説明

超音波トランスデューサユニット、超音波トランスデューサおよび超音波プローブ

【課題】超音波トランスデューサと接続される電子回路との接続を容易にするとともに、超音波トランスデューサに対して送受信する電気信号の処理を容易にする。
【解決手段】プリント基板30の表面に形成された電極リード31上に第1の積層圧電体14を配置して背面電極16および内部背面電極16aと接続させ、かつプリント基板30の裏面に形成された電極リード31上に第2の積層圧電体24を配置して背面電極26および内部背面電極26aと接続させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波プローブの技術に関し、特に超音波プローブに用いられる超音波トランスデューサの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブにより被検体の所望の診断部位の情報を取得するため、その部位に超音波を送波(送信)し、音響インピーダンスの異なる被検体内の組織境界から反射波を受信する。このようにして、超音波プローブにより超音波を走査して、被検体の体内組織の情報を得て画像化することにより診断を行うものである。この超音波プローブは、被検体等に超音波を送波し、反射波を受波するために、超音波トランスデューサを有している。
【0003】
従来から、超音波診断装置の超音波プローブに用いられる超音波トランスデューサとして、その圧電素子をアレイ状に配列した1次元アレイの超音波トランスデューサが使用されている。この1次元アレイの超音波トランスデューサは一般に、送受信超音波ビームの高速な走査や高速なフォーカス点の変更を可能とする電子走査法と呼ばれる方法で使用されている。高速な超音波ビームの走査や高速なフォーカス点の変更によってリアルタイムに2次元画像を提供することができる。
【0004】
ところで近年においては、超音波プローブにおける1次元アレイの超音波トランスデューサを回転・揺動して用いる方法、または圧電素子をマトリックス状に配列した2次元アレイの超音波トランスデューサを用いた電子走査法の超音波プローブによって、3次元で超音波画像収集・表示を行うシステムの検討が進んできている。3次元の超音波画像は、2次元画像において見逃されやすい部位の診断に有用であり、また、診断や計測に適した断層像を得ることができ、診断精度の向上が期待できる。
【0005】
ただし、これら3次元の超音波画像の収集にかかる方法のうち、1次元アレイの超音波トランスデューサを用いた超音波プローブを使用する方法においては、画像データ収集に多くの時間を要し、リアルタイムに3次元画像を表示することが困難である。一方、電子走査法の2次元アレイの超音波トランスデューサを使用する方法においては、2次元的に圧電素子を配列することにより、超音波ビームの全方位的なフォーカシングを可能とする。さらに1次元アレイの超音波トランスデューサの場合と比較して高速な3次元走査を実現して画像データの収集速度を速めることが可能となる。
【0006】
しかしその反面、2次元アレイの超音波トランスデューサは圧電素子の素子数の増大(例えば、10倍〜100倍)をともない、さらに送受信回路数の増加や、接続リード数やケーブル数の大幅な増加につながる。また、結果として、超音波プローブにおける圧電素子(圧電体)と、送受信回路、超音波診断装置本体および超音波診断装置本体間に存在する中継回路等との接続は極めて複雑かつ困難となってしまう。
【0007】
この問題に対しては、圧電素子配列に対応する基板を積層して電極リードの引き出しを構成する構造を採用し、微細な圧電素子配列に対応する電極リードのピッチ幅が、リード中継基板の各層に形成されたパターン配線によって拡大され、中継回路等となるIC基板接続側に整列して引き出される構造が提案されている(例えば、特許文献1)。この構造によれば、超音波プローブにおける2次元アレイ状に配列された超音波トランスデューサの信号電極から、多数の電極リードを引き出し、圧電素子の音響特性の維持、IC等の実装等を容易に実現することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−292496号公報
【0009】
ここで、3次元画像の収集可能な2次元アレイの超音波トランスデューサによる超音波プローブの例として、従来の超音波トランスデューサすなわち圧電素子をマトリックス状に多数配列した超音波トランスデューサを備えた超音波プローブを示す。ここで、図12は、従来の超音波トランスデューサ300の構成を示す概略斜視図である。
【0010】
図12に示すように、超音波トランスデューサ300は、被検体と圧電素子304との音響インピーダンスの整合をとる音響整合層301と、圧電効果を得るため、アース接続されて各圧電素子304に接続されるアース電極302と、被検体に対し超音波の送受信を行う圧電素子(圧電体)304、アース電極302との間に圧電素子304を駆動するための電気信号を送って超音波パルスを送波させ、被検体から超音波を受波し、変換した電気信号を出力する信号電極306と、圧電素子304からバッキング材308方向に放射される超音波パルスを反対方向に反射させるバッキング材308(負荷材相)と、信号電極306と後段電子回路とを接続する図示しない電極リードとをプリント基板309上に備えて構成されている。
【0011】
圧電素子(圧電体)304は、2成分系あるいは3成分系の圧電セラミックス等から成る圧電素子であり、プリント基板309等に2次元マトリックス状に配列されている。この圧電素子304が、走査制御されることにより超音波の全方位的なフォーカシングと高速な3次元走査が可能となる。
【0012】
また、超音波トランスデューサ300は、超音波プローブを使用した際における被検体側(前方)の先端に位置する音響レンズから後段電子回路側へ向かって、音響整合層301、圧電素子304、バッキング材308の順に隣接して配置される。また、音響整合層301と圧電素子304との間(前面)において音響整合層301および圧電素子304と接するようにアース電極302が設けられる。また、圧電素子304とバッキング材308との間(背面)において圧電素子304およびバッキング材308と接するように信号電極306が設けられる。また、プリント基板309の内部には、圧電素子304の配列面と直交する方向に形成され、電極リード(図示せず)を引き出し可能とする経路が形成されている。
【0013】
このように従来の超音波トランスデューサにおいては、1枚のプリント基板309に対し1列の圧電素子304が配列されていた。さらにこの1次元アレイの超音波トランスデューサユニットを配列したプリント基板309が、音響レンズの向きを合わせるように積層されて2次元アレイの超音波トランスデューサ300を構成していた。
【0014】
なお、パルスインバージョン映像法を用いるような場合は、各圧電素子の両極に印加される電気信号である高周波パルスの極性を変更して印加できる回路構成を形成しなければならない。この回路構成では、超音波トランスデューサにおける圧電素子の前面に形成される電極と、当該圧電素子の背面に形成される電極とを、各圧電素子ごとに区別して接続する必要が生じる。したがって、これらの電極から引き出される電極リードの配線パターンをそれに応じて独立したパターンとなるように形成する必要がある。
【0015】
なお、このパルスインバージョン映像法とは、例えば被検体に圧電素子の両電極にかかる超音波パルスを180度位相をずらして(極性を変更して)2回送信し、2つのエコー信号を加算して高調波成分のみを抽出して画像化するものである。より詳しくは、圧電素子の両極(前面電極及び背面電極)毎にパルサを接続し、交互に動作させることでバイポーラパルスを出力するものであり、この交互動作を2回の送信で順序を逆転させることで、1回目の送信と2回目の送信とで正負の対称性がよい波形のバイポーラパルスに応じた超音波パルスを出力することができ、結果として、高調波イメージング画像を向上させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に記載の超音波プローブは、信号電極等から引き出された電極リードのピッチを、超音波トランスデューサに接続した中継基板のパターン配線によって拡大して、電極リードとICとの接続構造を容易化するものであるが、当該接続部分は大型化してしまうおそれがある。また、電極リードが中継基板に至るまでの配線については1列ごとに配列された圧電素子を配置するプリント基板の枚数分だけ中継基板と接続しなければならず、超音波トランスデューサと中継基板との接続構造が複雑となるおそれがある。
【0017】
また、図12に記載の超音波プローブでは、2次元アレイ構造の超音波トランスデューサにおいて、圧電素子を積層した積層圧電体を、あらかじめ電極リードの配線ラインが形成されたプリント基板に並設して構成しているが、2次元アレイ構造の超音波トランスデューサ1列分につき1枚のプリント基板を要し、プリント基板の枚数が多くなり、中継基板等の回路への接続が困難となり、または複雑な構造となるおそれがある。また、接続構造の大型化を招来し、1枚のプリント基板において前面電極と背面電極とが混在してしまうおそれがあり、その結果、後段電子回路が複雑化するおそれがある。
【0018】
これに加え、上述のパルスインバージョン映像法のように、圧電素子の超音波放射面側に形成される前面電極から引き出される前面電極リードと前面電極に対向して形成される背面電極から引き出される背面電極リードを圧電素子チャンネル毎にそれぞれ独立して引き出し、前面電極リードと背面電極リードとを異なる電子回路に連結する構成も用いられるようになっている。
【0019】
この場合は、圧電素子の両端を駆動するための電子回路(パルス回路)が必要となり、さらに圧電体前面に形成する前面電極と、背面に形成する背面電極とを区別して接続する必要が生じる場合もある。
【0020】
このパルスインバージョン映像法を用いることを前提とする場合、上述した従来の超音波プローブによっては後段の接続回路との接続構造が複雑化し、前面電極や背面電極を回路ごとに区別して接続することが困難となるといったように超音波トランスデューサの機能は制約を受ける。その制約によっては、パルスインバージョン映像法の実現が困難となるおそれがある。また、当該接続構造を単純化すると、超音波トランスデューサと後段の接続回路との接続部分の大型化または超音波トランスデューサを含む超音波プローブの製造工程の複雑化を招来してしまう。
【0021】
この発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、超音波トランスデューサと接続される電子回路との接続構造を単純化し、超音波トランスデューサと電子回路との接続を容易にするとともに、超音波トランスデューサに対して送受信する電気信号の処理を容易にすることが可能となる超音波トランスデューサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するための本発明は、第1プリント基板と、超音波を照射する方向に直交する背面および該背面と反対側となる前面に対応して背面電極と前面電極とを有し、該前面および該背面が前記第1プリント基板の表面に直交するようにされ、かつ列状に配置される複数の第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子と同一の構造であってその前面および背面が、前記第1のプリント基板の前記表面と反対側の裏面に直交するようにされ、かつ列状に配置される複数の第2の圧電素子と、前記第1プリント基板の前記表面上において前記第1の圧電素子それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第1電極リードと、前記第1プリント基板の前記裏面上において前記第2の圧電素子それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第2電極リードとを備えたこと、を特徴とする超音波トランスデューサユニットである。
また、上記の課題を解決するための本発明は、超音波トランスデューサを備えて構成される超音波プローブであって、第1プリント基板と、超音波を照射する方向に直交する背面および該背面の反対側となる前面に対応して背面電極と前面電極とを有し、該前面および該背面が前記第1プリント基板の表面に直交するようにされ、かつ列状に配置される複数の第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子と同一の構造であってその前面および背面が、前記第1のプリント基板の前記表面と反対側の裏面に直交するようにされ、かつ列状に配置される複数の第2の圧電素子と、前記第1プリント基板の前記表面上において前記第1の圧電素子それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第1電極リードと、前記第1プリント基板の前記裏面上において前記第2の圧電素子それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第2電極リードとを備えたこと、を特徴とする超音波プローブである。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、超音波トランスデューサを備えた超音波プローブにおいて、第1プリント基板の表面に第1の電極リードを形成し、その裏面に第2の電極リードを形成し、第1の電極リードに第1の圧電素子の電極が結合され、第2の電極リードに第2の圧電素子の電極が結合された超音波トランスデューサユニットを複数配列する構成を採ることができるので、2次元アレイの超音波トランスデューサの2列分の圧電素子を1枚のプリント基板で配線することができる。したがって、超音波プローブにおける超音波トランスデューサにおいて後段電子回路との接続構造を単純化することが可能となる。
【0024】
また、前面電極からも圧電素子ごとに独立して電極リードを引き出す構成であっても、前面電極に接続される電極リードと背面電極に接続される電極リードとを異なる電子回路に連結することができる。したがって、後段の電子回路の実装上における効率を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態にかかる超音波トランスデューサおよび超音波プローブにつき、図面を参照して説明する。
【0026】
[第1の実施形態]
図1は、この発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100を示す概略斜視図である。また、図2はこの発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100を構成する超音波トランスデューサユニット100aおよびスペーサ80を示す概略斜視図である。図3は、この発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aを構成するプリント基板30、電極リード31と第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24の結合関係を示す概略構成図である。図4は、この発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサにおける超音波トランスデューサ100とIC基板40とを接続する機構を説明するための概略斜視図である。以下、第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の構成について説明する。
【0027】
(第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の概略構成)
図1に示すように、この実施形態にかかる超音波トランスデューサ100は、複数の超音波トランスデューサユニット100aを積層して構成されている。この超音波トランスデューサ100を構成する超音波トランスデューサユニット100aは、音響整合層10・20(または図示しない音響レンズ)を、超音波を被検体に照射する方向(以下、「図1におけるX方向」または単に「X方向」という)に合わせて配列される。また、超音波トランスデューサ100を構成する各超音波トランスデューサユニット100aそれぞれの間には、超音波トランスデューサ100間の電気絶縁および接着のためのスペーサ80が設けられている。
【0028】
また、この実施形態にかかる超音波トランスデューサ100を構成する超音波トランスデューサユニット100aは、図2に示すように、プリント基板30の表面に、音響整合層10、第1の積層圧電体(圧電素子)14、およびバッキング材18(負荷材相)等を具備し、また、プリント基板30の裏面に、音響整合層20、第2の積層圧電体(圧電素子)24、およびバッキング材28(負荷材相)等を具備して構成される。したがって、プリント基板30の表面および裏面に形成される音響整合層10・20、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24、バッキング材18・28は、ほぼ同一の構造となる。また、プリント基板30の表裏に形成される積層圧電体は、プリント基板30と対向する方向と直交する方向から見ると表裏対称となる。
【0029】
この超音波トランスデューサユニット100aは、図3に示すように導電性の電極リード31(本発明における「第1電極リード」、「第2電極リード」の一例に該当する)が設けられたプリント基板30の両面に対し、列状に第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24が配列されて構成される。この超音波トランスデューサユニット100aが、同じ方向(図1のX方向)に複数積層されることによって、2次元アレイの超音波トランスデューサ100が形成される。なお、ここでいう音響整合層10・20、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24およびバッキング材18・28は、従来の超音波トランスデューサ300(図12)に用いられていた音響整合層301、圧電素子304およびバッキング材308と同様の役割を果たすものである。
【0030】
また図1に示すように、第1の積層圧電体14(この発明における「第1の圧電素子」の一例に該当する)および第2の積層圧電体24(この発明における「第2の圧電素子」の一例に該当する)は、複数の圧電素子が図1におけるX方向に積層されて構成されている。
【0031】
一方の第1の積層圧電体14は積層方向と直交する面に前面電極12・背面電極16を備え、他方の第2の積層圧電体24は積層方向と直交する面に前面電極22・背面電極26を備えている。また、第1の積層圧電体14における積層された圧電素子間には内部前面電極12a・内部背面電極16aを、第2の積層圧電体24における圧電素子間には内部前面電極22a・内部背面電極26aを備えている。また、これらの電極は、プリント基板30の電極リード31と結合され、さらに、この電極リード31を介して後段の電子回路(例えば図4のIC基板40等)と接続される。
【0032】
また、図4に示すようにプリント基板30を介して超音波トランスデューサ100と接続されるIC基板40は、超音波トランスデューサ100との間で超音波ビームの送波・受波にかかる電気信号の送受信処理を行う。また、IC基板40は、ケーブル接続基板50およびコネクタ62を介して超音波診断装置本体と接続されているケーブル(不図示)と接続される。
【0033】
なお、本実施形態においては、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24を構成する圧電素子が3層積層されているが、本発明はこの実施形態に限られず、3層以上複数層積層してもよい。また、本発明は積層圧電体を用いずに単層の圧電素子を用いてもよい。
【0034】
(第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aの構成)
次に図2〜5を用いて、この発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aについて説明する。図5は、この発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aがスペーサ80を介して組み合わされた状態を示す概略斜視図である。
【0035】
図2および図3に示すように、超音波トランスデューサユニット100aは、電極リード31が複数設けられたプリント基板30を備え、このプリント基板30の両面に1列の積層圧電体を配列して形成される。
【0036】
すなわち、プリント基板30の一面には、第1の積層圧電体14が列状(図1におけるY方向)に配列される。この第1の積層圧電体14の超音波ビームの照射方向側の面(以下、「前面」という)に隣接して音響整合層10が配列され、第1の積層圧電体14の前面と反対側の面(以下、「背面」という)に隣接してバッキング材18が配置される。また、音響整合層10と第1の積層圧電体14との間には前面電極12形成され、第1の積層圧電体14とバッキング材18との間には背面電極16が形成される。また、第1の積層圧電体14の内部には、内部前面電極12a・内部背面電極16aが形成される。これらの電極の配置については後述する。
【0037】
これらの前面電極12、背面電極16、内部背面電極16a、内部前面電極12aは、各第1の積層圧電体14のそれぞれに対し独立に、かつ第1の積層圧電体14を構成する各圧電素子に接して設けられる。また、前面電極12、背面電極16は、超音波ビームを照射するための電力印加を行い、被検体から受波した超音波に基づく電気信号を出力する。内部前面電極12aは前面電極12と同様に、内部背面電極16aは背面電極と同様に作用する。
【0038】
一方、第1の積層圧電体14が配列されるプリント基板30の一面と反対側となる他面には、第1の積層圧電体14側と同様に、音響整合層20、前面電極22、第2の積層圧電体24、背面電極26、バッキング材28が順に列状に配置される。また、第2の積層圧電体24を構成する各圧電素子間には、内部前面電極22a・内部背面電極26aが形成される。
【0039】
また、第1の積層圧電体14と第2の積層圧電体24は、図1〜3に示すように複数の圧電素子が積層されて構成されている(本実施形態においては3段階に積層されている)。第1の積層圧電体14における背面側の圧電素子と中間の圧電素子との間には内部前面電極12aが形成され、中間の圧電素子と前面側の圧電素子との間には、内部背面電極16aが形成される。同じく、第2の積層圧電体24における背面側の圧電素子と中間の圧電素子との間には内部前面電極22aが形成され、中間の圧電素子と前面側の圧電素子との間には、内部背面電極26aが形成される。
【0040】
また、図3に示すようにプリント基板30の表面および裏面には、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24の配列に合わせたピッチで、電極リード31が形成される。この電極リード31は被検体に超音波を送波するための制御信号を送信するとともに、被検体から受信したエコー信号を電子回路(IC、ASIC等)に伝送するためのものである。
【0041】
当該電極リード31は、プリント基板30において圧電体が配置される位置から後段の電子回路(IC基板40等)側の他端まで伸延する。また、この電極リード31における第1の積層圧電体14や第2の積層圧電体24に対して結合される部分(隣接する面)は、第1の積層圧電体14や第2の積層圧電体24に対して隣接する面の形状に合わせて形成される。また、電極リード31は、例えばプリント基板30に形成された電気絶縁フィルム上に配線パターン化された銅箔を配置し、電極リード31としての配線パターンを露出させることによって形成される。このように電極リード31を積層圧電体の隣接面の形状に合わせることにより、電極リード31の幅と積層圧電体(12・24)から露出する各電極の幅とがほぼ同じとなり、電極リード31との結合部分をより大きくし、的確な結合を確保することが可能となる(図3参照)。
【0042】
ただし、プリント基板30の構成としてはこの限りではなく、圧電体との電気接続に供する部分のみを露出させ、他の領域を絶縁フィルムなどで被覆することも可能である。また本実施例では両面の配線パターンは独立して形成されているが、スルーホールを形成することによって電気接続することも可能である。また配線パターンを、スルーホールを形成することによってプリント基板30の片面に集中させることも可能である。
【0043】
また、図3に示す実施形態では、このプリント基板30の両面に形成された電極リード31と、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24とは、金属薄膜70(本発明における「導電性の薄膜」の一例に該当する)を介し結合される。この金属薄膜70は、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における電極リード31との結合面とほぼ同じ形状となる。したがって、電極リード31と各電極との結合部分をより大きくし、的確に結合させることが可能となる。
【0044】
またこの結合は、蒸着またはスパッタなど種々の方法により行われる。また、金属薄膜70としては、例えば、CrとAuの2層構造を採用してもよい。ただし、本発明における「導電性の薄膜」としての当該金属薄膜70はこれに限定されず、層数、材料を変更することも可能である。また、金属薄膜70は電気的な結合を補強するために形成されるものであり、本発明における超音波トランスデューサでは、金属薄膜を形成しないことも可能である。
【0045】
このように金属薄膜70により電気的に電極リード31と背面電極16・26および内部背面電極16a・26aとが接続され、電極リード31を介して背面電極16・26および内部背面電極16a・26aとIC基板40が接続される。この接続構造の詳細については後述する。
【0046】
また、図2および図3に示すように、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における電極リード31との結合面(本発明における「一側面」の一例に該当する。)と反対側となる面(本発明における「他の側面」の一例に該当する。)には、金属薄膜によるアース接続のためのアースリード71が形成される。
【0047】
図1〜図3に示すように、このアースリード71の長さは、前面電極12・22との接点を一端とし、他端はバッキング材18・28の中間部分付近まで伸延する。また、その幅は、前面電極12・22側においては第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24の幅とほぼ同じであり、バッキング材18・28側においては、各圧電体から伸延してきたアースリード71を連結して統合されるので、バッキング材18・28とほぼ同じ幅となる。
【0048】
したがって、積層圧電体に形成された各電極とアースリード71の結合面積をより大きくし、結合を的確に行うことが可能になる。また、このアースリード71は、前面電極12・22および内部前面電極12a・22aをアース接続する。なお、本発明においてアースリード71に結合されるのは前面電極12・22および内部前面電極12a・22aに限られない。つまり、アースリード71に結合される電極を背面電極16・26および内部背面電極16a・26aとしてもよい。
【0049】
また、図2および図3に示すように、アースリード71は、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24において当該アースリード71が形成されている側の面から、当該面と直交する超音波トランスデューサユニット100aの側面まで伸延する。このとき、図3に示すように第1の積層圧電体14側のアースリード71と、第2の積層圧電体24側のアースリード71は、超音波トランスデューサユニット100aにおける同じ側面に伸延される。
【0050】
本実施形態においては、図1に示すように前面電極12・22および内部前面電極12a・22aに接続されるアースリード71を個々に分離せず電気的に連結して引き出される。また、金属薄膜によるアースリード71を超音波トランスデューサユニット100aの一面から伸張して他の面に至る形状とすることによって、アースリード71の引き出し構造が容易となる。
【0051】
また、図2に示す超音波トランスデューサユニット100aのそれぞれは、スペーサ80を介して結合される。またこのスペーサ80は隣り合う各超音波トランスデューサユニット100a間の電気絶縁をする。
【0052】
本実施形態においては、前面電極12・22、内部背面電極16a・26a、内部前面電極12a・22a、背面電極16・26と後段の電子回路を接続する電極リード31やアースリード71として金属薄膜を用いているから積層圧電体を構成する各圧電素子の振動を阻害するおそれがなく、良好な超音波特性を確保することが可能である。また、プリント基板30上に電極リード31を形成し、当該電極リード31上に積層圧電体を形成する構成となっているから、積層される圧電素子間の内部電極と電極リード31の結合を可能とすることにより、超音波トランスデューサにおける圧電素子として内部電極を有する積層圧電体を採用することが可能である。したがって、2次元アレイの超音波トランスデューサを採用することにより各圧電素子が微細化しても、電気インピーダンスを低減させ、延いては超音波トランスデューサにおける性能向上が可能となる。
【0053】
(第1の積層圧電体および第2の積層圧電体における側面の構造)
次に図6を用いて、超音波トランスデューサユニット100aにおける第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24と、電極リード31、アースリード71の結合にかかる構造について説明する。図6(a)は、この発明の実施形態にかかる第1の積層圧電体14または第2の積層圧電体24を示す概略斜視図である。また、図6(b)は、この発明の実施形態にかかる第1の積層圧電体14における絶縁溝Dの一部を示す概略拡大図である。
【0054】
図6に示すように、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における電極リード31と隣接する側面には、絶縁溝Dが形成される。この絶縁溝Dは、図6(b)に示すように、前面電極12・22および内部前面電極12a・22aと、アースリード71(または金属薄膜70)とが接する部分に形成される。また、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における絶縁溝Dが形成された面と反対側の面においては、図6(b)に示すように、背面電極16・26および内部背面電極16a・26aと金属薄膜70(またはアースリード71)とが接する部分に形成される。この絶縁溝Dは、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における金属薄膜70やアースリード71との接触面において、各電極が形成されている部分のみに対して形成されており、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における圧電素子の積層方向と直交する方向(幅方向)に向かって、圧電素子の一端から他端まで伸延している。
【0055】
また、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における絶縁溝Dには金属薄膜70やアースリード71に対して絶縁をするための絶縁樹脂を充填する。これによって、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24の側面に形成されるアースリード71(または金属薄膜70)に結合される電極は、前面電極12・22および内部前面電極12a・22aのみとなり、他方金属薄膜70(またはアースリード71)に結合される電極は背面電極16・26および内部背面電極16a・26aのみとなる。
【0056】
以上において説明した、本実施形態における超音波トランスデューサユニット100aでは、プリント基板30の表面の電極リード31に結合される電極を、第1の積層圧電体14における背面電極16および積層される圧電素子間の内部背面電極16aのみとするとともに、プリント基板30の裏面の電極リード31に結合される電極を第2の積層圧電体24における背面電極26および積層される圧電素子間の内部背面電極26aのみとしている。
【0057】
つまり、1枚のプリント基板30の表面および裏面において結合される電極を同種の電極とし、同じく第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24の電極リード31の隣接面と反対側となる面において、アースリード71に結合される電極を同種の電極としている。したがって、後段の電子回路との接続において同種の電極に接続されている電極リードおよびアースリードをまとめることができる。これによって後段電子回路との接続を容易にすることが可能である。
【0058】
また、プリント基板30の両面に電極リード31を露出させて配列し、当該プリント基板30上に露出された電極リード31に対し、絶縁溝Dが形成された積層圧電体(14・24)の面を結合させ、電極リード31に同種の電極のみが電気的結合されるように構成されている。したがって、超音波トランスデューサ100における圧電素子として内部電極を有する積層圧電体を採用することが可能となる。結果、2次元アレイの超音波トランスデューサを採用することにより各圧電素子が微細化しても、電気インピーダンスを低減させることが可能であり、延いては超音波トランスデューサにおける性能向上が可能となる。
【0059】
(アースリードの連結にかかる構造)
次に図1および図5を用いて、超音波トランスデューサユニット100aにおけるアースリード71の連結にかかる構造について説明する。図5は、この発明の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aがスペーサ80を介して組み合わされた状態を示す概略斜視図である。
【0060】
各超音波トランスデューサユニット100a群(超音波トランスデューサ100)は、図5に示すようにスペーサ80を介して結合されてから、図1に示すようにアースリード71が伸延される側面に連結バー90が形成される。この連結バー90により、当該超音波トランスデューサユニット100a群の側面に伸延した各アースリード71それぞれを連結させる。当該連結バー90の各アースリード71の連結によって、積層圧電体チャンネル毎に分離独立した電極リード31を有するプリント基板30と分離して、アース接続される前面電極12・22および内部前面電極12a・22aを共通化させる。
【0061】
(積層圧電体間の絶縁にかかる構造)
本実施形態においては、図5に示すような各超音波トランスデューサユニット100aがスペーサ80を介して結合され2次元アレイ状に配列された状態から、図1に示すように、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24それぞれの間に絶縁樹脂91を充填する。
【0062】
このように第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24それぞれの間に絶縁樹脂91を充填することで、積層圧電体間での干渉を防止することができる。
【0063】
(超音波トランスデューサ100と超音波診断装置本体との接続)
次に図4を用いて本実施形態にかかる超音波トランスデューサ100と超音波診断装置本体との接続構成の一例について説明する。図4は、超音波トランスデューサ100の接続方法の一例であり、本発明の第1の実施形態における超音波トランスデューサ100とIC基板40とを接続する機構および、IC基板40上のIC45と超音波診断装置本体とを接続する機構を説明するための図である。
【0064】
図4に示すように、超音波トランスデューサ100とIC基板40とは中継基板41を介して接続される。すなわち、超音波トランスデューサユニット100aごとの1枚のプリント基板30それぞれにおける音響整合層10・20側の一端と反対側の他端が、中継基板41に形成された嵌合溝に嵌合されて接続され、当該接続されたプリント基板30の両面に配列された複数の電極リード31が中継基板41を介し、IC基板40上のIC45と接続される。
【0065】
この中継基板41は、例えば、超音波トランスデューサ100に対向する側の面に中継パッドが電極リード31それぞれの位置に応じて配設され、超音波トランスデューサ100の電極リード31のそれぞれと接続される。このとき超音波トランスデューサ100側に電極パッドを設け、電極パッドと中継パッドを接続してもよい。また、中継基板は、樹脂やセラミクスなどからなる平板形状の基板を用いることが望ましい。
【0066】
また、図示しないが、連結バー90に連結されたアースリード71は、例えば不図示の超音波プローブの筐体等を介してアース接続される。
【0067】
また、図4に示すように、IC基板40は超音波診断装置本体と電気的に接続を行うケーブル(共に図示せず)を介して接続され、IC基板40と当該ケーブルとはケーブル接続基板50によって接続される。当該ケーブル接続基板50としては、例えば柔軟性を備えたFPCが用いられ、その一端は、IC基板40における信号リード(図示せず)が設けられた一端とは反対側の一端に接続されている。
【0068】
コネクタ62は、ケーブル接続基板50の他端及び前記ケーブルの一端にそれぞれ設けられている。このコネクタ62によって、ケーブル接続基板50と超音波診断装置本体に接続されるケーブルとが接続される。
【0069】
図4に示すように、超音波トランスデューサ100と超音波診断装置本体との間に設けられたIC基板40にはIC45が形成されており、IC45は中継基板41などを介して電極リード31と接続されている。また、IC45は、超音波トランスデューサ100によって超音波の送波または受波を行うために第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24を駆動させ、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24が受波した信号の処理を行う。このような構成により、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24が受波して信号に変換し、IC基板40上の各IC45に送信され、IC45によって処理された信号は、ケーブル接続基板50を介して超音波診断装置本体に送信されることとなる。
【0070】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aによる超音波トランスデューサ100の作用及び効果について説明する。
【0071】
本発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aによって構成される超音波トランスデューサおよびそれを用いた超音波プローブは、1枚のプリント基板30の表面および裏面に積層圧電体の配列に対応した配列で電極リード31を備え、当該電極リード31上に第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24を備えて構成されている。
【0072】
したがって、プリント基板30の表面だけでなく裏面にも電極リード31が設けられており、1枚のプリント基板の1つの面にのみ圧電素子を配列する構成と比較して、2列の圧電素子に対し1枚の基板で後段電子回路との接続を行うことができ、超音波トランスデューサ100と後段(例えば中継基板41)の接続点数を減少させることが可能となる。結果として、プリント基板の枚数を低減させるとともに、超音波トランスデューサと後段電子回路との接続を容易にし、かつ当該接続部分の小型化を図ることができ、2次元アレイの超音波トランスデューサにおける後段電子回路との接続の煩雑さを解消することができる。
【0073】
また、本実施形態においては図2および図6に示すように、プリント基板30の両面の電極リード31に結合される電極を、同種の電極とする。例えば第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24の背面に形成され、圧電素子を独立に駆動させる背面電極16・26と、同様の作用を行うための内部背面電極16a・26aとを電極リード31に接続させることで、1枚のIC基板40に接続される特定の電極リード31を集中させて専用のIC45として接続することが可能となる。つまり圧電素子の駆動にかかる電極とIC45との接続にあたり、ある程度集中して専用IC45に接続することが可能である。そうすれば膨大な数の信号がいくつかにまとまって特定のIC45に集中して処理され、信号数の加減などを行うことができ、膨大な数の信号を効率よく処理することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態においては、前面電極12・22、内部背面電極16a・26a、内部前面電極12a・22a、背面電極16・26と後段の電子回路を接続する電極リード31やアースリード71として金属薄膜を用いているから積層圧電体を構成する各圧電素子の振動を阻害するおそれがなく、良好な超音波特性を確保することが可能である。また、プリント基板30上に電極リード31を形成し、当該電極リード31上に積層圧電体を形成する構成となっているから、積層される圧電素子間の内部電極と電極リード31の結合を可能とすることにより、超音波トランスデューサに内部電極を有する積層圧電体を採用することが可能である。したがって、2次元アレイの超音波トランスデューサを採用することにより各圧電素子が微細化しても、電気インピーダンスを低減させ、延いては超音波トランスデューサにおける性能向上が可能となる。
【0075】
[第2の実施形態]
図7〜図9は、本発明にかかる超音波トランスデューサの第2の実施形態を示す図であり、図7は、この発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100を示す概略斜視図である。また、図8はこの発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100を構成する超音波トランスデューサユニット100aおよび第2のプリント基板30bを示す概略斜視図である。図9は、この発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aを構成する第1のプリント基板30a、電極リード31aと第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24と、第2のプリント基板30bおよび電極リード31bとの結合関係を示す概略構成図である。以下、この実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の構成について説明する。
【0076】
(第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の概要構成)
図7に示す第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100においても、複数の超音波トランスデューサユニット100aが積層されて構成される。また、図8および図9に示すように、この超音波トランスデューサユニット100aにおいても、音響整合層10・20を超音波ビームの照射方向に合わせて、第1のプリント基板30aの表面に音響整合層10、前面電極12、第1の積層圧電体14、背面電極16、バッキング材18が配置され、裏面には音響整合層20、第2の積層圧電体24、バッキング材28が配置される。なお、この第1のプリント基板30aは、第1の実施形態にかかるプリント基板と同様に両面に電極リード31aが複数設けられている。
【0077】
また、この実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の音響整合層10・20、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24およびバッキング材18・28は、当該各部の作用、第1のプリント基板30aおよび電極リード31aに対して配置される位置や接続手段において前述の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサと同様であり説明を割愛する。
【0078】
また、第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100における前面電極12・22、内部背面電極16a・26a、内部前面電極12a・22a、背面電極16・26についての構造や配置される位置ついては、第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサと同様に、音響整合層10・20、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24、バッキング材18・28の間に形成される。さらに、本実施形態の超音波トランスデューサユニット100aは、第1の実施形態の超音波トランスデューサユニット100aと同様に、背面電極16・26および内部背面電極16a・26aが金属薄膜70aを介して第1のプリント基板30aにおける電極リード31aに結合され接続される。
【0079】
ただし、この発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100においては、第1の実施形態と異なり、積層圧電体における第1のプリント基板30aと接着されている面と反対側の面においては、アースリード71が形成されない。また、超音波トランスデューサ100を構成する各超音波トランスデューサユニット100aそれぞれの間は、スペーサではなく第2のプリント基板30bを介して接着されている。
【0080】
すなわち、図8および図9に示すように、当該第2のプリント基板30bと超音波トランスデューサユニット100aとは、第1のプリント基板30aと同様に、金属薄膜70bを介して第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24と結合される。また、図9に示すように、前面電極12・22および内部前面電極12a・22aは、超音波トランスデューサユニット100a間に形成された第2のプリント基板30bにおける電極リード31bと結合され、接続される。
【0081】
言い換えると、一方の背面電極16・26および内部背面電極16a・26aについては、第1の実施形態と同様に超音波トランスデューサユニット100aにおける第1のプリント基板30aの電極リード31aによって各積層圧電体の列ごとに引き出され、他方の前面電極12・22および内部前面電極12a・22aについては、第1の実施形態と異なり、超音波トランスデューサユニット100aそれぞれの間に形成された第2のプリント基板30bにおける電極リード31bによって、各積層圧電体の列ごとに引き出される。
【0082】
また、この発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100においても、超音波トランスデューサユニット100aにおける第1のプリント基板30aの電極リード31aが中継基板41を介してIC基板40のIC45に接続される。さらに、第2の実施形態においては、図4に例示する第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサと異なり、中継基板41に対して第2のプリント基板30bおよび電極リード31bも接続される。この第1のプリント基板30a・電極リード31aおよび第2のプリント基板30b・電極リード31bと中継基板41・IC基板40との接続構造については、この発明の第1実施形態と同じであり説明を割愛する。
【0083】
したがって、第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100においては、背面電極16・26および内部背面電極16a・26aだけでなく、前面電極12・22および内部前面電極12a・22aについても分離独立して後段の電子回路(例えばIC基板40など)に接続される。また、一方の電極リード31aは第1のプリント基板30aごとに、他方の電極リード31bは、第2のプリント基板30bごとに、異なるIC基板40に接続することが可能である。
【0084】
(第2実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aの構成)
次に図8および図9を用いて、この発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aについて説明する。
【0085】
図8および図9に示すように、第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aは、第1の実施形態と同じく、表面および裏面において積層圧電体の配列に対応した複数の電極リード31aが設けられた第1のプリント基板30aを備え、この第1のプリント基板30aの両面に1列の積層圧電体(14・24)を配列して形成される。
【0086】
また図8に示す超音波トランスデューサユニット100aは、前述のように、第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aとほぼ同一であり、異なる点は、第1の実施形態にかかるアースリード71が設けられていた面において、アースリードに替えて、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24上に金属薄膜70bが形成される(図9)。なお、この金属薄膜70bは、金属薄膜70aと同様に第1の実施形態における金属薄膜と同じであり説明を割愛する。
【0087】
この金属薄膜70bは、超音波トランスデューサユニット100a側の面と反対側の面において、図8および図9に示すように第2のプリント基板30bにおける電極リード31bに結合され、接続される。つまり、超音波トランスデューサユニット100aそれぞれの間には、金属薄膜70bを介して第2のプリント基板30bが結合され、当該超音波トランスデューサユニット100aそれぞれは、第2のプリント基板30bによって接着される。なお、この第2のプリント基板30bは、第1のプリント基板30aと同様に、積層圧電体の配列に対応した間隔・配列で電極リード31bを表面および裏面に備えている。また、当該電極リード31bについては第1のプリント基板30aにおける電極リード31bと同様である。
【0088】
また、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における内部前面電極12a・22a、前面電極12・22については、第1の実施形態と異なり、金属薄膜70bを介して第2のプリント基板30bにおける電極リード31bに接続され、電極リード31bにより独立に引き出される。
【0089】
第2の実施形態においては前面電極12・22および内部前面電極12a・22aについても第2のプリント基板30bにおける電極リード31bおよび中継基板41を介してIC基板40のIC45に接続される。すなわち、第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100では、超音波トランスデューサユニット100aにおける一方の第1のプリント基板30aの電極リード31aに、背面電極16・26および内部背面電極16a・26aが接続される。他方、超音波トランスデューサ100間に形成される第2のプリント基板30bの電極リード31bには、前面電極12・22および内部前面電極12a・22aが接続される。
【0090】
また、第2の実施形態にかかる前面電極12・22、内部背面電極16a・26a、内部前面電極12a・22aおよび背面電極16・26それぞれにはパルサが接続され、極性を変えたバイポーラパルスにより、前面電極12・22および内部前面電極12a・22aと、背面電極16・26および内部背面電極16a・26aとを交互に動作させることが可能である。このように交互に動作させることで、極性を変えたバイポーラパルスに応じた超音波ビームを出力することができる。すなわち、被検体に超音波パルスを180度位相をずらして2回送信し、2つのエコー信号を加算して高調波成分のみを抽出して画像化することが可能であり、高調波イメージング画像を向上させることができるものである。
【0091】
なお、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における側面の構造や、積層圧電体間の絶縁にかかる構造(絶縁樹脂91)は、第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサと同様であり説明を割愛する。
【0092】
また、第2の実施形態にかかるIC基板40のIC45は、低電圧用回路および高電圧回路に区別され、いずれか一方が第1のプリント基板30aの電極リード31aに接続され、他方は第2のプリント基板30bの電極リード31bに接続される。
【0093】
また、第2の実施形態にかかるIC基板40と超音波診断装置本体の接続構造については第1の実施形態と同様である。
【0094】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aによる超音波トランスデューサ100の作用及び効果について説明する。
【0095】
本発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aによって構成される超音波トランスデューサ100およびそれを用いた超音波プローブにおいては、第1のプリント基板30aの表面および裏面に積層圧電体の配列に対応した配列で電極リード31aを備え、当該電極リード31a上に第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24を備え、当該電極リード31aには背面電極16・26および内部背面電極16a・26aが接続されて構成されている。
【0096】
また、この発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100では、積層される超音波トランスデューサユニット100aそれぞれが隣り合う面において、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24上に金属薄膜70bを形成し、かつ当該金属薄膜70bを介して超音波トランスデューサユニット100aそれぞれを接着するとともに、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における前面電極12・22および内部前面電極12a・22aが第2のプリント基板30bにおける電極リード31bに接続される。また、前面電極12・22および内部前面電極12a・22aについても分離独立して後段の電子回路(例えばIC基板40など)に接続される構成となっている。
【0097】
すなわち、本実施形態においては、第1のプリント基板30aの電極リード31aには、背面電極16・26および内部背面電極16a・26aのみが接続され、他方、第2のプリント基板30bの電極リード31bには、前面電極12・22および内部前面電極12a・22aのみが接続される。したがって、電極リード31a・31bは、第1のプリント基板30aごとに、また第2のプリント基板30bごとに、異なるIC基板40に接続することが可能である。
【0098】
したがって、プリント基板ごとにまとめてIC基板40に接続される特定の電極リード31を集中させて専用のIC45として接続することが可能となる。つまり圧電素子の駆動にかかる電極とIC45との接続にあたり、ある程度集中して専用IC45に接続することが可能である。そうすれば膨大な数の信号がいくつかにまとまって特定のIC45に集中して処理され、信号数の加減などを行うことができ、膨大な数の信号を効率よく処理することが可能となる。
【0099】
また、第2の実施形態にかかるIC基板40のIC45は、低電圧用回路および高電圧回路に区別され、いずれか一方が第1のプリント基板30aの電極リード31aに接続され、他方は第2のプリント基板30bの電極リード31bに接続されて構成されている。
【0100】
したがって、本実施形態における超音波トランスデューサ100のように被検体に超音波パルスを180度位相をずらして2回送信し、2つのエコー信号を加算して高調波成分のみを抽出して画像化させるような構成にすることが可能であり、高調波イメージング画像を向上させる構成を実現可能とする。
【0101】
また、本実施形態においては、前面電極12・22、内部背面電極16a・26a、内部前面電極12a・22a、背面電極16・26と後段の電子回路を接続する電極リード31やアースリード71として金属薄膜を用いているから積層圧電体を構成する各圧電素子の振動を阻害するおそれがなく、良好な超音波特性を確保することが可能である。また、プリント基板30上に電極リード31を形成し、当該電極リード31上に積層圧電体を形成する構成となっているから、積層される圧電素子間の内部電極と電極リード31の結合を可能とすることにより、超音波トランスデューサに内部電極を有する積層圧電体を採用することが可能である。したがって、2次元アレイの超音波トランスデューサを採用することにより各圧電素子が微細化しても、電気インピーダンスを低減させ、延いては超音波トランスデューサにおける性能向上が可能となる。
【0102】
[第3の実施形態]
図10および図11は、本発明の第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100を示す図であり、図10は、この発明の第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aがスペーサ80を介して組み合わされた状態を示す概略斜視図である。図11は、この発明の第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aを構成するプリント基板30、電極リード31と、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24との結合関係を示す概略構成図である。以下、第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の構成について説明する。
【0103】
(第3実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の概要構成)
図10に示す第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100においても、複数の超音波トランスデューサユニット100aが積層されて構成される。また、図10および図11に示すように、この超音波トランスデューサユニット100aにおいても、音響整合層10・20を超音波ビームの照射方向に向けた配列で、プリント基板30の表面に音響整合層10、前面電極12、第1の積層圧電体14、背面電極16、バッキング材18が配置され、裏面には音響整合層20、第2の積層圧電体24、バッキング材28が配置される。なお、このプリント基板30は、第1の実施形態にかかるプリント基板30と同様に両面に電極リード31が複数設けられている。
【0104】
また、この発明の第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の音響整合層10・20、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24およびバッキング材18・28は、プリント基板30上の配列において前述の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサと同様でありその配列についての説明を割愛する。また、音響整合層10・20およびバッキング材18・28の作用、接続手段において前述の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサと同様であり説明を割愛する。
【0105】
ただし、第3の実施形態においては、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24の構造および作用、プリント基板30および当該プリント基板30上に形成される電極リード31の構造、金属薄膜70およびアースリード71の構造が異なる。
【0106】
第3の実施形態における積層圧電体は、図10および図11に示すように、第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100と異なり、積層された圧電素子のうち、1つの背面電極16・26側の圧電素子と、当該圧電素子に対する超音波ビームの照射方向と直交する方向における隣の圧電素子との2つの圧電素子が分割されずに連結されている。さらに、この連結されている2つの圧電素子それぞれの間には、第1の実施形態と同様にバッキング材18・28に至る積層圧電体を分割する分割溝が形成される。
【0107】
また、第3の実施形態におけるプリント基板30は、図11に示すように、第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100と異なり、1つおきに深さの異なる分割溝が形成されている。この分割溝は、プリント基板30の超音波ビームの照射方向側の端部から反対側に向けて形成される。また、このようにして分割溝が形成されたプリント基板30の形状は、図11に示すように、音響整合層10・20、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24およびバッキング材18・28との隣接面の形状に合わせて分割溝が形成されている。同様に電極リード31も積層圧電体との隣接部分においては当該積層圧電体の形状に合わせた形状となっている。
【0108】
また先に述べた、本実施形態における積層圧電体の背面電極16・26側の圧電素子の連結部分においては、電極リード31も隣の電極リード31と連結され、超音波ビームの照射方向と反対側の端部に向かって、背面電極16(または背面電極26)に接続される2つの電極リード31が1つにまとめられて伸延される。なお、背面電極16・26と電極リード31とは、金属薄膜70によって結合される。
【0109】
また、第3の実施形態における金属薄膜70は、第1の実施形態と異なり、先に述べた連結した2つの圧電素子の形状に合わせて、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24における背面電極16・26側の圧電素子と結合される部分までは分割され、連結された圧電素子と結合される部分においては積層圧電体の形状に合わせて連結される。つまり、金属薄膜70の形状は、連結された隣り合う2つの積層圧電体の形状に合わせて形成される。
【0110】
またアースリード71も第1の実施形態と異なり、連結された隣り合う2つの積層圧電体におけるプリント基板30との隣接面の形状に合わせて形成される。つまり、積層圧電体に形成される分割溝のように深さの異なる分割溝が1つおきに形成される。
【0111】
また、図10に示すように、プリント基板30、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24、バッキング材18・28、金属薄膜70およびアースリード71によって形成される、第3の実施形態の超音波トランスデューサユニット100aそれぞれの間には、第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100と同様にスペーサ80が設けられる。このスペーサ80の構造や作用および超音波トランスデューサユニット100aとの結合については、第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100と同様であり説明を割愛する。
【0112】
また、この発明の第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100においても、超音波トランスデューサユニット100aにおけるプリント基板30の電極リード31が中継基板41を介してIC基板40のIC45に接続される。このプリント基板30・電極リード31と、中継基板41・IC基板40・IC45との接続構造については、この発明の第1実施形態と同じであり説明を割愛する。
【0113】
したがって、第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサ100は、プリント基板31の表裏面に形成された複数の電極リード31の配列間隔に対して、当該配列間隔よりさらに等分割(2分割)した間隔を圧電素子の配列間隔としたサブダイス構造となっている。この圧電素子のサブダイス構造により、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24が超音波ビームの照射方向と直交する方向に振動してしまう不要振動を防止することができ音響特性を向上させることが可能となる。
【0114】
なお、本実施形態においては積層圧電体が電極リード31の配列間隔に対して2分割されているが、本発明はこれに限定されず3分割以上であってもよい。また、本実施形態においては積層圧電体または圧電素子のサブダイス構造として、背面側を連結させる構造(積層圧電体を分割するが、バッキング材18に至らない分割溝を形成する構造)となっているが、本発明はこれに限定されず、積層圧電体を分割するすべての分割溝をバッキング材18に至る溝としつつ、1つの電極リード31に対し、当該分割された隣接する複数の積層圧電体を接続し、1チャンネルとするサブダイス構造であってもよい。
【0115】
(第3実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aの構成)
次に図10および図11を用いて、この発明の第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aについて説明する。
【0116】
図10および図11に示すように、第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aは、第1の実施形態と同じく、表面および裏面において積層圧電体の配列に対応する複数の電極リード31が設けられたプリント基板30を備え、このプリント基板30の両面に1列分の積層圧電体それぞれを配列して形成される。
【0117】
ただし、前述のように本実施形態における超音波トランスデューサユニット100aは、第1の実施形態と異なり、第1の積層圧電体14の隣り合う2つの積層された圧電素子における背面電極16側の圧電素子が共通化されており、同じく第2の積層圧電体24の隣り合う2つの積層された圧電素子における背面電極26側の圧電素子が共通化されている。また、当該共通化された圧電素子の背面に形成される背面電極16・26についても隣り合う2つの積層圧電体において共通となっている。
【0118】
つまり図10および図11に示すように、音響整合層10・20および内部前面電極12a・22aまでを分割する分割溝と、音響整合層10・20からバッキング材18・28まで至る分割溝が1つおきに交互に形成される。
【0119】
また、前述のように本実施形態における超音波トランスデューサユニット100aでは、第1の実施形態と異なり、プリント基板30に形成される分割溝が、第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24の形状に合わせて、1列分の当該積層圧電体それぞれを配置したときにバッキング材18・28に対応する位置まで至る分割溝と、内部背面電極16a・26aからバッキング材18・28までの間に対応する位置まで至る分割溝とが1つおきに交互に形成される。
【0120】
また、前述のように本実施形態における超音波トランスデューサユニット100aでは、第1の実施形態と異なり、積層圧電体の電極と結合される電極リード31が本実施形態の積層圧電体の形状に合わせ、積層圧電体における背面側の圧電素子と接着する部分において連結され、共通化されている。また、共通化された電極リード31は、共通化されたまま超音波ビームの照射方向と反対側に向かって伸延する。
【0121】
また、前述のように本実施形態における超音波トランスデューサユニット100aでは、第1の実施形態と異なり、プリント基板30と積層圧電体の接着にかかる金属薄膜70が本実施形態の積層圧電体の形状に合わせ、積層圧電体における背面側の圧電素子と接着する部分において連結され、共通化されている。
【0122】
また、本実施形態におけるアースリード71は、本実施形態の積層圧電体の形状に合わせて、積層圧電体の前面電極12・22側から、バッキング材18・28に対応する位置まで至る分割溝と、内部背面電極16a・26aからバッキング材18・28までの間に対応する位置まで至る分割溝とが1つおきに交互に形成される(図10)。
【0123】
また、本発明の第3の実施形態にかかる第1の積層圧電体14・第2の積層圧電体24、プリント基板30、電極リード31におけるその他の部分は、第1の実施形態と同様であり、説明を割愛する。
【0124】
なお、第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24における側面の構造や、積層圧電体間の絶縁にかかる構造(絶縁樹脂91)は、第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサと同様であり説明を割愛する。
【0125】
また、第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aとIC基板40およびIC45の接続構造は第1の実施形態と同様であり、また、IC基板40と超音波診断装置本体の接続構造については第1の実施形態と同様である。
【0126】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aによる超音波トランスデューサ100の作用及び効果について説明する。
【0127】
本発明の第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニット100aによって構成される超音波トランスデューサおよびそれを用いた超音波プローブは、1枚のプリント基板30の表面および裏面に積層圧電体の配列に対応した配列で電極リード31を備え、当該電極リード31上に第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24を備えて構成されている。
【0128】
したがって、プリント基板30の表面だけでなく裏面にも電極リード31が設けられており、1枚のプリント基板の1つの面にのみ圧電素子を配列する構成と比較して、2列の圧電素子に対し1枚の基板で後段電子回路との接続を行うことができ、超音波トランスデューサ100と後段電子回路(例えば中継回路)との接続点数を減少させることが可能となる。結果として、プリント基板の枚数を低減させるとともに、超音波トランスデューサと後段電子回路との接続を容易にし、かつ当該接続部分の小型化を図ることができ、2次元アレイの超音波トランスデューサにおける後段電子回路との接続の煩雑さを解消することができる。
【0129】
また、本実施形態においては、プリント基板30の両面の電極リード31に結合される電極を、同種の電極とする。例えば第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24の背面に形成され、圧電素子を独立に駆動させる背面電極16・26と、同様の作用を行うための内部背面電極16a・26aとを電極リード31に接続させることで、1枚のIC基板40に接続される特定の電極リード31を集中させて専用のIC45として接続することが可能となる。つまり圧電素子の駆動にかかる電極とIC45との接続にあたり、ある程度集中して専用IC45に接続することが可能である。そうすれば膨大な数の信号がいくつかにまとまって特定のIC45に集中して処理され、信号数の加減などを行うことができ、膨大な数の信号を効率よく処理することが可能となる。
【0130】
また、本実施形態においては、前面電極12・22、内部背面電極16a・26a、内部前面電極12a・22a、背面電極16・26と後段の電子回路を接続する電極リード31との電気的結合を行う接続媒体や、アースリード71として金属薄膜を用いているので積層圧電体を構成する各圧電素子の振動を阻害するおそれがなく、良好な超音波特性を確保することが可能である。また、プリント基板30上に電極リード31を形成し、当該電極リード31上に積層圧電体を形成する構成となっているので、積層される圧電素子間の内部電極と電極リード31の結合を可能とすることにより、超音波トランスデューサにおいて内部電極を有する積層圧電体を採用することが可能である。したがって、2次元アレイの超音波トランスデューサを採用することにより各圧電素子が微細化しても、電気インピーダンスを低減させ、延いては超音波トランスデューサにおける性能向上が可能となる。
【0131】
また、本実施形態における第1の積層圧電体14および第2の積層圧電体24は、隣り合う2つの積層された圧電素子のうち、背面側の圧電素子が連結され、背面電極16・26が共通化されている。したがって、2次元アレイの超音波トランスデューサにおける圧電素子が微細化されても圧電素子の不要振動(超音波ビームの照射方向と直交する方向の振動)を排除することでき、超音波トランスデューサの超音波特性を向上させることが可能である。
【0132】
(変形例)
次に、本発明にかかる超音波トランスデューサの変形例について以下に説明する。
【0133】
以上説明した第1の実施形態〜第3の実施形態においては、プリント基板30(または第1のプリント基板30a、第2のプリント基板30b)を音響整合層10・20の側面から、バッキング材18・28の側面まで伸長して形成したが、本発明はそれに限定されず、圧電素子側面に形成した金属薄膜70等を介してプリント基板30における電極リード31と電気接続出来ればよい。
【0134】
また、以上説明した各実施形態においては、音響整合層10・20およびバッキング材18・28を1層構造としているが、本発明はこれに限定されず、例えば、音響整合層10・20およびバッキング材18・28の双方またはいずれか一方を多層構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサの構成を示す概略斜視図。
【図2】この発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサを構成する超音波トランスデューサユニットおよびスペーサを示す概略斜視図。
【図3】この発明の第1の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニットを構成するプリント基板、電極リードと積層圧電体の結合関係を示す概略構成図。
【図4】この発明の第1の実施形態における超音波トランスデューサとIC基板とを接続する機構および、IC基板上のICと超音波診断装置本体とを接続する機構を説明するための概略斜視図。
【図5】この発明の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニットがスペーサを介して組み合わされた状態を示す概略斜視図。
【図6】この発明の実施形態にかかる第1の積層圧電または第2の積層圧電体の分割溝の一部を示す概略拡大図。
【図7】この発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサを示す概略斜視図。
【図8】この発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサを構成する超音波トランスデューサユニットおよび第2のプリント基板を示す概略構成図。
【図9】この発明の第2の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニットを構成する第1のプリント基板、電極リードと、第1の積層圧電体および第2の積層圧電体と、第2のプリント基板および電極リードとの結合関係を示す概略構成図。
【図10】この発明の第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニットがスペーサを介して組み合わされた状態を示す概略斜視図。
【図11】この発明の第3の実施形態にかかる超音波トランスデューサユニットを構成するプリント基板、電極リードと、第1の積層圧電体と第2の積層圧電体との結合関係を示す概略構成図。
【図12】超音波トランスデューサの従来の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0136】
100 超音波トランスデューサ
100a 超音波トランスデューサユニット
10 音響整合層
12 前面電極
12a 内部前面電極
14 第1の積層圧電体
16 背面電極
16a 内部背面電極
18 バッキング材
20 音響整合層
22 前面電極
22a 内部前面電極
24 第2の積層圧電体
26 背面電極
26a 内部背面電極
28 バッキング材
30 プリント基板
30a 第1のプリント基板(第2実施形態)
30b 第2のプリント基板(第2実施形態)
31 電極リード
40 IC基板
41 中継基板
45 IC
50 ケーブル接続基板
62 コネクタ
70 金属薄膜
71 アースリード
80 スペーサ
90 連結バー
91 絶縁樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プリント基板と、
超音波を照射する方向に直交する背面および該背面と反対側となる前面に対応して背面電極と前面電極とを有し、該前面および該背面が前記第1プリント基板の表面に直交するようにされ、かつ列状に配置される複数の第1の圧電素子と、
前記第1の圧電素子と同一の構造であってその前面および背面が、前記第1のプリント基板の前記表面と反対側の裏面に直交するようにされ、かつ列状に配置される複数の第2の圧電素子と、
前記第1プリント基板の前記表面上において前記第1の圧電素子それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第1電極リードと、
前記第1プリント基板の前記裏面上において前記第2の圧電素子それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第2電極リードとを備えたこと、
を特徴とする超音波トランスデューサユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波トランスデューサユニットを、複数の前記第1のプリント基板を重ねるように配列することにより、該第1の圧電素子の列と第2の圧電素子の列とが交互に2次元状に配列されること、
を特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記第1プリント基板における第1電極リードおよび第2電極リードのそれぞれには、対応する前記第1の圧電素子および第2の圧電素子それぞれの前記前面電極および前記背面電極のうち、同種の電極のみが結合されること、
を特徴とする請求項2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1プリント基板の表面と対向する前記第1の圧電素子側の一側面と前記第1の電極リードとの間に設けられた導電性の薄膜を介して、該第1プリント基板における該第1電極リードと、該第1の圧電素子における前記前面電極または前記背面電極とが結合され、
前記第1プリント基板の裏面と対向する前記第2の圧電素子側の一側面と前記第2の電極リードとの間に設けられた導電性の薄膜を介して、該第1プリント基板における該第2電極リードと、該第2の圧電素子における前記前面電極または前記背面電極とが結合されること、
を特徴とする請求項2または3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記前面電極または背面電極のうち、前記第1電極リードとは導通されない方の電極それぞれを第1アース電極とし、前記各第1の圧電素子における前記一側面と反対側となる他の側面それぞれの面上において、導電性の薄膜により該第1アース電極のそれぞれを連結した第1アースリードを形成し、
前記前面電極または背面電極のうち、前記第2電極リードとは導通されない方の電極それぞれを第2アース電極とし、前記各第2の圧電素子における前記一側面と反対側となる他の側面それぞれの面上において、導電性の薄膜により該第2アース電極のそれぞれを連結した第2アースリードを形成すること、
を特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記超音波トランスデューサユニットの側面であって、前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の前記前面、前記背面、前記一側面および前記他の側面と直交する側面に、前記第1および第2アースリードを伸延させ、連結する連結部を形成したこと、
を特徴とする請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記複数並べられた各超音波トランスデューサユニットそれぞれの間には、該各超音波トランスデューサユニット間を絶縁するとともに該各超音波トランスデューサユニットを結合させるスペーサが設けられていること、
を特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記第1および第2の圧電素子のそれぞれは、前記前面から前記背面の方向に複数の圧電素子が積層されて構成され、該積層される該複数の圧電素子それぞれの間には内部電極が形成される積層圧電体であり、
前記複数の圧電素子それぞれの間に形成される前記内部電極は、該複数の圧電素子の1つおきに一方を前面電極と同種の内部前面電極とし、他方を背面電極と同種の内部背面電極とすること、
を特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
裏面には、前記複数の第1の圧電素子それぞれの前記一側面と反対側となる他の側面が列状に配置され、かつ該裏面上においてそれぞれの前記第1の圧電素子の前記第1電極リードとは導通されない他方の前記前面電極または前記背面電極と直接にまたは間接に結合される複数の第3の電極リードと、
表面には、前記複数の第2の圧電素子それぞれの前記一側面と反対側となる他の側面が列状に配置され、かつ該表面上においてそれぞれの前記第2の圧電素子の前記第2電極リードとは導通されない他方の前記前面電極または前記背面電極と直接にまたは間接に結合される複数の第4の電極リードとを有する第2プリント基板を備えたこと、
を特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記第2プリント基板の裏面と対向する前記第1の圧電素子の他の側面と前記第3の電極リードとの間に設けられた導電性の薄膜を介して、該第2プリント基板における該第3電極リードと、該第1の圧電素子における前記他方の前記前面電極または前記背面電極とが結合され、
前記第2プリント基板の表面と対向する前記第2の圧電素子の他の側面と前記第4の電極リードとの間に設けられた導電性の薄膜を介して、該第2プリント基板における該第4電極リードと、該第2の圧電素子における前記他方の前記前面電極または前記背面電極とが結合されること、
を特徴とする請求項9に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記第1および第2の圧電素子のそれぞれは、前記前面から前記背面の方向に複数の圧電素子が積層されて構成され、該積層される該複数の圧電素子それぞれの間には内部電極が形成される積層圧電体であり、
前記複数の圧電素子それぞれの間に形成される前記内部電極は、該複数の圧電素子の1つおきに一方を前面電極と同種の内部前面電極とし、他方を背面電極と同種の内部背面電極とすること、
を特徴とする請求項10に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項12】
前記第1の圧電素子および前記第2の圧電素子の前記一側面上および他の側面上には、各電極リードと結合されない各電極を絶縁するための溝が形成され、該溝には絶縁樹脂を充填すること、
を特徴とする請求項8または11に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項13】
前記溝は、前記一側面または前記他の側面のいずれか一方の面において、前記前面電極が形成される前記前面側の端部および前記内部前面電極が形成される圧電素子間の境界上に形成され、かつ該一方の面と反対側となる他方の面において前記背面電極が形成される前記背面側の端部および前記内部背面電極が形成される圧電素子間の境界上に形成されること
を特徴とする請求項12に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項14】
前記列状に配列された第1の圧電素子それぞれの間および前記列状に配列された第2の圧電素子それぞれの間には電気絶縁樹脂が設けられたこと、
を特徴とする請求項2〜13のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項15】
前記積層圧電体を構成する前記複数の圧電素子のうち、前記背面側の圧電素子は、隣接する該背面側の圧電素子と連結されて複数個ずつにまとめられ、かつ該複数個ずつに共通の背面電極を有し、1チャンネルとして駆動されること
を特徴とする請求項2〜14のいずれか1つに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項16】
超音波トランスデューサを備えて構成される超音波プローブであって、
第1プリント基板と、
超音波を照射する方向に直交する背面および該背面の反対側となる前面に対応して背面電極と前面電極とを有し、該前面および該背面が前記第1プリント基板の表面に直交するようにされ、かつ列状に配置される複数の第1の圧電素子と、
前記第1の圧電素子と同一の構造であってその前面および背面が、前記第1のプリント基板の前記表面と反対側の裏面に直交するようにされ、かつ列状に配置される複数の第2の圧電素子と、
前記第1プリント基板の前記表面上において前記第1の圧電素子それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第1電極リードと、
前記第1プリント基板の前記裏面上において前記第2の圧電素子それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第2電極リードとを備えたこと、
を特徴とする超音波プローブ。

【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−72370(P2009−72370A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244215(P2007−244215)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】