説明

超音波診断装置、及び超音波診断装置の制御プログラム

【課題】超音波診断装置において、バブルによる染影の認識を容易とすること。
【解決手段】超音波診断装置10は、第1中心周波数を有する第1パルス、及び第1中心周波数とは異なる第2中心周波数を有する第2パルスを合成した第1合成パルスと、第1パルス、及び第2パルスの逆位相の第3のパルスを合成した第2合成パルスと、を順不同で被検体に順次送信させる合成パルス送信制御部31と、受信される第1合成パルスに対応する第1受信エコーと、第2合成パルスに対応する第2受信エコーとを差分して、演算エコーを生成する信号処理部32と、演算エコーを基に、超音波画像を生成する画像生成手段と、超音波画像を表示させる表示手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に超音波パルスを照射し、被検体内で生じた超音波エコーを受信して各種処理を行なうことにより被検体内の生体情報を得る超音波診断装置に係り、特に造影剤を用いたコントラストエコー法による撮像を行なう超音波診断装置、及び超音波診断装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は生体内情報の超音波画像を取得し表示する診断装置であり、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の画像診断装置に比べ、安価で被爆が無く、非侵襲性に実時間で観測するための有用な装置として利用されている。係る特性から、超音波診断装置の適用範囲は広く、心臓などの循環器から肝臓、腎臓などの腹部、抹消血管、産婦人科、脳血管等の診断に利用されている。
【0003】
超音波診断装置による撮影法の一つに、コントラストエコー法と称される撮影手法がある。コントラストエコー法は、被検体の血管内に造影剤としてマイクロバブルを投与することで、超音波散乱エコーの増強を図るものである。コントラストエコー法による撮像では、所定の周波数スペクトルを有する超音波パルスが照射され、造影剤であるマイクロバブルから得られる超音波エコーの非線形成分に基づくハーモニック成分が映像化に用いられる。
【0004】
コントラストエコー法の従来技術として、受信信号にフィルタをかけることによって送信の2倍の周波数成分を影像化する第1の手法がある。また、位相が相互に反転された合成パルスを複数回送信して、受信エコーを加算することで2次高調波を影像化する第2の手法がある。また、振幅及び位相を変えながらパルスを複数回送信して、取得された受信エコーに重み係数をかけながら加減算する第3の手法がある。また、複数の周波数を合成した送信と合成しない送信を行ない、重み係数をかけて加減算を行なって影像化する第4の手法がある。
【0005】
なお、本発明に関連する従来技術として、非特許文献1,2が挙げられる。
【非特許文献1】Folkert J. Ten Cate, Nico de jong, Thomas Albrecht, Abstract Book of “The Twelfth European Symposium on Ultrasound Contrast Imaging” January 25-26, 2007
【非特許文献2】関伸之他、高周波パラメトリック音源による超音波映像、電子通信学会技術研究報告、1984年11月26日発行、第84巻、第206号、第35−40頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した第1乃至第4のいずれの手法においても、組織信号が映像に現れることがあり、バブルからの信号のみを高感度に映像化できないことがある。
【0007】
前述の第1の手法によると、送信パルスの中心周波数の2倍の周波数への組織の基本波成分の漏れや、組織の非線形成分も影像化してしまう。
【0008】
前述の第2の手法によると、送信パルスの中心周波数の2倍の周波数への組織の基本波成分の漏れは抑制できるものの、依然として組織の非線形成分が影像化されてしまう。
【0009】
前述の第3の手法によると、例えば第1送信で大きな振幅の送信パルスを送信し、第2送信で小さな振幅の送信パルスを送信し、受信信号で飽和が起きた場合、加減算では組織信号を除去することができない。
【0010】
前述の第4の手法によると、第3の手法の場合と同様に受信信号の飽和が問題となる。例えば、第1送信で低周波のパルスと高周波のパルスを合成した合成パルスを送信し、第2送信で低周波のパルスを送信し、第3送信で高周波のパルスを送信する場合、超音波パルスを合計3回送信しているものの、各周波数で考えると2回しか送信していない。そのためモーションアーチファクトが発生しやすくなる。
【0011】
本発明は、上述のような事情を考慮してなされたもので、ユーザが、バブルによる染影を容易に認識することができる超音波診断装置及び超音波診断装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る超音波診断装置は、上述の目的を達成するために、第1中心周波数を有する第1パルス、及び前記第1中心周波数とは異なる第2中心周波数を有する第2パルスを合成した第1合成パルスと、前記第1パルス、及び前記第2パルスの逆位相の第3のパルスを合成した第2合成パルスと、を順不同で被検体に送信させる送信手段と、前記第1合成パルスに対応する第1受信エコーと、前記第2合成パルスに対応する第2受信エコーとをそれぞれ受信する受信手段と、前記第1受信エコー及び前記第2受信エコーを差分して、演算エコーを生成する演算エコー生成手段と、前記演算エコーを基に、超音波画像を生成する画像生成手段と、前記超音波画像を表示させる表示手段と、を備える。
【0013】
また、本発明に係る超音波診断装置の制御プログラムは、上述の目的を達成するために、コンピュータに、第1中心周波数を有する第1パルス、及び前記第1中心周波数とは異なる第2中心周波数を有する第2パルスを合成した第1合成パルスと、前記第1パルス、及び前記第2パルスの逆位相の第3のパルスを合成した第2合成パルスと、を順不同で被検体に送信させる送信機能と、前記第1合成パルスに対応する第1受信エコーと、前記第2合成パルスに対応する第2受信エコーとをそれぞれ受信する受信機能と、前記第1受信エコー及び前記第2受信エコーを差分して、演算エコーを生成する演算エコー生成機能と、前記演算エコーを基に、超音波画像を生成する画像生成機能と、前記超音波画像を表示させる表示機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る超音波診断装置及び超音波診断装置の制御プログラムによると、組織からの超音波エコーを抑圧しつつ、より多くの異なる半径のバブルからの超音波エコーを映像化することにより、バブルによる染影を容易に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る超音波診断装置、及び超音波診断装置の制御プログラムの実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、第1実施形態の超音波診断装置の構成を示す概略図である。
【0017】
図1は、第1実施形態の超音波診断装置10を示す。超音波診断装置10は、超音波プローブ11、装置本体12、ディスプレイ13及び操作パネル14によって構成される。
【0018】
超音波プローブ11は、圧電セラミック等の音響/電気可逆的変換素子としての複数の超音波振動子を有する。複数の超音波振動子は並列され、超音波プローブ11の先端に装備される。各超音波振動子は、供給される駆動信号(電圧パルス)に従ってそれぞれ所定のタイミングで超音波を発生する。各超音波振動子からの超音波はビームを形成し、被検体内の音響インピーダンスの不連続面で反射される。各超音波振動子は、この反射波を受信し受信エコーを発生し、チャンネル毎に装置本体12に取り込まれる。
【0019】
なお、超音波プローブ11は、複数の超音波振動子が一方向に沿って配列された一次元アレイプローブ、複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列された二次元アレイプローブのいずれであってもよい。
【0020】
また、超音波プローブ11は、送信超音波に起因して発生する二次ハーモニック成分とDCハーモニック成分との双方を含む広帯域なもの(例えば、比帯域100%程度のもの)とする。ここで、DCハーモニック成分とは、スペクトラム分布において周波数0の付近に出現するハーモニック成分を意味する。また、二次ハーモニック成分とは、例えば周波数fの基本波を送信した場合に、スペクトラム分布において周波数2fの付近に出現するハーモニック成分を意味する。
【0021】
装置本体11は、超音波送信部21、超音波受信部22、Bモード処理部23、ドプラ処理部24、画像生成部25、表示制御部26、画像メモリ27、CPU(central processing unit)28、内部記憶装置29、IF(inter face)30、及び外部記憶装置31を設ける。
【0022】
超音波送信部21は、図示しないパルサ、送信遅延器及びトリガ発生器等を有する。パルサは、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延器は、超音波をチャンネル毎にビーム状に集束し、かつ、送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を各レートパルスに与える。トリガ発生器は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11の圧電振動子に駆動パルスを印加する。
【0023】
超音波受信部22は、図示しないアンプ、A/D(analog to digital)変換器、及び加算器等を有している。アンプは、超音波プローブ11を介して取り込まれた受信エコーをチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された受信エコーに対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行なう。加算器による加算により、所定の走査線(ラスタ)に対応した受信エコーが生成される。
【0024】
Bモード処理部23は、超音波受信部22から出力される受信エコーや後述する演算エコーを包絡線検波し、検波データとして出力する。
【0025】
ドプラ処理部24は、周波数解析によりその解析結果や、フィルタを用いて血流成分を抽出し平均速度、分散、及びパワー等の血流情報を多点について求める。
【0026】
画像生成部25は、Bモード処理部23から入力された走査線信号列で構成される検波データを用いてフレーム相関処理等を実行した後、空間情報に基づいた直交座標系のデータに変換することでBモード画像を生成する。また、画像生成部25は、ドプラ処理部24から入力された血流情報を用いて、平均速度画像、分散画像、パワー画像、及びこれらの組み合わせ画像を生成する。
【0027】
表示制御部26は、画像生成部25から出力された超音波画像と所定の情報(例えば文字情報、及び指定されたROI(region of interest)等)とを合成し、合成信号をディスプレイ14に送る。
【0028】
画像メモリ27は、CPU28による制御によって、Bモード処理部23及びドプラ処理部24から出力される信号データ(生データ)や、画像生成部25から出力される画像データ(静止画像、動画像)を記憶する。
【0029】
CPU28は、半導体で構成された電子回路が複数の端子を持つパッケージに封入されている集積回路(LSI)の構成をもつ制御装置である。CPU28は、内部記憶装置29に記憶しているプログラムを実行して装置本体12を包括的に制御する機能を有する。又は、CPU28は、外部記憶装置31に記憶しているプログラム、ネットワークNから転送されIF30で受信されて外部記憶装置31にインストールされたプログラムを、内部記憶装置29にロードして実行する機能を有する。
【0030】
内部記憶装置29は、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)等の要素を兼ね備える構成をもつ記憶装置である。内部記憶装置29は、IPL(initial program loading)、BIOS(basic input/output system)を記憶する機能を有する。また、内部記憶装置29は、超音波診断装置10の制御プログラム等のプログラムを記憶したり、CPU28のワークメモリやデータの一時的な記憶に用いたりする機能を有する。
【0031】
IF30は、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。IF30は、操作パネル14、病院基幹のLAN(local area network)等のネットワークN、外部記憶装置31及び操作パネル14等に関するインターフェースである。装置本体12によって取得された超音波画像等のデータや解析結果等は、IF30によって、ネットワークNを介して他の装置に転送可能である。
【0032】
外部記憶装置31は、磁性体を塗布又は蒸着した金属のディスクが読み取り装置(図示しない)に着脱不能で内蔵されている構成をもつ記憶装置である。外部記憶装置31は、装置本体12にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)を記憶する機能を有する。また、OSに、ユーザに対する情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を操作パネル14によって行なうことができるGUI(graphical user interface)を提供させることもできる。
【0033】
内部記憶装置29又は外部記憶装置31は、本発明に係る超音波診断プログラム等の制御プログラムや、診断情報(患者ID(identification)及び医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件及びその他のデータ群を格納している。また、内部記憶装置29又は外部記憶装置31は、必要に応じて、画像メモリ25に一時的に記憶される三次元画像の保管等にも使用される。さらに、内部記憶装置29又は外部記憶装置31に記憶されたデータは、IF30を介してネットワークN網へ転送することも可能となっている。
【0034】
ディスプレイ13は、液晶ディスプレイやCRT(cathode ray tube)等によって構成される。ディスプレイ13は、表示制御部26から出力されるビデオ信号を基に、生体内の形態学的情報や、血流情報を静止画像又は動画像として表示する。
【0035】
操作パネル14は、トラックボール14a、各種スイッチ14b、ボタン14c、マウス14d及びキーボード14e等によって構成される。操作パネル14は、装置本体12に接続され、ユーザ(操作者)からの各種指示、例えば、ROIの設定指示、画質条件設定指示等を装置本体12に入力する機能を有する。ユーザは、操作パネル14を介して、超音波プローブ11から送信される超音波パルスの送信周波数、送信駆動電圧(音圧)、送信パルスレート及びスキャン領域や、受信条件等を装置本体12に入力することができる。
【0036】
図2は、第1実施形態の超音波診断装置10の機能を示すブロック図である。
【0037】
図1に示すCPU28がプログラムを実行することによって、超音波診断装置10は、合成パルス送信制御部31及び信号処理部32として機能する。なお、第1実施形態では、各部31及び32は、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムの実行によって機能されるものとして説明するが、それら全部又は一部は集積回路等のハードウェアで構成されるものであってもよい。
【0038】
内部記憶装置29等の記憶装置は、各走査線に対して、第1周波数スペクトル(例えば、中心周波数fa=1[MHz])を有するパルスPfa+、及び第1周波数スペクトルとは中心周波数が異なる第2周波数スペクトル(例えば、中心周波数fb=3[MHz])を有するパルスPfb+を合成(加算)した第1合成パルスPF1と、パルスPfa+、及びパルスPfb+の逆位相のパルスPfb−を合成した第2合成パルスPF2と、を一定の間隔で順次送信するスキャンシーケンスSS1を記憶している。スキャンシーケンスSS1によると、基本波成分を含む広い周波数帯域に対応するマイクロバブルからの受信エコーを取得することができる。
【0039】
図3は、スキャンシーケンスSS1を構成する各超音波パルス(合成パルスPF1,PF2)の生成例を示す図である。図4は、スキャンシーケンスSS1を構成する各超音波パルス(合成パルスPF1,PF2)の波形と、各超音波パルスの周波数特性を示す図である。
【0040】
図3に示すように、スキャンシーケンスSS1は、第1合成パルスPF1及び第2合成パルスPF2によって構成される。図3に示すように、第1合成パルスPF1は、パルスPfa+と、パルスPfb+とを合成して形成される。また、図3に示すように、第2合成パルスPF2は、パルスPfa+と、パルスPfb−とを合成して形成される。
【0041】
また、図2に示す合成パルス送信制御部31は、記憶装置に記憶されているスキャンシーケンスSS1に従って超音波送信部21を制御して、超音波プローブ11(図1に示す)から送信される超音波パルスの中心周波数、周波数分布、振幅、周波数帯域、位相、及び送信焦点等の周波数スペクトルを含む特性を設定し、設定された特性を有する超音波パルスを超音波プローブ11から送信させる機能を有する。特に、合成パルス送信制御部31は、スキャンシーケンスSS1に従って超音波送信部21を制御して、超音波プローブ11から、超音波パルスとしての第1合成パルスPF1及び第2合成パルスPF2を順不同で順次送信させる機能を有する。このため、超音波プローブ11からは、各走査線に対して、第1合成パルスPF1及び第2合成パルスPF2が順次送信される。
【0042】
被検体P内には異なる半径を有するマイクロバブルが多数存在するので、マイクロバブルや組織に超音波パルスが反射することによって生じた超音波エコーが、超音波プローブ11にて受信される。超音波プローブ11によって受信された2つの合成パルスPF1,PF2に対応する各超音波エコーは、電気信号である受信エコーEPF1,EPF2に変換されて超音波受信部22に順次与えられる。
【0043】
図5は、受信エコーEPF1の周波数特性を示す図である。
【0044】
中心周波数が1[MHz]の超音波パルスのみを被検体Pに送信すれば、受信エコー中の主に2[MHz]付近に非線形成分が発生する。また、中心周波数が3[MHz]の超音波パルスのみを被検体Pに送信すれば、受信エコー中の主に6[MHz]付近に非線形成分が発生する。しかしながら、中心周波数が1[MHz]のパルスと中心周波数が3[MHz]のパルスとの合成パルスを被検体Pに送信すると、図5に示すように、1[MHz]付近、2[MHz]付近、及び3[MHz](3[MHz]付近には基本波も含む)付近に非線形成分が発生する。つまり、異なる周波数のパルスが合成された合成パルスよるバブルの振る舞いは、非合成パルスによるバブルの振る舞いとは異なる。
【0045】
また、図2に示す信号処理部32は、合成パルス送信制御部31による制御によって超音波受信部22から出力される、第1合成パルスPF1に対応する受信エコーEPF1と、第2合成パルスPF2に対応する受信エコーEPF2とを用いて次の式(1)に示す信号処理を行ない、映像化するための演算エコーD1を生成する機能を有する。
[数1]
D1=EPF1−EPF2 …(1)
(D1=EPF2−EPF1
信号処理部32によって算出される演算エコーD1は、Bモード処理部23に出力される。Bモード処理部23は、被検体P(臓器)に応じて、演算エコーD1における基本波成分又はハーモニック成分の周波数の包絡線を検波する。
【0046】
スキャンシーケンスSS1によると、パルスPfb+、パルスPfb−の送信によるFM(frequency modulation)、PM(phase modulation)の効果によって、被検体P内のマイクロバブルを、基本波成分、又はハーモニック成分に基づいて高感度に映像化することができる。
【0047】
なお、1走査線に対する合成パルスの送信回数を増やすことで、モーションアーチファクトを低減させてもよい。例えば、合成パルスを3回(第1合成パルスPF1を2回、第2合成パルスPF2を1回)送信する場合、信号処理部32は、次の式(2)を用いて演算エコーD1を算出する。
[数2]
D1=0.5×EPF1−y1×EPF2+x2×EPF1 …(2)
ここで、各係数(上記式(2)の「0.5」、「−1.0」、及び「0.5」)の総和がゼロになるように設定する。
【0048】
第1実施形態の超音波診断装置10によると、組織からの受信エコー及びモーションアーチファクトを抑圧しつつ、より多くの異なる半径のバブルからの超音波エコーを映像化することにより、ユーザは、バブルによる染影を容易に認識することができる。
【0049】
図6は、第2実施形態の超音波診断装置の機能を示すブロック図である。
【0050】
第2実施形態の超音波診断装置10Aの構成は、図1に示す第2実施形態の超音波診断装置10と同様であるので説明を省略する。
【0051】
図1に示すCPU28がプログラムを実行することによって、超音波診断装置10Aは、合成パルス送信制御部31A及び信号処理部32Aとして機能する。なお、第1実施形態では、各部31A及び32Aは、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムの実行によって機能されるものとして説明するが、それら全部又は一部は集積回路等のハードウェアで構成されるものであってもよい。
【0052】
内部記憶装置29等の記憶装置は、各走査線に対して、第1合成パルスPF1と、第2合成パルスPF2と、パルスPfb+と、パルスPfb−と、を一定の間隔で順次送信するスキャンシーケンスSS2を記憶している。スキャンシーケンスSS2によると、基本波成分を含む広い周波数帯域に対応するマイクロバブルからの受信エコーを取得することができる。
【0053】
図7は、スキャンシーケンスSS2を構成する各超音波パルス(合成パルスPF1,PF2、パルスPfb+,Pfb−)の生成例を示す図である。
【0054】
図7に示すように、スキャンシーケンスSS2は、第1合成パルスPF1、第2合成パルスPF2、パルスPfb+及びパルスPfb−によって構成される。
【0055】
また、図6に示す合成パルス送信制御部31Aは、記憶装置に記憶されているスキャンシーケンスSS2に従って超音波送信部21を制御して、超音波プローブ11(図1に示す)から送信される周波数スペクトルを含む特性を設定し、設定された特性を有する超音波パルスを超音波プローブ11から送信させる。特に、合成パルス送信制御部31Aは、スキャンシーケンスSS2に従って超音波送信部21を制御して、超音波プローブ11から、超音波パルスとしての第1合成パルスPF1、第2合成パルスPF2、パルスPfb+及びパルスPfb−を順不同で順次送信させる。このため、超音波プローブ11からは、各走査線に対して、第1合成パルスPF1、第2合成パルスPF2、パルスPfb+及びパルスPfb−が順次送信される。
【0056】
被検体P内のマイクロバブルや組織に超音波パルスが反射することによって生じた超音波エコーが、超音波プローブ11にて受信される。超音波プローブ11によって受信された、4つの合成パルスPF1,PF2、パルスPfb+,Pfb−に対応する各超音波エコーは、電気信号である受信エコーEPF1,EPF2,EPfb+,EPfb−に変換されて超音波受信部22に順次与えられる。
【0057】
信号処理部32Aは、合成パルス送信制御部31Aによる制御によって超音波受信部22から出力される、第1合成パルスPF1に対応する受信エコーEPF1と、第2合成パルスPF2に対応する受信エコーEPF2とを用いて次の式(3)に示す信号処理を行ない、中間演算エコーC2を算出する機能を有する。
[数3]
C2=EPF1−EPF2 …(3)
(C2=EPF2−EPF1
【0058】
また、信号処理部32Aは、パルスPfb+に対応する受信エコーEPb2+、パルスPfb−に対応する受信エコーEPfb−、及び中間演算エコーC2を基に、次の式(4)を用いて、演算エコーD2を算出する機能を有する。
[数4]
D2=C2−(EPf2+−EPf2−) …(4)
(D2=C2−(EPf2−−EPf2+))
【0059】
信号処理部32Aによって算出される演算エコーD2は、Bモード処理部23に出力される。Bモード処理部23は、被検体P(臓器)に応じて、演算エコーD2における基本波成分又はハーモニック成分の周波数の包絡線を検波する。
【0060】
スキャンシーケンスSS2によると、パルスPfb+、パルスPfb−の送信によるFM、PMの効果によって、被検体P内のマイクロバブルを、基本波成分、又はハーモニック成分に基づいて高感度に映像化することができる。
【0061】
また、パルスPfb+、パルスPfb−の送信による他周波数帯域への漏れ成分が、パルスPfa+の周波数帯域に入り込むことがある。よって、信号処理部32Aが、中間演算エコーC2から、受信エコーEPf2+,EPf2−の差分を差分して演算エコーD2を算出することで、パルスPfa+の周波数帯域に入り込むパルスPfb+、パルスPfb−の漏れ成分を削除することができる。
【0062】
第2実施形態の超音波診断装置10Aによると、第1実施形態の超音波診断装置10を用いるよりも組織からの受信エコー及びモーションアーチファクトを抑圧しつつ、より多くの異なる半径のバブルからの超音波エコーを映像化することにより、ユーザは、バブルによる染影を容易に認識することができる。
【0063】
図8は、第3実施形態の超音波診断装置の機能を示すブロック図である。
【0064】
第3実施形態の超音波診断装置10Bの構成は、図1に示す第2実施形態の超音波診断装置10と同様であるので説明を省略する。
【0065】
図1に示すCPU28がプログラムを実行することによって、超音波診断装置10Bは、合成パルス送信制御部31B及び信号処理部32Bとして機能する。なお、第1実施形態では、各部31B及び32Bは、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムの実行によって機能されるものとして説明するが、それら全部又は一部は集積回路等のハードウェアで構成されるものであってもよい。
【0066】
内部記憶装置29等の記憶装置は、各走査線に対して、第1合成パルスPF1と、パルスPfa+の逆位相のパルスPfa−、及びパルスPfb+を合成した第3の合成パルスFP3と、第2合成パルスPF2と、パルスPfa−、及びパルスPfb−を合成した第4の合成パルスFP4と、を一定の間隔で順次送信するスキャンシーケンスSS3を記憶している。スキャンシーケンスSS3によると、基本波成分を含む広い周波数帯域に対応するマイクロバブルからの受信エコーを取得することができる。
【0067】
図9は、スキャンシーケンスSS3を構成する各超音波パルス(合成パルスPF1,FP3,PF2,FP4)の生成例を示す図である。
【0068】
図9に示すように、スキャンシーケンスSS3は、第1合成パルスPF1、第3の合成パルスFP3、第2合成パルスPF2及び第4の合成パルスFP4によって構成される。図9に示すように、第3の合成パルスFP3は、パルスPfa−と、パルスPfb+とを合成して形成される。また、図9に示すように、第4の合成パルスFP4は、パルスPfa−と、パルスPfb−とを合成して形成される。
【0069】
また、図8に示す合成パルス送信制御部31Bは、記憶装置に記憶されているスキャンシーケンスSS3に従って超音波送信部21を制御して、超音波プローブ11(図1に示す)から送信される周波数スペクトルを含む特性を設定し、設定された特性を有する超音波パルスを超音波プローブ11から送信させる。特に、合成パルス送信制御部31Bは、スキャンシーケンスSS3に従って超音波送信部21を制御して、超音波プローブ11から、超音波パルスとしての第1合成パルスPF1、第3の合成パルスFP3、第2合成パルスPF2及び第4の合成パルスFP4を順不同で順次送信させる。このため、超音波プローブ11からは、各走査線に対して、第1合成パルスPF1、第3の合成パルスFP3、第2合成パルスPF2及び第4の合成パルスFP4が順次送信される。
【0070】
被検体P内のマイクロバブルや組織に超音波パルスが反射することによって生じた超音波エコーが、超音波プローブ11にて受信される。超音波プローブ11によって受信された4つの合成パルスPF1,FP3,PF2,FP4に対応する各超音波エコーは、電気信号である受信エコーEPF1,EFP3,EPF2,EFP4に変換されて超音波受信部22に順次与えられる。
【0071】
信号処理部32Bは、合成パルス送信制御部31Bによる制御によって超音波受信部22から出力される、第1合成パルスPF1に対応する受信エコーEPF1と、第3の合成パルスFP3に対応する受信エコーEFP3とを用いて次の式(5)に示す信号処理を行ない、中間演算エコーC3を算出する機能を有する。
[数5]
C3=EPF1−EFP3 …(5)
(C3=EFP3−EPF1
【0072】
さらに、信号処理部32Bは、合成パルス送信制御部31Bによる制御によって超音波受信部22から出力される、第2合成パルスPF2に対応する受信エコーEPF2と、第4の合成パルスFP4に対応する受信エコーEFP4とを差分する次の式(6)に示す信号処理を行ない、中間演算エコーC3´を算出する機能を有する。
[数6]
C3´=EPF2−EFP4 …(6)
(C3´=EFP4−EPF2
【0073】
また、信号処理部32Bは、中間演算エコーC3,C3´を基に、次の式(7)を用いて、演算エコーD3を算出する機能を有する。
[数7]
D3=C3−C3´ …(7)
(D3=C3´−C3)
【0074】
信号処理部32Bによって算出される演算エコーD3は、Bモード処理部23に出力される。Bモード処理部23は、被検体P(臓器)に応じて、演算エコーD3における基本波成分又はハーモニック成分の周波数の包絡線を検波する。
【0075】
スキャンシーケンスSS3によると、パルスPfa+、パルスPfa−の送信によるFM、PMの効果によって、被検体P内のマイクロバブルを、基本波成分、又はハーモニック成分に基づいて高感度に映像化することができる。
【0076】
また、パルスPfa+、パルスPfa−の送信による他周波数帯域への漏れ成分が、パルスPfb+の周波数帯域に入り込むことがある。よって、信号処理部32Bが、中間演算エコーC3から、受信エコーEPF2,EFP4の差分を差分して演算エコーD3を算出することで、パルスPfb+の周波数帯域に入り込むパルスPfa+、パルスPfa−の漏れ成分を削除することができる。
【0077】
第3実施形態の超音波診断装置10Bによると、組織からの受信エコー及びモーションアーチファクトを抑圧しつつ、より多くの異なる半径のバブルからの超音波エコーを映像化することにより、ユーザは、バブルによる染影を容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態の超音波診断装置の構成を示す概略図。
【図2】第1実施形態の超音波診断装置の機能を示すブロック図。
【図3】スキャンシーケンスSS1を構成する各超音波パルス(合成パルスPF1,PF2)の生成例を示す図。
【図4】スキャンシーケンスSS1を構成する各超音波パルス(合成パルスPF1,PF2)の波形と、各超音波パルスの周波数特性を示す図。
【図6】第2実施形態の超音波診断装置の機能を示すブロック図。
【図7】スキャンシーケンスSS2を構成する各超音波パルス(合成パルスPF1,PF2、パルスPfb+,パルスPfb−)の生成例を示す図。
【図8】第3実施形態の超音波診断装置10の機能を示すブロック図。
【図9】スキャンシーケンスSS3を構成する各超音波パルス(合成パルスPF1,FP3,PF2,FP4)の生成例を示す図。
【符号の説明】
【0079】
10、10A,10B 超音波診断装置
11 超音波プローブ
12 装置本体
13 ディスプレイ
14 操作パネル
21 送超音波送信部
22 送超音波受信部
31,31A,31B 合成パルス送信制御部
32,32A,32B 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中心周波数を有する第1パルス、及び前記第1中心周波数とは異なる第2中心周波数を有する第2パルスを合成した第1合成パルスと、前記第1パルス、及び前記第2パルスの逆位相の第3のパルスを合成した第2合成パルスと、を順不同で被検体に送信させる送信手段と、
前記第1合成パルスに対応する第1受信エコーと、前記第2合成パルスに対応する第2受信エコーとをそれぞれ受信する受信手段と、
前記第1受信エコー及び前記第2受信エコーを差分して、演算エコーを生成する演算エコー生成手段と、
前記演算エコーを基に、超音波画像を生成する画像生成手段と、
前記超音波画像を表示させる表示手段と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記送信手段は、前記第1合成パルスと、前記第2合成パルスと、前記第2パルスと、前記第3パルスと、を順不同で前記被検体に送信させ、
前記受信手段は、前記第1受信エコーと、前記第2受信エコーと、前記第2パルスに対応する第3受信エコーと、前記第3パルスに対応する第4受信エコーと、をそれぞれ受信し、
前記演算エコー生成手段は、前記第1受信エコー及び前記第2受信エコーの差分エコーと、前記第3受信エコー及び前記第4受信エコーの差分エコーとを差分して前記演算エコーを生成することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記送信手段は、前記第1合成パルスと、前記第2合成パルスと、前記第1パルスの逆位相の第4パルス、及び前記第2パルスを合成した第3の合成パルスと、前記第4パルス、及び第3合成パルスを合成した第4合成パルスと、を順不同で前記被検体に送信させ、
前記受信手段は、前記第1受信エコーと、前記第2受信エコーと、前記第3合成パルスに対応する第3受信エコーと、前記第4合成パルスに対応する第4受信エコーと、をそれぞれ受信し、
前記演算エコー生成手段は、前記第1受信エコー及び前記第2受信エコーの差分エコーと、前記第3受信エコー及び前記第4受信エコーの差分エコーとを差分して前記演算エコーを生成することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像生成手段は、前記第1中心周波数を中心とする周波数帯域又は前記第2中心周波数を中心とする周波数帯域を映像化することによって、前記超音波画像を生成することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記送信手段は、前記第1中心周波数は、前記第2中心周波数より低い周波数として設定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
コンピュータに、
第1中心周波数を有する第1パルス、及び前記第1中心周波数とは異なる第2中心周波数を有する第2パルスを合成した第1合成パルスと、前記第1パルス、及び前記第2パルスの逆位相の第3のパルスを合成した第2合成パルスと、を順不同で被検体に送信させる送信機能と、
前記第1合成パルスに対応する第1受信エコーと、前記第2合成パルスに対応する第2受信エコーとをそれぞれ受信する受信機能と、
前記第1受信エコー及び前記第2受信エコーを差分して、演算エコーを生成する演算エコー生成機能と、
前記演算エコーを基に、超音波画像を生成する画像生成機能と、
前記超音波画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項7】
前記送信機能は、前記第1合成パルスと、前記第2合成パルスと、前記第2パルスと、前記第3パルスと、を順不同で前記被検体に送信させ、
前記受信機能は、前記第1受信エコーと、前記第2受信エコーと、前記第2パルスに対応する第3受信エコーと、前記第3パルスに対応する第4受信エコーと、をそれぞれ受信し、
前記演算エコー生成機能は、前記第1受信エコー及び前記第2受信エコーの差分エコーと、前記第3受信エコー及び前記第4受信エコーの差分エコーとを差分して前記演算エコーを生成することを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項8】
前記送信機能は、前記第1合成パルスと、前記第2合成パルスと、前記第1パルスの逆位相の第4パルス、及び前記第2パルスを合成した第3の合成パルスと、前記第4パルス、及び第3合成パルスを合成した第4合成パルスと、を順不同で前記被検体に送信させ、
前記受信機能は、前記第1受信エコーと、前記第2受信エコーと、前記第3合成パルスに対応する第3受信エコーと、前記第4合成パルスに対応する第4受信エコーと、をそれぞれ受信し、
前記演算エコー生成機能は、前記第1受信エコー及び前記第2受信エコーの差分エコーと、前記第3受信エコー及び前記第4受信エコーの差分エコーとを差分して前記演算エコーを生成することを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項9】
前記画像生成機能は、前記第1中心周波数を中心とする周波数帯域又は前記第2中心周波数を中心とする周波数帯域を映像化することによって、前記超音波画像を生成することを特徴とする請求項6乃至8のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項10】
前記送信手段は、前記第1中心周波数は、前記第2中心周波数より低い周波数として設定することを特徴とする請求項6乃至9のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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