説明

超音波画像診断装置、超音波画像生成方法およびプログラム

【課題】各組織の様々な性状情報および診断情報を求める超音波画像診断装置、超音波画像生成方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】局所音速値と、予め設定された組織固有の音速の特徴である特徴情報とに基づいて、着目領域を2以上の分割領域に分割し、分割した着目領域の情報を領域情報として生成する領域分割部を有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を被検体に送信して反射波を受信し、画像を表示する超音波画像診断装置、超音波画像生成方法およびプログラムに関し、詳しくは、音速値および組織固有の音速の特徴に基づいて複数の領域に分割し、それぞれの分割領域について、組織性状情報を求めて表示する超音波画像診断装置、超音波画像生成方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波画像の形態画像の1つとして、形状を表すBモード画像(超音波エコーの振幅を点の輝度により表した画像)が用いられている。しかし、形状以外の情報も診断に用いたいとの要望があり、そのうちの1つとして音速が挙げられる。
音速は、医師が超音波診断を行うにあたり、生体組織、病変およびその進行度等を診断するために有効な音響情報であることから、種々の計測手法によって被検体の音速を計測することが提案されている。また、被検体内の一部における音速値(以下、局所音速値という)を測定する試みもなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の送信用および受信用超音波トランスデューサを用いて、これらの角度および間隔を変えることで、超音波ビームの交差領域(関心領域)を生体内の深さ方向に移動させ、また、生体の体表に沿う方向にも交差領域を移動させて局所音速値を求めることにより、生体内の局所音速値の2次元分布を求めることが提案されている。
【0004】
特許文献2には、仮想音速分布に基づき、送波振動子と受波振動子とのそれぞれについて照射角度および入射角度を変化させて音線経路を設定し、測定された実際の経過時間と、設定した音線経路の所要時間との誤差データを求め、誤差データを最小にするように音線分布を修正し、修正された音線分布により音速を求めることが提案されている。
【0005】
特許文献3には、ホイヘンスの原理を用いて、被検体内の着目領域よりも浅い領域に設定された格子点と、着目領域における最適音速値を判定し、着目領域における最適音速値に基づいて、超音波を着目領域に送信したときに着目領域から受信される受信波を演算し、着目領域における仮定音速を仮定して、仮定音速に基づいて各格子点における最適音速値から求めた各格子点からの受信波を合成して合成受信波を得て、受信波と合成受信波に基づいて着目領域における局所音速値を判定する超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−254740号公報
【特許文献2】特開平5−95946号公報
【特許文献3】特開2010−99452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3では、被検体の局所的な音速分布情報は得られるが、得られた音速分布情報を医師が見やすいように、つまり、診断に活用できる情報として、どのように提示するかについては開示されていない。
【0008】
本発明の目的は、局所音速値と予め設定された組織固有の音速の特徴である特徴情報とに基づいて着目領域を分割し、分割された各分割領域の組織の種類を求め、さらに、局所音速値の分布の特徴を表す組織性状情報を求めることで、局所音速値のみでは得られない各組織の様々な性状情報等を医師に提供し、その診断に資する超音波画像診断装置、超音波画像生成方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、超音波を被検体に送信して反射波を受信し超音波検出信号を出力する超音波探触子を有し、着目領域の局所音速値を求める超音波画像診断装置であって、前記局所音速値と、予め設定された組織固有の音速の特徴である特徴情報とに基づいて、前記着目領域を2以上の分割領域に分割し、分割した前記着目領域の情報を領域情報として生成する領域分割部を有することを特徴とする超音波画像診断装置を提供する。
【0010】
また、前記領域分割部は、前記局所音速値と前記特徴情報とに基づいて、前記着目領域を2以上の分割領域に分割し、それぞれの前記分割領域が該当する組織を決定することが好ましい。
【0011】
さらに、前記領域情報および前記局所音速値に基づいて、前記局所音速値の分布の特徴を表す組織性状情報を、1以上の前記分割領域について生成する組織性状情報生成部を有することが好ましい。
さらに、前記組織性状情報に基づいて、前記分割領域のそれぞれにおける、病変の種類、および病変の程度のうち1以上を含む診断情報を生成する診断情報生成部を有することが好ましい。
【0012】
また、前記分割領域のうち、一方の前記組織性状情報は、さらに、他方の前記組織性状情報が反映された情報であることが好ましい。
また、前記組織性状情報は、さらに、ユーザが設定した情報が反映された情報であることが好ましい。
【0013】
また、前記組織性状情報は、さらに、前記分割領域の組織の情報を反映して生成することが好ましい。
また、前記組織性状情報は、再度、前記診断情報を反映して生成することが好ましい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明は、超音波を被検体に送信して反射波を受信し、着目領域の局所音速値を求める超音波画像生成方法であって、前記局所音速値と、予め設定された組織固有の音速の特徴である特徴情報とに基づいて、前記着目領域を2以上の分割領域に分割し、分割した前記着目領域の情報を領域情報として生成する領域分割ステップを有することを特徴とする超音波画像生成方法を提供する。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明は、上記に記載の超音波画像生成方法の各ステップを手順としてコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分割された各領域について局所音速値だけでなく、分割された各領域の組織の種類を表す領域組織情報、および局所音速値の分布の特徴を表す組織性状情報を求めることができ、さらに病変の種類、および病変の程度といった医師の診断に資する診断情報も提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る超音波画像生成方法を実施する、超音波画像診断装置の一実施形態の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る局所音速値の演算処理を模式的に示す説明図である。
【図3】(a),(b)は、設定音速プロファイルの一例を示すグラフである。
【図4】本発明に係る一実施形態の超音波画像生成方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】図4に示すフローチャートの、続きを示すフローチャートである。
【図6】環境音速値を決定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る局所音速値の演算処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】着目領域の設定の一例を示す説明図である。
【図9】領域分割の一例を示す説明図である。
【図10】音速画像の各分割領域に、組織名称が重畳表示された表示の一例を示す説明図である。
【図11】音速画像の各分割領域に、組織名称および組織性状情報が重畳表示された表示の一例を示す説明図である。
【図12】音速画像の各分割領域に、組織名称、組織性状情報、および診断情報(病変,進行度)が重畳表示された表示の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る超音波画像生成方法を実施する本発明に係る超音波画像診断装置を、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。なお、着目領域の指定方法は特に限定されないが、以下の説明では一例として、Bモード画像上で着目領域が指定され、また、当該Bモード画像の着目領域における各画素に対応して局所音速値を算出する場合について説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る超音波画像診断装置の構成を表す一実施形態のブロック図である。
図1に示す超音波画像診断装置10は、操作部12、制御部14、超音波探触子16、送受信部20、信号処理部22、音速値算出部24、音速画像生成部26、領域分割部27、組織性状情報生成部34、診断情報生成部36、画像処理部38、表示部40、およびRFデータ記録再生部42によって構成される。
【0020】
また、音速値算出部24は、環境音速値算出部44と、局所音速値算出部46とによって構成される。環境音速値算出部44は、フォーカス指標算出部48、環境音速プロファイル生成部50、および環境音速値決定部52によって構成され、局所音速値算出部46は、仮想受信波・仮想合成受信波誤差算出部54、誤差プロファイル生成部56、および局所音速値決定部58によって構成される。
また、領域分割部27は、画素組織決定部28、着目領域分割部30、分割領域組織決定部32によって構成される。
【0021】
操作部12は、超音波画像診断装置10の各種操作をオペレータが行うためのものであり、操作情報を出力する。操作部12の具体的な態様には特に限定はなく、キーボード、マウス、タッチパネルなど、公知の各種の操作機器を用いればよい。
【0022】
制御部14は、超音波画像診断装置10の各部の動作を制御するためのものである。また、操作情報に従って各種処理が実施されるように、各部に対して制御信号(CTL)が出力される。また、環境音速値を求めるための設定音速または受信遅延パターンを、後述する送受信部20に設定する。
【0023】
超音波探触子16は、被検体に当接させて用いるプローブであり、1次元または2次元のトランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサ18を備えている。超音波トランスデューサ18では、送受信部20から印加される駆動信号に基づいて超音波ビームが被検体に送信されると共に、被検体から反射される超音波エコーが受信されて検出信号が出力される。
【0024】
超音波トランスデューサ18は、圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極が形成されて構成された振動子を含んでいる。上記振動子を構成する圧電体としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb (lead) zirconate titanate)のような圧電セラミック、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)のような高分子圧電素子を用いることができる。上記振動子の電極に電気信号を送って電圧を印加すると圧電体が伸縮し、この圧電体の伸縮により各振動子において超音波が発生する。例えば、振動子の電極にパルス状の電気信号を送るとパルス状の超音波が発生し、振動子の電極に連続波の電気信号を送ると連続波の超音波が発生する。そして、各振動子において発生した超音波が合成されて超音波ビームが形成される。また、各振動子により超音波が受信されると、各振動子の圧電体が伸縮して電気信号を発生する。各振動子において発生した電気信号は、超音波の検出信号として送受信部20に出力される。
【0025】
なお、超音波トランスデューサ18としては、超音波変換方式の異なる複数種類の素子を用いることも可能である。例えば、超音波を送信する素子として上記圧電体により構成される振動子を用いて、超音波を受信する素子として光検出方式の超音波トランスデューサを用いるようにしてもよい。ここで、光検出方式の超音波トランスデューサとは、超音波信号を光信号に変換して検出するものであり、例えば、ファブリーペロー共振器又はファイバブラッググレーティングである。
【0026】
送受信部20は、送信回路、受信回路、およびA/D変換器を備えている。
送信回路は、制御部14からの制御信号に応じて駆動信号を生成して、該駆動信号を超音波トランスデューサ18に印加する。このとき、送信回路は、制御部14によって選択された送信遅延パターンに基づいて、各超音波トランスデューサ18に印加する駆動信号を遅延させる。ここで、送信回路は、複数の超音波トランスデューサ18から送信される超音波が超音波ビームを形成するように、各超音波トランスデューサ18に駆動信号を印加するタイミングを調整する(遅延させる)。なお、複数の超音波トランスデューサ18から一度に送信される超音波が被検体の撮像領域全体に届くように、駆動信号を印加するタイミングを調節するようにしてもよい。
【0027】
受信回路は、各超音波トランスデューサ18から出力される超音波検出信号を受信して増幅する。各超音波トランスデューサ18と被検体内の超音波反射源との間の距離がそれぞれ異なるため、各超音波トランスデューサ18に反射波が到達する時間は異なる。受信回路は遅延回路を備えており、制御部14によって選択された音速(以下、仮定音速という。)または音速の分布に基づいて設定される受信遅延パターンに従って、反射波の到達時刻の差(遅延時間)に相当する分、各検出信号を遅延させる。
次に、受信回路は、遅延時間を与えた検出信号を整合加算することにより受信フォーカス処理を行う。超音波反射源Xと異なる位置に別の超音波反射源がある場合には、別の超音波反射源からの超音波検出信号は到達時刻が異なるので、加算回路で加算することにより、別の超音波反射源からの超音波検出信号の位相が打ち消し合う。これにより、超音波反射源Xからの受信信号が最も大きくなり、フォーカスが合う。この受信フォーカス処理によって、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号(以下、RF信号という。)が形成される。
【0028】
A/D変換器では、受信回路から出力されるアナログのRF信号がデジタルRF信号(以下、RFデータという。)に変換され出力される。ここで、RFデータには、受信波(搬送波)の位相情報が含まれている。
【0029】
信号処理部22では、RFデータに対して、STC(Sensitivity Time gain Control)によって、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正がされた後、包絡線検波処理が施され、Bモード画像データが生成され出力される。
【0030】
音速値算出部24では、局所音速値を得たい領域について、着目領域が指定され、着目領域指定情報が出力される。着目領域は、例えば、Bモード画像上で指定されることができ、Bモード画像全体が初期設定にて自動的に設定されるようにしてもよい。
【0031】
フォーカス指標算出部48には、設定音速ごとのBモード画像データおよびRFデータが入力され、Bモード画像の画素ごとに、環境音速値を求めるために必要な設定音速ごとのフォーカス指標が算出される。ある設定音速についてフォーカス指標が算出されると、設定音速を変更してフォーカス指標が算出される。つまり、全ての設定音速についてフォーカス指標が算出され出力される。フォーカス指標としては、例えば、Bモード画像データからは画像のコントラスト、シャープネス、あるいは各画素における超音波検出信号の周期または振幅が用いられ、RFデータからはビーム幅(半値幅)が用いられる。
【0032】
環境音速プロファイル生成部50には、Bモード画像の画素ごとに全ての設定音速についてのフォーカス指標が入力される。入力されたフォーカス指標は、横軸を設定音速、縦軸をフォーカス指標としたグラフにプロットされ、設定音速プロファイル(以下、環境音速プロファイルという)が生成され出力される。
【0033】
環境音速値決定部52には、Bモード画像の画素ごとに求められた環境音速プロファイルが入力される。入力された環境音速プロファイルに基づき、各画素の最適音速値(以下、環境音速値という)が決定され出力される。ここで、最適音速値(環境音速値)とは、画像のコントラスト、シャープネスが最も高くなる音速値、およびビーム幅が最も狭くなる音速値であり、各画素における実際の音速値(局所音速値)とは必ずしも一致しない。
なお、環境音速値を求める方法は、他にも、例えば画像のコントラスト、スキャン方向の空間周波数、分散などから判定する方法(例えば、特開平8−317926号公報)を用いてもよい。
【0034】
仮想受信波・仮想合成受信波誤差算出部54には、Bモード画像データおよび環境音速値が入力され、Bモード画像の画素ごとに、局所音速値を求めるために必要な仮の局所音速ごとの、仮想受信波と仮想合成受信波との誤差が算出される。つまり、全ての仮の局所音速について仮想受信波と仮想合成受信波との誤差が算出され出力される。
【0035】
誤差プロファイル生成部56には、Bモード画像の画素ごとに全ての仮の局所音速について、仮想受信波と仮想合成受信波との誤差が入力される。入力された仮想受信波と仮想合成受信波との誤差は、横軸を仮の局所音速、縦軸を仮想受信波と仮想合成受信波との誤差としたグラフにプロットされ、誤差プロファイルが生成され出力される。
【0036】
局所音速値決定部58には、Bモード画像の画素ごとに求められた誤差プロファイルが入力される。入力された誤差プロファイルに基づき、画素ごとの局所音速値が決定され出力される。
【0037】
ここで、局所音速値の演算処理について説明する。
図2は、局所音速値の演算処理を模式的に示す図である。
【0038】
図2(b)に示すように、被検体OBJ内の着目領域ROIを代表する格子点をXROI、格子点XROIよりも浅い(即ち、超音波トランスデューサ18に近い)位置にXY方向に等間隔で配置された格子点をA1,A2,…とし、少なくとも格子点XROIと各格子点A1,A2,…との間の音速はそれぞれ一定と仮定する。
【0039】
本例では、格子点A1,A2,…からの受信波(それぞれWA1,WA2,…)の(T及び遅延時間ΔT)が既知として、格子点XROIと格子点A1,A2,…の位置関係から格子点XROIにおける局所音速値を求める。具体的には、ホイヘンスの原理により、格子点XROIからの受信波Wと格子点A1,A2,…からの受信波を仮想的に合成した受信波WSUMが一致することを利用する。受信波Wと仮想合成受信波WSUMとの差が最小になる仮定音速の値を、格子点XROIにおける局所音速値とする。
【0040】
ここで、格子点XROIにおける局所音速値を求めるときの演算に使用する格子点A1,A2,…の範囲及び個数は予め決めておく。ここで、局所音速値演算に使用する格子点の範囲が広いと局所音速値の誤差が大きくなり、狭いと仮想受信波との誤差が大きくなるため、格子点の範囲はこれらの兼ね合いで決める。
【0041】
格子点A1,A2,…のX方向の間隔は、分解能と処理時間の兼ね合いで決定される。格子点A1,A2,…のX方向の間隔は、一例で1mmから1cmである。
【0042】
格子点A1,A2,…のY方向の間隔が狭いと誤差計算における誤差が大きくなり、広いと局所音速値の誤差が大きくなる。格子点A1,A2,…のY方向の間隔は、超音波画像の画像分解能の設定に基づいて決定される。格子点A1,A2,…のY方向の間隔は、一例で1cmである。
【0043】
なお、格子点A1,A2,…の間隔が広い場合、合成波の演算が困難になるため、補間によって細かい格子点を生成するようにすればよい。
【0044】
音速画像生成部26には、着目領域(Bモード画像)の画素ごとに求められた局所音速値、および後述する組織性状情報が入力される。音速画像生成部26では、局所音速値に対応した値、例えば、各画素の音速値(通常の音速画像)、着目領域全体または分割領域の音速の平均値あるいは最小値との差分(差分音速画像)、および、分散によって規格化された音速値(分散音速画像)が、Bモード画像の各画素に割り当てられて音速画像が生成され、音速画像データとして出力される。なお、音速画像生成部26に診断情報が入力され、診断情報に基づく音速の平均値との差分を用いてもよいし、局所音速値に対応した値を階調表現しやすいように再度調整を行ってもよい。また、別途設定された基準領域における局所音速値の平均値、オペレータにより設定された局所音速値の平均値、または診断情報に基づく局所音速値の平均値との差分の分布の画像(差分音速画像)としてもよい。
【0045】
画素組織決定部28には、着目領域全体の局所音速値が入力される。画素組織決定部28では、局所音速値と予め設定された組織固有の音速の特徴である特徴情報とに基づいて、着目領域全体について画素ごとに属する組織が決定され、画素組織情報として出力される。例えば、ある注目画素を中心とした所定範囲に含まれる画素の、局所音速値の分布から特徴量(例えば、局所音速値の平均値)を求め、当該特徴量と特徴情報とを比較することで、注目画素の属する組織が決定される。なお、特徴情報は、予め統計的手法等により、音速分布の特徴量を求めてテーブル等で表したものを用いることができる。
【0046】
ここで、注目画素の特徴量は1種類に限られず、複数の特徴量を用いてもよい。例えば、複数の特徴量から重回帰式により1つの指標を算出し、当該指標に基づいて注目画素が属する組織を決定してもよい。複数の特徴量としては、例えば、局所音速値の平均値、分散、平均値への集中程度、ヒストグラムの歪度または尖度、空間周波数の平均、および、空間周波数の分散または帯域などが挙げられる。また、同時生起行列などによるテクスチャ特徴量、例えば、一様性、コントラスト、相関、およびエントロピー等を用いても良い。なお、特徴情報も同様の特徴量を用いてもよい。
【0047】
他にも、対象部位および走査法が決まっていれば、各組織の標準的な配置も決まってくるため、注目画素の特徴量だけでなく、注目画素の位置によって各組織に属する確率を求め、当該確率も反映して注目画素の属する組織が決定されるようにしてもよい。
また、注目画素の属する組織が、周囲の画素の属する組織と異なる場合、最も特徴の近い組織に決定されることで飛び地が発生することを防止してもよい。もしくは、各領域の大まかな境界が判別できればよい場合には、解像度を落とす等して目立たなくしてもよいし、詳細な画像が必要な場合には、異常の可能性もあるため、決定された組織をそのまま表示してもよい。
【0048】
着目領域分割部30には、音速画像データ、画素組織情報、および着目領域指定情報が入力される。着目領域分割部30では、画素組織情報に基づき、隣接する画素と組織が同一である画素は、同一の分割領域に属するように、着目領域が2以上の分割領域に分割され、分割されたそれぞれの分割領域の境界線、分割数、および、各画素がどの分割領域に属するかを示す属性等の情報を含む着目領域の情報が、着目領域情報として生成され出力される。
【0049】
分割領域組織決定部32には、画素組織情報、および着目領域情報が入力される。分割領域組織決定部32では、それぞれの分割領域の組織が、画素組織情報(当該分割領域に属する画素の組織)に基づいて決定され、領域組織情報として着目領域情報に付加されて領域情報として出力される。
【0050】
組織性状情報生成部34には、着目領域全体の局所音速値、領域情報、および後述する診断情報が入力される。組織性状情報生成部34は、各画素の局所音速値、および属する分割領域に基づいて、組織性状情報を生成する。組織性状情報は、局所音速値の分布の特徴を表す情報であり、例えば、分割領域における、各画素の局所音速値の平均値、分散、平均値への集中程度、ヒストグラムの歪度または尖度、空間周波数の平均、および、空間周波数の分散または帯域などの特徴量である。また、同時生起行列などによるテクスチャ特徴量、例えば、一様性、コントラスト、相関、およびエントロピー等を用いても良いし、上記で生成された画素組織情報を用いてもよい。なお、組織性状情報は、画素組織決定部28で求められる特徴量とは別途生成される。
【0051】
さらに、一方の分割領域と他方の分割領域とにおいて、組織性状情報の差分を取ってもよい。このとき、基準とする領域は分割領域の位置に基づいて設定してもよいし、組織性状情報に基づいて設定してもよい。例えば、肝臓の局所音速値の平均値と、皮下脂肪の局所音速値の平均値とについて差分を取得したい場合、皮下脂肪は皮膚の直下にあり、他の組織と比較して音速の平均値が低いため、最も浅い分割領域、または音速の平均値が最も低い分割領域を皮下脂肪と判定して、基準領域と設定してもよい。もしくは、差分を取る代わりに複数の他の分割領域との間でテーブルを用いてもよい。他にも、オペレータによって基準領域が設定されてもよいし、領域の位置関係を基に基準領域が設定されてもよい。
【0052】
また、診断情報が入力される場合、つまり、一度生成された組織性状情報に対して、診断情報がフィードバックされる場合、診断情報を反映して再度組織性状情報が生成される。例えば、一方の分割領域の診断情報を他方の分割領域の組織性状情報の生成に用いる場合や、診断情報が反映された組織性状情報を生成する場合が挙げられる。
【0053】
診断情報生成部36には、組織性状情報が入力される。診断情報生成部36では、組織性状情報に基づき、脂肪肝や肝硬変等の病変種類、および肝硬変の進行度(F0〜F4)等の情報が、診断情報として生成され出力される。
【0054】
画像処理部38には、Bモード画像データ、音速画像データ、領域情報、組織性状情報、および診断情報が入力される。画像処理部38は、DSC(Digital Scan Converter)機能、ならびに、各種画像データ(Bモード画像データ、および音速画像データ)と各種情報(領域情報、組織性状情報、および診断情報)との重畳(オーバーレイ)表示、強調表示、およびマスク処理等の画像処理機能を有する。画像処理部38からは、DSCおよび画像処理が行われた表示画像データが出力される。なお、重畳表示等に用いるBモード画像データは、画像全体のフォーカスが最も良好な設定音速におけるデータを用いるのがよい。
【0055】
DSC機能では、Bモード画像データおよび音速画像データが、通常のテレビジョン信号の走査方式と異なる走査方式であるため、後述する表示部40に表示可能なように、通常の画像データ(例えば、テレビジョン信号の走査方式(NTSC方式)の画像データ)への変換(ラスター変換)が行われる。
【0056】
画像処理機能では、例えば、Bモード画像データ、音速画像データ、および各種情報の重畳表示画像が生成される。各分割領域についての領域組織情報、組織性状情報、および/または診断情報を、Bモード画像または音速画像と重畳表示することで、医師の診断を補助する表示画像が生成される。例えば、音速画像上の各分割領域に、局所音速値の平均値、および/または組織の名称(肝臓、腎臓、脂肪等:領域組織情報)を表示したり、領域組織情報と、局所音速値の平均値が肝硬変の音速値の範囲であるという診断情報とから、当該分割領域に肝硬変の進行度を表す記号(F0〜F4)の表示、あるいは彩色を施す等の表示が行われた表示画像が生成される。
【0057】
表示部40には、表示画像データが入力され表示される。表示部40は、液晶、プラズマ、有機EL(Electro Luminescence)等のFPD(Flat Panel Display)、またはCRT(Cathode Ray Tube)等により構成される。表示部40は、複数の画像を並べて表示可能なように、表示面積が大きいもの、および画素数の多いものを用いるのがよい。
【0058】
RFデータ記録再生部42には、RFデータ、フレームレートに関する情報(例えば、超音波の反射位置の深度、走査線の密度、視野幅を示すパラメータ)が入力され、内部のシネメモリに記録される。RFデータ記録再生部42は、シネメモリ記録モードとシネメモリ再生モードの2つの動作モードを持ち、通常観察時(ライブモード)にはシネメモリ記録モードとして動作し、RFデータが記録されている。
【0059】
シネメモリ再生モードは、シネメモリに格納されているRFデータに基づいて超音波診断画像の表示、解析・計測を行うモードである。シネメモリ再生モード時には、シネメモリに格納されているRFデータが、オペレータの操作に応じて、信号処理部22へと出力され、オペレータはRFデータ記録再生部42に記録されたRFデータに基づく、Bモード画像、音速画像、領域組織情報、組織性状情報、および診断情報を見ることができる。
【0060】
次に、本発明に係る超音波画像生成方法を実現する、本発明に係る超音波画像診断装置10の動作を説明する。
【0061】
図4および図5は、本発明に係る超音波画像診断装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
初めに、オペレータにより領域情報、および組織性状情報等を取得したい部位(対象部位)が選択される。対象部位が選択されると、当該対象部位に含まれる組織、および当該組織固有の音速の特徴が、特徴情報として設定される(ステップS6)。また、同じ部位であっても走査法が異なると観察される組織や断面が異なる、つまり、固有の音速の特徴が異なるため、例えば、右肋骨弓下走査、正中縦断走査等の走査法も選択されるようにしてもよい。
【0062】
次に、環境音速値を求めるための設定音速が制御部14によって複数選択され、送受信部20に対して設定される(ステップS8)。ここで、設定音速は人体内の音速の範囲(概ね、1400m/s〜1650m/s)の中から、複数の音速が選択され設定される。選択される音速の数(L)は、横軸を設定音速、縦軸をフォーカス指標としたグラフにプロットしたときに、図3(a),(b)に示すようなグラフが描ける程度であればよい。なお、オペレータによって設定音速が設定されるようにしてもよい。
【0063】
続いて、オペレータが超音波探触子16を被検体に接触させて超音波の送受信が行われ、超音波検出信号が超音波探触子16から出力される(ステップS10)。超音波検出信号は送受信部20に入力され、選択された複数の設定音速に対応する受信遅延パターンに基づき、それぞれの設定音速ごとに受信フォーカス処理または送受信フォーカス処理が行われ、A/D(Analog/Digital)変換されて、設定音速ごとのRFデータとして出力される(ステップS12)。
【0064】
設定音速ごとのRFデータは、信号処理部22に入力され、STCにより超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正がされた後、包絡線検波処理が施され、図8に示すようなBモード画像のBモード画像データが設定音速ごとに生成され出力される(ステップS14)。
【0065】
全ての設定音速ごとのBモード画像データおよびRFデータは、音速値算出部24に入力される。音速値算出部24では、Bモード画像のうち局所音速値を得たい領域について着目領域として指定される(ステップS16)。着目領域は、例えば、図8に示す着目領域60のように、Bモード画像全体が初期設定にて自動的に指定されるようにしてもよいし、Bモード画像の一部が自動的に着目領域として設定されてもよい。また、オペレータが操作部12を操作することによりBモード画像の一部が指定されてもよい。着目領域は、例えば、始点座標[xmin,ymin]、および終点座標[xmax,ymax]で設定される。図4のフローチャートでは、例としてxがn〜N,yがm〜Mと設定される。
着目領域が設定されると、環境音速値の算出を開始する開始着目画素(例えば、x=n,y=m)が設定され(ステップS18)、着目画素の環境音速値の算出が行われる(ステップS20)。
【0066】
ここで、着目画素の環境音速値の算出の詳細を、図6のフローチャートにより説明する。
まず、ステップS8で設定された環境音速値を求めるための選択される音速の数(設定音速の個数)が、初期値C=1,最大値Cmax=Lに設定される(ステップS202)。
【0067】
次に、設定音速Cのフォーカス指標が算出され出力される(ステップS204)。フォーカス指標値としては、例えば、Bモード画像データのコントラスト、シャープネスの値が算出され出力される。なお、着目画素のRFデータのビーム幅から、所定の指数が算出されてフォーカス指標として出力されてもよい。
【0068】
=1(初期値)についてフォーカス指標の算出が終了すると、CとCmax(最大値)の値が比較され(ステップS206)、Cの値がCmax未満であるときは(ステップS206で“N”)、Cに1が足されて(ステップS208)、ステップS204のフォーカス指標の算出に戻る。フォーカス指標の算出(ステップS204)は、C=Cmaxとなるまで繰り返され、着目画素の全ての設定音速についてフォーカス指標が算出され出力される。
【0069】
着目画素の全ての設定音速についてのフォーカス指標は、環境音速プロファイル生成部50に入力され、横軸を設定音速、縦軸をフォーカス指標としたグラフにプロットされ、環境音速プロファイルが生成され出力される(ステップS210)。
【0070】
環境音速プロファイルは、環境音速値決定部52に入力され、例えば、図3(a)に示すような環境音速プロファイルであれば、フォーカス指標の最大値の設定音速値が環境音速値として決定され出力される(ステップS212)。
【0071】
着目画素の環境音速値の算出が終了すると、つまりステップS20が終了すると、着目画素のy座標の値がymaxと比較され(ステップS22)、yの値がymax未満であるときは(ステップS22で“N”)、yに1が足されて(ステップS24)、ステップS20の着目画素の環境音速値の算出に戻る。着目画素の環境音速値の算出(ステップS20)は、y=ymaxとなるまで繰り返される。
【0072】
y=ymaxとなると(ステップS22で“Y”)、着目画素のx座標の値がxmaxと比較され(ステップS26)、xの値がxmax未満であるときは(ステップS26で“N”)、xに1が足されて(ステップS28)、y座標の値がymin(y=m)に設定され(ステップS30)、ステップS20の着目画素の環境音速値の算出に戻る。つまり、y座標方向をラインとすると、x座標がnである1ライン目の環境音速値が算出されると、x座標が1だけインクリメントされ(n+1)、2ライン目の環境音速値が算出される。着目画素の環境音速値の算出(ステップS20)は、着目領域全体について(x=xmax(x=N),y=ymax(y=M)まで)、環境音速値が算出されるまで繰り返される。
着目領域全体について環境音速値が算出されると、環境音速値算出部44から着目領域全体の環境音速値が出力される。
【0073】
着目領域全体の環境音速値は、局所音速値算出部46に入力される。局所音速値算出部46では、局所音速値の算出を開始する開始着目画素(例えば、x=n,y=m)が設定され(ステップS32)、着目画素の局所音速値の算出が行われる(ステップS34)。
【0074】
ここで、着目画素の局所音速値の算出の詳細を、図7のフローチャートにより説明する。
まず、格子点XROIにおける環境音速値に基づいて、格子点XROIを反射点とした時の仮想的な受信波Wの波形が算出される(ステップS302)。
【0075】
次に、格子点XROIにおける仮定音速の初期値が設定される(ステップS304)。そして、仮定音速が1ステップ変更されて(ステップS306)、仮想的な合成受信波WSUMが算出される(ステップS308)。格子点XROIにおける局所音速値をVと仮定すると、格子点XROIから伝播した超音波が格子点A1,A2,…に到達するまでの時間はXROIA1/V,XROIA2/V,…となる。ここで、XROIA1,XROIA2,…は、それぞれ格子点A1,A2,…と格子点XROIとの間の距離である。格子点A1,A2,…における環境音速値は図4のステップS26までにより既知のため、各格子点A1,A2,…からの受信波は予め求めることができる。従って、格子点A1,A2,…からそれぞれ遅延XROIA1/V,XROIA2/V,…で発した反射波(超音波エコー)を合成することにより、仮想合成受信波WSUMを求めることができる。
【0076】
なお、実際には、素子データ(RF信号)上で上記処理を行うため、格子点XROIから格子点A1,A2,…に到達するまでの時間(それぞれT1,T2,…)は下記の式(1)により表される。ここで、XA1,XA2,…は、それぞれ格子点A1,A2,…と格子点Xとの間のスキャン方向(X方向)の距離である。また、Δtは格子点のY方向時間間隔である。
【0077】
【数1】

【0078】
上記T1,T2,…に、格子点XROIと同音線の格子点Anから格子点XROIに到達するまでの時間(Δt/2)を足した遅延で各格子点A1,A2,…からの受信波を合成することにより、仮想合成受信波WSUMを求めることができる。
【0079】
ここで、格子点をY方向に時間軸で等間隔(Δt)に設定する場合、空間上での間隔は必ずしも等間隔にはならない。従って、各格子点に超音波が到達するまでの時間を計算するときに、式(1)においてΔt/2の代わりに補正したΔt/2を用いてもよい。ここで、補正したΔt/2は、例えば、格子点XROIと同音線の格子点Anに比べたA1,A2,…の深さ(Y方向の距離)の差をVで除算した値をΔt/2から加算・減算した値である。各格子点A1,A2,…の深さはそれより浅い格子点において局所音速値が既知であることから求められる。
【0080】
また、仮想合成受信波WSUMの算出は、実際に格子点A1,A2,…から遅延XROIA1/V,XROIA2/V,…で発した既定のパルス波(それぞれWA1,WA2,…)を重ね合わせることにより行う。
【0081】
次に、仮想受信波Wと仮想合成受信波WSUMの誤差が算出される(ステップS310)。仮想受信波Wと仮想合成受信波WSUMの誤差は、互いの相互相関をとる方法、仮想受信波Wに仮想合成受信波WSUMから得られる遅延を掛けて位相整合加算する方法、または逆に仮想合成受信波WSUMに仮想受信波Wから得られる遅延を掛けて位相整合加算する方法により算出される。ここで、仮想受信波Wから遅延を得るには、格子点XROIを反射点とし、音速Vで伝播した超音波が各素子に到着する時刻を遅延とすればよい。また、仮想合成受信波WSUMから遅延を得るには、隣り合う素子間での合成受信波の位相差から等位相線を抽出し、その等位相線を遅延とするか、または単に各素子の合成受信波の最大(ピーク)位置の位相差を遅延としてもよい。また、各素子からの合成受信波の相互相関ピーク位置を遅延としてもよい。位相整合加算時の誤差は、整合加算後の波形のpeak to peakとする方法、または包絡線検波した後の振幅の最大値とする方法により求められる。
【0082】
次に、ステップS306からS310が繰り返されて、全ての仮定音速の値での演算が終了すると(ステップS312で“Y”)、格子点XROIにおける局所音速値が判定される(ステップS314)。ホイヘンスの原理を厳密に適用した場合、上記ステップS308において求めた仮想合成受信波WSUMの波形は、格子点XROIにおける局所音速値をVと仮定した場合の仮想受信波(反射波)Wの波形と等しくなる。ステップS314では、仮想受信波Wと仮想合成受信波WSUMとの差が最小になる仮定音速の値を格子点XROIにおける局所音速値と判定する。
【0083】
なお、上記の方法(仮想合成受信波形算出、仮想受信波形との誤差算出、音速判定)の代わりに、格子点XROIの環境音速値と格子点A1,A2,…の環境音速値を入力として格子点XROIにおける音速値を出力とするテーブルを利用してもよい。
また、異なる間隔、異なる範囲の格子点を用いて、局所音速値の判定を複数回行うようにしてもよい。
【0084】
着目画素の局所音速値の算出が終了すると、つまりステップS34が終了すると、着目画素のy座標の値がymaxと比較され(ステップS36)、yの値がymax未満であるときは(ステップS36で“N”)、yに1が足されて(ステップS38)、ステップS34の着目画素の局所音速値の算出に戻る。着目画素の局所音速値の算出(ステップS34)は、y=ymaxとなるまで繰り返される。
【0085】
y=ymaxとなると(ステップS36で“Y”)、着目画素のx座標の値がxmaxと比較され(ステップS40)、xの値がxmax未満であるときは(ステップS40で“N”)、xに1が足されて(ステップS42)、y座標の値がymin(y=m)に設定され(ステップS44)、ステップS34の着目画素の局所音速値の算出に戻る。つまり、y座標方向をラインとすると、x座標がnである1ライン目の局所音速値が算出されると、x座標が1だけインクリメントされ(n+1)、2ライン目の局所音速値が算出される。着目画素の局所音速値の算出(ステップS34)は、着目領域全体について(x=xmax(x=N),y=ymax(y=M)まで)、局所音速値が算出されるまで繰り返される。
着目領域全体について局所音速値の算出が終了すると、音速値算出部24から着目領域全体の局所音速値、および着目領域指定情報が出力される。
【0086】
着目領域全体の局所音速値は、音速画像生成部26に入力される。音速画像生成部26では、着目領域全体の局所音速値から、音速画像が生成され音速画像データとして出力される(ステップS46)。
【0087】
また、着目領域全体の局所音速値は、画素組織決定部28にも入力される。画素組織決定部28では、局所音速値と特徴情報とに基づいて、着目領域全体について画素ごとに属する組織が決定され、画素組織情報として出力される(ステップS48)。
【0088】
音速画像データ、画素組織情報、および着目領域指定情報は、着目領域分割部30に入力される。着目領域分割部30では、画素組織情報に基づき、音速画像の隣接する画素と組織が同一である画素は、同一の分割領域に属するように、着目領域が2以上の分割領域に分割される。また、分割されたそれぞれの分割領域の境界線、分割数、および、各画素がどの分割領域に属するかを示す属性等の情報を含む着目領域の情報が、着目領域情報として生成され出力される(ステップS50)。
【0089】
図9に領域分割の一例を示す。図9はBモード画像全体が着目領域として指定された場合の音速画像であり、音速画像の略中央部の点線66を境として画素組織情報の組織が異なる状態となっている。この点線66によって、音速画像は上下に分割され、分割領域62,64とされる。
【0090】
画素組織情報、および着目領域情報は、分割領域組織決定部32に入力される。分割領域組織決定部32では、それぞれの分割領域の組織が画素組織情報に基づいて決定され、領域組織情報として着目領域情報に付加され、領域情報として出力される(ステップS52)。例えば、上記の例では、分割領域62が脂肪、分割領域64が肝臓であるという領域組織情報が付加される。
【0091】
領域情報は、着目領域全体の局所音速値とともに、組織性状情報生成部34へ入力される。組織性状情報生成部34では、各画素の局所音速値、および、その属する分割領域に基づいて、組織性状情報が生成される(ステップS54)。例えば、図9の音速画像では、分割領域62の局所音速値の平均値が1450m/sec、領域64の局所音速値の平均値が1555m/secであった場合、分割領域62の組織性状情報として「局所音速値の平均値:1450m/sec」、分割領域64の組織性状情報として「局所音速値の平均値:1555m/sec」というような組織性状情報が生成される。
【0092】
組織性状情報が生成されると、さらに診断情報が必要な場合には(ステップS56で“Y”)、組織性状情報は診断情報生成部36に入力され、組織性状情報に基づき診断情報が生成され出力される(ステップS58)。診断情報は、病変の種類、および/または病変の程度(進行度)を表し、例えば、病変の進行度ごとの局所音速値の範囲を記録したテーブルによって病変の進行度の情報が生成される。病変の進行度としては、例えば、肝硬変の進行度を表すF0〜F4などの指標を用いることができる。上記の分割領域64の例では、分割領域64は局所音速値が1555m/secであるので、例えば、「肝硬変の進行度:F0」であるとの診断情報が生成される。なお、テーブルに用いる局所音速値の範囲は、組織名称と同じく予め統計的に求めておいてもよい。
【0093】
なお、診断情報は、組織性状情報生成部34にフィードバックされ、組織性状情報に反映されるようにしてもよい。また、例えば、肝臓という領域組織情報が生成された場合に、当該分割領域の組織性状情報と正常な肝臓の組織性状情報との差分を取るようにしてもよい。
【0094】
画像処理部38には、Bモード画像データ、音速画像データ、領域情報、組織性状情報、および診断情報が入力される。画像処理部38では、入力された各種画像データに対して通常の画像データへの変換、各種画像データの重畳表示、各種画像データへの組織性状情報および/または診断情報の重畳表示、強調表示、およびマスク処理等が行われ、表示画像データが生成され、表示部40に対して出力され表示される(ステップS60)。
【0095】
ここで、表示部40に表示される表示画像データの例を挙げる。図10に示すように、音速画像に領域組織情報のみを表示するようにしてもよいし、図11に示すように、さらに組織性状情報として、各分割領域の局所音速値の平均値を表示するようにしてもよい。また、図12に示すように、さらに、病変の種類および進行度(図中、F0)を表示させてもよい。このとき、分割領域が小さい場合は、組織名を省略して進行度のみを表示するようにしてもよい。
他にも、音速画像の色(輝度、色相、彩度)を変調する、各種画像を単独または並べて表示する、必要な部分のみ限定して表示する、拡大または縮小して表示する等、各種の表示方法を用いてもよい。
【0096】
また、上記の各種の表示画像をオペレータが操作部12を介して、任意に表示モードが切り替えられるようにしてもよい。
【0097】
以上のように、局所音速値を測定するための専用の超音波を送受信する構成を用いずに、分割された各領域について局所音速値だけでなく、分割された各分割領域の組織の種類を表す領域組織情報、および局所音速値の分布の特徴を表す組織性状情報を求めることができ、さらに病変の種類、および病変の程度といった医師の診断に資する診断情報も提供することができる。
【0098】
なお、着目領域の次元は、1次元(音線)、2次元(Bモード画像:平面)、3次元(立体)、および4次元(立体に時間軸を加える)のいずれでもよく、表示する画像も同様にいずれでもよい。例えば、1次元では、音線信号をそのまま表示するAモード表示や、Bモード画像を音線と直交する直線で切り取ったプロファイル表示が挙げられる。3次元では、Bモード画像を着目領域について奥行き方向の情報を付加したものが挙げられ、4次元ではさらに時間軸を加えて動画像で表示するようにしたものが挙げられる。
【0099】
また、組織性状情報には領域組織情報が反映されてもよい。例えば、領域組織情報から得られた組織の正常時の組織性状情報との差分を取って新たな組織性状情報としてもよい。
さらに、組織性状情報にはオペレータにより設定された情報が反映されてもよく、例えば、オペレータにより肝臓が設定されると、正常な肝臓の組織性状情報との差分をとるようにしてもよい。これにより、例えば、肝硬変の進行度をより分かり易く示すことができる。
【0100】
また、上記の実施形態では、診断情報を生成するためにテーブルを用いたが、診断情報を複数の組織性状情報に基づいて生成する場合には、重回帰式等の導出式を用いてもよい。
さらに、表示画像上に表される各分割領域について、画面上に選択ボタンを設けて、オペレータが必要な分割領域のみ表示させるようにしてもよい。
また、上記の各実施形態では、局所音速値をBモード画像の各画素に割り当てて音速画像を生成したが、これに限定されず、音速画像の画素はBモード画像の画素と1対1で対応しなくてもよい。例えば、Bモード画像の4画素分を音速画像の1画素としてもよい。
【0101】
また、上記の実施形態では、通常観察時(ライブモード)の動作について説明したが、RFデータ記録再生部42に記録されたRFデータに基づいて、Bモード画像および音速画像が生成されるようにしてもよい。
【0102】
なお、本発明においては、上述した超音波画像生成方法の各工程をコンピュータに実行させるための超音波画像生成プログラムとして構成してもよいし、また、コンピュータを、超音波画像生成方法の各工程を実施する各手段として、または、上述した超音波画像診断装置を構成する各手段として機能させる超音波画像生成プログラムとして構成してもよい。
また、本発明を、上述した超音波画像生成プログラムをコンピュータにより読取可能な媒体またはコンピュータにより読取可能なメモリとして構成してもよい。
【0103】
以上、本発明に係る超音波画像診断装置、超音波画像生成方法およびプログラムについて詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 超音波画像診断装置
12 操作部
14 制御部
16 超音波探触子
18 超音波トランスデューサ
20 送受信部
22 信号処理部
24 音速値算出部
26 音速画像生成部
27 領域分割部
28 画素組織決定部
30 着目領域分割部
32 分割領域組織決定部
34 組織性状情報生成部
36 診断情報生成部
38 画像処理部
40 表示部
42 RFデータ記録再生部
44 環境音速値算出部
46 局所音速値算出部
48 フォーカス指標算出部
50 環境音速プロファイル生成部
52 環境音速値決定部
54 仮想受信波・仮想合成受信波算出部
56 誤差プロファイル生成部
58 局所音速値決定部
60 着目領域
62,64 分割領域
66 点線(分割された境界を表す点線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を被検体に送信して反射波を受信し超音波検出信号を出力する超音波探触子を有し、着目領域の局所音速値を求める超音波画像診断装置であって、
前記局所音速値と、予め設定された組織固有の音速の特徴である特徴情報とに基づいて、前記着目領域を2以上の分割領域に分割し、分割した前記着目領域の情報を領域情報として生成する領域分割部を有することを特徴とする超音波画像診断装置。
【請求項2】
前記領域分割部は、前記局所音速値と前記特徴情報とに基づいて、前記着目領域を2以上の分割領域に分割し、それぞれの前記分割領域が該当する組織を決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断装置。
【請求項3】
さらに、前記領域情報および前記局所音速値に基づいて、前記局所音速値の分布の特徴を表す組織性状情報を、1以上の前記分割領域について生成する組織性状情報生成部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波画像診断装置。
【請求項4】
さらに、前記組織性状情報に基づいて、前記分割領域のそれぞれにおける、病変の種類、および病変の程度のうち1以上を含む診断情報を生成する診断情報生成部を有することを特徴とする請求項3に記載の超音波画像診断装置。
【請求項5】
前記分割領域のうち、一方の前記組織性状情報は、さらに、他方の前記組織性状情報が反映された情報であることを特徴とする請求項3または4に記載の超音波画像診断装置。
【請求項6】
前記組織性状情報は、さらに、ユーザが設定した情報が反映された情報であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の超音波画像診断装置。
【請求項7】
前記組織性状情報は、さらに、前記分割領域の組織の情報を反映して生成することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の超音波画像診断装置。
【請求項8】
前記組織性状情報は、再度、前記診断情報を反映して生成することを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の超音波画像診断装置。
【請求項9】
超音波を被検体に送信して反射波を受信し、着目領域の局所音速値を求める超音波画像生成方法であって、
前記局所音速値と、予め設定された組織固有の音速の特徴である特徴情報とに基づいて、前記着目領域を2以上の分割領域に分割し、分割した前記着目領域の情報を領域情報として生成する領域分割ステップを有することを特徴とする超音波画像生成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の超音波画像生成方法の各ステップを手順としてコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−71042(P2012−71042A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219733(P2010−219733)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】