説明

超音波穿孔のための超音波振動変換器

本発明は、建設材料、たとえばコンクリート、石、煉瓦、石膏に超音波穿孔するための超音波振動変換器(1)に関する。本発明は、超音波振動変換器(1)が、その前方の端部(2)の方向に先細りにされた管状の中空体として形成されていて、交換可能なコア(14)を備えていることを提案する。中空形状によって、高い振動増幅が達成され、交換可能なコア(14)によって、超音波振動変換器(1)が種々異なる工具(13)に適合可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波穿孔のための超音波振動変換器であって、当該超音波振動変換器が、前方の端部の方向に先細りにされている形式のものに関する。特に超音波振動変換器は、建設材料、たとえばコンクリート、石、煉瓦、粘土、石膏に穿孔するために設けられている。
【0002】
超音波穿孔のためには、工具が励振され、これによって、超音波範囲内の、すなわち、約16kHz〜20kHzを上回る周波数を備えた機械的な縦振動が生ぜしめられる。この振動は振動発生器によって発生させられる。この振動発生器は発振器とも呼ばれる。知られている振動発生器は、しばしばピエゾ振動発生器として形成されている。振動発生器内には、超音波振動変換器が締め込まれている。この超音波振動変換器は工具をその前方の端部に有している。ここでは、超音波振動変換器のもしくは工具の、振動発生器から離れた方の端部、すなわち、工具の、穿孔のためにワークピースに載着される端部が、前方の端部と呼ばれる。したがって、超音波振動変換器の、振動発生器に結合された端部が、後方の端部である。工具は、超音波振動変換器の固定の構成要素であってもよいし、超音波振動変換器に解離可能に結合されていてもよい。工具は同時にプラグまたはアンカであってもよい。このプラグまたはアンカはそのアンカホールを自体穿孔する。超音波振動変換器の目的は、振動発生器によって発生させられた振動の振幅の増大もしくはパルスの増大ひいては工具の有効性の増大である。設計のためには、振動発生器、正確には、振動発生器の1つまたはそれ以上の振動部材と、超音波振動変換器と、工具とから成る全振動系が考慮されなければならない。この全系は励起することができ、これによって、可能な限り迅速な穿孔進度を招く周波数または振幅を備えた振動が生ぜしめられる。通常、これが系の固有周波数である。この周波数が実際に超音波周波数であることは重要ではない。振動変換器は音極またはコンバータとも呼ばれる。
【0003】
超音波振動変換器による超音波穿孔の1つの例が、米国特許第3683470号明細書に開示されている。この超音波振動変換器は、中実の回転対称的な構成部材である。この構成部材は、円錐体に類似して、その前方の端部に向かって、すなわち、振動発生器から工具に向かう方向で先細りにされている。真っ直ぐな母線を備えた幾何学的な円錐形状と異なり、公知の超音波振動変換器の母面は凹面状である。母線が凹状に曲げられて延びている。
【0004】
本発明の課題は、高い効率と、工具に対する良好な適合可能性とを備えた、超音波穿孔のための超音波振動変換器を提案することである。
【0005】
この課題を解決するために本発明の構成では、当該超音波振動変換器が、中空体であり、該中空体の内室が、同じく前方の端部の方向に先細りにされているようにした。
【0006】
本発明の有利な構成によれば、当該超音波振動変換器が、その内室にコアを有しており、該コアが、当該超音波振動変換器に解離可能にかつ固く結合されている。
【0007】
本発明の有利な構成によれば、コアが、当該超音波振動変換器に部分的に結合されている。
【0008】
本発明の有利な構成によれば、コアが、後方の端部で当該超音波振動変換器に結合されている。
【0009】
本発明の有利な構成によれば、当該超音波振動変換器と振動発生器との結合が、コアを当該超音波振動変換器内に固く締め込んでいる。
【0010】
本発明の有利な構成によれば、当該超音波振動変換器が、回転体である。
【0011】
本発明の有利な構成によれば、当該超音波振動変換器および/または当該超音波振動変換器の内室が、長手方向で制限された範囲内で、前方の端部の方向に拡幅されている。
【0012】
本発明の有利な構成によれば、当該超音波振動変換器が、全周にわたって延びる少なくとも1つの縁部を有している。
【0013】
本発明による超音波振動変換器は中空体である。この中空体はその前方の端部の方向に先細りにされている。超音波振動変換器の内室も同じくその前方の端部の方向に先細りにされている。特に超音波振動変換器の肉厚はほぼコンスタントであり、超音波振動変換器は肉薄である。すなわち、孔を備えた自体中実のボディではなく、管状のボディである。肉厚は超音波振動変換器の内室の直径よりも小さく寸法設定されている。
【0014】
本発明による超音波振動変換器はその中空形状に基づき比較的僅かな力で長手方向に弾性変形可能となる。すなわち、振動発生が高い効率で工具に伝達される。超音波振動変換器は大きな振幅増幅を有していて、かつ/またはワークピースに対する工具の強いパルスを生ぜしめる。
【0015】
本発明の有利な構成では、超音波振動変換器が、その内室に配置されたコアを有している。このコアは超音波振動変換器に解離可能にかつ固く結合されている。解離可能性によって、コアが交換可能であると共に取外し可能であり、特に異なる質量を備えた別のコアの使用によって、超音波振動変換器を種々異なる工具に適合させることができる。「固く」とは、超音波振動変換器に対して不動の剛性的な結合の意味で解釈されたい。
【0016】
特にコアは部分的にしか、たとえば中間または一方の端部または両方の端部でしか超音波振動変換器に結合されていない。有利な構成では、コアがその後方の端部で超音波振動変換器に結合されている。これによって、コアが超音波振動変換器に対して振動することができる。特にコアはただ1つの箇所での超音波振動変換器との結合によって、この超音波振動変換器を補強せず、したがって、この超音波振動変換器の振動能を侵害しない。
【0017】
本発明の1つの構成は、超音波振動変換器と振動発生器との結合が、コアを超音波振動変換器内に固く締め込んでいることを提案する。これによって、超音波振動変換器内でのコアの遊びが排除されている。
【0018】
本発明の有利な構成では、超音波振動変換器が回転体である。
【0019】
本発明の1つの構成は、超音波振動変換器および/または超音波振動変換器の内室が、長手方向で制限された範囲内で、その前方の端部の方向に拡幅されていることを提案する。全体的に超音波振動変換器はその前方の端部の方向に先細りにされている。前述した実施態様では、超音波振動変換器が、長手方向で制限された1つまたはそれ以上の範囲内で、その前方の端部の方向に、全長にわたる一般的な先細りに抗して拡幅されている。たとえば、超音波振動変換器は、全周にわたって延びる胴部、すなわち、全周にわたって延びる湾出部を外向きに有している。胴部は中実に形成されていていもよいし、中空に起伏部として形成されていてもよい。超音波振動変換器の壁の内面の、全周にわたって延びる湾出部も可能である。本発明のこの構成によって、振動特性に影響を与えかつ振動特性を改善するための超音波振動変換器の意図的な構成が可能となる。たとえば、全周にわたって延びる胴部によって、縦振動を規定することができる。縦振動特性と横振動特性とには、超音波振動変換器の、全周わたって延びる胴部によって影響が与えられる。
【0020】
本発明の1つの構成は、超音波振動変換器の、全周にわたって延びる少なくとも1つの縁部を提案する。この全周にわたって延びる縁部は超音波振動変換器の外面にかつ/または内面に設けられていてよい。縁部では、超音波振動変換器の仮想母線がその方向を変化させる。これによっても、超音波振動変換器の振動特性に意図的に影響を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による超音波振動変換器の第1の構成の軸方向断面図である。
【図2】本発明による超音波振動変換器の第2の構成の軸方向断面図である。
【図3】本発明による超音波振動変換器の第3の構成の軸方向断面図である。
【0022】
本発明を、以下に、図面に示した実施例につき詳しく説明する。
【0023】
図1に示した本発明による超音波振動変換器1は、建設材料、たとえばコンクリート、石、煉瓦または石膏に超音波穿孔するために設けられている。超音波振動変換器1は回転体と中空体とを有している。超音波振動変換器1はその全長にわたって前方の端部2の方向に先細りにされている。内室3も同じく前方の端部2の方向に先細りにされている。超音波振動変換器1はその全長にわたって、ほぼ中空円錐形と見なすことができる。超音波振動変換器1は管状、すなわち、その直径に比べて肉薄である。肉厚はコンスタントである。図示の実施例では、超音波振動変換器1がアルミニウム合金から製作されている。別の金属または非金属材料からの製作は排除されていない。管形状もしくは中空体形状は、超音波振動変換器1の軸方向の弾性ひいては振動特性を改善する。
【0024】
超音波振動変換器1は後方の端部に中空円筒状の、すなわち、管状の区分4を有している。この区分4は前方の端部2の方向で、まず、拡幅された中空円錐台形部5に移行している。この中空円錐台形部5には、前方の端部2に向かって先細りにされた中空円錐台形部6が続いている。この中空円錐台形部6は後続の中空円錐部7に移行している。この中空円錐部7は、より鋭角の円錐角を備えて超音波振動変換器1の前方の端部2に向かって先細りにされている。この第3の中空円錐台形部7は前方の端部2に移行している。この端部2は中実円筒形状を有している。超音波振動変換器1の、この段落に列挙した軸方向区分4,5,6,7,2は互いに一体である。これらの軸方向区分4,5,6,7,2は、それぞれ全周にわたって延びる縁部8,9,10,11を超音波振動変換器1の内面および外面に形成して互いに移行している。中空円筒状の区分4と第1および第2の中空円錐台形部5,6とは一緒に軸方向で第3の中空円錐台形部7とほぼ同じ長さに寸法設定されている。一緒に第1および第2の中空円錐台形部5,6が、全周にわたって延びる膨出部を形成している。この膨出部は、全周にわたって延びる胴部12または全周にわたって延びる起伏部と呼ぶこともできる。
【0025】
前方の端部2に超音波振動変換器1は工具13を有している。図示の実施例では、この工具13がピン状である。この工具13は、たとえば硬質金属または十分な硬さおよび剛性の別の材料から成っている。工具13は、有利には交換可能に超音波振動変換器1の前方の端部2に固定されている。工具13は同時にアンカであってもよい。このアンカは超音波負荷によってアンカホールを自体穿孔する。
【0026】
超音波振動変換器1の中空円筒状の区分4は雌ねじ山を有している。この雌ねじ山には、コア14がねじ込まれている。このコア14は円錐形状を有している。このコア14は超音波振動変換器1の内室3に位置している。コア14は、上述したように、後方の端部に設けられたねじ山15によって超音波振動変換器1に結合されている。これによって、コア14が超音波振動変換器1の振幅・パルス増幅を妨害しないように、超音波振動変換器1がコア14に対して振動することができる。交換可能なコア14によって、超音波振動変換器1が各工具13に適合され、これによって、この工具13と、超音波振動変換器1と、振動発生器16とから成る系が、固有周波数もしくは高い穿孔効率を有する周波数で振動する。異なる重量および/または異なる長さを備えた工具13への適合のためには、コア14が交換される。固有周波数に関して、振動発生器16によって、この振動発生器16の振動部材が考えられている。
【0027】
超音波振動変換器1はその後方の端部で振動発生器16に対して緊締されている。この振動発生器16は、たとえば圧電式である。超音波振動変換器1との結合はねじ17によるねじ締結である。このねじ17は、超音波振動変換器1のコア14に設けられた雌ねじ山にねじ込まれている。ねじ17は超音波振動変換器1を振動発生器16に対して緊締していて、同時にコア14を遊びなしに超音波振動変換器1内に固く緊締している。
【0028】
振動発生器16は超音波振動変換器1を、この超音波振動変換器1が増幅させる波長および工具13に伝達する波長で励振する。これによって、ホールが、建設材料にも、硬質の建設材料、たとえばコンクリートにも穿孔可能となる。励振に対して付加的に超音波振動変換器1と工具13とは回転駆動することができる。超音波振動変換器1、特に全周にわたって延びる胴部12の中空形状は、半径方向の振動、すなわち、横振動を可能にしかつ縦振動を増幅する。
【0029】
図1に示した超音波振動変換器1と異なり、図2に示した超音波振動変換器1の、全周にわたって延びる胴部12は凹面状ではなく、内壁が円筒状である。これは、肉厚が、全周にわたって延びる胴部12の領域でより大きく寸法設定されていることを意味している。その他の点において、図2に示した超音波振動変換器1は、図1に示した超音波振動変換器1と同様に形成されており、繰返しを避けるために、上述した構成が参照される。同じ構成部材は、図2に図1と同じ符号で示してある。
【0030】
図1および図2に示した超音波振動変換器1が、硬質の材料、たとえばコンクリートに超音波穿孔するために設けられているのに対して、図3に示した本発明による超音波振動変換器1は、むしろ、より軟質の材料、たとえば煉瓦または石膏に対して設けられている。図1に比べて、図3に示した超音波振動変換器1では、前方の端部2に後方に続く第3の中空円錐台形部が、中空円筒部18と短い中空円錐台形部19とによって置き換えられている。これによって、全周にわたって延びる付加的な縁部20が形成されている。変更された形状付与は、工具13のより大きな振動振幅に繋がる。このためには、減少させられるパルス強度が甘受されなければならない。より軟質の材料における穿孔進度は、この変更された調整もしくは変更された振動特性および振動伝達特性によって改善されている。その他の点では、図3に示した超音波振動変換器1も、図1および図2に示した超音波振動変換器1と同様に形成されていて、同様に機能する。この限りにおいて、繰返しを避けるために、図3の説明に対して図1および図2に対する構成が参照される。同じ構成部材は、図3に図1および図2と同じ符号で示してある。
【符号の説明】
【0031】
1 超音波振動変換器
2 前方の端部
3 内室
4 区分
5 中空円錐台形部
6 中空円錐台形部
7 中空円錐台形部
8 縁部
9 縁部
10 縁部
11 縁部
12 胴部
13 工具
14 コア
15 ねじ山
16 振動発生器
17 ねじ
18 中空円筒部
19 中空円錐台形部
20 縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波穿孔のための超音波振動変換器であって、当該超音波振動変換器(1)が、前方の端部(2)の方向に先細りにされている形式のものにおいて、当該超音波振動変換器(1)が、中空体であり、該中空体の内室(3)が、同じく前方の端部(2)の方向に先細りにされていることを特徴とする、超音波穿孔のための超音波振動変換器。
【請求項2】
当該超音波振動変換器(1)が、その内室(3)にコア(14)を有しており、該コア(14)が、当該超音波振動変換器(1)に解離可能にかつ固く結合されている、請求項1記載の超音波振動変換器。
【請求項3】
コア(14)が、当該超音波振動変換器(1)に部分的に結合されている、請求項2記載の超音波振動変換器。
【請求項4】
コア(14)が、後方の端部で当該超音波振動変換器(1)に結合されている、請求項3記載の超音波振動変換器。
【請求項5】
当該超音波振動変換器(1)と振動発生器(16)との結合が、コア(14)を当該超音波振動変換器(1)内に固く締め込んでいる、請求項2記載の超音波振動変換器。
【請求項6】
当該超音波振動変換器(1)が、回転体である、請求項1記載の超音波振動変換器。
【請求項7】
当該超音波振動変換器(1)および/または当該超音波振動変換器(1)の内室(3)が、長手方向で制限された範囲内で、前方の端部(2)の方向に拡幅されている、請求項1記載の超音波振動変換器。
【請求項8】
当該超音波振動変換器(1)が、全周にわたって延びる少なくとも1つの縁部(8,9,10,11,20)を有している、請求項1記載の超音波振動変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−505050(P2010−505050A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529562(P2009−529562)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007889
【国際公開番号】WO2008/037348
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509003117)フィッシャーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】fischerwerke GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Weinhalde 14−18, D−72178 Waldachtal, Germany
【Fターム(参考)】