説明

超音波処理装置

【課題】超音波素子を駆動するためのエネルギーを小さくすることができ、超音波処理装置のコストを低くすることができるようにする。
【解決手段】駆動されて超音波を発生させる超音波素子miと、被処理物及び超音波素子miと接触させて配設され、超音波を被処理物に伝達するための超音波伝播媒体を収容する伝播媒体収容室14と、超音波を反射させる反射部材とを有する。被処理物及び超音波素子miと接触させて伝播媒体収容室14が配設され、伝播媒体収容室14に、超音波を被処理物に伝達するための超音波伝播媒体が収容されるので、超音波素子miを駆動するためのエネルギーを小さくすることができる。したがって、超音波処理装置のコストを低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中の微生物を殺菌するための超音波処理装置、例えば、超音波殺菌装置においては、超音波素子を駆動することによって超音波を発生させ、該超音波によってキャビテーションを起こし、液体中の微生物を殺菌するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−288376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の超音波殺菌装置においては、超音波によってキャビテーションを起こす必要があるので、超音波素子を駆動するためのエネルギーを十分に大きくし、超音波を液体に伝達する必要がある。したがって、超音波殺菌装置のコストが高くなってしまう。
【0004】
本発明は、前記従来の超音波殺菌装置の問題点を解決して、超音波素子を駆動するためのエネルギーを小さくすることができ、コストを低くすることができる超音波処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の超音波処理装置においては、駆動されて超音波を発生させる超音波素子と、被処理物及び超音波素子と接触させて配設され、前記超音波を前記被処理物に伝達するための超音波伝播媒体を収容する伝播媒体収容室と、前記超音波を反射させる反射部材とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、超音波処理装置においては、駆動されて超音波を発生させる超音波素子と、被処理物及び超音波素子と接触させて配設され、前記超音波を前記被処理物に伝達するための超音波伝播媒体を収容する伝播媒体収容室と、前記超音波を反射させる反射部材とを有する。
【0007】
この場合、被処理物及び超音波素子と接触させて伝播媒体収容室が配設され、該伝播媒体収容室に、超音波を前記被処理物に伝達するための超音波伝播媒体が収容されるので、超音波素子を駆動するためのエネルギーを小さくすることができる。したがって、超音波処理装置のコストを低くすることができる。
【0008】
また、超音波素子によって発生させられた超音波を、超音波伝播媒体を介して被処理物に伝達することができるので、超音波素子に対する被処理物収容部の位置を設定する場合に、設計の自由度を高くすることができる。
【0009】
さらに、前記超音波が反射部材によって反射されるので、伝播媒体収容室内の全体に超音波を照射し、被処理物の全体に超音波を照射することができる。したがって、被処理物を確実に殺菌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、超音波処理装置としての超音波殺菌装置について説明する。
【0011】
図1は本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の概念図である。
【0012】
図において、11は超音波殺菌装置、12は殺菌処理部、13は伝播媒体循環処理部である。前記殺菌処理部12は、閉鎖された空間を形成し、超音波を図示されない被処理物に伝達するための超音波伝播媒体としての水eを収容する箱状の伝播媒体収容室14、該伝播媒体収容室14の所定の壁、本実施の形態においては、底壁waの中央に取り付けられた超音波発生器15、及び前記伝播媒体収容室14内における所定の箇所、本実施の形態においては、側壁wb、wc(図における手前側及び奥側の側壁も含む)に取り付けられた反射部材としての反射板17を備える。なお、本実施の形態において、被処理物は、成分として水分を有する魚介類である。
【0013】
また、前記伝播媒体循環処理部13は、前記伝播媒体収容室14から供給された水eを収容し、ろ過するろ過槽21、循環ポンプ22、水eを冷却するクーラ23等を備える。
【0014】
前記ろ過槽21内には、所定の箇所に区画壁25が配設され、該区画壁25によって第1、第2の室26、27が形成される。そして、第1の室26に図示されないろ過剤が、第2の室27に加熱部材としてのヒータ28及び温度検出部としての温度センサ29が配設される。
【0015】
また、伝播媒体収容室14と第1の室26とが管路41によって、第2の室27と循環ポンプ22とが管路43によって、循環ポンプ22とクーラ23とが管路45によって、クーラ23と伝播媒体収容室14とが管路47によって接続される。前記管路41は、一端が、伝播媒体収容室14内における上端の近傍において開口し、他端が第1の室26の上方において開口し、伝播媒体収容室14内において管路41を越えた水eが、管路41内を落下し、第1の室26に供給される。該第1の室26に供給された水eは、ろ過剤によってろ過された後、区画壁25を乗り越えて第2の室27に供給され、該第2の室27内において、必要に応じて、水eの温度が設定温度になるように、ヒータ28によって加熱される。
【0016】
そのために、温度コントローラ33が配設され、該温度コントローラ33は、温度センサ29によって検出された水eの温度を読み込み、水eの温度が設定温度になるように、フィードバック制御を行う。
【0017】
そして、第2の室27内において設定温度になった水eは、管路43を通り、循環ポンプ22によって吸引され、循環ポンプ22から吐出され、管路45を通り、クーラ23に供給される。該クーラ23には、図示されない冷凍機械が配設され、必要に応じて、前記冷凍機械を稼働することによって水eが冷却される。
【0018】
続いて、クーラ23内の水eは、管路47を通って伝播媒体収容室14に供給される。なお、前記管路47の一部は、管路41内に配設され、二重管構造にされる。本実施の形態においては、二重管構造にされるようになっているが、二重管構造以外にすることもできる。
【0019】
前記超音波発生器15は、少なくとも一つ、本実施の形態においては、n個の超音波素子mi(i=1、2、…、n−1、n)を備える。該各超音波素子miにおいて、超音波の周波数は950〔kHz〕以上、かつ、2〔MHz〕以下の範囲にされ、出力は10〔mW/cm2 〕以上、かつ、200〔W/cm2 〕以下の範囲の、被処理物の組織を破壊することのない値にされる。また、前記超音波発生器15は、被処理物によって出力を調整することができ、必要に応じて超音波素子miを複数配設することによって、出力を大きくすることができる。
【0020】
前記各超音波素子miは、例えば、セラミック振動子によって構成される。なお、本実施の形態において、超音波素子miは、底壁waに取り付けられるようになっているが、側壁wb、wcに取り付けることもできる。各超音波素子miによって発生させられた超音波は、伝播媒体収容室14内の水eに照射される。
【0021】
次に、前記構成の超音波殺菌装置11の制御回路について説明する。
【0022】
図2は本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の制御回路を示す図である。
【0023】
図において、30は超音波殺菌装置11(図1)の全体の制御を行う制御部、31は各超音波素子miを駆動するためのドライブ回路、CRi(i=1、2、…、n−1、n)は各超音波素子miを共振させるための発振回路であり、各発振回路CRiは、超音波素子miの数だけ配設され、ドライブ回路31に接続される。また、33は温度コントローラ、34は、制御部30及びドライブ回路31に、5〔V〕以上、かつ、60〔V〕以下の範囲の、被処理物の組織を破壊することのない値の電圧を印加する電源回路である。なお、被処理物によって電圧を調整することができる。
【0024】
前記制御部30は、演算装置としての図示されないCPU、記憶装置としての図示されないメモリ等を備え、前記CPUは、コンピュータとして機能し、メモリに記録されたプログラム、データ等に基づいて各種の処理を行う。
【0025】
前記各発振回路CRiは、スイッチング素子としてのトランジスタTr1、超音波の強さを検出するための被検出要素としてのコイルL1、超音波の強さを検出するための検出要素としてのコイルL2等を備え、トランジスタTr1のコレクタに端子t1が、エミッタにコイルL1を介して端子t2が接続され、端子t1、t2がドライブ回路31に接続される。また、前記コレクタとベースとの間に、超音波素子mi及びコンデンサC1から成り、LC回路を構成する第1の直列回路、並びにコンデンサC2、C3から成る第2の直列回路が接続され、前記エミッタとコンデンサC2、C3の中間点との間に前記コイルL1が接続される。該コイルL1と対向させて前記コイルL2が配設され、該コイルL2と動作検出処理手段としての図示されない動作検出回路とが接続され、該動作検出回路によってドライブ回路31の動作を検出することができる。
【0026】
前記発振回路CRiは、コルピッツ発振回路の原理を利用したものであり、制御部30の図示されない駆動処理手段が、駆動処理を行い、前記端子t1、t2間に、ドライブ回路31によって所定の電圧を印加すると、超音波素子miが駆動され、超音波を発生させる。すなわち、発振回路CRiにおいて、トランジスタTr1にノイズが入ると、該ノイズは、前記超音波素子mi及びコンデンサC1によって増幅されて超音波素子miに駆動信号として送られる。そして、該駆動信号は、トランジスタTr1にフィードバックされて更に増幅される。このような動作が繰り返されると、前記超音波素子miは、固有振動数で共振し、安定した超音波を発生させる。
【0027】
また、前記構成の発振回路CRiにおいて、端子t1、t2間に印加される電圧を変化させると、トランジスタTr1のスイッチングによって発生させられてコイルL1に供給される電流の振幅が変化する。したがって、超音波素子miの出力が変化し、超音波素子miによって発生させられる超音波の強さ(音圧)が変更される。
【0028】
ところで、本実施の形態においては、被処理物の種類に応じて超音波の強さを変更することができるようになっている。そのために、操作部35が配設され、操作者が操作部35を操作してメニューの中から超音波殺菌装置11の運転モードを選択すると、前記制御部30の図示されない出力設定処理手段は、出力設定処理を行い、前記メモリに設定された出力テーブルを参照して、運転モードに対応する出力を読み出し、設定する。そのために、前記出力テーブルには、運転モードと、運転モードに適する出力とが対応させて記録される。
【0029】
なお、前記運転モードは、被処理物の種類、大きさ、量等に基づいてあらかじめ設定される。また、操作者が操作部35を操作してメニューの中から運転モードを選択する代わりに、操作者が操作部35を操作して出力を直接選択することができる。
【0030】
前記動作検出回路は、動作検出処理を行い、コイルL1に電流が供給されるのに伴ってコイルL2に発生する電流を検出電流として読み込んで電圧に変換し、該電圧を超音波の強さとして検出する。なお、前記コイルL1、L2によって電流検出部としての電流センサが構成される。
【0031】
そして、前記前記制御部30の図示されない出力制御処理手段は、出力制御処理を行い、前記出力設定処理において設定された電圧と、動作検出処理によって検出された電圧とを比較して偏差を算出し、該偏差に基づいてフィードバック制御を行い、端子t1、t2間に印加される電圧を算出し、算出された電圧を端子t1、t2間に印加して、超音波素子miの出力を変化させる。その結果、超音波の強さを変更することができる。
【0032】
ところで、水eは流動性材料から成り、水eと被処理物とが接触させられているので、水eに照射された超音波は、被処理物に伝達される。そして、水e及び被処理物に含有される水分が超音波によって分解され、ヒドロキシルラジカル及び水素原子が生成される。したがって、水e及び被処理物内の水分が殺菌されるので、被処理物を外側及び内側から殺菌することができる。
【0033】
なお、ヒドロキシルラジカルは、超音波の周波数を950〔kHz〕以上、かつ、2〔MHz〕以下の範囲に収めたときに効率良く生成されることが実験結果によって分かっていて、特に、1600〔kHz〕以上、かつ、1650〔kHz〕以下の範囲に収めると、最も効率が良く、更に超音波の強さを調整することによって、薬物、例えば、消毒薬等に強い微生物であっても、消毒薬を使用することなく、殺菌することができる。
【0034】
ところで、本実施の形態においては、前述されたように、被処理物の種類に応じて運転モードが変更され、端子t1、t2間に印加される電圧が変更され、超音波素子miの出力を変更し、超音波の強さを変更するようにしている。
【0035】
ところが、各超音波素子miによって発生させられる超音波の周波数が一定であるので、前述されたように、出力制御処理において、端子t1、t2間に印加される電圧を変更した場合、ヒドロキシルラジカルを十分に生成することができないことがある。例えば、印加される電圧が20〔V〕より低い場合、1000〔kHz〕の近傍の周波数で超音波を発生させると、ヒドロキシルラジカルを十分に生成することができるのに対して、他の周波数で超音波を発生させると、ヒドロキシルラジカルを十分に生成することができない。
【0036】
また、印加される電圧が20〔V〕以上である場合、1600〔kHz〕の近傍の周波数で超音波を発生させると、ヒドロキシルラジカルを十分に生成することができるのに対して、他の周波数で超音波を発生させると、ヒドロキシルラジカルを十分に生成することができない。このように、ヒドロキシルラジカルを十分に生成することができる電圧は超音波素子miの周波数によって異なる。
【0037】
そこで、本実施の形態においては、複数の超音波素子miをグループ分けし、各グループごとに異なる周波数で超音波を発生させることができるようになっている。そして、前述されたように、被処理物の種類に応じて、印加される電圧が設定されると、設定された電圧に対応させて超音波素子miのグループが選択されるようになっている。
【0038】
そのために、前記メモリの周波数テーブルに、電圧と、該電圧に対してヒドロキシルラジカルを十分に生成することができる周波数とが対応させて記録される。そして、前記制御部30の図示されない周波数算出処理手段は、周波数算出処理を行い、前記出力制御処理において算出された電圧を読み込み、前記周波数テーブルを参照し、電圧に対して最適な周波数を読み出すことによって算出する。
【0039】
続いて、前記制御部30の図示されない超音波素子選択処理手段は、超音波素子選択処理を行い、算出された周波数のグループを選択し、該グループに属する超音波素子miを駆動する。
【0040】
このように、本実施の形態においては、水e及び被処理物内の水分に超音波が照射されるのに伴ってヒドロキシルラジカルが生成され、該ヒドロキシルラジカルによって細菌等の微生物が殺菌されるので、超音波によってキャビテーションを起こす必要がない。したがって、超音波素子miを駆動するためのエネルギーを小さくすることができるので、超音波殺菌装置11のコストを低くすることができる。
【0041】
また、超音波素子miによって発生させた超音波を水eを介して被処理物に伝達することができるので、超音波素子miに対する被処理物の位置を設定する場合に、設計の自由度を高くすることができる。
【0042】
ところで、前記ヒドロキシルラジカルの生成は、水eの温度、及び被処理物内の水分の温度に依存し、温度が高くなるほど生成量が多くなり、殺菌能力が高くなるが、過度に生成量が多くなると被処理物を破損してしまうことがある。
【0043】
そこで、本実施の形態においては、前記制御部30の図示されない温度制御処理手段は、温度制御処理を行い、設定温度を温度コントローラ33に送り、水eの温度を設定温度になるように制御する。超音波殺菌装置11の運転を開始する時点では、通常、水eの温度は低いので、ヒータ28を通電して温度を上昇させ、水eが設定温度になるように、ヒータ28の通電をオン・オフさせるようにしている。なお、超音波が水eに照射されるのに伴って、水eの温度が高くなるので、必要に応じて、クーラ23の電源をオン・オフさせる。
【0044】
なお、駆動処理手段、出力設定処理手段、出力制御処理手段、周波数算出処理手段、超音波素子選択処理手段等によってヒドロキシルラジカル生成処理手段が構成され、該ヒドロキシルラジカル生成処理手段は、ヒドロキシルラジカル生成処理を行い、超音波素子miを駆動することによって前記ヒドロキシルラジカルを生成する。
【0045】
ところで、超音波の振動は、周波数(振動数)が高くなると指向性が強くなり、光の反射、回折等の現象と同様に扱うことができる。また、超音波素子miの中心を通り、超音波素子miの面に対して直交する方向に延びる線(以下「伝播線」という。)上において強さが大きいのに対して、伝播線から離れた周辺では強さが小さい。
【0046】
そこで、前記各超音波素子miに対して所定の位置に反射板17を配設し、各超音波素子miによって発生させられた超音波を反射板17によって反射させ、伝播媒体収容室14内の全体に超音波を照射し、被処理物の全体に超音波を照射するようにしている。したがって、被処理物を確実に殺菌することができる。
【0047】
図3は本発明の第1の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【0048】
図において、14は伝播媒体収容室であり、該伝播媒体収容室14内に水eが収容される。前記伝播媒体収容室14内において、前記超音波発生器15の超音波素子miのうちの所定の超音波素子(例えば、超音波素子m1、m2等)は、超音波素子の面が上方に向けて水平になるように第1の支持部としての固定支持部15aに移動不能に取り付けられて配設され、他の超音波素子(例えば、超音波素子m(n− 1)、mn等)については、超音波素子の面が反射板17に向けて傾斜させて、かつ、揺動自在に配設される。そのために、前記固定支持部15aに隣接させて、揺動自在に配設される超音波素子は、第2の支持部としての揺動支持部15bに取り付けられる。そして、該揺動支持部15bは、駆動部としての図示されないモータと連結され、該モータを駆動することによって矢印方向に揺動させられる。
【0049】
前記固定支持部15aに取り付けられた超音波素子(以下「固定超音波素子」という。)によって発生させられた超音波は、上方に向けて伝播され、揺動支持部15bに取り付けられた超音波素子(以下「傾斜超音波素子」という。)によって発生させられた超音波は、反射板17に向けて伝播され、反射板17において反射させられる。本実施の形態においては、傾斜超音波素子は、揺動自在に配設されるが、揺動させることなく、所定の角度で傾斜させることができる。
【0050】
そして、反射板17において反射させられた超音波が分散させられて伝播媒体収容室14内の全体に伝播されるように、反射板17の反射面が所定の形状を有するように設定される。本実施の形態において、反射板17は、表面に凹凸が形成されるように、四角錐(すい)、円錐等の形状を有する複数の突起qj(j=1、2、…)を有する。
【0051】
そして、傾斜超音波素子に対する各突起qjの位置がそれぞれ異なるので、傾斜超音波素子に対する各突起qjの反射面の角度もそれぞれ異なる。したがって、各反射面で反射された超音波は、伝播媒体収容室14内において各方向に向けて分散させて伝播され、伝播媒体収容室14内における超音波の強さを、どの位置においても、10〔mW/cm2 〕以上、かつ、200〔W/cm2 〕以下の範囲の、被処理物の組織を破壊することがない値にされる。
【0052】
ところで、反射板17の反射面の面積を変えることによって、超音波の強さを変更し、前記ヒドロキシルラジカルの生成量を変更することができる。反射面の面積は、振動吸収材を貼(ちょう)着、印刷、一体生成等によって反射面上に形成することにより変更することができる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0054】
図4は本発明の第2の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【0055】
この場合、反射部材としての各反射板17の反射面S1は湾曲させられ、凹面鏡の構造を有する。この場合、傾斜超音波素子を揺動させた場合、反射板17において反射された超音波は、反射面S1の焦点に近い方向に向けて伝播させられるので、揺動支持部15b及び傾斜超音波素子の揺動範囲が比較的大きく設定された場合に適する。
【0056】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0057】
図5は本発明の第3の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【0058】
この場合、反射部材としての各反射板17の反射面S2は湾曲させられ、凸面鏡の構造を有する。この場合、傾斜超音波素子を揺動させた場合、反射板17において反射された超音波は、反射面S2の焦点から離れた方向に向けて伝播させられるので、揺動支持部15b及び傾斜超音波素子の揺動範囲が比較的小さく設定された場合に適する。
【0059】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0060】
図6は本発明の第4の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【0061】
この場合、伝播媒体収容室14の底壁waに第1の超音波発生器55が固定されて配設され、該第1の超音波発生器55に超音波素子mi(i=1、2、…)が取り付けられ、伝播媒体収容室14の頂壁wdに第2、第3の超音波発生器56、57が矢印方向に移動自在に配設され、各第2、第3の超音波発生器56、57に超音波素子r1、r2が取り付けられる。
【0062】
また、側壁wb、wcには、階段状の形状を有する反射部材としての反射板17が配設される。該反射板17の反射面S3、S4は、頂壁wd側から底壁wa側に向けて段階的に伝播媒体収容室14内の中央に向けて迫り出し、第1の面としての、鉛直方向に対して平行な鉛直面sa1〜sa4、及び各鉛直面sa1〜sa4間を結ぶ、第2の面としての傾斜面sb1〜sb3を有する。なお、各傾斜面sb1〜sb3の位置は、反射面S3、S4で互いに異ならせて形成される。
【0063】
前記構成の超音波殺菌装置11(図1)において、前記第2、第3の超音波発生器56、57を矢印方向に移動させると、超音波素子r1、r2によって発生させられた超音波は、鉛直方向における下方に向けて伝播され、各反射面S3、S4の各傾斜面sb1〜sb3のうちの所定の傾斜面で反射され、水平方向に向けて伝播される。
【0064】
したがって、前記第2、第3の超音波発生器56、57の位置をそれぞれ設定することによって、超音波が反射される傾斜面sb1〜sb3を選択することができるので、伝播媒体収容室14内の各部位における超音波の強さを変更することができる。
【0065】
この場合、第2、第3の超音波発生器56、57の各超音波素子r1、r2によって発生させられた超音波は、互いに水平方向に伝播されるが、各傾斜面sb1〜sb3の位置は、反射面S3、S4で互いに異ならせて形成されるので、超音波同士が干渉することはない。
【0066】
前記各実施の形態においては、超音波発生器15及び第1の超音波発生器55が底壁waに取り付けられるようになっているが、貝類等を生きたまま殺菌する場合は、金属等の板に超音波素子を取り付けて振動板ユニットを形成し、該振動板ユニットを底壁waに取り付け、貝類の殻に直接超音波を照射することができる。
【0067】
また、前記各実施の形態においては、被処理物として魚介類が処理されるようになっているが、被処理物として、生鮮食料品、レトルト食品等を袋等に入れた状態で処理することができる。その場合、前記超音波伝播媒体は、水eだけでなく、ジェル状体(ゲル状体)又はゾル状体(コロイド溶液)のものであってもよい。
【0068】
さらに、被処理物として、足、手等の人体の一部であってもよい。
【0069】
次に、足を殺菌するための超音波殺菌装置11について説明する。
【0070】
図7は本発明の第5の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【0071】
図において、14は、上部が開放された空間を形成する箱状の伝播媒体収容室であり、該伝播媒体収容室14は、超音波を被処理物である足に伝達するための超音波伝播媒体としての水eを収容する。前記伝播媒体収容室14の所定の壁、本実施の形態においては、側壁wbの下部に超音波発生器59が取り付けられ、底壁waに階段状の形状を有する反射部材としての反射板17が配設される。また、反射板17より上方の所定の箇所に、足を置くための網状の足置き61が配設される。前記超音波発生器59においては、複数の図示されない超音波素子が高さ方向における各位置に配設される。
【0072】
前記反射板17の反射面S5は、側壁wb側から側壁wc側に向けて段階的に伝播媒体収容室14内の上方に向けて迫り出し、第1の面としての、水平方向に対して平行な水平面sa11〜sa15、及び各水平面sa11〜sa15間を結ぶ、第2の面としての傾斜面sb11〜sb14を有する。
【0073】
前記構成の超音波殺菌装置11(図1)において、各超音波素子によって発生させられた超音波は、水平方向における側壁wcに向けて伝播され、反射面S5の各傾斜面sb11〜sb14で反射され、上方向に向けて伝播され、足を照射する。
【0074】
前記超音波は、手や足に照射される場合、人体に影響のない出力、すなわち10〔mW/cm2 〕以上、かつ、28〔W/cm2 〕以下に調整することができる。
【0075】
各超音波素子のうちの所定の超音波素子の出力を大きくしたり、小さくしたりすることによって、足の各部位のうちの所定の部位を充填(てん)的に殺菌することができる。
【0076】
この場合も、反射面S5の面積を変更したり、超音波発生器59を上下方向に移動させることによって、超音波の強さを変更し、前記ヒドロキシルラジカルの生成量を変更することができる。
【0077】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の概念図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の制御回路を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態における伝播媒体収容室の概念図である。
【符号の説明】
【0079】
11 超音波殺菌装置
14 伝播媒体収容室
17 反射板
30 制御部
e 水
mi 超音波素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)駆動されて超音波を発生させる超音波素子と、
(b)被処理物及び超音波素子と接触させて配設され、前記超音波を前記被処理物に伝達するための超音波伝播媒体を収容する伝播媒体収容室と、
(c)前記超音波を反射させる反射部材とを有することを特徴とする超音波処理装置。
【請求項2】
前記超音波素子のうちの所定の超音波素子は、揺動自在に配設される請求項1に記載の超音波処理装置。
【請求項3】
前記超音波素子は、反射部材に対して移動自在に配設される請求項1に記載の超音波処理装置。
【請求項4】
前記超音波素子を駆動して前記被処理物内にヒドロキシルラジカルを生成するヒドロキシルラジカル生成処理手段を有する請求項1に記載の超音波処理装置。
【請求項5】
前記ヒドロキシルラジカル生成処理手段は、超音波素子に印加される電圧に対応させて所定の周波数で超音波素子を駆動する請求項4に記載の超音波処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−114159(P2008−114159A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300032(P2006−300032)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(392005171)
【Fターム(参考)】