説明

超音波エレメントおよび超音波内視鏡

【課題】感度が高く製造が容易な超音波エレメントを提供する。
【解決手段】超音波エレメント20は、第1の下部電極と第1の上部電極とが、第1の下部誘電体層、第1のキャビティおよび第1の上部誘電体層を介して対向配置している複数の送信用の第1の超音波セル10Aと、第2の下部電極12Aと第2の上部電極16Aとが、第2の下部誘電体層13、第2のキャビティ14および第2の上部誘電体層15を介して対向配置している複数の受信用の第2の超音波セル10Bと、を具備し、前記第2の超音波セル10Bの受信感度が、前記第1の超音波セル10Aの受信感度よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型の超音波エレメント、および前記超音波エレメントを具備する超音波内視鏡に関し、特に受信用超音波セルと送信用超音波セルとを有する超音波エレメント、および前記超音波エレメントを具備する超音波内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
体内に超音波を照射し、エコー信号から体内の状態を画像化して診断する超音波診断法が普及している。超音波診断法に用いられる超音波診断装置の1つに超音波内視鏡(以下、「US内視鏡」という)がある。US内視鏡は、体内へ導入される挿入部の先端硬性部に超音波振動子が配設されている。超音波振動子は電気信号を超音波に変換し体内へ送信し、また体内で反射した超音波を受信して電気信号に変換する機能を有する。
【0003】
超音波振動子には、環境負荷が大きい鉛を含むセラミック圧電材、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等が主に使用されている。これに対して、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造される、材料に鉛を含まない静電容量型超音波振動子(Capacitive Micro-machined Ultrasonic Transducer;以下、「c−MUT」という)の開発が進んでいる。
【0004】
c−MUTは、上部電極と下部電極とが空洞部(キャビティ)を介して対向配置した超音波セル(以下、「USセル」という)を単位素子とする。USセルでは、キャビティの上側の上部電極を含むメンブレンが振動部を構成している。そして、それぞれの電極部が配線部により接続された複数のUSセルを配列して超音波エレメント(以下、「USエレメント」という)を構成している。
【0005】
USセルは、下部電極と上部電極との間に電圧を印加することで、静電力により上部電極を含むメンブレンを振動して超音波を発生する。また外部からメンブレンに超音波が入射すると両電極の間隔が変化するため、静電容量の変化から超音波を電気信号に変換する。
【0006】
特表2005−510264号公報(米国特許第6585653号明細書)には、送信用のUSセルと受信用のUSセルとを有するc−MUTが開示されている。
【0007】
しかし、送信専用USセルと受信専用USセルとを有するc−MUTは、送信用USセルと受信用USセルとは構造または寸法等が異なるため、同時に作製することは容易ではないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−510264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、高感度でかつ製造が容易な超音波エレメントおよび高感度でかつ製造が容易な超音波内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態の超音波エレメントは、それぞれが、第1の下部電極と第1の上部電極とが、第1の下部誘電体層、第1のキャビティおよび第1の上部誘電体層を介して対向配置している超音波を送信する複数の第1の超音波セルと、それぞれが、第2の下部電極と第2の上部電極とが、第2の下部誘電体層、第2のキャビティおよび第2の上部誘電体層を介して対向配置している超音波を受信する複数の第2の超音波セルと、を具備し、前記第2の超音波セルの受信感度が前記第1の超音波セルの受信感度よりも高い。
【0011】
また別の実施形態の超音波内視鏡は、上記記載の超音波エレメントを有する先端硬性部を具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、高感度でかつ製造が容易な超音波エレメントおよび高感度でかつ製造が容易な超音波内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の超音波内視鏡を具備する内視鏡システムを説明するための外観図である。
【図2】第1の実施形態の超音波内視鏡の先端部を説明するための斜視図である。
【図3】第1の実施形態の超音波エレメントの構成を説明するための斜視図である。
【図4】第1の実施形態の超音波エレメントの超音波セルの分解図である。
【図5】第1の実施形態の超音波エレメントの超音波セルの部分断面図である。
【図6】第2の実施形態の超音波エレメントの超音波セルの部分断面図である。
【図7】第3の実施形態の超音波エレメントの超音波セルの部分断面図である。
【図8】第4の実施形態の超音波エレメントの超音波セルの部分断面図である。
【図9】第5の実施形態の超音波エレメントの構成を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して第1の実施形態の超音波エレメント(USエレメント)20、および、USエレメント20を有する超音波内視鏡(以下、「US内視鏡」という)2について説明する。
【0015】
<超音波内視鏡の構成>
図1に示すようにUS内視鏡2は、超音波観測装置3およびモニタ4とともに超音波内視鏡システム1を構成する。US内視鏡2は、体内に挿入される細長の挿入部21と、挿入部21の基端に配された操作部22と、操作部22の側部から延出したユニバーサルコード23と、を具備する。
【0016】
ユニバーサルコード23の基端部には、光源装置(不図示)に接続されるコネクタ24Aが配設されている。コネクタ24Aからは、カメラコントロールユニット(不図示)にコネクタ25Aを介して着脱自在に接続されるケーブル25と、超音波観測装置3にコネクタ26Aを介して着脱自在に接続されるケーブル26と、が延出している。超音波観測装置3にはモニタ4が接続される。
【0017】
挿入部21は、先端側から順に、先端硬性部(以下「先端部」という))37と、先端部37の後端に位置する湾曲部38と、湾曲部38の後端に位置して操作部22に至る細径かつ長尺で可撓性を有する可撓管部39と、を連設して構成されている。そして、先端部37の先端側には、超音波送受部である超音波ユニット(USユニット)30が配設されている。
【0018】
操作部22には、湾曲部38を所望の方向に湾曲制御するアングルノブ22Aと、送気および送水操作を行う送気送水ボタン22Bと、吸引操作を行う吸引ボタン22Cと、体内に導入する処置具の入り口となる処置具挿入口22D等と、が配設されている。
【0019】
そして、図2に示すように、超音波を送受信するUSユニット30が、設けられた先端部37には、照明光学系を構成する照明用レンズカバー31と、観察光学系の観察用レンズカバー32と、吸引口を兼ねる鉗子口33と、図示しない送気送水ノズルと、が配設されている。
【0020】
図2に示すように、USユニット30の超音波アレイ(USアレイ)40は、複数の平面視長方形のUSエレメント20の長辺が連結され、円筒状に湾曲配置されたラジアル型振動子群である。すなわち、USアレイ40では、例えば、直径2mmの円筒の側面に、短辺が0.1mm以下のUSエレメント20が200個、配設されている。
【0021】
なお、USアレイ40は、ラジアル型振動子群であるが、USアレイは、凸形状に湾曲したコンベックス型振動子群であってもよい。
【0022】
<超音波エレメントの構成>
図3に示すように、USエレメント20には、複数の送信専用の第1の超音波セル10Aと、複数の受信専用の第2の超音波セル10Bと、がマトリックス状に2次元配置されている。なお、以下の図はいずれも説明のための模式図であり、パターンの数、形状、厚さ、大きさ、および大きさ等の比率は実際とは異なる。
【0023】
超音波セル10Aは超音波を送信する第1のUSセルであり、超音波セル10Bは超音波を受信する第2のUSセルである。そして超音波セル10Bの受信感度が、超音波セル10Aの受信感度よりも高い。なお、超音波セル10Aは送信専用セルであるために受信された超音波は超音波画像生成等には利用されない。
【0024】
<超音波セルの基本構造>
USセル10AおよびUSセル10Bの構成は類似しており、かつ、同時に同じ方法および同じ材料により作製されるため、以下USセル10として説明する。
【0025】
図4に示すように、USセル10は、下部電極12Aと上部電極16Aとが、下部誘電体層13、キャビティ14および上部誘電体層15を介して対向配置している。すなわち、USセル10は、基体であるシリコン基板11上に、順に積層された、下部電極層12と、下部誘電体層13と、キャビティ14が形成された上部誘電体層15と、上部電極層16と、保護層17と、を有する。キャビティ14の直上の、上部誘電体層15の一部15B〜保護層17が、振動膜であるメンブレン18を構成している。
【0026】
シリコン基板11は、シリコンの表面にシリコン熱酸化膜を形成した基板である。シリコン基板11の厚さは、例えば、100〜600μmであり、好ましくは200〜300μmである。
【0027】
シリコン基板11の一面上に形成される下部電極層12は、モリブデン等の金属、またシリコンなどの導電性材料からなる。導電性材料はシリコン基板11の全面にスパッタ法等により成膜される。そして、フォトリソグラフィによるパターンマスクを形成後にエッチングにより部分的に除去することにより、下部電極12Aおよび配線部12Bが形成される。
【0028】
すなわち、下部電極層12は、円形の下部電極12Aと、下部電極12Aの縁辺部の二方から延設している配線部12Bとからなる。
【0029】
次に、下部電極層12が形成されたシリコン基板11の一面に、下部誘電体層13がCVD法(化学気相成長法)等により成膜される。
【0030】
そして下部誘電体層13上に、犠牲層材料を成膜した後、フォトリソグラフィによるパターンマスクを形成後に部分的に除去(パターニング)することで、キャビティ14の形状の犠牲層が形成される。犠牲層材料としては、例えば、リンガラス(PSG:含リン酸化シリコン)、二酸化ケイ素、ポリシリコン、または金属などを用いる。
【0031】
犠牲層が形成された下部誘電体層13の上面に、上部誘電体層15が、例えば下部誘電体層13と同様の方法および同様の材料により形成される。なお、図4に示すように、上部誘電体層15は、犠牲層と同じ厚さの上部誘電体層15Aと、犠牲層の上に形成される上部誘電体層15Bと、からなるとみなすこともできる。もちろん、上部誘電体層15Aと上部誘電体層15Bとは同時に形成される。そして、キャビティ14の形状の犠牲層の上に形成された上部誘電体層15Bが、メンブレン18の一部となる。
【0032】
次に、犠牲層のエッチングによりキャビティ14が形成される。
エッチング剤は、下部誘電体層13、上部誘電体層15および犠牲層の材料により適宜選択される液体または気体である。例えば犠牲層としてリンガラスを用い、誘電体層13と15にチッ化シリコンを用いた場合は、エッチング剤としてフッ酸溶液(バッファードHF溶液)を用いる。HF溶液はリンガラスを溶解するが、チッ化シリコンは溶解しにくい。このため、犠牲層が除去され、下部誘電体層13と上部誘電体層15との間に、キャビティ14が形成される。
【0033】
次に、上部電極16Aと配線部16Bとからなる上部電極層16が、下部電極層12と同様に形成される。上部電極層16は、例えば0.5〜1.0μmのアルミニウムからなる。
【0034】
例えば、円形の上部電極16Aおよび下部電極12Aの大きさは、いずれもキャビティ14と略同径である。
また、キャビティ14は円柱形状に限られるものではなく、多角柱形状等でもよい。キャビティ14が多角柱形状の場合には、上部電極16Aおよび下部電極12Aの形状も多角形とすることが好ましい。
【0035】
最後に、上部電極層16を覆う保護層17が形成される。保護層17は、例えば、上部誘電体層15と同様の方法および同様の材料により形成される。なお、保護層17は誘電体層の上に、更にポリパラキシリレン等の生体適合性のある外皮膜が形成された2層構造であってもよい。保護層17の厚さは、例えば0.2〜1.5μmであり、好ましくは0.5〜1.0μmである。
【0036】
次に、図3におけるIV-IV断面の一部である図5を用いて、USセル10AとUSセル10Bとを比較しながら、その構成について説明する。なお、以下の図においては、配線部12B、16Bは表示しない。
【0037】
図5に示すように、USエレメント20では、USセル10Aのキャビティ14の高さ14T1が、USセル10Bのキャビティ14の高さ14T2よりも高い。すなわち、製造時の犠牲層の厚さがUSセル10Aの方がUSセル10Bよりも厚い。USセル10AとUSセル10Bとで、犠牲層の厚さを変えるには、例えばフォトリソグラフィによるパターンマスクを形成時に、いわゆるハーフ露光を行いマスク層の厚さを変えておき、次にドライエッチバック法で異なる厚さの犠牲層を形成することで容易に実現できる。
【0038】
USセル10Bのキャビティ14の高さ14T2は、例えば、0.05〜0.3μmであり、好ましくは0.05〜0.15μmである。これに対してUSセル10Aのキャビティ14の高さ14T1は、14T2の150%〜500%が好ましい。前記範囲以上であれば、USセル10Bの受信感度が確実に向上し、前記範囲以下であればUSセル10Bのキャビティ14の形成が困難ではない。
【0039】
静電容量は上部電極16Aと下部電極12Aの間の距離に反比例するため、メンブレン18の変化量(振動量)が同じならば、電極間距離が小さい方が容量変化の割合が大きい。このため、USセル10BはUSセル10Aよりも受信感度が高い。
【0040】
またUSセル10Aは、キャビティ14の高さ14T1が高いために、超音波送信時に、メンブレン18が大きく振動してもメンブレンが下の下部誘電体層13と接触することがない。すなわち、メンブレン18の可動領域を広くすることができるため、USセル10Aから放射される超音波の強度を大きくすることができる。また、超音波を受信したときのUSセル10Bからの受信信号が大きくなるため、高感度である。更に、USエレメント20では、USセル10AとUSセル10Bとを同一の工程および同一の材料で形成することができるため、メンブレンの応力を同等にすることができ、製造が容易になるとともにUSセル10AとUSセル10Bの振動特性を同等にできる。
【0041】
以上の説明のように、USエレメント20は高感度でかつ製造が容易であり、USエレメント20を有する超音波内視鏡2は、高感度でかつ製造が容易である。
【0042】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態のUSエレメント20A、およびUSエレメント20Aを有するUS内視鏡2Aについて説明する。USエレメント20A、US内視鏡2Aは、それぞれUSエレメント20、US内視鏡2と類似しているので、同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0043】
図6に示すように、USエレメント20Aでは、USセル10B1の下部電極12Aの厚さ12T2が、USセル10A1の下部電極12Aの厚さ12T1よりも厚い。USエレメント20AとUSセル10B1とで下部電極12Aの厚さを変えるには、2回に分けて成膜を行ってもよいし、エッチングにより膜厚を減じてもよい。
【0044】
USセル10A1の下部電極12Aの厚さ12T1は、例えば、0.1〜0.5μmであり、好ましくは0.2〜0.4μmである。これに対してUSセル10A2の下部電極12Aの厚さ12T2は、12T1の1.5倍以上が好ましく、特に好ましくは3倍以上である。下部電極12Aの厚さ12T2の上限は、キャビティ14の高さが0.05μm以下とならないように設定される。前記範囲以上であれば、USセル10B1の受信感度が確実に向上し、前記範囲以下であればUSセル10B1のキャビティ14の形成が困難ではない。
【0045】
すでに説明したように、静電容量は上部電極16Aと下部電極12Aの間の距離に反比例するため、USセル10B1はUSセル10A1よりも受信感度が高い。すなわち、下部電極12Aの厚さ12T1が、前記範囲以上であれば所望の受信感度が得られ、前記範囲以下であれば受信に支障がない。
【0046】
すなわち、USエレメント20Aは、USエレメント20と同じ効果を有する。更に、USエレメント20Aでは基板11から保護層17上面までの距離、すなわち、上部電極層16の上面までの距離が2種類のUSセル10A、10Bで同じである。
【0047】
このため、USエレメント20Aは、犠牲層の上面は異なる犠牲層厚さのセルにおいても同一の高さとなり、かかる構成の実現には半導体製造工程で標準的なCMP(Chemical Mechanical Polishing)プロセスのみで形成可能となるため、USエレメント20よりもその製造方法が簡略かつ実現性と歩留まりに優れる。
【0048】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態のUSエレメント20B、およびUSエレメント20Bを有するUS内視鏡2Bについて説明する。USエレメント20B、US内視鏡2Bは、それぞれUSエレメント20、US内視鏡2と類似しているので、同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0049】
図7に示すように、USエレメント20Bでは、USセル10B2の下部誘電体層13の厚さ13T2が、USセル10A2の下部誘電体層13の厚さ13T1よりも厚い。なお、USセル10B2の下部電極12Aの厚さとUSセル10A2の下部電極12Aの厚さは同じであるため、USエレメント20Bでは、USセル10A2の下部誘電体層13の厚さ13T1と下部電極12Aの厚さ12T1の合計値よりも、USセル10B2の下部誘電体層13の厚さ13T2と下部電極12Aの厚さ12T1との合計値が厚い。
【0050】
ここで、無限に広い2枚の平行平板が間隔dで配置されたコンデンサCの中に比誘電率がεr、厚さが(d−g)の誘電体層を挿入した場合を例に、USセル10の受信感度について説明する。
【0051】
コンデンサCの単位面積あたりの静電容量C0は以下の(式1)で示される。
【0052】
(式1)

【0053】
USセルが超音波を受信して、上部電極がxだけ下部電極側に変位したときの静電容量C1は以下の(式2)で示される。
【0054】
(式2)

【0055】
すなわち、上部電極がxだけ下部電極側に変位したときの静電容量変化率(C1/C0)は以下の(式3)で示される。
【0056】
(式3)

【0057】
上記(式3)より、電極間の距離dの間に、空気(真空)に替えて誘電体材料を挿入することで、受信感度である静電容量変化率を改善することができることがわかる。
【0058】
ここで、従来のUSセルでも、電極間には絶縁層として誘電体が配設されていた。すなわち、配設目的が絶縁であるため、耐絶縁性にのみ着目して材料および厚さが決定されていた。例えば、材料としては、酸化シリコン(εr<3.9)または窒化シリコン(εr<7.5)が使用されており、厚さは下部誘電体層では0.10〜0.20μm、上部誘電体層では0.20〜0.50μmであった。
【0059】
これに対して、USエレメント20Bでは、電極間の絶縁層の絶縁特性だけでなく、誘電体特性にも着目することで、受信用のUSセル10B2を送信用のUSセル10A2よりも高感度にしている。すなわち、USセル10B2の下部誘電体層13の厚さ13T2は、USセル10A2の下部誘電体層13の厚さ13T1の、1.5倍以上が好ましく、特に好ましくは2倍以上である。下部誘電体層13の厚さ13T2の上限は、キャビティ14の高さが0.05μm以下とならないように設定される。前記範囲以上であれば、USセル10B1の受信感度が確実に向上し、前記範囲以下であればUSセル10B1のキャビティ14の形成が困難ではない。
【0060】
更に下部誘電体層13の材料としては高誘電率材料を用いることが好ましい。例えば、広く絶縁材料として使用されている酸化シリコン(εr<3.8)、窒化シリコン(εr<7.5)よりも、εr>8の酸化アルミニウム等が好ましく、εr>15の酸化チタン、酸化ハフニウムまたは酸化ジルコニウム等が特に好ましい。
【0061】
USエレメント20BはUSエレメント20Aと同様の効果を有し、更に設計の自由度が高いために製造が容易である。また第2実施形態同様、CMP法など半導体製造工程で常用される製造方法のみを用いての製造が可能であるため、高歩留まりが実現できる。
【0062】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態のUSエレメント20C、およびUSエレメント20Cを有するUS内視鏡2Cについて説明する。USエレメント20C、US内視鏡2Cは、それぞれUSエレメント20B、US内視鏡2Bと類似しているので、同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0063】
図8に示すように、USエレメント20Cでは、USセル10B3の方がUSセル10A3よりも、下部誘電体層13の厚さと上部誘電体層15Bの厚さとの合計値が、大きい。
すなわち、USセル10A3の下部誘電体層13の厚さを13T1、上部誘電体層15Bの厚さを15T1、USセル10B3の下部誘電体層13の厚さを13T2、上部誘電体層15Bの厚さを15T2としたとき、以下の(式4)を満たす。
(13T1+15T1)<(13T2+15T2) (式4)
【0064】
なお、(式4)を満足すれば、(13T1>13T2)、または(15T1>15T2)、であってもよい。
【0065】
USエレメント20Cでは、電極間に配設される誘電体層の厚さの合計値を厚くすることにより、送信用のUSセル10A3よりも受信用のUSセル10B3の受信感度を高くすることができる。
【0066】
USエレメント20CはUSエレメント20Bと同様の効果を有し、更に設計の自由度が高いために製造が容易である。
【0067】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態のUSエレメント20D、およびUSエレメント20Dを有するUS内視鏡2Cについて説明する。USエレメント20D、US内視鏡2Dは、それぞれUSエレメント20B、US内視鏡2Bと類似しているので、同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0068】
図3に示したように、USエレメント20では同数のUSセル10AとUSセル10Bとが配置されていた。これに対して、図9に示すように、USエレメント20Dでは、受信用のUSセル10B4の数が送信用のUSセル10A4の数よりも多い。そして、正六角形の中心に送信用のUSセル10A4が配置され、正六角形の頂点に受信用のUSセル10B4が配置されている。
【0069】
送信用のUSセル10A4から送信された超音波は広がりながら進み被検体に反射されて戻ってくる。このため、USセル10A4の周囲にUSセル10A4よりも数の多いUSセル10B4が配置されているUSエレメント20Dは受信効率がよい。また、正六角形の中心と頂点とに配置されているUSセル10は単位面積あたりの配置数を大きくできるため特に好ましい。
【0070】
以上の説明のようにUSエレメント20Dは複数の送信用のUSセル10A4と複数の受信用のUSセル10B4とを具備し、USセル10B4の数がUSセル10A4の数の2倍である。USセル10B4の数は、USセル10A4の数の1.5倍以上が好ましく、特に好ましくは2倍以上であり、上限は例えば5倍である。またUSセル10B4を回転対称図形の頂点に配置しUSセル10A4を中心に配置することが好ましい。回転対称図形としては、特に6回対称の正六角形が好ましい。
【0071】
USエレメント20Dは、USエレメント20Bが有する効果を有し、更に受信感度が高い。
【0072】
本発明は、上述した実施形態または変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…超音波内視鏡システム、2、2A〜2D…超音波内視鏡、3…超音波観測装置、10、10A、10B…超音波セル、11…シリコン基板、12…下部電極層、12A…下部電極、12B…配線部、13…下部誘電体層、14…キャビティ、15…上部誘電体層、16…上部電極層、16A…上部電極、16B…配線部、17…保護層、18…メンブレン、20、20A〜20D…超音波エレメント、30…超音波ユニット、40…超音波アレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、基板上の第1の下部電極と第1の上部電極とが、第1の下部誘電体層、第1のキャビティおよび第1の上部誘電体層を介して対向配置している、超音波を送信する複数の第1の超音波セルと、
それぞれが、前記基板上の第2の下部電極と第2の上部電極とが、第2の下部誘電体層、第2のキャビティおよび第2の上部誘電体層を介して対向配置している、超音波を受信する複数の第2の超音波セルと、を具備し、
前記第2の超音波セルの受信感度が、前記第1の超音波セルの受信感度よりも高いことを特徴とする超音波エレメント。
【請求項2】
基板から前記第1の上部電極の上面までの距離と、前記基板から前記第2の上部電極の上面までの距離が、同じであることを特徴とする請求項1に記載の超音波エレメント。
【請求項3】
前記第1の下部誘電体層の厚さと前記第1の上部誘電体層の厚さとの合計値よりも、前記第2の下部誘電体層の厚さと前記第2の上部誘電体層の厚さとの合計値が厚いことを特徴とする請求項2に記載の超音波エレメント。
【請求項4】
前記第1の下部誘電体層の厚さよりも、前記第2の下部誘電体層の厚さが厚いことを特徴とする請求項3に記載の超音波エレメント。
【請求項5】
前記第1の下部電極の厚さよりも前記第2の下部電極の厚さが厚いことを特徴とする請求項2に記載の超音波エレメント。
【請求項6】
前記複数の第1の超音波セルが回転対処図形の回転中心に配置され、前記複数の第2の超音波セルが前記回転対処図形の頂点に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超音波エレメント。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の超音波エレメントを有する先端硬性部を具備することを特徴とする超音波内視鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−34665(P2013−34665A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173142(P2011−173142)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】