説明

超音波洗浄装置

【課題】 角型振動面と接合面との接合強度を向上させ、超音波振動子と振動板との接合強度を向上させることができる超音波洗浄装置を提供すること。
【解決手段】 超音波洗浄装置100は、角型振動面111aを有する超音波振動子110と、この角型振動面111aが接合された接合領域130bgを含む接合面130bを有する振動板130とを備える。超音波振動子110の角型振動面111aと振動板130の接合領域130bgとは、スタッドボルトを用いることなく、接着剤140により接合されており、角型振動面111a及び接合領域130bgに、それぞれ所定パターンの凹溝111av,130bvが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動する振動面を有する超音波振動子と、この超音波振動子の振動面が接合された接合面、及び、超音波振動子から伝えられた超音波を放射する放射面を有する振動板とを備える超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波振動する振動面を有する超音波振動子と、この超音波振動子の振動面が接合された接合面、及び、超音波振動子から伝えられた超音波を放射する放射面を有する振動板とを備える超音波洗浄装置が知られている。例えば特許文献1に、このような超音波洗浄装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の超音波洗浄装置は、フロントマスと、リアマスと、フロントマスとリアマスとの間に配置された圧電素子及び電極板と、これらの構成部品の中央部分を貫通して締め付け固定するボルトとからなるボルト締めランジュバン型振動子(超音波振動子)を有する。このうちフロントマスは、自身の先端に超音波振動する円状の振動面(丸型振動面)を有し、その中央には雌ねじ孔が設けられている。そして、この雌ねじ孔には、接合材を介して、振動板に溶接されたスタッドボルトが螺合し、これにより、超音波振動子と振動板とが一体化されている(特許文献1の特許請求の範囲や図1〜図4及びその説明箇所等を参照)。
【0004】
また、超音波振動子の丸型振動面及びこれに接触する振動板の接触面の少なくとも一方の面には、上記螺合部分から丸型振動面の外周縁まで延びる溝が設けられている。この溝は、超音波振動子の丸型振動面と振動板の接触面とを接合する接合材の熱硬化時に、エア抜きを容易にするために形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−200995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようにスタッドボルトを用いて超音波振動子と振動板とを固定すると、振動板が撓んで、超音波振動子の丸型振動面と振動板の接触面との間に隙間が生じやすい。特に、超音波振動子の振動面を矩形状をなす角型振動面とする場合には、角型振動面の角部において振動板の接触面との間に隙間が生じやすい。このような隙間が生じると、超音波振動子から超音波を振動板に伝える部分が少なくなり、振動板の放射面から放射される超音波にムラが生じたり、超音波を振動板に伝えられないために超音波振動子が発熱するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明者は、超音波振動子の振動面を角型振動面とする場合には、角型振動面と振動板の接触面(接合面)とを、スタッドボルトを用いることなく、接着剤により接合することを考案した。しかしながら、超音波振動子の角型振動面と振動板の接触面(接合面)とを接着剤のみで接合する場合には、両者の接合強度が低下しがちになる。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、超音波振動子の振動面が角形振動面とされ、この角型振動面と振動板の接合面とが、スタッドボルトを用いることなく、接着剤により接合されてなる超音波洗浄装置において、超音波振動子と振動板との接合強度を向上させることができる超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その解決手段は、超音波振動する振動面を有する超音波振動子と、前記超音波振動子の前記振動面が接合された接合領域を含む接合面、及び、この接合面を通じて前記超音波振動子から伝えられた超音波を放射する放射面を有する振動板と、を備える超音波洗浄装置であって、前記超音波振動子の前記振動面は、矩形状をなす角型振動面であり、この角型振動面と前記振動板の前記接合面の前記接合領域とは、スタッドボルトを用いることなく、接着剤により接合されてなり、前記角型振動面及び前記接合領域の少なくともいずれかに、所定パターンの凹溝が形成されてなる超音波洗浄装置である。
【0010】
本発明の超音波洗浄装置は、超音波振動子の振動面が角型振動面である。この角型振動面と振動板の接合面の接合領域とは、スタッドボルトを用いることなく、接着剤により接合されている。しかも、角型振動面及び接合領域の少なくともいずれかに、所定パターンの凹溝が形成されている。この凹溝により、角型振動面と接合領域との接着面積が増加するので、角型振動面と接合領域との接合強度を向上させることができ、超音波振動子と振動板との接合強度を向上させることができる。
【0011】
更に、上記の超音波洗浄装置であって、前記角型振動面及び前記接合領域のうち、少なくとも前記角型振動面に、前記凹溝が形成されてなり、前記角型振動面に形成された前記凹溝は、前記角型振動面の全面に均一に分布する形態とされてなる超音波洗浄装置とすると良い。
【0012】
本発明の超音波洗浄装置では、超音波振動子の角型振動面に形成された凹溝が、角型振動面の全面に均一に分布する形態とされている。このため、角型振動面の全面で均一に接着面積を増加させることができるので、角型振動面と接合領域との接合強度を角型振動面内で均一に向上させることができ、超音波振動子と振動板とをより均一に接合できる。
【0013】
更に、上記の超音波洗浄装置であって、前記角型振動面に形成された前記凹溝は、前記角型振動面の外周縁まで届く形態とされてなる超音波洗浄装置とすると良い。
【0014】
超音波振動子の角型振動面と振動板の接合領域との接着にあたっては、接着剤中に気泡を巻き込むことがある。すると、この気泡部分では、超音波が伝わらないため好ましくない。また、超音波振動子と振動板との接着強度が低下するおそれもある。
これに対して、本発明の超音波洗浄装置では、超音波振動子の角型振動面に形成された凹溝が、角型振動面の外周縁まで届く形態とされている。このため、接着剤を硬化させる際に、気泡を、凹溝を通じて角型振動面の外周縁から外部に排出できる。かくして、角型振動面と接合領域との接着をより確実なものとし、超音波振動子と振動板との接合の信頼性を高くすることができる。
【0015】
更に、上記の超音波洗浄装置であって、前記角型振動面に形成された前記凹溝は、前記角型振動面の外周縁まで届く格子状とされてなる超音波洗浄装置とすると良い。
【0016】
本発明の超音波洗浄装置では、超音波振動子の角型振動面に形成された凹溝が、角型振動面の外周縁まで届く格子状とされている。このように格子状の凹溝とすると、角型振動面の全面に凹溝を均一に分布させることができる上、凹溝の形成が容易である。
【0017】
更に、上記のいずれかに記載の超音波洗浄装置であって、前記角型振動面及び前記接合領域のうち、少なくとも前記接合領域に、前記凹溝が形成されてなり、前記接合領域に形成された前記凹溝は、前記接合領域の全面に均一に分布する形態とされてなる超音波洗浄装置とすると良い。
【0018】
本発明の超音波洗浄装置では、振動板の接合領域に形成された凹溝が、接合領域の全面に均一に分布する形態とされている。このため、接合領域の全面で均一に接着面積を増加させることができるので、角型振動面と接合領域との接合強度を接合領域内で均一に向上させることができ、超音波振動子と振動板とをより均一に接合できる。
【0019】
更に、上記の超音波洗浄装置であって、前記接合領域に形成された前記凹溝は、前記接合領域の外周縁まで届く形態とされてなる超音波洗浄装置とすると良い。
【0020】
前述のように、超音波振動子の角型振動面と振動板の接合領域との接着にあたっては、接着剤中に気泡を巻き込むことがある。すると、この気泡部分では、超音波が伝わらないため好ましくない。また、超音波振動子と振動板との接着強度が低下するおそれもある。
これに対して、本発明の超音波洗浄装置では、振動板の接合領域に形成された凹溝が、接合領域の外周縁まで届く形態とされている。このため、接着剤を硬化させる際に、気泡を、凹溝を通じて接合領域の外周縁から外部に排出できる。かくして、角型振動面と接合領域との接着をより確実なものとし、超音波振動子と振動板との接合の信頼性を高くすることができる。
【0021】
更に、上記の超音波洗浄装置であって、前記接合領域に形成された前記凹溝は、前記接合領域の外周縁まで届く格子状とされてなる超音波洗浄装置とすると良い。
【0022】
本発明の超音波洗浄装置では、振動板の接合領域に形成された凹溝が、接合領域の外周縁まで届く格子状とされている。このように格子状とすることで、凹溝の形成が容易になると共に、角型振動面と接合領域との接合強度を十分に向上させることができ、超音波振動子と振動板との接合強度を十分に向上させることができる。
【0023】
更に、上記のいずれかに記載の超音波洗浄装置であって、前記角型振動面及び前記接合領域に、それぞれ前記凹溝が形成されてなる超音波洗浄装置とすると良い。
【0024】
本発明の超音波洗浄装置では、超音波振動子の角型振動面と振動板の接合領域に、それぞれ凹溝が形成されている。このため、角型振動面と接合領域との接着面積がより一層大きくなるため、角型振動面と接合領域との接合強度をより一層向上させ、超音波振動子と振動板との接合強度をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態1に係る超音波洗浄装置の側面図である。
【図2】実施形態1に係り、超音波振動子の斜視図である。
【図3】実施形態1に係り、振動板の斜視図である。
【図4】実施形態2に係り、超音波振動子の斜視図である。
【図5】実施形態3に係り、振動板の斜視図である。
【図6】実施形態4に係り、振動板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態1の超音波洗浄装置100を示す。また、図2に、超音波洗浄装置100を構成する超音波振動子110を示し、図3に、振動板130を示す。本実施形態1の超音波洗浄装置100は、超音波振動子110と、この超音波振動子110が接合(接着)された振動板130から構成されている。
【0027】
このうち超音波振動子110は、フロントマス111と、リアマス115と、2つの圧電素子(第1圧電素子121及び第2圧電素子122)と、2つの電極板(第1電極板125及び第2電極板126)と、ボルト129及び六角ナット128等から構成されたランジュバン型振動子である。
このうちフロントマス111は、後述する圧電素子121,122で発生した超音波を振動板130に伝達する部材であり、金属からなる。このフロントマス111は、先端側(図1及び図2中、上方)に位置し、概略四角柱状をなす先端側部112と、この先端側部112の後端側(図1及び図2中、下方)に位置し、円柱状をなす後端側部113とから一体的に形成されている。なお、フロントマス111の後端側中央には、ボルト129が螺合するネジ孔(不図示)が設けられている。
【0028】
このフロントマス111は、その先端側において、スタッドボルトを用いることなく、接着剤140により振動板130に接合すると共に、後端側において、ボルト129が螺合して、後述する第1圧電素子121に当接している。即ち、フロントマス111のうち、先端に位置して矩形状をなす先端面111aには、スタッドボルトが螺合するネジ孔が形成されておらず、その全面が接着剤140により振動板130に接合している。また、フロントマス111のうち、後端に位置して円環状をなす後端面111bは、第1圧電素子121に当接している。
【0029】
フロントマス111の先端面111aは、超音波振動する振動面(角型振動面)であり、45mm×45mmの正方形状をなす。この先端面(角型振動面)111aには、所定パターンをなす複数の第1凹溝111av,111av,…が形成されている。これら第1凹溝111av,111av,…のパターンは、角型振動面111aの全面に均一に分布する形態となっている。また、これら第1凹溝111av,111av,…は、それぞれ角型振動面111aの各外周縁111af,111af,…にまで届いている。
【0030】
具体的には、角型振動面111aには、幅1.5mm、深さ1mmで4本の第1凹溝111av,111av,…が形成されている。このうち、2本の第1凹溝111av,111avは、角型振動面111aの1つの外周縁111afからこれに対向する外周縁111afまで、互いに平行に並んで直線的に延びている。また、残り2本の第1凹溝111av,111avは、先に説明した第1凹溝111av,111avにそれぞれ直交する形態で、角型振動面111aの1つの外周縁111afからこれに対向する外周縁111afまで、互いに平行に並んで直線的に延びている。これにより、角型振動面111aに形成された第1凹溝111av,111av,…は、角型振動面111aの各外周縁111af,111af,…まで届き、角型振動面111aを均等に9分割する格子状となっている。
【0031】
次に、超音波振動子110を構成するその他の部材について説明する。
第1圧電素子121は、圧電セラミックからなり、ボルト129を挿通する軸孔(不図示)を有する円筒状をなす。この第1圧電素子121のうち、円環状の先端面121aは、前述のように、フロントマス111の後端面111bに当接している。一方、第1圧電素子121のうち、円環状の後端面121bは、次述する第1電極板125に当接している。
【0032】
第1電極板125は、金属からなり、ボルト129を挿通する軸孔(不図示)を有する円環板状の第1電極本体部125iと、この第1電極本体部125iから径方向外側に延出する端子部125jとから構成されている。前述のように、第1電極本体部125iは、円環状の先端面125iaで第1圧電素子121の後端面121bに当接している。一方、第1電極本体部125iは、円環状の後端面125ibで次述する第2圧電素子122に当接している。
【0033】
第2圧電素子122も、圧電セラミックからなり、ボルト129を挿通する軸孔(不図示)を有する円筒状をなす。この第2圧電素子122のうち、円環状の先端面122aは、前述のように、第1電極板125の第1電極本体部125iの後端面125ibに当接している。一方、第2圧電素子122のうち、円環状の後端面122bは、次述する第2電極板126に当接している。
【0034】
第2電極板126は、金属からなり、ボルト129を挿通する軸孔(不図示)を有する円環板状の第2電極本体部126iと、この第2電極本体部126iから径方向外側に延出する端子部126jとから構成されている。前述のように、第2電極本体部126iは、円環状の先端面126iaで第2圧電素子122の後端面122bに当接している。一方、第2電極本体部126iは、円環状の後端面126ibで次述するリアマス115に当接している。
【0035】
リアマス115は、金属からなり、ボルト129を挿通する軸孔(不図示)を有する円筒状をなす。このリアマス115のうち、円環状の先端面115aは、前述したように、第2電極板126の第2電極本体部126iの後端面126ibに当接している。一方、リアマス115の後端面115bには、次述する六角ナット128が当接している。
【0036】
ボルト129は、リアマス115、第2電極板126、第2圧電素子122、第1電極板125、第1圧電素子121に挿通され、フロントマス111に設けられたネジ孔に螺合する一方、リアマス115から後端側に突出して六角ナット128に螺合し、各部材111,115,121,122,125,126を締結している。これにより、超音波振動子110を構成する各部材111,115,121,122,125,126,129,128は、互いに固定されて一体化されている。
【0037】
次に、振動板130について説明する。振動板130は、金属からなり、先端側(図1中、上方、図3中、下方)に位置する放射面130aと、後端側(図1中、下方、図3中、上方)に位置する接合面130bとを有する矩形板状である。放射面130aは、接合面130bを通じて前述の超音波振動子110から伝えられた超音波を放射する面である。一方、接合面130bは、前述のように、超音波振動子110を接着剤140で接合する面であり、超音波振動子110の振動面111aを接合する矩形状(本実施形態1では正方形状)の接合領域130bgを中央に有する。
【0038】
接合面130bのうち、接合領域130bg及びその周囲には、所定パターンをなす複数の第2凹溝130bv,130bv,…が形成されている。これら第2凹溝130bv,130bv,…のパターンは、接合領域130bgの全体に均一に分布する形態となっている。また、これら第2凹溝130bv,130bv,…は、それぞれ、図3において破線で示す接合領域130bgの各外周縁130bgf,130bgf,…にまで届き、これを超えて延びている。
【0039】
具体的には、接合面130bには、幅1.5mm、深さ0.5mmで合計12本の第2凹溝130bv,130bv,…が形成されている。このうち、6本の第2凹溝130bv,130bv,…は、接合領域130bgの1つの外周縁130bgfからこれに対向する外周縁130bgfまで、互いに平行に等間隔に並んで直線的に延びている。また、残り6本の第2凹溝130bv,130bv,…は、先に説明した6本の第2凹溝130bv,130bv,…にそれぞれ直交する形態で、接合領域130bgの1つの外周縁130bgfからこれに対向する外周縁130bgfまで、互いに平行に等間隔に並んで直線的に延びている。これにより、接合面130bに形成された第2凹溝130bv,130bv,…は、接合領域130bgの各外周縁130bgf,130bgf,…まで届き、接合領域130bgを均等に分割する格子状となっている。
【0040】
以上で説明したように、本実施形態1の超音波洗浄装置100では、振動面111aが角型振動面である超音波振動子110を用いる。この角型振動面111aと振動板130の接合面130bの接合領域130bgとは、スタッドボルトを用いることなく、接着剤140により接合してある。但し、角型振動面111a及び接合領域130bgには、それぞれ所定パターンの凹溝(第1凹溝111av及び第2凹溝130bv)が形成されている。これら第1凹溝111av及び第2凹溝130bvにより、角型振動面111aと接合領域130bgとの接着面積が増加するので、角型振動面111aと接合領域130bgとの接合強度を向上させることができ、超音波振動子110と振動板130との接合強度を向上させることができる。
【0041】
更に本実施形態1では、角型振動面111aに形成された第1凹溝111avが、角型振動面111aの全面に均一に分布する形態とされている。このため、角型振動面111aの全面で均一に接着面積を増加させることができるので、角型振動面111aと接合領域130bgとの接合強度を角型振動面111a内で均一に向上させることができ、超音波振動子110と振動板130とをより均一に接合できる。
また、接合領域130bgに形成された第2凹溝130bvが、接合領域130bgの全面に均一に分布する形態とされている。このため、接合領域130bgの全面で均一に接着面積を増加させることができるので、角型振動面111aと接合領域130bgとの接合強度を接合領域130bg内で均一に向上させることができ、超音波振動子110と振動板130とをより均一に接合できる。
【0042】
更に本実施形態1では、角型振動面111aに形成された第1凹溝111avが、角型振動面111aの外周縁111afまで届く形態とされている。このため、接着剤140を硬化させる際に、気泡を、第1凹溝111avを通じて角型振動面111aの外周縁111afから外部に排出できる。かくして、角型振動面111aと接合領域130bgとの接着をより確実なものとし、超音波振動子110と振動板130との接合の信頼性を高くすることができる。
また、接合領域130bgに形成された第2凹溝130bvが、接合領域130bgの外周縁130bgfまで届く形態とされている。このため、接着剤140を硬化させる際に、気泡を、第2凹溝130bvを通じて接合領域130bgの外周縁130bgfから外部に排出できる。かくして、角型振動面111aと接合領域130bgとの接着をより確実なものとし、超音波振動子110と振動板130との接合の信頼性を高くすることができる。
【0043】
更に本実施形態1では、角型振動面111aに形成された第1凹溝111avが、角型振動面111aの外周縁111afまで届く格子状とされている。このように格子状の第1凹溝111avとすると、角型振動面111aの全面に第1凹溝111avを均一に分布させることができる上、第1凹溝111avの形成が容易である。
また、接合領域130bgに形成された第2凹溝130bvが、接合領域130bgの外周縁130bgfまで届く格子状とされている。このように格子状の第2凹溝130bvとすると、接合領域130bgの全面に第2凹溝130bvを均一に分布させることができる上、第2凹溝130bvの形成が容易である。
【0044】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。本実施形態2の超音波洗浄装置200は、超音波振動子210の振動面211aに形成された第1凹溝211avの形態が、上記実施形態1の超音波洗浄装置100の第1凹溝111avの形態と異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1と同様であるので、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図4に、本実施形態2の超音波洗浄装置200を構成する超音波振動子210を示す。
【0045】
本実施形態2の超音波洗浄装置200は、上記実施形態1とは第1凹溝211avの形態が異なるフロントマス211を有する超音波振動子210を備える。このフロントマス211も、その先端側(図4中、上方)において、スタッドボルトを用いることなく、接着剤140により振動板130に接合している。即ち、フロントマス211のうち、先端に位置して矩形状をなす先端面(角型振動面)211aには、スタッドボルトが螺合するネジ孔が形成されておらず、その全面が接着剤140により振動板130に接合している。
【0046】
この先端面(角型振動面)211aには、所定パターンをなす複数の第1凹溝211av,211av,…が形成されている。これら第1凹溝211av,211av,…のパターンは、角型振動面211aの全面に均一に分布する形態となっている。また、これら第1凹溝211av,211av,…は、それぞれ角型振動面211aの各外周縁211af,211af,…にまで届いている。
【0047】
具体的には、角型振動面211aには、合計8本の第1凹溝211av,211av,…が形成されている。このうち、4本の第1凹溝211av,211av,…は、角型振動面211aの1つの外周縁211afからこれに対向する外周縁211afまで、互いに平行に等間隔に並んで直線的に延びている。また、残り4本の第1凹溝211av,211av,…は、先に説明した4本の第1凹溝211av,211av,…にそれぞれ直交する形態で、角型振動面211aの1つの外周縁211afからこれに対向する外周縁211afまで、互いに平行に等間隔に並んで直線的に延びている。これにより、角型振動面211aに形成された第1凹溝211av,211av,…は、角型振動面211aの各外周縁211af,211af,…まで届き、角型振動面211aを均等に25分割する格子状となっている。
【0048】
本実施形態2の超音波洗浄装置200も、超音波振動子210の角型振動面211aと振動板130の接合面130bの接合領域130bgとは、スタッドボルトを用いることなく、接着剤140により接合してある。但し、角型振動面211a及び接合領域130bgには、それぞれ所定パターンの凹溝(第1凹溝211av及び第2凹溝130bv)が形成されている。これにより、角型振動面211aと接合領域130bgとの接着面積が増加するので、角型振動面211aと接合領域130bgとの接合強度を向上させることができ、超音波振動子210と振動板130との接合強度を向上させることができる。その他、上記実施形態1と同様な部分は、上記実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0049】
(実施形態3)
次いで、第3の実施の形態について説明する。本実施形態3の超音波洗浄装置300は、振動板330の接合面330bに形成された第2凹溝330bvの形態が、上記実施形態1,2の超音波洗浄装置100,200の第2凹溝130bvの形態と異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1または2と同様であるので、上記実施形態1または2と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図5に、本実施形態3の超音波洗浄装置300を構成する振動板330を示す。
【0050】
本実施形態3の超音波洗浄装置300は、上記実施形態1,2とは第2凹溝330bvの形態が異なる振動板330を備える。この振動板330も、先端側(図5中、下方)に位置する放射面330aと、後端側(図5中、上方)に位置する接合面330bとを有する矩形板状である。接合面330bは、超音波振動子110の振動面111aが接合された矩形状の接合領域330bgを中央に有する。
【0051】
接合面330bの接合領域330bgには、所定パターンをなす複数の第2凹溝330bv,330bv,…が形成されている。これら第2凹溝330bv,330bv,…のパターンは、接合領域330bgの全体に均一に分布する形態となっている。具体的には、接合面330b(接合領域330bg)には、5つの第2凹溝330bv,330bv,…が形成されている。これらの第2凹溝330bv,330bv,…は、互いに大きさの異なる平面視ロ字状に形成されており、等間隔をあけて同心状に配置されている。
【0052】
本実施形態3の超音波洗浄装置300も、超音波振動子110の角型振動面111aと振動板330の接合面330bの接合領域330bgとは、スタッドボルトを用いることなく、接着剤140により接合してある。但し、角型振動面111a及び接合領域330bgに、それぞれ所定パターンの凹溝(第1凹溝111av及び第2凹溝330bv)が形成されている。これにより、角型振動面111aと接合領域330bgとの接着面積が増加するので、角型振動面111aと接合領域330bgとの接合強度を向上させることができ、超音波振動子110と振動板330との接合強度を向上させることができる。その他、上記実施形態1と同様な部分は、上記実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0053】
(実施形態4)
次いで、第4の実施の形態について説明する。本実施形態4の超音波洗浄装置400は、振動板430の接合面430bに形成された第2凹溝430bvの形態が、上記実施形態1〜3の超音波洗浄装置100,200,300の第2凹溝130bv,330bvと異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1〜3のいずれかと同様であるので、上記実施形態1〜3のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図6に、本実施形態4の超音波洗浄装置400を構成する振動板430を示す。
【0054】
本実施形態4の超音波洗浄装置400は、上記実施形態1〜3とは第2凹溝430bvの形態が異なる振動板430を備える。この振動板430も、先端側(図6中、下方)に位置する放射面430aと、後端側(図6中、上方)に位置する接合面430bとを有する矩形板状である。接合面430bは、超音波振動子110の振動面111aが接合された矩形状の接合領域430bgを中央に有する。
【0055】
接合面430bの接合領域430bgには、所定パターンをなす複数の第2凹溝430bv,430bv,…が形成されている。具体的には、接合面430b(接合領域430bg)には、4つの第2凹溝430bv,430bv,…が形成されている。これらの第2凹溝430bv,430bv,…は、互いに大きさの異なる平面視円環状に形成されており、等間隔をあけて同心状に配置されている。
【0056】
本実施形態4の超音波洗浄装置400も、超音波振動子110の角型振動面111aと振動板430の接合面430bの接合領域430bgとは、スタッドボルトを用いることなく、接着剤140により接合してある。但し、角型振動面111a及び接合領域430bgに、それぞれ所定パターンの凹溝(第1凹溝111av及び第2凹溝430bv)が形成されている。これにより、角型振動面111aと接合領域430bgとの接着面積が増加するので、角型振動面111aと接合領域430bgとの接合強度を向上させることができ、超音波振動子110と振動板430との接合強度を向上させることができる。その他、上記実施形態1と同様な部分は、上記実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0057】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜4に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態1〜4では、振動板130,330,430に1つの超音波振動子110,210を接合した超音波洗浄装置100,200,300,400を示したが、振動板130,330,430に複数個の超音波振動子110,210を並べて接合してもよい。超音波振動子110,210の振動面111a,211aは角型振動面であるため、複数個の超音波振動子110,210を並べて接合する場合には、振動面が丸型振動面である場合などに比して、振動面111a,211aを隙間を少なくして配置できる利点がある。
【0058】
また、上記実施形態1〜4では、超音波振動子110,210の角型振動面111a,211aに複数の第1凹溝111av,211avを形成しているが、例えば渦巻き状やジグザグ状などの一筆描きの形態とすることで、第1凹溝を単数とすることもできる。同様に、上記実施形態1〜4では、振動板130,330,430の接合面130b,330b,430bに複数の第2凹溝130bv,330bv,430bvを形成しているが、例えば渦巻き状やジグザグ状などの一筆描きの形態とすることで、第2凹溝を単数とすることもできる。
【符号の説明】
【0059】
100,200,300,400 超音波洗浄装置
110,210 超音波振動子
111,211 フロントマス
111a,211a 先端面(振動面、角型振動面)
111af,211af 外周縁
111av,211av 第1凹溝
115 リアマス
121 第1圧電素子
122 第2圧電素子
125 第1電極板
126 第2電極板
129 ボルト
130,330,430 振動板
130a,330a,430a 放射面
130b,330b,430b 接合面
130bg,330bg,430bg 接合領域
130bgf,330bgf,430bgf 外周縁
130bv,330bv,430bv 第2凹溝
140 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動する振動面を有する超音波振動子と、
前記超音波振動子の前記振動面が接合された接合領域を含む接合面、及び、この接合面を通じて前記超音波振動子から伝えられた超音波を放射する放射面を有する振動板と、を備える
超音波洗浄装置であって、
前記超音波振動子の前記振動面は、矩形状をなす角型振動面であり、
この角型振動面と前記振動板の前記接合面の前記接合領域とは、スタッドボルトを用いることなく、接着剤により接合されてなり、
前記角型振動面及び前記接合領域の少なくともいずれかに、所定パターンの凹溝が形成されてなる
超音波洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波洗浄装置であって、
前記角型振動面及び前記接合領域のうち、少なくとも前記角型振動面に、前記凹溝が形成されてなり、
前記角型振動面に形成された前記凹溝は、前記角型振動面の全面に均一に分布する形態とされてなる
超音波洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波洗浄装置であって、
前記角型振動面に形成された前記凹溝は、前記角型振動面の外周縁まで届く形態とされてなる
超音波洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波洗浄装置であって、
前記角型振動面に形成された前記凹溝は、前記角型振動面の外周縁まで届く格子状とされてなる
超音波洗浄装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の超音波洗浄装置であって、
前記角型振動面及び前記接合領域のうち、少なくとも前記接合領域に、前記凹溝が形成されてなり、
前記接合領域に形成された前記凹溝は、前記接合領域の全面に均一に分布する形態とされてなる
超音波洗浄装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波洗浄装置であって、
前記接合領域に形成された前記凹溝は、前記接合領域の外周縁まで届く形態とされてなる
超音波洗浄装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波洗浄装置であって、
前記接合領域に形成された前記凹溝は、前記接合領域の外周縁まで届く格子状とされてなる
超音波洗浄装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の超音波洗浄装置であって、
前記角型振動面及び前記接合領域に、それぞれ前記凹溝が形成されてなる
超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−264339(P2010−264339A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115831(P2009−115831)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】