6本に分けてそれぞれ第1層、第2層と再配置すると、新第1層は21本(13本+8本)となり、新第2層も21本(15本+6本)となる。一方、第1層と第2層を再配置して、第3層をそのまま配置すると、新第1層は27層(13本+14本)となり、新第2層は15本となる。前者の場合、新第1層の径と新第2層の径をほぼ同程度にすることができ、再配置部の超電導導体層全体の径を小さくすることができる。一方、後者の場合、新第1層の径が第2層の径に比べて非常に大きくなり、新第2層は各超電導線材同士の間隔が広がった状態で配置されることになってしまう。
【0084】
[効果]
巻回部の超電導導体層で同一層の超電導線材を、再配置部で異なる超電導導体層に分けて再配置することによって、再配置部の超電導導体層の径を小さくすることができる。
【0085】
なお、上述した実施形態6は、再配置部の超電導導体層が3層以上の多層構造の場合に適用することができる。そのとき、巻回部のどの超電導導体層の超電導線材を再配置部の異なる超電導導体層に分けてもよいし、複数の超電導導体層の超電導線材を再配置部の異なる超電導導体層に分けても構わない。
【0086】
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、本発明の範囲は上述した構成に限定されるものではない。再配置部の超電導導体層の層数は、異なる流れ込み距離を有する超電導導体層の許容層数と、再配置によって大きくなる超電導導体層の径の大きさとの兼ね合いによって決定すればよい。また、再配置によって超電導導体層の径が大きくなることを防ぐために、再配置部の超電導導体層と常電導端末金具との接触箇所を横断面形状が円状ではなく、凹凸を有したトロコイド歯車状に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の超電導ケーブルの端末接続構造は、超電導ケーブルの分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
J1,J2,J3,J4,J5 超電導ケーブルの端末接続構造
F1,F2,F3,F4,F5 常電導端末金具
F1a,F2a,F5a 本体部 F1b,F2b,F5b 整列保持部
2 巻回部
121 第1層 122 第2層 123 第3層 124 第4層
3 再配置部
131 新第1層 132 新第2層
4 接合部
10 挿入穴 11 第1穴 12 第2穴
20 テーパ部
30 取出部 31 ボルト孔
40 固定部
50 圧縮部
61,62 貫通孔
C 超電導ケーブル
100 ケーブルコア 110 超電導線材
101 フォーマ 102 超電導導体層
103 絶縁層 104 超電導シールド層 105 常電導保護層
200 断熱管 201 内管 202 外管 203 断熱材 204 防食層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超電導線材を巻回させて形成したn層の超電導導体層を有するケーブルコアと、前記超電導導体層と常電導電力機器とを接続するための常電導端末金具とを備える超電導ケーブルの端末接続構造であって、
前記超電導導体層が前記常電導端末金具と接触する直前箇所で、前記超電導導体層がn層である巻回部と、
前記超電導導体層が前記常電導端末金具と接触する箇所で、前記超電導線材の巻きが解かれてn-1層以下に再配置され、最内層の内径が前記巻回部の超電導導体層の最内層の内径よりも大きく、各層の超電導線材の端部が実質的に揃えられた再配置部と、
前記再配置部の超電導導体層と前記常電導端末金具とが半田付け接合により接続された接合部とを備えることを特徴とする超電導ケーブルの端末接続構造。
【請求項2】
前記再配置部の超電導導体層が多層であり、
各超電導導体層の先端領域が前記常電導端末金具と接触するように、内周又は外周の一方側の層から他方側の層に向かって各超電導導体層が段階的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの端末接続構造。
【請求項3】
前記巻回部の超電導導体層で同一層の超電導線材が、前記再配置部で異なる超電導導体層に分けて再配置されることを特徴とする請求項2に記載の超電導ケーブルの端末接続構造。
【請求項4】
前記再配置部の超電導導体層が単層であることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの端末接続構造。
【請求項5】
前記常電導端末金具の一端側は、前記再配置部の超電導導体層が挿入される挿入穴を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの端末接続構造。
【請求項6】
前記常電導端末金具の一端側は、前記再配置部の超電導導体層が前記常電導端末金具の外周面に沿って配置されるように、前記一端側から他端側に向けて径が大きくなる傾斜面を有するテーパ部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの端末接続構造。
【請求項7】
前記常電導端末金具の一端側は、
前記再配置部の超電導導体層を構成する超電導線材の一部が挿入される挿入穴と、
前記再配置部の超電導導体層を構成する超電導線材の残部が前記常電導端末金具の外周面に沿って配置されるように、前記一端側から他端側に向けて径が大きくなる傾斜面を有するテーパ部とを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの端末接続構造。
【請求項8】
前記常電導端末金具は、前記再配置部の超電導導体層との接触箇所において、前記再配置部の超電導導体層の形状に対応して階段状の縦断面形状を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの端末接続構造。
【請求項9】
前記常電導端末金具は、
前記常電導電力機器と接続される本体部と、
この本体部に対して着脱可能な整列保持部とを備え、
この整列保持部の外周面に前記再配置部の超電導線材が保持されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの端末接続構造。
【請求項10】
前記整列保持部は、前記再配置部の超電導導体層との接触箇所において、前記再配置部の超電導導体層の形状に対応して階段状の縦断面形状を有することを特徴とする請求項9に記載の超電導ケーブルの端末接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−199960(P2011−199960A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61590(P2010−61590)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】