説明

超音波プローブおよび超音波診断装置

【課題】超音波プローブにおける発熱を所定の値以下に抑えながらも操作者が最適な画像を得られる超音波プローブおよび超音波診断装置を提供する。
【解決手段】時間分解能と空間分解能とのいずれを優先するか設定する第1の優先度設定部26と、第1の優先度設定部26により設定された優先度および予め設定された測定深度に応じて、許容消費電力以下の消費電力となるよう時間分解能に関わる測定パラメータおよび空間分解能に関わる測定パラメータを設定するプローブ制御部11、42とを超音波プローブ1、40に設けたことにより、超音波プローブ1、40における発熱を所定の値以下に抑えながらも、診断部位や診断目的等に応じて、時間分解能を優先した超音波画像を得るか、空間分解能を優先した超音波画像を得るか操作者が設定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の送受信を行う超音波プローブおよび超音波の送受信を行って超音波画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された超音波診断装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコー信号を超音波プローブで受信して、その受信信号を超音波診断装置本体で電気的に処理することにより、超音波画像を生成している。
【0003】
近年、術者等の操作者の利便性を向上させるため、超音波プローブに超音波診断装置の動作を制御する各種スイッチを設けることが考えられている。例えば、特許文献1には、超音波プローブのハンドルに設けられている選択スイッチにより超音波診断装置本体に触れることなく、撮像面の切り替えを適切に行うことが開示されている。
【0004】
また、一般的に、超音波プローブには、超音波を送受信する超音波トランスデューサとして圧電素子が用いられている。超音波を送信する際には、大きなエネルギーを有する駆動信号が超音波トランスデューサに供給される。しかし、駆動信号の全てのエネルギーが超音波トランスデューサにおいて超音波のエネルギーに変換されるわけではなく、熱に変換されるエネルギーもある。そのため、超音波トランスデューサは発熱する。また、超音波トランスデューサによって超音波を送受信するための送受信制御の回路においても駆動信号が熱に変換される。そのため、超音波トランスデューサによって超音波の送信を行うと超音波プローブ全体の温度が上昇する。超音波プローブは人体等の生体に接触させて用いられるので、低温火傷防止等の理由から、表面温度には制限が設けられており、43℃以下にする必要がある。
【0005】
病院での診療や検診等で通常使用される超音波診断装置では、超音波診断装置本体と超音波プローブとは、ケーブルを介して接続されるが、近年ではケーブルの煩わしさを解消し、操作者の利便性を向上させるため、特に、病院等の内部ではなく、災害地等の外部での使用もできる携帯型の超音波診断装置では、超音波診断装置本体と超音波プローブとの間で無線通信を行うワイヤレスプローブが開発されている。ワイヤレスプローブは、超音波トランスデューサに加え、無線通信を行うための種々の回路等をプローブ内部に設けなくてはならないため、ケーブル接続の一般的な超音波プローブより発熱しやすい。
【0006】
超音波プローブの発熱を防止するため、超音波プローブの表面積を大きくすること、超音波プローブに冷却機構を設けることが考えられている。しかし、超音波プローブは小型であることが望ましいが、超音波プローブが小型であるほど表面積が小さいため、放熱面積が小さくなり、超音波トランスデューサや内部の回路等で発生した熱を放熱する能力が小さいという問題がある。また、超音波プローブが小型であるほど冷却機構を実装するスペースが確保しにくいという問題もある。
【0007】
超音波プローブの発熱を防止するための別の方法として、超音波プローブでの消費電力を抑制することが考えられる。特許文献2には、超音波プローブの表面が高温になることを防ぐため、超音波プローブの表面温度に応じて超音波トランスデューサを駆動する条件を自動的に変化させる超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−248973号公報
【特許文献2】特開2005−253776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示の装置は、穿刺針の挿入時の穿刺ガイドラインが表示されている場合に、操作者が意図せずに超音波プローブのスイッチに触れた場合でも、穿刺針の像が検出可能な撮像面から穿刺針の像が見えない他の撮像面に切り替わることがないように、超音波プローブのスイッチの動作を制限するものであり、超音波トランスデューサや送受信制御の回路等における発熱、特に、ワイヤレスプローブの発熱については全く考慮されていないという問題がある。
また、特許文献2に開示の装置では、超音波プローブの表面温度に応じてフレームレート等の値が一義的に決定されてしまうため、操作者にとって望ましい超音波画像が得られない場合があるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、超音波プローブにおける消費電力を許容消費電力以下に抑えて、その発熱を閾値以下に抑えながらも、診断部位や診断目的等に応じて、フレームレートを優先した超音波画像を得るか、画質を優先した超音波画像を得るか操作者が設定することが可能で、操作者が望む所望のフレームレートおよび/または所望の画質の診断用超音波画像を得ることができる超音波プローブおよび超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る超音波プローブは、被検体に向けて超音波を送信し、被検体の測定部位において反射された超音波エコーを受信して取得された受信信号に対して信号処理を行なって生成した伝送信号を、該伝送信号から超音波診断画像を生成する超音波診断装置の装置本体に送信する超音波プローブであって、超音波診断画像を生成するために受信信号を取得する際の時間分解能に関する第1の測定パラメータと空間分解能に関する第2の測定パラメータとのいずれを優先するかについての第1の優先度を設定する第1の優先度設定手段と、信号処理を含む処理に伴う発熱に応じて予め設定された許容消費電力、被検体の測定部位に応じて設定された測定深度、及び第1の優先度設定手段によって設定された第1の優先度に応じて、第1及び第2の測定パラメータの値を設定する測定パラメータ設定手段と、測定パラメータ設定手段によって設定された第1及び第2の測定パラメータの値に基づいて超音波の送受信動作を制御する動作制御手段とを備えたものである。
【0012】
ここで、好ましくは、測定パラメータ設定手段は、許容消費電力以内に収まるように、測定深度、及び第1の優先度に応じて、第1及び第2の測定パラメータの値を設定する。
また、第1の測定パラメータは、超音波診断画像を生成するために受信信号を取得する際のフレームレートであり、第2の測定パラメータは、超音波診断画像を生成するための走査ライン数及び超音波の送受信のチャンネル数を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係る超音波プローブは、さらに、空間分解能に関する第2の測定パラメータに含まれる、走査ライン数とチャンネル数とのいずれを優先するかについての第2の優先度を設定する第2の優先度設定手段を備え、測定パラメータ設定手段は、設定された第2の測定パラメータの値及び第2の優先度設定手段によって設定された第2の優先度に応じて、走査ライン数及びチャンネル数の値を設定することが好ましい。
【0014】
あるいは、本発明に係る超音波プローブは、第1の測定パラメータ、第2の測定パラメータ、測定深度、フレームレート、走査ライン数及びチャンネル数のうち少なくとも1つを表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0015】
本発明に係る超音波プローブは、さらに、被検体の測定部位に対して予め設定された測定深度を初期深度として、初期深度に対して、測定深度を深い方に調整する調整量、または、浅い方に調整する調整量を設定する調整量設定手段を備え、測定パラメータ設定手段は、さらに、予め設定された初期深度及び調整量設定手段によって設定された調整量に応じて、調整された測定深度を設定することが好ましい。
また、優先度設定手段は、回転ダイヤルであることが好ましい。
【0016】
本発明に係る超音波プローブは、さらに、操作者が把持する把持部と、被検体に当接され、超音波を照射するヘッド部と、を備え、優先度設定手段は、把持部及びヘッド部を除く操作者が把持しない位置に設けられることが好ましい。
また、本発明に係る超音波プローブは、さらに、被検体の測定モードを選択する測定モード選択手段を備えることが好ましい。測定モードは、少なくとも1つの測定部位及び/又は静止画を測定するモードを含むものとすることが好ましい。
【0017】
本発明に係る超音波プローブは、さらに、超音波プローブの内部温度又は表面温度を測定する温度センサと、温度センサによって測定された内部温度又は表面温度に基づいて予め設定された許容消費電力の値を変化させる許容値設定手段を備えることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る超音波診断装置は、上記超音波プローブと、超音波診断画像を生成する超音波診断装置本体と、を有する超音波診断装置であって、超音波プローブは、さらに、被検体に向けて超音波を送信し、被検体において反射された超音波エコーを受信して受信信号を出力する超音波送受信部と、超音波送受信部から出力される受信信号に対して信号処理を行なって伝送信号を生成する信号処理部と、信号処理部で生成された伝送信号を、伝送信号から超音波診断画像を生成する超音波診断装置本体に送信する第1の通信部と、を有し、超音波診断装置本体は、超音波プローブの第1の通信部から伝送信号を受信する第2の通信部と、第2の通信部で受信した伝送信号に基づいて超音波診断画像を生成する画像生成部と、画像生成部で生成された超音波診断画像を表示する表示部と、を備える。
【0019】
超音波プローブは、さらに、伝送信号を超音波診断装置本体に無線送信する第1の無線通信部を有し、第1の通信部は、伝送信号を超音波診断装置本体に無線送信する第1の無線通信部であり、第2の通信部は、超音波プローブの第1の無線通信部から伝送信号を無線受信する第2の無線通信部であることが好ましい。
【0020】
好ましくは、表示部は、さらに、測定深度、第1の測定パラメータ、第2の測定パラメータ、第1の測定パラメータであるフレームレート、第2の測定パラメータに含まれる走査ライン数及びチャンネル数のうち少なくとも1つを表示する。
【0021】
また、本発明に係る超音波診断装置は、超音波診断画像を生成する超音波診断装置本体と、超音波診断画像を生成するために超音波を送受信する超音波プローブと、を有する超音波診断装置であって、超音波プローブは、被検体に向けて超音波を送信し、被検体において反射された超音波エコーを受信して受信信号を出力する超音波送受信部と、超音波送受信部から出力される受信信号に対して信号処理を行なって伝送信号を生成する信号処理部と、超音波診断画像を生成するために受信信号を取得する際の時間分解能に関する第1の測定パラメータと空間分解能に関する第2の測定パラメータとのいずれを優先するかについて第1の優先度を設定する第1の優先度設定手段と、超音波送受信部の動作を制御する動作制御手段と、信号処理部で生成された伝送信号及び第1の優先度設定手段で設定された第1の優先度を超音波診断装置本体に送信すると共に、超音波診断装置本体からデータを受信する第1の通信部と、を具備し、超音波診断装置本体は、超音波プローブの第1の通信部から伝送信号及び第1の優先度を受信すると共に、超音波プローブの第1の通信部にデータを送信する第2の通信部と、第2の通信部で受信された伝送信号に基づいて超音波診断画像を生成する画像生成部と、画像生成部で生成された超音波診断画像を表示する表示部と、超音波プローブの第1の優先度設定手段によって設定され、第2の通信部で受信された第1の優先度、超音波プローブの動作に伴う発熱に応じて予め設定された許容消費電力、及び超音波プローブによる被検体の測定部位に応じて設定された測定深度に応じて、第1及び第2の測定パラメータの値を設定する測定パラメータ設定手段と、を具備し、超音波診断装置本体の第2の通信部は、超音波プローブの第1の通信部に、データとして、測定パラメータ設定手段で設定された第1及び第2の測定パラメータの値を送信し、超音波プローブの第1の通信部は、データとして、第1及び第2の測定パラメータの値を受信し、超音波プローブの動作制御手段は、第1の通信部で受信され、測定パラメータ設定手段によって設定された第1及び第2の測定パラメータの値に基づいて超音波プローブの超音波送受信部の動作を制御する。
なお、超音波プローブの第1の通信部及び超音波診断装置本体の第2の通信部は、互いに無線送信する無線通信部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、超音波プローブにおける消費電力を許容消費電力以下に抑えて、その発熱を所定の閾値以下に抑えながらも、操作者が望むフレームレートおよび/または画質に設定することができ、フレームレートおよび/または画質の点で操作者にとって最適な診断画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(A)は、図1に示す超音波診断装置の超音波プローブの外観図であり、(B)、(C)、(D)、および(E)は、それぞれ(A)に示す超音波プローブの第1の優先度設定部、第2の優先度設定部、測定深度調整部、および測定モード選択部の拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す超音波診断装置の超音波プローブの外観図である。
【図5】超音波プローブの表面の温度と許容消費電力との関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る超音波プローブおよび超音波診断装置を、添付に図面に示す好適実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1と無線通信により通信する超音波診断装置本体2とを備えている。
【0026】
超音波プローブ1は、被検体に押し当てて被検体の対象部位に向けて超音波を送信し、被検体の対象部位からの超音波エコーを受信して、対象部位に関する超音波画像情報を取得するためのもので、図1に示すように、1次元または2次元の振動子アレイを構成する複数の超音波トランスデューサ3と、これらのトランスデューサ3にそれぞれ対応して設けられた複数の受信信号処理部4と、パラレル/シリアル変換部5、無線通信部6、送信駆動部7、送信制御部8、受信制御部9、通信制御部10、プローブ制御部11、第1の優先度設定部26、第2の優先度設定部27、測定深度調整部28、測定モード選択部29、表示制御部30および表示部31を有している。
【0027】
複数のトランスデューサ3は、それぞれ送信駆動部7から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を受信信号処理部4へ出力する。各トランスデューサ3は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極にパルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0028】
送信駆動部7は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部8によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ3から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ3に供給する。
【0029】
各チャンネルの受信信号処理部4は、受信制御部9の制御の下で、対応するトランスデューサ3から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含むサンプルデータを生成して、サンプルデータをパラレル/シリアル変換部5に供給する。受信信号処理部4は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことによりサンプルデータを生成してもよい。
パラレル/シリアル変換部5は、複数チャンネルの受信信号処理部4によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0030】
無線通信部6は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部6は、超音波診断装置本体2との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを超音波診断装置本体2に送信すると共に、超音波診断装置本体2から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部10に出力する。
【0031】
通信制御部10は、プローブ制御部11によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部6を制御すると共に、無線通信部6が受信した各種の制御信号をプローブ制御部11に出力する。
【0032】
第1の優先度設定部26は、本発明の最も特徴とする部分であって、フレームレート等の時間分解能に関する測定パラメータと、ライン数およびチャンネル数等の空間分解能に関する測定パラメータとのどちらを優先するかの優先度を設定する。
第2の優先度設定部27も、本発明の最も特徴とする部分であって、第1の優先度設定部26によって設定された優先度に応じた空間分解能に関する測定パラメータの中で、ライン数と、チャンネル数とのどちらを優先するかの優先度を設定する。
なお、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27の詳細およびその設定動作については後述する。
【0033】
測定モード選択部28は、心臓、肝臓、胃などの被検体の測定部位に応じた測定モードや静止画撮影などの測定モードを選択することができる。測定モード選択部28によって測定モードが選択されると、選択された測定モードに応じて、プローブ制御部11によって、測定深度、および測定パラメータが、選択された測定モードにおいて設定されているデフォルト値(デフォルトで設定された測定パラメータ)に設定される。例えば、測定モード選択部28によって測定する部位を選択すれば、測定深度がデフォルト値(初期深度)に決まる。
測定深度調整部29は、測定モード選択部28によって選択された測定モードに応じて設定されたデフォルト値の測定深度(初期深度)を調整することができる。
【0034】
プローブ制御部11は、超音波診断装置本体2から送信される各種の制御信号や、第1の優先度設定部26、第2の優先度設定部27、測定深度調整部28、および測定モード選択部29からの信号に基づいて、超音波プローブ1の各部、例えば、パラレル/シリアル変換部5、送信制御部8、受信制御部9、通信制御部10、および表示制御部30等の制御を行う。
なお、プローブ制御部11は、例えば、内部メモリ(図示せず)を有し、この内部メモリに、測定深度に対する時間分解能に関する測定パラメータと空間分解能に関する測定パラメータとが取り得る値の関係式やテーブル、具体的には、測定深度、フレームレート、ライン数およびチャンネル数が取り得る値の関係式やテーブルを記憶している。なお、これらの関係式やテーブル、例えばLUT(ルックアップテーブル)は、超音波プローブ1の表面温度が既定値以下に制限されていることから超音波プローブ1における発熱を閾値以下に抑えるために、具体的には、超音波プローブ1の動作によって消費される電力の総量が上限値以内に収まる範囲で、すなわち、許容消費電力以下になるように、測定モードに応じて設定される、測定深度、時間分解能に関する測定パラメータのフレームレート、空間分解能に関する測定パラメータのライン数およびチャンネル数が取り得る値を求めるためのものである。
また、プローブ制御部11は、上記内部メモリに、測定モード毎に、デフォルトで設定された、測定深度や、フレームレート、ライン数、およびチャンネル数等の測定パラメータの設定値などを保持している。
【0035】
ここで、本発明においては、プローブ制御部11は、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27によって設定された優先度に基づいて、超音波プローブ1における消費電力を許容消費電力以下に抑え、その発熱を閾値以下に抑えながら、時間分解能に関する測定パラメータ、および空間分解能に関する測定パラメータ、最終的には、フレームレート、ライン数およびチャンネル数等の測定パラメータを設定し、設定された測定パラメータに応じて超音波プローブ1の各部を制御する。
特に、本発明においては、プローブ制御部11は、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27によって設定された優先度に基づいて、超音波プローブ1における消費電力を許容消費電力以下に抑え、その発熱を閾値以下に抑えながら、時間分解能に関する測定パラメータであるフレームレートや、空間分解能に関する測定パラメータであるライン数、およびチャンネル数等の測定パラメータを設定し、設定された測定パラメータに応じて超音波プローブ1の各部を制御する。
また、プローブ制御部11は、測定モード選択部29によって選択された測定モードに基づいて、測定深度や、測定パラメータ等を各測定モードのデフォルト値に設定し、設定された測定パラメータに応じて超音波プローブ1の各部を制御する。
さらに、プローブ制御部11は、測定深度調整部28による調整量に従って超音波プローブ1(複数の超音波トランスデューサ3)による測定深度を制御する。
【0036】
表示制御部30は、プローブ制御部11によって制御され、設定された測定パラメータや、測定深度等の情報を表示部31に表示させる。
表示部31は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部30の制御の下で測定パラメータおよび測定深度等を表示する。
【0037】
なお、超音波プローブ1は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の体外式プローブでもよいし、ラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでもよい。超音波プローブ1の各部は、図示しないバッテリーによって電力が供給される。
超音波プローブ1は、基本的に以上のように構成される。
【0038】
超音波診断装置本体2は、図1に示すように、無線通信部13、シリアル/パラレル変換部14、データ格納部15、画像生成部16、表示制御部17、表示部18、通信制御部19、本体制御部20、操作者が入力操作を行うための操作部22、および動作プログラムを格納する格納部23を有する。
【0039】
無線通信部13は、超音波プローブ1が有する無線通信部6と無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ1に送信する。また、無線通信部13は、無線通信部6から送信される信号を受信し、復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部19は、本体制御部20によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信、およびサンプルデータの受信が行われるように無線通信部13を制御する。
【0040】
シリアル/パラレル変換部14は、本体制御部20によって制御され、無線通信部13から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。
データ格納部15は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部14によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
【0041】
画像生成部16は、本体制御部20によって制御され、データ格納部15から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施し、超音波画像を表す画像信号を生成する。画像生成部16は、整相加算部24と画像処理部25とを含んでいる。
【0042】
整相加算部24は、本体制御部20において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0043】
画像処理部25は、整相加算部24によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部25は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、例えば、Bモード画像信号を生成する。
【0044】
表示制御部17は、本体制御部20によって制御され、画像生成部16によって生成される画像信号に基づいて、表示部18に超音波診断画像を表示させる。
表示部18は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部17の制御の下で超音波診断画像を表示する。
本体制御部20は、操作部22からの入力信号に基づいて、超音波診断装置本体2の各部、例えば、シリアル/パラレル変換部14、画像生成部16、表示制御部17、通信制御部19、および格納部23等の制御を行う。
【0045】
このような超音波診断装置本体2において、シリアル/パラレル変換部14、画像生成部16、表示制御部17、通信制御部19および本体制御部20は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成しても良いし、それらの一部または全部をデジタル回路で構成してもよい。
格納部23は、超音波診断装置本体2、および超音波プローブ1をも含めた超音波診断装置を駆動し、制御するために必要な種々の情報やプログラムを記憶し、格納する。したがって、上記の動作プログラムは、格納部23に格納される。
格納部23における記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROMまたはDVD−ROM等を用いることができる。
超音波診断装置本体2は、基本的に以上のように構成される。
【0046】
続いて、図1に示す本実施形態の超音波診断装置の超音波プローブ1の構造について、図2(A)〜(E)を用いて説明する。
図2(A)は、図1に示す超音波プローブ1の外観図である。同図に示すように、超音波プローブ1は、把持部12と、ヘッド部21とにより構成される。把持部12には、第1の優先度設定部26、第2の優先度設定部27、測定モード選択部28、測定深度調整部29および表示部31が設けられている。ヘッド部21の内部には、トランスデューサ3(図1参照)が設けられており、トランスデューサ3は、ヘッド部21から超音波を送信する。
【0047】
同図に示すように、第1の優先度設定部26、第2の優先度設定部27、測定モード選択部28および測定深度調整部29は、回転ダイヤルであり、把持部12の表面に回動自在に設けられている。第1の優先度設定部26、第2の優先度設定部27および測定深度調整部29は、図示例では、把持部12の表面に、図中左側に近接して一列に並べて設けられている。これらは、操作者が同時に操作する可能性が高い部位であるため、近くに配置すると操作が容易となる。測定モード選択部28は、第1の優先度設定部26等とは距離を離して、図中右側に設けられている。
なお、本発明において、第1の優先度設定部26、第2の優先度設定部27、測定モード選択部28および測定深度調整部29は、図示例の位置に限定されず、いずれの位置に設けても良いが、把持部12を操作者が把持する際に手が触れない位置に設けられることが望ましい。
【0048】
表示部31は、把持部12の表面、かつ第1の優先度設定部26、第2の優先度設定部27、測定モード選択部28、および測定深度調整部29と重ならない位置に設けられている。表示部31は、測定に関わるパラメータ等を表示するものであり、例えば、測定深度、フレームレート、ライン数およびチャンネル数等が表示される。ここで、フレームレートとは、超音波診断装置本体2の表示部18の画面に表示される動画の単位時間当たりに更新される画面の数である。ライン数とは、超音波画像を構成する走査線の数である。また、チャンネル数とは、一本の走査線を取得するために使用するトランスデューサの数である。操作者は、表示部31を見ることにより、現在の測定パラメータを確認することができる。なお、表示部31には、必ずしもこれらの測定パラメータを全て表示させる必要はなく、操作者が必要とするもののみを表示させてもよい。
【0049】
図2(B)は、図2(A)に示す超音波プローブ1の第1の優先度設定部26の拡大図である。
第1の優先度設定部26は、時間分解能と空間分解能とのいずれを優先するかの優先度を設定する入力デバイスである。第1の優先度設定部26の表面には、第1の優先度設定部26の外周に沿って両矢印36が描かれている。両矢印36の先端近傍には、それぞれ時間と空間という文字が描かれている。時間という文字は時間分解能を表し、空間という文字は空間分解能を表す。時間分解能に関する測定パラメータとしては、例えばフレームレートが挙げられる。空間分解能に関する測定パラメータとしては、ライン数やチャンネル数(CH数)等が挙げられる。この両矢印36と文字は、第1の優先度設定部26を把持部12に対して左回転させると空間分解能を優先させ、右回転させると時間分解能を優先させることを表している。目盛り32の位置は、現在の優先度を表す。
【0050】
すなわち、操作者は、例えば、超音波診断装置本体2の表示部18に表示された超音波診断画像を見ながら、診断画像としての必要性、スクリーニングか、精密観察か、すなわち全体を診る必要があるか、所定部位に近接させて診る必要があるか、操作者の好み等に応じて、把持部12の表面に描かれた目盛り32に対する第1の優先度設定部26の向きを調整することにより、時間分解能を優先するか、空間分解能を優先するか、およびその優先度を設定することができる。例えば、第1の優先度設定部26を把持部12に対して右回転させ、両矢印36の左端と目盛り32の位置を合わせると、時間分解能を最大に優先する設定となる。また、両矢印36の中点と目盛り32の位置を合わせると、時間分解能と空間分解能との優先度は均等な設定となる。第1の優先度設定部26により設定された優先度は、プローブ制御部11へ出力される。
【0051】
図2(C)は、図2(A)に示す超音波プローブ1の第2の優先度設定部27の拡大図である。
第2の優先度設定部27は、ライン数とチャンネル数とのいずれを優先するかを設定する。第2の優先度設定部27の表面には、第1の優先度設定部26と同様に両矢印37が描かれている。両矢印37の先端近傍には、それぞれライン数とCH数という文字が描かれている。この両矢印37と文字は、第2の優先度設定部27を把持部12に対して左回転させるとチャンネル数を優先させ、右回転させるとライン数を優先させることを表す。
すなわち、操作者は、例えば、超音波診断装置本体2の表示部18に表示された超音波診断画像を見ながら、診断画像としての必要性や、操作者の好み等に応じて、把持部12の表面に描かれた目盛り33に対する第2の優先度設定部27の向きを調整することにより、空間分解能に関する測定パラメータの中で、ライン数とチャンネル数とのいずれを優先するかと、その優先度を設定することができる。第2の優先度設定部27により設定された優先度は、プローブ制御部11へ出力される。
【0052】
プローブ制御部11は、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27によって設定された優先度に従って、現在設定されている測定深度に対して超音波プローブ1における消費電力を許容消費電力以下に抑え、その発熱を閾値以下に抑えながら、フレームレート、チャンネル数、およびライン数の各値を設定する。
また、プローブ制御部11は、設定されたフレームレート、チャンネル数、およびライン数に従って超音波プローブ1の各部の動作を制御する。
【0053】
図2(D)は、図2(A)に示す超音波プローブ1の測定深度調整部29の拡大図である。測定深度調整部29は、現在設定されている測定深度(初期深度)に対して、超音波診断装置における超音波プローブ1による測定深度を調整するためのものである。
測定深度調整部29の表面には、第1の優先度設定部26と同様に両矢印38が描かれている。両矢印38の先端近傍には、それぞれ深いと浅いという文字が描かれている。この両矢印38と文字は、測定深度調整部29を把持部12に対して左回転させると測定深度を浅く設定し、右回転させると測定深度を深く設定することを表す。目盛り34の位置は、測定深度の優先度を表す。
【0054】
すなわち、操作者は、例えば、超音波診断装置本体2の表示部18に表示された超音波診断画像を見て、測定対象に合わせて現在設定されている測定深度(初期深度)、例えば測定モードに応じて測定対象に合わせてデフォルトで設定され、現在観察されている測定深度が、測定対象にぴったり合っていない場合等には、測定対象に合わせて調整、例えば少し、または微調整したい場合には、把持部12の表面に描かれた目盛り34に対する測定深度調整部29の向きを調整することにより、測定深度を調整することができる。測定深度調整部29により設定された測定深度は、プローブ制御部11へ出力される。
また、プローブ制御部11は、調整された測定深度に従って、超音波プローブ1の各部の動作を制御する。
【0055】
図2(E)は、図2(A)に示す超音波プローブの測定モード選択部28の拡大図である。測定モード選択部28の表面には、一定の間隔を空けて各モードの名称が描かれている。測定モード選択部28の表面に描かれている各名称は、静止画は静止画モード、Mはマニュアルモード、心は心臓モード、胃は胃モード、肝は肝臓モードを表す。測定モード選択部28を把持部12に対して回動させ、各モードの名称と目盛り35との位置を合わせることで測定モードが選択される。例えば、図2(E)は、測定モードとして、静止画モードが選択されていることを表す。測定モード選択部28により選択された測定モードは、プローブ制御部11へ出力される。
プローブ制御部11は、測定対象の測定深度を、選択された測定モードに対してデフォルトで設定されている測定深度に設定し、さらに、フレームレート、チャンネル数、およびライン数の各値をデフォルト値に設定する。
【0056】
なお、測定モード選択部28によって選択される測定モードとしては、静止画、マニュアル、心臓、胃および肝臓のみを示したが、選択可能な測定モードはこれらに限られず、どのような測定モードが選択可能であってもよい。
また、超音波プローブ1としては、被検体の測定対象部位毎に決められた特定部位専用の超音波プローブが用いられる場合がある。このような場合には、予め、特定部位専用の超音波プローブには、デフォルト値として、測定深度、フレームレート、チャンネル数、およびライン数の各値が設定されているので、上述した測定モード選択部28は設けなくても良い。
【0057】
例えば、測定モード選択部28によって測定モードとして、心臓などの測定部位が選択されると、測定深度は、おおよその値であるデフォルト値に決定され、設定される。測定深度のデフォルト値は、例えば、心臓モードであれば15cm、肝臓モードであれば20cmにすることができる。測定部位によって測定深度はおおよその値であるデフォルト値に設定されるが、測定部位が同じであっても、被検体によって、測定対象によって、測定深度が少し異なることがあるので、本発明においては、測定深度調整部29が測定深度を微調整することができるように構成されている。例えば、心臓モードによって決まる測定深度15cmに対して、1mm刻みで、−100mm〜+100mmの範囲で測定深度を調整することができる。
【0058】
マニュアルモードMは、操作者が自由にフレームレート、チャンネル数およびライン数を設定できるモードである。ただし、消費電力の観点から、フレームレート、チャンネル数およびライン数の設定可能な値には制限があり、それらの上限は予め決められている。
なお、このマニュアルモードMにおいては、超音波診断装置本体2の操作部22から操作者がフレームレート、チャンネル数およびライン数を入力し、超音波診断装置本体2から超音波プローブ1に通信して、超音波プローブ1内のプローブ制御部11において設定するものであれば良いが、操作部22からは、プローブ制御部11において設定できないフレームレート、チャンネル数およびライン数を入力できないように構成されていることが好ましい。
また、マニュアルモードMにおいては、フレームレート、チャンネル数およびライン数と同様に、測定深度を設定できるようにしても良い。
また、マニュアルモードMが選択された場合には、超音波プローブ1の第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27を用いてフレームレート、チャンネル数およびライン数を、測定深度調整部29を用いて測定深度を、直接設定できるように構成されていても良い。
また、静止画モードは、静止画、例えば精密観察や精密診断等で使用する静止画を取得するモードである。
【0059】
次に、本発明の実施の形態1の超音波診断装置の動作について説明する。
まず、操作者が測定深度を設定する。この測定深度の設定は、操作者がマニュアルモードMを選択して測定深度を直接設定してもよいし、超音波プローブ1の測定モード選択部28で測定モードを選択して測定部位を決定することで間接的に測定深度を設定してもよい。
操作者が、超音波プローブ1のヘッド部21を被検体に押し当てて診断対象部位の測定が開始されると、まず、送信駆動部7から供給される駆動信号に従って複数のトランスデューサ3から超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ3から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部4に供給されてサンプルデータが生成され、パラレル/シリアル変換部5でシリアル化された後に、無線通信部6から診断装置本体2へ無線伝送される。超音波診断装置本体2の無線通信部13で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部14でパラレルのサンプルデータに変換され、データ格納部15に格納される。さらに、データ格納部15から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部16で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部17により超音波診断画像が表示部18に表示される。
【0060】
このような動作を行う超音波診断装置において、超音波プローブ1が間欠動作を行う場合の消費電力とフレームレート、ライン数、チャンネル数および測定深度には、以下の関係がある。
消費電力∝フレームレート×ライン数×チャンネル数×測定深度
【0061】
超音波プローブ1における電力の消費は、主にトランスデューサ3に超音波を送信させるための回路と、トランスデューサ3によって超音波エコーを受信した後の信号処理に関する回路と、取得した信号を超音波診断装置本体2に送信する無線通信部6によるものである。つまり、トランスデューサ3によって超音波を送受信させて信号を多く取得するほど超音波プローブ1における消費電力も増加する。
そこで、駆動するトランスデューサの数に着目して消費電力が上記関係となることを説明する。チャンネル数は1本の走査線を取得するために使用するトランスデューサの数を表しているため、1枚の超音波画像を取得するためにライン数×チャンネル数の数だけトランスデューサを駆動することになる。また、フレームレートは、単位時間あたりに取得される超音波画像の枚数を表すため、ライン数×チャンネル数に対して積の関係で、駆動するトランスデューサの数が増加する。従って、ライン数×チャンネル数×フレームレートに比例して消費電力が増加する。また、測定深度はトランスデューサ等を駆動する時間に影響し、測定深度が深くなるほど長時間トランスデューサ等を駆動する必要がある。トランスデューサを長時間駆動するほど消費電力も増加するため、測定深度についても積の関係で消費電力に影響する。
【0062】
消費電力が増えるほど超音波プローブ1は発熱するが、熱は超音波プローブ1の表面から放熱されるので、発熱量と放熱量がバランスしていれば、超音波プローブ1の表面温度は、所定の温度に維持される。ここで、超音波プローブ1の表面温度は43℃以下でなければならないという制限があるため、超音波プローブ1における消費電力は一定以下に抑え、超音波プローブ1の発熱量をその放熱量以下に抑える必要がある。
【0063】
消費電力に関する上記関係式から、フレームレート、ライン数、チャンネル数、または測定深度のいずれかを抑制することで消費電力を所定値以下に抑えることができる。しかし、測定深度は、測定部位によっておおよその値が決まるため、消費電力抑制の目的で測定深度を調整することはできない。
【0064】
消費電力に影響する残りの測定パラメータであるフレームレート、チャンネル数およびライン数のうち、フレームレートは超音波画像の時間分解能に関わる測定パラメータであり、ライン数およびチャンネル数は超音波画像の空間分解能に関わるパラメータである。しかし、時間分解能を抑制するとフレームレートが低下し、画面の切り替わりが目視されてしまい、かくかくとした動画となるし、心臓等の測定対象部位の速い動きに追従することができなくなる。一方、空間分解能を抑制すると、画質に係るライン数やチャンネル数が低下し、測定対象部位の微細な構造が正確に得られなくなるため、診断に支障をきたす恐れがある。また、消費電力低減のために、フレームレート、ライン数およびチャンネル数を一律に低減すると、超音波画像を観察する上で、操作者にとって最適な測定パラメータを設定することができず、診断部位や診断目的等に応じた最適な超音波画像、例えば、操作者が望む所望のフレームレートおよび/または所望の画質の診断用超音波画像を得ることができない。
【0065】
そこで、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置では、超音波プローブ1に第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27を設けて、測定パラメータの優先度を設定可能な構成としている。
【0066】
例えば、測定部位が心臓であり、測定モードが心臓モードに設定され、測定深度が15cmである場合に、超音波プローブ1の表面温度が、例えば43℃以下であるために許容される超音波プローブ1の消費電力は、超音波プローブ1の構成によって定まる所定値(4W)に制限される。
本発明では、超音波プローブ1の表面温度が所定既定値、例えば43℃を超えない消費電力の上限値を許容消費電力という。超音波プローブ1における電力の消費は、主にトランスデューサ3、パラレル/シリアル変換部5、無線通信部6、送信駆動部7、およびプローブ制御部11等による電力の消費である。この時、第1の優先度設定部26において時間分解能と空間分解能との優先度が均等で、かつ第2の優先度設定部27においてライン数とチャンネル数との優先度も均等であれば、フレームレートは30fps、ライン数は64本、チャンネル数は32地ャンネルとなる。これらの測定パラメータで超音波プローブ1を駆動させている限りは、消費電力が上記所定値以下となり、超音波プローブ1の表面温度が所定既定値(43℃)を超えることはない。
【0067】
この場合において、例えば操作者が時間分解能を優先したい場合は、第1の優先度設定部26を右に回動させる。操作者が第1の優先度設定部26を回動させることにより、時間分解能と空間分解能との優先度の比率を、例えば1:2と設定した場合、プローブ制御部11は設定された優先度に従って各測定パラメータの値を計算する。この場合、各測定パラメータの値は、フレームレート15fps、ライン数90本、チャンネル数45チャンネルとすれば良い。すなわち、空間分解能に対して時間分解能の性能が優先されるため、時間分解能の性能は向上するが、空間分解能の性能は抑制される。しかし、合計の消費電力は変わらないため、この測定パラメータで超音波プローブ1を駆動させても超音波プローブ1の表面温度が所定既定値(43℃)を超えることはない。
【0068】
また、時間分解能と空間分解能との優先度の比率が1:2になっている場合において、例えば操作者がチャンネル数よりライン数を優先したい場合は、第2の優先度設定部27を右に回動させることでライン数を優先させることができる。この場合、フレームレート15fps、ライン数128本、チャンネル数32チャンネルとなる。この場合においても合計の消費電力は変わらないため、この測定パラメータで超音波プローブ1を駆動させても超音波プローブ1の表面温度が所定既定値(43℃)を超えることはない。
【0069】
また、操作者が測定深度調整部29を用いて測定深度の調整を行った場合は、調整された測定深度の設定が、フレームレート、チャンネル数およびライン数の設定に対して優先される。従って、フレームレート、チャンネル数およびライン数は、測定深度の調整後における許容消費電力以下の消費電力となるよう優先度に従ってそれらの値が設定される。
【0070】
以上説明したように、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置によれば、時間分解能と空間分解能とのいずれを優先するかおよびその優先度を設定する第1の優先度設定部26と、第1の優先度設定部26により設定された優先度と予め設定された測定深度とに応じて、許容消費電力以下の消費電力となるよう測定パラメータを設定し、超音波プローブ1の各部の動作を制御するプローブ制御部11を超音波プローブ1に設けているので、これにより、超音波プローブ1における発熱を所定の値以下に抑えながらも、診断部位や診断目的等に応じて、時間分解能を優先した超音波画像を得るか、空間分解能を優先した超音波画像を得るか操作者が設定することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態1によれば、空間分解能に関する測定パラメータのうち、ライン数とチャンネル数とのいずれを優先するかおよびその優先度を設定する第2の優先度設定部27を設けたことにより、空間分解能に関する2つの測定パラメータのうちいずれを優先するかおよびその優先度を操作者が設定することが可能となる。
【0072】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置のブロック図である。本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置は、超音波プローブ40と超音波診断装置2とを備えている。なお、図3に示す実施の形態2の超音波診断装置は、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置と、超音波プローブ1に対して、超音波プローブ40が温度センサ41、プローブ制御部42および測定モード選択部43を備えている点を除いて、同様の構成を有するものであるので、実施の形態1と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
超音波プローブ40は、複数の超音波トランスデューサ3と、これらトランスデューサ3にそれぞれ対応して設けられた複数の受信信号処理部4と、パラレル/シリアル変換部5、無線通信部6、送信駆動部7、送信制御部8、受信制御部9、通信制御部10、プローブ制御部42、第1の優先度設定部26、第2の優先度設定部27、測定深度調整部29、表示制御部30、表示部31、温度センサ41および測定モード選択部43を有している。なお、図3に示す超音波プローブ40は、図1に示す超音波プローブ1のプローブ制御部11および測定モード選択部28の代わりに、温度センサ41、プローブ制御部42および測定モード選択部43を有している点を除いて同一であるので、主として相違点に付いて説明する。
【0074】
温度センサ41は、超音波プローブ40の表面または内部の温度を測定するセンサである。温度センサ41は、超音波プローブ40の表面または内部の温度をプローブ制御部42へ出力する。
温度センサ41としては、超音波プローブ40の表面または内部の温度を測定できればどのようなものでも良く、公知の温度センサを用いることができる。
プローブ制御部42は、後述するモードBにおいて、温度センサ41によって測定された超音波プローブ40の表面または内部の温度に応じて許容消費電力を可変設定する点を除いて、上記実施の形態1のプローブ制御部11と同様の構成および機能を有するものであるので、その説明を省略する。
測定モード選択部43は、測定モード選択部28と同様に、回転ダイヤルであり、許容消費電力を予め設定しておくモードAと、超音波プローブ40の表面または内部の温度に依存して許容消費電力の値を可変とするモードBが選択可能となっており、各モードにおいて、上記実施の形態1で示した測定モード選択部28の測定モードを選択できるようになっている。
なお、測定モード選択部43で選択されるモードAおよびモードBの詳細については後述する。
【0075】
図4は、図3に示す超音波診断装置の超音波プローブ40の外観図である。
図4に示すように、超音波プローブ40の筐体12の表面には、温度センサ41が取り付けられており、超音波プローブ40の表面の温度が測定される。なお、本実施の形態においては、温度センサ41は、必ずしも超音波プローブ40の筐体12の表面に取り付けられる必要はなく、超音波プローブ40の筐体12の裏面側や内部に取り付けられても良いし、その場合、主に生体に接するヘッド部21の温度を測定できる位置に取り付けられるようにしても良い。こうして、温度センサ41は、超音波プローブ40の表面または内部の温度を測定することができ、また、主に生体に接するヘッド部21の温度を測定することもできるようになっていても良い。
また、図4に示すように、第1の優先度設定部26に対抗する位置、図4中右端側に、測定モード選択部43が設けられている。なお、測定モード選択部43の位置も、図示例に限定されず、いずれの位置に設けても良いが、上記実施の形態1と同様に、把持部12を操作者が把持する際に手が触れない位置に設けられることが望ましい。
【0076】
次に、本発明の実施の形態2の超音波診断装置の動作について説明する。
本実施の形態2においても、モードAおよびモードBに特有の動作以外は、上記実施の形態1の動作と同様であるため、同様の動作に付いてはその説明を省略し、主として、モードAに関する動作とモードBに関する動作を説明する。
【0077】
モードAは、許容消費電力が予め設定されているモードである。本実施の形態2の超音波診断装置のモードAにおける動作は、測定モード選択部43によるモードAの選択動作を除いて、本実施の形態1の超音波診断装置の動作と同様であるので、以降の動作の説明は省略する。
本実施の形態2に係る超音波診断装置の超音波プローブ40において、測定モード選択部43によってモードAが選択され、また測定部位がモードとして選択されると、図1に示す超音波プローブ1と同様に、測定深度調整部29によってデフォルトで設定された測定深度(初期深度)が調整され、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27によって優先度が設定され、プローブ制御部42において、測定深度調整部29で調整された測定深度に対して、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27で設定された優先度に従って許容消費電力以下の消費電力となるように測定パラメータが設定される。
なお、モードAにおいて、操作者が、予め超音波プローブ40の許容消費電力を設定しておくようにしても良いし、許容消費電力ではなく、超音波プローブ40の表面温度の最大値を設定しておく構成としてもよい。超音波プローブ40の表面温度の最大値が設定されれば、超音波プローブ40において消費可能な電力の最大値も決定され、設定される。
【0078】
モードBは、超音波プローブ40の表面または内部の温度(以下の説明では、表面の温度で代表する)に依存して許容消費電力を可変とするモードである。
本実施の形態2の超音波診断装置のモードBの動作においては、初めに操作者が測定深度を設定する。測定深度の設定は、操作者が測定深度を直接設定しても良いし、操作者が測定部位を選択することで測定深度を設定してもよい。なお、操作者による測定深度の直接設定は、図3に示す超音波診断装置本体2の操作部22を用いて入力された測定深度のデータを、本体制御部20、通信制御部19および無線通信部13を介して、超音波プローブ40に送信し、超音波プローブ40では、無線通信部6で受信し、通信制御部10を介して、プローブ制御部42に伝送することで行っても良いし、モードBにおいては、測定深度調整部29によって測定深度を直接設定できるようにしても良いし、モードBにおいて、さらに、測定モード選択部43によって測定部位をモードとして選択できるようにしても良い。
【0079】
続いて、温度センサ41により、超音波プローブ40の表面の温度を測定する。温度センサ41によって測定された超音波プローブ40の表面の温度に基づいて、プローブ制御部42が許容消費電力を決定する。また、温度センサ41によって測定された超音波プローブ40の表面の温度をその表示部31に表示させても良い。
【0080】
超音波プローブ40の表面の温度に対して許容される許容消費電力の一例について、図5のグラフに示す。超音波プローブ40の表面温度と許容消費電力とは反比例の関係となる。すなわち、超音波プローブ40の表面温度が上がるほど許容消費電力は低くなる。具体的には、超音波プローブ40の表面温度が33℃の場合は、多少発熱しても問題ないため許容消費電力は、超音波プローブ40の構成によって定まる、少し大き目の第1の所定値(7W)に制限される。超音波プローブ40の表面温度が37℃の場合は、超音波プローブ40の表面温度が急激に上昇しないように許容消費電力は、超音波プローブ40の構成によって定まる、上記第1の所定値より小さい第2の所定値(6W)に制限される。超音波プローブ40の表面温度が40℃の場合は、これ以上超音波プローブ40の表面温度を上げないよう許容消費電力は、超音波プローブ40の構成によって定まる、上記第2の所定値より小さい第3の所定値(5W)に制限される。超音波プローブ40の表面温度が43℃以上になった場合は、超音波プローブ40の動作を停止する。
【0081】
超音波プローブ40の表面の温度の変化に伴う許容消費電力の変化により、プローブ制御部42で設定されるフレームレート、チャンネル数およびライン数の各値も変化する。この場合、フレームレート、チャンネル数およびライン数の値の変化は、それぞれ第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27によって設定された優先度に基づいて決定される。例えば、フレームレート、チャンネル数およびライン数の優先度が均等に設定されている状態で超音波プローブ40の表面の温度が上昇して許容消費電力が減少した場合は、減少した許容消費電力を超えないように、プローブ制御部42がフレームレート、チャンネル数およびライン数の各値を均等な割合で減少させる。フレームレート、チャンネル数およびライン数の優先度が均等でない状態で超音波プローブ40の表面の温度が上昇して許容消費電力が減少した場合は、減少した許容消費電力を超えないように、プローブ制御部42がフレームレート、チャンネル数およびライン数の各値を優先度に従って減少させる。この時、優先度の低い測定パラメータの値ほど大きな割合で減少される。
【0082】
以上説明したように、本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置によれば、許容消費電力を予め設定するモードAと、超音波プローブの表面または内部の温度に応じて許容消費電力の値を可変とするモードBとを設け、操作者が好みの測定モードを選択することが可能な構成としている。
【0083】
モードAにおいては、許容消費電力が予め設定されているので、上記実施の形態1と同様に、操作者は許容消費電力や超音波プローブの表面または内部の温度を考慮することなく、すなわち意識することなく、測定深度の調整をすることができ、フレームレート、チャンネル数およびライン数の最適な値を設定することができる。
また、モードBにおいては超音波プローブ40の表面または内部の温度に応じてフレームレート、チャンネル数およびライン数の最適な値を設定することができる。そのため、例えば超音波プローブ40の表面温度が低い場合は、許容消費電力を可変にしない場合に比べ、フレームレート、チャンネル数およびライン数の値を高く設定することができる。
なお、本実施の形態において、測定モード選択部43は、必ずしもモードAとモードBの双方のモードを選択可能である必要はなく、いずれか一方のモードのみを選択可能であっても良い。
【0084】
なお、上記各実施の形態では、測定部位に応じて予め各測定パラメータの優先度が決められていてもよい。例えば、測定部位が心臓の場合は動きが速いため、フレームレート(時間分解能)の優先度を高めに設定する。
【0085】
なお、上記各実施の形態において、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27は、必ずしも双方を設ける必要はない。例えば、操作者が空間分解能および時間分解能に関してのみ優先度を設定したい場合には、第1の優先度設定部26のみを設ければ良い。
【0086】
また、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27は、一方を超音波プローブ1または40に設け、他方を超音波診断装置本体2に設けても良いし、超音波プローブ1または40と、超音波診断装置本体2との双方に、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27を設けてもよい。また、例えば時間分解能とチャンネル数とについての優先度の設定のように、優先度を設定する測定パラメータを別の組み合わせとしても良い。また、優先度設定部は3つ以上設けてもよい。
【0087】
なお、上記各実施の形態において、第1の優設定部26および第2の優先度設定部27は、回転ダイヤルであったが、必ずしもこのような入力デバイスである必要はない。例えば、スイッチのような入力デバイスにより優先度を選択するものであっても良いし、数値によって優先度を直接入力するものでも良い。
【0088】
なお、上記各実施の形態において、超音波プローブ1または40で設定された優先度に応じた各測定パラメータの設定や、測定深度の調整は、必ずしも超音波プローブ1または40のプローブ制御部11が行う必要はなく、例えば、第1の優先度設定部26および第2の優先度設定部27で設定された優先度や、測定深度調整部29で調整された測定深度を、プローブ制御部11、通信制御部10および無線通信部6を介して、超音波診断装置本体2に出力し、超音波診断装置本体2では、無線通信部13で受信し、通信制御部19を介して本体制御部20に伝送し、本体制御部20において、調整された測定深度、および設定された優先度に基づいて測定パラメータの設定を行ってもよい。この場合には、超音波診断装置本体2の本体制御部20で設定された測定パラメータを、上述の伝送経路と逆の伝送経路で、超音波プローブ1または40へ出力してプローブ制御部11に伝送し、プローブ制御部11では、超音波診断装置本体2から出力された測定パラメータを用いて超音波プローブ1または40の各部の動作を制御する。
【0089】
なお、上記各実施の形態において、測定深度や各測定パラメータを表示する表示部31は、必ずしも超音波プローブ1や40に設ける必要はなく、超音波診断装置本体2の表示部18のみに測定深度や各測定パラメータを表示するようにしてもよい。
なお、優先度が設定できる測定パラメータは、上記各実施の形態に挙げた時間分解能および空間分解能に関する測定パラメータや、フレームレート、チャンネル数およびライン数に限られず、圧電素子駆動電圧、ADCサンプリング周波数でも良い。
【0090】
なお、上記各実施の形態において、測定モード選択部28および43は、必ずしも超音波プローブ1および40に設ける必要はなく、超音波診断装置本体2に設けてもよい。また、測定深度調整部29は、必ずしも超音波プローブ1または40に設ける必要はなく、超音波診断装置本体2に設けてもよい。
【0091】
また、上記各実施の形態において、超音波プローブ1または40と超音波診断装置本体2とは、必ずしも無線通信するものである必要はなく、ケーブル等の有線によって接続されるものであってもよい。
また、上記各実施の形態の超音波診断装置は、病院等で病室等に設置されるものであっても、カート等に設置または載置された可搬式であっても良いし、外部に携帯可能な形態式であっても良い。
【0092】
以上、本発明の超音波プローブおよび超音波診断装置についての種々の実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0093】
1、40 超音波プローブ
2 超音波診断装置本体
3 トランスデューサ
4 受信信号処理部
5 パラレル/シリアル変換部
6、13 無線通信部
8 送信制御部
9 受信制御部
11、42 プローブ制御部
12 把持部
21 ヘッド部
26 第1の優先度設定部
27 第2の優先度設定部
28、43 測定モード選択部
29 測定深度調整部
31 表示部
41 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて超音波を送信し、前記被検体の測定部位において反射された超音波エコーを受信して取得された受信信号に対して信号処理を行なって生成した伝送信号を、該伝送信号から超音波診断画像を生成する超音波診断装置の装置本体に送信する超音波プローブであって、
前記超音波診断画像を生成するために前記受信信号を取得する際の時間分解能に関する第1の測定パラメータと空間分解能に関する第2の測定パラメータとのいずれを優先するかについての第1の優先度を設定する第1の優先度設定手段と、
前記信号処理を含む処理に伴う発熱に応じて予め設定された許容消費電力、前記被検体の前記測定部位に応じて設定された測定深度、及び前記第1の優先度設定手段によって設定された前記第1の優先度に応じて、前記第1及び第2の測定パラメータの値を設定する測定パラメータ設定手段と、
該測定パラメータ設定手段によって設定された前記第1及び第2の測定パラメータの値に基づいて前記超音波の送受信動作を制御する動作制御手段と、を具備することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記測定パラメータ設定手段は、前記許容消費電力以内に収まるように、前記測定深度、及び前記第1の優先度に応じて、前記第1及び第2の測定パラメータの値を設定する請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記第1の測定パラメータは、前記超音波診断画像を生成するために前記受信信号を取得する際のフレームレートであり、
前記第2の測定パラメータは、前記超音波診断画像を生成するための走査ライン数及び前記超音波の送受信のチャンネル数を含む請求項1または2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
さらに、前記空間分解能に関する前記第2の測定パラメータに含まれる、前記走査ライン数と前記チャンネル数とのいずれを優先するかについての第2の優先度を設定する第2の優先度設定手段を具備し、
前記測定パラメータ設定手段は、さらに、設定された前記第2の測定パラメータの値及び前記第2の優先度設定手段によって設定された前記第2の優先度に応じて、前記走査ライン数及び前記チャンネル数の値を設定する請求項3に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
さらに、前記第1の測定パラメータ、前記第2の測定パラメータ、前記測定深度、前記フレームレート、前記走査ライン数及び前記チャンネル数のうち少なくとも1つを表示する表示部を具備する請求項3または4に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
さらに、前記被検体の前記測定部位に対して予め設定された前記測定深度を初期深度として、該初期深度に対して、前記測定深度を深い方に調整する調整量、または、浅い方に調整する調整量を設定する調整量設定手段を具備し、
前記測定パラメータ設定手段は、さらに、予め設定された前記初期深度及び前記調整量設定手段によって設定された前記調整量に応じて、調整された前記測定深度を設定する請求項1〜5のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記優先度設定手段は、回転ダイヤルである請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
さらに、操作者が把持する把持部と、前記被検体に当接され、前記超音波を照射するヘッド部と、を具備し、
前記優先度設定手段は、前記把持部及び前記ヘッド部を除く前記操作者が把持しない位置に設けられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項9】
さらに、前記被検体の測定モードを選択する測定モード選択手段を具備する請求項1〜8のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記測定モードは、少なくとも1つの測定部位及び/又は静止画を測定するモードを含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項11】
さらに、前記超音波プローブの内部温度又は表面温度を測定する温度センサと、
該温度センサによって測定された前記内部温度又は前記表面温度に基づいて予め設定された前記許容消費電力の値を変化させる許容値設定手段と、を具備する請求項1〜10のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の超音波プローブと、
超音波診断画像を生成する超音波診断装置本体と、を有する超音波診断装置であって、
前記超音波プローブは、さらに、
前記被検体に向けて前記超音波を送信し、前記被検体において反射された前記超音波エコーを受信して前記受信信号を出力する超音波送受信部と、
該超音波送受信部から出力される前記受信信号に対して前記信号処理を行なって前記伝送信号を生成する信号処理部と、
該信号処理部で生成された前記伝送信号を、該伝送信号から前記超音波診断画像を生成する前記超音波診断装置本体に送信する第1の通信部と、を有し、
前記超音波診断装置本体は、
前記超音波プローブの前記第1の通信部から前記伝送信号を受信する第2の通信部と、
該第2の通信部で受信した前記伝送信号に基づいて前記超音波診断画像を生成する画像生成部と、
該画像生成部で生成された前記超音波診断画像を表示する表示部と、を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項13】
前記超音波プローブは、さらに、前記伝送信号を前記超音波診断装置本体に無線送信する第1の無線通信部を有し、
前記第1の通信部は、前記伝送信号を前記超音波診断装置本体に無線送信する第1の無線通信部であり、
前記第2の通信部は、前記超音波プローブの前記第1の無線通信部から前記伝送信号を無線受信する第2の無線通信部である請求項12に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記超音波診断装置本体の前記表示部は、さらに、前記測定深度、前記第1の測定パラメータ、前記第2の測定パラメータ、前記第1の測定パラメータであるフレームレート、前記第2の測定パラメータに含まれる走査ライン数及びチャンネル数のうち少なくとも1つを表示する請求項12または13に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
超音波診断画像を生成する超音波診断装置本体と、前記超音波診断画像を生成するために超音波を送受信する超音波プローブと、を有する超音波診断装置であって、
前記超音波プローブは、
被検体に向けて超音波を送信し、前記被検体において反射された超音波エコーを受信して受信信号を出力する超音波送受信部と、
該超音波送受信部から出力される前記受信信号に対して信号処理を行なって伝送信号を生成する信号処理部と、
前記超音波診断画像を生成するために前記受信信号を取得する際の時間分解能に関する第1の測定パラメータと空間分解能に関する第2の測定パラメータとのいずれを優先するかについて第1の優先度を設定する第1の優先度設定手段と、
前記超音波送受信部の動作を制御する動作制御手段と、
前記信号処理部で生成された前記伝送信号及び前記第1の優先度設定手段で設定された前記第1の優先度を前記超音波診断装置本体に送信すると共に、前記超音波診断装置本体からデータを受信する第1の通信部と、を具備し、
前記超音波診断装置本体は、
前記超音波プローブの前記第1の通信部から前記伝送信号及び前記第1の優先度を受信すると共に、前記超音波プローブの前記第1の通信部に前記データを送信する第2の通信部と、
該第2の通信部で受信された前記伝送信号に基づいて前記超音波診断画像を生成する画像生成部と、
該画像生成部で生成された前記超音波診断画像を表示する表示部と、
前記超音波プローブの前記第1の優先度設定手段によって設定され、前記第2の通信部で受信された前記第1の優先度、前記超音波プローブの動作に伴う発熱に応じて予め設定された許容消費電力、及び前記超音波プローブによる前記被検体の前記測定部位に応じて設定された測定深度に応じて、前記第1及び第2の測定パラメータの値を設定する測定パラメータ設定手段と、を具備し、
前記超音波診断装置本体の前記第2の通信部は、前記超音波プローブの前記第1の通信部に、前記データとして、前記測定パラメータ設定手段で設定された前記第1及び第2の測定パラメータの値を送信し、
前記超音波プローブの前記第1の通信部は、前記データとして、前記第1及び第2の測定パラメータの値を受信し、
前記超音波プローブの前記動作制御手段は、前記第1の通信部で受信され、前記測定パラメータ設定手段によって設定された前記第1及び第2の測定パラメータの値に基づいて前記超音波プローブの前記超音波送受信部の動作を制御することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項16】
前記超音波プローブの前記第1の通信部及び前記超音波診断装置本体の前記第2の通信部は、互いに無線送信する無線通信部である請求項15に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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