説明

超音波殺菌装置

【課題】コストを低くすることができ、被処理物を効果的に殺菌することができるようにする。
【解決手段】超音波伝播媒体を収容する処理槽31と、処理槽31内に配設され、被処理物を支持する支持体43と、処理槽31内に配設され、超音波振動子93を備えた振動子ユニットと、超音波振動子93を駆動し、超音波を発生させる超音波振動子駆動回路と、支持体43及び振動子ユニットのうちの少なくとも一方を、両者間の距離を一定にして移動させる移動機構57と、超音波の発生と共に生成されるヒドロキシルラジカルの生成量によって規定される所定の殺菌条件を設定するための操作部とを有する。被処理物において超音波の照射むらが生じるのを抑制することができるので、被処理物の殺菌の効率を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌性のある水溶液に被処理物、例えば、食品を浸漬させ、超音波を発生させ、食品に照射することによって、食品の処理、すなわち、殺菌を行うようにした超音波殺菌装置が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−333842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の超音波殺菌装置においては、殺菌性のある水溶液を使用する必要があるのでコストが高くなってしまうだけでなく、食品において超音波の照射むらが生じるので、食品を効果的に殺菌することができない。
【0004】
本発明は、前記従来の超音波殺菌装置の問題点を解決して、コストを低くすることができ、被処理物を効果的に殺菌することができる超音波殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の超音波殺菌装置においては、超音波伝播媒体を収容する処理槽と、該処理槽内に配設され、被処理物を支持する支持体と、前記処理槽内に配設され、超音波振動子を備えた振動子ユニットと、前記超音波振動子を駆動し、超音波を発生させる超音波振動子駆動回路と、前記支持体及び振動子ユニットのうちの少なくとも一方を、両者間の距離を一定にして移動させる移動機構と、前記超音波の発生と共に生成されるヒドロキシルラジカルの生成量によって規定される所定の殺菌条件を設定するための操作部とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、超音波殺菌装置においては、超音波伝播媒体を収容する処理槽と、該処理槽内に配設され、被処理物を支持する支持体と、前記処理槽内に配設され、超音波振動子を備えた振動子ユニットと、前記超音波振動子を駆動し、超音波を発生させる超音波振動子駆動回路と、前記支持体及び振動子ユニットのうちの少なくとも一方を、両者間の距離を一定にして移動させる移動機構と、前記超音波の発生と共に生成されるヒドロキシルラジカルの生成量によって規定される所定の殺菌条件を設定するための操作部とを有する。
【0007】
この場合、操作部を操作することによって、超音波を発生させたときに生成されるヒドロキシルラジカルの生成量により規定される所定の殺菌条件が設定されるので、被処理物に対する殺菌効果を顕著に向上させることができる。
【0008】
また、被処理物において超音波の照射むらが生じるのを抑制することができるので、被処理物の殺菌の効率を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の左側面図、図2は本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の平面図、図3は本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の正面図である。なお、図1〜3は、いずれも、透視図で描かれている。
【0011】
図において、11は超音波殺菌装置であり、該超音波殺菌装置11は、超音波殺菌装置11の本体、すなわち、装置本体12、及び該装置本体12の上部を選択的に被う蓋(ふた)部材13を備える。そして、前記装置本体12は、正面パネル21、背面パネル22、左側面パネル23、右側面パネル24、上面パネル25及び下面パネル26を備え、前記蓋部材13は、上面パネル25に対してヒンジ14によって揺動自在に支持され、上面に取手15が取り付けられる。なお、前記ヒンジ14は超音波殺菌装置11を正面から見て蓋部材13の右縁に、取手15は蓋部材13の左縁の中央に配設される。また、正面パネル21の上縁の近傍には、傾斜させられたテーパ面sa1が形成され、該テーパ面sa1に、超音波殺菌装置11を操作するための操作部17が形成される。該操作部17は表示部としての機能を兼ね備え、所定の情報を表示する。
【0012】
前記超音波殺菌装置11は、床面fm上を移動することができるように、前記下面パネル26にキャスタ16が取り付けられる。
【0013】
前記装置本体12は、上面が開放された所定の形状、本実施の形態においては、箱状の形状を有する処理槽31を備え、該処理槽31内に、超音波を伝播するための媒体、すなわち、超音波伝播媒体としての水が収容される。また、前記蓋部材13を回動させることによって、処理槽31を開閉することができる。該処理槽31は、ステンレス鋼、樹脂等の材料から成り、前壁35、後壁36、左側壁37、右側壁38及び底壁39を備える。
【0014】
前記処理槽31内には、上面が開放された所定の形状、本実施の形態においては、箱状の形状を有する支持体43が、前記上面パネル25に懸架された状態で、かつ、装置本体12に対して着脱自在に配設され、前記支持体43によって被処理物としての食品51が支持され、処理槽31内において水に浸漬させられる。なお、前記支持体43の上縁には、支持体43の外側に向けて支持体保持部材としてのフランジfgが形成され、該フランジfgによって前記支持体43が上面パネル25に懸架させられる。なお、処理槽31内に支持体保持部材として枠組等の図示されない台を配設し、該台の上に前記支持体43を載置することもできる。
【0015】
本実施の形態においては、被処理物として食品51を殺菌処理するようになっている。該食品51には、生で食する、野菜(カット野菜を含む)、魚介類等の生鮮食品のほかに、調理された調理食品、レトルト食品等が含まれる。なお、レトルト食品には、特に、収容される食品が水分を有するか、パック内に食品と共に水分が収容されるものが含まれる。
【0016】
また、被処理物として、所定の容器に収容された水を殺菌処理したり、パック内に収容された血液、薬液等の医療品を殺菌処理することができる。
【0017】
前記支持体43は、ステンレス鋼、樹脂等の材料から成り、前支持部44、後支持部45、左支持部46、右支持部47及び下支持部48を備え、支持体43内外を連通させた状態で食品51を支持する。この場合、支持体43内外で水が自由に移動することができるように、かつ、支持体43内において超音波が水中を十分に伝播することができるように、支持体43は、例えば、棒体を籠状に組み付けることによって形成される。なお、食品51を支持することができる範囲で、支持体43の目(細目)を粗くしたり、支持体43を平行な棒状体によって形成したりすることができる。また、支持体43を袋によって形成し、フック等のような係止部材によって装置本体12に係合させることができる。
【0018】
前記処理槽31内の所定の箇所には、処理槽31内に収容される水の液面、すなわち、水位を検出する液面検出部としての水位センサ53が配設される。該水位センサ53は、棒状の案内部材54、及び該案内部材54に沿って移動自在に配設され、水位が変化するのに伴って上下方向に移動するフロート55を備える。そして、処理槽31内に十分な量の水が収容されると、フロート55は上方に移動し、あらかじめ設定された位置に置かれ、案内部材54に配設された図示されないスイッチがオフにされ、処理槽31内の水が不足すると、フロート55は前記設定位置より下方に移動し、前記スイッチがオンにされる。
【0019】
ところで、前記食品51は、支持体43によって、処理槽31内の高さ方向においてあらかじめ設定された位置に、完全に水に浸漬されるように置かれ、下方から超音波が照射される。そのために、処理槽31内に超音波照射装置56が水平に移動自在に配設され、上面パネル25上に配設された移動機構57を作動させることによって、超音波照射装置56を矢印A方向(前後方向)に移動させることができる。
【0020】
前記超音波照射装置56は、底壁39に対して平行に、かつ、底壁39との間に所定の隙間を形成して移動自在に配設され、超音波振動子93が搭載された超音波発生ユニット58、及び該超音波発生ユニット58と移動機構57とを連結する連結体ユニット59を備える。
【0021】
前記超音波発生ユニット58は、一端(図3において右端)において、連結体ユニット59の下端と連結されることによって支持され、他端(図3において左端)において、回転自在に配設された回転体としての車輪61によって底壁39に対して支持され、車輪61を回転させることによって処理槽31内を矢印A方向に移動させられる。
【0022】
また、前記連結体ユニット59は、処理槽31内において、底壁39に対して垂直方向に延びる下連結体64、及び該下連結体64に対して相対的に、かつ、上下方向に移動自在に配設された上連結体65を備える。そして、該上連結体65は、処理槽31内において、底壁39に対して垂直方向に延びる垂直部67、及び該垂直部67の上端において垂直部67と直角の方向に、かつ、処理槽31から外方に向けて延びる水平部68を備え、該水平部68の先端が移動機構57と連結される。
【0023】
前記下連結体64に対して上連結体65を移動自在にするために、下連結体64の上端部と上連結体65の下端部とが、摺動自在にオーバラップさせられ、前記下連結体64の上端部に上下方向にスリットSLが形成され、前記上連結体65の下端部に、スリットSLを貫通させて留め部材としての図示されないねじ部材が取り付けられる。したがって、該ねじ部材を緩め、車輪61を底壁39上に置いた状態で下連結体64に対して上連結体65を移動させ、ねじ部材を締め付けることによって、下連結体64及び上連結体65の位置決めを行うことができる。
【0024】
また、前記移動機構57は、上面パネル25に取り付けられた移動用の駆動部としてのモータ71、及び運動方向変換部としてのボールねじ72を備え、該ボールねじ72は、前記モータ71の出力軸に取り付けられた第1の変換要素としてのボールねじ軸73、及び該ボールねじ軸73と螺(ら)合させられる第2の変換要素としてのボールナット74を備える。なお、モータ71としてステッピングモータを使用することができる。
【0025】
そして、前記ボールねじ軸73は上面パネル25上において図示されない軸受けによって回転自在に支持され、ボールナット74は水平部68に固定される。したがって、前記モータ71を駆動してボールねじ軸73を回転させると、ボールねじ72によってボールねじ軸73の回転運動が直進運動に変換され、ボールナット74が進退させられ、それに伴って、超音波照射装置56が矢印A方向に移動させられる。
【0026】
なお、70は、処理槽31内の底壁39の近傍に配設され、処理槽31内の水の温度を検出する温度検出部としての水温センサ、76は上面パネル25上において移動機構57を被うように取り付けられたカバー、77は超音波発生ユニット58に電力を供給するための配線、モータ71を駆動するための配線、超音波照射装置56を矢印A方向に移動させたときに、前後の移動限に超音波照射装置56が到達したことを検出するための位置検出部としての図示されない位置センサのセンサ出力を図示されない制御部に送るための配線等を通すための穴である。
【0027】
次に、前記構成の超音波発生ユニット58について説明する。
【0028】
図4は本発明の第1の実施の形態における超音波発生ユニットの平面図、図5は本発明の第1の実施の形態における超音波発生ユニットの側面図、図6は本発明の第1の実施の形態における反射部材の正面図、図7は本発明の第1の実施の形態における反射部材の側面図、図8は本発明の第1の実施の形態における反射部材の反射部の斜視図、図9は本発明の第1の実施の形態における反射部材への超音波の入射角を示す図である。
【0029】
図において、58は超音波発生ユニットであり、該超音波発生ユニット58は、互いに対向する位置に、かつ、平行に配設された一対のブロック状の振動子ユニット81、82、該各振動子ユニット81、82を傾斜させて支持するプレート状の支持部材83、前記振動子ユニット81、82に取り付けられた複数の反射部材95、前記振動子ユニット81、82の上方に、水平に配設されたカバー部材84、前記支持部材83の裏面において、各振動子ユニット81、82に対して着脱自在に取り付けられるコネクタ85、86等を備える。
【0030】
前記支持部材83は、ステンレス鋼から成る矩(く)形の形状を有するプレートを曲折することによって形成され、中央の水平部87、及び該水平部87の両縁から外方に向けて、斜め上方に延びる傾斜部88、89を備え、前記振動子ユニット81、82が、それぞれ傾斜部88、89の取付面に取り付けられる。したがって、前記振動子ユニット81、82は、支持部材83に取り付けた状態で、外方に向けて、かつ、斜め上方に向けて傾斜させて配設される。
【0031】
前記各振動子ユニット81、82は、矩形の形状を有するケース91を備え、該ケース91はケース本体97及び裏板98から成り、前記ケース本体97の表側の面に、円形の形状を有する複数の、本実施の形態においては、5個の穴100が形成され、該各穴100内に超音波振動子93が1個ずつ収容され、取り付けられる。なお、各超音波振動子93は、例えば、セラミック振動子等によって形成される。
【0032】
ところで、本実施の形態において、超音波振動子93が処理槽31内に置かれるので、超音波振動子93を駆動することによって発生させられた超音波は、水を照射するとともに、水中を伝播し、食品51を照射するようになっている。
【0033】
このとき、超音波によって照射された部分の水は分解され、ヒドロキシルラジカル及び水素原子が生成される。また、超音波によって照射された食品51内の水分が、同様に、分解され、ヒドロキシルラジカル及び水素原子が生成される。
【0034】
その結果、水に浸漬された食品51において、食品51の周囲及び食品51内で生成されたヒドロキシルラジカルによって、病原性又は有害性を有する糸状菌、細菌、ウイルス等の微生物が十分に酸化され、分解されるので、食品51を十分に殺菌することができる。
【0035】
しかも、殺菌性のある水溶液を使用する必要がないので、超音波殺菌装置11のコストを低くすることができる。
【0036】
なお、前記微生物には、大腸菌(O−157等を含む)、大腸菌群、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌、ノロウイルス、インフルエンザウイルス、コクサッキ−ウイルス、肝炎ウイルス等が含まれる。
【0037】
ところで、超音波振動子93を駆動すると、超音波振動子93の表面側だけでなく、裏面側においても超音波が発生させられる。そして、超音波振動子93の裏面側に水があると、裏面側において発生させられた超音波が水中を処理槽31の底壁39に向けて伝播するので、食品51における超音波の照射エネルギーがその分小さくなってしまう。また、底壁39で反射した超音波が、前壁35、後壁36、左側壁37、右側壁38等において反射した後、上方に向けて水中を伝播することになるので、超音波振動子93の表面側で発生させられた超音波と超音波振動子93の裏面側で発生させられた超音波とが干渉してしまう。その結果、超音波が干渉した箇所でヒドロシキルラジカルが生成されなくなってしまう。
【0038】
そこで、本実施の形態においては、各超音波振動子93の裏面側に、水が進入するのが阻止された密封空間を形成し、該密封空間内に、空気を満たすことによって空気層を形成するようにしている。
【0039】
そのために、前記ケース本体97の裏側の面に開口させて縦長の凹部101が形成され、前記穴100と凹部101とが穴部103によって連通させられる。そして、ボルトbt1によって裏板98がシール部材108を介してケース本体97に取り付けられる。
【0040】
また、超音波振動子93は、外周縁が、シール部材としての、かつ、保持部材としての環状のゴムパッキン92によって包囲され、保持された状態で、前記穴100内にセットされる。そして、環状の押圧部材94が、ゴムパッキン92の外周縁に押し付けられ、ボルトbt2によってケース本体97に固定される。
【0041】
したがって、前記超音波振動子93の裏面側に、前記凹部101及び穴部103から成り、前記シール部材108及びゴムパッキン92によってシールされた密封空間を形成することができる。この場合、密封空間内に満たされた空気によって超音波が伝播するのを阻止するので、表面側に発生させられた超音波だけが水中を伝播することになる。したがって、食品51における超音波の照射エネルギーを大きくすることができる。また、超音波振動子93の表面側で発生させられた超音波と超音波振動子93の裏面側で発生させられた超音波とが干渉するのを防止することができるので、ヒドロシキルラジカルを十分に生成させることができる。
【0042】
なお、前記密封空間によって、超音波が伝播されない空間、すなわち、超音波非伝播空間が形成される。また、前記密封空間を真空にすることによって、超音波非伝播空間を形成することができる。さらに、各超音波振動子93を駆動するための配線を、前記密封空間を貫通させて、コネクタ85、86と接続することができる。また、本実施の形態においては、各ケース本体97の裏側の面に、縦長の凹部101が形成されるようになっているが、各超音波振動子93に対応させて円形の形状を有する5個の凹部を形成することができる。
【0043】
そして、前記ケース91に、超音波振動子93によって発生させられた超音波を反射する5個の反射部材95が取り付けられる。該反射部材95は、金属、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等から成る矩形の形状を有するプレートを曲折することによって形成され、各超音波振動子93に対応させて配設され、ボルトbt3によってケース本体97に固定される。
【0044】
前記反射部材95は、ケース本体97に取り付けるための取付部111、及び該取付部111に対して傾斜させて形成された反射部112を有し、反射部材95の両縁の取付部111と反射部112との間に、くびれ部121が形成される。また、前記取付部111には、ボルトbt3を貫通させるための貫通穴122が形成される。なお、前記反射部112は、伝播される範囲の全体で超音波が反射されるように設定される。本実施の形態においては、各超音波振動子93ごとに1個の反射部材95が配設されるようになっているが、複数の超音波振動子93に対して共通の反射部材を配設することができる。
【0045】
前記取付部111をケース本体97に固定した状態で、反射部112は、振動子ユニット81、82より内方に向けて、斜め上方に延びる。そして、超音波振動子93を駆動することによって発生させられた超音波は、水中を伝播し、貫通穴122において反射し、反射した超音波(反射波)は、垂直の方向に向きが変えられ、水中を上方に伝播し、食品51を照射する。
【0046】
また、前記カバー部材84は、各超音波振動子93に対応させて、かつ、各反射部材95に対応させて形成された10個の円形の形状を有する開口115を備え、該開口115の直径は、反射された超音波がカバー部材84によって干渉されることなく伝播するように設定される。
【0047】
ところで、超音波は、周波数が高くなると指向性が強くなるので、殺菌処理に必要なヒドロキシルラジカルを生成することができる範囲、すなわち、超音波の照射される範囲の面積が、超音波振動子93自体の面積より小さくなる。例えば、直径が26〔mm〕であり、かつ、周波数が1.6〔MHz〕の超音波振動子93を使用すると、直径が約8〔mm〕以下の範囲がヒドロキシルラジカルを生成するのに有効になり、直径が約8〔mm〕を超える範囲では、ヒドロキシルラジカルを生成することができなくなってしまう。したがって、食品51のサイズが大きい場合には、1個の超音波振動子93を使用しただけでは、食品51の全体を殺菌することができなくなってしまう。
【0048】
そこで、本実施の形態においては、前述されたように、超音波発生ユニット58に10個の超音波振動子93を配列し、かつ、超音波照射装置56を矢印A方向に移動させることによって、超音波振動子93を駆動することにより発生させられた超音波を食品51の全体にわたって照射するようにしている。
【0049】
なお、10個の超音波振動子93によって超音波を発生させたときに、ヒドロキシルラジカルの生成に有効な範囲が食品51の全体に及ぶように、高さ方向における食品51及び支持体43の位置が設定される。食品51が適正な位置に置かれず、超音波振動子93と食品51との距離が短くなると、各超音波振動子93によるヒドロキシルラジカルの生成に有効な範囲が狭くなり、各範囲間に隙間が形成されてしまい、超音波振動子93と食品51との距離が長くなると、ヒドロキシルラジカルの生成に有効な範囲が広くなるが、十分な量のヒドロキシルラジカルを生成することができなくなってしまう。
【0050】
本実施の形態において、前記超音波照射装置56は、揺動することなく、底壁39と平行に移動させられるので、超音波照射装置56の移動に伴って、高さ方向における超音波振動子93の位置は変化せず、一定になる。したがって、超音波照射装置56と支持体43との距離を一定にすることができるので、超音波振動子93と食品51との距離を一定にすることができる。また、照射の強い部分と弱い部分とが形成されることがないので、食品51において超音波の照射むらが生じるのを抑制することができる。その結果、食品51の殺菌の効率を高くすることができる。
【0051】
本実施の形態においては、支持体43が所定の位置に置かれた状態で超音波照射装置56を移動させ、超音波振動子93を移動させるようになっているが、超音波照射装置56を所定の位置に置き、支持体43を所定の位置で回転させることによって、食品51を回転させることができる。この場合、支持体43の回転に伴って、高さ方向において支持体43の位置は変化せず、一定になる。したがって、超音波照射装置56と支持体43との距離を一定にすることができるので、超音波振動子93と食品51との距離を一定にすることができる。その結果、食品51において超音波の照射むらが生じるのを一層抑制することができる。
【0052】
さらに、支持体43を所定の位置で回転させるとともに、超音波照射装置56を移動させ、超音波振動子93を移動させることができる。
【0053】
なお、前記支持体43を所定の位置で回転させるために、支持体43は回転自在に支持され、所定の箇所に回転用の移動機構が配設される。該移動機構は、移動用の駆動部としてのステッピングモータ等のモータ、該モータを駆動することによって発生させられた回転を支持体43に伝達するための歯車等の回転伝達系等を備える。
【0054】
また、本実施の形態においては、超音波振動子93を駆動することによって発生させられた超音波を、凸面の形状を有する反射面を備えた反射部112により反射させ、超音波が照射される範囲を広くするようにしている。
【0055】
すなわち、前記反射部112の反射面は、幅方向及び長手方向においてわずかに湾曲させて円形に形成され、幅方向における曲率半径が所定の範囲、本実施の形態においては、20〔mm〕以上、かつ、1000〔mm〕以下に収まるように、長手方向における曲率半径が所定の範囲、本実施の形態においては、40〔mm〕以上、かつ、2000〔mm〕以下に収まるように形成される。なお、反射面の形状は、食品51の照射面の形状に対応させて設定され、楕(だ)円形にすることができる。
【0056】
したがって、超音波は、反射した後、拡散されて伝播するので、食品51において超音波の照射むらが生じるのを抑制することができる。
【0057】
しかも、音響レンズ等を使用することなく、超音波が照射される範囲を広くすることができるので、食品51における照射エネルギーが小さくならない。
【0058】
ところで、超音波は、水中(液体中)では縦波として伝播するが、固体内では縦波及び横波として伝播する。そして、本実施の形態のように、超音波が水中を伝播し、前記反射部112(水より音速が早い媒体)に入射されると、入射角(反射面における法線と入射される超音波の成す角度)θが0〔°〕以上、かつ、19.1〔°〕未満である場合、縦波及び横波が反射部112を透過し、入射角θが19.1〔°〕以上、かつ、31.2〔°〕以下である場合、横波が反射部112内を透過し、入射角が31.2〔°〕以上の場合、縦波及び横波がいずれも透過せず、反射だけが行われる。
【0059】
そこで、本実施の形態においては、超音波が縦波及び横波のいずれも反射部112を透過せず、反射されるように、図9に示されるように、入射角θが25〔°〕以上、好ましくは、31.2〔°〕以上にされる。また、反射された超音波が水中において必要以上に広がらず、断面が円形の範囲内を伝播するように、入射角θは90〔°〕未満、好ましくは、85〔°〕以下にされる。
【0060】
次に、前記操作部17について説明する。
【0061】
図10は本発明の第1の実施の形態における操作部を示す図である。
【0062】
操作部17は、各種の操作を行うための第1の操作要素としてのボタンbj(j=1、2、…)、第2の操作要素としての電源スイッチsw1、第1の表示要素としてのLEDランプek(k=1、2、…)、第2の表示要素としてのモニタm1等を備える。操作者は、電源スイッチsw1をオンにして、ボタンbjを操作し、押下して、各種の設定を行い、LEDランプekの点灯及びモニタm1の表示によって設定内容、稼働状態等を確認することができる。
【0063】
例えば、電源スイッチsw1がオンにされると、LEDランプe1が点灯させられ、電源がオンの状態であることを表示する。また、ボタンb1はタイマ設定ボタンであり、該ボタンb1を操作することによってタイマを設定することができる。この場合、ボタンb1を繰り返し押下することによって、超音波の照射時間の設定を変更することができ、モニタm1に残り時間が表示される。また、ボタンb2は周波数切換ボタンであり、該ボタンb2を操作することによって、前記超音波振動子93によって発生させられる超音波の周波数を切り換えることができる。該周波数が切り換えられると、LEDランプe2を構成する複数のLED素子(1〜3)が選択的に点灯させられる。
【0064】
そして、ボタンb3は温度選択ボタンであり、該ボタンb3を操作することによって、処理槽31内の水の温度を設定することができる。この場合、ボタンb3を繰り返し押下することによって温度の設定を変更することができ、LEDランプe3を構成する複数のLED素子が選択的(高、中、低)に点灯させられる。
【0065】
また、ボタンb4は超音波出力選択ボタンであり、該ボタンb4を操作することによって超音波の出力を切り換えることができる。所定の出力が選択されると、LEDランプe4を構成する複数のLED素子が選択的(強、中、弱)に点灯させられる。
【0066】
そして、ボタンb5は給排水ボタンであり、該ボタンb5を操作することによって、処理槽31内への給水及び処理槽31からの排水を選択することができる。給水又は排水が選択されると、LEDランプe5を構成する複数のLED素子が選択的(給水、排水)に点灯させられる。
【0067】
また、ボタンb6は被処理物選択ボタンであり、該ボタンb6を操作することによって、被処理物を選択することができる。被処理物の種別が選択されると、LEDランプe6を構成する複数のLED素子が選択的(被処理物A〜E)に点灯させられる。
【0068】
そして、ボタンb7は、各種の設定が終了したときに、超音波殺菌装置11の運転を開始させたり、超音波殺菌装置11による殺菌処理が終了したとき、又は殺菌処理を強制的に終了するときに、超音波殺菌装置11の運転を停止させたりするためのスタート・ストップボタンである。
【0069】
さらに、LEDランプe7〜e9はアラームランプであり、LEDランプe7は、処理槽31に収容されている水が閾(しきい)値より低くなったことを、LEDランプe8は、超音波振動子93の出力が異常であることを、LEDランプe9は、蓋部材13が開かれたままになっていることを操作者に通知するために点灯させられる。また、LEDランプe10は、超音波殺菌装置11による殺菌が終了したときに点灯させられる。
【0070】
次に、前記構成の超音波殺菌装置11の制御回路について説明する。
【0071】
図11は本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の制御回路を示す図である。
【0072】
図において、131は制御部であり、該制御部131は、演算装置としての図示されないCPU、該CPUが各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM、制御用のプログラム、各種のデータが記録されたROM等を備える。前記CPUは各種のプログラム、データ等に基づいてコンピュータとして機能する。また、前記RAM、ROM等によって記録装置が構成される。なお、演算装置として、CPUに代えてMPU等を使用することもできる。そして、前記制御部131は、超音波の周波数、出力、照射時間等のほかに、水の温度、照射箇所等の殺菌条件が、自動モード又は手動モードで設定された値になるようにフィードバック制御を行う。
【0073】
また、17は操作部、132はモータ71を駆動するためのモータ駆動回路、133はセンサ回路であり、該センサ回路133は、水位センサ53、水温センサ70及び位置センサ135に接続され、水位センサ53、水温センサ70及び位置センサ135から出力された各センサ出力を読み込む。
【0074】
そして、Ci(i=1、2、…、10)は、各超音波振動子93を駆動するための超音波振動子駆動回路であり、該各超音波振動子駆動回路Ciは、コルピッツ回路から成り、1.65〔MHz〕の基本発振を行う図示されない発振回路、及び図示されないトランスを備え、制御部131の各ポートpi(i=1、2、…、10)から制御信号SG1を受けて駆動処理を行い、各超音波振動子93を所定の周波数で駆動する。前記発振回路は、各超音波振動子93に対応させて配設され、950〔kHz〕以上、かつ、2〔MHz〕以下の、制御された周波数で発振する。また、前記トランスは、各超音波振動子93に対応させて配設され、インピーダンスを調整するとともに、超音波振動子93と発振回路との間を絶縁するために配設される。
【0075】
そして、136は電源回路であり、該電源回路136は、前記制御部131、モータ駆動回路132及びセンサ回路133に5〔V〕の制御用の電圧を印加するとともに、制御部131からディジタルコントロール信号SG2を受けて、各ポートpi(i=1、2、…、10)を介して、各超音波振動子駆動回路Ciに10〔V〕以上、かつ、60〔V〕以下の、制御された駆動用の電圧を印加する。
【0076】
また、138はAM変調回路であり、該AM変調回路138は、30〔Hz〕以上、かつ、100〔Hz〕以下の周波数の信号波を発生させて超音波振動子駆動回路Ciに送り、発振回路によって発生させられた基本発振の信号を信号波によって変調する。これに伴って、各超音波振動子93における消費電力が小さくなり、超音波振動子93の駆動に伴う発熱が抑制されるとともに、超音波の振幅が変更され、食品51における超音波の照射エネルギーが変化するので、殺菌を効果的に行うことができる。
【0077】
前記操作部17には、各超音波振動子93のうちの所定の超音波振動子93だけを選択して駆動することができるように選択部材としての図示されないスイッチが配設される。例えば、食品51の寸法が小さい場合、操作者は、前記スイッチを操作することによって、超音波振動子駆動回路Ciを選択的に動作させ、所定の超音波振動子93だけを駆動することができる。したがって、消費電力をその分小さくすることができる。
【0078】
なお、前記各超音波振動子駆動回路Ciは、周波数を補正する回路、波形を補正する回路等を備えるので、超音波振動子93に安定した電圧を印加することができる。
【0079】
したがって、制御部131の図示されない超音波振動子駆動処理手段は、超音波振動子駆動処理を行い、前記各超音波振動子駆動回路Ciに制御信号SG1を送り、前記各超音波振動子93において、950〔kHz〕以上、かつ、2〔MHz〕以下の周波数の超音波を、10〔mW/cm2 〕以上、かつ、200〔W/cm2 〕以下の、制御された出力で発生させる。なお、超音波振動子93の出力を変更するために、前記超音波振動子駆動処理手段は、超音波振動子93に印加される電圧を前記出力に対応させて設定する。
【0080】
その結果、ヒドロキシルラジカルの生成量が、5,5−dimethyl−1−pyrroline−N−oxide(DMPO)を用いた電子スピン共鳴(ESR)スピントラップ法(装置)で測定した値で、0.01〔μM〕以上、かつ、100〔μM〕以下とされる。したがって、殺菌効果を顕著に向上させることができ、食品51に対する殺菌処理を良好に行うことができる。
【0081】
なお、前記超音波振動子駆動処理手段によってヒドロキシルラジカル生成処理手段が構成され、該ヒドロキシルラジカル生成処理手段は、ヒドロキシルラジカル生成処理を行い、超音波振動子93を駆動することによって前記ヒドロキシルラジカルを生成する。
【0082】
また、前記処理槽31内に収容された水の温度は0〔℃〕以上、かつ、60〔℃〕以下の、制御された値に設定される。そのために、例えば、底壁39の所定の箇所に加熱体としての図示されないヒータ、必要に応じて冷却体としての図示されないクーラ等が埋設され、水の温度が前記水温センサ70によって検出される。そして、前記制御部131の図示されない温度制御処理手段は、温度制御処理を行い、水温センサ70によって検出された温度を読み込み、前記ヒータ、クーラ等をオン・オフさせ、処理槽31内の水の温度を所定の温度にする。
【0083】
そして、前記制御部131の図示されない超音波照射装置移動処理手段は、超音波照射装置移動処理を行い、モータ71を駆動し、超音波照射装置56を前後の移動限間(図1において矢印A方向)で移動させる。すなわち、前記超音波照射装置移動処理手段は、モータ71を正方向に駆動して、超音波照射装置56を所定の方向、本実施の形態においては、前方に向けて移動させ、超音波照射装置56が一方の移動限に到達したことを位置センサ135が検出すると、モータ71を逆方向に駆動して、超音波照射装置56を他の方向、本実施の形態においては、後方に向けて移動させ、超音波照射装置56が他方の移動限に到達したことを位置センサ135が検出すると、モータ71を再び正方向に駆動する。このようにして、超音波照射装置56を前後の移動限間で移動させることができる。なお、食品51において超音波の照射むらが生じるのを抑制することができるように、超音波照射装置56の移動速度は十分に低くされる。また、超音波照射装置56を間欠的に(1〜2分ごとに)移動させることもできる。
【0084】
そして、前記処理槽31内における水位が水位センサ53によって検出されると、前記制御部131の図示されない警報処理手段は、警報処理を行い、水位センサ53によって検出された水位を読み込み、該水位が閾値より低くなると、LEDランプe7を点灯させて操作者にその旨を通知する。
【0085】
なお、前記警報処理手段は、処理槽31内の水の温度が異常に上昇すると、超音波振動子93の出力が異常であると判断し、超音波殺菌装置11の運転を停止させ、LEDランプe8を点灯させて操作者にその旨を通知する。また、警報処理手段は、蓋部材13が開かれていると、超音波殺菌装置11の運転を許可せず、LEDランプe9を点灯させて操作者にその旨を通知する。
【0086】
ところで、前記超音波殺菌装置11は、自動モード及び手動モードで運転することができるようになっている。そのために、前記操作部17にモード選択用の操作要素としての図示されないモード選択ボタンが配設される。操作者が前記モード選択ボタンを操作することによって、モードを選択すると、前記制御部131の図示されないモード設定処理手段は、モード設定処理を行い、ヒドロキシルラジカルの生成量を0.1〔μM〕以上、かつ、100〔μM〕以下に規定する殺菌条件、すなわち、被処理物に対応させてあらかじめ設定された最適な超音波の周波数、出力、照射時間、水温等を自動的に設定する自動モード、及び、操作者が前記操作部17を操作することによって、超音波の周波数、出力、照射時間、水温等を手動で設定する手動モードを設定する。そして、所定のモードが設定されると、図示されないモード設定用のLEDランプを構成する複数のLED素子が選択的に点灯させられる。
【0087】
この場合、ボタンb3を操作することによって、処理槽31内の水の温度を設定することができる。
【0088】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0089】
図12は本発明の第2の実施の形態におけるケースの断面図、図13は本発明の第2の実施の形態におけるケースの正面図、図14は本発明の第2の実施の形態におけるケースの側面図である。
【0090】
この場合、矩形の形状を有する一つのケース191に1個の超音波振動子93が収容される。そのために、前記ケース191は、ケース本体197及び裏板198から成り、前記ケース本体197の表側の面に、円形の形状を有する穴100が形成され、該穴100内に超音波振動子93が収容され、取り付けられる。
【0091】
また、前記裏板198のケース本体197と対向する面に開口させて円形の形状を有する凹部201が形成され、前記穴100と凹部201とが連通させられる。そして、ボルトbt1によって裏板198がケース本体197に取り付けられる。
【0092】
したがって、超音波振動子93の裏面側に、前記凹部201によって密封空間を形成することができる。なお、203は各超音波振動子93を駆動するための配線をコネクタ85、86と接続するための穴である。
【0093】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0094】
図15は本発明の第3の実施の形態における反射部材の側面図、図16は本発明の第3の実施の形態における反射部材の要部を示す図、図17は本発明の第3の実施の形態における反射部材の斜視図、図18は本発明の第3の実施の形態における反射部材の他の例を示す斜視図である。
【0095】
図において、295は反射部材、296は筐(きょう)体、297は該筐体296内に収容される発泡材料としての発泡スチロール、298は反射部を構成する材料、本実施の形態においては、金属プレートである。なお、金属プレート298の表面である反射面は、図17に示されるように、凸面の形状を有する。
【0096】
この場合、発泡スチロール297は多孔質構造を有し、各孔内に空気が存在するので、超音波を伝播しない。したがって、反射部材295に入射される超音波を良好に反射させることができる。
【0097】
本実施の形態においては、筐体296内に発泡スチロール297が収容されるようになっているが、筐体296内を空洞にすることができる。その場合、金属プレート298の裏側にウレタン等のシートを配設することができる。
【0098】
また、図18に示されるように、筐体296を幅方向及び長手方向に貫通させて調整部材としてのボールねじ機構301、302を配設し、該ボールねじ機構301、302を操作することによって金属プレート298を変形させ、幅方向及び長手方向の曲率半径を変更することができる。その場合、食品51の寸法及び形状に対応させて超音波が照射される範囲を変更し、食品51の全体に超音波を照射することができる。
【0099】
ところで、前記各実施の形態において、図3に示されるように、超音波発生ユニット58は、一端において、連結体ユニット59の下端と連結され、他端において、処理層31内に配設された車輪61によって底壁39に対して支持されるようになっているが、超音波発生ユニット58を、処理層31外に配設された車輪によって上面パネル25に対して支持することができる。
【0100】
そこで、超音波発生ユニット58を、処理層31外に配設された車輪によって上面パネル25に対して支持するようにした本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0101】
図19は本発明の第4の実施の形態における超音波殺菌装置の要部を示す正面図である。
【0102】
図において、56は超音波照射装置であり、該超音波照射装置56は、超音波発生ユニット58、該超音波発生ユニット58の一端において、超音波発生ユニット58と移動機構57(図3)とを連結し、超音波発生ユニット58を支持する連結体ユニット59、及び超音波発生ユニット58の他端において超音波発生ユニット58を支持する連結体ユニット60を備える。
【0103】
該連結体ユニット60は、処理層31内を垂直方向に延び、上端に逆「U」字状の形状を有する反転部352を備えた連結体350、及び前記反転部352に回転自在に配設された回転体としての車輪355を備え、前記連結体350は、下端において支持部材83の水平部87と連結される。
【0104】
したがって、前記超音波発生ユニット58は、処理層31外において、前記車輪355によって上面パネル25に対して支持され、車輪355を回転させることによって、処理層31内を移動させられる。
【0105】
なお、支持体43を処理層31内において所定の高さで支持するために、前壁35(図2)及び後壁36の内周面に、前壁35及び後壁36に沿って水平に棒状の枠体357が取り付けられ、該各枠体357によって支持体43が架設され、支持される。また、各枠体357の所定の箇所には、支持体43が左右方向に移動しないように規制部材としての切起し358、359が形成される。
【0106】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の左側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の正面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における超音波発生ユニットの平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における超音波発生ユニットの側面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における反射部材の正面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における反射部材の側面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における反射部材の反射部の斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における反射部材への超音波の入射角を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における操作部を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における超音波殺菌装置の制御回路を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態におけるケースの断面図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態におけるケースの正面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態におけるケースの側面図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態における反射部材の側面図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態における反射部材の要部を示す図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態における反射部材の斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態における反射部材の他の例を示す斜視図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態における超音波殺菌装置の要部を示す正面図である。
【符号の説明】
【0108】
11 超音波殺菌装置
17 操作部
31 処理槽
43 支持体
51 食品
57 移動機構
81、82 振動子ユニット
93 超音波振動子
Ci、C1、C2、C10 超音波振動子駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)超音波伝播媒体を収容する処理槽と、
(b)該処理槽内に配設され、被処理物を支持する支持体と、
(c)前記処理槽内に配設され、超音波振動子を備えた振動子ユニットと、
(d)前記超音波振動子を駆動し、超音波を発生させる超音波振動子駆動回路と、
(e)前記支持体及び振動子ユニットのうちの少なくとも一方を、両者間の距離を一定にして移動させる移動機構と、
(f)前記超音波の発生と共に生成されるヒドロキシルラジカルの生成量によって規定される所定の殺菌条件を設定するための操作部とを有することを特徴とする超音波殺菌装置。
【請求項2】
前記振動子ユニットに所定の角度で取り付けられた反射部材を有する請求項1に記載の超音波殺菌装置。
【請求項3】
前記振動子ユニットは超音波振動子の裏面側に形成された空気層を有する請求項1又は2に記載の超音波殺菌装置。
【請求項4】
前記反射部材は所定の曲率半径で湾曲する反射面を備える請求項2に記載の超音波殺菌装置。
【請求項5】
前記反射部材への超音波の入射角は、超音波が縦波及び横波のいずれも反射部材を透過せず、反射されるように設定される請求項2に記載の超音波殺菌装置。
【請求項6】
前記振動子ユニットは前記処理槽内において傾斜させて配設される請求項1に記載の超音波殺菌装置。
【請求項7】
0.1〔μM〕以上、かつ、100〔μM〕以下の生成量のヒドロキシルラジカルを生成するヒドロキシルラジカル生成処理手段を有する請求項1に記載の超音波殺菌装置。
【請求項8】
前記超音波伝播媒体の温度を、0〔℃〕以上、かつ、60〔℃〕以下に制御する温度制御処理手段を有する請求項1に記載の超音波殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−165586(P2009−165586A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5638(P2008−5638)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【特許番号】特許第4142735号(P4142735)
【特許公報発行日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(392005171)
【Fターム(参考)】