説明

超音波洗浄装置

【課題】薄板状またはシート状の被洗浄物の洗浄でも槽両側の振動子により定在波を発生させる調節ができ、洗浄液を励起して均一な洗浄が可能な超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄液を貯留した超音波洗浄槽10内側の両側面にお互い平行に対向する一対の振動子12を備えてこの振動子12の間に被洗浄物1を設置して超音波洗浄する超音波洗浄装置であって、超音波洗浄槽10内に延在して振動子12が対向する間を遮断するとともに内部に密閉した中空部14aを備えて両側面を薄板状の隔壁14bにより形成することでこの中空部14aを介した隔壁14bが振動子12による両側からの超音波を各々外側に反射して干渉を防止する反射板14を備え、この反射板14から両側の振動子12までの距離Lをλ/4+1/2*nにして定在波を発生させ、この定在波が発生した反射板14の両側で薄板状またはシート状の被洗浄物を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置に係り、より詳細には、洗浄液を貯留した超音波洗浄槽の両側面にお互い平行に対向する一対の振動子を備えて該振動子の間に被洗浄物を設置して超音波洗浄する超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波洗浄装置は、洗浄液を貯留した超音波洗浄槽の底面に振動子を設置して上部の液面に向かって超音波を照射することで、槽内で発生する浄物液の励起(キャビテーション)により被洗浄物を洗浄する装置がよく用いられている。しかし、このような超音波洗浄装置では、超音波洗浄槽の液深が深い場合、上部の液面付近で超音波が減衰して被洗浄物の洗浄効果が弱まるという不具合があった。そこで、従来の超音波洗浄装置には、洗浄液を貯留した超音波洗浄槽の両側面にお互い平行に対向する一対の振動子を備えて、この振動子の間に被洗浄物を設置して超音波洗浄する装置が知られている(例えば、非特許文献1及び特許文献1、2参照。)。
【非特許文献1】平塚 豊、外2名(編集者)、「最適精密洗浄技術」、株式会社テクノシステム、1990年2月12日、p.94(図4.10)
【特許文献1】特開平5−308067号公報
【特許文献2】実開昭56−20684号公報
【0003】
前者の方法による例を、図9を参照して説明する。図9は、このような超音波洗浄槽の両側面に振動子を備えた従来の超音波洗浄装置を示す構成図である。図9に示すように、従来の超音波洗浄装置は、箱状で上面を開口して凹状に形成して内部に洗浄液を貯留した超音波洗浄槽80を設け、この超音波洗浄槽80の内側または外側いずれかの両側面(図9では外側面)にお互い平行に対向する一対の振動子82を備え、この振動子82の間に被洗浄物2を設置することで超音波洗浄するように形成している。
【0004】
このような従来の超音波洗浄装置は、超音波洗浄槽80の両側面に設けた振動子82により両側から超音波を照射することで、超音波洗浄槽80に貯留した洗浄液中で周波数に応じた位置(1/2波長[λ/2]の整数[n]倍の位置)に定在波が発生し、この位置で洗浄液の励起(キャビテーション)が生じる。従って、この従来の超音波洗浄装置では、前述した定在波が発生して洗浄液が励起した汚れが良く落ちる位置、即ち、振動子82の間で減衰することなく定在波が生じる位置に合わせて被洗浄物2を設置することで、均一な洗浄が可能となる。
【0005】
このように従来の超音波洗浄装置は、超音波洗浄槽80の液深が深い装置の場合、この槽の両側面に振動子82を取り付けて両側から超音波を照射することで、槽内の底面から洗浄液の上部液面まで超音波を減衰させることなく均一に照射でき、この均一な超音波により定在波を発生させて洗浄液を励起(キャビテーション)させることで、被洗浄物2を均一に洗浄していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の超音波洗浄装置では、図9に示したように、被洗浄物2が所定の体積を有した剛体である場合には両側の振動子82から照射する超音波により定在波が発生して均一な洗浄が可能であるが、例えば、薄板状またはシート状の被洗浄物1(図2参照)である場合には透過して両側から照射した超音波がお互いに干渉して減衰してしまい定在波が発生せず洗浄液も励起しないことがあり、特に、超音波洗浄槽の大きさ等の寸法調節も困難であるため、結果的に洗浄効果が低下するという不具合があった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決し、薄板状またはシート状の被洗浄物の洗浄でも超音波洗浄槽の両側の振動子により洗浄液中に定在波を発生させる調節ができ、これにより洗浄液を励起して均一な洗浄が可能な超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題を解決するために、洗浄液を貯留した超音波洗浄槽の内側または外側いずれかの両側面にお互い平行に対向する一対の振動子を備えて該振動子の間に被洗浄物を設置して超音波洗浄する超音波洗浄装置であって、超音波洗浄槽内に延在して振動子が対向する間を遮断するとともに内部に密閉した中空部を備えて両側面を薄板状の隔壁により形成することで該中空部を介した隔壁が振動子による両側からの同じ波長または異なる波長の超音波を各々外側に反射して干渉を防止する反射板を備え、この反射板から両側の振動子までの距離Lをλ/4+1/2*n(λ:波長、n:任意の整数)にして定在波を発生させ、この定在波が発生した反射板の両側で薄板状またはシート状の被洗浄物を洗浄する。
【0009】
ここで、振動子及び反射板は、超音波洗浄槽内でいずれか一方または両方を摺動可能に設け、反射板から両側の振動子までの距離Lに各々調節可能に設けることが好ましい。この際、振動子を固定して反射板を移動可能にした場合、反射板を2つ一対に設けて両側の振動子までの距離Lに各々調節可能に設けることが好ましい。また、振動子及び反射板の他の実施例として、超音波洗浄槽の両側面に設けた振動子のいずれか一方と反射板とを摺動可能に設け、反射板から両側の振動子までの距離Lに各々調節可能に設けることが好ましい。この振動子及び反射板は、超音波洗浄槽内でお互いに対向する対向面のいずれか一方または両方を曲面によって被洗浄物に超音波を集束させる焦点を持った凹レンズ状に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上、説明したように本発明による超音波洗浄装置によれば、超音波洗浄槽の両側に対向する振動子の間を反射板が遮断するため、被洗浄物が薄板状またはシート状であっても両側から照射する超音波を反射板が反射して干渉を防止するとともに、この反射板により各々外側に反射した反射波と照射した照射波との位相を合わせて共振させる定在波の発生調節が容易になり、これによる洗浄液の励起も生じて均一な洗浄が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、添付図面を参照して本発明による超音波洗浄装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明による超音波洗浄装置の第1の実施形態を示す構成図である。また図2は、図1に示した超音波洗浄装置で洗浄する種々の被洗浄物1を示す図であり、図2(a)は薄板状の被洗浄物を、図2(b)はシート状の被洗浄物を各々示している。また、図3は、本発明による超音波洗浄装置の第2の実施形態を示す図である。また、図4は、本発明による超音波洗浄装置の第3の実施形態を示す図である。また、図5は、本発明による超音波洗浄装置の第4の実施形態を示す図である。また、図6は、本発明による超音波洗浄装置の第5の実施形態を示す図である。また、図7は、本発明による超音波洗浄装置の第6の実施形態を示す図である。また、図8は、本発明による超音波洗浄装置の第7の実施形態を示す図である。
【実施例1】
【0012】
図1に示すように、本発明による超音波洗浄装置の第1の実施形態は、図9に示した従来技術と同様に、箱状で上面を開口して凹状に形成して内部に洗浄液を貯留する超音波洗浄槽10を設け、この超音波洗浄槽10の内側または外側いずれかの両側面(図1では内側面)にお互い平行に対向する一対の振動子12を備えている。また、第1の実施形態では、図9に示した従来技術とは異なり、超音波洗浄槽10内に延在して振動子12が対向する間を遮断するとともに、内部に密閉した中空部14aを備えて両側面を薄板状の隔壁14bにより形成することでこの中空部14aを介した隔壁14bが振動子12による両側からの同じ波長または異なる波長の超音波を各々外側に反射して干渉を防止する反射板14を備えている。即ち、第1の実施形態は、超音波洗浄槽10の両側面に設けた振動子12から槽内に照射する超音波が干渉して減衰しないように、振動子12の間を反射板14により遮断し、かつ、この反射板14の両外側液中に定在波を発生させて被洗浄物1を均一に洗浄可能にしたものである。
【0013】
ここで、反射板14は、前述したように内部に密閉した中空部14aを備えて両側面を薄板状の隔壁14bにより形成し(図1参照)、例えば、ステンレス鋼(SUS)などの材質からなり内部の密閉した中空部14aを減圧して設け、一方の隔壁14bから中空部14aを介して他方の隔壁14bまで振動が伝わらない構造になっている。より詳しく説明すると、超音波洗浄槽10の両側面から振動子12により照射された超音波は、超音波洗浄槽10に貯留した洗浄液の液中を伝わって反射板14の隔壁14bに到達する。この際、隔壁14bに到達した超音波は、一部は跳ね返り(反射し)逆方向に伝播するとともに、残り一部は隔壁14bを振動させて反対側には全く伝達されない。これは超音波が水の中で非常に伝わり易くほとんど減衰せず早いスピードで伝搬するのに対し、空気中では余り良く伝わらないという性質を用いている。即ち、水と空気との著しい固有インピーダンスの違いにより水中の超音波が水面(空気)で反射して放出しないように、図1に示した超音波洗浄槽10内にも水面(空気)のように作用する中空部14aを設け、洗浄液中で両側から伝播する超音波を遮断し反射している。従って、このように超音波洗浄槽10の両側から振動子12によって放射した超音波は、この振動子12の間に設けた反射板14の中空部14aによって全て外側に反射され、お互いに干渉して減衰することを防止できる。
【0014】
そして、第1の実施形態では、超音波洗浄槽10内で反射板14を用いることにより、この反射板14から各々外側(振動子12側)に反射した反射波と、振動子12から照射される照射波との位相を合わせて共振させることによって、反射板14の外側両液中に各々定在波が発生し、薄板状またはシート状の被洗浄物1(図2参照)でも洗浄を可能にしている。ここで、超音波洗浄槽10内では、共振距離、すなわち超音波がうまく共振するような反射板14から両側の振動子12までの図1に示した距離Lを、一定の条件に調節することが最も重要になる。この場合、振動子12から照射した超音波の波長をλとし、任意の整数(1,2,3...)をnとすると、図1に示した距離Lは、λ/4+1/2*nなる式により表すことができる。尚、この距離Lは、後述する薄板状またはシート状の被洗浄物1(図2参照)を洗浄する場合の距離であって、図9に示した剛体による被洗浄物2では条件が異なってくる。
【0015】
このように形成された本発明による超音波洗浄装置の第1の実施形態は、図2に示すように、超音波洗浄槽10内で洗浄する被洗浄物1の形状によって、種々の洗浄方法が選択できる。まず、薄板状の被洗浄物1の場合は、図2(a)に示すように、超音波洗浄槽10内に洗浄液を貯留して槽内の両側面に設けた振動子12から各々反射板14に向かって超音波を照射し、この照射波と反射板14で反射した反射波との位相を合わせて共振させ、反射板14両側の液中に定在波を発生させて洗浄液の励起(キャビテーション)により洗浄する。この際、薄板状の被洗浄物1は、図示していない搬送手段により搬送され、反射板14の片側で洗浄液中に浸漬させて定在波が発生する位置で第1洗浄を行う。その後、被洗浄物1は、前述した搬送手段により反射板14の他の片側(図2(a)に示した矢印側)にバッチ式に移送して更なる定在波が発生した液中で第2洗浄を行う。
【0016】
一方、シート状に形成した被洗浄物1の場合、図2(b)に示すように、超音波洗浄槽10の反射板14を囲むように複数のローラ16を配置した移送式に設けており、この移送式のローラ16により反射板14の片側から槽内に順次挿入され、槽底部の反射板14下部を通って他の片側に移送して搬出するように形成している。この場合、シート状の被洗浄物1は、ローラ16によって常に超音波洗浄槽10の洗浄液中を送られており、この途中で定在波を発生させて洗浄液が励起した位置を通過させることで洗浄する。この際、定在波が発生する位置は反射板14の両側に各々発生するため、この2つの位置にローラ16を合わせて被洗浄物1を通過させることで第1洗浄及び第2洗浄を実行する。
【0017】
以上、詳細に説明したように、本発明による超音波洗浄装置の第1の実施形態によると、図1に示したように、超音波洗浄槽10の両側に対向する振動子12の間を反射板14により遮断するため、被洗浄物1が薄板状またはシート状であっても両側から照射する超音波を反射板14が反射して干渉を防止できるとともに、この反射板14によって各々外側に反射した反射波と照射した照射波との位相を合わせて共振させて定在波を発生させる調節(寸法調節:例えば、中空部14aの幅による距離Lの調節等)が容易になり、これによる洗浄液の励起も生じることで薄板状またはシート状の被洗浄物1でも均一に洗浄することが可能になる。
【0018】
ところで、第1の実施形態では、超音波洗浄槽10内で被洗浄物1を反射板14の両側で第1洗浄及び第2洗浄する実施例を詳細に説明したが、この各洗浄において左右の振動子12の周波数(波長)を変えることで荒い洗浄から細かい洗浄を行うことも可能である。しかし、第1の実施形態では、図1に示したように、反射板14の両側に距離Lの定められた位置に振動子12を固定するため、これに合わせて超音波洗浄槽10の大きさも決められてしまい、例えば、振動子12の周波数を変えるとそれに合わせて超音波洗浄槽10の大きさも変える必要がある。そこで、本実施の形態では、反射板または振動子を摺動可能に設けることで、共振可能な距離Lに調節できるように形成した実施形態がある。このように反射板または振動子を摺動させる種々の実施形態を、以下図3乃至7を参照して詳細に説明する。
【実施例2】
【0019】
図3に示すように、本発明による超音波洗浄装置の第2の実施形態は、超音波洗浄槽20内で振動子22及び反射板24の両方を各々摺動可能に設け、振動子22の周波数(波長λ)を変えた際に反射板24から両側の振動子22までの距離を、前述したλ/4+1/2*nの距離Lに各々調節可能に設けている。ここで、振動子22及び反射板24は、図3に示したように、超音波洗浄槽20の上部から延在する支柱28に接続され、超音波洗浄槽20の外部で図示されていない駆動源によって駆動するように設けている。従って、第2の実施形態では、反射板24の両側で振動子22の周波数を各々異なるように設定した場合、振動子22及び反射板24を自由に摺動させることで、その距離が周波数(波長λ)に基づく前述した距離Lになるように調節して定在波を発生させることができる。ここで、定在波の発生は、通常、作業者が目視、またはマイクロホンなどの音圧計により発生の有無を確認している。このように第2の実施形態によると、振動子22の間を反射板24で遮断しているため、第1実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、振動子22及び反射板24を摺動可能に設けることで、反射板24の両側で振動子22の周波数を各々異なるように設定しても、第1実施形態のように超音波洗浄槽20の大きさを変える必要がなく、距離Lになるように簡単に調節できる。
また、このような第2の実施形態において、超音波洗浄槽20内で振動子22及び反射板24の両方を摺動可能に設ける必要はなく、いずれか一方を摺動可能にすることで距離Lに調節することも可能である。
【実施例3】
【0020】
図4に示すように、本発明による超音波洗浄装置の第3の実施形態は、超音波洗浄槽30内に反射板34を固定し、この両側の振動子32のみを支柱38に接続して自由に摺動できるように設けている。従って、第3の実施形態では、反射板34の両側で振動子32の周波数を各々異なるように設定した場合、振動子32を自由に摺動させることで、その距離が周波数(波長λ)に基づく前述した距離Lになるように調節でき、これにより定在波も発生させることができる。このように第3の実施形態によると、振動子32を摺動させて距離Lに調節できるため、第2実施形態と同様の効果が得られるとともに、振動子32のみが摺動することで、第2実施形態に比べて摺動部品を削減でき、装置全体のコストも低減できる。
また、このような第3の実施形態において、摺動する振動子32を超音波洗浄槽10の両側面に固定し、この間に設けた反射板34のみを摺動可能にすることも可能である。
【実施例4】
【0021】
図5に示すように、本発明による超音波洗浄装置の第4の実施形態は、超音波洗浄槽40の内側または外側(図5では内側)の両側面に振動子42を固定し、この間を遮断する反射板44のみを支柱48に接続して自由に摺動するように設けている。この際、第4の実施形態では、第2及び第3の実施形態とは異なり、振動子42から反射板44までの距離を、反射板44を摺動させると同時に振動子42の周波数(波長λ)を適宜調整することで距離Lに近づけて定在波が発生するようにしている。即ち、超音波洗浄槽40の両側面に一対の振動子42を固定しているため、その間に設けた反射板44の摺動だけでは距離Lにいずれか片側のみ調節でき、他の片側は振動子42の周波数を調整することで距離Lに調節することになる。このような第4の実施形態によると、周波数を変えても距離Lに調節可能なため、第3の実施形態と同様の効果が得られるとともに、反射板44を1つ摺動させる構造であり第3の実施形態(振動子32を2つを摺動)に比べて、摺動させる部品が減り装置全体のコストを低減できる。
ここで、第4の実施形態は、超音波洗浄槽40の決められた大きさの中で両側に固定した振動子42の周波数と反射板44の位置とを調節して距離Lに近づけており、これは調節に時間がかかり、この振動子42を固定した状態で反射板44を2つ摺動可能に設けることで調節を容易にすることも可能である。
【実施例5】
【0022】
図6に示すように、本発明による超音波洗浄装置の第5の実施形態は、前述した振動子を固定した状態で反射板を摺動可能する場合において、この反射板52を2つ一対に設けて支柱58に接続して両側の振動子52までの距離が前述した距離Lになるように各々調節可能に設けている。このような第5の実施形態では、反射板54の両側で振動子52の周波数を各々異なるように設定した場合、2つの反射板54を各々自由に摺動させることで、両側の振動子52との距離が周波数(波長λ)に基づく前述した距離Lになるように各々調節して定在波を発生させることができる。従って、第5の実施形態によると、反射板54のみを摺動して距離Lに調節する構造のため、第4の実施形態と同様の効果が得られるとともに、反射板54を2つ設けることで周波数の調整が不要になり第4の実施形態に比べて距離Lの調節が容易になる。
一方、このような第2〜第5実施形態とは異なり、例えば、振動子と反射板とを各々1つだけ摺動可能にしても、前述した実施形態と同様の効果が得られる。
【実施例6】
【0023】
図7に示すように、本発明による超音波洗浄装置の第6の実施形態は、超音波洗浄槽60の内側両側面に設けた振動子62いずれか一方と反射板64との各々1つを支柱68に接続して摺動可能に設けている。従って、振動子62の周波数(波長λ)を変えた場合、反射板64から両側の振動子62までの距離を、前述したλ/4+1/2*nの距離Lに各々調節することが可能になる。具体的に説明すると、反射板64の両側に設けた振動子62の周波数を各々異なるように変えた場合、まず、反射板64を摺動させることで片側の固定した振動子62との距離Lを調節するとともに、その後、反射板64を固定して他方の摺動可能な振動子62を摺動させて反射板64までの距離Lを調節する。このように第6の実施形態によると、振動子62のいずれか一方と反射板64とを摺動させて距離Lを調節できるため、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、このような第1〜第6の実施形態において、図2(b)に示した移送式の装置を用いた際、送られる被洗浄物1に超音波を集束させて集中して定在波を発生させることで効果的に洗浄することも可能である。
【実施例7】
【0024】
図8に示すように、本発明による超音波洗浄装置の第7の実施形態は、図2(a)に示した移送式の第1実施形態を改良したものであり、超音波洗浄槽70内で反射板74と振動板72とのお互いに対向する対向面のいずれか一方または両方(図8では両方)を、曲面によって被洗浄物1に向かって超音波を集束させる焦点を持った凹レンズ状に形成している。尚、この凹レンズ状の反射板74及び振動板72は、図2(a)に示した第1実施形態のみに採用することに限定されるものではなく、例えば、図3乃至7に示した第2〜第6の実施形態にも採用可能である。また、図8に示したように、反射板74と振動板72との両対向面を凹レンズ状に形成した実施形態を説明したが、これに限定されるものではなく、反射板74または振動板72のいずれか一方だけに設けることも可能である。このような第7の実施形態では、図8に示したように、超音波洗浄槽70の両側面に設けた振動子72から照射した超音波が凹レンズ状の対向面によって集束されて被洗浄物1の一点に焦点として結ばれる。また、反射板74で反射された超音波は、振動子72と同様に、凹レンズ状の対向面によって集束されて被洗浄物1の一点に焦点として結ばれる。そして、振動子72からの焦点と反射板74からの焦点とは、ローラ76により搬送される被洗浄物1の表裏面で一致(図8に示した点線)し、その位置に集中して定在波が発生することで洗浄液が励起して任意の一点で集中して洗浄できる。この際、超音波が集中した一点では、被洗浄物1のシート状の幅方向に帯状(図示せず)に照射され、この帯状内に被洗浄物1を通過させることで全体が洗浄されるとともに、この移送する速度によって洗浄時間も調節できる。このように第7の実施形態によると、振動子72の間を反射板74により遮断して干渉を防止できるため、図2(b)に示した第1実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、反射板74と振動板72との対向面を凹レンズ状に設けて超音波を集束させることで図2(b)に示した第1の実施形態に比べて集中して効果的な洗浄が可能とになる。
【0025】
以上、本発明による超音波洗浄装置の実施の形態を詳細に説明したが、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、超音波洗浄槽を箱状(図1参照)に形成した実施の形態を詳細に説明したが、これに限定されるものではなく、超音波洗浄槽を円筒状または多角形状に形成することも可能である。
また、図1及び、図5乃至7に示した振動子(12、42、52、62)は超音波洗浄槽の内側に固定する実施例を詳細に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図5乃至7の点線に示したように超音波洗浄槽の外側に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による超音波洗浄装置の第1の実施形態を示す構成図。(実施例1)
【図2】図1に示した超音波洗浄装置で洗浄する種々の被洗浄物を示す図。
【図3】本発明による超音波洗浄装置の第2の実施形態を示す図。(実施例2)
【図4】本発明による超音波洗浄装置の第3の実施形態を示す図。(実施例3)
【図5】本発明による超音波洗浄装置の第4の実施形態を示す図。(実施例4)
【図6】本発明による超音波洗浄装置の第5の実施形態を示す図。(実施例5)
【図7】本発明による超音波洗浄装置の第6の実施形態を示す図。(実施例6)
【図8】本発明による超音波洗浄装置の第7の実施形態を示す図。(実施例7)
【図9】従来の超音波洗浄装置を示す構成図。
【符号の説明】
【0027】
1 被洗浄物
10 超音波洗浄槽
12 振動子
14 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を貯留した超音波洗浄槽の内側または外側いずれかの両側面にお互い平行に対向する一対の振動子を備えて該振動子の間に被洗浄物を設置して超音波洗浄する超音波洗浄装置において、
前記超音波洗浄槽内に延在して前記振動子が対向する間を遮断するとともに内部に密閉した中空部を備えて両側面を薄板状の隔壁により形成することで該中空部を介した前記隔壁が前記振動子による両側からの同じ波長または異なる波長の超音波を各々外側に反射して干渉を防止する反射板を備え、この反射板から両側の前記振動子までの距離Lをλ/4+1/2*n(λ:波長、n:任意の整数)にして定在波を発生させ、この定在波が発生した前記反射板の両側で薄板状またはシート状の被洗浄物を洗浄することを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記振動子及び反射板は、前記超音波洗浄槽内でいずれか一方または両方を摺動可能に設け、前記反射板から両側の振動子までの前記距離Lに各々調節可能に設けたことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記振動子を固定して前記反射板を移動可能にした場合、前記反射板を2つ一対に設けて両側の前記振動子までの前記距離Lに各々調節可能に設けたことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記振動子及び反射板は、前記超音波洗浄槽の両側面に設けた前記振動子のいずれか一方と前記反射板とを摺動可能に設け、前記反射板から両側の振動子までの前記距離Lに各々調節可能に設けたことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項5】
前記振動子及び反射板は、前記超音波洗浄槽内でお互いに対向する対向面のいずれか一方または両方を曲面によって前記被洗浄物に超音波を集束させる焦点を持った凹レンズ状に形成したことを特徴とする超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−7104(P2006−7104A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188140(P2004−188140)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】