説明

超音波診断装置、画像処理装置、及び解析プログラム

【課題】超音波画像上に表される情報を定量的に表現することを課題とする。
【解決手段】超音波送信ユニット21及び超音波受信ユニット22が、超音波プローブ12を介して複数方向の超音波ビームを送信するとともに超音波プローブ12を介して複数方向のエコー信号を受信する。また、Bモード処理ユニット23及び画像生成ユニット25が、超音波受信ユニット22によって受信されたエコー信号を用いて超音波ビームの方向毎に断層像を生成する。また、解析部28aが、超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較し、比較に基づいて解析を行う。また、解析結果表示制御部28bが、解析部28aによって解析された解析結果をモニタ14に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、超音波診断装置、画像処理装置、及び解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などの他の医用画像診断装置に比べ装置規模が小さい。また、超音波診断装置は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡便な操作により、例えば心臓の拍動や胎児の動きといった検査対象の動きの様子をリアルタイムで表示可能である。このようなことから、超音波診断装置は、今日の医療において重要な役割を果たしている。また、被曝のおそれがない超音波診断装置には、片手で持ち運べる程度に小型化された装置も開発されており、かかる超音波診断装置は、産科や在宅医療などの医療現場においても容易に使用することができる。
【0003】
ところで、近年、高周波プローブの開発や画像処理技術の発展に伴い超音波画像の分解能が飛躍的に向上し、超音波診断装置の利用が急激に増加している。例えば整形外科領域などにおいては、筋肉や腱など、微小な線維が束状に集まった層構造の軟部組織が観察対象とされるが、超音波診断装置は、その層構造を超音波画像上に表すことができる。このため、超音波画像上で層構造の消失や断裂が観察された場合に医師が異常を疑うというように、超音波画像は、臨床上有用な所見として利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206779号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hiro et al、「Detection of Fibrous Cap in Atherosclerotic Plaque by Intravascular Ultrasound by Use of Color Mapping of Angle−Dependent Echo−Intensity Variation」、Circulation JOURNAL OF THE AMERICAN HEART ASSOCIATION、March6,2001、P.1206−1211
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、超音波画像上で観察される異常は慣れない者にとっては発見が難しく、また、超音波画像を観察し易くする目的で平滑化処理を施すと、臨床上有用な情報自体が失われることもある。このように、従来、超音波画像の観察は、観察者の能力などに依存するものであるため、超音波画像上に表される情報を定量的に表現することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の超音波診断装置は、超音波送受信部と、断層像生成部と、解析部と、解析結果表示制御部とを備える。超音波送受信部は、超音波プローブを介して複数方向の超音波ビームを送信するとともに該超音波プローブを介して複数方向のエコー信号を受信する。断層像生成部は、前記超音波送受信部によって受信されたエコー信号を用いて前記超音波ビームの方向毎に断層像を生成する。解析部は、前記断層像生成部によって超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較し、前記比較に基づいて解析を行う。解析結果表示制御部は、前記解析部によって解析された解析結果を表示部に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施例1における超音波画像表示の処理手順を示すフローチャートである。
【図3A】図3Aは、実施例1における超音波ビームの送信方向を説明するための図である。
【図3B】図3Bは、実施例1における超音波ビームの送信方向を説明するための図である。
【図3C】図3Cは、実施例1における超音波ビームの送信方向を説明するための図である。
【図3D】図3Dは、実施例1における超音波ビームの送信方向を説明するための図である。
【図4】図4は、実施例1における断層像の格納を説明するための図である。
【図5】図5は、実施例1における断層像格納の処理手順を示すフローチャートである。
【図6A】図6Aは、実施例1において超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像を例示する図である。
【図6B】図6Bは、実施例1において超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像を例示する図である。
【図6C】図6Cは、実施例1において超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像を例示する図である。
【図7】図7は、実施例1における解析及び解析結果表示の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施例1におけるROI(Region Of Interest)指定の受付を例示する図である。
【図9】図9は、実施例1において表示される解析結果を例示する図である。
【図10】図10は、実施例1におけるROI指定の受付の他の例を例示する図である。
【図11】図11は、実施例1において表示される解析結果の他の例を例示する図である。
【図12A】図12Aは、実施例2において表示される解析結果を例示する図である。
【図12B】図12Bは、実施例2において表示される解析結果を例示する図である。
【図12C】図12Cは、実施例2において表示される解析結果を例示する図である。
【図13A】図13Aは、実施例2において表示される解析結果の他の例を例示する図である。
【図13B】図13Bは、実施例2において表示される解析結果の他の例を例示する図である。
【図13C】図13Cは、実施例2において表示される解析結果の他の例を例示する図である。
【図14】図14は、実施例2における解析を説明するための図である。
【図15】図15は、実施例3における解析及び解析結果表示を説明するための図である。
【図16】図16は、実施例3における超音波画像表示の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】図17は、実施例3における解析及び解析結果表示の処理手順を示すフローチャートである。
【図18】図18は、実施例4に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【図19】図19は、実施例4において表示されるBモード画像を例示する図である。
【図20】図20は、実施例4において表示されるBモード画像の他の例を例示する図である。
【図21】図21は、その他の実施例における構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態に係る超音波診断装置、画像処理装置、及び解析プログラムの一例を説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、実施例1に係る超音波診断装置10の構成を説明する。図1は、実施例1に係る超音波診断装置10の構成を示すブロック図である。図1に例示するように、実施例1に係る超音波診断装置10は、装置本体11と、超音波プローブ12と、入力装置13と、モニタ14とを備える。
【0011】
超音波プローブ12は、複数の圧電振動子を有する。これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体11が有する超音波送信ユニット21から供給される駆動信号に基づき超音波を発生し、また、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ12は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0012】
超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信されるエコー信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合のエコー信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
入力装置13は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、装置本体11に接続される。また、入力装置13は、超音波診断装置10の操作者からの各種指示や設定要求を受け付け、受け付けた各種指示や設定要求(例えば、関心領域(ROI)の設定要求など)を装置本体11に対して転送する。
【0014】
モニタ14は、超音波診断装置10の操作者が入力装置13を用いて各種指示や設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体11において生成された超音波画像や解析結果を表示したりする。
【0015】
装置本体11は、超音波プローブ12が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する。装置本体11は、図1に例示するように、超音波送信ユニット21と、超音波受信ユニット22と、Bモード処理ユニット23と、ドプラ処理ユニット24と、画像生成ユニット25と、画像メモリ26と、画像合成部27と、制御部28と、記憶媒体29と、インターフェース30とを有する。
【0016】
超音波送信ユニット21は、パルス発生器21a、送信遅延部21b、及びパルサ21cを有し、超音波プローブ12に駆動信号を供給する。パルス発生器21aは、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部21bは、超音波プローブ12から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器21aが発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサ21cは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ12に駆動信号(駆動パルス)を印加する。なお、送信方向あるいは送信方向を決定する遅延時間は記憶媒体29に記憶されており、送信遅延部21bは、記憶媒体29を参照して遅延時間を与える。
【0017】
なお、この1次元の超音波ビームの方向を変化させながら繰り返し走査することで、2次元断層面からの情報を収集可能だが、1断層像を生成するためのビーム方向の組合せは1通りでなく、種々のパターンが存在する。
【0018】
超音波受信ユニット22は、プリアンプ22a、A/D変換器(図示を省略)、受信遅延部22b、及び加算器22cを有し、超音波プローブ12が受信したエコー信号に対して各種処理を行ってエコーデータを生成する。プリアンプ22aは、エコー信号を増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正されたエコー信号をA/D変換する。受信遅延部22bは、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器22cは、受信遅延部22bによって処理されたエコー信号の加算処理を行なってエコーデータを生成する。加算器22cの加算処理により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。なお、送信と同様、受信方向あるいは受信方向を決定する遅延時間は記憶媒体29に記憶されており、受信遅延部22bは、記憶媒体29を参照して遅延時間を与える。
【0019】
なお、超音波プローブ12によって受信されるエコー信号は、主に組織の境界から発生する。2つの媒体の音響インピーダンスが異なると、そこで散乱(反射)といった現象が起こるが、この音響インピーダンスを決定する物理定数は、媒体の密度及び音速である。すなわち、組織の硬い・軟らかいといった性状は、大局的には、そのままエコー信号に反映されているといえる。
【0020】
Bモード処理ユニット23は、超音波受信ユニット22からエコーデータを受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0021】
ドプラ処理ユニット24は、超音波受信ユニット22から受け取ったエコーデータから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0022】
画像生成ユニット25は、Bモード処理ユニット23が生成したBモードデータや、ドプラ処理ユニット24が生成したドプラデータから、超音波画像を生成する。具体的には、画像処理ユニット25は、BモードデータからBモード画像を生成し、ドプラデータからドプラ画像を生成する。また、画像生成ユニット25は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示画像としての超音波画像(Bモード画像やドプラ画像)を生成する。
【0023】
画像メモリ26は、画像生成ユニット25が生成した超音波画像や、超音波画像を画像処理することで生成した画像を記憶するメモリである。例えば診断の後に、操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっており、静止画像的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能である。また、画像メモリ26は、超音波受信ユニット22通過後の画像輝度信号、その他の生データ、ネットワークを介して取得した画像データ等を必要に応じて記憶する。
【0024】
制御部28は、超音波診断装置10における処理全体を制御する。具体的には、制御部28は、入力装置13を介して操作者から入力された各種指示や設定要求、記憶媒体29から読み込んだ各種プログラム及び各種設定情報に基づき、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、及び画像生成ユニット25の処理を制御したり、画像メモリ26が記憶する超音波画像などをモニタ14にて表示するように制御したりする。
【0025】
記憶媒体29は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための装置制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)、診断プロトコルや各種設定情報などの各種データなどを記憶する。また、記憶媒体29は、後述する解析部28aと同様の処理を実行する手順と、後述する解析結果表示制御部28bと同様の処理を実行する手順とが記述された解析プログラムを記憶する。また、記憶媒体29は、必要に応じて、画像メモリ26が記憶する画像の保管などにも使用される。なお、記憶媒体29が記憶するデータは、インターフェース30を経由して、外部の周辺装置へ転送することができる。
【0026】
インターフェース30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示を省略)に関するインターフェースである。超音波診断装置10によって得られた超音波画像などのデータや解析結果などは、インターフェース30によって、ネットワークを介して他の装置へ転送することができる。
【0027】
なお、装置本体11に内蔵される超音波送信ユニット21及び超音波受信ユニット22などは、集積回路などのハードウェアで構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたプログラムである場合もある。
【0028】
さて、実施例1に係る超音波診断装置10は、超音波プローブ12を介して複数方向の超音波ビームを送信するとともに、超音波プローブ12を介して複数方向のエコー信号を受信する。
【0029】
図2は、実施例1における超音波画像表示の処理手順を示すフローチャートであり、図3A〜3Dは、実施例1における超音波ビームの送信方向を説明するための図である。なお、実施例1においては、超音波診断装置10が3方向の超音波ビームを送信すると想定するが、開示の技術はこれに限られるものではなく、超音波ビームの送信方向の数は、運用の形態などに応じて任意に変更することができる。
【0030】
図2に例示するように、超音波診断装置10は、操作者からの開始指示を受け付けるなどして処理を開始すると、ビームパターン数を取得する(ステップS101)。例えば、超音波診断装置10は、記憶媒体29に予め記憶されたビームパターン数『3』を記憶媒体29から読み出すことで取得する。また、例えば、超音波診断装置10は、ビームパターン数『3』の指示を操作者から受け付けることで取得する。
【0031】
次に、超音波診断装置10は、i番目のビーム方向で超音波の送受信を行う(ステップS102)。具体的には、まず、送信遅延部21b及び受信遅延部22bが、それぞれ、ステップS101において取得されたビームパターン数に従って遅延時間を計算する。実施例1において、ビームパターン数は『3』であるので、送信遅延部21b及び受信遅延部22bは、3回の送受信のそれぞれについて、決められたビーム方向をなすような遅延時間を各素子について計算する。そして、超音波送信ユニット21及び超音波受信ユニット22が、送信遅延部21b及び受信遅延部22bによって計算された遅延時間のパターンを用いて、超音波の送受信を行う。
【0032】
例えば、超音波送信ユニット21及び超音波受信ユニット22は、図3Aに例示するように、走査線42の方向が超音波プローブ12の圧電振動子に対して90度の角度となるように、超音波を送受信する。
【0033】
続いて、超音波診断装置10は、Bモード画像を生成する(ステップS103)。具体的には、Bモード処理ユニット23が、超音波受信ユニット22からエコーデータを受け取り、受け取ったエコーデータからBモードデータを生成し、生成したBモードデータを画像生成ユニット25に送る。すると、画像生成ユニット25が、Bモード処理ユニット23から受け取ったBモードデータからBモード画像を生成する。
【0034】
そして、超音波診断装置10は、N番目(実施例1においては3番目)のビームパターンまで終了したか否かを判定し(ステップS104)、終了していないと判定した場合には(ステップS104否定)、ステップS102の処理に戻る。こうして、実施例1に係る超音波診断装置10は、ビームパターン数『3』に対応する3つのBモード画像を生成する。
【0035】
例えば、超音波送信ユニット21及び超音波受信ユニット22は、図3Bに例示するように、走査線43の方向が超音波プローブ12の圧電振動子に対して90度よりも小さい角度となるように超音波を送受信し、Bモード画像を生成する。また、例えば、超音波送信ユニット21及び超音波受信ユニット22は、図3Cに例示するように、走査線44の方向が超音波プローブ12の圧電振動子に対して90度よりも大きい角度となるように超音波を送受信し、Bモード画像を生成する。
【0036】
ステップS104において終了したと判定した場合には(ステップS104肯定)、超音波診断装置10は、重畳画像を生成し(ステップS105)、生成した重畳画像をモニタ14に表示する(ステップS106)。具体的には、画像生成ユニット25が、ビームパターン数『3』に対応して生成した3つのBモード画像を重畳して表示画像としての重畳画像を生成し、生成した重畳画像を画像合成部27に送る。そして、画像合成部27が、画像生成ユニット25から送られた重畳画像にその他の情報を付与するなどして、モニタ14に表示する。なお、図3Dは、異なる3方向の超音波ビームを送受信した場合の重畳後ビームパターンを示す。
【0037】
超音波診断装置10は、操作者からの終了指示を受け付けるなどして処理を終了するまで、上述したステップS102〜S106の処理手順を繰り返し実行し、超音波画像をリアルタイムに表示する。なお、実施例1においては、画像生成ユニット25が、Bモード画像から重畳画像を生成するものとして説明したが、開示の技術はこれに限られるものではない。例えば、画像生成ユニット25は、Bモードデータから直接重畳画像を生成してもよい。
【0038】
ここで、実施例1に係る超音波診断装置10は、上述したように、複数方向の超音波ビームを送受信し、重畳画像をリアルタイムに表示する処理を行うが、この処理とは別に、方向毎の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較解析する処理を行う。なお、以下において「方向毎の断層像」と記載する場合、開示の技術は、「Bモードデータ」であっても「Bモード画像」であっても適用することができるが、実施例1においては、「Bモード画像」として説明する。
【0039】
図4は、実施例1における断層像の格納を説明するための図である。図4に例示するように、実施例1に係る超音波診断装置10は、表示画像として生成した重畳画像をモニタ14にリアルタイムに表示するとともに、生成した重畳画像を画像メモリ26に格納する処理を行う。また、実施例1に係る超音波診断装置10は、この処理とは別に、方向毎の断層像も画像メモリ26に格納する。比較解析処理の対象とするためである。
【0040】
図5は、実施例1における断層像格納の処理手順を示すフローチャートである。図5に例示するように、実施例1に係る超音波診断装置10は、例えば操作者からボタン押下を受け付けると(ステップS201肯定)、方向毎のBモード画像を画像メモリ26に格納する(ステップS202)。例えば、画像生成ユニット25は、ボタン押下のタイミングで収集された3つのBモードデータから3つのBモード画像それぞれ(第1断層像、第2断層像、第3断層像)を生成し、生成した3つのBモード画像を画像メモリ26に格納する。
【0041】
図6A〜6Cは、実施例1において超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像を例示する図である。図6Aは図3Aに対応し、図6Bは図3Bに対応し、図6Cは図3Cに対応するとする。画像生成ユニット25は、例えば、図6A〜6Cに例示する3つのBモード画像それぞれを画像メモリ26に格納する。
【0042】
例えば、図6A〜6Cに例示するように、超音波プローブ12直下の皮下組織は、超音波ビームの方向によらず、各Bモード画像間で輝度が一定である。一方、超音波プローブ12直下の皮下組織の下を横に走る『腱』は、図6Aに例示するBモード画像において輝度が最大である(明るい)が、図6Bや図6Cに例示するBモード画像においては、輝度がやや低下している(暗くなっている)。
【0043】
図6Aに例示するBモード画像は、図3Aを用いて説明したように、超音波ビームが『腱』にほぼ垂直に入射された場合の断層像である。これに対し、図6Bや図6Cに例示するBモード画像は、超音波ビームが『腱』にやや斜めに入射された場合の断層像である。
【0044】
このように、超音波ビームの方向を変えて方向毎のBモード画像を生成すると、同一部分であっても、輝度が異なってみえる。これは、組織の角度依存性(異方性効果)によるものである。例えば筋肉や腱など、例えば特定の方向に線維が並ぶ線維構造の組織は、入射する超音波ビームの方向に応じて反射するエコー信号の強度が異なるという性質を有する。これが、角度依存性である。
【0045】
図1に戻り、制御部28は、解析部28aと、解析結果表示制御部28bとを有する。これらの各部が、方向毎の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較解析する処理を行う。解析部28aは、超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較し、断層像に描出された被検体の組織性状を解析する。具体的には、解析部28aは、エコー信号の強度に基づいて割り当てられる輝度を比較することで、組織性状を解析する。なお、エコー信号の強度を直接比較する手法でもよい。解析結果表示制御部28bは、解析部28aによって解析された解析結果をモニタ14に表示する。
【0046】
図7は、実施例1における解析及び解析結果表示の処理手順を示すフローチャートであり、図8は、実施例1におけるROI指定の受付を例示する図であり、図9は、実施例1において表示される解析結果を例示する図である。
【0047】
図7に例示するように、まず、解析部28aは、操作者から解析指示を受け付けたか否かを判定し(ステップS301)、受け付けたと判定した場合(ステップS301肯定)、ROI指定用の画像を表示する(ステップS302)。例えば、解析部28aは、図8に例示するように、ROI指定用の画像をモニタ14に表示する。
【0048】
次に、解析部28aは、ステップS302において表示した画像上にてROIの指定を受け付け、受け付けた場合(ステップS303肯定)、ROI内の輝度を解析する(ステップS304)。
【0049】
例えば、図8に例示するように、解析部28aは、ROI指定用の画像上にて、『ROI1』及び『ROI2』の指定を受け付ける。すると、解析部28aは、超音波ビームの方向毎に生成された複数のBモード画像それぞれについて『ROI1』内の輝度を解析し、例えば『ROI1』内の輝度の平均値を求めるなどして、Bモード画像間で空間的位置が対応するエコー信号を比較する。また、解析部28aは、超音波ビームの方向毎に生成された複数のBモード画像それぞれについて『ROI2』内の輝度を解析し、例えば『ROI2』内の輝度の平均値を求めるなどして、Bモード画像間で空間的位置が対応するエコー信号を比較する。
【0050】
そして、解析結果表示制御部28bが、解析結果を表示する(ステップS305)。例えば、解析結果表示制御部28bは、図9に例示する解析結果をモニタ14に表示する。なお、図9に例示する解析結果は一例に過ぎず、解析結果表示制御部28bは、解析結果を、数値や文字、他のグラフなどによって表示してもよい。
【0051】
さて、図9を用いて、実施例1における解析結果を説明する。例えば図9は、ビーム角度と輝度との関係をROI毎に示す。例えば、実線の曲線51は、『ROI1』に対応し、点線の曲線52は、『ROI2』に対応するとする。すると、『ROI1』の解析結果は、超音波ビームの角度に応じて輝度が変化しているのに対し、『ROI2』の解析結果は、超音波ビームの角度に応じた輝度の変化が少ないことがわかる。
【0052】
ここで、上述したように、例えば線維構造の組織などには、入射する超音波ビームの方向に応じて反射するエコー信号の強度が異なるという角度依存性がある。言い換えると、角度依存性を有する組織が正常であれば、超音波ビームの方向毎に生成された断層像間で空間的位置が対応するエコー信号同士を比較した場合、超音波ビームの方向に応じて輝度が変化すると考えられる。一方、超音波ビームの方向毎に生成された断層像間で空間的位置が対応するエコー信号同士を比較し、超音波ビームの方向に応じて輝度が変化しない場合には、組織が異常であると考えられる。
【0053】
すなわち、例えば図9の例で説明すると、超音波ビームの角度に応じて輝度が変化する『ROI1』は正常であると考えられるが、超音波ビームの角度に応じて輝度が変化しない『ROI2』は異常であると考えられる。このように、解析結果表示制御部28bが表示する解析結果には、超音波画像上に表される情報が定量的に表現されており、操作者は、モニタ14に表示された解析結果を見ることで、超音波画像上に表される情報を定量的に把握することができる。
【0054】
なお、説明の便宜上、組織が『正常』であるか『異常』であるかを定量的に表現すると説明したが、解析結果は、必ずしも組織の正常異常を表現するものとは限らない。例えば、超音波ビームを様々な方向に反射し易い性状であるか、一方向のみに反射し易い性状であるかなど、組織の性状を定量的に表現するものである。
【0055】
また、実施例1においては、ROIの指定を2箇所受け付ける例を説明したが、開示の技術はこれに限られるものではない。図10は、実施例1におけるROI指定の受付の他の例を例示する図であり、図11は、実施例1において表示される解析結果の他の例を例示する図である。
【0056】
例えば、解析部28aは、ROI指定用の画像上にて、図10に例示するように、『ROI1』、『ROI2』、『ROI3』、及び『ROI4』の指定を受け付ける。すると、解析部28aは、超音波ビームの方向毎に生成された複数のBモード画像それぞれについて、『ROI1』、『ROI2』、『ROI3』、及び『ROI4』内の輝度を解析し、Bモード画像間で空間的位置が対応するエコー信号を比較する。そして、解析結果表示制御部28bは、図11に例示するように、解析結果を表示する。
【0057】
[実施例1の効果]
上述したように、実施例1に係る超音波診断装置10において、超音波送信ユニット21及び超音波受信ユニット22が、超音波プローブ12を介して複数方向の超音波ビームを送信するとともに超音波プローブ12を介して複数方向のエコー信号を受信する。また、Bモード処理ユニット23及び画像生成ユニット25が、超音波受信ユニット22によって受信されたエコー信号を用いて超音波ビームの方向毎に断層像を生成する。また、解析部28aが、超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較し、断層像に描出された被検体の組織性状を解析する。また、解析結果表示制御部28bが、解析部28aによって解析された解析結果をモニタ14に表示する。このようなことから、実施例1によれば、超音波画像上に表される情報を定量的に表現することが可能になる。超音波診断装置10は、例えば角度依存性を定量的に表示することが可能になる。この結果、操作者は、例えば、特定の方向に線維構造を持つ組織とそうでない組織とを簡単に見分けることができる。
【0058】
また、解析部28aは、エコー信号の強度、又は、強度に基づいて割り当てられる輝度を比較することで、組織性状を解析する。このようなことから、実施例1によれば、角度依存性を有する組織について、その組織性状を有効に解析することが可能になる。
【0059】
また、解析部28aは、関心領域の指定を受け付け、指定された関心領域内のエコー信号を比較する。このようなことから、実施例1によれば、解析対象として所望される領域についてのみ解析処理を行うことができ、効率的に解析することが可能になる。
【実施例2】
【0060】
次に、実施例2に係る超音波診断装置10を説明する。実施例2に係る超音波診断装置10は、解析結果として、カラーマッピング画像を表示する。
【0061】
図12A〜12Cは、実施例2において表示される解析結果を例示する図である。例えば、実施例2に係る解析部28aは、複数のBモード画像間にて、空間的位置が対応する画素同士の輝度変化を求めることで、角度依存性の度合いを算出する。例えば、解析部28aは、複数のBモード画像から2枚のBモード画像を選択し、選択したBモード画像間で、空間的位置が対応する画素同士の輝度差を算出する。そして、解析部28aは、算出した輝度差に応じてカラーを割り当て、解析結果表示制御部28bが、解析部28aによってカラーを割り当てられた画像と元の画像とを重畳したカラーマッピング画像を表示する。なお、解析結果表示制御部28bは、必ずしも元の画像と重畳せずに、カラーを割り当てた画像のみをカラーマッピング画像として表示してもよい。
【0062】
例えば、図12A〜12Cに例示するように、解析部28aは、図12AのBモード画像と、図12BのBモード画像とを選択し、選択したBモード画像間で、空間的位置が対応する画素同士の輝度差を算出する。また、解析部28aは、算出した輝度差に応じてカラーを割り当てる。例えば、輝度差が大きい場合には赤色成分が強くなるように、一方輝度差が小さい場合には黄色成分が強くなるようにカラーを割り当てる。そして、解析結果表示制御部28bは、図12Cに例示するように、カラーを割り当てられた画像と元の画像とを重畳したカラーマッピング画像を表示する。例えば、図12Cに例示するカラーマッピング画像においては、強い角度依存性を示す『腱』と、角度依存性が弱いその他の領域とが明確に区別されている。なお、図12A〜12Cにおいては、説明の便宜上、カラーの違いは、パターンの違いで表現している。
【0063】
なお、実施例2においても、実施例1と同様、ROIの指定を受け付けることが可能である。図13A〜13Cは、実施例2において表示される解析結果の他の例を例示する図である。例えば、図13に例示するように、解析部28aは、図13AのBモード画像と、図13BのBモード画像とを選択し、選択したBモード画像間のうち、ROIとして指定された領域内で、空間的位置が対応する画素同士の輝度差を算出する。また、解析部28aは、算出した輝度差に応じてカラーを割り当てる。そして、解析結果表示制御部28bは、図13Cに例示するように、カラーを割り当てられた画像と元の画像とを重畳したカラーマッピング画像を表示する。例えば、図13Cに例示するカラーマッピング画像においては、強い角度依存性を示す『腱』の中で、一部の領域のみ、角度依存性が弱いことを示している。例えば医師は、このカラーマッピング画像を見ることで、腱の一部に消失や断裂が生じていることを簡単に見分けることができる。
【0064】
ところで、図12A〜12Cや図13A〜13Cの例では、解析対象の組織が水平方向の線維構造を有しているため、2枚のBモード画像間で比較を行う手法によっても期待した効果が得られた。もっとも、例えば、解析対象の組織が超音波プローブ12の素子面に対して平行に位置していない場合、上述の手法では期待した効果が得られないおそれがある。
【0065】
そこで、一般的には、3枚以上のBモード画像間で比較を行う手法を採用することが望ましい。この場合、例えば、解析部28aは、3枚以上のBモード画像間で、空間的位置が対応する画素同士を比較し、最も輝度が高くなる超音波ビームの角度を求める。そして、解析部28aは、その角度の前後に位置付けられる所定の角度における輝度と、最大輝度との輝度差を算出し、カラーを割り当てる。
【0066】
例えば、Bモード画像中の点Aについて、ビーム角度x°のときの輝度をI(x)とし、輝度が最大になるときのビーム角度をxmaxとする。このとき、ビーム角度xmaxから一定の角度αだけ離れた角度のビームを送受信して得られたBモード画像中の点Aの輝度は、I(xmax+α)、I(xmax−α)である。したがって、これらの輝度と最大輝度との輝度差は、I(xmax)−I(xmax+α)、I(xmax)−I(xmax−α)である。そこで、I(xmax)−I(xmax+α)とI(xmax)−I(xmax−α)との平均値を、角度依存性の程度として定義する。
【0067】
図14は、実施例2における解析を説明するための図である。図14に例示する×印で示されるBモード画像のある点は、符号62のビーム角度において、最大輝度を示す。一方、○印で示されるBモード画像のある点は、符号73のビーム角度において、最大輝度を示す。この2つの点における角度依存性の程度は、前者の点(×印の点)については、符号61、62、63のビーム角度における輝度を用いて算出する。一方、後者の点(○印の点)については、符号72、73、74のビーム角度における輝度を用いて算出する。そして、解析部28aは、求めた角度依存性の程度に基づいて色を割り当てる。こうして、解析部28aは、解析対象の組織が超音波プローブ12に対して水平方向であるか否かにかかわらず、角度依存性の程度を定量的に求めることが可能になる。
【実施例3】
【0068】
次に、実施例3に係る超音波診断装置10を説明する。実施例1や実施例2においては、超音波診断装置10が、組織性状の解析を事後的に行う例を説明したが、開示の技術はこれに限られるものではない。すなわち、実施例3に係る超音波診断装置10は、超音波画像をリアルタイムに表示するとともに、組織性状の解析をリアルタイムに行い、解析結果をリアルタイムに表示する。
【0069】
図15は、実施例3における解析及び解析結果表示を説明するための図である。図15に例示するように、実施例3に係る超音波診断装置10は、表示画像として生成した重畳画像をモニタ14にリアルタイムに表示するとともに、方向毎の断層像もリアルタイムに画像メモリ26に格納する。そして、実施例3に係る超音波診断装置10は、画像メモリ26に格納された方向毎の断層像をリアルタイムに解析し、解析結果であるカラーマッピング画像をモニタ14にリアルタイムに表示する。なお、カラーマッピング画像の生成手法は、実施例2において説明した手法を用いることができる。また、図15では、表示画像として生成した重畳画像を表示するモニタ(モニタ1)と、カラーマッピング画像を表示するモニタ(モニタ2)とをそれぞれ示しているが、重畳画像とカラーマッピング画像とは同じモニタに表示されてもよいし、別のモニタに表示されてもよい。
【0070】
図16は、実施例3における超音波画像表示の処理手順を示すフローチャートであり、図17は、実施例3における解析及び解析結果表示の処理手順を示すフローチャートである。図16に例示する処理手順と図2に例示した処理手順とを対比するとわかるように、実施例3に係る超音波診断装置10は、ステップS403の処理が、ステップS103と異なる。
【0071】
実施例1に係る超音波診断装置10の場合、ステップS103において生成されたBモード画像は、ステップS105において重畳画像を生成するまでは一時的に画像メモリ26に格納されるが、重畳画像の生成に用いられた後は特に保存される必要がないものであった。解析対象の画像ではないからである。このため、図2に例示するフローチャート内においてはBモード画像の格納については明示せず、図5に例示するフローチャートにおいて、Bモード画像の格納を明示した。
【0072】
この点、実施例3に係る超音波診断装置10の場合、組織性状の解析をリアルタイムに行い、解析結果をリアルタイムに表示するので、ステップS403において生成されたBモード画像は、解析対象の画像とするために、画像メモリ26に格納される。
【0073】
そして、図17に例示するように、解析部28aは、ビームパターンの数分(N枚分)のBモード画像が画像メモリ26に格納されると(ステップS501肯定)、リアルタイムに輝度差を算出する(ステップS502)。そして、解析部28aは、輝度差に応じてリアルタイムにカラーマッピングを行い(ステップS503)、解析結果表示制御部28bは、カラーマッピング画像をリアルタイムに表示する(ステップS504)。例えば、解析結果表示制御部28bは、通常の超音波画像(重畳画像)に並べてカラーマッピング画像をリアルタイムに表示するなどする。なお、ステップS501からS504の処理は、例えば操作者から終了指示を受け付けるまで繰り返し行われる。
【実施例4】
【0074】
なお、開示の技術は、上記実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0075】
[方向別Bモード画像の表示]
図18は、実施例4に係る制御部28の構成を示すブロック図であり、図19は、実施例4において表示されるBモード画像を例示する図であり、図20は、実施例4において表示されるBモード画像の他の例を例示する図である。
【0076】
図18に例示するように、実施例4に係る制御部28は、方向別Bモード画像表示制御部28cをさらに有する。方向別Bモード画像表示制御部28cは、超音波ビームの方向毎に生成された複数のBモード画像を、モニタ14に並べて表示する、又は、各Bモード画像を切り替えて表示する。この結果、操作者は、方向毎に生成された複数のBモード画像を簡単に見比べることが可能になる。
【0077】
例えば、方向別Bモード画像表示制御部28cは、図19に例示するように、超音波ビームの方向毎に生成された複数のBモード画像を、モニタ14に並べて表示する。また、例えば、方向別Bモード画像表示制御部28cは、図20に例示するように、超音波ビームの方向毎に生成された各Bモード画像を切り替えて表示する。例えば、操作者がトラックボールを操作することにより(図20の矢印を参照)、超音波ビームの方向毎に生成されたBモード画像は、コマ送りのように切り替えて表示される。
【0078】
[制御部]
また、上記実施例においては、送信遅延部21b及び受信遅延部22bが遅延時間を計算し、計算した遅延時間のパターンを用いて超音波の送受信を行うものとして説明したが、開示の技術はこれに限られるものではない。例えば、遅延時間の計算などの制御は、制御部28が行ってもよい。
【0079】
[解析時の補正]
また、上記実施例において、解析部28aは、Bモード画像を解析する際に特に補正を行わなかったが、開示の技術はこれに限られるものではなく、補正を行った上でBモード画像を解析してもよい。例えば、超音波プローブ12の素子面の法線方向からずれた方向に超音波ビームの送受信を行う場合には、音場の変化に伴って、法線方向に送受信する場合よりもエコー信号が弱くなる傾向がある。そこで、解析部28aは、この影響による輝度の変化分を予め補正した上で解析を行ってもよい。例えば、解析部28aは、実験データなどとして取得された輝度の変化分を、超音波ビームの方向毎に予め記憶する。解析部28aは、該当する超音波ビームの方向を用いて記憶部を参照し、補正すべき輝度の変化分を取得する。そして、解析部28aは、取得した変化分を用いてBモード画像の輝度を補正した上で解析を行う。なお、補正のタイミングは、解析を行う際に補正してもよいし、Bモード画像を生成する際に補正してもよい。
【0080】
[解析プログラム]
また、上記実施例において説明した解析方法は、解析プログラムによる情報処理がコンピュータを用いて具体的に実現されることで実行されてもよい。コンピュータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、システムメモリと、ハードディスクドライブインタフェースと、ディスクドライブインタフェースと、シリアルポートインタフェースと、ビデオアダプタと、ネットワークインタフェースとを有し、これらの各部はシステムバスによって接続される。システムメモリは、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェースは、ハードディスクドライブに接続される。ディスクドライブインタフェースは、ディスクドライブに接続される。例えば磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が、ディスクドライブに挿入される。シリアルポートインタフェースは、例えば、マウス、キーボードに接続される。ビデオアダプタは、例えば、ディスプレイに接続される。
【0081】
ここで、ハードディスクドライブは、例えば、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、プログラムモジュール、プログラムデータを記憶する。すなわち、開示の技術に係る解析プログラムは、コンピュータによって実行される指令が記述されたプログラムモジュールとして、例えばハードディスクに記憶される。具体的には、上記実施例で説明した解析部28aと同様の処理を実行する手順と、解析結果表示制御部28bと同様の処理を実行する手順とが記述されたプログラムモジュールが、ハードディスクに記憶される。
【0082】
なお、解析プログラムに係るプログラムモジュールやプログラムデータは、ハードディスクに記憶される場合に限られず、例えば着脱可能な記憶媒体に記憶され、ディスクドライブ等を介してCPUによって読み出されてもよい。あるいは、解析プログラムに係るプログラムモジュールやプログラムデータは、ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等)を介して接続された他のコンピュータに記憶され、ネットワークインタフェースを介してCPUによって読み出されてもよい。
【0083】
[画像処理装置]
また、上述の実施例においては、超音波診断装置10が、解析部28a及び解析結果表示制御部28bを備え、あるいは、超音波診断装置10が、解析部28a、解析結果表示制御部28b、及び方向別Bモード画像表示制御部28cを備える例を説明したが、実施形態はこれに限られるものではない。
【0084】
例えば、超音波診断装置10によって受信されたエコー信号について、超音波診断装置10とは異なる画像処理装置50が、解析を行い、解析結果を表示してもよい。
【0085】
図21は、その他の実施例における構成例を説明するための図である。図21に示すように、その他の実施例において、超音波診断装置10は、実施例1と同様、超音波プローブ12を介して複数方向の超音波ビームを送信するとともに超音波プローブ12を介して複数方向のエコー信号を受信する。また、超音波診断装置10は、実施例1と同様、受信したエコー信号を用いて超音波ビームの方向毎に断層像を生成する。この断層像は、ネットワークなどを介して画像処理装置50に送られる。なお、エコー信号が画像処理装置50に送られ、画像処理装置50側で、超音波ビームの方向毎に断層像を生成してもよい。
【0086】
一方、画像処理装置50は、図21に示すように、インタフェース51と、制御部52と、モニタ53とを有する。インタフェース51は、超音波診断装置10のインターフェース30と同様、ネットワークなどに関するインターフェースである。また、制御部52は、超音波診断装置10の制御部28と同様、画像処理装置50における処理全体を制御するプロセッサである。また、モニタ53は、超音波診断装置10のモニタ14と同様、解析結果を表示したりする。
【0087】
また、制御部52は、図21に示すように、解析部52a、解析結果表示制御部52b、及び方向別Bモード画像表示制御部52cを備える。なお、実施形態はこれに限られるものではなく、制御部52は、例えば方向別Bモード画像表示制御部52cを備えなくてもよい。
【0088】
解析部52aは、超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較し、断層像に描出された被検体の組織性状を解析する。また、解析結果表示制御部52bは、解析部52aによって解析された解析結果をモニタ53に表示する。また、方向別Bモード画像表示制御部52cは、超音波ビームの方向毎に生成された複数のBモード画像を、モニタ53に並べて表示する、又は、各Bモード画像を切り替えて表示する。
【0089】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の超音波診断装置、画像処理装置、及び解析プログラムによれば、超音波画像上に表される情報を定量的に表現することができる。
【0090】
[その他]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
10 超音波診断装置
28 制御部
28a 解析部
28b 解析結果表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブを介して複数方向の超音波ビームを送信するとともに該超音波プローブを介して複数方向のエコー信号を受信する超音波送受信部と、
前記超音波送受信部によって受信されたエコー信号を用いて前記超音波ビームの方向毎に断層像を生成する断層像生成部と、
前記断層像生成部によって超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較し、前記比較に基づいて解析を行う解析部と、
前記解析部によって解析された解析結果を表示部に表示する解析結果表示制御部と
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記解析部は、エコー信号の強度、または、該強度に基づいて割り当てられる輝度を比較することで、前記解析を行う、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記解析部は、関心領域の指定を受け付け、指定された関心領域内のエコー信号を比較する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記断層像生成部によって超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像を、表示部に並べて表示する、または、各断層像を切り替えて表示する断層像表示制御部をさらに備える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記解析部は、複数の断層像間にて空間的位置が対応する画素同士の輝度差を算出し、算出した輝度差に応じてカラーを割り当て、
前記解析結果表示制御部は、前記カラーが割り当てられたカラーマッピング画像を表示する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記解析結果表示制御部は、複数の断層像間にて空間的位置が対応する画素同士の輝度差を算出して、前記解析結果として前記超音波ビームの角度の違いと前記輝度差との関係を示すグラフを表示する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波プローブを介して複数方向の超音波ビームを送信するとともに該超音波プローブを介して複数方向のエコー信号を受信する超音波送受信部によって受信されたエコー信号を用いて前記超音波ビームの方向毎に断層像を生成する断層像生成部と、
前記断層像生成部によって超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較し、前記比較に基づいて解析を行う解析部と、
前記解析部によって解析された解析結果を表示部に表示する解析結果表示制御部と
を備える、画像処理装置。
【請求項8】
超音波プローブを介して複数方向の超音波ビームを送信するとともに該超音波プローブを介して複数方向のエコー信号を受信する超音波送受信部によって受信されたエコー信号を用いて前記超音波ビームの方向毎に断層像を生成する断層像生成手順と、
前記断層像生成手順によって超音波ビームの方向毎に生成された複数の断層像間にて空間的位置が対応するエコー信号を比較し、前記比較に基づいて解析を行う解析手順と、
前記解析手順によって解析された解析結果を表示部に表示する解析結果表示制御手順と
をコンピュータに実行させる、解析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図12C】
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【公開番号】特開2012−30048(P2012−30048A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128059(P2011−128059)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】