説明

超電導モータシステム

【課題】冷凍機を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータの運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることである。
【解決手段】超電導モータシステムは、収容容器14に収容する超電導モータ10と、超電導モータ10を冷却する冷凍機12と、制御部16とを備える。制御部16は、超電導モータ10の運転停止時において、超電導モータ10が予め設定された所定温度範囲内に維持されるように冷凍機12を間欠運転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導モータと、超電導モータを冷却する冷却装置と、超電導モータの運転停止時において、冷却装置の運転を制御する制御部とを備える超電導モータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車またはハイブリッド車両等のモータを搭載した電動車両が知られている。電気自動車は、モータを駆動源として車両の左右両側の左右車輪を駆動する。ハイブリッド車両は、モータと内燃機関とを備え、モータと内燃機関とのうち、少なくとも一方を主駆動源として、車両の左右両側の左右車輪を駆動する。
【0003】
また、このような電動車両に使用するモータとして、超電導モータを使用し、エネルギ使用量を低減することが考えられる。超電導モータは、コイルとして金属系超電導体や、酸化物高温超電導体等の超電導材料を用いることで、小電力で大きな磁場を発生でき、駆動力を大きくできる。
【0004】
このような超電導モータは、駆動時に駆動に伴う発熱、例えば、鉄損及びACロスと呼ばれる交流電流の通電による発熱や、超電導モータを筐体である収容容器内に固定するための構造材や外気などから熱侵入が発生する可能性がある。したがって、超電導状態を維持し続けるためには、超電導モータを冷却装置により冷却することが考えられる。
【0005】
一方、超電導モータの運転停止時においては、駆動による発熱はなく、超電導モータを断熱性を有する収容容器内に固定している構造材や外気などからの熱侵入のみを補償すればよい。このため、超電導モータを運転停止時においても、超電導モータを、予め設定した温度であり、運転可能な温度である「可動温度」に保つためには、冷却装置の冷却能力を小さくして運転することができる。なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−56839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、電動車両等、限られたエネルギ源しか有しない装置に超電導モータを使用する条件では、超電導モータと、冷却装置とを含む超電導モータシステム全体のエネルギを有効利用するためには、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることが好ましい。これに対して、超電導モータの運転停止時に冷却装置の運転を常に停止させることも考えられるが、この場合には、運転停止時に超電導モータの温度が常温等、高い温度になる可能性があり、運転再開時に超電導モータの始動に要する時間が過度に長くなる可能性がある。
【0008】
これに対して、特許文献1には、加熱機構または冷却機構により冷却される被温度制御体の温度が予め設定された第1設定温度となった状態が所定時間継続した場合に、加熱機構または冷却機構の運転を停止し、被温度制御体の温度が予め設定された第2設定温度となった状態が別の所定時間継続したことを条件として、加熱機構または冷却機構の運転を再開するよう制御する制御装置が記載されている。
【0009】
このような特許文献1に記載された構成は、飲料供給装置の冷却装置または加熱機構を有する装置であり、その目的は、冷却装置で生成される氷塊の氷厚を精度よく制御することである。特許文献1には、冷却装置を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータの運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることのできる手段は開示されていない。
【0010】
本発明の目的は、冷却装置を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータの運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明に係る超電導モータシステムは、筐体に収容された超電導モータと、超電導モータを冷却する冷却装置と、超電導モータの運転停止時において、超電導モータが予め設定された所定温度範囲内に維持されるように冷却装置を間欠運転させる制御部とを備えることを特徴とする超電導モータシステムである。
【0012】
また、第2の本発明に係る超電導モータシステムは、筐体に収容された超電導モータと、超電導モータを冷却する冷却装置と、超電導モータの運転停止時において、超電導モータが予め設定された所定温度範囲内に維持されるように冷却装置を間欠運転させることにより、超電導モータを運転停止時に予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度に保つ場合よりも冷却装置のエネルギ使用量を減少させる制御部とを備えることを特徴とする超電導モータシステムである。なお、「可動温度」は、「超電導モータを運転する場合の、超電導モータの臨界温度以下の予め定めた一定の温度であり、例えば77K以下の一定温度」を意味する。また、「可動温度」は、予め定めた設定にしたがって、超電導モータの運転状態や、運転環境に応じて、臨界温度以下のある範囲内で変動させる場合のそれぞれの設定温度も含む。なお、可動温度が変動しない場合には、上記の「最も高い可動温度」とは、可動温度そのものを意味する(以下、同様とする。)。
【0013】
また、本発明に係る超電導モータシステムにおいて、好ましくは、制御部は、所定温度範囲を、超電導モータが、予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度よりも平均温度が高くなるように設定している。
【0014】
また、本発明に係る超電導モータシステムにおいて、好ましくは、制御部は、所定温度範囲を、超電導モータが、予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度よりも下限温度が高くなるように設定している。
【0015】
また、本発明に係る超電導モータシステムにおいて、好ましくは、制御部は、所定温度範囲を、超電導モータの運転再開時に、超電導モータを予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度まで冷却するのに要する予め設定した冷却所要時間に対応して定まる上限温度を有するか、または冷却所要時間に対応して定まる温度範囲となるように設定している。
【0016】
また、本発明に係る超電導モータシステムにおいて、好ましくは、制御部は、所定温度範囲を、超電導モータが、予め設定した可動温度のうち、最も低い可動温度よりも平均温度が低くなるように設定している。なお、可動温度が変動しない場合には、上記の「最も低い可動温度」とは、可動温度そのものを意味する(以下、同様とする。)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る超電導モータシステムによれば、制御部が、超電導モータの運転停止時において、所定温度範囲内に維持されるように冷却装置を間欠運転させるので、冷却装置を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータの運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータの運転停止時のエネルギ使用量を減少させることができる。また、超電導モータの運転停止時の温度変化を小さい範囲に抑制でき、温度変化に伴う構成部材の膨張、収縮による繰り返し応力を緩和でき、耐久性を有効に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の超電導モータシステムの構成を、一部を断面にして示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる超電導モータの運転停止時における、冷凍機の制御状態と、モータ温度変化との1例を示す図である。
【図3】図1の構成において、超電導モータの熱侵入量の77K時に対する割合とモータ温度との関係を示す図である。
【図4】図1の構成において、同じ電力消費量での冷凍機の出力(冷凍出力)と温度との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる超電導モータの運転停止時における、冷凍機の制御状態と、モータ温度変化との別例を示す図である。
【図6】図1の構成において、超電導モータの8時間運転停止時の消費電力量と、超電導モータの運転再開時に可動温度までの冷却に要する時間(冷却所要時間)とを、超電導モータの運転停止時の制御温度との関係で示す図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる超電導モータの運転停止時における、冷凍機の制御状態と、モータ温度変化との別例の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図2は、本発明の第1の実施の形態を示している。
【0020】
図1に示すように、超電導モータシステムは、超電導モータ10と、冷却装置である冷凍機12と、収容容器14と、制御部16とを備える。超電導モータ10は、回転シャフト18に固定されたロータ20と、ロータ20に対し径方向外側に対向するように設けられたステータ22とを備える。ロータ20は、周方向複数個所に設けられた永久磁石24を有する。ステータ22は、鉄心等により構成するステータコア26の周方向複数個所に設けたティースに集中巻きまたは分布巻きで巻装された複数のステータコイル28を設けている。例えば、ステータコイル28は3相等の複数相とする。また、ステータコイル28は、金属系超電導体や、イットリウム系、ビスマス系、タリウム系、ネオジウム系等の酸化物高温超電導体等の超電導材料により構成する超電導コイルである。なお、これらの超電導コイルの材料や、ステータ及びロータ等の構成は、1例に過ぎず、本発明はこれらの材料及び構成に限定されるものではない。
【0021】
また、各相のステータコイル28に接続した電流導入線30に複数の電流導入端子32をそれぞれ接続している。超電導モータ10は、収容容器14内に固定しており、収容容器14の外側に、複数の電流導入端子32の先端部を導出させている。
【0022】
各電流導入端子32は、図示しないインバータに接続しており、制御部16は、インバータの駆動を制御することで、超電導モータ10の駆動状態を制御する。インバータに、図示しないバッテリが接続されている。制御部16は、CPU、メモリであるRAM、ROM等を有するマイクロコンピュータを含む。このような超電導モータ10は、超電導コイルを有する永久磁石付きモータとして作動する。
【0023】
また、超電導モータ10に冷凍機12に設けた吸熱部を接続することで、冷凍機12により超電導モータ10を冷却している。例えば、冷凍機12は、ピストン型の可変容量圧縮型である、スターリングクーラと呼ばれるもので、冷凍機駆動源34と、コールドヘッド36とを含み、コールドヘッド36の先端部(図1の左端部)を吸熱部として、熱伝導材38を介して、ステータ22の外面に押し付けている。
【0024】
冷凍機12は、例えばヘリウムガスを作動流体(冷媒)として使用するもので、冷凍機駆動源34内に設けたシリンダ内に駆動側ピストンと、コールドヘッド36内に設けたシリンダ内に、ディスプレーサと呼ばれる従動側ピストンとを、それぞれ移動可能に設けている。シリンダと従動側ピストンとにより囲まれる低温側の内部空間を膨張空間とし、冷凍機駆動源34内にシリンダと駆動側ピストンとで囲われた空間を圧縮空間とする。膨張空間及び圧縮空間は、シリンダ周囲またはディスプレーサ内に設けた蓄冷器により接続している。駆動側ピストンは、冷凍機駆動源34を構成するリニアモータの可動子と直接接続されており、リニアモータにより、駆動側ピストンは、シリンダ内で往復するように駆動される。リニアモータの駆動は、制御部16により制御される。駆動側ピストンが往復移動することに伴って、作動流体のヘリウムガスが圧力変動し、この圧力変動により、従動側ピストンも往復移動し、その際、膨張空間内で作動流体が膨張することで、コールドヘッド36の先端部(図1の左端部)が冷却される。
【0025】
なお、冷凍機12は、このような構成に限定するものではなく、コールドヘッド36の先端部に対応する部分等、超電導モータ10を冷却できるものであれば、種々の構成を採用できる。例えば、冷媒として液体窒素を使用する冷凍機も使用できる。このような冷凍機12及び超電導モータ10は、断熱性を有する収容容器14に収容されており、冷凍機12及び超電導モータ10を収容容器14外部に対し断熱状態に保っている。
【0026】
また、収容容器14の内面と超電導モータ10、コールドヘッド36及び熱伝導材38の外側との間とに、真空の空間40,42を設けている。また、ロータ20の外周面とステータ22の内周面との間に、真空の環状空間44を設けている。
【0027】
このような超電導モータシステムは、例えば電気自動車、ハイブリッド車両等の電動車両に搭載し、超電導モータ10を車両の駆動源として使用する。図1では、収容容器14を車台46の上面に載置し、車台46に収容容器14を固定している。
【0028】
また、制御部16は、超電導モータ10の運転停止時において、超電導モータ10が予め設定された所定温度範囲内に維持されるように冷凍機12を間欠運転させる機能を有する。すなわち、制御部16は、超電導モータ10が予め設定された所定温度範囲内に維持されるように冷凍機12を間欠運転させることにより、超電導モータ10を運転停止時に、予め設定した「可動温度」のうち、最も高い「可動温度」に保つ場合よりも冷凍機12のエネルギ使用量を総合的に減少させる。ここで、「可動温度」とは、「超電導モータを運転する場合の、超電導モータの臨界温度以下の予め定めた一定の温度であり、例えば77K以下の一定温度」を意味する。また、「可動温度」は、予め定めた設定にしたがって、超電導モータの運転状態や、運転環境に応じて、臨界温度以下のある範囲内で変動させる場合のそれぞれの設定温度も含む。上記の「可動温度」の表す意味は、本明細書全体及び特許請求の範囲全体で同じである。
【0029】
次に、図2を用いて、制御部16の超電導モータ10運転停止時の冷凍機12制御方法を説明する。なお、以下の説明では、図1の要素と同一の要素には同一の符号を付して説明する。図2に示すように、制御部16は、超電導モータ10の運転停止時において、冷凍機12のオンオフを繰り返すように、すなわち間欠運転を繰り返すように冷凍機12を制御する。すなわち、制御部16は、冷凍機12を予め設定したオフ時間冷凍機12を運転停止させることと、予め設定したオン時間冷凍機12を運転させることとを、交互に繰り返す。これにより図2に示すように、超電導モータ10の制御温度(モータ温度)が、運転停止時に予め設定した所定温度範囲(t1からt2)に維持されるようにしている。この場合、冷凍機12がオフされることでモータ温度が徐々に上昇し、冷凍機12がオンされることでモータ温度は徐々に低下する。冷凍機12は、例えば駆動側ピストンのストロークを変えることにより、冷凍機12の冷却能力を変えることができる。また、冷凍機12のオンオフ時間をそれぞれ適宜設定することで、モータ温度を所望の温度範囲に維持することができる。
【0030】
また、制御部16は、運転停止時に維持する超電導モータ10の所定温度範囲(t1からt2)の下限温度t1が、超電導モータ10の運転可能な温度である可動温度tcのうち、最も高い可動温度tcよりも高くなるように設定している。なお、図2、及び、後述する図5から図7の例では、可動温度tcが超電導モータ10の運転状態や運転環境にかかわらず一定である場合を示している。ただし、可動温度が超電導モータの運転状態や運転環境に応じて変動する場合には、下限温度t1が、予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度よりも高くなるように設定する。このため、上記所定温度範囲(t1からt2)の平均温度taは、可動温度tcよりも高く設定されている。また、可動温度tcが変動する場合には、平均温度taが、予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度よりも高くなるように設定される。したがって、超電導モータ10を運転停止時に可動温度tcに保つ場合よりも、冷凍機12のエネルギ使用量が総合的に減少する。このように超電導モータ10の温度を制御するために、超電導モータ10の温度を検知する図示しない温度センサを設け、その検知信号に基づいて制御部16は冷凍機12のオンオフを制御することができる。
【0031】
このような本実施の形態の超電導モータシステムによれば、制御部16が、超電導モータ10の運転停止時において、所定温度範囲内に維持されるように冷凍機12を間欠運転させるので、冷凍機12を含む超電導モータシステムにおいて、超電導モータ10の運転再開を早期に行え、かつ、超電導モータ10の運転停止時のエネルギ使用量を減少させることができる。すなわち、超電導モータ10の運転停止時に、冷凍機12の駆動を間欠的に停止できるので、冷凍機12を常に運転し続ける場合に比べて総合的にエネルギ使用量の減少を図れる。また、超電導モータ10の運転停止時に冷凍機12を常に停止させる場合には、超電導モータ10の温度が常温等、高温に戻る可能性があるが、本実施の形態によれば、超電導モータ10の運転停止時でも可動温度tcよりも高いが常温よりも低い温度範囲に維持でき、過度にモータ温度が高くなることを防止できる。このため、超電導モータ10を運転再開時に可動温度まで早期に冷却でき、運転再開を早期に行える。
【0032】
次に、超電導モータ10の運転停止時の制御温度を可動温度tcよりも高くすることにより、エネルギ使用量を減少できる理由を、図3、図4を用いて説明する。図3は、図1の構成において、超電導モータ10の熱侵入量の77K時に対する割合とモータ温度との関係を示す図である。ここで、「熱侵入量」は、収容容器14、ステータ22と収容容器14とを接続する図示しない部材等、常温とつながっている構造部材から超電導モータ10への熱侵入量である。図4は、図1の構成において、同じ電力消費量での冷凍機12の出力(冷凍出力)と温度との関係を示す図である。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態の構成によれば、超電導モータ10の運転停止時の温度が上昇するほど、構造部材から超電導モータ10への熱侵入量は減少する。また、超電導モータ10の温度が上昇するほど、冷凍機12の効率は高くなる。すなわち、図4に示すように、超電導モータ10の温度が上昇するほど、同じ電力消費量での冷凍機12の出力を高くでき、冷凍機12の効率を高くできる。逆に、超電導モータ10の温度が低くなる場合には、同じ電力消費量での冷凍機12の出力が低くなり、冷凍機12の効率が低くなる。このため、超電導モータ10の運転停止時の温度を可動温度tcのうち、最も高い可動温度tcよりも高く維持する本実施の形態では、エネルギ使用量を減少できる。
【0034】
また、本実施の形態では、超電導モータ10の運転停止時でも常温よりも低い温度範囲で維持されるので、常温まで温度が上昇するように温度上昇及び温度低下の変化を生じる場合と異なり、超電導モータ10の耐久性を有効に向上できる。すなわち、モータ10が運転停止時に常温まで温度上昇する場合、モータ10の温度変化が大きくなり、温度変化に伴う構成部材の大きな膨張、収縮を繰り返すので、大きな繰り返し応力が発生し、交差、隙間等を常温に戻ることを考慮して設計する必要がある。これに対して本実施の形態によれば、超電導モータ10が常温に戻ることを過度に考慮せずにすみ、耐久性を有効に向上できる。
【0035】
また、制御部16は、超電導モータ10を運転停止時に維持する所定温度範囲を、超電導モータ10の可動温度tcのうち、最も高い可動温度tcよりも平均温度taが高くなるように設定しているので、運転停止時のエネルギ使用量をより減少させることができる。しかも、この場合の所定温度範囲を、可動温度tcよりも下限温度t1が高くなるように設定しているので、運転停止時のエネルギ使用量をさらに減少させることができる。
【0036】
また、超電導モータ10の運転再開時には、許容できる運転再開に要する時間である「許容起動時間」が予め設定されている。例えば、許容起動時間を30分とした場合、例えば、冷却すべき対象が、約25kgの鉄に相当する熱容量を持っているとすれば、図4に示す性能を有する冷凍機12を設けた超電導モータシステムでは、超電導モータ10の運転停止時の制御温度の上限を130K等、70〜80Kの可動温度よりもかなり高い温度に設定できる。
【0037】
図5は、本実施の形態にかかる超電導モータ10の運転停止時における、冷凍機12の制御状態と、モータ温度変化との別例を示す図であり、図5の場合には、運転停止時の超電導モータ10の制御温度の下限t1´、上限t2´を、それぞれ図2の場合の下限t1、上限t2よりも高く設定している。このような図5に示す場合には、超電導モータ10のエネルギ使用量をさらに減少させることができる。
【0038】
また、図6は、図1の構成において、超電導モータ10の8時間運転停止時の消費電力量と、超電導モータ10の運転再開時に可動温度tcまでの冷却に要する時間(冷却所要時間)とを、超電導モータの運転停止時の制御温度との関係で示す図である。図6では、超電導モータ10の可動温度tcが77Kとなっている。図6で、実線aは、消費電力量を表し、一点鎖線bは、冷却所要時間を表している。
【0039】
図6に示すように、モータ制御温度が可動温度tcよりも高い温度で、より高くなるほど、超電導モータシステム全体の消費電力量は小さくなり、冷却所要時間は長くなる。したがって、冷却所要時間を1分や5分等、許容できる範囲で長く設定することで、電力消費量を可動温度tcに保つ場合の電力消費量よりも低い電力消費量に減少できる。
【0040】
このような説明から明らかなように、本実施の形態では、制御部16は、超電導モータ10を運転停止時に維持する所定温度範囲を、超電導モータ10の運転再開時に、超伝導電動モータ10を運転可能な可動温度まで冷却するのに要する、許容可能な予め設定した冷却所要時間に対応して定まる上限温度t2を有するか、またはこの冷却所要時間に対応して定まる所定の温度範囲となるように設定する構成を採用することもできる。また、可動温度が変動する場合には、制御部16は、超電導モータ10を運転停止時に維持する所定温度範囲を、超電導モータ10の運転再開時に、超伝導電動モータ10を運転可能な可動温度のうち、最も高い可動温度まで冷却するのに要する、許容可能な予め設定した冷却所要時間に対応して定まる上限温度を有するか、またはこの冷却所要時間に対応して定まる所定の温度範囲となるように設定する構成を採用することもできる。このような構成を採用した場合も、超電導モータ10を運転停止時に常に可動温度に保つ場合よりも電力消費量をより有効に減少できる。
【0041】
なお、制御部16は、超電導モータ10を運転停止時に維持する所定温度範囲を、超電導モータ10が、予め設定した可動温度tcのうち、最も低い可動温度tcよりも平均温度taが低くなるように設定する構成を採用することもできる。すなわち、図7は、本実施の形態にかかる超電導モータ10の運転停止時における、冷凍機12の制御状態と、モータ温度変化との別例の第2例を示す図である。図7の場合は、運転停止時の超電導モータ10の制御温度の上限t2を、可動温度tcよりも低く設定している。このため、制御部16は、超電導モータ10を運転停止時に維持する所定温度範囲を、可動温度tcよりも平均温度taが低くなるように設定している。
【0042】
このような図7に示す場合も、超電導モータ10の運転停止時に冷凍機12を間欠運転するため、冷凍機12の電力消費量を、冷凍機12を常に運転し続ける場合に比べて低くできる。また、この場合には、超電導モータ10の運転再開時に可動温度tcまで復帰させるのに要する冷却所要時間をより短くできる。
【0043】
なお、本実施の形態において、超電導モータ10の駆動を制御する制御部と、超電導モータ10の運転停止時において、超電導モータ10が予め設定された所定温度範囲内に維持されるように冷凍機12を間欠運転させる制御部とを、互いに別の制御部とすることもできる。
【符号の説明】
【0044】
10 超電導モータ、12 冷凍機、14 収容容器、16 制御部、18 回転シャフト、20 ロータ、22 ステータ、24 永久磁石、26 ステータコア、28 ステータコイル、30 電流導入線、32 電流導入端子、34 冷凍機駆動源、36 コールドヘッド、38 熱伝導材、40,42 空間、44 環状空間、46 車台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に収容された超電導モータと、
超電導モータを冷却する冷却装置と、
超電導モータの運転停止時において、超電導モータが予め設定された所定温度範囲内に維持されるように冷却装置を間欠運転させる制御部とを備えることを特徴とする超電導モータシステム。
【請求項2】
筐体に収容された超電導モータと、
超電導モータを冷却する冷却装置と、
超電導モータの運転停止時において、超電導モータが予め設定された所定温度範囲内に維持されるように冷却装置を間欠運転させることにより、超電導モータを運転停止時に予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度に保つ場合よりも冷却装置のエネルギ使用量を減少させる制御部とを備えることを特徴とする超電導モータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の超電導モータシステムにおいて、
制御部は、所定温度範囲を、超電導モータが、予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度よりも平均温度が高くなるように設定していることを特徴とする超電導モータシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の超電導モータシステムにおいて、
制御部は、所定温度範囲を、超電導モータが、予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度よりも下限温度が高くなるように設定していることを特徴とする超電導モータシステム。
【請求項5】
請求項2に記載の超電導モータシステムにおいて、
制御部は、所定温度範囲を、超電導モータの運転再開時に、超電導モータを予め設定した可動温度のうち、最も高い可動温度まで冷却するのに要する予め設定した冷却所要時間に対応して定まる上限温度を有するか、または冷却所要時間に対応して定まる温度範囲となるように設定していることを特徴とする超電導モータシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の超電導モータシステムにおいて、
制御部は、所定温度範囲を、超電導モータが、予め設定した可動温度のうち、最も低い可動温度よりも平均温度が低くなるように設定していることを特徴とする超電導モータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−244516(P2011−244516A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111891(P2010−111891)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】