説明

超電導機器

【課題】超電導コイルの冷却効率を良好に保つとともに、製造工程やメンテナンス工程の作業効率の向上を図ることが可能な超電導機器を提供する。
【解決手段】超電導モータ1は、超電導線材からなるコイルである超電導コイル14と、外槽15と、冷凍機20と、伝熱21と、支持部材24と、移動部材(ベローズ部23)とを備える。外槽15は上記超電導コイル14を内部に保持する。冷凍機20は、上記外槽15に接続され、超電導コイル14を冷却するためのものである。伝熱板21は、外槽15の内部に配置され、冷凍機20と接続される。支持部材24は、外槽15の内部に配置され、伝熱板21を支持するためのものである。移動部材(ベローズ部23)は、支持部材24を、伝熱板21に接触して伝熱板21を支持する位置と、伝熱板21から離れた位置との間で移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超電導機器に関し、より特定的には、超電導機器に含まれる超電導コイルを冷却するための冷凍機を備える超電導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導コイルを用いた超電導機器が知られている。このような超電導機器のうち、超電導線材により構成された超電導コイルの冷却に冷凍機を用いるものが提案されている(たとえば、特開2000−182821号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
特許文献1では、真空容器の内部に配置された超電導コイルを、冷凍機により直接冷却している。冷凍機には真空容器の内部に配置された低温ステージが接続されている。低温ステージは、伝熱部材を介して超電導コイルと接続されている。超電導コイルは、伝熱部材および低温ステージを介して接続された冷凍機により冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−182821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような超電導機器では、伝熱部材は低温ステージなどを介して冷凍機と接続されることでその位置が決定されている。これは、伝熱部材が他の部材と接触することで、外部から伝熱部材へ不要な熱が侵入することを防止するためであり、基本的に伝熱部材は真空容器とは直接的には接触しないようになっている。
【0006】
ここで、超電導機器の製造工程やメンテナンス時に、伝熱部材がまだ低温ステージ(あるいは冷凍機)と接続されていない場合には、伝熱部材の位置を固定するものがないため当該伝熱部材を支持するための支持ブロックなどを作業者が真空容器内に手作業で配置する必要があった。これは、伝熱部材として熱伝導性に優れた銅等からなる部材を用いると、当該伝熱部材の質量が大きくなるので、伝熱部材と超電導コイルとの接続部のみでは伝熱部材を支えることが難しいためである。一方、当該支持ブロックを恒常的に配置することは、伝熱部材や超電導コイルへ外部から熱が伝わる経路として支持ブロックが作用する恐れがあるため好ましくない。そのため、当該支持ブロックは冷凍機が所定の位置に設置され、当該冷凍機と伝熱部材とが接続される前に除去される必要がある。
【0007】
しかし、このような支持ブロックを手作業で真空容器内に配置したり、真空容器内から除去することは、極めて作業性が悪く、超電導機器の製造工程やメンテナンス工程の効率化を図る上で妨げとなっていた。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、超電導コイルの冷却効率を良好に保つとともに、製造工程やメンテナンス工程の作業効率の向上を図ることが可能な超電導機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った超電導機器は、超電導線材からなるコイルと、容器と、冷凍機と、伝熱部材と、支持部材と、移動部材とを備える。容器は上記コイルを内部に保持する。冷凍機は、上記容器に接続された、コイルを冷却するためのものである。伝熱部材は、容器の内部に配置され、冷凍機と接続される。支持部材は、容器の内部に配置され、伝熱部材を支持するためのものである。移動部材は、支持部材を、伝熱部材に接触して伝熱部材を支持する位置と、伝熱部材から離れた位置との間で移動させる。
【0010】
このようにすれば、冷凍機を容器から外したような場合(たとえば超電導機器の製造時やメンテナンス時)には、移動部材によって支持部材を所定の位置に移動させることで、支持部材によって伝熱部材を支持することができる。一方、冷凍機が容器に設置され、超電導機器が運転されるときには、移動部材によって支持部材を伝熱部材から離れた位置へ移動させておくことができるので、当該支持部材が伝熱部材への熱の伝達経路となることを防止できる。このため、超電導線材からなるコイル(超電導コイル)の冷却効率を良好に保つと同時に、超電導機器の製造工程やメンテナンス工程で冷凍機を伝熱部材から切り離したときにも、支持部材によって容易に伝熱部材を支持することができるので、作業効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、超電導コイルの冷却効率を良好に保つとともに、製造工程やメンテナンス工程の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による超電導機器としての超電導モータを示す断面模式図である。
【図2】図1に示した超電導モータの部分拡大断面模式図である。
【図3】図1および図2に示した本発明による超電導モータの実施の形態1の第1の変形例を示す部分拡大断面模式図である。
【図4】図1および図2に示した本発明による超電導モータの実施の形態1の第2の変形例を示す部分拡大断面模式図である。
【図5】図1および図2に示した本発明による超電導モータの実施の形態1の第3の変形例を示す断面模式図である。
【図6】本発明による超電導モータの実施の形態2を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0014】
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態1を説明する。
【0015】
図1を参照して、本発明による超電導モータ1は、ロータ5およびステータ30からなるモータ本体部と、当該モータ本体部に含まれる超電導コイル14を冷却するための冷却部とを備える。ロータ5は、ロータ5の回転の中心となるロータ軸3と、このロータ軸3に接続されたロータ本体部2とからなる。ロータ本体部2の形状は円柱状である。
【0016】
ステータ30は、ロータ5の周囲に配置された超電導コイル14と、この超電導コイル14に隣接して配置された鉄心13と、超電導コイル14および鉄心13の周囲を囲むように配置されたケース11とからなる。ケース11の端部側面にはロータ5のロータ軸3が軸受4を介して接続されている。軸受4が配置されることにより、ロータ5のロータ軸3はケース11に対して回転可能となっている。
【0017】
超電導コイル14の周囲には、超電導コイル14を冷却するための冷却媒体である液体窒素を保持する内槽16が形成されている。また、この内槽16の外周において、当該内槽16の表面と間隔を隔てて内槽16を覆うように外槽15が形成されている。鉄心13およびケース側壁12(ケース11の対向する一対の端部側面の間をつなぐ、曲面状のケース側壁12)には開口部31が形成されている。開口部31の幅は、図1に示すように超電導コイル14の幅より(内槽16または外槽15の幅より)小さくなっている。そして、内槽16および外槽15は、その幅が他の部分よりも細くなっているネック部18を介してステータ30の外側に引出されている。当該ネック部18は上記開口部31の内部に位置している。
【0018】
なお、図1に示した超電導モータ1においては、ステータ30のケース11に2つの開口部31が形成されている。開口部31は2つの超電導コイル14のそれぞれに対向する位置に配置されている。ステータ30の外側において、上記2つのネック部18は1つの外周側内槽および外周側外槽に接続された状態となっている。
【0019】
ステータ30の外側において、内槽16(外周側内槽)の壁面には、銅などの熱伝導性の良好な材料(たとえば金属)からなる伝熱板21が接続されている。伝熱板21は内槽16の壁面から外側に突出するように、真空断熱ギャップ17内に形成されている。伝熱板21には冷凍機20が接続されている。この冷凍機20は外槽15にその一部が固定された状態となっている。具体的には、外槽15に開口部が形成され、当該開口部に冷凍機20がはめ込まれた状態で固定されている。外槽の開口部と冷凍機20との接続部にはシール部材(図示せず)などが配置されている。当該シール部材は、外槽15と内槽16との間の間隙(真空断熱ギャップ17)を気密に保持する(たとえば真空状態に維持する)ために設けられている。
【0020】
ステータ30の外部では、冷却容器の外槽15と内槽16との間の真空断熱ギャップ17に位置する伝熱板21において、その鉛直方向の下側(下部表面)に突起部22が形成されている。そして、この突起部22と対向する位置には、外槽15に接続されたベローズ部23と、当該ベローズ部23の先端部に設置された支持部材24とが形成されている。支持部材24の伝熱板21と対向する側である上部表面には楔形部分25が形成されている。この楔形部分25では、伝熱板21に対向する側の表面が傾斜した傾斜面となっている。当該楔形部分25が伝熱板21の突起部22に接触した状態となった場合、楔形部分25を含む支持部材24により伝熱板21を支持することができる。
【0021】
また、図2に示すように、ベローズ部23はいわゆる蛇腹状の構造を有する管状部材となっており、矢印35に示す方向に伸縮可能となっている。ベローズ部23は、真空断熱ギャップ17(図1参照)の内部が真空にされる(気圧が下がる)場合に、突起部22から離れる方向(内槽16に近づく方向)に、図2の矢印35に沿って延びる。この結果、図2に示すように楔形部分25が突起部22に接触することで伝熱板21をこの支持部材24およびベローズ部23によって支持した状態から、図1に示すように突起部22と支持部材24の楔形部分25との間が離れた状態へと移行する。
【0022】
すなわち、図2に示すようにメンテナンスや製品の組立などで冷凍機20がまだ所定の位置に設置されていない場合には、ベローズ部23を収縮した状態とすることで、支持部材24の楔形部分25が伝熱板21の突起部22に接触した状態とすることができる。たとえば、ベローズ部23の蛇腹構造にばね特性を持たせることで、外槽15の外部と内部とで雰囲気圧力の差がない場合には、図2に示すように支持部材24が伝熱板21に接触するように、ベローズ部23を収縮した状態とすることができる。このようにすれば、このベローズ部23および(楔形部分25を含む)支持部材24によって伝熱板21および突起部22の重さを支えることができる。このため、伝熱板21の重さにより断熱容器の内槽16に大きな荷重が加わり当該内槽16が変形するといった問題の発生を防止できる。また、このような支持部材24が設置されているため、従来のように伝熱板21を支持するための台座などを作業者が別途手作業で外槽15の内部(真空断熱ギャップ17内)に配置するといった作業を行なう必要がない。
【0023】
そして、図1に示したように冷凍機20が所定の位置に設置されるとともに伝熱板21に接続され、真空断熱ギャップ17の内部の気圧を下げると、真空断熱ギャップ17と外槽15の外部との雰囲気圧力の差によりベローズ部23が図2の矢印35に示す方向において伸びる(内槽16側に伸びる)。この結果、突起部22から楔形部分25が離れる。つまり、伝熱板21(および突起部22)と支持部材24との接触状態を解消できる。この結果、伝熱板21が冷凍機20以外の部材と接触して、伝熱板21への(予期せぬ)熱の伝達経路が形成されることを防止できる。
【0024】
次に、図1および図2に示した超電導モータの第1の変形例を図3を参照しながら説明する。なお、図3は図2に対応する。
【0025】
図3に示すように、本発明による超電導モータの第1の変形例は基本的には図1および図2に示した超電導モータと同様の構造を備えるが、支持部材24の下部(支持部材24と外槽15の内壁との間)に補強部材である補助部材40が配置されている。補助部材40の上部表面41(支持部材24の底面が接触している表面)は、矢印35に示す支持部材24の移動方向に沿った方向に延びている。このため、補助部材40が支持部材24の移動の妨げになることはない。
【0026】
このようにすれば、図1および図2に示した超電導モータ1と同様の効果を得られるとともに、支持部材24を、ベローズ部23のみではなく補助部材40によっても支えることができる。この結果、伝熱板21をより確実に支持することができる。
【0027】
図4を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態1の第2の変形例を説明する。なお、図4は図2に対応する。
【0028】
図4に示すように、本発明による超電導モータの第2の変形例は、基本的には図3に示した超電導モータと同様の構造を備えるが、支持部材24を矢印35に示す方向に動かすための機構が異なっている。すなわち、図4に示した超電導モータにおいては、支持部材24にシャフト46を介して駆動部45が接続されている。駆動部45はエアシリンダや液圧シリンダあるいはモータなど任意の駆動機構を用いることができる。そして、この駆動部45により、シャフト46を介して支持部材24は矢印35に示す方向に移動可能となっている。この結果、図4に示したように支持部材24の楔形部分25が伝熱板21の突起部22に接触した状態(支持状態)と、図1に示すように突起部22から楔形部分25が離れた状態(運転状態)とを確実に切換えることができる。
【0029】
図5を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態1の第3の変形例を説明する。なお、図5は図1に対応する。
【0030】
図5を参照して、超電導モータ1は基本的には図1および図2に示した超電導モータ1と同様の構造を備えるが、超電導コイル14を冷却するための構造が異なっている。すなわち、図5に示した超電導モータ1においては、伝熱板21に接続された伝熱体50が内槽16の内部に配置されている。内槽16の内部において、伝熱体50はその一部が超電導コイル14にまで延在し、当該超電導コイル14と直接接触している。すなわち、伝熱体50は、ネック部18を介して超電導コイル14にまで伸びる突出部を含む。このように伝熱体50が超電導コイル14と伝熱板21とを直接的に接続することで、超電導コイル14をより確実に冷却することができる。また、このような伝熱体50が配置されることで、伝熱板21と伝熱体50との合計質量はより大きくなる。このため、メンテナンス時などにおいて伝熱板21および伝熱体50を支える支持部材24の必要性が高くなることから、本発明が特に有効である。また、このように伝熱体50が超電導コイル14に直接接続されている場合には、内槽16の内部には液体窒素19などの冷媒を充填しない構成としてもよい。
【0031】
なお、図5に示した超電導モータ1においては、支持部材24がベローズ部23のみによって支えられた構造を開示しているが、この支持部材24の構造および当該支持部材24の周囲の構造については、図3や図4に示したような構造を採用することもできる。
【0032】
(実施の形態2)
図6を参照して、本発明による超電導モータの実施の形態2を説明する。
【0033】
図6に示した超電導モータ1は、基本的には図1に示した超電導モータ1と同様の構造を備えるが、伝熱板21を支える部分の構造が異なっている。具体的には、図6に示した超電導モータ1においては、断熱容器の外槽15の上部表面側(冷凍機20が配置される開口部が形成された面)の壁面に接続するようにベローズ部23が形成されている。そして、このベローズ部23の先端には支持部材64が形成されている。この支持部材64は図6に示すように断面がほぼL字状であって、先端部64Aが伝熱板21の下部表面65と対向する位置にまで延びている。そして、ベローズ部23が伸縮することにより、支持部材64は矢印35に示す方向に移動可能になっている。すなわち、メンテナンス時や冷凍機20を取外した場合には、ベローズ部23を収縮させることにより支持部材64の先端部64Aが伝熱板21の下部表面65に接触して当該伝熱板21を支持することが可能になっている。一方、超電導モータ1の運転時など、真空断熱ギャップ17内部がたとえば真空状態(つまり外槽15の外部より圧力の低い状態)になった場合には、ベローズ部23がステータ30側に伸びて支持部材64が伝熱板21から離れる。このような構造によっても、図1および図2に示した超電導モータ1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
なお、図6に示した超電導モータ1においては、図4に示した構成と同様に、ベローズ部23の内部を介して駆動部45およびシャフト46を支持部材24に接続してもよい。
【0035】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0036】
この発明に従った超電導機器としての超電導モータ1は、超電導線材からなるコイルである超電導コイル14と、容器(外槽15)と、冷凍機20と、伝熱部材(図1に示す伝熱板21または図5に示す伝熱板21および伝熱体50)と、支持部材24、64と、移動部材(図1に示すベローズ部23または図4に示すベローズ部23、シャフト46および駆動部45)とを備える。容器(外槽15)は上記超電導コイル14を内部に保持する。冷凍機20は、上記容器(外槽15)に接続され、超電導コイル14を冷却するためのものである。伝熱部材(図1に示す伝熱板21または図5に示す伝熱板21および伝熱体50)は、容器の内部に配置され、冷凍機20と接続される。支持部材24、64は、容器(外槽15)の内部に配置され、伝熱部材(図1に示す伝熱板21または図5に示す伝熱板21および伝熱体50)を支持するためのものである。移動部材(図1に示すベローズ部23または図4に示すベローズ部23、シャフト46および駆動部45)は、支持部材24、64を、伝熱部材(図1に示す伝熱板21または図5に示す伝熱板21および伝熱体50)に接触して伝熱部材を支持する位置と、伝熱部材(図1に示す伝熱板21または図5に示す伝熱板21および伝熱体50)から離れた位置との間で移動させる。
【0037】
このようにすれば、冷凍機20を容器から外したような場合(たとえば超電導モータ1の製造時やメンテナンス時)には、移動部材であるベローズ部23や駆動部45などによって支持部材24、64を所定の位置に移動させることで、支持部材24によって伝熱板21などを支持することができる。一方、冷凍機20が外槽15に設置され、超電導モータ1が運転されるときには、移動部材であるベローズ部23や駆動部45によって支持部材24、64を伝熱板21から離れた位置へ移動させておくことができるので、当該支持部材24が伝熱板21への熱の伝達経路となることを防止できる。このため、超電導線材からなる超電導コイル14の冷却効率を良好に保つと同時に、超電導モータ1の製造工程やメンテナンス工程で冷凍機20を伝熱板21から切り離したときにも、支持部材24、64によって容易に伝熱板21を支持することができるので、作業効率を向上させることができる。
【0038】
上記超電導モータ1において、移動部材は、容器(外槽15)と支持部材24、64とを接続する、蛇腹構造を有する伸縮管であるベローズ部23を含んでいてもよい。ベローズ部23の内周部は外槽15の外部と接続されていてもよい。この場合、支持部材24、64により伝熱板21を支持した状態から、冷凍機20を外槽15および伝熱板21に接続して超電導モータ1を運転するときに、外槽15の内部(真空断熱ギャップ17)の雰囲気圧力を下げる(たとえば真空にする)ことにより、ベローズ部23が外槽15の外部の気圧に押されて伸張する。この結果、ベローズ部23が伸びることで支持部材24、64が移動され、結果的に図1や図6などに示すように支持部材24、64が伝熱板21から隔離された位置に移動する。つまり、超電導モータ1の運転のために外槽15の内部の雰囲気圧力を下げることで、自動的に支持部材24、64を伝熱板21から離すことができる。
【0039】
上記超電導モータ1において、伝熱部材(図1に示す伝熱板21または図5に示す伝熱板21および伝熱体50)を支持する位置は、支持部材24が伝熱板21の鉛直方向における下部表面(たとえば突起部22の表面)と接触して伝熱板21を支持する位置であってもよい。また、伝熱部材から離れた位置は、支持部材24が鉛直方向から見て、伝熱板21の下部表面において支持部材24と接触する部分(突起部22)から離れた位置であってもよい。すなわち、移動部材(図1に示すベローズ部23または図4に示すベローズ部23、シャフト46および駆動部45)は、図1〜図5に示すように、支持部材24を上記鉛直方向に対して交差する方向(たとえば図2の矢印35に沿った方向である水平方向)に沿って移動させるものであってもよい。
【0040】
なお、上述した伝熱部材から離れた位置は、支持部材24が鉛直方向から見て伝熱板21と重ならない位置であってもよい。具体的には、外槽15においてたとえば図2の紙面に垂直な方向にて対向する側壁から、図2の紙面に垂直な方向に突出するようにベローズ部23が形成され、当該ベローズ部23の先端に支持部材24が設置されたような構造を採用できる。この場合、支持部材24の移動方向は図2の紙面に垂直な方向となり、ベローズ部23が伸びたときに、支持部材24が伝熱板21の下から外側に移動した状態(鉛直方向から見て伝熱板21と重ならない状態)とすることができる。
【0041】
この場合、移動部材(図1に示すベローズ部23または図4に示すベローズ部23、シャフト46および駆動部45)により支持部材24が伝熱板21の下部表面(具体的には突起部22の表面)と接触する位置と、鉛直方向から見て伝熱板21の突起部22と重ならない位置との間で移動されるため、支持部材により伝熱部材を確実に支持できるとともに、超電導機器の運転時など伝熱部材から支持部材を隔離したい場合に確実に伝熱部材と支持部材とを隔離することができる。また、支持部材24の移動方向が伝熱板21の下部表面に沿った方向となっているので、支持部材24を移動させるために確保するべき空間の大きさを比較的小さくできる。このため、支持部材24を移動させるために外槽15のサイズが大きくなることを抑制できる。
【0042】
上記超電導モータ1において、伝熱板21の下部表面には凸部としての突起部22が形成されていてもよい。支持部材24、64が伝熱板21を支持する時には、当該突起部22に支持部材24(具体的には楔形部分25)あるいは支持部材64が接触するように支持部材24が配置されていてもよい。この場合、伝熱板21において支持部材24、64が接触する部分が突起部22に特定されることから、支持部材24、64の位置決めなどを容易に行なうことができる。
【0043】
上記超電導モータ1において、支持部材24は楔形部分25を含んでいてもよい。楔形部分25は、伝熱板21と対向する表面において、移動部材が支持部材24を移動させる移動方向(図2の矢印35で示す方向)と交差する方向に延びる傾斜面を有していてもよい。この場合、支持部材24が移動方向に沿って移動することで、楔形部分25の傾斜面と伝熱板21の突起部22との間を距離を変えることができる。つまり、支持部材24を移動方向(水平方向)に沿って移動させることにより、支持部材24の楔形部分25が伝熱板21の突起部22と接触した状態と、楔形部分25が伝熱板21から離れた状態とを切り替えることができる。
【0044】
上記超電導モータ1は、図3や図4に示すように、支持部材24が伝熱板21を支持する位置に配置されたときに、支持部材24と外槽15との間に位置し支持部材24を支える補強部材としての補助部材40をさらに備えていてもよい。この場合、伝熱板21を支持部材24が支えるときに、当該支持部材24をベローズ部23のみではなく上記補助部材40によっても支持することができる。このため、伝熱板21を支持部材24が支えるときに、支持部材24に接続されたベローズ部23に過度の応力が印加されてベローズ部23や外槽15が損傷する可能性を低減できる。
【0045】
上記超電導モータ1において、図6に示すように、伝熱板21を支持する位置は、支持部材64(具体的には先端部64A)が伝熱板21の鉛直方向における下部表面65と接触して伝熱板21を支持する位置であってもよい。伝熱板21から離れた位置は、支持部材64の一部(先端部64A)が鉛直方向から見て伝熱板21と重なった状態で、伝熱板21から離れた位置であってもよい。移動部材としてのベローズ部23は、支持部材64を鉛直方向に沿った方向において移動させるものであってもよい。支持部材64は、鉛直方向から見て移動部材(ベローズ部23)と重なる位置から伝熱板21の下部表面と対向する位置にまで延びる部分(先端部64A)を含んでいてもよい。
【0046】
この場合、支持部材64を図6の矢印35で示す鉛直方向に沿った方向において移動させることで、支持部材64が伝熱板21と接触した状態(支持部材64が伝熱板21を支持する状態)と、支持部材64が伝熱板21から離れた状態とを容易に切り替えることができる。また、支持部材64は基本的に鉛直方向から見て伝熱板21と重なる位置に配置されているので、もし伝熱板21が設計上の設置位置から(鉛直方向の下向きに)脱落するような事故が発生した場合であっても、支持部材64の一部(先端部64A)により伝熱板21を支持することができ、当該伝熱板21が外槽15に直接接触して当該外槽15が破損するといった可能性を低減できる。
【0047】
上記超電導モータ1において、たとえば図4に示すように、移動部材は、支持部材24、64に一方端部が接続された駆動軸としてのシャフト46と、当該シャフト46において一方端部と反対側に位置する他方端部と接続された駆動力発生部材としての駆動部45とを含んでいてもよい。駆動部45は、シャフト46を介して支持部材24、64を移動させてもよい。この場合、駆動部45を動作させることにより、支持部材24、64の位置を任意に制御することができる。このため、支持部材24、64により伝熱板21を支持する状態と支持部材24、64が伝熱板21から隔離された状態とを確実に切り替えることができる。
【0048】
上記超電導モータ1は、容器としての外槽15の内周側において、冷却媒体(液体窒素19)とともに超電導コイル14を内部に保持する内槽部材(内槽16)をさらに備えていてもよい。伝熱板21は内槽16に接続されていてもよい。内槽16は、熱伝導率の比較的高い材料(たとえば銅などの金属)により構成されていてもよい。この場合、伝熱板21および内槽16を介して超電導コイル14(内槽16の内部に液体窒素19が保持されている場合には当該液体窒素19も)冷凍機20により冷却することができる。
【0049】
上記超電導モータ1において、伝熱板21は、図5に示すように、超電導コイル14に直接接続されていてもよい。具体的には、伝熱板21と直接接続された伝熱体50が超電導コイル14に直接接続されていてもよい。あるいは、伝熱体50の一部が超電導コイル14の近傍にまで(たとえばネック部18にまで)伸びていてもよい。この場合、伝熱板21および伝熱体50を介して超電導コイル14を冷凍機20により直接的に冷却することができる。このため、超電導コイル14を液体窒素などの冷媒中に浸漬して当該冷媒を介して超電導コイル14を冷却する場合より、装置構成を簡略化できる。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明は、超電導コイルを冷却するための伝熱板を備える超電導機器に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0052】
1 超電導モータ、2 ロータ本体部、3 ロータ軸、4 軸受、5 ロータ、11 ケース、12 ケース側壁、13 鉄心、14 超電導コイル、15 外槽、16 内槽、17 真空断熱ギャップ、18 ネック部、19 液体窒素、20 冷凍機、21 伝熱板、22 突起部、23 ベローズ部、24,64 支持部材、25 楔形部分、30 ステータ、31 開口部、35 矢印、40 補助部材、41 上部表面、45 駆動部、46 シャフト、50 伝熱体、64A 先端部、65 下部表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材からなるコイルと、
前記コイルを内部に保持する容器と、
前記容器に接続された、前記コイルを冷却するための冷凍機と、
前記容器の内部に配置され、前記冷凍機と接続された伝熱部材と、
前記容器の内部に配置され、前記伝熱部材を支持するための支持部材と、
前記支持部材を、前記伝熱部材に接触して前記伝熱部材を支持する位置と、前記伝熱部材から離れた位置との間で移動させる移動部材とを備える、超電導機器。
【請求項2】
前記移動部材は、前記容器と前記支持部材とを接続する、蛇腹構造を有する伸縮管を含み、
前記伸縮管の内周部は前記容器の外部と接続されている、請求項1に記載の超電導機器。
【請求項3】
前記伝熱部材を支持する位置は、前記支持部材が前記伝熱部材の鉛直方向における下部表面と接触して前記伝熱部材を支持する位置であり、
前記伝熱部材から離れた位置は、前記支持部材が前記鉛直方向から見て、前記伝熱部材の下部表面において前記支持部材と接触する部分から離れた位置である、請求項1または2に記載の超電導機器。
【請求項4】
前記支持部材は楔形部分を含み、
前記楔形部分は、前記伝熱部材と対向する表面において、前記移動部材が前記支持部材を移動させる移動方向と交差する方向に延びる傾斜面を有する、請求項3に記載の超電導機器。
【請求項5】
前記支持部材が前記伝熱部材を支持する位置に配置されたときに、前記支持部材と前記容器との間に位置し前記支持部材を支える補助部材をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導機器。
【請求項6】
前記伝熱部材を支持する位置は、前記支持部材が前記伝熱部材の鉛直方向における下部表面と接触して前記伝熱部材を支持する位置であり、
前記伝熱部材から離れた位置は、前記支持部材の一部が前記鉛直方向から見て前記伝熱部材と重なった状態で、前記伝熱部材から離れた位置である、請求項1または2に記載の超電導機器。
【請求項7】
前記移動部材は、前記支持部材に一方端部が接続された駆動軸と、前記駆動軸において前記一方端部と反対側に位置する他方端部と接続された駆動力発生部材とを含み、
前記駆動力発生部材は、前記駆動軸を介して前記支持部材を移動させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の超電導機器。
【請求項8】
前記容器の内周側において、冷却媒体とともに前記コイルを内部に保持する内槽部材をさらに備え、
前記伝熱部材は前記内槽部材に接続されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の超電導機器。
【請求項9】
前記伝熱部材は、前記コイルに直接接続されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の超電導機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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