説明

超音波検査方法及び超音波検査装置

【課題】 検査対象部の減肉等を検出し易く且つその存在位置を容易に認識することの可能な超音波検査方法及び超音波検査装置を提供すること。
【解決手段】 送信子2は、被検査体100の表面100aに沿うように伝搬する横波(以下、「表面伝搬横波TW1」とする)及び被検査体100の表面100a及び裏面100bの間で反射を繰り返して伝搬する横波(以下、「反射伝搬横波TW2」とする)を発生させる。受信子3及び送信子2を被検査体100の表面100aに沿って移動させる。表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2の受信強度を送信子及び受信子の走査位置及び受信時間を軸とする二次元画像に表示させる。減肉等Dによる表面伝搬横波TW1及び/又は反射伝搬横波TW2の受信時間の変化として表示される二次元画像の変化により検査対象部101の減肉等Dを検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査方法及び超音波検査装置に関する。さらに詳しくは、検査対象部を跨いで送信子及び受信子を被検査体の表面に配置し、前記送信子から前記被検査体へ超音波を送信すると共に前記被検査体を伝搬した超音波を前記受信子で受信することにより前記検査対象部の減肉等を検査する超音波検査方法及び超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き超音波検査方法として、例えば特許文献1〜3に記載の如きものが知られている。特許文献1に記載の検査方法は、表面波を用いた検査方法であり、探触子を配置した被検査体の表面側しか検査することができない。また、表面波は被検査体の表面の面粗さの影響を受けやすく、正確な検査が困難な場合があった。さらに、例えば、溶接部のある配管支持構造物では、表面波が溶接部を伝搬し、検査が困難な部位があった。
【0003】
特許文献2に記載の方法は、表面波とは異なる表面疑似SV波なる超音波を用いている。この表面疑似SV波も探触子を配置した被検査体の表面側しか検査することができない。また、表面疑似SV波を発生させるために、屈折角が大きい探触子を用いる必要があり、汎用性に欠けていた。なお、特許文献2の発明の目的は、感度補正にあり、減肉検出について詳細な記載はない。
【0004】
特許文献3に記載の方法は、被検査体の表裏で複数回反射させた横波を用いている。しかし、減肉が表裏いずれに存在するかを特定するためには、スキップの回数を考慮して探触子間距離を設定しなければならず、作業が煩雑となっていた。また、減肉部により超音波が散乱して信号振幅が低下しやすく、正確な検査が困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4500413号公報
【特許文献2】特開2010−54497号公報
【特許文献3】特開2010−190794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、検査対象部の減肉等を検出し易く且つその存在位置を容易に認識することの可能な超音波検査方法及び超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る超音波検査方法の特徴は、検査対象部を跨いで送信子及び受信子を被検査体の表面に配置し、前記送信子から前記被検査体へ超音波を送信すると共に前記被検査体を伝搬した超音波を前記受信子で受信することにより前記検査対象部の減肉等を検査する超音波検査方法において、前記送信子は、前記被検査体の表面に沿うように伝搬する横波(以下、「表面伝搬横波」とする)及び前記被検査体の表面及び裏面の間で反射を繰り返して伝搬する横波(以下、「反射伝搬横波」とする)を発生させるものであり、前記受信子及び送信子を前記被検査体の表面に沿って移動させ、前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波の受信強度を送信子及び受信子の走査位置及び受信時間を軸とする二次元画像に表示させ、前記減肉等による前記表面伝搬横波及び/又は前記反射伝搬横波の受信時間の変化として表示される前記二次元画像の変化により前記検査対象部の減肉等を検査することにある。
【0008】
上記構成によれば、被検査体内には、被検査体の表面に沿うように伝搬する表面伝搬横波及び被検査体の表面及び裏面の間で反射を繰り返して伝搬する反射伝搬横波が伝搬する。この表面伝搬横波は被検査体の表面の影響を受け、反射伝搬横波は被検査体の表面及び裏面の影響を受ける。そのため、表面伝搬横波及び反射伝搬横波は、減肉等によって伝搬経路が変化し、それによって受信時間が変化する。そして、受信時間の変化は、受信時間を軸とする二次元画像の変化として表示される。よって、この二次元画像の変化により、簡便且つ確実に減肉等の有無を容易に検出できる。また、表裏いずれの面の減肉であるかを識別することも可能である。
【0009】
前記減肉等の対応部における前記二次元画像の変化は、前記減肉等の対応部における前記二次元画像上で前記表面伝搬横波の受信時間が増加する方向へ変形するものである。図6(a)に示す如く、例えば被検査体100の表面100aに減肉部D1が存在する場合、表面伝搬横波TW1は減肉部D1の表面を沿って迂回して伝搬するため、伝搬経路は長くなり、表面伝搬横波TW1の伝搬時間は増加する。すなわち、二次元画像の変化は、時間軸方向において時間が増加する方向(下方)へ凸状に変形する。従って、この変形により検査対象部の表面の減肉部の有無を容易に確認することができる。
【0010】
前記減肉等の対応部における前記二次元画像の変化が、前記減肉等の対応部における前記二次元画像上で前記反射伝搬横波の受信時間が減少する方向へ変形するものであってもよい。図6(b)に示す如く、例えば被検査体100の裏面100bに減肉部D2が存在する場合、反射伝搬横波TW2は減肉部D2で反射するため、伝搬経路は短くなり、反射伝搬横波TW2の伝搬時間は短縮する。すなわち、二次元画像の変化は、時間軸方向において時間が短縮する方向(上方)へ凸状に変形する。従って、この変形により検査対象部の裏面の減肉部の有無を検出することができる。さらに、反射伝搬横波TW2は、表面100aの減肉部D1でも同様に反射するので、容易に確認することができる。
【0011】
前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波は、SV波であるとよい。粘性の高い接触媒質を用いる必要がなく、効率よく検査することができる。また、前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波の周波数は、0.5MHz以上5MHz以下とするとよい。低い周波数の横波は超音波の指向性が鈍く、超音波ビーム中心軸から離れた位置における超音波ビームの強度がビーム中心軸に比べて著しく低下することを防止することができ、より明瞭に信号を送受信することができる。
【0012】
上記いずれかに記載の検査方法は、例えば、前記検査対象部は他の部材により前記被検査体の表面が隠蔽された隠蔽部において検査可能である。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る超音波検査装置の特徴は、上記のいずれかに記載の超音波検査方法に用いられる超音波検査装置において、前記送信子は、前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波を発生させるものであり、前記受信子及び送信子を前記被検査体の表面に沿って移動させ、前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波の受信強度を送信子及び受信子の走査位置及び受信時間を軸とする二次元画像に表示させ、前記減肉等による前記表面伝搬横波及び/又は前記反射伝搬横波の受信時間の変化として表示される前記二次元画像の変化により前記検査対象部の減肉等を検査することにある。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明に係る超音波検査方法及び超音波検査装置の特徴によれば、検査対象部の減肉等を検出し易く且つその存在位置を容易に認識することが可能となった。
【0015】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る超音波検査装置を示す概略図である。
【図2】送信子から入射された超音波の拡がりを模式的に示す図である。
【図3】外周面で反射する表面反射横波の経路を模式的に示す図である。
【図4】伝搬した横波のAスコープ画像の一例を示す図である。
【図5】被検査体の外形形状とその被検査体における二次元画像との対応関係を示す図である。
【図6】表面伝搬横波及び反射伝搬横波の経路を模式的に示す図である。
【図7】鋼管の周方向に探触子を配置した場合における二次元画像の一例を示す図である。
【図8】トラニオン部における二次元画像の一例を示す図である。
【図9】第二実施形態での表面伝搬横波及び反射伝搬横波の経路を模式的に示す図である。
【図10】第二実施形態における二次元画像の一例を示す図である。
【図11】6B配管における二次元画像の一例を示す図である。
【図12】4B配管における二次元画像の一例を示す図である。
【図13】配管架台接触部における二次元画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照しながら、本発明の第一の実施形態について説明する。
本発明に係る超音波検査装置1は、図1に示すように、対をなす送信子2及び受信子3を用いる。この送信子2及び受信子3は、被検査体100の検査対象部101を跨いで被検査体100の表面としての外周面100a上に周方向Xに沿って配置される。検査対象部101は、例えば、他の部材102により被検査体100の表面が外部から隔離され隠蔽された部分であり、送信子2及び受信子3を近接させることが困難な箇所である。
【0018】
本実施形態において、被検査体100は、プラント等における配管に用いられる鋼管である。その外周面100aは、送信子2及び受信子3間において鋼管100の外側に向けて凸状の曲面を形成する。また、検査対象部101は、溶接部103及び補強板104を介して鋼管100に固定された他の部材としてのトラニオン102により隠蔽された隠蔽部である。このトラニオン102は、鋼管100を支持する配管支持構造体である。以下、トラニオン102内部の隠蔽部101における外周面100aの減肉部Dを検査する例により説明する。
【0019】
図1に示すように、送信子2は、後述する表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2を鋼管100内に発生させる。受信子3は、鋼管100内を伝搬した表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2を受信する。この送信子2及び受信子3は、位置検出器5と共に探傷器4に接続される。位置検出器5は送信子2及び受信子3と連動し、送信子2及び受信子3の空間的位置を検出する。探傷器4は、CPU41、送信部42、受信部43、位置検出部44、表示部45、信号処理部46で構成されている。
【0020】
送信部42は送信信号を発生させ送信子2に入力し、受信子3で受信した隠蔽部101を伝搬した超音波を受信部43に入力し、信号処理部46、CPU41で演算処理を行う。また、位置検出器5からの信号を位置検出部44に入力させ、信号処理部46、CPU41で演算処理をすることで走査位置データを取得している。
【0021】
CPU41及び信号処理部46は、位置検出器5から送られた送信子2及び受信子3の位置信号と、受信子3で受信された超音波の受信信号から二次元画像としてBスコープ画像を生成し、表示部45に表示する。なお、送信子2及び受信子3の走査は、必ずしも鋼管100の軸方向Yに走査する必要はなく、周方向Xに走査してもよい。すなわち、減肉部Dの反射信号から正確な位置を測定するのではなく、後述する二次元画像に表れる変化部の有無により減肉部Dの有無を少なくとも検出すればよいからである。
【0022】
ここで、二次元画像(Bスコープ画像)とは、送信子2及び受信子3の位置情報を横軸とすると共に超音波伝搬時間(距離)を縦軸として、受信信号の受信強度(振幅)を表示するものである。受信強度の表示には、例えば、濃淡表示、色調表示又は二次元平面に直交する高さによる表示等を用いることができる。また、受信時間の変化は、例えば濃淡表示による縞模様の変化として表れる。
【0023】
送信子2には、横波を鋼管100に入射させる斜角探触子10を用いる。この斜角探触子10は、図2に示すように、大略、振動子11と楔12を有し、楔12の外面12aは外周面100aの曲率に合わせて加工されている。その際、楔12と外周面100aとの間には、接触媒質を介在させてある。同図に示すように、振動子11で励起した縦波LWは、楔12内を伝搬し外周面100aでモード変換され、鋼管100内に横波TWが発生する。この横波TWはSV波である。SV波を用いることで、SH波のような粘性の高い接触媒質を用いる必要がないため、粘性の低い接触媒質を用いて効率よく検査することができる。
【0024】
図2に示すように、振動子11から送信された超音波ビームの中心軸Aが外表面100aに入射する地点である入射点Pでの屈折角θ(鋼管100中を伝搬する超音波ビームの進行方向と入射点Pにおける外表面100aの法線Hとなす角度)は、60°以上85°以下とするのが好ましい。この数値範囲内であれば、後述の表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2の双方を同時に効率よく発生させることが可能となる。本実施形態では、例えば、送信子2の屈折角θを70°に設定してある。
【0025】
また、表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2の周波数は、0.5MHz以上5MHz以下とすることが好ましい。さらに、好ましくは、1MHz以上1.5MHz以下に設定するとよい。この数値範囲内であれば、超音波の指向性が鈍いために、外周面100aへ伝搬する超音波ビームの強度がビーム中心軸Aに比べて大きく低下することが少なく、信号をより明瞭に得ることができる。また、低い周波数の横波は波長が長いので、外周面100aの面粗さの影響を低減することも可能である。
【0026】
図2に示すように、鋼管100内に入射した横波TWは、外周面100aの曲率により超音波ビームの中心軸Aを中心に拡がりをもって伝搬する。この横波TWのうち、超音波ビームの中心軸Aに対し外周面100a側へ屈折した横波TWaは、鋼管100の内周面100bに到達することなく外周面100aに到達する。以下、この横波TWaを「表面反射横波」とする。
【0027】
図3(a)に示すように、例えば表面反射横波TWa1は、鋼管100の周方向Xに沿う送信子2と受信子3との間において外周面100aで1回反射する横波である。表面反射横波TWa2は外周面100aで2回反射し、表面反射横波TWa3は外周面100aで3回反射する。このように、外周面100a(曲面)のみの反射を繰り返すことで、その反射回数が増加するに従い、表面反射横波TWaの伝搬経路(距離)は、図3(b)に示す表面反射横波TWanの如く、送信子2と受信子3との間の距離に相当する鋼管100の円弧の長さに漸近し、鋼管100の外周面100aに沿うように伝搬する経路とほぼ等しいものとみなせる。
【0028】
ここで、図4に、受信信号の受信時間を縦軸に受信強度を横軸とするAスコープ画像を示す。このAスコープ画像は、同図に示すように、複数の表面反射横波TWaの信号S1が表示され、且つその信号S1の直後に別の信号S2が表示されている。この信号S2は、送信子2と受信子3との間の距離から、鋼管100の外周面100aに沿うように伝搬する表面伝搬横波TW1に起因する信号であることが確認できる。そして、図5に示すように、減肉部D1,D2を有する被検査体の外形形状と表面伝搬横波TW1の二次元画像における減肉部D1,D2に対応する対応部d1,d2は、よく一致しており、表面伝搬横波TW1が表面に沿って伝搬していることが分かる。
【0029】
また、この表面伝搬横波TW1は、表面波と異なり、例えば図1に示す如き溶接部103を有する検査対象部101では、溶接部103を介してトラニオン102の表面へ伝搬することがほとんどない。従って、従来の表面波において検査が困難であった箇所の検査も可能となる。
【0030】
一方、図2に示すように、超音波ビームの中心軸Aより内周面100b側へ屈折した横波TWbは、鋼管100の外周面100aに到達せずに内周面100bに到達する。この横波TWbは、内周面100bで反射し、外周面100aに到達する。そして、その外周面100aで同様に反射し、再び内周面100bに到達する。すなわち、この横波TWbが、鋼管100の外周面100a及び内周面100b間で交互に反射を繰り返しながら伝搬する反射伝搬横波TW2である。
【0031】
この反射伝搬横波TW2は、鋼管100の外周面100a及び内周面100b間で交互に反射を繰り返すため、先の表面伝搬横波TW1の伝搬経路よりも伝搬経路が長い。図4に示すように、表面伝搬横波TW1の信号S2の後に信号群S3が表れている。送信子2と受信子3との間の距離から、この信号S3が、反射伝搬横波TW2に起因する信号であることが分かる。
【0032】
次に、図6,7を参照しながら、減肉部Dによる表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2の伝搬経路の変化について説明する。
減肉部Dが存在しない健全な被検査体では、表面伝搬横波TW1はその表面に沿って送信子2から受信子3へ伝搬する。しかし、図6(a)に示すように、鋼管100の外周面100aに減肉部Dが存在する場合、表面伝搬横波TW1は、回折により減肉部Dの表面に沿って迂回して伝搬する。そのため、表面伝搬横波TW1の伝搬時間は、健全な鋼管の場合と比べて長くなり、受信時間は遅くなる。よって、図7に示すように、二次元画像上の減肉部Dに対応する対応部dにおいて、二次元画像の変化として表面伝搬横波TW1の縞模様に変化が生じる。この縞模様の変化は、減肉部Dによる受信時間の遅れにより、二次元画像上の時間軸の方向に時間が増加する方向(図上では下方)に凸状に変形する。このように、二次元画像上で表面伝搬横波TW1の縞模様の変化を観察することで、容易に外周面100a側の減肉部Dの有無や程度を評価することができる。
【0033】
一方、反射伝搬横波TW2は、図6(a)に示すように、減肉部Dで反射し、符号TW2aに示す経路で伝搬する。そのため、反射伝搬横波TW2の伝搬時間は、健全な鋼管の場合における経路TW2bを伝搬する場合と比べ短くなり、受信時間は早くなる。よって、図7に示すように、二次元画像上の減肉部Dに対応する対応部dにおいて、二次元画像の変化として反射伝搬横波TW2の縞模様にも変化が生じる。この縞模様の変化は、減肉部Dによる受信時間の短縮により、二次元画像上の時間軸の方向に時間が減少する方向(図上では上方)に凸状に変形する。
【0034】
また、図6(b)に示すように、鋼管100の内周面100bに減肉部Dが存在する場合、反射伝搬横波TW2は、減肉部Dで反射するため、上述と同様に二次元画像上の減肉部Dに対応する対応部dで縞模様に変化が生じる。一方、表面伝搬横波TW1は、減肉部Dの影響を受けないため、伝搬時間は健全な鋼管と同じである。よって、表面伝搬横波TW1は外面100aの減肉情報を有し、反射伝搬横波TW2は内外面100a,100b双方の減肉情報を有する。従って、二次元画像上で表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2双方の縞模様の変化を観察することで、減肉部Dが鋼管100の表裏いずれに存在するかを容易に識別することができ、減肉部Dの程度を評価することもできる。
【0035】
検査にあたっては、まず、位置検出器5を取り付けた送信子2及び受信子3を鋼管100の外周面100aに隠蔽部101を挟んで対向して載置する。次に、送信子2と受信子3との探触子間距離を所定の値に設定して、例えば軸方向Y方向へ走査する。鋼管100の肉厚部分を伝搬した超音波を受信子3で受信すると共に、その受信信号を信号処理部46及びCPU41を介して二次元画像を生成し、表示部45に表示する。そして、二次元画像上における表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2の縞模様の変化により隠蔽部101における減肉部Dを評価する。
【0036】
また、あらかじめ、送信子2と受信子3との探触子間距離を測定すると共にその距離を横波の音速で除した値を求め、その値を基準伝搬時間とする。そして、上述の走査により、伝搬時間を求めると共に基準伝搬時間との差を求めて、減肉深さtを求めることも可能である。また、反射伝搬横波TW2は、内外面100a,100b双方の減肉値が加算されているので、反射伝搬横波TW2の減肉値から表面伝搬横波TW1の減肉値を除くことで、内周面100bのみの減肉深さを求めることも可能である。
【0037】
図8に実機トラニオンにおける二次元画像の一例を示す。同図の例では、トラニオンに相当する部分において、反射伝搬横波TW2が減衰しており明瞭に縞模様の変化が表れていないが、表面伝搬横波TW1により減肉部Dの存在を確認できる。このように、表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2を同時に発生させることで、容易且つ確実に減肉を検出することができる。また、二次元画像から減肉深さtを求めることも可能である。
【0038】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において、上記第一実施形態と同様の部材には同一の符号を付すものとする。
上記第一実施形態では、送信子2と受信子3とを被検査対象部101を挟んで鋼管100の周方向Xに沿って配置し、鋼管100の外周面100aでの反射を繰り返す表面反射横波TWaを表面に沿って伝搬する表面伝搬横波TW1とした。しかし、送信子2及び受信子3の配置は、周方向Xに限らず、例えば、軸方向Yに沿って配置しても構わない。そして、表面伝搬横波TW1は、鋼管100の外周面100aでの反射を繰り返す表面反射横波TWaを利用する横波に限られるものではない。
【0039】
図9に示すように、送信子2及び受信子3を軸方向Yに沿った配置では、上記第一実施形態と比べ、先の表面反射横波TWaの発生は弱くなると考えられる。しかし、例えば屈折角の調整等により、送信子3から表面100aに沿って伝搬する横波を発生させるとよい。図10に軸方向Yに沿った配置した場合の二次元画像の一例を示す。同図に示すように、減肉部Dに対応する対応部dにおいて、表面伝搬横波TW1の縞模様は下方へ凸状に変形すると共に反射伝搬横波TW2の縞模様は上方へ凸状に変形しており、減肉部Dの存在が確認できる。さらに、平板部材であっても同様に被検査体100の表面100aに沿って伝搬する横波を発生させることで検査可能である。但し、被検査体の表面のみで反射し伝搬する表面伝搬横波TW1を利用する上記第一実施形態が、被検査体の表面で細かく反射を繰り返することで表面形状に沿うように伝搬するので、表面形状による減衰の抑制でき、明瞭な受信信号を得ることができる点で、第二実施形態より優れている。
【0040】
最後に、他の実施形態の可能性について言及する。
上記各実施形態において、減肉等として減肉部Dを例に説明した。しかし、減肉等とは、腐食や凹み等によって被検査体100の肉厚が健全な被検査体の肉厚に比べ減少したものの他、増加したものも含まれる。また、被検査体100の肉厚の変化の他、被検査体100の肉厚の変化なしで変形したものも含まれる。肉厚の変化や変形は、超音波の伝搬時間の変化に影響を与えることが考えられ、二次元画像により上記各実施形態と同様に検出可能である。
【0041】
上記各実施形態において、被検査体として鋼管100を例に説明した。しかし、被検査体100は配管等の円筒形状体に限られず、一定の曲率を有する容器、エルボーや湾曲した板状部材であってもよい。なお、上記各実施形態において、被検査体の表面を鋼管100の外周面100aとし、被検査体の裏面を内周面100bとして説明した。しかし、表面及び裏面とは、外側面、内側面に限られるものではない。表面とは、送信子2及び受信子3を載置し走査する探傷面であり、裏面とはその探傷面に対向する面を含むものである。
【0042】
上記各実施形態において、検査対象部として鋼管100に溶接された他の部材としてのトラニオン102により隠蔽された隠蔽部101とした。しかし、検査対象部101は隠蔽部に限られるものではなく、図11,12に示す如く、例えば4B配管や6B配管に形成された減肉も検出可能である。また、他の部材102もトラニオン102に限られるものではなく、例えば配管に溶接固定されるダミーサポートであってもよく、図13に示す如き架台や、ハンガーやサポート等であってもよい。これら配管支持構造体により隠蔽された部分の検査が可能である。
【0043】
上記第一実施形態において、斜角探触子10の屈折角θを70°とした。しかし、屈折角は上記数値に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、上記実施形態の如き被検査体が鋼管である場合には、鋼管100の曲率に応じて設定しても構わない。すなわち、表面伝搬横波TW1及び反射伝搬横波TW2の双方を同時に伝搬させ、受信することが可能な角度であればよい。
【0044】
上記実施形態において、楔12は曲率に応じて加工したが、これに限られるものではなく、平坦であってもよい。係る場合、楔12と外周面100aとの接触部分は少なくなるが、横波は上述の如く拡がりをもって伝搬する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、配管や容器又は板材等に発生する減肉等を検出する超音波検査方法及び検査装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:超音波検査装置、2:送信子、3:受信子、4:探傷器、5:位置検出器、10:斜角探触子、11:振動子、12:楔、12a:外面、41:CPU、42:送信部、43:受信部、44:位置検出部、45:表示部、46:信号処理部、100:鋼管(被検査体)、100a:外周面(曲面、表面、探傷面)、100b:内周面(裏面)、101:隠蔽部(検査対象部)、102:トラニオン(他の部材)、103:溶接部、104:補強板、A:中心軸、D,D1,D2:減肉部(減肉等)、d,d1,d2:対応部、H:法線、LW:縦波、P:入射点、S1,S2,S3:信号、TW:横波、TWa:表面反射横波、TW1:表面伝搬横波、TW2:反射伝搬横波、X:周方向(湾曲方向)、Y:軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象部を跨いで送信子及び受信子を被検査体の表面に配置し、前記送信子から前記被検査体へ超音波を送信すると共に前記被検査体を伝搬した超音波を前記受信子で受信することにより前記検査対象部の減肉等を検査する超音波検査方法であって、
前記送信子は、前記被検査体の表面に沿うように伝搬する横波(以下、「表面伝搬横波」とする)及び前記被検査体の表面及び裏面の間で反射を繰り返して伝搬する横波(以下、「反射伝搬横波」とする)を発生させるものであり、
前記受信子及び送信子を前記被検査体の表面に沿って移動させ、
前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波の受信強度を送信子及び受信子の走査位置及び受信時間を軸とする二次元画像に表示させ、
前記減肉等による前記表面伝搬横波及び/又は前記反射伝搬横波の受信時間の変化として表示される前記二次元画像の変化により前記検査対象部の減肉等を検査する超音波検査方法。
【請求項2】
前記減肉等の対応部における前記二次元画像の変化は、前記減肉等の対応部における前記二次元画像上で前記表面伝搬横波の受信時間が増加する方向へ変形するものである請求項1記載の超音波検査方法。
【請求項3】
前記減肉等の対応部における前記二次元画像の変化が、前記減肉等の対応部における前記二次元画像上で前記反射伝搬横波の受信時間が減少する方向へ変形するものである請求項1又は2記載の超音波検査方法。
【請求項4】
前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波は、SV波である請求項1〜3のいずれかに記載の超音波検査方法。
【請求項5】
前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波の周波数は、0.5MHz以上5MHz以下である請求項1〜4のいずれかに記載の超音波検査方法。
【請求項6】
前記検査対象部は、他の部材により前記被検査体の表面が隠蔽された隠蔽部である請求項1〜5のいずれかに記載の超音波検査方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の超音波検査方法に用いられる超音波検査装置であって、
前記送信子は、前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波を発生させるものであり、
前記受信子及び送信子を前記被検査体の表面に沿って移動させ、
前記表面伝搬横波及び前記反射伝搬横波の受信強度を送信子及び受信子の走査位置及び受信時間を軸とする二次元画像に表示させ、
前記減肉等による前記表面伝搬横波及び/又は前記反射伝搬横波の受信時間の変化として表示される前記二次元画像の変化により前記検査対象部の減肉等を検査する超音波検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−141211(P2012−141211A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294124(P2010−294124)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000235532)非破壊検査株式会社 (49)
【Fターム(参考)】