説明

超音波探触子

【課題】電気信号が伝達しなくなることによるノイズが減少し、超音波画像の画質を向上させることができる摺動接触装置を有する超音波探触子を提供する。
【解決手段】回転可能に構成された回転子と、回転子に設けられ、超音波信号と電気信号とを相互に変換する超音波振動子と、回転子に回転軸が同軸となるように接続されたスリップリング5と、スリップリング5に接触して超音波振動子に電気信号を伝達するブラシ6と、ブラシ6をスリップリング5に接触させるブラシ圧を変化可能なブラシ圧可変手段8と、回転子と、超音波振動子と、スリップリング5と、ブラシ6と、ブラシ圧可変手段8とを包含するウインドウと、ウインドウ内に充満された音響媒体1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波送受信する超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の体腔内超音波探触子の先端部の構成を示す断面図である。ウインドウ104は、体内に挿入される挿入部の先端部に装着されており、音響媒体101は、このウインドウ104内部に充填されている。超音波振動子103は超音波を送受信するものであり、関心領域を走査するために回転子102に取り付けられている。スリップリング105は、回転子102と一体化されており、回転子102と一緒に回転する。ブラシ106は、スリップリング105と摺動接点において接触しており、スリップリング105からの電気信号はブラシ106、ケーブル107を介して、超音波診断装置本体へ伝達される。
【0003】
このブラシ106とスリップリング105との摺動接点は、接触状態によって瞬間的に開離することがある。この場合、電気信号が伝達されなくなることにより、ノイズが発生することがある。
【0004】
このような摺動接点のノイズ対策が施された摺動接触装置が、例えば、VHSレコーダの技術分野で提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
図8は、このような摺動接点のノイズ対策がとられた従来の摺動接触装置の構成を示す側面図である。図9は、図8に示した摺動接触装置の平面図である。図8において、ブラシ111a、111b、111cは、それぞれの自由端が樹脂112で一体成形されたスリップリング113a、113b、113cと摺動接触するよう構成されている。
【0006】
ノイズ検出回路116は、摺動接触装置を記録モードとして電源供給に使用しているブラシ111a、111bとスリップリング113a、113bの間で発生する接触不良によるノイズを検出する。初期設定時において、検出したノイズが許容ノイズ限界量内になるよう素子ドライブ回路115の出力の初期設定値を決定する。
【0007】
ノイズ検出回路116は、通常の動作時において、検出したノイズが常にノイズ限界量をオーバーするか否かを判定する。ノイズ限界量をオーバーする場合、素子ドライブ回路115は、出力を増加させてブラシ圧可変部材114の先端部を図9に示す矢印d方向へ変位させる。これにより、ブラシ111a、111b、111cのスリップリング113a、113b、113cへの接触力が増加して、常にノイズ限界量内となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−206486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
摺動接点のノイズ対策が施された上記従来の摺動接触装置は、大気(気体)中での動作を前提とするものである。しかし、超音波探触子の先端部では、摺動接点は音響媒体で充填されたウインドウ内に設置されており、摺動接触装置の周辺環境が上記従来の摺動接触装置と異なる。
【0010】
音響媒体が探触子の先端部に存在するため、回転子が回転している場合、回転子と一体化しているスリップリングとブラシとの間に音響媒体が流れ込み、音響媒体からブラシを押す力が働いている。そのため、音響媒体の特性や流れが変化すると、音響媒体がブラシを押す力が変化する。したがって、ブラシとスリップリングとの接触力が変化し、接触不良が起こりやすくなる。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、ブラシとスリップリングの接触不良を起こしにくくすることで、電気信号が伝達しなくなることによるノイズが減少し、超音波画像の画質を向上させることができる摺動接触装置を有する超音波探触子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の超音波診断装置は、上記課題を解決するために、回転可能に構成された回転子と、前記回転子に設けられ、超音波信号と電気信号とを相互に変換する超音波振動子と、前記回転子に回転軸が同軸となるように接続されたスリップリングと、前記スリップリングに接触して前記超音波振動子に前記電気信号を伝達するブラシと、前記ブラシを前記スリップリングに接触させるブラシ圧を変化可能なブラシ圧可変手段と、前記回転子と、前記超音波振動子と、前記スリップリングと、前記ブラシと、前記ブラシ圧可変手段とを包含するウインドウと、前記ウインドウ内に充満された音響媒体とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記ブラシ圧可変手段は、前記音響媒体の温度に応じて前記ブラシ圧を変化させる構成にすることができる。この構成により、音響媒体の温度変化に応じてブラシ圧を変化させることができる。
【0014】
また、前記ブラシ圧可変手段は、少なくとも2種の部材が張り合わされて構成され、一端部が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、前記ブラシの一端部は前記ブラシ圧可変手段の他端部に取り付けられ、前記ブラシの他端部は前記スリップリングに接触させられており、前記ブラシ圧可変手段の前記スリップリング側の面に配置された部材の熱膨張係数は、前記ブラシ圧可変手段の前記スリップリング側の面と反対側の面に配置された部材の熱膨張係数より大きい構成にすることも可能である。この構成により、音響媒体の温度変化が生じた時に熱膨張係数に応じてブラシ圧を変化させることができる。
【0015】
また、前記ブラシ圧可変手段は、少なくとも2種の部材が張り合わされて構成され、前記ブラシの機能を有し、一端部が前記スリップリングに接触し、他端部が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、前記ブラシ圧可変手段の前記スリップリング側の面に配置された部材の熱膨張係数は、前記ブラシ圧可変手段の前記スリップリング側の面と反対側の面に配置された部材の熱膨張係数より大きい構成にすることができる。この構成により、構成部材を減少させることができ、ブラシとスリップリングの組み立てを容易にすることができる。また、部材のコストを安価にすることができる。
【0016】
また、前記音響媒体の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシが前記スリップリングに接触するブラシ圧が変化するように前記ブラシ圧可変手段を制御する制御回路とを備えた構成にすることができる。この構成により、温度検出手段で検出した音響媒体の温度変化情報により、ブラシ圧を変化させることができる。
【0017】
また、前記ブラシ圧可変手段は、膨張及び収縮可能な材料で構成され、前記スリップリングと対向する側及び前記スリップリングと対向する側の反対側のうち、一方に前記ブラシが接続され、他方が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、前記制御回路は、前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシ圧可変手段を膨張または収縮させる構成にすることもできる。
【0018】
また、前記回転子の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記回転速度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシが前記スリップリングに接触するブラシ圧が変化するように前記ブラシ圧可変手段を制御する制御回路とを備えた構成にすることができる。この構成により、回転速度検出手段で検出した回転子の回転速度情報により、ブラシ圧を変化させることができる。
【0019】
また、前記ブラシ圧可変手段は、膨張及び収縮可能な材料で構成され、前記スリップリングと対向する側及び前記スリップリングと対向する側の反対側のうち、一方に前記ブラシが接続され、他方が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、前記制御回路は、前記回転速度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシ圧可変手段を膨張または収縮させる構成にすることもできる。
【0020】
また、前記音響媒体の温度を検出する温度検出手段と、前記回転子の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記温度検出手段の検出結果及び前記回転速度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシが前記スリップリングに接触するブラシ圧が変化するように前記ブラシ圧可変手段を制御する制御回路とを備えた構成にすることができる。この構成により、温度検出手段で検出した音響媒体の温度変化情報及び回転速度検出手段で検出した回転子の回転速度情報により、ブラシ圧を変化させることができる。
【0021】
また、前記ブラシ圧可変手段は、膨張及び収縮可能な材料で構成され、前記スリップリングと対向する側及び前記スリップリングと対向する側の反対側のうち、一方に前記ブラシが接続され、他方が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、前記制御回路は、前記温度検出手段の検出結果及び前記回転速度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシ圧可変手段を膨張または収縮させる構成にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、摺動接触装置周辺の音響媒体の温度、回転子の回転速度、または、音響媒体の温度と回転子の回転速度の両者が変化した場合においても、ブラシとスリップリングの接触力が初期設定時の接触力Fを維持することができる。そのため、ブラシとスリップリングの接触不良が起こりにくくなり、電気信号が伝達しなくなることによるノイズが減少し、超音波画像の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る超音波探触子の先端部の構成を示す側面図
【図2A】図1のA−A線に沿った断面図
【図2B】図2Aのブラシ圧可変部材の拡大図
【図3】本実施の形態に係る超音波探触子の先端部の別の構成を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態2における超音波探触子の先端部の構成を示す側面図
【図5A】図4のB−B線に沿った断面図であって、ブラシ可変部材の大きさが通常時である断面図
【図5B】同ブラシ可変部材が収縮した状態の断面図
【図5C】同ブラシ可変部材が膨張した状態の断面図
【図6】本実施の形態に係る超音波探触子の先端部の別の構成を示す断面図
【図7】従来の体腔内超音波探触子の先端部の構成を示す断面図
【図8】従来の超音波探触子の先端部の構成を示す側面図
【図9】図8に示した摺動接触装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の超音波探触子の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波探触子の先端部の構成を示す側面図である。図2Aは、図1のA−A線に沿った断面図である。図1に図示された領域は、超音波探触子の先端部であって、音響媒体1が充填されたウインドウ(図示せず)内部を示す。音響媒体1中の回転子2は、モータ(図示せず)を有し、制御指令通りの回転速度で回転する。超音波振動子3は、超音波信号と電気信号とを相互に変換する素子であって、回転子2上に設けられている。超音波振動子3は、回転子2と供に回転しながら入力された電気信号を超音波信号に変換して対象部に放射し、対象部で反射された超音波信号を受信して電気信号に変換する。これにより、対象部を走査することができる。
【0026】
回転子2には、超音波振動子3と超音波診断装置本体(図示せず)に接続されたケーブルとの間を接続するための摺動接触装置4が設けられている。摺動接触装置4は、スリップリング5と、ブラシ6と、ブラシホルダ7と、ブラシ圧可変部材8と、ブラシ支持体9とを有する。
【0027】
スリップリング5は、回転子2に回転軸が同軸となるように接合されて回転子2と供に回転し、超音波振動子3と電気的に接続されている。ブラシ6は、一本または複数本の導電体または、導電体でメッキされた部材で構成され、超音波振動子3と接続されたスリップリング5の配線と摺動接触するように構成されている。
【0028】
図2Aに示すように、ブラシ6がスリップリング5を押し付けることにより接触力Fが発生する。ブラシ6の初期設定では、接触力Fが最適な力となるように設定されている。接触力Fが小さいと、スリップリング5とブラシ6とが開離してノイズが発生する原因となる。接触力Fが大き過ぎると、ブラシ6が磨耗してブラシ6の寿命が短くなる。
【0029】
ブラシ6の固定端は、ブラシ圧可変部材8の自由端に設けられたブラシホルダ7に固定されている。ブラシ圧可変部材8は、熱膨張係数の異なる板状の内側金属板10と外側金属板11とが張り合わされたバイメタルで構成されており、内側金属板10は外側金属板11よりも熱膨張係数が大きい。図2Bは、図2Aのブラシ圧可変部材8の拡大図である。実線12で示すブラシ6及びブラシ圧可変部材8が常温時の状態である。破線13で示すブラシ6及びブラシ圧可変部材8が高温時の状態である。破線14で示すブラシ6及びブラシ圧可変部材8が低温時の状態である。
【0030】
ブラシ支持体9は、ブラシ圧可変部材8を保持する部材である。
【0031】
以上の構成により、超音波振動子3で生成された電気信号は、スリップリング5に伝達され、摺動接点を経由して、ブラシ6に伝わる。次に、ブラシ6からブラシ圧可変部材8に伝達され、ブラシ圧可変部材8に半田付けされた電線(図示せず)を通り、超音波診断装置本体へ伝達される。
【0032】
以上のように構成された超音波探触子における摺動接触装置4について、以下その動作、作用を説明する。
【0033】
まず、音響媒体1の温度が低下し、回転速度が一定の場合について説明する。音響媒体1の温度が低下すると、音響媒体1の粘性率が高くなる。また、回転子2の回転速度は変化しないよう制御されているため、流速はほとんど変化しない。音響媒体1のブラシ6を押す力は粘性抵抗を含む関数となっており、粘性抵抗は、流体の速度勾配と粘性率に比例しているため、粘性率が高くなる分、粘性抵抗が上昇する。音響媒体1は、矢印Pのように移動するため、ブラシ6を外側に移動させる向きに力が加わる。そのため、音響媒体1のブラシ6を押す力が大きくなり、ブラシ6のスリップリング5を押す力が弱くなる。
【0034】
ブラシ圧可変部材8は内側金属板10の方が外側金属板11よりも熱膨張係数が大きいので、図2Bの実線(常温)12に示すような常温の形状をもつブラシ圧可変部材8は、音響媒体1の温度が低下すると、図2Bの破線(低温)14に示すようにブラシ圧可変部材8は内側に湾曲し、ブラシ先端は内側にスリップリング5を押し付ける力が強まるように変形する。よって、音響媒体1の温度低下により変形したブラシ6のスリップリング5を押す力が増大して、初期設定時の接触力Fが維持される。
【0035】
次に、音響媒体1の温度が上昇し、回転速度が一定の場合について説明する。音響媒体1の温度が高くなると、粘性率が低くなる。また、回転子2の回転速度は変化しないよう制御されているため流速はほとんど変化しない。よって、粘性率が低くなる分、粘性抵抗は小さくなるため、音響媒体1がブラシ6を押す力が小さくなり、ブラシ6のスリップリング5を押す力が強くなる。
【0036】
ブラシ圧可変部材8は内側金属板10の方が外側金属板11よりも熱膨張係数が大きいので、図2Bの実線(常温)12に示すような常温の形状をもつブラシ圧可変部材8は、音響媒体1の温度が上昇すると、図2Bの破線(高温)13に示すようにブラシ圧可変部材8は外側に湾曲し、ブラシ先端は内側にスリップリング5を押し付ける力が弱まるように変形する。よって、音響媒体1の温度上昇により変形したブラシ6がスリップリング5を押す力が減少して、初期設定時の接触力Fが維持される。
【0037】
以上のことから、音響媒体1の温度が変化しても、ブラシ6とスリップリング5の接触力が初期設定時の接触力Fを維持することができ、接触不良を軽減することできる。そして、接触不良による電気信号が伝達しなくなることが減少することで、超音波画像のノイズの発生が改善され、超音波画像の画質を向上させることができる。また、初期設定時の接触力F以上の力でブラシ6とスリップリング5の接触する時間が減少するため、ブラシ6とスリップリング5は必要以上に磨耗しなくなるので、ブラシ6とスリップリング5の長寿命化を図ることができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、ブラシ圧可変部材8の内側金属板10、外側金属板11の形状を板状としたが、圧力を発生可能な形状であれば線材でもよい。
【0039】
また、本実施の形態では、スリップリング5にブラシ6が接触し、ブラシ6のスリップリング5への接触力をブラシ圧可変部材8で変形させる構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、図3に示すように、ブラシ6とブラシ圧可変部材8とが同一部材で一体的に形成されたブラシ圧可変部材8bがスリップリング5に接触して、スリップリング5からの電気信号を伝達する構成にしてもよい。この構成においても、上記効果が得られる。
【0040】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における超音波探触子の先端部の構成を示す側面図である。図5Aは、図4のB−B線に沿った断面図である。本実施の形態に係る超音波探触子は、摺動接触装置24と、音響媒体1の温度を検出可能な手段として温度センサ31と温度検出回路32を設け、回転子2の回転速度を検出可能な検出手段としてエンコーダ33と角度位置検出回路34を設けた点が異なる。また、圧電セラミックスからなり外部から電流を流すことで能動的に大きさが変化可能なブラシ圧可変部材28と、それを制御する可変部材制御回路35を有している点が異なる。本実施の形態に係る超音波探触子において、実施の形態1に係る超音波探触子と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
ブラシ26は、一本または複数本の導電体または、導電体でメッキされた部材で構成され、一端がブラシホルダ27に固定されている。ブラシ26の自由端側では、図5Aに示すように、超音波振動子3と接続されたスリップリング5の配線と摺動接触することにより、接触力Fが発生する。ブラシ26の初期設定では、接触力Fが最適な力となるように設定されている。ブラシホルダ27は、ブラシ圧可変部材28に接続されている。
【0042】
ブラシ圧可変部材28は、電圧が印加されることによって膨張、収縮することが可能な電気−機械変換素子である圧電セラミックスで構成されている。また、ブラシ圧可変部材28は、ブラシホルダ27に接続された他端でブラシ支持体29と接続されている。ブラシ支持体29は、超音波探触子の筐体に対して位置が固定されている。したがって、ブラシ圧可変部材28の大きさが変化した場合、ブラシホルダ27が移動する。
【0043】
また、温度センサ31は、ブラシ支持体29の側部に設置されており、音響媒体1の温度を検出可能な温度検出回路32に接続されている。また、回転子2には、図4に示すようにエンコーダ33が設置されており、エンコーダ33は回転子2の動作開始位置からの現在の回転子2の角度位置を検出可能な角度位置検出回路34に接続されている。また、この角度位置検出回路34は、エンコーダ33によって角度位置を検出後、角度位置と検出時間を用いて、回転子2の回転速度を算出・出力する。
【0044】
また、可変部材制御回路35は、温度検出回路32及び角度位置検出回路34と接続されており、検出された温度と算出された回転速度を用いて、ブラシ圧可変部材28を制御する電圧を出力する回路であって、この電圧を変化させることによってブラシ26の位置を変化させる。
【0045】
ここで、検出された温度と、算出された速度情報と、可変部材制御回路35と、ブラシ圧可変部材28とのさらに詳細な構成と互いの関係を説明する。
【0046】
ブラシ圧可変部材28の制御のために、予め、ある温度と回転速度において、スリップリング5に対するブラシ26の接触力が、初期組み立て時に設定した接触力Fを維持するために必要なブラシ圧可変部材28の膨張、収縮量を実験で求めておく。この実験値をもとに、超音波探触子の使用時において可変部材制御回路35に入力された温度と回転速度の値から、ブラシ圧可変部材28の膨張、収縮量を決定する。ブラシ圧可変部材28への印加電圧とブラシ圧可変部材28の膨張、収縮量の関係式は、ブラシ圧可変部材28の材料である圧電セラミックスの特性条件から求められる。
【0047】
次に、超音波探触子の使用時の動作としては、温度検出回路32は音響媒体1の温度を検出し、角度検出回路28は回転子2の回転速度を検出する。次に、可変部材制御回路35は、検出した温度と回転速度からブラシ圧可変部材28の膨張、収縮量を変化させるために必要な電圧をブラシ圧可変部材28に供給する。このように、ブラシ圧可変部材28が膨張、収縮することで、ブラシ26とスリップリング5の接触力を初期設定の接触力Fに維持することができる。
【0048】
以上のように構成された本実施の形態に係る摺動接触装置24について、以下その動作、作用を説明する。図5Bは、図5Aよりもブラシ圧可変部材28が収縮した状態を示す断面図である。図5Cは、図5Aよりもブラシ圧可変部材28が膨張した状態を示す断面図である。
【0049】
音響媒体1の温度が変化すると、実施の形態1で述べたように、温度低下時に、音響媒体1がブラシ26を押す力は大きくなり、温度上昇時には、音響媒体1がブラシ26を押す力は小さくなる。また、回転子2の回転速度が上昇した場合、回転子2周辺の音響媒体1の流速が上がり、音響媒体1がブラシ26を押す力は大きくなる。また、回転子2の回転速度が減少した場合、回転子2周辺の音響媒体1の流速が下がり、音響媒体1がブラシ26を押す力は小さくなる。
【0050】
よって、音響媒体1の温度が低下し回転速度が変化しない、または回転速度が上昇し温度が変化しない、または温度が低下しかつ回転速度が上昇した場合には、音響媒体1がブラシ26を押しのける力が大きくなるため、ブラシ26のスリップリング5への接触力が低下する。この場合、可変部材制御回路35は、温度センサ31より検出された温度、または、エンコーダ33より算出された回転速度、または温度と回転速度両方の情報を参照して最適なブラシ圧可変部材28の収縮量を決定する。図5Bに示すように、ブラシ圧可変部材28が収縮すると、ブラシ26がスリップリング5に押し付けられる力が強くなる。そのため、ブラシ26のスリップリング5への接触力は、音響媒体1の温度の低下、または回転速度の上昇、または温度が低下しかつ回転速度が上昇した場合でも、初期設定時の接触力Fを維持することができる。
【0051】
また、音響媒体1の温度が上昇し回転速度が変化しない、または回転速度が低下し温度が変化しない、または温度が上昇しかつ回転速度が低下した場合には、音響媒体1がブラシ26を押しのける力は小さくなるため、ブラシ26のスリップリング5への接触力が大きくなる。この場合、可変部材制御回路35は、温度センサ31より検出された温度または、エンコーダ33の位置情報より算出された回転速度、または温度と回転速度両方の情報を参照して、最適なブラシ圧可変部材28の膨張量を決定する。図5Cに示すように、ブラシ圧可変部材28が膨張すると、ブラシ26がスリップリング5を押し付ける力が弱くなる。そのため、ブラシ26のスリップリング5への接触力は、音響媒体1の温度の上昇、または回転速度の低下、または温度が上昇しかつ回転速度が低下した場合でも、初期設定時の接触力Fを維持することができる。
【0052】
また、音響媒体の温度が上昇かつ回転子の回転速度が減少、もしくは、温度が下降かつ回転子の回転速度が増加した場合、温度センサ31により検出した温度と、エンコーダ33の位置情報より算出された回転速度の情報とを参照して、最適なブラシ圧可変部材28の膨張、収縮量を決定する。そして、決定した膨張、収縮量に基づいて、ブラシ圧可変部材28の膨張、収縮させて、ブラシ26とスリップリング5の接触力を初期設定時の接触力Fを維持することができる。
【0053】
以上のように、本発明は、超音波探触子において、摺動接触装置24と、温度と回転速度を検出する検出手段31〜34と、これらの温度、または回転速度、または温度と回転速度の情報から、必要なブラシ圧可変部材28の膨張、収縮量を算出させる可変部材制御回路35を設けた構成により、音響媒体1の温度、または回転子2の回転速度、または温度と回転速度の両者が変化しても、ブラシ26とスリップリング5は初期組み立て時に設定した接触力Fを維持することができる。そのため、接触不良が軽減され、電気信号が伝達しなくなることが減少し、超音波画像のノイズが改善され、超音波画像の画質向上させることができる。また、初期設定時の接触力F以上の力で接触する時間が減少するため、ブラシ26とスリップリング5は、必要以上に磨耗しなくなるので、ブラシ26とスリップリング5の長寿命化を図ることができる。
【0054】
なお、本実施の形態ではエンコーダ33という位置検出可能な検出手段から得た位置情報より、回転速度を求めたが、ポテンショメータといった位置検出手段より回転速度を算出するか、タコジェネレータを用いて回転速度を検出してもよい。
【0055】
また、回転速度が一定である場合は、温度のみでブラシ圧を変化させても同様の効果を得ることが可能であるし、音響媒体の粘性率が温度によってあまり変化しない場合は、回転速度のみでブラシ圧を変化させてもよい。
【0056】
なお、本実施の形態では、圧電セラミックスでできたブラシ圧可変部材28をブラシ支持台29に対してスリップリング5の反対側に配置し、ブラシ圧可変部材28を膨張させた場合、接触力が小さくなり、ブラシ圧可変部材28を収縮させた場合、接触力が大きくなる構成を例に説明した。しかし、本発明は、この構成に限定されるものではない。例えば、図6に示すようにブラシ支持台29bに対してスリップリング5の側にブラシ圧可変部材28を配置し、ブラシ圧可変部材28を収縮させた場合、ブラシ26のスリップリング5への接触力が小さくなり、ブラシ圧可変部材28を膨張させた場合、ブラシ26のスリップリング5への接触力が大きくなる構成にしてもよい。この構成でも、上記実施の形態と同様の効果が生じる。
【0057】
また、音響媒体1の温度を検出する手段をブラシ支持台29に設置したが、音響媒体1の温度が検出可能なブラシ圧可変部材28や音響媒体1が充填されている容器側面に設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、温度、または回転速度、または、温度と回転速度両者の影響を受けにくく、ノイズが少ない超音波画像を提供可能であり、また、長寿命を実現する耐久性を有し、超音波診断装置の体腔内に挿入可能な超音波探触子等として有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 音響媒体
2 回転子
3 超音波振動子
4、4b、24、24b 摺動接触装置
5 スリップリング
6、26 ブラシ
7、27、27b ブラシホルダ
8、8b、28 ブラシ圧可変部材
9、29、29b ブラシ支持体
10、10b 内側金属板
11、11b 外側金属板
12 実線
13、14 破線
31 温度センサ
32 温度検出回路
33 エンコーダ
34 角度位置検出回路
35 可変部材制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に構成された回転子と、
前記回転子に設けられ、超音波信号と電気信号とを相互に変換する超音波振動子と、
前記回転子に回転軸が同軸となるように接続されたスリップリングと、
前記スリップリングに接触して前記超音波振動子に前記電気信号を伝達するブラシと、
前記ブラシを前記スリップリングに接触させるブラシ圧を変化可能なブラシ圧可変手段と、
前記回転子と、前記超音波振動子と、前記スリップリングと、前記ブラシと、前記ブラシ圧可変手段とを包含するウインドウと、
前記ウインドウ内に充満された音響媒体とを備えたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記ブラシ圧可変手段は、前記音響媒体の温度に応じて前記ブラシ圧を変化させることを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記ブラシ圧可変手段は、少なくとも2種の部材が張り合わされて構成され、一端部が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、
前記ブラシの一端部は前記ブラシ圧可変手段の他端部に取り付けられ、前記ブラシの他端部は前記スリップリングに接触させられており、
前記ブラシ圧可変手段の前記スリップリング側の面に配置された部材の熱膨張係数は、前記ブラシ圧可変手段の前記スリップリング側の面と反対側の面に配置された部材の熱膨張係数より大きいことを特徴とする請求項2記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記ブラシ圧可変手段は、少なくとも2種の部材が張り合わされて構成され、前記ブラシの機能を有し、一端部が前記スリップリングに接触し、他端部が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、
前記ブラシ圧可変手段の前記スリップリング側の面に配置された部材の熱膨張係数は、前記ブラシ圧可変手段の前記スリップリング側の面と反対側の面に配置された部材の熱膨張係数より大きいことを特徴とする請求項2記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記音響媒体の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシが前記スリップリングに接触するブラシ圧が変化するように前記ブラシ圧可変手段を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記ブラシ圧可変手段は、膨張及び収縮可能な材料で構成され、前記スリップリングと対向する側及び前記スリップリングと対向する側の反対側のうち、一方に前記ブラシが接続され、他方が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、
前記制御回路は、前記温度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシ圧可変手段を膨張または収縮させる請求項5記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記回転子の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記回転速度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシが前記スリップリングに接触するブラシ圧が変化するように前記ブラシ圧可変手段を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項8】
前記ブラシ圧可変手段は、膨張及び収縮可能な材料で構成され、前記スリップリングと対向する側及び前記スリップリングと対向する側の反対側のうち、一方に前記ブラシが接続され、他方が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、
前記制御回路は、前記回転速度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシ圧可変手段を膨張または収縮させる請求項7記載の超音波探触子。
【請求項9】
前記音響媒体の温度を検出する温度検出手段と、
前記回転子の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記温度検出手段の検出結果及び前記回転速度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシが前記スリップリングに接触するブラシ圧が変化するように前記ブラシ圧可変手段を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項10】
前記ブラシ圧可変手段は、膨張及び収縮可能な材料で構成され、前記スリップリングと対向する側及び前記スリップリングと対向する側の反対側のうち、一方に前記ブラシが接続され、他方が前記スリップリングに対して一定の位置に固定され、
前記制御回路は、前記温度検出手段の検出結果及び前記回転速度検出手段の検出結果に基づいて、前記ブラシ圧可変手段を膨張または収縮させる請求項9記載の超音波探触子。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−48802(P2013−48802A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189279(P2011−189279)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】