説明

超音波振動子及び超音波診断装置

【課題】超音波トランスデューサを所定の位置に正確に保持する超音波振動子及び超音波診断装置を提供する。
【解決手段】本発明の超音波振動子は、超音波トランスデューサ、前記超音波トランスデューサの超音波放射面とは反対側の面に配設された弾性体、前記超音波トランスデューサを、間に前記弾性体を介在させた状態で載置する支持面を有する基台部、及び前記超音波トランスデューサを、前記基台部に向かって押圧する押圧部、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサを備え、これを所定の位置に固定してなる超音波振動子及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野や構造物の非破壊検査の分野では、超音波トランスデューサを有してなる超音波振動子を備え、超音波を用いて被検体の内部を診断する超音波診断装置が用いられている。
【0003】
従来の超音波振動子では、例えば特開2009−194934号公報に開示されているように、超音波トランスデューサを、接着剤によって所定の位置に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−194934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2009−194934号公報に開示されているように、超音波トランスデューサを接着剤によって固定する超音波振動子の場合、接着剤の塗布が均一でない場合には、超音波トランスデューサが所定の姿勢に対して傾いて固定されてしまう可能性がある。また、接着剤の硬化に伴う体積の変化によって、超音波トランスデューサに内部応力や歪みが生じる可能性がある。超音波トランスデューサに内部応力や歪みが生じると、超音波の放射方向が所望の方向からずれてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、超音波トランスデューサを所定の位置に正確に保持する超音波振動子及び超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る超音波振動子は、超音波トランスデューサ、前記超音波トランスデューサの超音波放射面とは反対側の面に配設された弾性体、前記超音波トランスデューサを、間に前記弾性体を介在させた状態で載置する支持面を有する基台部、及び前記超音波トランスデューサを、前記基台部に向かって押圧する押圧部、を有する。また、本発明に係る超音波診断装置は、前記超音波振動子を具備してなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超音波トランスデューサを所定の位置に正確に保持する超音波振動子及び超音波診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の超音波振動子の斜視図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】超音波トランスデューサを組み付ける方法を示す図である。
【図4】第1の実施形態の変形例を示す図である。
【図5】超音波診断装置の構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態の超音波振動子の断面図である。
【図7】第3の実施形態の超音波振動子の断面図である。
【図8】第3の実施形態の超音波振動子を超音波放射面に直交する方向から見た図である。
【図9】第3の実施形態の超音波振動子の第1の変形例を示す斜視図である。
【図10】第3の実施形態の超音波振動子の第1の変形例において、超音波トランスデューサを組み付ける方法を示す図である。
【図11】第3の実施形態の超音波振動子の第2の変形例を示す斜視図である。
【図12】第4の実施形態の超音波振動子の断面図である。
【図13】第5の実施形態の超音波振動子の断面図である。
【図14】第5の実施形態の超音波振動子の第1の変形例を示す斜視図である。
【図15】第5の実施形態の超音波振動子の第2の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態を説明する。本実施形態の超音波振動子1は、図1に示すように、超音波トランスデューサ10、弾性体20、基台部2及び押圧部3を具備して構成されている。
【0012】
超音波トランスデューサ10は、電気信号と超音波とを相互に変換する構成を有している。超音波トランスデューサ10の構成は、電気信号と超音波とを相互に変換可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば圧電セラミクス等の圧電素子や電歪素子、又は静電容量型超音波トランスデューサ(c−MUT;Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)等が適用され得る。
【0013】
本実施形態では一例として、超音波トランスデューサ10は、圧電素子11を有して構成されるものとする。なお、超音波トランスデューサ10は、単一の圧電素子からなる形態であってもよいし、複数の圧電素子が間に樹脂を挟んで配列されてなる複合圧電体と称される形態であってもよい。圧電素子11を有してなる超音波トランスデューサ10は、周知の技術であるため、その詳細な構成の説明を省略するものとする。
【0014】
超音波トランスデューサ10は、圧電素子11が振動することによって、超音波放射面10aから超音波を放射する。超音波トランスデューサ10は、超音波放射面10aに直交する方向から見た場合に、略矩形状の外形を有している。
【0015】
より具体的に、本実施形態の超音波トランスデューサ10は、図2に示すように、圧電素子11と、圧電素子11を挟んで互いに対向する一対の電極である第1電極12及び第2電極13を有して構成されている。
【0016】
圧電素子11は、電界の強度に応じて所定の方向に歪みを生じる材料からなる。本実施形態では、圧電素子11は、超音波放射面10aに略直交する方向に沿う方向の電界の強度に応じて、超音波放射面10aに略直交する方向の歪みを生じる。
【0017】
第1電極12及び第2電極13は、例えば金属等の導電性の材料からなる薄膜である。第1電極12及び第2電極13は、圧電素子11に対して、超音波放射面10aに略直交する方向に沿う方向の電界を印加するように配設されている。具体的には、第1電極12は、圧電素子11の超音波放射面10a側の面上に設けられており、第2電極13は、圧電素子11の超音波放射面10aとは反対側の面上に設けられている。
【0018】
なお、第1電極12及び第2電極13を構成する材料は特に限定されるものではなく、またこれらは同一の材料によって構成される形態であってもよいし、異なる材料によって構成される形態であってもよい。第1電極12及び第2電極13を金属によって構成する場合、その材料としては、例えばCu、Pt、Au、Ag、Ni、Ir、In、Ru、AlまたはTi等の金属またはこれらを含む合金が挙げられる。第1電極12及び第2電極13が金属からなる場合、物理蒸着法や化学蒸着法等の公知の技術により圧電素子11の表面上に形成される。
【0019】
以上のような構成を有する超音波トランスデューサ10は、第1電極12及び第2電極13間に与えられる電気信号に応じて振動し、超音波を発生する。
【0020】
超音波トランスデューサ10の第2電極13上には、弾性体20が接合されている。弾性体20は、弾性を有する部材であり、超音波トランスデューサ10が発生する超音波を減衰する能力を有する材料からなる。弾性体20を構成する材料は特に限定されるものではないが、ゴム系材料、エラストマー材料やゲル状の物質にフィラーを混合したもの等が挙げられる。
【0021】
弾性体20を構成する材料としては、例えば、ゲル状のエポキシ樹脂にシリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)またはジルコニア(ZrO2)等を混合したもの、クロロプレンゴムまたはシリコーンゴムにガラスビーズ、炭酸カルシウム(CaCO3)またはタングステン粉末等を混合したものがある。
【0022】
弾性体20は、超音波トランスデューサ10の第2電極13が設けられている面から放出される超音波を減衰し、吸収する。弾性体20は、一般にバッキング材と称される部材である。
【0023】
したがって本実施形態においては、超音波トランスデューサ10が発生する超音波は、第1電極12が設けられた超音波放射面10aからのみ放射される。言い換えれば、弾性体20は、超音波トランスデューサ10の超音波放射面10aとは反対側の面上に配設されている。
【0024】
基台部2及び押圧部3は、超音波トランスデューサ10を保持するためのものである。基台部2は、超音波振動子1を超音波診断装置に固定するための部位でもある。図示しないが、基台部2は、嵌め合い、接着剤またはネジ等の公知の方法によって超音波診断装置側の部材と結合するための構成が設けられている。
【0025】
基台部2は、超音波トランスデューサ10を載置する支持面2aを有している。超音波トランスデューサ10は、超音波放射面10aとは反対側の面(第2電極13が設けられた面)が、支持面2aに対向する状態で、支持面2a上に載置される。
【0026】
上述したように、超音波トランスデューサ10の超音波放射面10aとは反対側の面上には、弾性体20が配設されていることから、基台部2と超音波トランスデューサ10との間には、弾性体20が介在する。
【0027】
押圧部3は、超音波トランスデューサ10を、基台部2に向かって押圧することによって、超音波トランスデューサ10を支持面2a上の所定の位置に位置決めして固定する部材である。
【0028】
本実施形態の押圧部3は、超音波放射面10aに直交する方向から見た場合における超音波トランスデューサ10の外縁部に接して、超音波トランスデューサ10を基台部2に向かって押圧する。
【0029】
より具体的に、本実施形態の押圧部3は、基台部2の支持面2aから突出するように設けられた一対の凸条部3aからなる。一対の凸条部3aは、所定の距離だけ離間して略平行に配設されている。図2に示すように、一対の略平行な凸条部3aの互いに対向する面には、斜面部3bが形成されている。
【0030】
一対の凸条部3aのそれぞれに形成された斜面部3bは、基台部2の支持面2aから離れるほど、互いに近づくように支持面2aの法線に対して所定の角度で傾斜している。言い換えれば、一対の略平行な凸条部3aの互いに対向する面に設けられた斜面部3bは、支持面2aから離れるほど互いの距離が短くなるように内側に向かって傾斜している。すなわち、一対の略平行な凸条部3aの互いに対向する面に設けられた斜面部3bは、支持面2aに直交する方向に沿って支持面2a側から見た場合に、表面が見えるように傾斜している。
【0031】
一対の斜面部3bは、超音波放射面10aに直交する方向から見た場合に略矩形状である超音波トランスデューサ10の外形に設けられた直線状の一対の平行な辺10bに沿うように、超音波トランスデューサ10の外縁部に接する。
【0032】
本実施形態では、押圧部3の一対の斜面部3bが支持面2aに向かって傾斜していることから、一対の斜面部3bは、一対の平行な辺10bが超音波放射面10aと交差する位置の稜線に接する。なお、本実施形態では、一対の斜面部3bは、超音波トランスデューサ10の長辺の稜線に接するように図示しているが、一対の斜面部3bは超音波トランスデューサ10の短辺の稜線に接する形態であってもよい。
【0033】
本実施形態の超音波振動子1では、超音波トランスデューサ10が一対の平行な辺10bの稜線の部分が、一対の斜面部3bによって挟持された状態となることから、超音波トランスデューサ10は基台部2に対して所定の位置に正確に位置決めされる。
【0034】
なお、以上に説明した基台部2及び押圧部3は、図面上においては異なる部材として示しているが、基台部2及び押圧部3は一体に形成されるものであってもよい。また、基台部2及び押圧部3を形成する方法は、特に限定されるものではない。例えば、基台部2及び押圧部3は一体成型によって作成することも可能であるし、切削、放電加工またはエッチング等の機械的もしくは化学的な除去加工によって作成することも可能である。
【0035】
また、基台部2及び押圧部3を構成する材料は特に限定されるものではない。基台部2及び押圧部3は、ステンレス鋼、アルミニウム合金、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等によって形成することができる。
【0036】
図2の断面図に示すように、本実施形態では、押圧部3は、超音波トランスデューサ10の略平行な一対の稜線に接して、超音波トランスデューサ10を基台部2の支持面2aに向かって押圧する。上述したように、基台部2の支持面2aと超音波トランスデューサ10との間には、弾性体20が介在していることから、超音波トランスデューサ10及び弾性体20は、支持面2aと一対の斜面部3bとによって囲まれた空間内に、遊びの無い状態で収容される。したがって、本実施形態の超音波振動子1においては、超音波トランスデューサ10及び弾性体20は、基台部2及び押圧部3との間の摩擦力によって基台部2に固定される。
【0037】
本実施形態において超音波トランスデューサ10及び弾性体20を基台部2に固定する作業は、図3に示すように、支持面2aと一対の斜面部3bの間に、凸条部3aの延在方向に沿って超音波トランスデューサ10及び弾性体20を挿入することによって行われる。
【0038】
以上に説明したように、本実施形態の超音波振動子1は、超音波トランスデューサ10と基台部2との間に弾性体20を介在させた状態で、押圧部3によって超音波トランスデューサ10を基台部2に向かって押圧することにより生じる摩擦力によって、超音波トランスデューサ10を基台部2に対して固定する構成を有している。
【0039】
本実施形態の超音波振動子1は、接着剤を用いることなく、超音波トランスデューサ10を保持する構成を有することから、従来のように接着剤の塗布量のばらつきや体積変化に伴う超音波トランスデューサの位置ずれや変形が生じることが無く、超音波トランスデューサを所定の位置に正確に保持することが可能である。
【0040】
また、本実施形態では、圧電素子11を有してなる超音波トランスデューサ10を押圧部3によって押圧しているが、超音波トランスデューサ10は稜線のみにおいて押圧部3に接触しているため、超音波トランスデューサ10と押圧部3との接触面積を小さくすることができ、超音波トランスデューサ10が電気信号と超音波とを変換する際の効率の低下を抑えることができる。
【0041】
以上に説明した本実施形態の超音波振動子1では、超音波トランスデューサ10及び弾性体を、支持面2aと一対の斜面部3bの間に凸条部3aの両端のどちらからでも挿入することが可能であるが、例えば図4に示すように、超音波振動子1は、凸条部3aの一方の端部の近傍に、支持面2aから突出する凸部2bを設けて、凸条部3aの他方の端部側からのみ超音波トランスデューサ10及び弾性体20を挿入可能とする構成であってもよい。この場合、凸条部3aの他方の端部側から挿入された超音波トランスデューサ10及び弾性体20を凸部2bに当て付くまで挿入することによって、超音波トランスデューサ10を、基台部2に対してより正確に位置決めして固定することができる。
【0042】
次に、本実施形態の超音波振動子1を備える超音波診断装置30の構成について説明する。図5に示す本実施形態の超音波診断装置30は、内視鏡40と共に用いられることによって人体等の被検体内部の診断を行うための装置であり、一般に超音波プローブと称される。
【0043】
本実施形態の超音波診断装置30は、その少なくとも一部が、詳しくは図示しない被検体の体内に挿入される内視鏡40の挿入部に設けられた管路40aに挿通可能な挿入部として構成されており、かつ該管路40aの先端側開口を介して被検体の体内に突没可能に構成されている。
【0044】
超音波診断装置30の挿入部は、先端が閉じた筒形状であるシース32と、該シース32内に回動自在に挿通されたフレキシブルシャフト34と、該フレキシブルシャフト34の先端に固定されたハウジング33とを具備している。ハウジング33には、上述した超音波振動子1が基台部2を介して固定されている。また、シース2内には、例えば水または油等の超音波伝達媒体39が充填されている。
【0045】
フレキシブルシャフト34は、基端側において図示しない制御装置に設けられた電動モータ等の回転駆動機構に接続されており、該回転駆動機構の駆動力をハウジング33に伝達する。ハウジング33はシース32内において回動する。
【0046】
該ハウジング33に固定された超音波振動子1は、フレキシブルシャフト34内に配設された図示しない同軸ケーブルを介して制御装置に電気的に接続されている。制御装置は、回転駆動機構によって超音波振動子1を回線駆動子ながら、超音波振動子1によって超音波の送受信を行うことによって、被検体の超音波断層像を生成し、表示する。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に対して、押圧部の構成のみが異なる。よって以下ではこの相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0048】
上述した第1の実施形態の超音波振動子1では、超音波トランスデューサ10は、平行な辺10bの稜線が、押圧部3の一対の斜面部3bにより支持面2aに向かって押圧されることによって、基台部2に対して固定される構成を有している。
【0049】
一方、本実施形態の超音波振動子1では、図6に示すように、押圧部3は、超音波放射面10aの外縁部に接する当接片3cを有して構成されている。当接片3cは、超音波放射面10aの外縁部に接して、超音波トランスデューサ10を基台部2に向かって押圧する。
【0050】
第1の実施形態では、押圧部3と超音波トランスデューサ10との接触箇所の形状が略線状であるが、本実施形態では面状となる。すなわち、本実施形態では、押圧部3と超音波トランスデューサ10との接触面積が第1の実施形態よりも大きいため、両者間の摩擦力がより大きくなり、より強固に超音波トランスデューサ10を基台部2に固定することができる。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に対して、超音波トランスデューサの構成のみが異なる。よって以下ではこの相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0052】
本実施形態の超音波振動子1が具備する超音波トランスデューサ50は、一般に静電容量型超音波トランスデューサ(c−MUT)と称される形態のものである。静電容量型超音波トランスデューサは周知の技術であるため、その詳細な説明は省略するものとする。
【0053】
図7に示すように、超音波トランスデューサ50は、基板51と、基板51上に形成された第2電極56と、第2電極56上に形成された空隙部52と、空隙部52上に形成され第1電極55を有してなる振動膜53と、を有して構成されている。
【0054】
基板51を構成する材料は、特に限定されるものではなく、導電性を有する材料によって構成されてもよいし、電気絶縁性を有する材料によって構成されてもよい。本実施形態では一例として、基板51は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、石英、サファイヤ、水晶、アルミナ、ジルコニア、ガラス、又は樹脂等の公知の電気絶縁性材料により構成されるものとする。
【0055】
第1電極55及び第2電極56は、基板51上において、間に空隙部52を挟んだ状態で略平行に配設された導電性の材料からなる薄膜である。空隙部52は、第1電極55及び第2電極56の間に所定の高さの電気絶縁性の材料からなるスペーサ54を介在させることによって形成されている。そして、第1電極55の空隙部52上に位置する領域が振動膜53として機能する。第1電極55及び第2電極56は、例えばCu、Pt、Au、Ag、Ni、Ir、In、Ru、AlまたはTi等の金属またはこれらを含む合金からなる薄膜である。なお、第1電極55及び第2電極56の表面上には、酸化や短絡を防止するために、電気絶縁性の材料からなる保護膜が形成されていてもよい。
【0056】
超音波トランスデューサ50は、第1電極55及び第2電極56間に与えられる電気信号に伴って振動膜53が振動して超音波を発生する。すなわち本実施形態の超音波トランスデューサ50における超音波放射面50aは、第1電極55が設けられた側の面となる。
【0057】
また、図8に示すように、超音波トランスデューサ50を超音波放射面50aに直交する方向から見た場合、超音波放射面50a内には複数の振動膜53が配列されている。本実施形態の超音波トランスデューサ50は、この複数の振動膜53が設けられた領域において超音波の放射及び受信を行う。以下では、超音波放射面50aにおける、複数の振動膜53が設けられた領域をアクティブ領域50bと称するものとする。
【0058】
アクティブ領域50bは超音波放射面50aよりも小さい略矩形状の領域であり、アクティブ領域50bの外側、すなわち超音波放射面50aの外縁部には、振動膜53が設けられていない非アクティブ領域が形成されている。なお、図8では振動膜53は略円形状であるように示しているが、振動膜53は、四角形や六角形等の多角形状であってもよい。以上に説明した超音波トランスデューサ50は、例えば半導体製造プロセスを用いたマイクロマシン製造技術によって形成される。
【0059】
超音波トランスデューサ50の超音波放射面50aとは反対側の面上には、第1の実施形態と同様に、弾性体20が接合されている。超音波トランスデューサ50aは、超音波放射面50aに直交する方向から見た場合に略矩形状の外形であり、外形に略平行な一対の辺50eを有する。また、超音波トランスデューサ50を、基台部2に対して固定する構成は、第1の実施形態と同様である。すなわち、押圧部3の一対の斜面部3bが、一対の平行な辺50eが超音波放射面50aと交差する位置の稜線に接することで、超音波トランスデューサ50は支持面2aに向かって押圧され、固定される。したがって、本実施形態の超音波振動子1及びこれを備える超音波診断装置30の効果は、第1の実施形態と同様である。
【0060】
また、図7及び図8に示すように、本実施形態では、超音波放射面50aに直交する方向から見た場合に、押圧部3が、超音波トランスデューサ50のアクティブ領域50bに重ならないように配設されている。言い換えれば、本実施形態では、押圧部3は、超音波トランスデューサ50の非アクティブ領域上のみに張り出した状態で、超音波トランスデューサ50を基台部2に向かって押圧している。
【0061】
静電容量型の超音波トランスデューサ50は、圧電素子のように全体が振動するのではなく、振動膜53のみが振動することによって超音波の放射及び受信を行う。このため、本実施形態の超音波トランスデューサ50では、アクティブ領域50bから、超音波放射面50aの法線方向に超音波が放射される。
【0062】
本実施形態では、超音波放射面50aに直交する方向から見た場合に、押圧部3がアクティブ領域50bに重ならないように配設されていることから、押圧部3が放射される超音波を遮ってしまうことがない。
【0063】
以上に説明した本実施形態の超音波振動子1の変形例を以下に説明する。
【0064】
超音波トランスデューサ50は、薄く形成することによって湾曲させることが可能である。このため、例えば図9に示す第1の変形例のように、基台部2の支持面2aを所定の曲率で凹形の曲面に形成し、かつ支持面2aに沿って押圧部3を形成すれば、超音波放射面50aを凹形に所定の曲率に湾曲させた状態で、超音波トランスデューサ50を保持することができる。
【0065】
支持面2a及び押圧部3が湾曲している場合であっても、図10に示すように、支持面2aと押圧部3の間に、押圧部3の延在方向に沿って超音波トランスデューサ50及び弾性体20(図示せず)を挿入することが可能である。
【0066】
このような、超音波放射面50aが内側に向かって凹形となるように超音波トランスデューサ50を湾曲させた状態で保持する超音波振動子1によれば、音響レンズを用いることなく放射される超音波を所定の位置に収束させることができる。
【0067】
また、例えば図11に示す第2の変形例のように、基台部2の支持面2aを所定の曲率で凸形の曲面に形成し、かつ支持面2aに沿って押圧部3を形成すれば、超音波放射面50aを凸形に所定の曲率に湾曲させた状態で、超音波トランスデューサ50を保持することができる。
【0068】
このような、超音波放射面50aが外側に向かって凸形となるように超音波トランスデューサ50を湾曲させた状態で保持する超音波振動子1によれば、音響レンズを用いることなく放射される超音波を発散させることができる。
【0069】
以上に説明したように、本発明では、超音波トランスデューサ50を湾曲させた状態で保持することによって、超音波の放射方向を音響レンズ等の付加物を用いることなく制御することができる。なお、支持面2aの曲率は一定である必要はなく、超音波の収束や発散の具合に応じて、楕円や双曲線のように途中で曲率が変化する形態であってもよい。その他の効果は、上述した実施形態と同様である。
【0070】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態は、第3の実施形態に対して、超音波トランスデューサ及び押圧部の構成のみが異なる。よって以下ではこの相違点のみを説明するものとし、第3の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0071】
図12に示すように、本実施形態の超音波トランスデューサ50は、押圧部3の一対の凸条部3aに沿う一対の辺の側面部に、斜面部50cが形成されている。本実施形態では、超音波トランスデューサ50の長辺の側面部に斜面部50cが形成されている。
【0072】
斜面部50cは、押圧部3の一対の斜面部3bと略平行な角度で傾斜している。すなわち超音波トランスデューサ50の両側面に形成された一対の斜面部50cは、基板51から超音波放射面50aに向かうにつれて互いに近づくように傾斜している。言い換えれば、超音波トランスデューサ50の側面部に形成された一対の斜面部50cは、超音波放射面50aと略同一方向を向く平面部である。
【0073】
押圧部3は、超音波トランスデューサ50の両側面に形成された一対の斜面部50cに当接することによって、超音波トランスデューサ50を基台部2に向かって押圧する構成を有している。具体的には、押圧部3の一対の斜面部3bが、超音波トランスデューサ50の両側面に形成された一対の斜面部50cに当接して押圧する。
【0074】
この構成では、一対の斜面部3bが設けられた凸条部3aの支持面2aからの高さは、超音波トランスデューサ50の超音波放射面50aよりも低くすることができる。すなわち本実施形態では、押圧部3が、超音波トランスデューサ50の超音波放射面50aよりも超音波の放射方向に突出することなく、超音波トランスデューサ50を基台部2に向かって押圧し、保持することができる。
【0075】
このため、超音波トランスデューサ50によって送受信される超音波が、押圧部3によって遮られることが無くなる。また、押圧部3が超音波トランスデューサ50の超音波放射面50aよりも突出しないため、超音波振動子1を小型化することができる。
【0076】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態は、第3の実施形態に対して、超音波トランスデューサ及び押圧部の構成のみが異なる。よって以下ではこの相違点のみを説明するものとし、第3の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0077】
図13に示すように、本実施形態の超音波トランスデューサ50は、押圧部3の一対の凸条部3aに沿う一対の辺の側面部に、支持面2aとは略反対側を向いた平面部50dが形成されている。言い換えれば、平面部50dは、超音波放射面50aと略同方向を向いた面である。一方、押圧部3には、平面部50dに接する当接片3dが形成されている。本実施形態では、当接片3dが、平面部50dを基台部2に向かって押圧することにより、超音波トランスデューサ50が基台部2に対して固定される。
【0078】
本実施形態では、押圧部3が、超音波トランスデューサ50の超音波放射面50aよりも超音波の放射方向に突出することなく、超音波トランスデューサ50を基台部2に向かって押圧し、保持することができる。
【0079】
このため、超音波トランスデューサ50によって送受信される超音波が、押圧部3によって遮られることが無くなる。また、押圧部3が超音波トランスデューサ50の超音波放射面50aよりも突出しないため、超音波振動子1を小型化することができる。
【0080】
以上に説明した本実施形態では、平面部50dが、超音波トランスデューサ50の側面から突出する凸部に形成されている。すなわち、平面部50dは、超音波トランスデューサ50を超音波放射面50aに直交する方向から見た場合に、超音波放射面50aよりも外側に突出している。
【0081】
本発明における平面部50dは、本実施形態に限られるものではない。例えば図14に示すように、平面部50dは、超音波放射面50aに直交する方向から見た場合に、超音波放射面50aと重なる位置に設けられる形態であってもよい。具体的に図14に示す第1の変形例においては、平面部50dは、超音波トランスデューサ50の側面部に彫設された凹形状の溝部内に形成されている。
【0082】
図14に示す第1の変形例のように、平面部50dを、超音波トランスデューサ50の側面部に彫設された凹形状の溝部内に形成すれば、押圧部3の当接片3dを溝部内に配置することができるため、超音波振動子1を小型化することができる。
【0083】
なお、側面部に彫設された凹形状の溝部は、超音波放射面50aに直交する方向から見た場合に、アクティブ領域50bと重ならない深さであることが音響特性上好ましい。
【0084】
また、図15に示す変形例においては、平面部50dは、超音波トランスデューサ50の基板51に、超音波放射面50aとは反対側の面から彫設された略T字形状の溝部内に形成されている。押圧部3は、基台部2の支持面2aから溝部内に突出する凸条部からなり、平面部50dを基台部2に向かって押圧する当接片3dが鉤状に側方に突出している。
【0085】
図15に示す第1の変形例のように、平面部50dを、超音波トランスデューサ50の内部に形成すれば、押圧部3を超音波トランスデューサ50の外部に突出させる必要がないため、超音波振動子1を小型化することができる。
【0086】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う超音波振動子及び超音波診断装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
1 超音波振動子、
2 基台部、
2a 支持面、
2b 凸部、
3 押圧部、
3a 凸条部、
3b 斜面部、
3c 当接片、
3d 当接片、
10 超音波トランスデューサ、
10a 超音波放射面、
10b 一対の平行な辺、
11 圧電素子、
12 第1電極、
13 第2電極、
20 弾性体、
30 超音波診断装置、
32 シース、
33 ハウジング、
34 フレキシブルシャフト、
39 超音波伝達媒体、
40 内視鏡、
40a 管路、
50 超音波トランスデューサ、
50a 超音波放射面、
50b アクティブ領域、
50c 斜面部、
50d 平面部、
51 基板、
52 空隙部、
53 振動膜、
54 スペーサ、
55 第1電極、
56 第2電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサ、
前記超音波トランスデューサの超音波放射面とは反対側の面に配設された弾性体、
前記超音波トランスデューサを、間に前記弾性体を介在させた状態で載置する支持面を有する基台部、及び
前記超音波トランスデューサを、前記基台部に向かって押圧する押圧部、
を有することを特徴とする超音波振動子。
【請求項2】
前記押圧部は、前記超音波トランスデューサの外縁部に接することで、前記超音波トランスデューサを前記基台部に対して所定の位置に位置決めして固定することを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子。
【請求項3】
前記超音波トランスデューサは、前記超音波放射面に直交する方向から見た場合に、外形に直線状の一対の平行な辺を有しており、
前記押圧部は、前記支持面から突出し、前記超音波トランスデューサの前記一対の平行な辺に沿って延在する一対の平行な凸条部を有してなり、前記一対の平行な凸条部の間に前記一対の平行な辺を挟持することによって、前記超音波トランスデューサを前記基台部に対して位置決めすることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項4】
前記一対の平行な凸条部は、それぞれの互いに対向する面に、前記支持面から離れるほど互いに近づく斜面部が形成されており、
前記押圧部は、前記一対の平行な凸条部の斜面部が、前記超音波トランスデューサの前記一対の平行な辺における前記超音波放射面側の稜線に接することを特徴とする請求項3に記載の超音波振動子。
【請求項5】
前記超音波トランスデューサは、前記超音波放射面に直交する方向から見た場合に、外形に設けられた直線状の一対の平行な辺と、前記一対の平行な辺に沿って設けられた前記超音波放射面と同一方向を向く平面部とを有し、
前記押圧部は、前記平面部に当接することを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項6】
前記支持面は曲面であって、
前記押圧部は、前記超音波トランスデューサが前記支持面に沿って湾曲するように、前記超音波トランスデューサを基台部に向かって押圧することを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の超音波振動子。
【請求項7】
前記超音波トランスデューサは、静電容量型超音波トランスデューサであって、
前記押圧部は、前記超音波放射面に直交する方向から見た場合に、前記超音波トランスデューサのアクティブ領域に重ならない位置に配設されることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の超音波振動子。
【請求項8】
前記請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波振動子を具備してなる超音波診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−257058(P2012−257058A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128616(P2011−128616)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】