説明

超音波探傷装置

【課題】低粘性のカプラントを使用して、低周波の横波超音波を被検査材内部に送受信し探傷または板厚測定が可能な超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】超音波探傷装置20Aにおいて、超音波振動子42a,42bは被検査材21の探傷面21aに接し、時間遅延回路41は時間遅延の値を信号処理系45およびパルス発生器26、27に与える。パルス発生器26、27はパルスを順次各超音波振動子42a,42bに印加し、被検査材21の内部に縦波超音波とともに遅れエコーとして横波超音波を発生させ探傷面21aに対し一定の角度で伝搬しその振動方向が探傷面21aに対し水平である水平偏波横波を送信し、被検査材21の内部で反射した水平偏波横波を電気信号に変換し信号処理系45に与え、信号処理系45は時間遅延の値を参照して各水平偏波横波の受信時間を補正した後、加算して解析することにより被検査材の探傷あるいは板厚測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を被検査材内部に送受信することで探傷あるいは板厚測定する超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管溶接部や圧力容器溶接部の欠陥検出手法として超音波探傷装置が利用されている。従来の超音波探傷装置1として図10に示す装置がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
超音波探傷装置1は、時間制御装置2に信号ケーブル3を介してパルス発生器4と縦波用超音波探蝕子5とを直列に接続した構成である。縦波用超音波探蝕子5の内部には縦波用超音波振動子が設けられ、縦波用超音波振動子が被検査材6の探傷面6aに面接触するように縦波用超音波探蝕子5が配置される。
【0004】
時間制御装置2からトリガパルスがパルス発生器4に送信されると、パルス発生器4は電気信号パルスを縦波用超音波探蝕子5に印加する。縦波用超音波探蝕子5は、電気信号パルスを変換して被検査材6内部に探傷面6aに垂直に縦波超音波Xを発生させる。この縦波超音波Xは被検査材6の内部を伝搬するが、被検査材6の内部に欠陥が存在すると欠陥部で縦波超音波Xが反射して再び縦波用超音波探蝕子5に到達する。
【0005】
縦波用超音波探蝕子5は、反射した縦波超音波Xを電気信号パルスに変換して図示しない信号処理装置に伝送し、この信号処理装置において縦波超音波Xが発生してから再び縦波用超音波探蝕子5に到達するまでの時間を測定する。この時間に音速を乗じて被検査材6内部の欠陥の位置を計算する。
【0006】
尚、被検査材6の探傷面6aと反対側の面6bで反射した縦波超音波Xを測定することで、被検査材6の板厚計測が可能となる。
【0007】
一方、図11は、従来の超音波探傷装置の別の例を示す構成図である(例えば、非特許文献2参照)。
【0008】
超音波探傷装置1Aでは、縦波用超音波振動子10が被検査材6の探傷面6aに縦用超音波の伝搬方向と斜角となるように傾けて設けられる。このとき、縦波用超音波振動子10と被検査材6の探傷面6aとの隙間には、音響カプラとして油あるいはグリセリン等の低粘性の液体で構成されるカプラント11が塗布される。
【0009】
また、被検査材6は例えば2つの母材12,12を突き合わせて溶接され溶接ビード13が形成された溶接材が対象となる。
【0010】
縦波用超音波振動子10から縦波超音波が発生し、カプラント11中を伝搬した後、縦波超音波は被検査材6の探傷面6aにおいてモード変換して垂直偏波横波(SV波:Shear Vertically Polarized Wave)Yとなる。
【0011】
そして、このSV波Yが被検査材6の内部に照射され、反射して再び被検査材6の探傷面6aにおいてモード変換して縦波超音波となって縦波用超音波振動子10に到達する。この反射した縦波超音波を検出して被検査材6内部の、例えば溶接ビード13内部の欠陥14の有無を判定する。
【非特許文献1】「新非破壊検査便覧」(日刊工業新聞社、1992年10月15日、初版第一刷発行、p254、図2.318参照)
【非特許文献2】「新非破壊検査便覧」(日刊工業新聞社、1992年10月15日、初版第一刷発行、p297)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の被検査材6の探傷面6aに垂直に超音波を照射する超音波探傷装置1においては、測定精度向上のため、より高周波の縦波超音波Xが使用される。
【0013】
しかし、周波数が高くなると被検査材6中における縦波超音波Xの減衰が大きくなり信号のSN比が低下する一方、縦波超音波Xの周波数を上げるためには縦波用超音波振動子の厚さを薄くする必要があるため、縦波用超音波振動子の製造中に破損する恐れが発生する。
【0014】
そこで、縦波超音波Xの代わりに横波超音波を使用することができれば、横波超音波の音速は縦波超音波Xの音速の約半分であるため、縦波超音波Xの約半分の周波数で同程度の測定精度を得ることができる。
【0015】
一方、被検査材6の探傷面6aに斜方向から超音波を照射する超音波探傷装置1Aは、横波超音波であるSV波Yを利用する方法であるが、SV波Yは液体中を伝搬しないため被検査材6の探傷面6aにおけるモード変換現象を利用してカプラント11中は縦波超音波として伝搬させる構成である。
【0016】
しかし、SV波Yは、被検査材6の端面や欠陥14部で再度モード変換するため、反射する超音波の減衰によるレベルの低下あるいは不必要な超音波モードの発生により、反射する超音波の正確な検出が困難となる。
【0017】
そこで、水平偏波横波(SH波:Shear Horizontally Polarized Wave)の適用が考えられる。SH波はモード変換しないため、不必要な超音波モードの発生および超音波の減衰によるレベルの低下を伴わない。このSH波は、電磁超音波探蝕子(EMAT:Electro Magnetic Acoustic Transducer)あるいは横波用圧電セラミックを使用して送受信させることができる。
【0018】
EMATは、電磁力を利用してSH波の送受信を行うものであるが、周波数の上限が1MHz程度であるため、汎用の超音波探傷試験に必要な周波数が得られず実用化することができない。
【0019】
一方、横波用圧電セラミックを利用してSH波を送受信するためには、SH波を被検査材6内部に照射するために横波用圧電セラミックスをろう付けあるいは溶接等の接合方法により被検査材6に接合し、あるいは横波用圧電セラミックスを粘性の高いカプラント11を介して被検査材6に押し付け、さらにSH波の送受信の安定化に数分間の時間を必要とする。このため、横波用圧電セラミックは、超音波探蝕子の移動が不要な特殊な用途に限定される。
【0020】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、従来使用される低粘性のカプラントを使用して、より低周波の横波超音波を被検査材内部に送受信することでより効率的かつ正確に探傷あるいは板厚測定することが可能な超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る超音波探傷装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、時間遅延回路と、この時間遅延回路に信号ケーブルを介して接続されたパルス発生器と、このパルス発生器に信号ケーブルを介して接続された複数の超音波振動子を内部に整列配置した超音波探触子と、前記超音波振動子および前記時間遅延回路に信号ケーブルを介して接続された信号処理系とを具備し、前記超音波探触子は内部の前記超音波振動子が被検査材の探傷面に接するように設けられ、前記時間遅延回路は一定の時間遅延の値を設定して前記信号処理系および前記パルス発生器に与え、このパルス発生器は前記時間遅延を伴ってパルスを順次各超音波振動子に印加し、さらに各超音波振動子は前記被検査材の内部に前記時間遅延を伴って縦波超音波とともに遅れエコーとして横波超音波を発生させて前記被検査材の探傷面に対し一定の角度で伝搬しかつその振動方向が前記被検査材の探傷面に対し水平である水平偏波横波を形成して送信し、かつ前記被検査材の内部で反射した水平偏波横波を受信して電気信号に変換し前記信号処理系に与え、この信号処理系は前記時間遅延の値を参照して各水平偏波横波の受信時間を補正した後、加算して解析することにより被検査材の探傷あるいは板厚測定を行うように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る超音波探傷装置においては、従来使用される縦波用の超音波振動子および超音波探触子を使用して被検査材内部に、垂直方向、斜方向あるいは探傷面に沿う方向にモード変換を伴わない横波を伝搬させて送受信させることがきる。このため、汎用の低粘性のカプラントを使用して容易に移動可能な状態で、より安価な低い周波数の超音波により、短時間かつ高精度に被検査材を探傷あるいは板厚を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る超音波探傷装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本発明に係る超音波探傷装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【0025】
超音波探傷装置20は、板状あるいはブロック状の被検査材21の、対向する一方の面である探傷面21aに超音波送信系22を、他方の面に超音波受信系23をそれぞれ設けた超音波通過型の構成である。
【0026】
超音波送信系22は、時間制御装置24に信号ケーブル25,25を介して正パルス発生器26と負パルス発生器27とが並列に設けられ、さらに正パルス発生器26と負パルス発生器27にそれぞれ送信用超音波振動子28a,28bを信号ケーブル25,25を介して接続した構成である。
【0027】
正パルス発生器26は極性が正のパルス電圧を発生させて、送信用超音波振動子28aに印加させる機能を有する。一方、負パルス発生器27は正のパルス電圧と位相が180度反転させた極性が負のパルス電圧を発生させて、送信用超音波振動子28bに印加させる機能を有する。
【0028】
送信用超音波振動子28a,28bは、被検査材21の探傷面21aに接触して、その内部に超音波を送信するための接触面29,29をそれぞれ有する。さらに、送信用超音波振動子28a,28bは、予め分極される。そして、送信用超音波振動子28a,28bは、それぞれ被検査材21の一方の面である探傷面21aにその接触面29,29が接するように設けられる。さらに、被検査材21と送信用超音波振動子28a,28bとの隙間には、音響カプラとして油あるいはグリセリン等の低粘性の液体で構成されるカプラント30が塗布される。
【0029】
このとき、各送信用超音波振動子28a,28bの分極方向Pは同方向とされる。図1の例では、各送信用超音波振動子28a,28bの分極方向Pは共に、被検査材21の探傷面21aから正パルス発生器26あるいは負パルス発生器27に向かう方向である。
【0030】
一方、超音波受信系23は、2つの受信用超音波振動子31a,31bをそれぞれ信号ケーブル25,25を介してアンプ32a,32bに接続し、さらに各アンプ32a,32bを信号処理系の一例である単一の信号加算器33に信号ケーブル25を介して接続した構成である。
【0031】
また、信号加算器33には、信号ケーブル25を介して波形表示装置34が接続される。この波形表示装置34はモニタを具備し、波形を表示して観測可能にする機能を有する。
【0032】
受信用超音波振動子31a,31bは、被検査材21の探傷面21aに接触して、その内部から伝搬する超音波を受信するための接触面35,35をそれぞれ有する。さらに、受信用超音波振動子31a,31bは、予め分極される。そして、受信用超音波振動子31a,31bは、それぞれ被検査材21の超音波送信系22が設けられない反対側の面にそれぞれの接触面35,35が接するように設けられる。さらに、被検査材21と受信用超音波振動子31a,31bとの隙間には、音響カプラとして油あるいはグリセリン等の低粘性の液体で構成されるカプラント30が塗布される。
【0033】
このとき、各受信用超音波振動子31a,31bは、被検査材21の反対側に設けられる送信用超音波振動子28a,28bに対向する位置付近にそれぞれ設けられる。さらに、各受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pは同方向とされる。図1の例では、各受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pは共に、被検査材21の探傷面21aからアンプ32a,32b側に向かう方向である。
【0034】
次に超音波探傷装置20の作用を説明する。
【0035】
超音波探傷装置20の作動により、時間制御装置24から、トリガパルスが正パルス発生器26および負パルス発生器27に送信される。トリガパルス送信する時間の間隔は、被検査材21に超音波を発振する発振間隔に対応する間隔とされる。
【0036】
次に、正パルス発生器26および負パルス発生器27は、時間制御装置24から送信されたトリガパルスにより、それぞれトリガパルスの間隔に応じた正パルスおよび負パルスを各送信用超音波振動子28a,28bに印加する。
【0037】
送信用超音波振動子28aは、正パルス発生器26から正パルスが印加されると、縦波超音波X1を発生するが、このとき振動様式の変換に伴う遅れエコーである横波超音波を発生する。一方、送信用超音波振動子28bは、送信用超音波振動子28aと同様に、負パルス発生器27から負パルスを印加されると、縦波超音波X2とともに遅れエコーである横波超音波を発生する。
【0038】
そして、各送信用超音波振動子28a,28bから発生した縦波超音波X1,X2および横波超音波は、それぞれ各送信用超音波振動子28a,28bからカプラント30を介して被検査材21の内部に伝搬される。
【0039】
このとき、各送信用超音波振動子28a,28bの分極方向Pが共に同方向であり、かつそれぞれ印加されるパルスの正負が逆相であるため、送信用超音波振動子28aが発生する縦波超音波X1の振動方向A1と送信用超音波振動子28bが発生する縦波超音波X2の振動方向A2とは、互いに逆相となる。
【0040】
例えば、送信用超音波振動子28aが発生する縦波超音波X1は、送信用超音波振動子28aから伝搬方向と平行な方向の引張応力を被検査材21に発生させる縦波超音波X1となる。一方、送信用超音波振動子28bが発生する縦波超音波X2は、送信用超音波振動子28bから伝搬方向と平行な方向の圧縮応力を被検査材21に発生させる縦波超音波X2となる。
【0041】
同様に、遅れエコーである送信用超音波振動子28aが発生する横波超音波の振動方向B1と送信用超音波振動子28bが発生する横波超音波の振動方向B2とは、互いに逆相となる。
【0042】
例えば、送信用超音波振動子28aが発生する横波超音波は、送信用超音波振動子28aから伝搬方向と垂直な方向の圧縮応力を被検査材21に発生させる。一方、送信用超音波振動子28bが発生する横波超音波は、送信用超音波振動子28bから伝搬方向と垂直な方向の引張応力を被検査材21に発生させる横波超音波となる。
【0043】
すなわち、2つの送信用超音波振動子28a,28bの間においては、送信用超音波振動子28aが発生する横波超音波の振動方向B1と送信用超音波振動子28bが発生する横波超音波の振動方向B2とは互いに同じ方向となる。このため、2つの送信用超音波振動子28a,28bの間においては、送信用超音波振動子28aが発生する横波超音波と送信用超音波振動子28bが発生する横波超音波とは互いに強め合い合成された横波超音波Yとなる。
【0044】
さらに、各送信用超音波振動子28a,28bが発生した横波超音波Yは互いに振動を強め合いながら、被検査材21の内部を各受信用超音波振動子31a,31bに向かって伝搬する。
【0045】
同様に、各送信用超音波振動子28a,28bが発生した縦波超音波X1,X2は、被検査材21の内部を各受信用超音波振動子31a,31bに向かって伝搬する。
【0046】
そして、各送信用超音波振動子28a,28bが発生した縦波超音波X1,X2および横波超音波Yは、各受信用超音波振動子31a,31bが接する面に到達し、各受信用超音波振動子31a,31bで受信されて電気信号に変換される。
【0047】
ここで、縦波超音波X1,X2は各受信用超音波振動子31a,31bにおいて同時に受信される。同様に、横波超音波Yも各受信用超音波振動子31a,31bにおいて同時に受信される。さらに、各受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pは同じ方向であるため、各受信用超音波振動子31a,31bにおいて変換した各縦波超音波X1,X2の電気信号の位相は各送信用超音波振動子28a,28bが発生した縦波超音波X1,X2の位相から変化せずに互いに逆相となる。
【0048】
同様に、各受信用超音波振動子31a,31bにおいて変換した横波超音波Y,Yの電気信号の位相も、各送信用超音波振動子28a,28bが発生した横波超音波Y,Yの位相から変化せずに互いに逆相となる。
【0049】
例えば、受信用超音波振動子31a近傍の横波超音波Yは、横波超音波Yの伝搬方向と垂直な方向の圧縮応力を被検査材21に発生させる。一方、受信用超音波振動子31b近傍の横波超音波Yは、横波超音波Yの伝搬方向と垂直な方向の引張応力を被検査材21に発生させる。
【0050】
さらに、各受信用超音波振動子31a,31bが受信した縦波超音波X1,X2および横波超音波Y,Yは、それぞれアンプ32a,32bに電気信号として送信され、各アンプ32a,32bにおいてそれぞれ増幅される。
【0051】
各アンプ32a,32bにおいてそれぞれ増幅された縦波超音波X1,X2および横波超音波Y,Yの電気信号は、共通の信号加算器33に送信される。この信号加算器33において受信用超音波振動子31aで受信した横波超音波Yおよび縦波超音波X1の位相あるいは受信用超音波振動子31bで受信した横波超音波Yおよび縦波超音波X2の位相のうちいずれか一方が反転される。
【0052】
この結果、各受信用超音波振動子31a,31bが受信した縦波超音波X1,X2および横波超音波Y,Yは互いに同相となる。そして、同相となった縦波超音波X1,X2および横波超音波Y,Yの各電気信号は加算され、加算縦波超音波と加算横波超音波とが得られる。
【0053】
さらに、信号加算器33は、加算縦波超音波と加算横波超音波とを波形表示装置34に送信し、この波形表示装置34において、時間を軸として加算縦波超音波と加算横波超音波とがそれぞれ波形表示される。そして、この加算縦波超音波と加算横波超音波とを分析して被検査材21内部における欠陥の有無の判定あるいは板厚測定が実施される。
【0054】
すなわち超音波探傷装置20は、各送信用超音波振動子28a,28bが発生した縦波超音波X1,X2とともに遅れエコーである横波超音波Yを各受信用超音波振動子31a,31bで受信して横波超音波Yを利用した分析を可能とする構成である。
【0055】
さらに、2つの送信用超音波振動子28a,28bから逆相の横波超音波Y,Yをそれぞれ発生させて、波の干渉作用により横波超音波Y,Yを互いに強め合い合成して伝播するように構成して減衰を抑制させるものである。
【0056】
超音波探傷装置20では、被検査材21の探傷面21aに垂直方向に伝搬する横波超音波Yの送受信が可能となるため、より低い周波数の超音波を探傷検査に適用することができる。このため、より安価に探傷あるいは板厚測定の精度を向上させることができる。
【0057】
また、従来は横波超音波Yを送受信する手段として横波用圧電セラミックの利用が可能であったが、超音波エコーの安定化に数分間の時間要し、かつ超音波振動子の移動が困難であった。
【0058】
しかし、超音波探傷装置20では、従来使用される縦波用の送信用超音波振動子28a,28bあるいは受信用超音波振動子31a,31bと低粘性のカプラント30を使用して発生する横波超音波Yを利用するため、短時間で超音波エコーが安定し、かつ送信用超音波振動子28a,28bあるいは受信用超音波振動子31a,31bの移動を容易とすることができる。
【0059】
尚、超音波探傷装置20は、2個の送信用超音波振動子28a,28bを具備する構成としたが、単一の送信用超音波振動子28aのみで構成することも可能である。単一の送信用超音波振動子28aから超音波を発生する場合、伝搬する横波超音波Yおよび縦波超音波X1の振動方向は同相となる。
【0060】
このため、各受信用超音波振動子31a,31bで受信した縦波超音波X1は同相となる。しかし、受信用超音波振動子31a,31bの間の被検査材21の対面に送信用超音波振動子28aを設ければ、送信用超音波振動子28aから被検査材21の探傷面21aに垂直な方向に形成される横波超音波Yの伝搬中心線に対して、横波超音波Yの振動方向は線対称となる。
【0061】
従って、超音波振動子13aと超音波振動子13bで受信する横波超音波Yの振動方向は互いに逆向きとなる。このため、超音波振動子13aが受信した横波超音波Yの位相あるいは超音波振動子13bが受信した横波超音波Yの位相のいずれか一方を反転させて加算すれば、横波超音波Yを強め合うことができる。
【0062】
尚、超音波振動子13a,13bが受信した超音波の位相の一方を反転させて加算すると縦波超音波X1は互いに弱め合うこととなり、逆に位相を反転させないでそのまま加算すると、横波超音波Yは互いに弱め合う一方、縦波超音波X1は互いに強め合うこととなる。
【0063】
図2は本発明に係る超音波探傷装置の第2の実施形態を示す構成図であり、図3は、図2に示す超音波探蝕子Aが具備する複数の超音波振動子35aの配置方法を示す正面図である。
【0064】
尚、図1に示す第1の実施形態による超音波探傷装置20と同一の構成要素には同符号を付す。
【0065】
超音波探傷装置20Aは、超音波反射型の探傷装置であり時間制御装置24に信号ケーブル25を介して複数の正パルス発生器26および負パルス発生器27を並列にそれぞれ設け、さらにこれら正パルス発生器26および負パルス発生器27を、信号ケーブル25を介して単一の超音波探触子40に接続した構成である。
【0066】
時間制御装置24に複数の信号ケーブル25が設けられ、各信号ケーブル25はそれぞれ時間遅延回路41に接続される。さらに各時間遅延回路41において信号ケーブル25は分岐され、一方は正パルス発生器26に、他方は負パルス発生器27にそれぞれ接続される。
【0067】
一方、超音波探触子40は内部に複数の超音波振動子42a,42bを有する。図2および図3の例では、超音波振動子42a,42bは例えば16個設けられる。各超音波振動子42a,42bは、被検査材21の探傷面21aに接触して、その内部に超音波を送信するための接触面をそれぞれ有する。そして、各超音波振動子42a,42bは、それぞれの接触面が共通の面上となるように整列配置される。
【0068】
また、各超音波振動子42a,42bは、2個を1組としてペア組を構成し、各ペア組同士は所定の間隔pを有する位置に配置される。このため、各超音波振動子42a,42bは、例えば2列に整列される。さらに、各超音波振動子42a,42bは接触面に垂直な方向に予め分極され、分極方向は全て同じ方向とされる。
【0069】
そして、各正パルス発生器26および負パルス発生器27は、信号ケーブル25を介して超音波探触子40の内部に設けられた超音波振動子42a,42bにそれぞれ個別に接続される。このとき、超音波探触子40の内部に設けられたペア組の一方の超音波振動子42aは正パルス発生器26に接続され、ペア組の他方の超音波振動子42bは負パルス発生器27に接続される。すなわち、一方の列の超音波振動子42aは全て正パルス発生器26に接続され、他方の列の超音波振動子42bは全て負パルス発生器27に接続される。
【0070】
さらに、超音波探触子40は、各超音波振動子42a,42bの接触面が音響カプラとしてのカプラント30を介して面接触するように被検査材21の探傷面21aに設けられる。このため、各超音波振動子42a,42bの分極方向は被検査材21の探傷面21aに垂直でかつ互いに同方向となる。
【0071】
また、各超音波振動子42a,42bと正パルス発生器26あるいは負パルス発生器27との間の各信号ケーブル25にはそれぞれ分岐部43が設けられ、これらの分岐部43から信号ケーブル25が分岐してそれぞれアンプ44に接続される。
【0072】
各アンプ44は、それぞれ信号ケーブル25を介して信号加算器33に接続される。ただし、共通の時間遅延回路41から分岐してペア組の超音波振動子42a,42bとともに接続された2つのアンプ44は、共通の信号加算器33に接続される。すなわち、各時間遅延回路41および超音波振動子42a,42bの各ペア組に対応する同数の信号加算器33が設けられる。
【0073】
さらに、各信号加算器33は信号ケーブル25を介して共通の信号処理装置45と接続され、信号処理装置45は信号ケーブル25を介して波形表示装置34と接続される。
【0074】
また、各時間遅延回路41は、それぞれ信号処理装置45に接続される。
【0075】
尚、各信号加算器33および信号処理装置45は一体として構成してもよく、両者で信号処理系が形成される。
【0076】
次に超音波探傷装置20Aの作用を説明する。
【0077】
超音波探傷装置20Aを被検査材21の探傷面21a上に音響カプラであるカプラント30を介して設置する。続いて超音波探傷装置20Aを作動させる。超音波探傷装置20Aの作動により、時間制御装置24は、各時間遅延回路41にトリガパルスを伝送する。
【0078】
さらに各時間遅延回路41は、一定の時間遅延をトリガパルスに与え、正パルス発生器26および負パルス発生器27にそれぞれ伝送する。すなわち、ある1つの正パルス発生器26および負パルス発生器27がトリガパルスを受信してから、所定の時間経過後に隣接する別の正パルス発生器26および負パルス発生器27がトリガパルスを受信する。
【0079】
また、各時間遅延回路41は、各正パルス発生器26および負パルス発生器27にトリガパルスを送信する際の各遅延時間の値を信号処理装置45にそれぞれ送信する。
【0080】
各正パルス発生器26および負パルス発生器27は、時間遅延回路41からトリガパルスを受信すると、正パルスおよび負パルスを一定の時間遅延を伴ってそれぞれ超音波振動子42a,42bに印加する。
【0081】
そして、各超音波振動子42a,42bは、正パルス発生器26あるいは負パルス発生器27から正パルスあるいは負パルスが印加されると、振動して縦波超音波とともに遅れエコーである横波超音波を発生する。
【0082】
この横波超音波は振動方向が被検査材21の探傷面21aに水平であるため、SH波(水平偏波横波:Shear Horizontally Polarized Wave)となる。
【0083】
図4は、図2に示す被検査材21の探傷面21aにおける横波超音波の振動方向Bを示す図であり、図5は、図4に示すC−C断面の断面図である。
【0084】
図4に示すように、各超音波振動子42a,42bは、2個を1組としてペア組を構成し、各ペア組同士は所定の間隔pを有する位置に例えば2列に整列配置される。
【0085】
各超音波振動子42a,42bの分極方向は同方向であり、かつ一方の列の超音波振動子42aに印加されるパルスと他方の列の超音波振動子42bに印加されるパルスの符号が逆であるため、双方の列の超音波振動子42a,42bが発生する横波超音波は互いに逆相となる。
【0086】
このため、図1に示す超音波探傷装置20と同様に、双方の列の各超音波振動子42a,42bが発生した横波超音波の振動方向Bは被検査材21の探傷面21aに平行な同心円状となるが、重ね合さって双方の列の各超音波振動子42a,42bの間では振動方向Bがそれぞれ同一となり互いに強め合う。
【0087】
すなわち、一方の列の各超音波振動子42bから他方の列の各超音波振動子42aに向かう振動が一様に強調される。
【0088】
図5に示すように各SH波は、一定間隔pで整列した各超音波振動子42a,42bから順に一定の時間遅延Δtを伴って被検査材21の探傷面21aから内部に向かって伝搬する。各SH波の振動方向Bは、図5において同方向かつ紙面に垂直な方向であり、例えば紙面の手前から紙面を貫通する向きである。
【0089】
このため、被検査材21の探傷面21aに水平な方向にフェーズドアレイが形成される。そして、各SH波は互いに干渉し、被検査材21の探傷面21aの法線と一定の角度θとなる斜方向のSH波となる。すなわち、各超音波振動子42a,42bは斜方向のSH波を送受信することができる。
【0090】
ここで、超音波振動子42a,42b間の距離をp(m)、SH波の伝搬方向と被検査材21の探傷面21aの法線とのなす角をθ(度)とし、さらに被検査材21中の横波超音波の音速をVs(m/sec)、時間遅延回路41におけるトリガパルスの遅延時間をΔt(sec)とすると、式(1)に示す公知のフェーズドアレイの関係式が成立する。 [数1]
Δt=(p/Vs)sinθ ……(1)
式(1)に示すように時間遅延回路41におけるトリガパルスの遅延時間Δtの値を制御することで、SH波の伝搬方向と被検査材21の探傷面21aの法線とのなす角θを任意の角度とすることができる。
【0091】
すなわち、超音波探触子40は、SH波の伝搬方向を制御可能なフェーズドアレイ式の超音波探触子40として機能する。
【0092】
そして、各超音波振動子42a,42bから被検査材21の内部に向かって斜方向に発生したSH波は、被検査材21内部を伝搬して、超音波探触子40が設けられない側の面、あるいは内部欠陥で反射して再び、各超音波振動子42a,42bに到達する。
【0093】
さらに、各超音波振動子42a,42bは、被検査材21内で反射したSH波を受信して電気信号に変換し、信号ケーブル25を介してそれぞれアンプ44に送信する。そして、これらアンプ44において、電気信号に変換されたSH波は増幅され、共通の信号加算器33に送信される。
【0094】
ただし、信号加算器33に送信された各電気信号は時間遅延回路41が設定した一定の遅延時間を伴う。そこで信号加算器33は、各時間遅延回路41から受信した各遅延時間の値を参照して、同時刻に同相となるように遅延時間による位相差を補正してから各電気信号を加算して合成する。
【0095】
そして、信号加算器33において加算されたSH波の電気信号は、波形表示装置34に送信され、波形表示装置34において、時間を軸として波形表示される。さらに、波形表示装置34に表示された波形表示を分析して欠陥の有無を判定する。
【0096】
すなわち超音波探傷装置20Aでは、複数の超音波振動子42a,42bを2列に整列配置して構成した超音波探触子40を使用して、一定の遅延時間を伴うパルスを印加することで被検査材21の探傷面21aに水平方向のフェーズドアレイを形成し、被検査材21内の任意の方向にSH波を強め合うように送受信することにより被検査材21内部を探傷する構成である。
【0097】
超音波探傷装置20Aでは、SH波を被検査材21内に照射するため、モード変換を伴わない探傷を実施することができる。このため、異材継手部等の従来適用が困難であった部位の探傷が可能となり、配管や圧力容器等の構成部材の信頼性を向上させることができる。
【0098】
また、超音波探傷装置20Aは、図1に示す超音波探傷装置20と同様に、従来使用される縦波用の超音波振動子42a,42bと低粘性のカプラント30を使用して発生する横波超音波9aを利用するため、横波用圧電セラミックを利用して横波超音波9aを発生させる場合に比べて短時間で超音波エコーが安定し、かつ超音波振動子42a,42bの移動を容易とすることができる。
【0099】
尚、図2の例では、超音波振動子42a,42bの数を16個として、8つのペア組を形成する8チャンネルの超音波探蝕子で構成したが、8チャンネルに限らず例えば4チャンネル、16チャンネル、32チャンネル等の任意数のチャンネルとしてもよい。
【0100】
図6は本発明に係る超音波探傷装置の第3の実施形態を示す構成図である。
【0101】
図6に示された、超音波探傷装置20Bでは、図2に示す第2の実施形態による超音波探傷装置20Aと同等の構成であるが、時間遅延回路41が設定する遅延時間およびSH波の伝搬方向が異なる。このため超音波探傷装置20Bの構成および同一の作用については図示および説明を省略する。
【0102】
超音波探傷装置20Bでは、時間遅延回路41が設定する遅延時間は、SH波が被検査材21の探傷面21aを伝搬するように設定される。すなわち、式(1)において、θ=90度となるように遅延時間Δtが時間遅延回路41において設定される。従って、時間遅延回路41が設定する遅延時間は、式(2)で示される。
[数2]
Δt=(p/Vs) ……(2)
式(2)の条件を満たすSH波は、振動方向が被検査材21の探傷面21aに平行でありかつ被検査材21の探傷面21aに沿って伝搬するいわゆる表面SH波となる。このため、超音波探傷装置20Bでは表面SH波の送受信が可能となる。
【0103】
被検査材21は、例えば板状の母材50を付き合わせて溶接され、凸状の溶接ビード51が形成される。表面SH波は、被検査材21の母材50の表面に平行な方向に伝搬するため、溶接ビード51内の表面近傍に欠陥52がある場合、この欠陥52で表面SH波が反射する。このため、表面SH波を利用する検査では、溶接ビード51内部の欠陥52の検出が可能となる。
【0104】
従来、被検査材21の欠陥52を検出するためにレーリ波(表面波)Zが利用される。しかし、レーリ波Zを溶接ビード51が形成された溶接部材の検査に適用すると、レーリ波Zは凸状である溶接ビード51の内部ではなく表面に沿って伝搬するため、レーリ波Zを利用する検査方法では、溶接ビート51内部の欠陥52の検出は困難であった。
【0105】
しかし、超音波探傷装置20Bでは、溶接部材の検査に溶接ビード51内においても、伝搬方向が変わらずに母材50の表面に平行な方向に伝搬する表面SH波を利用するため、溶接ビード51内部の欠陥52の検出を可能とすることができる。このため、溶接された配管や圧力容器等の溶接部の内部欠陥の検出が可能となり、溶接を伴う構成部材の信頼性を向上させることができる。
【0106】
また、超音波探傷装置20Bは、図2に示す超音波探傷装置20Aと同様に、従来使用される縦波用の超音波振動子42a,42bと低粘性のカプラント30を使用して発生する横波超音波9aを利用するため、横波用圧電セラミックを利用して横波超音波9aを発生させる場合に比べて短時間で超音波エコーが安定し、かつ超音波振動子42a,42bの移動を容易とすることができる。
【0107】
図7は本発明に係る超音波探傷装置の第4の実施形態を示す構成図である。
【0108】
図7に示された、超音波探傷装置20Cでは、図1に示す第1の実施形態による超音波探傷装置20に対し、超音波送信系22Aの構成および超音波受信系23Aが具備する受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pが相違している。超音波探傷装置20Cの他の構成は図1に示された超音波探傷装置20と実質的に異ならないため、同一の構成については図1に示す第1の実施形態による超音波探傷装置20と同符号を付して説明する。
【0109】
超音波探傷装置20Cの超音波送信系22Aは、時間制御装置24に信号ケーブル25を介して単一のパルス発生器60を設け、このパルス発生器60に並列に2つの送信用超音波振動子28a,28bを信号ケーブル25を介して接続した構成である。
【0110】
尚、パルス発生器60は正パルス発生器26あるいは負パルス発生器27のいずれでもよい。
【0111】
送信用超音波振動子28a,28bは、予め各接触面29,29に垂直な方向に分極され、それぞれ被検査材21の一方の面である探傷面21aに接触面29,29が接するように設けられる。さらに、被検査材21と送信用超音波振動子28a,28bとの隙間には、油あるいはグリセリン等の低粘性の液体で構成されるカプラント30が塗布される。
【0112】
このとき、各送信用超音波振動子28a,28bの分極方向Pは互いに逆向きとされる。図7の例では、一方の送信用超音波振動子28aの分極方向Pは、被検査材21の探傷面21aからパルス発生器60側に向かう方向であり、他方の送信用超音波振動子28bの分極方向Pは、パルス発生器60側から被検査材21の探傷面21aに向かう方向である。
【0113】
一方、超音波受信系23Aの構成は、図1に示す超音波探傷装置20と同等であるが、各受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pが異なる。
【0114】
すなわち、各受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pは互いに逆方向とされる。図7の例では、一方の受信用超音波振動子31aの分極方向Pは、アンプ32a側から被検査材21の探傷面21aに向かう方向であり、他方の受信用超音波振動子31bの分極方向Pは、被検査材21の探傷面21aからアンプ32b側に向かう方向である。
【0115】
次に超音波探傷装置20Cの作用を説明する。
【0116】
超音波探傷装置20Cを被検査材21の探傷面21a上に音響カプラであるカプラント30を介して設置する。続いて超音波探傷装置20Cを作動させる。超音波探傷装置20Cの作動により、時間制御装置24から、所定の時間間隔でトリガパルスがパルス発生器60に送信され、さらにパルス発生器60はトリガパルスの時間間隔に応じた正あるいは負の同相のパルスを各送信用超音波振動子28a,28bに印加させる。
【0117】
送信用超音波振動子28aは、パルス発生器60から例えば正パルスが印加されると、縦波超音波X1とともに遅れエコーである横波超音波9aを発生する一方、送信用超音波振動子28bは、送信用超音波振動子28aと同様に、パルス発生器60から例えば正パルスが印加されると、縦波超音波X2とともに遅れエコーである横波超音波9bを発生する。
【0118】
そして、各送信用超音波振動子28a,28bから発生した縦波超音波X1,X2および横波超音波9a,9bは、それぞれ各送信用超音波振動子28a,28bからカプラント30を介して被検査材21の内部に放射状方向に伝搬する。
【0119】
このとき、各送信用超音波振動子28a,28bの分極方向Pが共に逆方向であり、かつそれぞれ印加されるパルスの正負が同相であるため、送信用超音波振動子28aが発生する縦波超音波X1の振動方向A1と送信用超音波振動子28bが発生する縦波超音波X2の振動方向A2とは、互いに逆相となる。
【0120】
例えば、送信用超音波振動子28aが発生する縦波超音波X1は、送信用超音波振動子28aから伝搬方向と平行な方向の引張応力を被検査材21に発生させる縦波超音波X1となる。一方、送信用超音波振動子28bが発生する縦波超音波X2は、送信用超音波振動子28bから伝搬方向と平行な方向の圧縮応力を被検査材21に発生させる縦波超音波X2となる。
【0121】
同様に、遅れエコーである送信用超音波振動子28aが発生する横波超音波9aの振動方向B1と送信用超音波振動子28bが発生する横波超音波9bの振動方向B2とは、互いに逆相となる。
【0122】
例えば、送信用超音波振動子28aが発生する横波超音波9aは、送信用超音波振動子28aから伝搬方向と垂直な方向の圧縮応力を被検査材21に発生させる。一方、送信用超音波振動子28bが発生する横波超音波9bは、送信用超音波振動子28bから伝搬方向と垂直な方向の引張応力を被検査材21に発生させる横波超音波9bとなる。
【0123】
すなわち、2つの送信用超音波振動子28a,28bの間においては、送信用超音波振動子28aが発生する横波超音波9aの振動方向B1と送信用超音波振動子28bが発生する横波超音波9bの振動方向B2とは互いに同じ方向となる。このため、2つの送信用超音波振動子28a,28bの間においては、送信用超音波振動子28aが発生する横波超音波9aと送信用超音波振動子28bが発生する横波超音波9bとは波の干渉により互いに強め合って重ね合わさり、各横波超音波9a,9bの減衰が抑制される。
【0124】
さらに、各送信用超音波振動子28a,28bが発生した横波超音波9a,9bは互いに振動を強め合いながら、被検査材21の内部を各受信用超音波振動子31a,31bに向かって伝搬する。
【0125】
同様に、各送信用超音波振動子28a,28bが発生した縦波超音波X1,X2は、被検査材21の内部を各受信用超音波振動子31a,31bに向かって伝搬する。
【0126】
そして、各送信用超音波振動子28a,28bが発生した縦波超音波X1,X2および横波超音波9a,9bは、各受信用超音波振動子31a,31bが接する面に到達し、各受信用超音波振動子31a,31bで受信されて電気信号に変換される。
【0127】
ここで、縦波超音波X1,X2および横波超音波9a,9bは各受信用超音波振動子31a,31bにおいて同時に受信される。さらに、各受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pは逆方向であるため、各受信用超音波振動子31a,31bにおける各縦波超音波X1,X2を変換した電気信号の位相は互いに同相となる。
【0128】
すなわち、各送信用超音波振動子28a,28b近傍および被検査材21の内部においては各縦波超音波X1,X2の位相は逆相であるが、各受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pは逆方向であるため、縦波超音波X1,X2を電気信号に変換する際、一方の電気信号が反転する。このため、各縦波超音波X1,X2を変換した電気信号の位相は互いに同相となる。
【0129】
同様に、各受信用超音波振動子31a,31bが横波超音波9a,9bを変換して得られた電気信号の位相も互いに同相となる。
【0130】
さらに、各受信用超音波振動子31a,31bが受信した縦波超音波X1,X2および横波超音波9a,9bは、それぞれアンプ32a,32bに電気信号として送信され、各アンプ32a,32bにおいてそれぞれ増幅される。
【0131】
各アンプ32a,32bにおいてそれぞれ増幅された縦波超音波X1,X2および横波超音波9a,9bの電気信号は、共通の信号加算器33に送信される。この信号加算器33において同相の縦波超音波X1,X2および横波超音波9a,9bの各電気信号は加算され、加算縦波超音波と加算横波超音波とが得られる。
【0132】
さらに、信号加算器33は、加算縦波超音波と加算横波超音波とを波形表示装置34に送信し、この波形表示装置34において、時間を軸として加算縦波超音波と加算横波超音波とがそれぞれ波形表示される。そして、この加算縦波超音波と加算横波超音波とを分析して被検査材21内部における欠陥の有無の判定あるいは板厚測定が実施される。
【0133】
すなわち超音波探傷装置20Cでは、パルス発生器60から正または負の同相のパルスを2つの送信用超音波振動子28a,28bに印加し、かつ送信用超音波振動子28a,28bの分極方向Pを互いに逆方向とすることで、図1に示す超音波探傷装置20と同様な、縦波超音波X1,X2および横波超音波9a,9bを被検査材21の内部に発生させる構成である。
【0134】
このため、超音波探傷装置20Cでは、図1に示す超音波探傷装置20と同様な効果に加えてパルス発生器60の単一化が可能となりより簡易で安価な構成にすることができる。
【0135】
さらに、超音波探傷装置20Cは、2つの受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pを逆方向にすることで電気信号に変換する際、縦波超音波X1,X2の一方の位相および横波超音波9a,9bの一方の位相をそれぞれ反転させ同相とする構成である。
【0136】
このため、超音波探傷装置20Cでは、信号加算器33において縦波超音波X1,X2の一方の位相および横波超音波9a,9bの一方の位相を反転する必要がなく、そのまま加算するのみで縦波超音波X1,X2および横波超音波9a,9bを増幅させることができる。
【0137】
尚、超音波探傷装置20Cでは、2つの受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pを逆方向にしたが、図1に示す超音波探傷装置20と同様に2つの受信用超音波振動子31a,31bの分極方向Pを同方向として、さらに信号加算器33において縦波超音波X1,X2の一方の位相および横波超音波9a,9bの一方の位相を反転して加算する構成としてもよい。
【0138】
図8は本発明に係る超音波探傷装置の第5の実施形態を示す構成図である。
【0139】
図8に示された、超音波探傷装置20Dでは、図2に示す第2の実施形態の超音波探傷装置20Aに対し、正パルス発生器26と負パルス発生器27を共に同符号のパルス発生器70とした点および超音波探触子40Aが具備する超音波振動子42a,42bの分極方向が相違する。他の構成については図2に示された超音波探傷装置20Aと実質的に同じ構成であるため同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0140】
超音波探傷装置20Dでは、図2に示す超音波探傷装置20Aと同様に、時間制御装置24に接続される複数の信号ケーブル25が時間遅延回路41に導かれ、この時間遅延回路41において各信号ケーブル25は2つの信号ケーブル25に分岐される。そして、時間遅延回路41において分岐された全ての信号ケーブル25はそれぞれパルス発生器70に接続される。
【0141】
各パルス発生器70は正あるいは負のパルスを発生させるが、各パルス発生器70は互いに同符号のパルスを発生させるように構成される。
【0142】
また、各時間遅延回路41は、それぞれ信号処理系の一部である信号処理装置45に接続される。
【0143】
一方、超音波探触子40Aの構成は図2に示す超音波探傷装置20Aと同等であり、図8のように超音波探触子40Aの内部には例えば16個の超音波振動子42a,42bが2列に整列して被検査材21の探傷面21aに面接触するように設けられる。
【0144】
また、各超音波振動子42a,42bは接触面に垂直な方向に予め分極されるが、分極方向は被検査材21の探傷面21aに垂直でかつ一方の列と他方の列とで互いに逆向きとされる。例えば、一方の列の各超音波振動子42aの分極方向は信号ケーブル25側から被検査材21の探傷面21aに向かう方向であり、他方の列の各超音波振動子42bの分極方向は、被検査材21の探傷面21aから信号ケーブル25側に向かう方向である。
【0145】
次に超音波探傷装置20Dの作用について説明する。
【0146】
超音波探傷装置20Dを被検査材21の探傷面21a上に音響カプラであるカプラント30を介して設置する。続いて超音波探傷装置20Dを作動させる。超音波探傷装置20Dの作動により、時間制御装置24は、各時間遅延回路41にトリガパルスを伝送する。
【0147】
さらに各時間遅延回路41は、一定の時間遅延の値を設定し、この時間遅延に相当する時間間隔でトリガパルスを順次パルス発生器70にそれぞれ伝送する。このとき、各時間遅延回路41は、各パルス発生器70にトリガパルスを送信する際の各遅延時間の値を信号処理装置45にそれぞれ送信する。
【0148】
各パルス発生器70は、時間遅延回路41からトリガパルスを受信すると、正パルスあるいは負パルスを一定の時間遅延を伴ってそれぞれ順次超音波振動子42a,42bに印加する。このため、各超音波振動子42a,42bは振動して縦波超音波とともに遅れエコーである横波超音波を発生し、図2に示す超音波探傷装置20Aと同様なフェーズドアレイが形成されて式(1)の関係を満たす方向にSH波が送信される。
【0149】
また、各超音波振動子42a,42bに印加するパルスは同符号であり、かつ一方の列に属する超音波振動子42aの分極方向と他方の列に属する超音波振動子42bの分極方向とは互いに逆向きである。このため、双方の列の超音波振動子42a,42bが発生する横波超音波は互いに逆相となって干渉し、SH波は重ね合わさって強め合う。
【0150】
そして、各超音波振動子42a,42bから被検査材21の内部に向かって斜方向に発生したSH波は、被検査材21内部を伝搬して、超音波探触子40Aが設けられない側の面、あるいは内部欠陥で反射して再び、各超音波振動子42a,42bに到達する。
【0151】
さらに、各超音波振動子42a,42bは、被検査材21内で反射したSH波を受信して電気信号に変換し、さらにアンプ44を経由して増幅され、共通の信号加算器33に送信される。
【0152】
このとき、各列の超音波振動子42a,42bの分極方向は互いに逆向きであり、かつ印加されたパルスが同符号であるため、各超音波振動子42a,42bが変換した電気信号は互いに同相となる。
【0153】
そして、信号加算器33において、ペア組をなす超音波振動子42a,42bから受信した同相の電気信号が加算され、さらに信号処理装置45に送信される。
【0154】
ここで、信号処理装置45に送信された各電気信号は時間遅延回路41が設定した一定の遅延時間を伴う。そこで信号処理装置45は、各時間遅延回路41から受信した各遅延時間の値を参照して、同時刻に受信したものとみなせるように遅延時間による位相差を補正してから各電気信号を加算して合成する。
【0155】
そして、信号処理装置45において加算されたSH波の電気信号は、波形表示装置34に送信され、波形表示装置34において、時間を軸として波形表示される。さらに、波形表示装置34に表示された波形表示を分析して欠陥の有無を判定する。
【0156】
すなわち超音波探傷装置20Dでは、正パルス発生器26と負パルス発生器27の代わりに同符号のパルスを発生させるパルス発生器70を設ける一方、超音波探触子40Aが具備するペア組の超音波振動子42a,42bの分極方向を互いに逆向きとすることで、図2に示す超音波探傷装置20Aと同様なSH波を被検査材21内部に送受信させて、被検査材21内部を探傷する構成である。
【0157】
このため超音波探傷装置20Dでは、図2に示す超音波探傷装置20Aと同様な効果に加え、構成要素の種類数を減らすことができる。
【0158】
尚、図2に示す超音波探傷装置20Aと同様に、信号処理装置45および信号加算器33は一体として構成してもよく、両者で信号処理系が形成される。
【0159】
尚、図6に示す超音波探傷装置20Bと同様に、超音波探傷装置20Dの時間遅延回路41が設定する遅延時間を、SH波が被検査材21の探傷面21aを伝搬するように設定することができる。すなわち、時間遅延回路41が設定する遅延時間を式(2)で示される関係を有する遅延時間とすると、SH波は、被検査材21の探傷面21aに沿って伝搬し、振動方向が被検査材21の探傷面21aに平行となるいわゆる表面SH波となる。
【0160】
このため、超音波探傷装置20Dでは図6に示す超音波探傷装置20Bと同等な作用および効果が得られるのみならず、構成要素の種類の数を減らすことができる。
【0161】
尚、図8の例では、超音波振動子42a,42bの数を16個として、8つのペア組を形成する8チャンネルの超音波探蝕子で構成したが、8チャンネルに限らず例えば16チャンネル、32チャンネル等の任意数のチャンネルとしてもよい。
【0162】
図9は、本発明に係る超音波探傷装置の第6の実施形態を示す構成図である。
【0163】
図9示された、超音波探傷装置20Eは、図8に示す第5の実施形態による超音波探傷装置20Dに対し、超音波探蝕子40Bが具備する超音波振動子42aの構成、パルス発生器70の数、信号加算器33を具備しない点および信号ケーブル25の接続方法が相違する。超音波探傷装置20Eのそれ以外の構成は、図8に示された超音波探傷装置20Dの構成と実質的に異ならないため、同一の構成については超音波探傷装置20Dと同符号を付して説明を省略する。
【0164】
超音波探傷装置20Eでは、図8に示す超音波探傷装置20Dと同様に、時間制御装置24に接続される複数の信号ケーブル25がそれぞれ時間遅延回路41に導かれる。各時間遅延回路41はそれぞれ個別のパルス発生器70に接続される。
【0165】
このパルス発生器70は正あるいは負のパルスを発生させるが、各パルス発生器70は互いに同符号のパルスを発生させるように構成される。
【0166】
また、各時間遅延回路41は、それぞれ信号処理系の一例である信号処理装置45に接続される。
【0167】
一方、超音波探触子40Bの内部には複数の8個の超音波振動子42aが1列に整列して被検査材21の探傷面21aに面接触するように設けられる。各超音波振動子42aは接触面に対して垂直な方向に予め分極され、分極方向は互いに同方向とされる。
【0168】
そして、各パルス発生器70は、信号ケーブル25を介して超音波探触子40Bの内部に設けられた超音波振動子42aにそれぞれ個別に接続される。
【0169】
また、各超音波振動子42aと各パルス発生器70とを接続する信号ケーブル25には分岐部43がそれぞれ設けられ、この分岐部43から分岐した各信号ケーブル25は、それぞれアンプ44を経由して共通の信号処理装置45に接続される。
【0170】
次に超音波探傷装置20Eの作用について説明する。
【0171】
超音波探傷装置20Eを被検査材21の探傷面21a上に音響カプラであるカプラント30を介して設置する。続いて超音波探傷装置20Eを作動させる。超音波探傷装置20Eの作動により、時間制御装置24は、各時間遅延回路41にトリガパルスを伝送する。
【0172】
さらに各時間遅延回路41は、一定の時間遅延の値を設定し、この時間遅延に相当する時間間隔でトリガパルスを順次パルス発生器70にそれぞれ伝送する。このとき、各時間遅延回路41は、各パルス発生器70にトリガパルスを送信する際の各遅延時間の値を信号処理装置45にそれぞれ送信する。
【0173】
各パルス発生器70は、時間遅延回路41からトリガパルスを受信すると、同符号のパルス例えば正パルスを一定の時間遅延を伴ってそれぞれ順次超音波振動子42aに印加する。このため、各超音波振動子42aは、振動して縦波超音波とともに遅れエコーである横波超音波を発生し、被検査材21の探傷面21aに水平方向にフェーズドアレイが形成される。
【0174】
このため、各超音波振動子42aからSH波が式(1)の関係を満たす方向にそれぞれ送信される。
【0175】
そして、各超音波振動子42aから被検査材21の内部に向かって斜方向に発生したSH波は、被検査材21内部を伝搬して、超音波探触子40Bが設けられない側の面、あるいは内部欠陥で反射して再び、各超音波振動子42aに到達する。
【0176】
さらに、各超音波振動子42aは、被検査材21内で反射したSH波を受信して電気信号に変換し、さらにアンプ44を経由して増幅され、共通の信号処理装置45に送信される。
【0177】
ただし、信号処理装置45に送信された各電気信号は時間遅延回路41が設定した一定の遅延時間を伴う。そこで信号処理装置45は、各時間遅延回路41から受信した各遅延時間の値を参照して、同時刻に同相となるように遅延時間による位相差を補正してから各電気信号を加算して合成する。
【0178】
そして、信号処理装置45において加算されたSH波の電気信号は、波形表示装置34に送信され、波形表示装置34において、時間を軸として波形表示される。さらに、波形表示装置34に表示された波形表示を分析して欠陥の有無を判定する。
【0179】
すなわち超音波探傷装置20Eは、一列に整列させた複数の超音波振動子42aに同符号のパルスを一定の時間遅延を伴って印加することでフェーズドアレイを形成して斜方向のSH波の送受信を可能とする構成である。
【0180】
このため、超音波探傷装置20Eでは、被検査材21の探傷の際にモード変換を伴わず、より正確な検査を実施できるとともに、超音波探傷装置20Dよりもパルス発生器70および超音波振動子42a,42bの数を減らすことが可能であるため装置を簡易化することができる。
【0181】
また、超音波探傷装置20Eは、従来使用される縦波用の超音波振動子42aと低粘性のカプラント30を使用して発生するSH波を利用するため、横波用圧電セラミックを利用してSHを発生させる場合に比べて短時間で超音波エコーが安定し、かつ超音波振動子42aの移動を容易とすることができる。
【0182】
尚、図6に示す超音波探傷装置20Bと同様に、超音波探傷装置20Eの時間遅延回路41が設定する遅延時間を、SH波が被検査材21の探傷面21aを伝搬するように設定することができる。すなわち、時間遅延回路41が設定する遅延時間を式(2)で示される関係を有する遅延時間とすると、SH波は、被検査材21の探傷面21aに沿って伝搬し、振動方向が被検査材21の探傷面21aに平行となるいわゆる表面SH波のモードとなる。
【0183】
このため、超音波探傷装置20Eでは図6に示す超音波探傷装置20Bと同等な作用および効果に加えさらに構成要素を減らして簡易化することができる。
【0184】
尚、図9の例では、超音波振動子42aの数を8個として、8チャンネルの超音波探蝕子で構成したが、8チャンネルに限らず例えば16チャンネル、32チャンネル等の任意数のチャンネルとしてもよい。
【0185】
また、各実施形態の超音波探傷装置20,20A,20B,20C,20D,20Eにおいて、電気信号を増幅する必要がない場合はアンプ32a,32b,44を設けなくてもよい。さらに、電気信号を波形表示せずに数値として表示する構成とすることも可能であり、この場合は波形表示装置34を必ずしも設けなくてもよい。
【0186】
また、図2に示す超音波探傷装置20A、図8に示す超音波探傷装置20Dおよび図9に示す超音波探傷装置20Eにおいて、時間制御装置24と時間遅延回路41とは一体に構成してもよく、また超音波振動子42a,42bと接続される信号ケーブル25は分岐部43で2つの信号ケーブル25,25に分岐する構成としたが個別に設ける構成としても信号の送信あるいは受信が可能な接続形態であればよい。
【0187】
また、図1に示す超音波探傷装置20および図7に示す超音波探傷装置20Cにおいて、送信用超音波振動子および受信用超音波振動子の数は1つあるいは2つに限らない。すなわち、隣接する送信用超音波振動子および受信用超音波振動子が送受信する横波超音波が互いに強め合うように構成されれば任意数設ける構成としてもよい。
【0188】
例えば、隣接する送信用超音波振動子および受信用超音波振動子の分極方向Pの向きが互いに逆方向となるように複数個整列させ、かつ各送信用超音波振動子および各受信用超音波振動子に印加するパルスを号符号とする構成、あるいは分極方向Pが同方向となるように複数の送信用超音波振動子および受信用超音波振動子を整列させ、かつ隣接する送信用超音波振動子および受信用超音波振動子に印加するパルスを互いに逆符号とする構成としてもよい。
【0189】
また、図2に示す超音波探傷装置20Aおよび図8に示す超音波探傷装置20Dにおいて、超音波振動子の列は2列に限らない。すなわち、隣接する列に属する超音波振動子が送受信する横波超音波が互いに強め合うように構成されれば、超音波振動子の列を2列以上の複数列としてもよい。
【0190】
例えば、隣接する列に属する超音波振動子の分極方向Pの向きが互いに逆方向となるように複数列に亘り超音波振動子を整列させ、かつ各超音波振動子に印加するパルスを同符号とする構成、あるいは超音波振動子の分極方向Pが同方向となるように複数列に亘り超音波振動子を整列させ、かつ隣接する列に属する超音波振動子に印加するパルスを互いに異符号とする構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明に係る超音波探傷装置の第1の実施形態を示す構成図。
【図2】本発明に係る超音波探傷装置の第2の実施形態を示す構成図。
【図3】図2に示す超音波探蝕子が具備する複数の超音波振動子の配置方法を示す正面図。
【図4】図2に示す被検査材の探傷面における横波超音波の振動方向を示す図。
【図5】図4に示すC−C断面の断面図。
【図6】本発明に係る超音波探傷装置の第3の実施形態を示す構成図。
【図7】本発明に係る超音波探傷装置の第4の実施形態を示す構成図。
【図8】本発明に係る超音波探傷装置の第5の実施形態を示す構成図。
【図9】本発明に係る超音波探傷装置の第6の実施形態を示す構成図。
【図10】従来の超音波探傷装置の構成図。
【図11】従来の超音波探傷装置の別の例を示す構成図。
【符号の説明】
【0192】
20,20A,20B,20C,20D,20E 超音波探傷装置
21 被検査材
21a 探傷面
22,22A 超音波送信系
23,23A 超音波受信系
24 時間制御装置
25 信号ケーブル
26 正パルス発生器
27 負パルス発生器
28a,28b 送信用超音波振動子
29 接触面
30 カプラント
31a,31b 受信用超音波振動子
32a,32b アンプ
33 信号加算器
34 波形表示装置
35 接触面
40,40A,40B 超音波探触子
41 時間遅延回路
42a,42b 超音波振動子
43 分岐部
44 アンプ
45 信号処理装置
50 母材
51 溶接ビード
52 欠陥
60 パルス発生器
70 パルス発生器
P 分極方向
A1,A2 縦波超音波の振動方向
B,B1,B2 横波超音波の振動方向
X1,X2 縦波超音波の伝搬方向
Y 横波超音波の伝搬方向
Z レーリ波(表面波)の伝搬方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間遅延回路と、この時間遅延回路に信号ケーブルを介して接続されたパルス発生器と、このパルス発生器に信号ケーブルを介して接続された複数の超音波振動子を内部に整列配置した超音波探触子と、前記超音波振動子および前記時間遅延回路に信号ケーブルを介して接続された信号処理系とを具備し、前記超音波探触子は内部の前記超音波振動子が被検査材の探傷面に接するように設けられ、前記時間遅延回路は一定の時間遅延の値を設定して前記信号処理系および前記パルス発生器に与え、このパルス発生器は前記時間遅延を伴ってパルスを順次各超音波振動子に印加し、さらに各超音波振動子は前記被検査材の内部に前記時間遅延を伴って縦波超音波とともに遅れエコーとして横波超音波を発生させて前記被検査材の探傷面に対し一定の角度で伝搬しかつその振動方向が前記被検査材の探傷面に対し水平である水平偏波横波を形成して送信し、かつ前記被検査材の内部で反射した水平偏波横波を受信して電気信号に変換し前記信号処理系に与え、この信号処理系は前記時間遅延の値を参照して各水平偏波横波の受信時間を補正した後、加算して解析することにより被検査材の探傷あるいは板厚測定を行うように構成したことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
前記パルス発生器は、正パルス発生器と負パルス発生器とにより構成され、前記正パルス発生器に接続される前記超音波振動子は同列に整列される一方、前記負パルス発生器に接続される前記超音波振動子は前記正パルス発生器に接続される前記超音波振動子の列に隣接する列に整列され、かつ各超音波振動子の分極方向を同一として、隣接する列の前記超音波振動子は互いに逆相の前記横波超音波および前記水平偏波横波をそれぞれ発生させてこれら前記横波超音波および前記水平偏波横波が各前記被検査材の内部において干渉により互いに強め合うように構成され、さらに隣接する列の一方の列の前記超音波振動子により受信され電気信号に変換された水平偏波横波の位相を前記信号処理系で反転して各水平偏波横波の位相を同相とするように構成したことを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
【請求項3】
前記超音波振動子は複数の列で整列配置され、同列の前記超音波振動子の分極方向は同一に構成される一方、隣接する列の前記超音波振動子の分極方向は互いに逆方向に構成され、双方の列の前記超音波振動子は互いに逆相の前記横波超音波および前記水平偏波横波をそれぞれ発生させてこれら前記横波超音波および前記水平偏波横波が各前記被検査材の内部において干渉により互いに強め合うように構成したことを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
【請求項4】
前記時間遅延回路は、遅延時間の値を可変設定し、前記水平偏波横波の伝搬方向を制御可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
【請求項5】
前記時間遅延回路は、前記水平偏波横波の伝搬方向が前記被検査材の探傷面に沿う方向となる時間遅延の値を設定するように構成したことを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
【請求項6】
前記被検査材の探傷面と前記超音波振動子との間にカプラントを塗布したことを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
【請求項7】
前記超音波振動子は、縦波用の超音波振動子であることを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
【請求項8】
前記信号処理系にアンプを設け、前記信号処理系が受信した電気信号を増幅して解析するように構成したことを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
【請求項9】
前記信号処理系に波形表示装置を設け、前記信号処理系が受信した電気信号を加算して得られた結果を波形表示するように構成したことを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−139325(P2008−139325A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7103(P2008−7103)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【分割の表示】特願2002−358230(P2002−358230)の分割
【原出願日】平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】