超音波密度計
【課題】超音波を利用して流路を流れる流体の密度を迅速に測定することができる超音波密度計を提供すること。
【解決手段】配管15の外壁面に配置された超音波振動子16,17によって、液体W1中にその流れと直交する方向に超音波S0を伝搬させるとともに、配管15の内壁面15a,15bでの反射波S01,S11,S02,S12を受信する。流体W1中を伝搬する超音波S0の伝搬時間と伝搬距離とに基づいて液体W1の音速が求められる。各超音波振動子16,17で受信した反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と、配管15の音響インピーダンスとに基づいて、液体W1の音響インピーダンスが求められる。液体W1の音響インピーダンスを音速で除算することにより液体W1の密度が求められる。
【解決手段】配管15の外壁面に配置された超音波振動子16,17によって、液体W1中にその流れと直交する方向に超音波S0を伝搬させるとともに、配管15の内壁面15a,15bでの反射波S01,S11,S02,S12を受信する。流体W1中を伝搬する超音波S0の伝搬時間と伝搬距離とに基づいて液体W1の音速が求められる。各超音波振動子16,17で受信した反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と、配管15の音響インピーダンスとに基づいて、液体W1の音響インピーダンスが求められる。液体W1の音響インピーダンスを音速で除算することにより液体W1の密度が求められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して流体の密度を測定する超音波密度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を利用して液体の体積流量を測定する超音波流量計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、図11に示されるように、特許文献1の超音波流量計60では、液体W1を流す配管61の上流側及び下流側において対向するよう一対の超音波振動子62,63が配置される。そして、一方の超音波振動子から発せられた超音波が液体W1中を伝搬して他方の超音波振動子に至るまでの伝搬時間を測定する。具体的には、流体W1の流れの正逆方向に超音波を伝搬させ、その正方向の伝搬時間と逆方向の伝搬時間とを測定する。ここで、各超音波振動子62,63間の超音波の伝搬距離L、流体W1中の音速C、液体W1の流速Vとすると、正方向の伝搬時間Tdと逆方向の伝搬時間Tuとは、それぞれ以下の式(1),(2)で表される。
【数1】
【数2】
【0003】
すなわち、液体W1の流速Vが速くなると、正方向に伝搬される超音波S0の伝搬時間Tdは短くなり、逆方向に伝搬される超音波S0の伝搬時間Tuは長くなる(図12参照)。そして、それら超音波S0の伝搬時間差ΔTは、次式(3)のように表される。
【数3】
【0004】
ここで、液体W1の流速Vは音速Cと比較すると無視できる程度の速さである。そのため、上記の式(3)は次式(4)のように表すことができる。
【数4】
【0005】
従って、流速Vは、次式(5)により求めることができる。
【数5】
【0006】
さらに、この流速Vに配管61の断面積Sを乗算することで液体W1の体積流量Q(=SV)が求められる。
【0007】
また、超音波を利用して流体の密度を計測し、その密度と体積流量とを乗算することで流体の質量流量を求める超音波質量流量計が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2の超音波質量流量計では、流体を流す流管(流路)に体積流量を測るための超音波送受信器が設けられ、その流管から分岐したバイパスラインの直管部の両端に密度を測るための超音波送信器及び超音波受信器が対向するよう設けられている。また、バイパスラインの途中には流量調整弁が設けられている。その流量調整弁を閉じてバイパスラインに流れる流体が静止状態となるよう流体の流れを設定しておき、その状態で超音波送信器からバイパスラインの流体中に超音波を伝搬させ、その超音波を超音波受信器で受信する。そして、超音波受信器での受信信号に基づいて、流体中を伝搬する超音波の減衰量を測定し、その減衰量から流体の密度を求めている。
【特許文献1】特開2002−162269号公報
【特許文献2】特開平10−90028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、例えば、化学工場などにおいて、二種類以上の液体を混合して生成した流体の流量を調整する場合、その混合が十分に行われずに液体の密度が不均一の状態となっても、体積流量ではその状態を確実に検出することはできない。この場合、液体の密度変化を検出する必要がある。
【0010】
ところが、特許文献2に開示されている従来の超音波質量流量計では、バイパスラインで流体を静止状態にしないと正確な密度を求めることができず、流路を流れている流体の密度をリアルタイムで検出することは困難である。また、超音波を利用しない一般的な密度計を用いる場合でも、計測器本体側に流体を移し変えて密度を測定する必要があり、流路を流れる流体の密度をリアルタイムに検出することは困難である。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波を利用して流路を流れる流体の密度を迅速に測定することができる超音波密度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、流路を流れる流体に超音波を照射しその反射波に基づいて流体の密度を求める超音波密度計であって、前記流路を構成する管本体の外壁面に配置され、前記流体中にその流れと直交する方向に超音波を伝搬させるとともに、前記管本体の内壁面で反射した超音波を受信する一対の超音波振動子と、前記流体中を伝搬する超音波の伝搬時間と伝搬距離とに基づいて前記流体の音速を求める音速算出手段と、前記各超音波振動子で受信した反射波の信号強度と、前記管本体の音響インピーダンスとに基づいて、前記流体の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス算出手段と、前記流体の音響インピーダンスを前記音速で除算することにより前記流体の密度を求める密度算出手段とを備えたことを特徴とする超音波密度計をその要旨とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、流路を構成する管本体の外壁面に一対の超音波振動子が配置され、各超音波振動子により、流路を流れる流体中にその流れと直交する方向に超音波が伝搬されるとともに、管本体の内壁面で反射した超音波が受信される。そして、音速算出手段により、流体中を伝搬する超音波の伝搬時間と伝搬距離とに基づいて流体の音速が求められる。また、音響インピーダンス算出手段により、各超音波振動子で受信した反射波の信号強度と、管本体の音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響インピーダンスが求められる。さらに、密度算出手段により、流体の音響インピーダンスを音速で除算することにより流体の密度が求められる。このように超音波密度計を構成することにより、管本体内の流路に流体を流した状態でその流体の密度をリアルタイムで測定することができるため、その流体の密度変化を迅速に検出することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記管本体は、前記流体の流れる方向に平行な一対の内壁面を有し、前記超音波振動子は、一方の内壁面を介して流路内の流体中に超音波を伝搬させ、他方の内壁面で反射した超音波を受信することをその要旨とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、超音波振動子によって、流体の流れと直交する方向に超音波を確実に伝搬させることができ、流路の各内壁面で反射した反射波を正確に受信することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記一対の超音波振動子は、前記管本体における上流側及び下流側の外壁面にそれぞれ配置され、その上流側と下流側とで前記内壁面の間隔を異ならせたことをその要旨とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、一対の超音波振動子を上流側及び下流側の外壁面にずらして配置しているので、各超音波振動子から発せられた超音波が干渉することがなく、反射波を確実に受信することができる。また、管本体における上流側と下流側とで超音波の伝搬距離が異なるため、その伝搬距離に応じて超音波が減衰することにより、信号強度が異なる反射波が各超音波振動子で受信される。そして、それら反射波の信号強度と管本体の音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響インピーダンスを求めることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2において、前記一対の超音波振動子は、前記管本体における上流側及び下流側の外壁面にそれぞれ配置され、その上流側と下流側とで前記管本体の音響インピーダンスを異ならせたことをその要旨とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、一対の超音波振動子を上流側及び下流側の外壁面にずらして配置しているので、各超音波振動子から発せられた超音波が干渉することがなく、反射波を確実に受信することができる。また、管本体における上流側と下流側とで音響インピーダンスが異なるため、その音響インピーダンスに応じて超音波の反射率が変化することにより、信号強度が異なる反射波が各超音波振動子で受信される。そして、それら反射波の信号強度と管本体の各音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響インピーダンスを求めることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項2において、前記管本体は長方形状に形成され、前記一対の超音波振動子のうちの一方の超音波振動子は、前記管本体における第1の外壁面に配置されるとともに、他方の超音波振動子はその第1の外壁面と直交する第2の外壁面に配置されることをその要旨とする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、一方の超音波振動子と他方の超音波振動子とにおいて、超音波の伝搬距離が異なるため、その伝搬距離に応じて超音波が減衰することにより、信号強度が異なる反射波が各超音波振動子で受信される。そして、それら反射波の信号強度と管本体の音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響インピーダンスを求めることができる。またこの場合、流体の流通方向(上流側または下流側の方向)に各超音波振動子をずらして配置する必要がないため、超音波密度計をコンパクトに形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、超音波を利用して流路を流れる流体の密度を迅速に測定することができる超音波密度計を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
【0024】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態の超音波流量計1を示す概略構成図である。超音波流量計1は、超音波伝搬時間差方式で液体W1(例えば半導体洗浄用の薬液)の体積流量を測定するための第1センサ部2と、液体W1の音速や密度などを測定するための第2センサ部3とを備え、液体W1を供給するための供給配管4の途中に設けられている。
【0025】
供給配管4の上流側には、液体W1の流量を調整するための調整バルブ5が設けられており、この調整バルブ5には、その開度を変更するためのコントローラ6が接続されている。本実施の形態において、超音波流量計1で計測された体積流量または質量流量の測定値がコントローラ6に送信され、そのコントローラ6が調整バルブ5の開度を制御することにより、供給配管4を流れる液体W1の流量が予め設定された所定の流量となるよう調整される。
【0026】
以下、本実施の形態の超音波流量計1の具体的な構成について詳述する。
【0027】
図1に示されるように、超音波流量計1の第1センサ部2は、略コ字状に屈曲形成された配管11と、その配管11の2つのコーナー部11a,11bにそれぞれ固定され配管11の直管部11cを介して対向するよう配置される一対の超音波振動子12,13とを備える。第1センサ部2の配管11は、耐薬品性に優れるフッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標))を用いて形成されており、直管部11cの長さは10cm程度である。また、この配管11内に形成される流路の断面形状は円形であり、その口径は10mm程度である。このように、流路の断面形状を円形とすることにより、その流路内において、液体W1の乱流が防止され、液体W1がスムーズに流れるようになっている。
【0028】
また、図2に示されるように、第2センサ部3は、第1センサ部2の下流側に接続される配管15(管本体)と、その配管15における上流側及び下流側の外壁面に配置される一対の超音波振動子16,17とを備える。第2センサ部3の配管15も、耐薬品性に優れるフッ素樹脂(例えばテフロン(商標名))を用いて形成されている。この配管15内に形成される流路の断面形状は四角形であり、各超音波振動子16,17から発せられた超音波S0は、液体W1の流れる方向と平行な一対の内壁面15a,15bに対して垂直に交わる角度で入射するようになっている。この配管15では、一対の超音波振動子16,17が設けられる上流側と下流側とで内壁面15a,15bの間隔を異ならせている。具体的には、上流側の内壁面15a,15bの間隔d1は下流側の内壁面15a,15bの間隔d2の2倍の間隔となっている。また、一対の超音波振動子16,17が設けられている配管15の側壁の厚さは、上流側と下流側とで等しくなっている。
【0029】
超音波流量計1において、第1センサ部2の各超音波振動子12,13及び第2センサ部3の各超音波振動子16,17には、制御装置20が電気的に接続されている。本実施の形態では、第2センサ部3と制御装置20とによって超音波密度計が構成される。
【0030】
図3は、超音波流量計1の電気的構成を示すブロック図である。図3に示されるように、制御装置20は、CPU21、第1信号処理回路22、第2信号処理回路23、メモリ24、入力装置25、表示装置26、データ出力回路27を備える。
【0031】
第1信号処理回路22は、切り替え回路31、パルス発生回路32、受信回路33、検波回路34、及びA/D変換回路35を備える。
【0032】
切り替え回路31は、一対の超音波振動子12,13のうちの上流側の超音波振動子12をパルス発生回路32に接続するとともに下流側の超音波振動子13を受信回路33に接続する第1の接続位置と、下流側の超音波振動子13をパルス発生回路32に接続するとともに上流側の超音波振動子12を受信回路33に接続する第2の接続位置とを切り替え可能に構成されている。この切り替え回路31における接続位置は、CPU21から出力される切り替え信号によって制御される。
【0033】
パルス発生回路32は、CPU32からの制御信号に応答して動作し、超音波振動子12,13を駆動するための駆動パルスを出力する。この駆動パルスが切り替え回路31を介して各超音波振動子12,13に供給される。ここで例えば、切り替え回路31が第1の接続位置に切り替えられた場合、上流側の超音波振動子12に駆動パルスが供給され、その超音波振動子12が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波が出力される。そして、その超音波は、配管11の液体W1中をその液体W1の流れの正方向に伝搬して下流側の超音波振動子13で受信される。また逆に、切り替え回路31が第2の接続位置に切り替えられた場合には、下流側の超音波振動子13に駆動パルスが供給され、その超音波振動子13が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波が出力される。そして、その超音波は、配管11の液体W1中をその液体W1の流れの逆方向に伝搬して上流側の超音波振動子12で受信される。
【0034】
受信回路33は、図示しない信号増幅回路を含み、各超音波振動子12,13で受信された超音波信号を増幅した後、検波回路34に出力する。検波回路34は、図示しないゲート回路を含み、受信信号の中から1パルス分の超音波信号を抽出してA/D変換回路35に出力する。A/D変換回路35では、アナログ信号である超音波信号をデジタル信号にA/D変換する。CPU21は、このA/D変換後の超音波信号を取り込み、メモリ24に一旦記憶する。
【0035】
第2信号処理回路23は、切り替え回路41、パルス発生回路42、受信回路43、検波回路44、A/D変換回路45、及びタイマ46を備える。
【0036】
切り替え回路41は、第1スイッチ部41aと第2スイッチ部41bとを備え、第1スイッチ部41aでは、上流側の超音波振動子16と下流側の超音波振動子17とのいずれか一方に接続位置を切り替え、第2スイッチ部41bでは、パルス発生回路42と受信回路43とのいずれか一方に接続位置を切り替える。この切り替え回路41における接続位置も、CPU21から出力される切り替え信号によって制御される。
【0037】
パルス発生回路42は、CPU21からの制御信号に応答して動作し、超音波振動子16,17を駆動するための駆動パルスを出力する。駆動パルスは、例えば500ms毎に出力され、切り替え回路41を介して上流側の超音波振動子16と下流側の超音波振動子17とに交互に供給される。そして、駆動パルスによって超音波振動子16,17が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波が出力される。
【0038】
図2に示されるように、各超音波振動子16,17から出力された超音波S0は、配管15の側壁を介してその内側を流れる液体W1に伝搬する。このとき、超音波S0の一部は、配管15と液体W1との境界面(流路の一方の内壁面15a)で反射するとともに、一部が通過して液体W1中に伝搬する。さらに、液体W1を伝搬した超音波S0の一部は、液体W1と配管15との境界面(流路の他方の内壁面15b)で反射する。ここで、上流側において、一方の内壁面15aで反射した反射波S01と他方の内壁面15bで反射した反射波S11とが超音波振動子16で受信され、電子信号に変換される。また、下流側において、一方の内壁面15aで反射した反射波S02と他方の内壁面15bで反射した反射波S12とが超音波振動子17で受信され、電子信号に変換される。それら反射波S01,S11,S02,S12の信号は、切り替え回路41を介して受信回路43に供給される。
【0039】
受信回路43は、図示しない信号増幅回路を含み、超音波振動子16,17で受信された反射波S01,S11,S02,S12の信号を増幅した後、検波回路44に出力する。検波回路44は、配管15内の各内壁面15a,15bで反射した超音波の反射波S01,S11,S02,S12を検出するための回路であり、図示しないゲート回路や比較回路などを含む。具体的には、検波回路44は、ゲート回路により各反射波S01,S11,S02,S12を抽出し、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度に対応した電圧信号をA/D変換回路45に出力する。A/D変換回路45では、アナログ信号である電圧信号をデジタル信号にA/D変換し、CPU21は、このA/D変換後の電圧信号を取り込み、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度としてメモリ24に記憶する。また、検波回路44は、比較回路により反射波S01,S11,S02,S12の信号が所定のしきい値電圧を超えたタイミングを検出し、その検出信号をタイマ46に通知する。
【0040】
タイマ46は、検波回路44から出力される検出信号に基づいて、超音波S0の伝搬時間を計測し、その時間に対応したデータを出力する。この伝搬時間のデータは、CPU21によってメモリ24に記憶される。
【0041】
CPU21は、メモリ24を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、音速、密度、体積流量、及び質量流量を算出するためのプログラムやそれらの測定値を表示するためのプログラムなどを含む。なお、CPU21が実行するプログラムとしては、メモリカードなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には、メモリ24に読み込んで使用する。
【0042】
表示装置26は、例えば液晶ディスプレイであり、音速、密度、体積流量、及び質量流量の測定値を表示するために用いられる。入力装置25は、各種の操作ボタンを含み、測定の開始・終了、表示モードの設定などを行うために用いられる。データ出力回路27は、データ出力用のインターフェース(例えば、RS232などのポート)を含み、測定した体積流量または質量流量に関するデータをコントローラ6に転送する。
【0043】
次に、本実施の形態における液体W1中の音速Cの具体的な算出方法について説明する。
【0044】
まず、第2センサ部3において、上流側の超音波振動子16から超音波S0を出力する。配管15はフッ素樹脂からなり液体W1と音響インピーダンスが異なるため、一対の内壁面15a,15b(液体W1との境界面)で超音波S0がそれぞれ反射する。そして、各反射波S01,S11の受信時刻t1,t2から超音波の伝搬時間T1(=t2−t1)を取得する(図4参照)。具体的には、図4に示されるように、各反射波S01,S11の受信時刻t1,t2(波形信号が所定のしきい値電圧を超えたタイミング)において検波回路44から検出信号が出力される。タイマ46では、その検出信号に基づいて反射波S01が受信されてから反射波S11が受信されるまでの時間が計測され、その計測値が伝搬時間T1として取得される。ここで、超音波S0の伝搬距離は、各内壁面15a,15bの間隔d1(流路の幅)の2倍であるため、次式(6)のように、伝搬距離2d1を伝搬時間T1で除算することで液体W1中の音速Cが求められる。
【数6】
【0045】
また、液体W1中の音速Cは、下流側の超音波振動子17を用いても同様に求めることができる。なおこの場合、超音波の伝搬距離は2d2となる。
【0046】
次に、液体W1の音響インピーダンス及び密度の算出方法について説明する。
【0047】
第2センサ部3において、各超音波振動子16,17から発せられた超音波S0は、その一部が配管15と液体W1との境界面(各内壁面15a,15b)で反射する(図2参照)。
【0048】
これら内壁面15a,15bでの反射波S01,S11,S02,S12の信号強度は、次式(7),(8)の関係が成り立つ。
【数7】
【数8】
【0049】
ここで、αは、液体W1の減衰定数であり、Z0は、配管15を構成するフッ素樹脂の音響インピーダンスであり、Zfは、液体W1の音響インピーダンスである。
【0050】
これら式(7)及び式(8)により、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と音響インピーダンスZ0とに基づいて液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができる。
【0051】
そして、液体W1の密度ρは、その音響インピーダンスZfと音速Cとに基づいて次式(9)により求められる。
【数9】
【0052】
次に、本実施の形態における体積流量及び質量流量の具体的な算出方法について説明する。
【0053】
本実施の形態では、まず、第1センサ部2の一対の超音波振動子12,13において、例えば、250μs毎に、正方向、逆方向、逆方向及び正方向の順序となる所定パターンで一方の超音波振動子から超音波を送信するとともに、液体W1中を伝搬した各超音波を他方の超音波振動子で受信する。このとき、超音波振動子12,13で電気信号に変換された超音波信号は、さらに第1信号処理回路22において切り替え回路31、受信回路33、検波回路34、及びA/D変換回路35を経てデジタル信号に変換された後、超音波の波形信号としてメモリ24に記憶される。なお、本実施の形態では、上述した所定パターンの超音波の送受信にて取得された4パルス分の波形信号が、液体W1の流量を求めるためのデータの塊としてメモリ24に記憶される。
【0054】
そして、それら超音波の波形信号を比較することで、波形信号の相関関数を算出する。具体的には、例えば、最初に送受信した第1パルスの波形信号と次に送受信した第2パルスの波形信号とを比較して、第1パルスを基準とした相関関数を求める。また、第1パルスの波形信号と第3パルスの波形信号とを比較して、第1パルスを基準とした相関関数を求める。さらに、第1パルスの波形信号と第4パルスの波形信号とを比較して、第1パルスを基準とした相関関数を求める。同様に、第2パルスの波形信号と第3パルスの波形信号とを比較して第2パルスを基準とした相関関数を求め、第2パルスの波形信号と第4パルスの波形信号とを比較して第2パルスを基準とした相関関数を求める。さらに、第3パルスの波形信号と第4パルスの波形信号とを比較して第3パルスを基準とした相関関数を求める。
【0055】
ここで、配管11を流れる液体W1中に気泡などの異物が含まれる場合、その異物によって超音波が乱反射するため、受信された各超音波はその波形が異なるものとなる。この場合、各波形信号により求められた相関関数の相関値は、1よりも相当小さくなる。一方、液体W1中に気泡が含まれない場合には、各超音波の波形は類似したものとなるため、相関関数の相関値が1に近い値(例えば0.97)となる。従って、本実施の形態では、相関関数の相関値が1に近い値(例えば、0.9以上)である場合に、測定に有効な波形信号であると判定する。そして、有効と判定した波形信号に基づいて、超音波の伝搬時間差を求める。
【0056】
本実施の形態では、第1パルスの超音波及び第4パルスの超音波は、両方とも液体W1中を正方向に伝搬している。従って、図5に示されるように、これら超音波の波形信号を比較して求めた相関関数f1は、その時間的なズレ量が0となる。これに対して、第1パルスの超音波及び第2パルスの超音波は、正方向及び逆方向に伝搬している。そのため、これら超音波の波形信号を比較して求めた相関関数f2は、前記相関関数f1と比較すると、超音波の伝搬時間差ΔTのズレが生じる。よって、本実施の形態では、相関関数f2の相関値が最大となる時刻に基づいて、超音波の伝搬時間差ΔTが求められる。
【0057】
そして、式(6)により求めた液体W1中の音速Cとこの伝搬時間差ΔTとを上記の式(5)に代入して流体W1の流速Vを求める。さらに、この流速Vに配管11の断面積Sを乗算することで液体W1の体積流量Q(=SV)を求める。
【0058】
なお、実際の流量測定時には、配管11の2つのコーナー部11a,11bにおいて液体W1の流れが乱れる。また、配管11において中央部の方が側壁側よりも液体W1の流れが速くなる。従って、この液体W1の流速の分布を考慮して補正演算を行うことにより、より正確な体積流量Qが算出される。さらに、上記の式(9)により求めた密度ρと体積流量Qとを乗算することにより質量流量M(=ρQ)が求められる。
【0059】
次に、本実施の形態において、液体W1の密度ρを測定するための処理例について図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図6の処理は、作業者が入力装置25に設けられている開始ボタンを操作したときに開始される。
【0060】
まず、CPU21は、第2信号処理回路23のパルス発生回路42を動作させ、例えば500ms毎に駆動パルスを出力させるとともに、切り替え回路41の接続位置を切り替えて、第2センサ部3における上流側の超音波振動子16及び下流側の超音波振動子17に対して駆動パルスを順次供給する(ステップ100)。これにより、各超音波振動子16,17から超音波S0が照射され、流路の各内壁面15a,15bで反射された各反射波S01,S11,S02,S12の電気信号が検波回路44で抽出される。そして、CPU21は、A/D変換回路45で変換されたデータを取り込み、反射波S01,S11,S02,S12の信号強度のデータとしてメモリ24に記憶する。またこのとき、タイマ46により、反射波S01,S11の受信タイミングに基づいて超音波の伝搬時間T1が計測され、その伝搬時間T1のデータがメモリ24に記憶される。
【0061】
そして、音速算出手段としてのCPU21は、超音波の伝搬時間T1と伝搬距離2d1とに基づいて、液体W1の音速Cを求める(ステップ110)。また、音響インピーダンス算出手段としてのCPU21は、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と配管15(フッ素樹脂)の音響インピーダンスZ0とに基づいて、液体W1の音響インピーダンスZfを求める(ステップ120)。さらに、密度算出手段としてのCPU21は、液体W1の音響インピーダンスZfを音速Cで除算することにより液体W1の密度ρを求める(ステップ130)。
【0062】
その後、CPU21は、密度ρの測定処理を継続するか否かを判定する(ステップ140)。具体的には、CPU21は、入力装置25の終了ボタンが操作されているか否かを判定し、終了ボタンが操作されていない場合には、ステップ100の処理に戻り、ステップ100〜ステップ140の処理を再度行う。そして、入力装置25の終了ボタンが操作された場合、CPU21は図6の処理を終了する。
【0063】
次に、本実施の形態において、液体W1の質量流量Mを測定するための処理例について図7のフローチャートを用いて説明する。図7の処理は、図6の処理によって液体W1の音速Cや密度ρが測定された後に実行される。
【0064】
先ず、CPU21は、第1信号処理回路22のパルス発生回路32を動作させ、250μs毎に駆動パルスを出力させるとともに、切り替え回路31の接続位置を切り替えて、上流側の超音波振動子12及び下流側の超音波振動子13に対して駆動パルスを順次供給する(ステップ200)。これにより、各超音波振動子12,13において、正方向、逆方向、逆方向及び正方向の順序となる所定パターンで超音波の送受信が行われる。そして、各超音波振動子12,13で受信された超音波信号は、第1信号処理回路22において切り替え回路31、受信回路33、検波回路34、及びA/D変換回路35を経てデジタル信号に変換される。CPU21は、そのA/D変換後の超音波信号を順次取り込み、超音波の波形信号としてメモリ24に記憶する。なおここでは、上述した所定パターンの4パルス分の波形信号がメモリ24に記憶される。
【0065】
その後、CPU21は、各超音波の波形信号を読み出し、それら波形信号を比較して相関関数を算出する(ステップ210)。そして、CPU21は、波形信号の相関関数の相関値により測定に有効な波形信号であるか否かを判定する(ステップ220)。具体的には、相関関数の相関値が所定のしきい値(例えば、0.9)以上である場合、CPU21は、測定に有効な波形信号であると判定し、その波形信号のデータをメモリ24に残す。一方、所定のしきい値よりも小さい場合には、比較した波形信号の少なくとも一方が測定に無効な波形信号である。この場合、CPU21は、他の波形信号との比較で求めた相関関数により、測定に無効な波形信号を特定して、その波形信号のデータをメモリ24から削除する。そして、4パルスの超音波において、正方向の第1パルス及び第4パルスの波形信号の両方、または逆方向の第2パルス及び第3パルスの波形信号の両方が無効な波形信号であると判定した場合、液体中に異物の混入ありと判断して、CPU21はその旨を表示装置26に表示させる(ステップ230)。その後、CPU21は、ステップ200の処理に戻り、所定パターンでの超音波の送受信を再度行う。
【0066】
一方、正方向の第1パルス及び第4パルスの波形信号の少なくとも一方が有効であると判定し、かつ逆方向の第2パルス及び第3パルスの波形信号の少なくとも一方が有効であると判定した場合、CPU21は、有効と判定した波形信号の相関関数に基づいて、正方向に伝搬した超音波と逆方向に伝搬した超音波との伝搬時間差ΔTを求める(ステップ240)。
【0067】
さらに、CPU21は、図6の処理で求めた音速Cとその伝搬時間差ΔTとを用い、式(5)に対応した演算を行うことにより液体W1の流速Vを求め、さらにその流速Vと配管11の断面積Sとを乗算することにより液体W1の体積流量Qを求める(ステップ250)。また、CPU21は、体積流量Qと密度ρとを乗算することにより質量流量Mを求める(ステップ260)。
【0068】
その後、CPU21は、質量流量Mの測定値を表示装置26に表示させる(ステップ270)。そして、CPU21は、流量の測定処理を継続するか否かを判定する(ステップ280)。具体的には、CPU21は、入力装置25の終了ボタンが操作されているか否かを判定し、終了ボタンが操作されていない場合には、ステップ200の処理に戻り、ステップ200〜ステップ280の処理を再度行う。そして、入力装置25の終了ボタンが操作された場合、CPU21は図7の処理を終了する。
【0069】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0070】
(1)本実施の形態の場合、第2センサ部3において、配管15の流路に液体W1を流した状態でその液体W1の密度ρをリアルタイムで測定することができるため、その液体W1の密度変化を迅速に検出することができる。また、その密度ρに基づいて質量流量Mを算出することができ、その算出値に応じてコントローラ6が調整バルブ5の開度を制御することにより、供給配管4を流れる液体W1の流量をより正確に調整することができる。
【0071】
(2)本実施の形態の場合、一対の超音波振動子16,17を上流側及び下流側にずらして配置しているので、各超音波振動子16,17から発せられた超音波が干渉することがなく、反射波S01,S11,S02,S12を確実に受信することができる。また、配管15の上流側と下流側とで超音波の伝搬距離を異ならせているので、その伝搬距離に応じて超音波が減衰することにより、信号強度が異なる反射波S01,S11,S02,S12が各超音波振動子16,17で受信される。従って、上式(7),(8)を用いることにより、それら反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と配管15の音響インピーダンスZ0とに基づいて、液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができる。
【0072】
(3)本実施の形態の場合、第2センサ部3における上流側の超音波振動子16と下流側の超音波振動子17とで共通の第2信号処理回路23を設け、超音波振動子16で受信された反射波S01,S11と超音波振動子17で受信された反射波S02,S12とが同じ第2信号処理回路23を用いて取得される。この場合、各超音波振動子16,17で別々の信号処理回路を設けた場合と比較して、回路素子に起因する誤差を抑えることができる。その結果、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度をより正確に得ることができ、液体W1の密度ρや質量流量Mの測定精度を向上させることができる。
[第2の実施の形態]
【0073】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、第2センサ部3における配管15の構成を変更した点が上記第1の実施の形態と異なる。なお、本実施の形態の超音波流量計1において、第2センサ部3以外の他の構成(第1センサ部2や制御装置20の電気的構成など)は第1の実施の形態と同様である。
【0074】
具体的には、図8に示されるように、本実施の形態における第2センサ部3の配管15(管本体)は、上流側と下流側とで音響インピーダンスが異なる配管部材51,52で形成されている。また、この配管15における内壁面15a,15bの間隔d1(流路の幅)は、上流側と下流側とで等しく形成されている。
【0075】
この場合、上流側の配管部材51の音響インピーダンスをZ01、下流側の配管部材52の音響インピーダンスをZ02とすると、各内壁面15a,15bでの反射波S01,S11,S02,S12は、次式(10),(11)の関係が成り立つ。
【数10】
【数11】
【0076】
そして、これら式(10)及び式(11)により、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と音響インピーダンスZ01,Z02とに基づいて、液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができる。さらに、液体W1の音速Cは上記第1の実施の形態と同様の手法で求めることができ、その音速Cと音響インピーダンスZfとにより液体W1の密度ρを求めることができる。
[第3の実施の形態]
【0077】
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態を説明する。本実施の形態でも、第2センサ部3における配管15の構成を変更した点が上記第1の実施の形態と異なる。なお、本実施の形態の超音波流量計1において、他の構成(第1センサ部2や制御装置20の電気的構成など)は第1の実施の形態と同様である。
【0078】
具体的には、図9に示されるように、本実施の形態における第2センサ部3の配管15(管本体)は、長方形状に形成されており、一方の超音波振動子16は第1の外壁面15eに配置されるとともに、他方の超音波振動子17は第1の外壁面15eと直交する第2の外壁面15fに配置されている。また、配管15において一対の超音波振動子16,17が配置される側壁の厚さは等しく、その配管15内に形成される流路は、水平方向の幅d1(内壁面15a,15bの間隔)が垂直方向の幅d2(内壁面15c,15dの間隔)の2倍となっている。なお、図9の配管15では、紙面の手前側から奥行き方向に液体W1が流れる。
【0079】
このように第2センサ部3を構成した場合、各内壁面15a,15b,15c,15dで反射する反射波S01,S11,S02,S12は、上式(7),(8)の関係が成り立つ。従って、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様に、液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができ、さらには、液体W1の密度ρや質量流量Mを求めることができる。また、上記第1の実施の形態のように、各超音波振動子16,17を液体W1の流通方向(上流側または下流側の方向)にずらして配置する必要がないため、超音波流量計1をコンパクトに形成することが可能となる。
【0080】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0081】
・上記第2の実施の形態において、第2センサ部3における配管15の上流側と下流側とは、音響インピーダンスZ01,Z02が異なる配管部材51,52で形成するものであったが、図10に示されるように、超音波の反射面となる内壁面15bの一部を配管15とは音響インピーダンスが異なる板部材55で形成してもよい。このように第2センサ部3を形成した場合でも、各内壁面15a,15bにおける反射波S01,S11,S02,S12の信号強度に基づいて、配管15を流れる液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができる。
【0082】
・上記各実施の形態では、波形信号の相関関数を求め、相関値によって測定に有効な波形信号を判定するように構成していたが、これに限定されるものではない。例えば、気泡などを含まない液体を測定する場合には、信頼性の高い波形信号を確実に取得できるので、相関関数を算出する必要はなく、取得した波形信号をそのまま利用して伝搬時間差を算出してもよい。
【0083】
・上記各実施の形態では、表示装置26に質量流量Mの計測値を表示するように構成したが、密度ρなどの他の計測値を表示するよう構成してもよい。具体的には、例えば、入力装置25のボタン操作によって表示モードを予め設定しておき、CPU21がその表示モードを判定して、表示装置26に表示する計測値を、体積流量Q、質量流量M、密度ρ、音響インピーダンスZfのうちのいずれかに切り替えるよう構成してもよい。このように構成すれば、液体W1の状態をより厳密に確認することが可能となる。
【0084】
・上記各実施の形態では、第1センサ部2と第2センサ部3とで共通の制御装置20を用いたが、それらセンサ部2,3において別々に制御装置を設けてもよい。またこの場合、第2センサ部3で検出した液体W1の密度ρを、第1センサ部2で検出した液体W1の質量流量Mとは別の表示装置に表示させてもよい。
【0085】
・上記各実施の形態では、第2センサ部3の各超音波振動子16,17において共通の第2信号処理回路23を設けたが、各超音波振動子16,17において別々の信号処理回路を設けてもよい。このようにすると、各信号処理回路により各反射波S01,S11,S02,S12を迅速に取得することができる。
【0086】
・上記各実施の形態では、供給配管4において第1センサ部2の下流側に第2センサ部3を設けたが、第1センサ部2の上流側に第2センサ部3を設けてもよい。
【0087】
・上記第1の実施の形態において、第2センサ部3の配管15は、上流側における内壁面15a,15bの間隔d1が下流側の内壁面15a,15bの間隔d2よりも広くなるよう形成されているが、これとは逆に上流側の内壁面15a,15bの間隔d1が下流側の内壁面15a,15bの間隔d2よりも狭くなるよう形成されていてもよい。
【0088】
・上記各実施の形態では、液体W1の密度ρを測定するものであったが、液体W1以外に、例えば、高圧気体などの流体の密度ρを測定してもよい。
【0089】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0090】
(1)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記一対の超音波振動子が配置される前記管本体の側壁の厚さは等しいことを特徴とする超音波密度計。
【0091】
(2)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記管本体は、耐薬品性に優れる樹脂材料で形成されることを特徴とする超音波密度計。
【0092】
(3)請求項4において、前記管本体の上流側と下流側とは、音響インピーダンスが異なる配管部材で形成したことを特徴とする超音波密度計。
【0093】
(4)請求項4において、前記管本体において前記超音波の反射面となる内壁面の一部を、前記管本体とは音響インピーダンスが異なる板部材で形成したことを特徴とする超音波密度計。
【0094】
(5)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記内壁面で反射した超音波の波形信号を抽出するための検波回路を備えたことを特徴とする超音波密度計。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の超音波流量計を示す概略構成図。
【図2】第1の実施の形態における第2センサ部の概略構成を示す断面図。
【図3】超音波流量計の電気的構成を示すブロック図。
【図4】各反射波の受信時刻及び伝搬時間を示すタイミングチャート。
【図5】波形信号の相関関数を示す説明図。
【図6】液体の密度を算出するための処理例を示すフローチャート。
【図7】液体の質量流量を算出するための処理例を示すフローチャート。
【図8】第2の実施の形態における第2センサ部の概略構成を示す断面図。
【図9】第3の実施の形態における第2センサ部の概略構成を示す断面図。
【図10】別例の実施の形態における第2センサ部の概略構成を示す断面図。
【図11】従来の超音波流量計を示す概略構成図。
【図12】超音波の伝搬時間及び伝搬時間差を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0096】
2…超音波密度計を構成する第2センサ部
15…管本体としての配管
15a,15b,15c,15d…内壁面
15e…第1の外壁面
15f…第2の外壁面
16,17…超音波振動子
20…超音波密度計を構成する制御装置
21…音速算出手段波、音響インピーダンス算出手段、密度算出手段としてのCPU
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して流体の密度を測定する超音波密度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を利用して液体の体積流量を測定する超音波流量計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、図11に示されるように、特許文献1の超音波流量計60では、液体W1を流す配管61の上流側及び下流側において対向するよう一対の超音波振動子62,63が配置される。そして、一方の超音波振動子から発せられた超音波が液体W1中を伝搬して他方の超音波振動子に至るまでの伝搬時間を測定する。具体的には、流体W1の流れの正逆方向に超音波を伝搬させ、その正方向の伝搬時間と逆方向の伝搬時間とを測定する。ここで、各超音波振動子62,63間の超音波の伝搬距離L、流体W1中の音速C、液体W1の流速Vとすると、正方向の伝搬時間Tdと逆方向の伝搬時間Tuとは、それぞれ以下の式(1),(2)で表される。
【数1】
【数2】
【0003】
すなわち、液体W1の流速Vが速くなると、正方向に伝搬される超音波S0の伝搬時間Tdは短くなり、逆方向に伝搬される超音波S0の伝搬時間Tuは長くなる(図12参照)。そして、それら超音波S0の伝搬時間差ΔTは、次式(3)のように表される。
【数3】
【0004】
ここで、液体W1の流速Vは音速Cと比較すると無視できる程度の速さである。そのため、上記の式(3)は次式(4)のように表すことができる。
【数4】
【0005】
従って、流速Vは、次式(5)により求めることができる。
【数5】
【0006】
さらに、この流速Vに配管61の断面積Sを乗算することで液体W1の体積流量Q(=SV)が求められる。
【0007】
また、超音波を利用して流体の密度を計測し、その密度と体積流量とを乗算することで流体の質量流量を求める超音波質量流量計が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
特許文献2の超音波質量流量計では、流体を流す流管(流路)に体積流量を測るための超音波送受信器が設けられ、その流管から分岐したバイパスラインの直管部の両端に密度を測るための超音波送信器及び超音波受信器が対向するよう設けられている。また、バイパスラインの途中には流量調整弁が設けられている。その流量調整弁を閉じてバイパスラインに流れる流体が静止状態となるよう流体の流れを設定しておき、その状態で超音波送信器からバイパスラインの流体中に超音波を伝搬させ、その超音波を超音波受信器で受信する。そして、超音波受信器での受信信号に基づいて、流体中を伝搬する超音波の減衰量を測定し、その減衰量から流体の密度を求めている。
【特許文献1】特開2002−162269号公報
【特許文献2】特開平10−90028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、例えば、化学工場などにおいて、二種類以上の液体を混合して生成した流体の流量を調整する場合、その混合が十分に行われずに液体の密度が不均一の状態となっても、体積流量ではその状態を確実に検出することはできない。この場合、液体の密度変化を検出する必要がある。
【0010】
ところが、特許文献2に開示されている従来の超音波質量流量計では、バイパスラインで流体を静止状態にしないと正確な密度を求めることができず、流路を流れている流体の密度をリアルタイムで検出することは困難である。また、超音波を利用しない一般的な密度計を用いる場合でも、計測器本体側に流体を移し変えて密度を測定する必要があり、流路を流れる流体の密度をリアルタイムに検出することは困難である。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波を利用して流路を流れる流体の密度を迅速に測定することができる超音波密度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、流路を流れる流体に超音波を照射しその反射波に基づいて流体の密度を求める超音波密度計であって、前記流路を構成する管本体の外壁面に配置され、前記流体中にその流れと直交する方向に超音波を伝搬させるとともに、前記管本体の内壁面で反射した超音波を受信する一対の超音波振動子と、前記流体中を伝搬する超音波の伝搬時間と伝搬距離とに基づいて前記流体の音速を求める音速算出手段と、前記各超音波振動子で受信した反射波の信号強度と、前記管本体の音響インピーダンスとに基づいて、前記流体の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス算出手段と、前記流体の音響インピーダンスを前記音速で除算することにより前記流体の密度を求める密度算出手段とを備えたことを特徴とする超音波密度計をその要旨とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、流路を構成する管本体の外壁面に一対の超音波振動子が配置され、各超音波振動子により、流路を流れる流体中にその流れと直交する方向に超音波が伝搬されるとともに、管本体の内壁面で反射した超音波が受信される。そして、音速算出手段により、流体中を伝搬する超音波の伝搬時間と伝搬距離とに基づいて流体の音速が求められる。また、音響インピーダンス算出手段により、各超音波振動子で受信した反射波の信号強度と、管本体の音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響インピーダンスが求められる。さらに、密度算出手段により、流体の音響インピーダンスを音速で除算することにより流体の密度が求められる。このように超音波密度計を構成することにより、管本体内の流路に流体を流した状態でその流体の密度をリアルタイムで測定することができるため、その流体の密度変化を迅速に検出することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記管本体は、前記流体の流れる方向に平行な一対の内壁面を有し、前記超音波振動子は、一方の内壁面を介して流路内の流体中に超音波を伝搬させ、他方の内壁面で反射した超音波を受信することをその要旨とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、超音波振動子によって、流体の流れと直交する方向に超音波を確実に伝搬させることができ、流路の各内壁面で反射した反射波を正確に受信することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記一対の超音波振動子は、前記管本体における上流側及び下流側の外壁面にそれぞれ配置され、その上流側と下流側とで前記内壁面の間隔を異ならせたことをその要旨とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、一対の超音波振動子を上流側及び下流側の外壁面にずらして配置しているので、各超音波振動子から発せられた超音波が干渉することがなく、反射波を確実に受信することができる。また、管本体における上流側と下流側とで超音波の伝搬距離が異なるため、その伝搬距離に応じて超音波が減衰することにより、信号強度が異なる反射波が各超音波振動子で受信される。そして、それら反射波の信号強度と管本体の音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響インピーダンスを求めることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2において、前記一対の超音波振動子は、前記管本体における上流側及び下流側の外壁面にそれぞれ配置され、その上流側と下流側とで前記管本体の音響インピーダンスを異ならせたことをその要旨とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、一対の超音波振動子を上流側及び下流側の外壁面にずらして配置しているので、各超音波振動子から発せられた超音波が干渉することがなく、反射波を確実に受信することができる。また、管本体における上流側と下流側とで音響インピーダンスが異なるため、その音響インピーダンスに応じて超音波の反射率が変化することにより、信号強度が異なる反射波が各超音波振動子で受信される。そして、それら反射波の信号強度と管本体の各音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響インピーダンスを求めることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項2において、前記管本体は長方形状に形成され、前記一対の超音波振動子のうちの一方の超音波振動子は、前記管本体における第1の外壁面に配置されるとともに、他方の超音波振動子はその第1の外壁面と直交する第2の外壁面に配置されることをその要旨とする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、一方の超音波振動子と他方の超音波振動子とにおいて、超音波の伝搬距離が異なるため、その伝搬距離に応じて超音波が減衰することにより、信号強度が異なる反射波が各超音波振動子で受信される。そして、それら反射波の信号強度と管本体の音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響インピーダンスを求めることができる。またこの場合、流体の流通方向(上流側または下流側の方向)に各超音波振動子をずらして配置する必要がないため、超音波密度計をコンパクトに形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、超音波を利用して流路を流れる流体の密度を迅速に測定することができる超音波密度計を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
【0024】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態の超音波流量計1を示す概略構成図である。超音波流量計1は、超音波伝搬時間差方式で液体W1(例えば半導体洗浄用の薬液)の体積流量を測定するための第1センサ部2と、液体W1の音速や密度などを測定するための第2センサ部3とを備え、液体W1を供給するための供給配管4の途中に設けられている。
【0025】
供給配管4の上流側には、液体W1の流量を調整するための調整バルブ5が設けられており、この調整バルブ5には、その開度を変更するためのコントローラ6が接続されている。本実施の形態において、超音波流量計1で計測された体積流量または質量流量の測定値がコントローラ6に送信され、そのコントローラ6が調整バルブ5の開度を制御することにより、供給配管4を流れる液体W1の流量が予め設定された所定の流量となるよう調整される。
【0026】
以下、本実施の形態の超音波流量計1の具体的な構成について詳述する。
【0027】
図1に示されるように、超音波流量計1の第1センサ部2は、略コ字状に屈曲形成された配管11と、その配管11の2つのコーナー部11a,11bにそれぞれ固定され配管11の直管部11cを介して対向するよう配置される一対の超音波振動子12,13とを備える。第1センサ部2の配管11は、耐薬品性に優れるフッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標))を用いて形成されており、直管部11cの長さは10cm程度である。また、この配管11内に形成される流路の断面形状は円形であり、その口径は10mm程度である。このように、流路の断面形状を円形とすることにより、その流路内において、液体W1の乱流が防止され、液体W1がスムーズに流れるようになっている。
【0028】
また、図2に示されるように、第2センサ部3は、第1センサ部2の下流側に接続される配管15(管本体)と、その配管15における上流側及び下流側の外壁面に配置される一対の超音波振動子16,17とを備える。第2センサ部3の配管15も、耐薬品性に優れるフッ素樹脂(例えばテフロン(商標名))を用いて形成されている。この配管15内に形成される流路の断面形状は四角形であり、各超音波振動子16,17から発せられた超音波S0は、液体W1の流れる方向と平行な一対の内壁面15a,15bに対して垂直に交わる角度で入射するようになっている。この配管15では、一対の超音波振動子16,17が設けられる上流側と下流側とで内壁面15a,15bの間隔を異ならせている。具体的には、上流側の内壁面15a,15bの間隔d1は下流側の内壁面15a,15bの間隔d2の2倍の間隔となっている。また、一対の超音波振動子16,17が設けられている配管15の側壁の厚さは、上流側と下流側とで等しくなっている。
【0029】
超音波流量計1において、第1センサ部2の各超音波振動子12,13及び第2センサ部3の各超音波振動子16,17には、制御装置20が電気的に接続されている。本実施の形態では、第2センサ部3と制御装置20とによって超音波密度計が構成される。
【0030】
図3は、超音波流量計1の電気的構成を示すブロック図である。図3に示されるように、制御装置20は、CPU21、第1信号処理回路22、第2信号処理回路23、メモリ24、入力装置25、表示装置26、データ出力回路27を備える。
【0031】
第1信号処理回路22は、切り替え回路31、パルス発生回路32、受信回路33、検波回路34、及びA/D変換回路35を備える。
【0032】
切り替え回路31は、一対の超音波振動子12,13のうちの上流側の超音波振動子12をパルス発生回路32に接続するとともに下流側の超音波振動子13を受信回路33に接続する第1の接続位置と、下流側の超音波振動子13をパルス発生回路32に接続するとともに上流側の超音波振動子12を受信回路33に接続する第2の接続位置とを切り替え可能に構成されている。この切り替え回路31における接続位置は、CPU21から出力される切り替え信号によって制御される。
【0033】
パルス発生回路32は、CPU32からの制御信号に応答して動作し、超音波振動子12,13を駆動するための駆動パルスを出力する。この駆動パルスが切り替え回路31を介して各超音波振動子12,13に供給される。ここで例えば、切り替え回路31が第1の接続位置に切り替えられた場合、上流側の超音波振動子12に駆動パルスが供給され、その超音波振動子12が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波が出力される。そして、その超音波は、配管11の液体W1中をその液体W1の流れの正方向に伝搬して下流側の超音波振動子13で受信される。また逆に、切り替え回路31が第2の接続位置に切り替えられた場合には、下流側の超音波振動子13に駆動パルスが供給され、その超音波振動子13が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波が出力される。そして、その超音波は、配管11の液体W1中をその液体W1の流れの逆方向に伝搬して上流側の超音波振動子12で受信される。
【0034】
受信回路33は、図示しない信号増幅回路を含み、各超音波振動子12,13で受信された超音波信号を増幅した後、検波回路34に出力する。検波回路34は、図示しないゲート回路を含み、受信信号の中から1パルス分の超音波信号を抽出してA/D変換回路35に出力する。A/D変換回路35では、アナログ信号である超音波信号をデジタル信号にA/D変換する。CPU21は、このA/D変換後の超音波信号を取り込み、メモリ24に一旦記憶する。
【0035】
第2信号処理回路23は、切り替え回路41、パルス発生回路42、受信回路43、検波回路44、A/D変換回路45、及びタイマ46を備える。
【0036】
切り替え回路41は、第1スイッチ部41aと第2スイッチ部41bとを備え、第1スイッチ部41aでは、上流側の超音波振動子16と下流側の超音波振動子17とのいずれか一方に接続位置を切り替え、第2スイッチ部41bでは、パルス発生回路42と受信回路43とのいずれか一方に接続位置を切り替える。この切り替え回路41における接続位置も、CPU21から出力される切り替え信号によって制御される。
【0037】
パルス発生回路42は、CPU21からの制御信号に応答して動作し、超音波振動子16,17を駆動するための駆動パルスを出力する。駆動パルスは、例えば500ms毎に出力され、切り替え回路41を介して上流側の超音波振動子16と下流側の超音波振動子17とに交互に供給される。そして、駆動パルスによって超音波振動子16,17が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波が出力される。
【0038】
図2に示されるように、各超音波振動子16,17から出力された超音波S0は、配管15の側壁を介してその内側を流れる液体W1に伝搬する。このとき、超音波S0の一部は、配管15と液体W1との境界面(流路の一方の内壁面15a)で反射するとともに、一部が通過して液体W1中に伝搬する。さらに、液体W1を伝搬した超音波S0の一部は、液体W1と配管15との境界面(流路の他方の内壁面15b)で反射する。ここで、上流側において、一方の内壁面15aで反射した反射波S01と他方の内壁面15bで反射した反射波S11とが超音波振動子16で受信され、電子信号に変換される。また、下流側において、一方の内壁面15aで反射した反射波S02と他方の内壁面15bで反射した反射波S12とが超音波振動子17で受信され、電子信号に変換される。それら反射波S01,S11,S02,S12の信号は、切り替え回路41を介して受信回路43に供給される。
【0039】
受信回路43は、図示しない信号増幅回路を含み、超音波振動子16,17で受信された反射波S01,S11,S02,S12の信号を増幅した後、検波回路44に出力する。検波回路44は、配管15内の各内壁面15a,15bで反射した超音波の反射波S01,S11,S02,S12を検出するための回路であり、図示しないゲート回路や比較回路などを含む。具体的には、検波回路44は、ゲート回路により各反射波S01,S11,S02,S12を抽出し、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度に対応した電圧信号をA/D変換回路45に出力する。A/D変換回路45では、アナログ信号である電圧信号をデジタル信号にA/D変換し、CPU21は、このA/D変換後の電圧信号を取り込み、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度としてメモリ24に記憶する。また、検波回路44は、比較回路により反射波S01,S11,S02,S12の信号が所定のしきい値電圧を超えたタイミングを検出し、その検出信号をタイマ46に通知する。
【0040】
タイマ46は、検波回路44から出力される検出信号に基づいて、超音波S0の伝搬時間を計測し、その時間に対応したデータを出力する。この伝搬時間のデータは、CPU21によってメモリ24に記憶される。
【0041】
CPU21は、メモリ24を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、音速、密度、体積流量、及び質量流量を算出するためのプログラムやそれらの測定値を表示するためのプログラムなどを含む。なお、CPU21が実行するプログラムとしては、メモリカードなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には、メモリ24に読み込んで使用する。
【0042】
表示装置26は、例えば液晶ディスプレイであり、音速、密度、体積流量、及び質量流量の測定値を表示するために用いられる。入力装置25は、各種の操作ボタンを含み、測定の開始・終了、表示モードの設定などを行うために用いられる。データ出力回路27は、データ出力用のインターフェース(例えば、RS232などのポート)を含み、測定した体積流量または質量流量に関するデータをコントローラ6に転送する。
【0043】
次に、本実施の形態における液体W1中の音速Cの具体的な算出方法について説明する。
【0044】
まず、第2センサ部3において、上流側の超音波振動子16から超音波S0を出力する。配管15はフッ素樹脂からなり液体W1と音響インピーダンスが異なるため、一対の内壁面15a,15b(液体W1との境界面)で超音波S0がそれぞれ反射する。そして、各反射波S01,S11の受信時刻t1,t2から超音波の伝搬時間T1(=t2−t1)を取得する(図4参照)。具体的には、図4に示されるように、各反射波S01,S11の受信時刻t1,t2(波形信号が所定のしきい値電圧を超えたタイミング)において検波回路44から検出信号が出力される。タイマ46では、その検出信号に基づいて反射波S01が受信されてから反射波S11が受信されるまでの時間が計測され、その計測値が伝搬時間T1として取得される。ここで、超音波S0の伝搬距離は、各内壁面15a,15bの間隔d1(流路の幅)の2倍であるため、次式(6)のように、伝搬距離2d1を伝搬時間T1で除算することで液体W1中の音速Cが求められる。
【数6】
【0045】
また、液体W1中の音速Cは、下流側の超音波振動子17を用いても同様に求めることができる。なおこの場合、超音波の伝搬距離は2d2となる。
【0046】
次に、液体W1の音響インピーダンス及び密度の算出方法について説明する。
【0047】
第2センサ部3において、各超音波振動子16,17から発せられた超音波S0は、その一部が配管15と液体W1との境界面(各内壁面15a,15b)で反射する(図2参照)。
【0048】
これら内壁面15a,15bでの反射波S01,S11,S02,S12の信号強度は、次式(7),(8)の関係が成り立つ。
【数7】
【数8】
【0049】
ここで、αは、液体W1の減衰定数であり、Z0は、配管15を構成するフッ素樹脂の音響インピーダンスであり、Zfは、液体W1の音響インピーダンスである。
【0050】
これら式(7)及び式(8)により、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と音響インピーダンスZ0とに基づいて液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができる。
【0051】
そして、液体W1の密度ρは、その音響インピーダンスZfと音速Cとに基づいて次式(9)により求められる。
【数9】
【0052】
次に、本実施の形態における体積流量及び質量流量の具体的な算出方法について説明する。
【0053】
本実施の形態では、まず、第1センサ部2の一対の超音波振動子12,13において、例えば、250μs毎に、正方向、逆方向、逆方向及び正方向の順序となる所定パターンで一方の超音波振動子から超音波を送信するとともに、液体W1中を伝搬した各超音波を他方の超音波振動子で受信する。このとき、超音波振動子12,13で電気信号に変換された超音波信号は、さらに第1信号処理回路22において切り替え回路31、受信回路33、検波回路34、及びA/D変換回路35を経てデジタル信号に変換された後、超音波の波形信号としてメモリ24に記憶される。なお、本実施の形態では、上述した所定パターンの超音波の送受信にて取得された4パルス分の波形信号が、液体W1の流量を求めるためのデータの塊としてメモリ24に記憶される。
【0054】
そして、それら超音波の波形信号を比較することで、波形信号の相関関数を算出する。具体的には、例えば、最初に送受信した第1パルスの波形信号と次に送受信した第2パルスの波形信号とを比較して、第1パルスを基準とした相関関数を求める。また、第1パルスの波形信号と第3パルスの波形信号とを比較して、第1パルスを基準とした相関関数を求める。さらに、第1パルスの波形信号と第4パルスの波形信号とを比較して、第1パルスを基準とした相関関数を求める。同様に、第2パルスの波形信号と第3パルスの波形信号とを比較して第2パルスを基準とした相関関数を求め、第2パルスの波形信号と第4パルスの波形信号とを比較して第2パルスを基準とした相関関数を求める。さらに、第3パルスの波形信号と第4パルスの波形信号とを比較して第3パルスを基準とした相関関数を求める。
【0055】
ここで、配管11を流れる液体W1中に気泡などの異物が含まれる場合、その異物によって超音波が乱反射するため、受信された各超音波はその波形が異なるものとなる。この場合、各波形信号により求められた相関関数の相関値は、1よりも相当小さくなる。一方、液体W1中に気泡が含まれない場合には、各超音波の波形は類似したものとなるため、相関関数の相関値が1に近い値(例えば0.97)となる。従って、本実施の形態では、相関関数の相関値が1に近い値(例えば、0.9以上)である場合に、測定に有効な波形信号であると判定する。そして、有効と判定した波形信号に基づいて、超音波の伝搬時間差を求める。
【0056】
本実施の形態では、第1パルスの超音波及び第4パルスの超音波は、両方とも液体W1中を正方向に伝搬している。従って、図5に示されるように、これら超音波の波形信号を比較して求めた相関関数f1は、その時間的なズレ量が0となる。これに対して、第1パルスの超音波及び第2パルスの超音波は、正方向及び逆方向に伝搬している。そのため、これら超音波の波形信号を比較して求めた相関関数f2は、前記相関関数f1と比較すると、超音波の伝搬時間差ΔTのズレが生じる。よって、本実施の形態では、相関関数f2の相関値が最大となる時刻に基づいて、超音波の伝搬時間差ΔTが求められる。
【0057】
そして、式(6)により求めた液体W1中の音速Cとこの伝搬時間差ΔTとを上記の式(5)に代入して流体W1の流速Vを求める。さらに、この流速Vに配管11の断面積Sを乗算することで液体W1の体積流量Q(=SV)を求める。
【0058】
なお、実際の流量測定時には、配管11の2つのコーナー部11a,11bにおいて液体W1の流れが乱れる。また、配管11において中央部の方が側壁側よりも液体W1の流れが速くなる。従って、この液体W1の流速の分布を考慮して補正演算を行うことにより、より正確な体積流量Qが算出される。さらに、上記の式(9)により求めた密度ρと体積流量Qとを乗算することにより質量流量M(=ρQ)が求められる。
【0059】
次に、本実施の形態において、液体W1の密度ρを測定するための処理例について図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図6の処理は、作業者が入力装置25に設けられている開始ボタンを操作したときに開始される。
【0060】
まず、CPU21は、第2信号処理回路23のパルス発生回路42を動作させ、例えば500ms毎に駆動パルスを出力させるとともに、切り替え回路41の接続位置を切り替えて、第2センサ部3における上流側の超音波振動子16及び下流側の超音波振動子17に対して駆動パルスを順次供給する(ステップ100)。これにより、各超音波振動子16,17から超音波S0が照射され、流路の各内壁面15a,15bで反射された各反射波S01,S11,S02,S12の電気信号が検波回路44で抽出される。そして、CPU21は、A/D変換回路45で変換されたデータを取り込み、反射波S01,S11,S02,S12の信号強度のデータとしてメモリ24に記憶する。またこのとき、タイマ46により、反射波S01,S11の受信タイミングに基づいて超音波の伝搬時間T1が計測され、その伝搬時間T1のデータがメモリ24に記憶される。
【0061】
そして、音速算出手段としてのCPU21は、超音波の伝搬時間T1と伝搬距離2d1とに基づいて、液体W1の音速Cを求める(ステップ110)。また、音響インピーダンス算出手段としてのCPU21は、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と配管15(フッ素樹脂)の音響インピーダンスZ0とに基づいて、液体W1の音響インピーダンスZfを求める(ステップ120)。さらに、密度算出手段としてのCPU21は、液体W1の音響インピーダンスZfを音速Cで除算することにより液体W1の密度ρを求める(ステップ130)。
【0062】
その後、CPU21は、密度ρの測定処理を継続するか否かを判定する(ステップ140)。具体的には、CPU21は、入力装置25の終了ボタンが操作されているか否かを判定し、終了ボタンが操作されていない場合には、ステップ100の処理に戻り、ステップ100〜ステップ140の処理を再度行う。そして、入力装置25の終了ボタンが操作された場合、CPU21は図6の処理を終了する。
【0063】
次に、本実施の形態において、液体W1の質量流量Mを測定するための処理例について図7のフローチャートを用いて説明する。図7の処理は、図6の処理によって液体W1の音速Cや密度ρが測定された後に実行される。
【0064】
先ず、CPU21は、第1信号処理回路22のパルス発生回路32を動作させ、250μs毎に駆動パルスを出力させるとともに、切り替え回路31の接続位置を切り替えて、上流側の超音波振動子12及び下流側の超音波振動子13に対して駆動パルスを順次供給する(ステップ200)。これにより、各超音波振動子12,13において、正方向、逆方向、逆方向及び正方向の順序となる所定パターンで超音波の送受信が行われる。そして、各超音波振動子12,13で受信された超音波信号は、第1信号処理回路22において切り替え回路31、受信回路33、検波回路34、及びA/D変換回路35を経てデジタル信号に変換される。CPU21は、そのA/D変換後の超音波信号を順次取り込み、超音波の波形信号としてメモリ24に記憶する。なおここでは、上述した所定パターンの4パルス分の波形信号がメモリ24に記憶される。
【0065】
その後、CPU21は、各超音波の波形信号を読み出し、それら波形信号を比較して相関関数を算出する(ステップ210)。そして、CPU21は、波形信号の相関関数の相関値により測定に有効な波形信号であるか否かを判定する(ステップ220)。具体的には、相関関数の相関値が所定のしきい値(例えば、0.9)以上である場合、CPU21は、測定に有効な波形信号であると判定し、その波形信号のデータをメモリ24に残す。一方、所定のしきい値よりも小さい場合には、比較した波形信号の少なくとも一方が測定に無効な波形信号である。この場合、CPU21は、他の波形信号との比較で求めた相関関数により、測定に無効な波形信号を特定して、その波形信号のデータをメモリ24から削除する。そして、4パルスの超音波において、正方向の第1パルス及び第4パルスの波形信号の両方、または逆方向の第2パルス及び第3パルスの波形信号の両方が無効な波形信号であると判定した場合、液体中に異物の混入ありと判断して、CPU21はその旨を表示装置26に表示させる(ステップ230)。その後、CPU21は、ステップ200の処理に戻り、所定パターンでの超音波の送受信を再度行う。
【0066】
一方、正方向の第1パルス及び第4パルスの波形信号の少なくとも一方が有効であると判定し、かつ逆方向の第2パルス及び第3パルスの波形信号の少なくとも一方が有効であると判定した場合、CPU21は、有効と判定した波形信号の相関関数に基づいて、正方向に伝搬した超音波と逆方向に伝搬した超音波との伝搬時間差ΔTを求める(ステップ240)。
【0067】
さらに、CPU21は、図6の処理で求めた音速Cとその伝搬時間差ΔTとを用い、式(5)に対応した演算を行うことにより液体W1の流速Vを求め、さらにその流速Vと配管11の断面積Sとを乗算することにより液体W1の体積流量Qを求める(ステップ250)。また、CPU21は、体積流量Qと密度ρとを乗算することにより質量流量Mを求める(ステップ260)。
【0068】
その後、CPU21は、質量流量Mの測定値を表示装置26に表示させる(ステップ270)。そして、CPU21は、流量の測定処理を継続するか否かを判定する(ステップ280)。具体的には、CPU21は、入力装置25の終了ボタンが操作されているか否かを判定し、終了ボタンが操作されていない場合には、ステップ200の処理に戻り、ステップ200〜ステップ280の処理を再度行う。そして、入力装置25の終了ボタンが操作された場合、CPU21は図7の処理を終了する。
【0069】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0070】
(1)本実施の形態の場合、第2センサ部3において、配管15の流路に液体W1を流した状態でその液体W1の密度ρをリアルタイムで測定することができるため、その液体W1の密度変化を迅速に検出することができる。また、その密度ρに基づいて質量流量Mを算出することができ、その算出値に応じてコントローラ6が調整バルブ5の開度を制御することにより、供給配管4を流れる液体W1の流量をより正確に調整することができる。
【0071】
(2)本実施の形態の場合、一対の超音波振動子16,17を上流側及び下流側にずらして配置しているので、各超音波振動子16,17から発せられた超音波が干渉することがなく、反射波S01,S11,S02,S12を確実に受信することができる。また、配管15の上流側と下流側とで超音波の伝搬距離を異ならせているので、その伝搬距離に応じて超音波が減衰することにより、信号強度が異なる反射波S01,S11,S02,S12が各超音波振動子16,17で受信される。従って、上式(7),(8)を用いることにより、それら反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と配管15の音響インピーダンスZ0とに基づいて、液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができる。
【0072】
(3)本実施の形態の場合、第2センサ部3における上流側の超音波振動子16と下流側の超音波振動子17とで共通の第2信号処理回路23を設け、超音波振動子16で受信された反射波S01,S11と超音波振動子17で受信された反射波S02,S12とが同じ第2信号処理回路23を用いて取得される。この場合、各超音波振動子16,17で別々の信号処理回路を設けた場合と比較して、回路素子に起因する誤差を抑えることができる。その結果、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度をより正確に得ることができ、液体W1の密度ρや質量流量Mの測定精度を向上させることができる。
[第2の実施の形態]
【0073】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、第2センサ部3における配管15の構成を変更した点が上記第1の実施の形態と異なる。なお、本実施の形態の超音波流量計1において、第2センサ部3以外の他の構成(第1センサ部2や制御装置20の電気的構成など)は第1の実施の形態と同様である。
【0074】
具体的には、図8に示されるように、本実施の形態における第2センサ部3の配管15(管本体)は、上流側と下流側とで音響インピーダンスが異なる配管部材51,52で形成されている。また、この配管15における内壁面15a,15bの間隔d1(流路の幅)は、上流側と下流側とで等しく形成されている。
【0075】
この場合、上流側の配管部材51の音響インピーダンスをZ01、下流側の配管部材52の音響インピーダンスをZ02とすると、各内壁面15a,15bでの反射波S01,S11,S02,S12は、次式(10),(11)の関係が成り立つ。
【数10】
【数11】
【0076】
そして、これら式(10)及び式(11)により、各反射波S01,S11,S02,S12の信号強度と音響インピーダンスZ01,Z02とに基づいて、液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができる。さらに、液体W1の音速Cは上記第1の実施の形態と同様の手法で求めることができ、その音速Cと音響インピーダンスZfとにより液体W1の密度ρを求めることができる。
[第3の実施の形態]
【0077】
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態を説明する。本実施の形態でも、第2センサ部3における配管15の構成を変更した点が上記第1の実施の形態と異なる。なお、本実施の形態の超音波流量計1において、他の構成(第1センサ部2や制御装置20の電気的構成など)は第1の実施の形態と同様である。
【0078】
具体的には、図9に示されるように、本実施の形態における第2センサ部3の配管15(管本体)は、長方形状に形成されており、一方の超音波振動子16は第1の外壁面15eに配置されるとともに、他方の超音波振動子17は第1の外壁面15eと直交する第2の外壁面15fに配置されている。また、配管15において一対の超音波振動子16,17が配置される側壁の厚さは等しく、その配管15内に形成される流路は、水平方向の幅d1(内壁面15a,15bの間隔)が垂直方向の幅d2(内壁面15c,15dの間隔)の2倍となっている。なお、図9の配管15では、紙面の手前側から奥行き方向に液体W1が流れる。
【0079】
このように第2センサ部3を構成した場合、各内壁面15a,15b,15c,15dで反射する反射波S01,S11,S02,S12は、上式(7),(8)の関係が成り立つ。従って、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様に、液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができ、さらには、液体W1の密度ρや質量流量Mを求めることができる。また、上記第1の実施の形態のように、各超音波振動子16,17を液体W1の流通方向(上流側または下流側の方向)にずらして配置する必要がないため、超音波流量計1をコンパクトに形成することが可能となる。
【0080】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0081】
・上記第2の実施の形態において、第2センサ部3における配管15の上流側と下流側とは、音響インピーダンスZ01,Z02が異なる配管部材51,52で形成するものであったが、図10に示されるように、超音波の反射面となる内壁面15bの一部を配管15とは音響インピーダンスが異なる板部材55で形成してもよい。このように第2センサ部3を形成した場合でも、各内壁面15a,15bにおける反射波S01,S11,S02,S12の信号強度に基づいて、配管15を流れる液体W1の音響インピーダンスZfを求めることができる。
【0082】
・上記各実施の形態では、波形信号の相関関数を求め、相関値によって測定に有効な波形信号を判定するように構成していたが、これに限定されるものではない。例えば、気泡などを含まない液体を測定する場合には、信頼性の高い波形信号を確実に取得できるので、相関関数を算出する必要はなく、取得した波形信号をそのまま利用して伝搬時間差を算出してもよい。
【0083】
・上記各実施の形態では、表示装置26に質量流量Mの計測値を表示するように構成したが、密度ρなどの他の計測値を表示するよう構成してもよい。具体的には、例えば、入力装置25のボタン操作によって表示モードを予め設定しておき、CPU21がその表示モードを判定して、表示装置26に表示する計測値を、体積流量Q、質量流量M、密度ρ、音響インピーダンスZfのうちのいずれかに切り替えるよう構成してもよい。このように構成すれば、液体W1の状態をより厳密に確認することが可能となる。
【0084】
・上記各実施の形態では、第1センサ部2と第2センサ部3とで共通の制御装置20を用いたが、それらセンサ部2,3において別々に制御装置を設けてもよい。またこの場合、第2センサ部3で検出した液体W1の密度ρを、第1センサ部2で検出した液体W1の質量流量Mとは別の表示装置に表示させてもよい。
【0085】
・上記各実施の形態では、第2センサ部3の各超音波振動子16,17において共通の第2信号処理回路23を設けたが、各超音波振動子16,17において別々の信号処理回路を設けてもよい。このようにすると、各信号処理回路により各反射波S01,S11,S02,S12を迅速に取得することができる。
【0086】
・上記各実施の形態では、供給配管4において第1センサ部2の下流側に第2センサ部3を設けたが、第1センサ部2の上流側に第2センサ部3を設けてもよい。
【0087】
・上記第1の実施の形態において、第2センサ部3の配管15は、上流側における内壁面15a,15bの間隔d1が下流側の内壁面15a,15bの間隔d2よりも広くなるよう形成されているが、これとは逆に上流側の内壁面15a,15bの間隔d1が下流側の内壁面15a,15bの間隔d2よりも狭くなるよう形成されていてもよい。
【0088】
・上記各実施の形態では、液体W1の密度ρを測定するものであったが、液体W1以外に、例えば、高圧気体などの流体の密度ρを測定してもよい。
【0089】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0090】
(1)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記一対の超音波振動子が配置される前記管本体の側壁の厚さは等しいことを特徴とする超音波密度計。
【0091】
(2)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記管本体は、耐薬品性に優れる樹脂材料で形成されることを特徴とする超音波密度計。
【0092】
(3)請求項4において、前記管本体の上流側と下流側とは、音響インピーダンスが異なる配管部材で形成したことを特徴とする超音波密度計。
【0093】
(4)請求項4において、前記管本体において前記超音波の反射面となる内壁面の一部を、前記管本体とは音響インピーダンスが異なる板部材で形成したことを特徴とする超音波密度計。
【0094】
(5)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記内壁面で反射した超音波の波形信号を抽出するための検波回路を備えたことを特徴とする超音波密度計。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の超音波流量計を示す概略構成図。
【図2】第1の実施の形態における第2センサ部の概略構成を示す断面図。
【図3】超音波流量計の電気的構成を示すブロック図。
【図4】各反射波の受信時刻及び伝搬時間を示すタイミングチャート。
【図5】波形信号の相関関数を示す説明図。
【図6】液体の密度を算出するための処理例を示すフローチャート。
【図7】液体の質量流量を算出するための処理例を示すフローチャート。
【図8】第2の実施の形態における第2センサ部の概略構成を示す断面図。
【図9】第3の実施の形態における第2センサ部の概略構成を示す断面図。
【図10】別例の実施の形態における第2センサ部の概略構成を示す断面図。
【図11】従来の超音波流量計を示す概略構成図。
【図12】超音波の伝搬時間及び伝搬時間差を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0096】
2…超音波密度計を構成する第2センサ部
15…管本体としての配管
15a,15b,15c,15d…内壁面
15e…第1の外壁面
15f…第2の外壁面
16,17…超音波振動子
20…超音波密度計を構成する制御装置
21…音速算出手段波、音響インピーダンス算出手段、密度算出手段としてのCPU
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる流体に超音波を照射しその反射波に基づいて流体の密度を求める超音波密度計であって、
前記流路を構成する管本体の外壁面に配置され、前記流体中にその流れと直交する方向に超音波を伝搬させるとともに、前記管本体の内壁面で反射した超音波を受信する一対の超音波振動子と、
前記流体中を伝搬する超音波の伝搬時間と伝搬距離とに基づいて前記流体の音速を求める音速算出手段と、
前記各超音波振動子で受信した反射波の信号強度と、前記管本体の音響インピーダンスとに基づいて、前記流体の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス算出手段と、
前記流体の音響インピーダンスを前記音速で除算することにより前記流体の密度を求める密度算出手段と
を備えたことを特徴とする超音波密度計。
【請求項2】
前記管本体は、前記流体の流れる方向に平行な一対の内壁面を有し、前記超音波振動子は、一方の内壁面を介して流路内の流体中に超音波を伝搬させ、他方の内壁面で反射した超音波を受信することを特徴とする請求項1に記載の超音波密度計。
【請求項3】
前記一対の超音波振動子は、前記管本体における上流側及び下流側の外壁面にそれぞれ配置され、その上流側と下流側とで前記内壁面の間隔を異ならせたことを特徴とする請求項2に記載の超音波密度計。
【請求項4】
前記一対の超音波振動子は、前記管本体における上流側及び下流側の外壁面にそれぞれ配置され、その上流側と下流側とで前記管本体の音響インピーダンスを異ならせたことを特徴とする請求項2に記載の超音波密度計。
【請求項5】
前記管本体は長方形状に形成され、前記一対の超音波振動子のうちの一方の超音波振動子は、前記管本体における第1の外壁面に配置されるとともに、他方の超音波振動子はその第1の外壁面と直交する第2の外壁面に配置されることを特徴とする請求項2に記載の超音波密度計。
【請求項1】
流路を流れる流体に超音波を照射しその反射波に基づいて流体の密度を求める超音波密度計であって、
前記流路を構成する管本体の外壁面に配置され、前記流体中にその流れと直交する方向に超音波を伝搬させるとともに、前記管本体の内壁面で反射した超音波を受信する一対の超音波振動子と、
前記流体中を伝搬する超音波の伝搬時間と伝搬距離とに基づいて前記流体の音速を求める音速算出手段と、
前記各超音波振動子で受信した反射波の信号強度と、前記管本体の音響インピーダンスとに基づいて、前記流体の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス算出手段と、
前記流体の音響インピーダンスを前記音速で除算することにより前記流体の密度を求める密度算出手段と
を備えたことを特徴とする超音波密度計。
【請求項2】
前記管本体は、前記流体の流れる方向に平行な一対の内壁面を有し、前記超音波振動子は、一方の内壁面を介して流路内の流体中に超音波を伝搬させ、他方の内壁面で反射した超音波を受信することを特徴とする請求項1に記載の超音波密度計。
【請求項3】
前記一対の超音波振動子は、前記管本体における上流側及び下流側の外壁面にそれぞれ配置され、その上流側と下流側とで前記内壁面の間隔を異ならせたことを特徴とする請求項2に記載の超音波密度計。
【請求項4】
前記一対の超音波振動子は、前記管本体における上流側及び下流側の外壁面にそれぞれ配置され、その上流側と下流側とで前記管本体の音響インピーダンスを異ならせたことを特徴とする請求項2に記載の超音波密度計。
【請求項5】
前記管本体は長方形状に形成され、前記一対の超音波振動子のうちの一方の超音波振動子は、前記管本体における第1の外壁面に配置されるとともに、他方の超音波振動子はその第1の外壁面と直交する第2の外壁面に配置されることを特徴とする請求項2に記載の超音波密度計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−304282(P2008−304282A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151029(P2007−151029)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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