説明

超音波モータユニット、レンズ鏡筒及び撮影機器

【課題】動画撮影を行う場合に、不要な作動音の録音を除去することを可能にする。
【解決手段】固定筒30と、前記固定筒の外周に設けられ、圧電素子への通電により弾性体に超音波振動を生じさせ、前記弾性体に圧接された移動体を前記超音波振動により移動させる超音波モータ20と、前記固定筒の内周側に設けられ、前記超音波モータの駆動時に発生する振動を検出する振動センサ40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータユニット、レンズ鏡筒及び撮影機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、テレビ会議の簡易な形態のワークステーションにおいて、小型カメラとマイクロフォンとを一体化したタイプのものを設置する構成が採用されるようになった。しかし、カメラとマイクロフォンとが互いに隣接しているため、カメラ及び雲台等の駆動音を含むノイズをマイクロフォンが拾ってしまい、カメラの向きを変更しているときに、その駆動音を含むノイズにより、相手側が音声を聞き取り難くなるという問題があった(特許文献1)。
一方、デジタル一眼レフカメラは、動画撮影機能が最新機種に盛り込まれてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−67013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したデジタル一眼レフカメラは、動画撮影時には、被写体の動きにフォーカスを追従させるため、AFモータの間欠駆動を継続する必要がある。AFモータに用いられる超音波モータ(SWM)は、弾性体と移動体の摩擦駆動時の駆動音が発生すると共に、圧電素子に対して、駆動するための電源を入力すると、その瞬間に音が発生する。また、駆動方向を変更する場合に行う、位相の逆転時の急激な変化時にも、ノイズが発生する。
発生する音は、短時間の場合が多く、今までの静止画の撮影の場合は、ユーザーが耳障りと感じるレベルではなく、問題となることはなかった。
【0005】
しかし、動画を撮影する場合は、前述したように間欠駆動を継続するために、音が連続で発生することと、マイクにより集音するために、カメラ本体から伝わる振動が音として記録されてしまうことがある。そうすると、撮影した映像を見たときに、AFモータの作動音が不自然に聞こえるということになる。そして、静かなシーンにおいては、AFモータの作動音が、強調されて聞こえてしまうこととなる。
【0006】
引用文献1のものは、ノイズを検出するために、カメラの近くにノイズ集音用マイクロフォンを配置するので、本来、録音したい目的音も集音してしまい、ノイズ除去には不要な音まで集音してしまうので、ノイズ除去処理が難しいという、問題があった。また、本来、残したい音も消してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明の課題は、動画撮影を行う場合に、不要な作動音の録音を除去することができる超音波モータユニット、レンズ鏡筒及び撮影機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、固定筒(30)と、前記固定筒の外周に設けられ、圧電素子への通電により弾性体に超音波振動を生じさせ、前記弾性体に圧接された移動体を前記超音波振動により移動させる超音波モータ(20)と、前記固定筒の内周側に設けられ、前記超音波モータの駆動時に発生する振動を検出する振動センサ(40)、を備えた超音波モータユニット(7)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の超音波モータユニットにおいて、前記振動センサは、前記超音波モータの前記弾性体と前記移動体の摺動面近傍の内側に設けられていること、を特徴とする超音波モータユニットである。
請求項3の発明は、焦点調節のために、光軸方向に移動するフォーカスレンズ群(5)と、前記フォーカスレンズ群を駆動する、請求項1又は請求項2に記載の超音波モータユニット(7)と、を備えたレンズ鏡筒である。
請求項4の発明は、請求項3に記載のレンズ鏡筒(1B)と、動画撮影用の集音を行うマイクロフォン(18)と、前記マイクロフォンと、前記振動センサの検出信号を周波数解析する周波数解析部(51)と、前記周波数解析部の解析結果に基づいて、前記マイクロフォンの出力信号から前記振動センサのノイズ成分を除去するノイズ成分除去部(52)と、を備えた撮像装置(1)である。
以上、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明したが、これに限定されるものではない。なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成に代替してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、動画撮影を行う場合に、不要な作動音の録音を除去することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による超音波モータユニットの実施形態が搭載されたカメラを模式的に示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る超音波モータユニットを示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る超音波モータユニットの搭載されたカメラのウォブリング動作を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施の形態について、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による超音波モータユニットの実施形態が搭載されたカメラを模式的に示す断面図である。
カメラ1は、デジタル一眼レフカメラであり、カメラ筐体1Aと、このカメラ筐体1Aに対して着脱自在に装着されるレンズ鏡筒1Bとを備えている。
CPU2は、ズームレンズ群4、フォーカスレンズ群5、ブレ補正レンズ群6等のレンズ群の移動量演算や、本実施形態によるノイズ除去処理などのカメラ1の全体の制御を行う中央処理装置である。
撮像素子3は、撮影レンズ(4,5,6)により形成された被写体像を撮像する素子であり、被写体光を露光して電気的な画像信号に変換し、信号処理回路11へ出力する。撮像素子3は、例えばCCD、CMOSなどの素子により構成されている。
【0012】
フォーカスレンズ群5は、本発明の超音波モータユニットであるフォーカス群駆動機構7により駆動され、光軸方向に移動して、焦点を合わせるレンズ群である。フォーカス群駆動機構7は、例えば、円環型の超音波モータ等が使用されるが、後で詳細に説明する。
【0013】
絞り8は、撮影レンズ(4,5,6)を通過する被写体光の光量を制御する機構である。
記録媒体9は、撮像された画像データ、録音データ等を記録するための媒体であり、SDカード、CFカード等が使用される。
EEPROM10は、レンズ鏡筒1Bの固有の情報等を記憶するメモリであって、CPU2に出力する。
信号処理回路11は、撮像素子3からの出力を受けて、ノイズ処理やA/D変換等の処理を行う回路である。
AFセンサ12は、静止画撮影時に、焦点位置を検出するためのセンサであって、例えば、位相差検出方式が採用され、フォーカスレンズ群5のズレ量を検出しており、CCD等を用いることができる。
この実施形態では、動画撮影時には後述するミラー16がアップしてしまい、このAFセンサ12は使うことができないので、撮像素子3を用いたコントラストAF方式を採用している。
レリーズスイッチ13は、カメラ1の撮影操作を行う部材であって、シャッタ駆動のタイミング等を操作するスイッチである。
動画スイッチ14は、静止画撮影モードと動画撮影モードとを切り替えるスイッチであり、例えば、1回押すことにより、ミラー16がアップして、2回押すことにより、動画撮影が開始される。
【0014】
表示部15は、カメラ1のカメラ筐体1Aの背面に設けられ、撮像素子3で撮影した被写体像(再生画像、ライブビュー画像)や操作に関連した情報(メニュー)などを表示するカラー液晶ディスプレイである。
ミラー16は、観察時には、被写体光を上方に屈曲させ、不図示のファインダや測光部へ導き、サブミラー16Aは、AFセンサ12に被写体光を導く。一方、ミラー16は、上へ回転して撮影可能状態(破線の状態)となったときに、被写体光がシャッタ17に導かれる。
シャッタ17は、ミラー16の後方に配置されており、レリーズスイッチ13などによる撮影指示に応じてシャッタ幕を走行させ、撮像素子3に入射する被写体光を制御する。
マイクロフォン18は、動画撮影時に、音声を集音するためのものである。
スピーカ10は、録音した音声を再生するためのものである。
【0015】
図2は、超音波モータユニットの円環中心軸方向での断面を示す。超音波モータ20は、振動子21,移動体24,緩衝部材25,支持体26,緩衝部材27,加圧部材28と、ベアリング29等を備える。
【0016】
振動子21は、略円環形状の部材であり、弾性体22及び圧電体23を備える。弾性体22は、ステンレス材料やインバー材料等の鉄合金や真鍮等の弾性変形が可能な金属材料を用いて形成された部材である。弾性体22の一方の端面に圧電体23が設けられている。圧電体23の他方の面には、複数の溝を切って形成された櫛歯部22aが形成されている。この櫛歯部22aの先端面は、圧電体23の励振により、進行波が発生し、移動体24を駆動する駆動面となる。
【0017】
圧電体23は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電気機械変換素子である。本実施形態の圧電体23は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いて形成され、導電性の接着剤等を用いて、弾性体22に接合されている。圧電体23上には、不図示のフレキシブルプリント基板と電気的に接続された不図示の電極が形成されている。このフレキシブルプリント基板から供給される駆動信号によって、圧電体23が励振される。
【0018】
移動体24は、略円環形状の部材であり、後述する加圧部材28の加圧力によって弾性体22の駆動面に加圧接触され、弾性体22の進行波によって摩擦駆動される。緩衝部材25は、ゴム等を用いて形成された略円環形状の部材である。この緩衝部材25は、移動体24の振動を支持体26側へ伝えないようにする部材であり、移動体24と支持体26との間に設けられている。支持体26は、移動体24を支持する部材である。支持体26は、ベアリング29で支持されながら、移動体24と一体となって回転して移動体24の回転運動を不図示の被駆動部材に伝達し、かつ、移動体24の回転中心軸方向の位置を規制する部材である。緩衝部材27は、不織布やフェルト等を用いて形成された略円環形状の部材である。この緩衝部材27は、振動子21の振動を加圧部材28側へ伝えないようにする部材であり、圧電体23と加圧部材28との間に設けられている。
【0019】
加圧部材28は、バネ等の弾性部材から構成され、振動子21を移動体24に加圧接触させる加圧力を発生する部材である。加圧部材28は、バネ部材28b及びその両端に配置された加圧板28aと押さえ板28cとを備える。バネ部材28bは、本実施形態では皿バネを使用する。ただし、バネ部材28bは皿バネに限定されず、図中上下方向に伸縮可能であれば、例えば、円周に沿って波状に形成された円環部材であってもよい。
【0020】
本実施形態では、超音波モータユニット7は、前述した超音波モータ20と、固定筒30と、振動センサ40等を備えている。
固定筒30は、その外周面で、超音波モータ20を支持しており、超音波モータ20は、押さえ板28cで固定筒30にねじ固定されている。
振動センサ40は、固定筒30の内周側に固定され、超音波モータ20の駆動時に発生する振動を検出するセンサであり、圧電型加速度センサ、動電型速度センサ、渦電流型非接触変位センサ等が使用でき、この実施形態では、圧電型加速度センサが用いられている。振動センサ40は、マイクロフォン18で集音する目的音を検出しないために、固定筒30の内側に設ける(固定筒30に内蔵する)のがよい。また、振動センサ40は、発生するノイズを確実にとらえることができるように、超音波モータ20の振動子21と移動体24の摺動面の内側に取り付けるのが好ましい。振動センサ40として、マイクロフォンを用いることも可能であるが、固定筒30内で増幅される作動音も検出したいので、検出波長域の広い振動センサが好ましい。この振動センサ40の出力は、周波数解析部51に接続されている。
【0021】
周波数解析部51は、動画撮影用の集音を行うマイクロフォン18と、振動センサ40の検出信号を周波数解析する部分である。
ノイズ成分除去部52は、周波数解析部51の解析結果から、マイクロフォン18の出力信号から、振動センサ40のノイズ成分を除去する部分であり、その出力は、スピ−カ19に接続されている。
【0022】
図3は、本実施形態に係る超音波モータユニットの搭載されたカメラのウォブリング動作を示すイメージ図である。
レリーズスイッチ13が半押しされ、動画スイッチ14が動画モードに切り替えられたときには、ミラー16がアップされる。
【0023】
そうすると、ウォブリング1の動作が行われる。ウォブリング1は、図3の期間T1に示すように、超音波モータ20によりフォーカスレンズ群5の光軸前方と後方への微動を、最低1サイクル(実際には3〜5回/sec程度)行う。そして、撮像素子3のボケの程度に応じて、フォーカス範囲(方向と距離)Fを算出する。
【0024】
つぎに、図3の期間T2に示すように、超音波モータ20によって、フォーカスレンズ群5をフォーカス位置まで駆動する。
この後で、ウォブリング2の動作が行われる。ウォブリング2は、焦点が合っているか否かの確認のために行うものであり、動画撮影中は、被写体を追いかけるので、フォーカス範囲F内に合焦点がある限り、T3時間連続して行われる。フォーカス範囲Fを超えた場合には、動画スイッチ14が動画モードである限りこの動作を繰り返す。
【0025】
このとき、超音波モータ20は、起動時の突発音a(a1〜a6),駆動音b(b1〜b6),停止時の突発音c(c1〜c6)が発生する。起動時又は停止時の突発音a,cは、電流の流れる又は切れることにより、発生する音であり、駆動音bは、超音波モータ20が回転しているときの振動子21と移動体24の摺動音やベアリング29の回転するメカ的な音である。なお、a5,b5,c5は、反転時の音である。
超音波モータ20の起動時の突発音a,駆動音b,停止時の突発音cは、振動センサ40によって検出される。そして、これらを含んだ動画撮影時の音は、マイクロフォン18で集音される。本実施形態によれば、周波数解析部51の解析結果から、ノイズ成分除去部52によって、マイクロフォン18の出力信号から、振動センサ40のノイズ成分を除去するので、超音波モータ20の駆動に起因するノイズの録音は軽減される。
【0026】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1) 本実施形態では、デジタル一眼レフカメラについて説明したが、本発明はこれに限定されず、コンパクトカメラや携帯電話などにも適用可能である。
(2) 超音波モータは、円環型の例で説明したが、小型の出力軸を持ったものでもよい。この場合には、固定筒のモールドに取り付ければよい。また、固定筒に穴を形成して、埋め込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1;カメラ、2;CPU、3;撮像素子、4;ズームレンズ群、5;フォーカスレンズ群、6;ブレ補正レンズ群、7;フォーカス群駆動機構、8;絞り、9;記録媒体、10;EEPROM、11;信号処理回路、12;AFセンサ、13;レリーズスイッチ、14;動画スイッチ、15;表示部、16;ミラー、17;シャッタ、18;マイクロフォン、19;スピーカ、20;超音波モータ、21;振動子、24;移動体、25;緩衝部材、26;支持体、27;緩衝部材、28;加圧部材、29;ベアリング、30;固定筒、40;振動センサ、51;周波数解析部、52;ノイズ成分除去部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定筒と、
前記固定筒の外周に設けられ、圧電素子への通電により弾性体に超音波振動を生じさせ、前記弾性体に圧接された移動体を前記超音波振動により移動させる超音波モータと、
前記固定筒の内周側に設けられ、前記超音波モータの駆動時に発生する振動を検出する振動センサと、
を備えた超音波モータユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波モータユニットにおいて、
前記振動センサは、前記超音波モータの前記弾性体と前記移動体の摺動面近傍の内側に設けられていること、
を特徴とする超音波モータユニット。
【請求項3】
焦点調節のために、光軸方向に移動するフォーカスレンズ群と、
前記フォーカスレンズ群を駆動する、請求項1又は請求項2に記載の超音波モータユニットと、
を備えたレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項3に記載のレンズ鏡筒と、
動画撮影用の集音を行うマイクロフォンと、
前記マイクロフォンと、前記振動センサの検出信号を周波数解析する周波数解析部と、
前記周波数解析部の解析結果に基づいて、前記マイクロフォンの出力信号から前記振動センサのノイズ成分を除去するノイズ成分除去部と、
を備えた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55765(P2013−55765A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191587(P2011−191587)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】