説明

超音波モータ用ケースおよび超音波モータ装置

【課題】新たな構造を有する板状の超音波モータを保持するための超音波モータ用ケースおよびこれを用いた超音波モータ装置を提供する。
【解決手段】超音波モータ10は、主面が正方形で一定の厚さを有する圧電セラミックス板11を用い、その一側面に摺動部材13a,13bが設けられた構造を有する。ケース20は、圧電セラミックス板11において摺動部材13a,13bが設けられた側面と対向する側面の一部を把持する底壁部42と、圧電セラミックス板11において摺動部材13a,13bが設けられた側面と直交する二側面のそれぞれの一部を個々に把持する第1,第2側壁部41a,41bを有する凹型形状の第1ケース部21と、円柱形状を有し、その中心軸が圧電セラミックス板11の主面と直交し、その側面の一部が所定の固定面に押圧されるように第1側壁部41aに保持された円柱部材(コマ)23を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X−Yステージや回転ステージ等の駆動に好適な超音波モータを保持するための超音波モータ用ケースと、この超音波モータ用ケースを用いて構成された超音波モータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
矩形板状の圧電セラミックス板を、所謂、L1B2共振モードで駆動する超音波モータ(以下「L1B2モータ」と記す)が知られており、近時、X−Yステージやリニアスライダ、回転ステージ等の装置に応用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このL1B2モータは、圧電セラミックス板の一方の主面に2行2列の電極部を形成して対角に位置する2個の電極部どうしをリード線で接続して2組の駆動電極を形成し、他方の主面に共通(アース)電極を設け、圧電セラミックス板の短辺側の側面に駆動対象物に当接する摺動部材を設けた構造となっており、一般的に、2組の駆動電極に位相が90度ずれた電圧を印加して駆動する。
【0004】
L1B2共振モードは、圧電セラミックス板の長手方向での伸縮一次共振(L1)モードと、幅方向での曲げ二次共振(B2)モードの重ね合わせ(縮退)によって生じる振動モードであり、これにより摺動部材に楕円運動が生じる。
【0005】
しかしながら、L1B2モータでは、上述の通り2相駆動が必要であり、電源構成が複雑となる。また、圧電セラミックス板が駆動対象物から突出するために、装置の省スペース化が難しい等の問題がある。
【特許文献1】特開平7−184382号公報(図1、段落[0029]〜[0031]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような事情に鑑み、発明者は、駆動方法が簡単で、駆動対象物からの突出も抑制された新たな構造を有する超音波モータを創作した。しかしながら、この超音波モータを用いて駆動対象物を駆動するためには、超音波モータの駆動性能を低下させることなく、しかも簡便に超音波モータを収容・保持して、駆動対象物に当接させるためのケーシングが必要となる。
【0007】
本発明は、上述の通りに新たに創作した超音波モータを収容・保持するための超音波モータ用ケースおよびこの超音波モータを超音波モータ用ケースに収容してなる超音波モータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波モータ用ケースは、主面形状が正方形で一定の厚さを有する圧電板と、前記圧電板の一方の主面を同一形状の長方形で2分割して形成される各領域にそれぞれ独立して設けられた2つの駆動電極と、前記圧電板の他方の主面に設けられた共通電極と、前記圧電板において前記駆動電極の短辺側に位置する一側面に設けられた摺動部材とを具備する超音波モータを保持する超音波モータ用ケースであって、
前記圧電板において前記摺動部材が設けられた側面と対向する側面の一部を把持する底壁部と、前記圧電板において前記摺動部材が設けられた側面と直交する二側面のそれぞれの一部を個々に把持する第1側壁部および第2側壁部と、を有する凹型形状の第1ケース部と、
円柱形状を有し、その中心軸が前記圧電板の主面と直交するように前記第1側壁部に保持された円柱部材とを備え、
前記圧電板が前記第2側壁部によって所定の力で押圧されることによって前記第1側壁部が前記圧電板によって押圧されている状態において、前記円柱部材はその側面の一部が所定の固定面に押圧されるように前記第1側壁部に保持されていることを特徴とする。
【0009】
この超音波モータ用ケースは、円柱部材としてその端面の中心に円柱状の突起部を備えるものを用い、第1側壁部はその長さ方向に円柱部材を2個並べて配置することができるように突起部を挿入させる孔部を備えている構成とすることが好ましい。
【0010】
また、超音波モータ用ケースは、第1ケース部を嵌挿保持する凹型形状の第2ケース部を具備する構成とすることが好ましく、この場合に、第2側壁部を圧電板に押し付けるように第2側壁部と第2ケース部との間に第1付勢部材を設け、底壁部を圧電板に押し付けるように底壁部と第2ケース部との間に第2付勢部材を設け、円柱部材の側面の一部は第2ケース部において第1側壁部と対向している面を押圧している構成とすることが好ましい。
【0011】
第1ケース部には樹脂材料が好適に用いられ、第2ケース部には金属材料または樹脂材料が好適に用いられ、円柱部材には金属材料,樹脂材料,セラミックスのいずれかが好適に用いられる。
【0012】
本発明によれば、上述した超音波モータと超音波モータ用ケースとを具備する超音波モータ装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る超音波モータ用ケースは、円柱部材の側面と固定面との摩擦が摺動部材の運動を阻害することなく超音波モータのぶれを抑制することができるため、超音波モータを安定に保持することができる。また、本発明に係る超音波モータ用ケースを用いた超音波モータ装置は、組み立てが容易であり、しかもコンパクトな構成を容易に実現することができ、さらにX−Yステージ等の装置への設置も簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1Aは超音波モータ装置110を用いたリニアスライド装置100の構成を示す平面図である。このリニアスライド装置100は、リニアガイド50にスライド自在に配置されたスライダ52を、超音波モータ装置110を用いてスライドさせるものである。
【0015】
図1Aに示す通りに、スライダ52の移動方向をX方向とした3次元直交座標X,Y,Z方向を定めることとし、図1Bに超音波モータ装置110のX−Y断面図を示す。
【0016】
超音波モータ装置110は、超音波モータ10と、この超音波モータ10を保持するケース20から構成される。最初に超音波モータ10の構成と振動モードについて説明する。
【0017】
超音波モータ10は、主面形状が正方形で一定の厚さを有し、圧電板(ここでは、圧電セラミックスからなる板材(以下「圧電セラミックス板」と記す)を用いる)11と、圧電セラミックス板11の一方の主面に設けられた2つの駆動電極12a,12b(圧電セラミックス板11の領域と区別するためにドットハッチングして図1Aに示す)と、圧電セラミックス板11の他方の主面に設けられた共通電極(図示せず)とを有している。駆動電極12a,12bは、圧電セラミックス板11の主面を同一形状の長方形で2分割して形成される各領域にそれぞれ独立して設けられている。そして、駆動電極12a,12bの短辺側に位置する側面の一方(以下「第1Y方向側面」という)には、スライダ52に当接する摺動部材13a,13bが設けられている。
【0018】
圧電セラミックス板11は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックス等の公知の材料で構成され、その厚さ方向に分極されている。駆動電極12a,12bおよび共通電極は、例えば、圧電セラミックス板11に銀ペーストを塗布し、焼成することによって形成される。摺動部材13a,13bには、アルミナや窒化珪素,炭化珪素等の耐摩耗性に優れる材料が好適に用いられ、これらは接着力の強いエポキシ樹脂接着剤等を用いて圧電セラミックス板11に固定されている。
【0019】
図2に超音波モータ10とこれを駆動するための電源15との接続形態を示す。駆動電極12a,12bはスイッチ16を介して電源15に接続される。共通電極はアース接続され、接地電位に保持される。電源15は、所定の周波数,実効電圧を有するsin波の駆動電圧を出力する。スイッチ16によって、駆動電極12aに駆動電圧が印加されている間は駆動電極12bには電圧は印加されず、逆に、駆動電極12bに駆動電圧が印加されている間は駆動電極12aには電圧は印加されない。
【0020】
図3A,3Bに駆動電極12aに駆動電圧を印加した場合の圧電セラミックス板11の振動モード(変形の態様)を示す。図3A,3Bでは、第1Y方向側面の両端部をそれぞれp点,q点で示している。なお、実際に圧電セラミックス板11の振動を観察することは困難なため、図3A,3Bには有限要素法により求めた振動モードを示す。有限要素法による圧電素子の振動解析法は、圧電素子の動きを精度よく求めることができる方法として広く用いられている。
【0021】
超音波モータ10の振動モードは2つあり、図3Aに示される第1の振動モードは、p点が、90°と270°に示すように実質的に圧電セラミックス板11が変形していない状態での位置を通過点として、その右下方(0°の場合)とその左上方(180°の場合)との間を往復する振動モードである。また、q点は、p点よりも変位量が少ないものの、p点と同様に動く。このときのp点,q点の往復運動が、直線的な軌跡を描くのかまたは楕円軌跡を描くのかは、現在のところ正確に確認できていないが、このようなp点とq点の動きにしたがって摺動部材13a,13bがスライダ52に推力を与えることによって、スライダ52を移動させる。
【0022】
図3Bに示される第2の振動モードは、p点が、90°と270°に示すように実質的に圧電セラミックス板11が変形していない状態での位置を通過点として、その右下方(0°の場合)とその左上方(180°の場合)との間を往復する振動モードである。一方、q点は、90°と270°に示す位置を通過点として、その左下方(0°の場合)とその右上方(180°の場合)との間を往復するような動きを生じる。このようなp点とq点の動きによれば、摺動部材13aがスライダ52に力を与える際に、摺動部材13bはその力を打ち消すような力をスライダ52に与えることになる。しかし、p点の変位量がq点の変位量よりも大きいために、結果として摺動部材13aの推力の一部が残り、これによってスライダ52を移動させることができる。
【0023】
駆動電極12bに駆動電圧を印加した場合の圧電セラミックス板11の変形は、図3A,3Bに示した状態をそれぞれ左右で反転させたものであることは容易に理解される。スライダ52の移動方向は、第1,第2の振動モードともに、駆動していない駆動電極側から駆動している駆動電極側へと向かう方向となる。
【0024】
超音波モータ10の駆動時には、圧電セラミックス板11はY方向で対象な形状に歪むことが、図3A,3Bからわかる。超音波モータ10を保持するためには、このような圧電セラミックス板11の変形を考慮する必要がある。
【0025】
そこで、図1A,1Bに示されるように、超音波モータ10を保持するケース20としては、超音波モータ10を直接に保持する第1ケース部21と、この第1ケース部21を嵌挿保持する第2ケース部22と、円柱部材(以下「コマ」という)23と、第1付勢部材たる第1コイルバネ24と、第2付勢部材たる第2コイルバネ25を備えているものが好適に用いられる。
【0026】
第1ケース部21は凹型形状を有している。圧電セラミックス板11の第1Y方向側面と直交する2つ側面をそれぞれ第1X方向側面(−X側),第2X方向側面(+X側)とすると、第1ケース部21は、第1X方向側面の一部を把持するための爪部31aが設けられた第1側壁部41aと、第2X方向側面の一部を把持するための爪部31bが設けられた第2側壁部41bを有している。また、第1ケース部21は、圧電セラミックス板11において第1Y方向側面と対向している側面の一部を把持する爪部31cが設けられた底壁部42を有している。
【0027】
これら第1,第2側壁部41a,41bおよび底壁部42は、機械的強度を高く維持する観点から、一体構造物であることが好ましい。
【0028】
爪部31a,31bは圧電セラミックス板11の変形がY方向対象であることを考慮し、爪部31cは駆動電極12a,12bのどちらを駆動しても圧電セラミックス板11を同じ状態で保持することができるように、圧電セラミックス11の各側面の中心を把持する位置に設けることが好ましい。
【0029】
なお、“把持”とは、素子保持部材13を挟み込んで保持することをいう。但し、挟み込んだ状態において、その接触面を接着剤で接着することを除外するものではない。
【0030】
爪部31aを例に挙げると、爪部31aは、圧電セラミックス板11の第1X方向側面に接触する台座部(図1B参照)と、この台座部から突起して圧電セラミックス板11をその厚さ方向で把持するための2個の突起部(図1A参照)を備えている。したがって、圧電セラミックス板11の第1X方向側面の全面が第1側壁部41aに接触することはない。爪部31b,31cについても同様である。
【0031】
圧電セラミックス板11を第1ケース部21の開口側から第1ケース部21に挿入し、爪部31a〜31cをそれぞれ構成する2個の突起部の間に圧電セラミックス板11が挿入された後には、圧電セラミックス板11が少なくともX,Z方向においてずれることがないように、爪部31a〜31cの形状(寸法)が設定されていることが好ましい。
【0032】
なお、圧電セラミックス板11を爪部31a〜31cに樹脂接着剤等で接着することは必要ではないが、超音波モータ10の振動が阻害されないか或いは阻害されてもそれが許容される程度に抑えられているのであれば、圧電セラミックス板11と爪部31a〜31cとの接触面は接着されていてもよい。その場合、圧電セラミックス板11は、爪部31a〜31cをそれぞれ構成する台座部でのみ接着されていることが好ましい。
【0033】
このように、爪部31a〜31cによって、圧電セラミックス板11の周囲全体を保持することなく、その一部を把持することにより、超音波モータ10を駆動したときに、圧電セラミックス11に生じる共振振動の阻害は最小限に抑えられる。
【0034】
超音波モータ10を駆動すると圧電セラミックス板11が発熱する。その駆動時間が長い場合には、圧電セラミックス板11の温度が大きく上昇する。第1ケース部21は圧電セラミックス板11の温度上昇および圧電セラミックス板11からの熱伝導による第1ケース部21自体の温度上昇に耐える樹脂材料であって、しかも超音波モータ装置110の振動に対して耐久性のある樹脂材料が好適に用いられ、具体的には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のエンジニアリングプラスチックが好適に用いられる。
【0035】
第2ケース部22は、第1ケース部21と同様に凹型形状を有している。この第2ケース部材22は、X方向側において第1,第2側壁部41a,41bとそれぞれ対向する第1,第2外壁部43a,43bと、これらの第1,第2外壁部43a,43bを連結し、底壁部42と対向する外底壁部44から構成されている。これら第1,第2外壁部43a,43bおよび外底壁部44は、一体構造物であってもよいし、相互にボルト等で連結された構造であってもよい。
【0036】
第2ケース部22には、アルミニウムやステンレス等の金属材料あるいは樹脂材料が好適に用いられる。第2ケース部22には、そのZ方向側面を被うように、カバーを設けてもよい。また、超音波モータ10の摺動部材13a,13bが露出するように第2ケース部22のY方向開口面を覆うカバーを設けてもよい。第2ケース部22は、リニアスライド装置100を構成するフレーム54等に固定することができる。
【0037】
第1コイルバネ24は、第1ケース部21の第2側壁部41bを圧電セラミックス板11に押し付けるように、第2側壁部41bと第2ケース部22の第2外壁部43bとの間に配設される。第2側壁部41bと第2外壁部43bにはそれぞれ、第1コイルバネ24を配置するための凹部45a,45bが形成されている。第1コイルバネ24は、Y方向において爪部31bからの距離が等しい位置に配置されていることが好ましく、これにより、爪部31bが圧電セラミックス板11を安定して把持して、圧電セラミックス板11を第1側壁部41a側へ押圧することができる。
【0038】
第2コイルバネ25は、第1ケース部21の底壁部42を圧電セラミックス板11に押し付けるように、底壁部42と第2ケース部22の外底壁部44との間に配設されている。外底壁部44には、この第2コイルバネ25を設置するための凹部46が形成されている。
【0039】
圧電セラミックス板11はX方向では非対称に変形することから、第2コイルバネ25は、爪部31cの近傍に設けることが好ましい。摺動部材13a,13bをスライダ52に押しあてる力を調整するために、例えば、第2コイルバネ25の伸縮を調節するための止めネジ等を外底壁部44に設けることも好ましい。
【0040】
コマ23は、その中心軸(コマ23の長さ方向に平行で、この方向に垂直な断面円の中心を通る軸)が圧電セラミックス板11の主面(X−Y平面)と直交ように、第1ケース部21の第1側壁部41aに配設される。コマ23には、ステンレス,真鍮,アルミニウム,鋳鉄等の金属材料や、樹脂材料またはセラミックスが好適に用いられる。
【0041】
コマ23は、円柱状の本体部23aと、本体部23aの端面の中心に設けられた円柱状の突起部23bから構成されている。第1ケース部21の第1側壁部41aにおいて爪部31aが形成されている面の反対側の面には、この第1側壁部41aから本体部23aの曲面の一部が露出するようにコマ23を配設するための凹部47aが形成されている。そして、この凹部47aを形成しているX−Y面に平行な壁には、コマ23を回転自在に保持することができるように、突起部23bを嵌挿させるための孔部(切り欠き)47bが形成されている。
【0042】
圧電セラミックス板11はY方向で変形するために、第1側壁部41aには2個のコマ23がY方向に並べて配設されており、これにより圧電セラミックス板11を安定して保持することができる。なお、コマとしては単純な円柱形状のものを用いることができる。その場合には、このコマの曲面の一部が第1側壁部41aの外側に露出するように、かつ、第1側壁部41aにZ軸方向にコマを挿入することができる貫通孔を設け、さらにコマがZ方向で移動しないようなカバーを第2ケース部22を利用して取り付ければよい。貫通孔の内径とコマの外径との公差はできる限り小さい方がよいが、コマが固定されないようにする。
【0043】
第1コイルバネ24が第1ケース部21の第2側壁部41bを圧電セラミックス板11側に押圧すると、第2側壁部41bが圧電セラミックス板11をX方向に押圧し、さらに圧電セラミックス板11が第1ケース部21の第1側壁部41aを第2ケース部22の第1外壁部43a側に押圧する。
【0044】
こうして、第1側壁部41aから露出しているコマ23の曲面の一部が第1外壁部43aに接触し、その接触領域をX方向に押圧する。この接触領域はZ方向に長く幅の狭い帯状となるので、コマ23と第1外壁部43aとの間のZ方向での摩擦力が大きくなる。この摩擦力によりコマ23はZ方向で滑り難いため、超音波モータ10のZ方向におけるぶれの発生が抑制される。
【0045】
また、圧電セラミックス板11は、第1コイルバネ24によって結果的に第1,第2側壁部41a,41b間に安定に保持されているので、超音波モータ10のX方向におけるぶれの発生も抑制される。こうして、超音波モータ10のX方向とZ方向におけるぶれの発生は抑制される。しかし、Y方向にはコマ23は回転できるために、圧電セラミックス板11のY方向での変位は妨げられない。こうして、超音波モータ10を駆動したときには、摺動部材13a,13bからスライダ52に安定して推力を加えることができるため、スライダ52の駆動を高い精度で安定して行うことができる。また、第1ケース部21と第2ケース部22を用いることにより、超音波モータ装置110の組み立てを極めて容易に行うことができる。
【0046】
なお、上述の通り、超音波モータ10のZ方向のぶれは、コマ23と第1外壁部43aとの間の摩擦力により抑制されるが、コマ23の構造と凹部47aおよび孔部47bによるコマ23の保持形態によってさらにコマ23のZ方向でのぶれが抑制されているので、これによっても超音波モータ10のZ方向でのぶれの発生が抑制される。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、第1付勢部材,第2付勢部材として第1コイルバネ24,第2コイルバネ25を用いた形態について説明したが、これらに代えて、板バネを用いることもできる。また、コマは金属材料からなるものに限定されるものではなく、ゴム等の弾性体からなるものを用いることもできる。さらに、コマに代えてリニアガイドを用いることもできる。
【0048】
上記実施の形態では、第1ケース部21を第2ケース部22に嵌挿保持させた構造について説明したが、リニアスライダやX−Yステージではその装置フレームに第2ケース部と同等な形状の窪みを設ける構成も可能であるので、そのような窪みに、直接に超音波モータ装置110を保持した第1ケース部21,コマ23,第1コイルバネ24,第2コイルバネ25を装着してもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、超音波モータ装置110を固定してスライダ52をX方向に動かす構成について説明したが、例えば、固定されたガイドレールをベアリング(ローラー)と摺動部材13a,13bとで挟み込むように、超音波モータ装置110とベアリングとを同一基板に配置した構造とすれば、超音波モータ装置110を自走させるリニアモータの構成へと変形することができる。
【0050】
超音波モータ10については、2個の摺動部材13a,13bを構成としたが、1個の摺動部材を第1Y方向側面の中央に設けた構成へと変形することができる。このような構成としてもその駆動方法に変更はなく、また、ケース20の構成にも変更は必要としない。
【0051】
例えば、被駆動体が回転体であって、その回転体の外周側面に超音波モータを配置する場合には、2個の摺動部材13a,13bを備えた構造の超音波モータでは、摺動部材13a,13bはその頂点からずれた位置で回転体に接触することとなるために駆動効率が悪くなるという問題や、第1Y方向側面が回転体と接触するおそれがある等の問題が生じる。
【0052】
摺動部材を第1Y方向側面の中央に1個配設した構造の超音波モータでは、2個の摺動部材13a,13bを備えた超音波モータ10よりも、被駆動体に与える推力は小さくなるが、回転体の駆動に用いる場合には、摺動部材の頂点で回転体に接触させることができ、また、第1Y方向側面に回転体が接触するおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】スライド装置の概略構造を示す側面図。
【図1B】超音波モータ装置の概略構造を示す断面図。
【図2】超音波モータと電源との接続形態を示す図。
【図3A】超音波モータの第1の振動モードを示す図。
【図3B】超音波モータの第2の振動モードを示す図。
【符号の説明】
【0054】
10…超音波モータ、11…圧電セラミックス板、12a,12b…駆動電極、13a,13b…摺動部材、15…電源、16…スイッチ、20…ケース、21…第1ケース部、22…第2ケース部、23…コマ(円柱部材)、23a…本体部、23b…突起部、24…第1コイルバネ、25…第2コイルバネ、31a,31b,31c…爪部、41a…第1側壁部、41b…第2側壁部、42…底壁部、43a…第1外壁部、43b…第2外壁部,44…外底壁部、45a,45b,46,47a…凹部、47b…孔部、50…ガイド、52…スライダ、54…フレーム、100…スライド装置、110…超音波モータ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面形状が正方形で一定の厚さを有する圧電板と、前記圧電板の一方の主面を同一形状の長方形で2分割して形成される各領域にそれぞれ独立して設けられた2つの駆動電極と、前記圧電板の他方の主面に設けられた共通電極と、前記圧電板において前記駆動電極の短辺側に位置する一側面に設けられた摺動部材とを具備する超音波モータを保持する超音波モータ用ケースであって、
前記圧電板において前記摺動部材が設けられた側面と対向する側面の一部を把持する底壁部と、前記圧電板において前記摺動部材が設けられた側面と直交する二側面のそれぞれの一部を個々に把持する第1側壁部および第2側壁部と、を有する凹型形状の第1ケース部と、
円柱形状を有し、その中心軸が前記圧電板の主面と直交するように前記第1側壁部に保持された円柱部材とを備え、
前記圧電板が前記第2側壁部によって所定の力で押圧されることによって前記第1側壁部が前記圧電板によって押圧されている状態において、前記円柱部材はその側面の一部が所定の固定面に押圧されるように前記第1側壁部に保持されていることを特徴とする超音波モータ用ケース。
【請求項2】
前記円柱部材はその端面の中心に円柱状の突起部を備え、
前記第1側壁部は、その長さ方向に前記円柱部材を2個並べて配置することができるように前記突起部を挿入させる孔部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ用ケース。
【請求項3】
前記第1ケース部を嵌挿保持する凹型形状の第2ケース部と、
前記第2側壁部を前記圧電板に押し付けるように、前記第2側壁部と前記第2ケース部との間に設けられた第1付勢部材と、
前記底壁部を前記圧電板に押し付けるように、前記底壁部と前記第2ケース部との間に設けられた第2付勢部材とをさらに具備し、
前記円柱部材の側面の一部は、前記第2ケース部において前記第1側壁部と対向している面を押圧していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波モータ用ケース。
【請求項4】
主面形状が正方形で一定の厚さを有する圧電板と、前記圧電板の一方の主面を同一形状の長方形で2分割して形成される各領域にそれぞれ独立して設けられた2つの駆動電極と、前記圧電板の他方の主面全体に設けられた共通電極と、前記圧電板において前記駆動電極の短辺側に位置する一側面に設けられた摺動部材とを具備し、前記2つの駆動電極のいずれか一方に駆動電圧が印加されることで動作する超音波モータと、この超音波モータを保持する超音波モータ用ケースとを有する超音波モータ装置であって、
前記超音波モータ用ケースは、
前記圧電板において前記摺動部材が設けられた側面と対向する側面の一部を把持する底壁部と、前記圧電板において前記摺動部材が設けられた側面と直交する二側面のそれぞれの一部を個々に把持する第1側壁部および第2側壁部と、を有する凹型形状の第1ケース部と、
前記第1ケース部を嵌挿保持する凹型の第2ケース部と、
前記第2側壁部を前記圧電板に押し付けるように、前記第2側壁部と前記第2ケース部との間に設けられた第1付勢部材と、
前記底壁部を前記圧電板に押し付けるように、前記底壁部と前記第2ケース部との間に設けられた第2付勢部材と、
円柱形状を有し、その中心軸が前記圧電板の主面と直交するように、かつ、その側面の一部が前記第2ケース部において前記第1側壁部と対向している面を押圧するように、当該第1側壁部に保持された円柱部材とを具備することを特徴とする超音波モータ装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2009−33788(P2009−33788A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192151(P2007−192151)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】