説明

超電導ケーブル

【課題】超電導テープの厚みを薄くしても必要な機械的強度を確保できる超電導複合線材によって整った円形状に形成される超電導層を備えた超電導ケーブルを提供する。
【解決手段】フォーマFの外周に、超電導複合線材Sが巻回されて形成される超電導層22,24が、絶縁層23を介して、複数層配設される超電導ケーブル20にあって、超電導複合線材Sは、補強基板32上に1本又は互いに並列に配列された複数本の超電導テープ31を一体化して形成され、かつ、内側に配設される超電導層22を形成する超電導複合線材Sの幅bが、外側に配設される超電導層24を形成する超電導複合線材Sの幅bよりも狭く設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長距離大容量の送電用として使用される超電導ケーブルに関し、特に、厚みを薄くした超電導テープにより形成される超電導層を備えた超電導ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導テープとして、Bi-Sr-Ca-Cu-Oテープ線材に代表されるBi系超電導テープが実用化されつつある。このBi系超電導テープは、例えばBi2223相からなる複数本の超電導フィラメントを銀などの安定化材中に埋設した構造のテープ線材である。その断面は、例えば図4に示すように、Bi系酸化物超電導体からなる多数本の超電導フィラメント21bを銀材等からなる金属シース(金属安定化材)21aで覆ってテープ状に形成される。このBi系超電導テープ21により、例えば図5に示すようなケーブルコア9が形成される。即ち、ケーブルコア9は、Cuなどの常電導材料からなる素線を撚り合せた撚り線又は中空パイプ等で構成されるフォーマ1の外周に層間絶縁16を介して巻回される複数層のBi系超電導テープ21によって形成される超電導導体層2と、その外周に巻回されるクラフト紙やクラフト紙とポリオレフィンフィルムをラミネートした複合紙等からなる絶縁層3と、その外周に層間絶縁17を介して巻回される複数層のBi系超電導テープ21からなる超電導シールド層4と、その外周に層間絶縁17を介して巻回される外層18とで形成される。このようなケーブルコア9は、その軸方向に引張力を作用させた状態下で3本が強制的に撚り合わされて、例えば図6に示すように、内管6と外管7で形成される二重断熱管内に挿入され、内管6内に冷媒流通路5が形成される。外管7は防食層8によって覆われ、内管6と外管7の間は真空引きされて真空層とされる。このようにして、交流用の3心一括型の超電導ケーブル10が形成される。
【0003】
一方、次世代超電導テープとして、RE(希土類)系超電導薄膜(薄膜系)の開発が進められている(例えば特許文献1)。例えば図7に示すように、このRE系超電導薄膜11は、テープ状の金属補強板12上に順次中間層13、超電導薄膜14、保護層15を積層して形成される。具体例としては、例えば金属補強板12としてハステロイ(登録商標)、中間層13としてYSZ、超電導薄膜14としてY系123構造(YBa2Cu3Oy)薄膜、保護層15として銀が用いられている。通常、これら中間層13や超電導薄膜14はレーザ蒸着などにより金属補強板12の片面のみに形成される。このようなRE系超電導薄膜11は、厚みを薄く形成することができ、金属補強板12の存在によって引張力に対しては比較的に優れた強度を有している。このようなRE系超電導薄膜11を用いて3心一括型の超電導ケーブル10を形成する場合にもBi系超電導テープ21の場合と同様に構成される(図6参照)。
【特許文献1】特開2001-31418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図6に示すような3心一括型の超電導ケーブル10に交流電流を流すと、超電導テープにおける微小な損失により僅かな熱が発生するため、温度上昇を抑えるための冷却が必要となる。交流損失が大きいと熱の発生も大きくなるため、大型の冷凍機を用意しなければならず、経済性が著しく損なわれる。超電導ケーブルの場合、導体周方向に磁場が形成されるため、超電導層(超電導導体層又は超電導シールド層)を形成する超電導テープの厚さを薄くする程、交流損失を低減することができる。従って、交流損失を低減するためには、テープ状に形成された個々の超電導テープ(Bi系超電導テープ21又はRE系超電導薄膜11)の厚みをできるだけ薄くすることが望ましい。
【0005】
しかし、現状のBi系超電導テープ製造設備では、超電導テープの厚さを薄くすると幅も縮小せざるを得ない。個々の超電導テープの厚さと幅を縮小しすぎると、超電導層を形成するために必要な超電導テープの本数が増加するため、超電導テープを繰り出すリールが多数必要となり、既存の設備では製造ができなくなる。また、機械的な強度が低下して必要強度を確保できなくなったり、超電導テープの本数の増加によって巻回時に個々の超電導テープの間隔を適切に確保するのが困難になり、もつれや乗り上げが発生したりする等の製作段階における問題が発生する。また、上述のような超電導ケーブルを直流用として用いる場合、大容量化を図るために、超電導テープの本数を増やすと、交流用の場合と同様に製作段階での問題が発生する。このようなことから、これらの問題を解決するための対策が求められていた。
【0006】
一方、薄膜系(RE系超電導薄膜11)では、電子レーザ等によるスリット加工が可能であるため、超電導テープを形成する際に幅の調整が容易である。もともと超電導薄膜14は数ナノの薄さなので電気的ロス(交流損失)は少ない。従って、超電導ケーブルの超電導層を形成するに際しては、超電導テープの幅をどの程度に設定すればよいかが課題となる。この点に関しては、Bi系超電導テープ21の場合と同様に、幅を縮小しすぎると、超電導テープを繰り出すリールが多数必要となり、既存の設備で対処できなくなる。また、幅の縮小によって超電導テープの本数が増え過ぎると、その巻回工程で、もつれたり、乗り上げたりするようなトラブルが発生することも懸念される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされ、超電導テープの厚みを薄くしても必要な機械的強度を確保できる超電導複合線材によって形成される超電導層を備えた超電導ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の超電導ケーブルは、フォーマの外周に、超電導複合線材が巻回されて形成される超電導層が、絶縁層を介して、複数層配設される超電導ケーブルであって、
前記超電導複合線材は、補強基板上に1本又は互いに並列に配列された複数本の超電導テープを一体化して形成され、かつ、内側に配設される超電導層を形成する前記超電導複合線材の幅が、外側に配設される超電導層を形成する前記超電導複合線材の幅よりも狭く設定されることを特徴とする。
【0009】
超電導複合線材は、超電導テープを薄く形成しても補強基板によって、その強度が補強されるため、機械的強度を低下させることなく超電導テープの薄型化を達成することができる。また、複数本の超電導テープを一本化することができるので、超電導テープの薄型化を達成した上で超電導ケーブルの超電導層を形成するために必要な超電導複合線材の本数を少なくすることができる。従って、超電導ケーブルの製作段階における巻回工程で、超電導複合線材を繰り出すリールが少なくて済み、既存の設備に対応できるようになる。また、所要の機械的強度を確保できるため、製作段階における巻回工程で、超電導複合線材が破断したり、もつれたり、乗り上げたりするようなトラブルの発生を少なくすることができる。
【0010】
このような超電導複合線材を交流用の超電導ケーブルに使用する場合には、径の小さい超電導導体層を形成する超電導複合線材の幅が、径の大きい超電導シールド層を形成する超電導複合線材の幅よりも狭く設定されるので、超電導導体層が多角形化することなく、整った円形状に形成することができるため、交流損失を低減することができる。また、超電導シールド層では、超電導複合線材の幅を広くしても多角形化せず厚みを薄く形成できるので、同層を形成するために必要な超電導複合線材の本数を少なくして交流損失を低減することができる。一方、直流用として大容量化を図る場合、より少ない本数の超電導複合線材によって大容量化を達成できるため、巻回工程で、超電導複合線材が破断したり、もつれたり、乗り上げたりするようなトラブルの発生を少なくすることができる。尚、超電導層は、交流用の超電導ケーブルでは超電導導体層と超電導シールド層、直流用の超電導ケーブルでは内側超電導層と外側超電導層が該当する。
【0011】
前記外側に配設される超電導層を形成する前記超電導複合線材の超電導テープの本数が、前記内側に配設される超電導層を形成する前記超電導複合線材の超電導テープの本数よりも多く設定されるようにしてもよい。このようにすれば、径の小さい内側の超電導層を形成する超電導複合線材では、超電導テープの本数を少なくすることによって、超電導複合線材の幅を狭くして、超電導層を多角形化することなく、整った円形状に形成することができる。また、径の大きな外側の超電導層を形成する超電導複合線材では、超電導テープの本数を多くして、必要な超電導複合線材の本数を少なくすることができる。これにより、超電導ケーブルの製作段階における巻回工程で、超電導複合線材を繰り出すリールが少なくて済み、既存の設備に対応できるようになる。
【0012】
前記超電導複合線材の幅が、前記超電導複合線材によって形成する超電導層の径に略比例して設定されるようにしてもよい。このような超電導ケーブルを交流用として使用する場合には、内側の径の小さい超電導導体層を多角形化させることなく、整った円形状に形成することができるため、交流損失を低減することができる。また、超電導シールド層では、超電導複合線材の幅を広くしても厚みを薄く形成できるので、同層を形成するために必要な超電導複合線材の本数を少なくして交流損失を低減することができる。一方、直流用として大容量化を図る場合、より少ない本数の超電導複合線材によって大容量化を達成できるため、巻回工程で、超電導複合線材が破断したり、もつれたり、乗り上げたりするようなトラブルの発生を少なくすることができる。また、超電導複合線材の幅を、超電導層の径に略比例して設定すれば、内側に形成される超電導層に必要な超電導複合線材の本数と、外側に形成される超電導層に必要な超電導複合線材の本数と、を一致させることができるため、超電導ケーブルの製作段階にて、内側と外側の超電導層を形成する超電導複合線材の繰り出し用のボビン数を同数に設定できる利点がある。
【0013】
前記超電導テープは、テープ状に形成されたBi系超電導テープであるようにしてもよい。このBi系超電導テープは、例えばBi2223相からなる複数本の超電導フィラメントを銀などの安定化材中に埋設して薄膜状としたものを用いることができる。
【0014】
前記超電導テープは、テープ状に形成されたRE系超電導薄膜であるようにしてもよい。このRE系超電導薄膜は、テープ状の金属補強板上に順次中間層、超電導薄膜、保護層を積層して形成される。例えば金属補強板としてハステロイ(登録商標)、中間層としてYSZ、超電導薄膜としてY系123構造(YBa2Cu3Oy)薄膜、保護層として銀が用いられたもの等を挙げることができる。尚、ハステロイ等からなる金属補強板を補強基板として用いてもよい。
【0015】
前記超電導層は、超電導導体層と、その外側に配設される超電導シールド層と、を備えるようにしてもよい。このように交流用の超電導ケーブルを構成する場合、径の小さい超電導導体層には幅の狭い超電導複合線材を用いることによって、超電導導体層を、多角形化させることなく整った円形状に形成することができる。一方、径の大きい超電導シールド層には厚みを増加させることなく幅を広くした超電導複合線材を用いることによって、径方向に高い密度で巻装して超電導層を形成することができる。このような構成により、交流損失を少なくすることができる。また、超電導層を形成する超電導複合線材繰り出し用のボビン数を減らすことができる。
【0016】
前記超電導層は、内側超電導層と、その外側に配設される外側超電導層と、を備えるようにしてもよい。このように直流用の超電導ケーブルを構成して大容量化を図ろうとする場合には、より少ない本数の超電導複合線材によって大容量化を達成できるため、巻回工程で、超電導複合線材が破断したり、もつれたり、乗り上げたりするようなトラブルの発生を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の超電導ケーブルは、内側に配設される超電導層を形成する超電導複合線材の幅を、外側に配設される超電導層を形成する超電導複合線材の幅よりも狭く設定するので、内側の超電導層を多角形化させることなく整った円形状に形成することができるため、交流用として用いる場合、交流損失を低減することができる。また、径の大きい超電導シールド層には厚みを増加させることなく幅を広くした超電導複合線材を用いることによって、径方向に高い密度で巻装して超電導層を形成することができることによっても、交流損失を少なくすることができる。一方、直流用として大容量化を図る場合、より少ない本数の超電導複合線材によって大容量化を達成できるため、巻回工程で、超電導複合線材が破断したり、もつれたり、乗り上げたりするようなトラブルの発生を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態に係る超電導複合線材について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1(a)は交流用の超電導ケーブル20のケーブルコア29の断面図、(b)は、超電導導体層22を形成する超電導複合線材Sの断面図、(c)は、超電導シールド層24を形成する超電導複合線材Sの断面図、(d)は、超電導ケーブル20の断面図である。図2(a)は、超電導複合線材Sの一例を示す断面図、(b)は別の例を示す断面図である。図3(a)〜(c)は、超電導複合線材Sのその他の例を示す断面図である。この超電導ケーブル20は、まず、図1(d)に示すように、フォーマFを中心として、その外周に、クッション層Cと、超電導複合線材Sが巻回されて形成される超電導導体層22と、クラフト紙やクラフト紙とポリオレフィンフィルムをラミネートした複合紙等からなる絶縁層23と、超電導複合線材Sが巻回されて形成される超電導シールド層24と、を備えたケーブルコア29が形成される。そして、3本のケーブルコア29が互いに撚り合わされて内管26と外管27とで形成される二重断熱管内に挿入され、内管26内に冷媒流通路25が形成される。その外管27は防食層28によって覆われ、内管26と外管27の間は真空引きされて真空層とされる。
【0020】
このように構成される超電導ケーブル20にあって、その超電導導体層22と超電導シールド層24を形成する超電導複合線材S(S,S)は、例えば図2(a)(b)に示すように、補強基板32に超電導テープ31を一体化して形成される。図2(a)に示す例では、例えば1本のBi系超電導テープからなる超電導テープ31の両面に補強基板32,32を半田接合等によって一体化して構成される。また、図2(b)に示す例では、例えば互いに並列に配列された2本のBi系超電導テープからなる超電導テープ31,31の両面に補強基板32,32を半田接合等によって一体化して構成される。補強基板32は、例えば銅やその合金、ステンレス等等で形成することができる。このような補強基板32を用いることによって、所要の機械的強度(引張り強度及び曲げ強度)と充分な可撓性を備えた超電導複合線材Sを形成することができる。また、補強基板32の素材としては、このような導電性の金属材だけでなく、絶縁性と耐熱性に優れたポリイミドテープ等を用いることもできる。尚、超電導テープ31としてRE系超電導薄膜を用いる場合には、例えばハステロイ(登録商標)からなる金属補強板を所要厚さに設定して補強基板32として用いてもよい。
【0021】
このように構成される超電導複合線材Sは、超電導テープ31を薄く形成しても補強基板32によって、その強度が補強されるため、機械的強度を低下させることなく超電導テープ31の薄型化を達成することができる。また、複数本の超電導テープ31を一本化することができるので、超電導テープ31の薄型化を達成した上で超電導ケーブル20の超電導層(超電導導体層22及び超電導シールド層24)を形成するために必要な超電導複合線材Sの本数を少なくすることができる。従って、製作段階における巻回工程で、超電導複合線材Sを繰り出すリールが少なくて済み、既存の設備に対応できるようになる。また、所要の機械的強度を確保できるため、製作段階における巻回工程で、超電導複合線材Sが破断したり、もつれたり、乗り上げたりするようなトラブルの発生を少なくすることができる。そして、図2(a)(b)に示すように、超電導複合テープ31が補強基板32によって挟まれるため、超電導ケーブル20の製作段階等において超電導複合テープ31を保護することができる。尚、図示のように、補強基板32の幅は、超電導テープ31の全幅よりも若干大に設定すれば、超電導テープ31をより効果的に保護することができる。また、その補強基板32の外側端縁eを、面取り状に形成すれば、超電導導体層22の上に絶縁層23を形成する際に、絶縁テープが破損するのを回避することができる。
【0022】
そして、その超電導複合線材Sの幅b,bは、図1(b)(c)に示すように、超電導層22,24の径r,rに略比例した値に設定するのが好ましい。例えば超電導導体層22の半径rと超電導シールド層24の半径rの比率が1/2の場合、超電導複合線材S,Sの幅b,bの比率も1/2に設定する。尚、超電導複合線材S,Sの幅b,bが異なっても厚さtは同じである。この場合、超電導複合線材S,Sを構成する超電導テープ31の本数をn,nとすれば、2πr/n=2πr/n・・・(1)式が満たされるのが好ましい。従って、r=2rの場合、(1)式から、n=2nとなり、超電導導体層22を形成する超電導複合線材Sは、例えば図2(a)に示すような1本の超電導テープ31を補強基板32で補強した構成として、外側の超電導シールド層24を形成する超電導複合線材Sは、例えば図2(b)に示すような2本の超電導テープ31,31を補強基板32で補強した構成とすることができる。これにより、超電導導体層22と、超電導シールド層24とで、超電導複合線材Sの必要本数を同数にすることができるため、超電導ケーブル20の製作段階における超電導複合線材Sの巻回工程での作業性が良好になる。ちなみに、図2(a)(b)に示す超電導複合線材Sでは、例えば、超電導テープ31の幅2.6mm、厚さ0.18mm、超電導テープ31の幅=2.6mm、厚さ0.18mm、超電導複合線材Sの補強基板32の幅b=2.7mm、厚さt=20〜100μm、超電導複合線材Sの補強基板32の幅b=5.3mm、厚さ=20〜100μmに設定することができる。
【0023】
このように超電導複合線材Sの幅を選択することによって、内側の超電導導体層22を多角形化することなく整った円形状に形成することができ、交流損失を低減することができる。また、図2(b)に示すように、2本の超電導テープ31,31を一体化しても、超電導複合線材Sの厚みは増加することはないので、超電導シールド層24を形成するために必要な超電導複合線材Sの本数を少なくして交流損失を低減することができる。尚、超電導層22(24)が、多角形化すると、径方向に形成される磁場が拡大するため交流損失が増加する。一方、このような超電導複合線材Sで直流用の超電導ケーブル20を形成して大容量化を図る場合には、より少ない本数の超電導複合線材Sによって大容量化を達成できるため、その製作段階での超電導複合線材Sの巻回工程で、超電導複合線材Sが破断したり、もつれたり、乗り上げたりするようなトラブルの発生を少なくすることができる。尚、直流用の超電導ケーブル20では内側超電導層22と外側超電導層24が超電導層に該当する。
【0024】
超電導複合線材Sを構成する超電導テープ31の幅は、1.5〜4.5mmに設定することができ、1〜5本の超電導テープ31を補強基板32に一体化することができる。その補強基板32の幅は、2〜10mmに設定することができる。この程度の幅であれば、例えば銅やその合金、ステンレス等を素材として必要な機械的強度と充分な可撓性を確保することができる。また、これらの導電体を用いることによって、短絡電流が発生した場合には、補強基板32に短絡電流を流すことで、超電導テープ31を保護することができる。尚、補強基板32の幅が2mm未満になると、超電導複合線材Sが所要の機械的強度を確保するのが難しくなり、また、捩れやすくなる。10mmを超えると、超電導複合線材Sを巻回して超電導層を形成した際に、その外形が多角形化しやすくなり、特に、内側超電導層では、円形に近い形状に整えるのが難しくなる。
【0025】
超電導複合線材Sは、例えば図3(a)(b)に示すように、超電導テープ31の片面にのみ補強基板32を一体化させてもよい。このように、超電導テープ31を補強基板32の片面にのみ形成した超電導複合線材Sで、超電導層を形成する場合、超電導テープ31が形成されている側を外側にして巻回すれば、超電導ケーブルの接続部において、接続部材を超電導層に直接接続できるため、接続抵抗を低減できる利点がある。また、図3(b)(c)に示す例では、補強基板32に、超電導テープ31の幅方向への移動を抑制するための規制部32aを形成している。このような規制部32aは、例えば長手方向に所定間隔おきの突起状等に形成してもよく、長手方向に連続した突出状に形成してもよい。このような規制部32aを形成することによって、複数本の超電導テープ31を補強基板32に一体化する工程から、超電導層を形成するためにフォーマ(又は絶縁層)に超電導複合線材Sを巻回する工程、ケーブルコアの撚り合わせ工程、を経て使用段階に至る間において、超電導テープ31と補強基板32とが種々の外力や熱の影響を受けても、超電導テープ31を補強基板32に対して安定した整列状態に保持することができる。尚、図3(c)に示す例では、上下の補強基板32に規制部32aを形成しているが、片方の補強基板32のみに規制部32aを形成してもよい。尚、本発明は、実施の形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜、必要に応じて改良、変更等は自由である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の超電導ケーブルは、交流損失の低減化を図れるため、長距離大容量の交流送電用に好適に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルのケーブルコアの断面図、(b)は、超電導導体層を形成する超電導複合線材の断面図、(c)は、超電導シールド層を形成する超電導複合線材の断面図、(d)は、超電導ケーブルの断面図である。
【図2】(a)は、超電導複合線材の一例を示す断面図、(b)は、別の例を示す断面図である。
【図3】(a)は、超電導複合線材の他の例を示す断面図、(b)は、異なる例を示す断面図、(c)は、さらに異なる例を示す断面図である。
【図4】Bi系超電導テープの断面図である。
【図5】ケーブルコアの部分破断斜視図である。
【図6】3心一括型の超電導ケーブルの断面図である。
【図7】RE系超電導薄膜の部分破断斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 フォーマ 2 超電導層(超電導導体層) 3 絶縁層
4 超電導層(超電導シールド層) 5 冷媒流通路 6 内管 7 外管
8 防食層 9 ケーブルコア 10 超電導ケーブル
11 RE系超電導薄膜 12 金属補強板 13 中間層
14 超電導薄膜 15 保護層 16 層間絶縁 17 層間絶縁
18 外層 20 超電導ケーブル 21 Bi系超電導テープ
21a 金属シース 21b 超電導フィラメント
22 超電導層(超電導導体層) 23 絶縁層
24 超電導層(超電導シールド層) 25 冷媒流通路 26 内管
27 外管 28 防食層 29 ケーブルコア F フォーマ
S,S,S 超電導複合線材 e 外側端縁 C クッション層
31 超電導テープ 32 補強基板 32a 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマの外周に、超電導複合線材が巻回されて形成される超電導層が、絶縁層を介して、複数層配設される超電導ケーブルであって、
前記超電導複合線材は、補強基板上に1本又は互いに並列に配列された複数本の超電導テープを一体化して形成され、かつ、内側に配設される超電導層を形成する前記超電導複合線材の幅が、外側に配設される超電導層を形成する前記超電導複合線材の幅よりも狭く設定されることを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項2】
前記外側に配設される超電導層を形成する前記超電導複合線材の超電導テープの本数が、前記内側に配設される超電導層を形成する前記超電導複合線材の超電導テープの本数よりも多く設定されることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項3】
前記超電導複合線材の幅が、前記超電導複合線材によって形成される超電導層の径に略比例して設定されることを特徴とする請求項1又は2に超電導ケーブル。
【請求項4】
前記超電導テープは、Bi系超電導テープであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の超電導ケーブル。
【請求項5】
前記超電導テープは、テープ状に形成されたRE系超電導薄膜であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の超電導ケーブル。
【請求項6】
前記超電導層は、超電導導体層と、その外側に配設される超電導シールド層と、を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の超電導ケーブル。
【請求項7】
前記超電導層は、内側超電導層と、その外側に配設される外側超電導層と、を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の超電導ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−48792(P2009−48792A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211069(P2007−211069)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】