超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波診断装置制御プログラム及び超音波画像処理プログラム
【課題】 実際の音場そのものに関する画像を生成し、超音波送受信において形成される音場の形状、焦点位置等を視認することができる超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】 超音波プローブを用いて、設定された送信方向と送信焦点とに基づく送信ビームを超音波プローブから送信し、複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、超音波振動子毎に異なる受信遅延を与えると共に、各エコー信号を加算して、所定の受信方向と受信焦点とを有する受信ビームを取得し、送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが超音波プローブから送信されるように、送信ユニットを制御すると共に、送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに基づく複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することで、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように制御する。
【解決手段】 超音波プローブを用いて、設定された送信方向と送信焦点とに基づく送信ビームを超音波プローブから送信し、複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、超音波振動子毎に異なる受信遅延を与えると共に、各エコー信号を加算して、所定の受信方向と受信焦点とを有する受信ビームを取得し、送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが超音波プローブから送信されるように、送信ユニットを制御すると共に、送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに基づく複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することで、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内を超音波で走査(スキャン)して臓器等の断層を画像化し、疾患などを画像診断するために用いる超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波診断装置制御プログラム及び超音波画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は生体内情報の画像を表示する診断装置であり、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の画像診断装置に比べ、安価で被曝が無く、非侵襲性に実時間で観測するための有用な装置として利用されている。超音波診断装置の適用範囲は広く、心臓などの循環器から肝臓、腎臓などの腹部、抹消血管、産婦人科、乳癌の診断などに適用されている。
【0003】
通常、超音波診断装置は、1本の走査線につき収束超音波(送信ビーム)を1回送信し、当該送信方向に焦点を設定した受信を行うことで当該走査線上の診断情報(超音波画像データ)を取得し、さらに逐次走査方向を変えて各走査線につき同様の超音波送受信を繰り返すことで、最終的に2次元あるいは3次元の診断画像を生成する。また、近年では、1回の送信で複数の走査線上の診断情報を得る方法(同時受信)も用いられている。これは、収束超音波を送信し、これによって得られるエコー信号に対して複数の異なる受信遅延を与えて並列的に複数回の遅延加算を実行することで、複数方向に対応する複数の受信ビームを作り出すものである。なお、一般的には、送信方向上に受信焦点を設定すると、最も良質な診断画像を得ることができる。
【0004】
ところで、送信に用いられる収束超音波には、必ず焦点が存在する。この焦点は、通常、画像上にマークなどで現され、操作者がその位置や大きさを把握できるようになっている。一般的に、焦点付近の空間分解能は最も高い。従って、操作者は、関心領域の位置や大きさに応じて画像上の焦点位置等を変更し、設定する。超音波診断装置は、設定された焦点マークの位置等に対応させて送信遅延パタンを変化させることで、実際の送信焦点を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−61964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
送受信焦点の位置や形状等は、空間分解能に影響する。このため、検査者にとって送受信焦点の詳細は、画質を左右する重要な情報となる。例えば図12左から一番目に示すような送信パルスが形成する音場(ビームプロファイル)は、焦点あるいは焦点外の収束度が視覚的に把握可能である。ここで、輪郭線81は、音場中の音圧の等高線であり、輪郭線81内のエコー信号が診断画像の主要な構成要素と成ると考えてよい。図12左から一番目と図12左から二番目とは同じ焦点位置であるが、図12左から一番目に示すビームプロファイルの方が焦点での絞りは狭く、この場所での空間分解能は図12左から二番目よりも優れている。また図12左から一番目と図12左から三番目とは焦点での空間分解能は同じである。一方、焦点外も含めたビームプロファイルは図12左から三番目の方が狭く、総合的な空間分解能は図12左から三番目が優れていることが分る。
【0007】
しかしながら、従来の超音波診断装置では、焦点の存在位置程度の情報しか提供されないため、例えば上記図12左から一番目、図12左から二番目、図12左から三番目の間の違い等を把握することは不可能である。すなわち、従来の超音波診断装置では、送受信焦点の実際の位置や形状等が画質へどのように影響するのかを、直観的に把握することはできない。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、実際の音場そのものに関する画像(ビームプロファイル画像)を生成し、超音波送受信において形成される音場の形状、焦点位置等を直接的に視認することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波診断装置制御プログラム及び超音波画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【0009】
一実施形態に係る超音波診断装置は、それぞれが供給される駆動信号に応答して超音波を発生し且つ受信した超音波に応答してエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、前記各超音波振動子毎に異なる送信遅延が与えられた前記駆動信号を前記各超音波振動子に供給することで、設定された送信方向と送信焦点とに基づく送信ビームを前記超音波プローブから送信させる送信ユニットと、前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、前記超音波振動子毎に異なる受信遅延を与えると共に、当該受信遅延が与えられた前記各エコー信号を加算して、所定の受信方向と受信焦点とを有する受信ビームを取得する受信ユニットと、送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが前記超音波プローブから送信されるように、前記送信ユニットを制御すると共に、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに基づく複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する制御ユニットと、前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成する画像生成ユニットと、前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示する表示ユニットと、を具備する超音波診断装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係るビームプロファイル画像生成・表示処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】図3は、ビームプロファイル画像の取得処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るビームプロファイル画像の取得処理の概念を説明するための図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係るビームプロファイル画像の取得処理の概念を説明するための図である。
【図6】図6は、ビームプロファイル画像の一例を示した図である。
【図7】図7は、ビームプロファイル画像を模式的に示したイラスト図である。
【図8】図8は、ビームプロファイル画像の一例を示した図である。
【図9】図9は、ビームプロファイル画像を模式的に示したイラスト図である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態に係るビームプロファイル画像生成・表示処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】図11は、第2の実施形態に係るビームプロファイル画像の取得処理の概念を説明するための図である。
【図12】図12は、超音波画像収集における音場を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置本体11は、超音波プローブ12、入力装置13、モニタ14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、画像生成ユニット25、画像メモリ26、画像合成ユニット27、制御プロセッサ28、記憶ユニット29、インタフェースユニット30を具備している。
【0013】
装置本体11に内蔵される超音波送信ユニット21及び受信ユニット22等は、集積回路などのハードウェアで構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムである場合もある。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0014】
超音波プローブ12は、超音波受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに収束超音波(送信ビーム)が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0015】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボールの他、マウス、キーボード等を有している。
【0016】
モニタ14は、画像生成回路25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0017】
超音波送信ユニット21は、パルス発生器、送信遅延ユニット、パルサを有している。パルサでは、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、送信遅延ユニットでは、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性(送信方向)を決定するのに必要な遅延時間(送信遅延)が、振動子毎の各レートパルスに与えられる。パルス発生器は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動信号(駆動パルス)を印加する。
【0018】
超音波受信ユニット22は、プリアンプ、A/D変換器、受信遅延ユニット、加算器等を有している。プリアンプでは、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、アナログ信号としてのエコー信号をディジタル信号に変換する。受信遅延ユニットでは、振動子毎のエコー信号に対し受信指向性(受信方向)を決定するのに必要な遅延時間(受信遅延)を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。なお、図示しないが、受信遅延ユニットの前段には、各チャネル毎のエコー信号を記憶するメモリが設けられている。
【0019】
Bモード処理ユニット23は、受信ユニット22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成ユニット25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニタ14に表示される。
【0020】
ドプラ処理ユニット23は、受信ユニット22から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は画像生成ユニット25に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニタ14にカラー表示される。
【0021】
画像生成ユニット25は、超音波スキャンによって得られた走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。画像生成ユニット25は、画像データを格納する記憶メモリを搭載しており、例えば診断の後に操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっている。なお、当該画像生成ユニット25に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
【0022】
画像メモリ26は、画像生成ユニット25から受信した画像データを格納する記憶メモリから成る。この画像データは、例えば診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能でなる。また、画像メモリ26は、超音波受信ユニット22直後の出力信号(radio frequency(RF)信号と呼ばれる)、受信ユニット22通過後の画像輝度信号、その他の生データ、ネットワークを介して取得した画像データ等を必要に応じて記憶する。
【0023】
制御プロセッサ28は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する制御手段である。制御プロセッサ28は、記憶媒体29からビームプロファイル画像生成・表示機能を実現するための専用プログラム、各種計算処理を実行するための専用プログラムを読み出して各種処理に関する演算・制御等を実行する。特に、制御プロセッサ28は、記憶ユニット29に記憶された送信遅延パタン、受信遅延パタンを読み出して、送信方向や受信方向に応じて送信遅延及び受信遅延を切り替える。
【0024】
記憶ユニット29は、後述するビームプロファイル画像生成・表示機能を実現するための専用プログラム、送信遅延の複数の組み合わせパタン、受信遅延の複数の組み合わせパタン、後述する焦点位置の計算処理、被検体中(媒質中)の音速の計算処理、エコー信号を用いた特徴量の計算処理、信頼性を示す指標の計算処理等の各種計算処理を実行するための専用プログラム、所定のスキャンシーケンス、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、その他のデータ群が保管されている。また必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。記憶ユニット29のデータは、インタフェースユニット30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0025】
インタフェースユニット30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェースユニット30よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0026】
(ビームプロファイル画像生成・表示機能)
次に、本超音波診断装置が具備するビームプロファイル画像生成・表示機能について説明する。本機能は、各走査線に対して現実に送信される送信ビームのビームプロファイルを示す情報としてビームプロファイル画像として生成し、所定の形態で表示するものである。
【0027】
図2は、ビームプロファイル画像生成・表示機能に従う処理(ビームプロファイル画像生成・表示処理)の流れを示したフローチャートである。以下、各ステップにおける処理の内容について説明する。
【0028】
[ビームプロファイルモードの選択、送受信条件等の設定:ステップSa1]
まず、入力装置13を介してビームプロファイルモード(ビームプロファイル画像生成・表示機能を実行するためのモード)が選択され、送信音圧、焦点位置(深度)の送受信条件が入力される(ステップS1)。制御プロセッサ28は、選択・入力指示に応答して、専用プログラムを立ち上げてメモリ上に展開することでビームプロファイルモードを起動し、各種送受信条件を実現するための電圧、送信遅延、受信遅延等を設定する。
【0029】
[ビームプロファイル画像データの取得:ステップS2]
図3は、ビームプロファイル画像データを取得するための超音波送受信の流れを示したフローチャートである。また、図4は、ビームプロファイル画像データを取得するための超音波送受信の概念を説明するための図である。図4において、1つのボックス40は1回の超音波送受信を示している。各ボックス40に対応する超音波送受信において、T:iは超音波送信においてi方向に送信遅延を設定することを、R:jは超音波受信においてj方向に受信遅延を設定することを、それぞれ象徴的に示している。なお、i,jはそれぞれ0≦i≦n、0≦j≦nをみたす整数であり、nは走査線の最終番号ある(従って、本実施形態では、方向0から方向nまでのn+1方向(n+1本)の走査線で一枚の2次元画像が構成されるものとしている)。
【0030】
まず、制御プロセッサ28は、走査線番号第0〜第nまでのn+1本の各走査線につき、送信方向と受信方向とを一致させた超音波送受信(すなわち、通常の超音波送受信)を実行する(ステップSa201)。この送受信は、図4においてブロックAに対応する超音波イメージング(Img1)として示してある。このImg1により、通常のBモード画像データが取得される。
【0031】
次に、送信方向を第m方向(ただし、mはビームプロファイル画像の取得を所望するビーム送信方向であり、0≦m≦nとする。)とし、受信方向を第0方向とする超音波送受信が実行される(ステップSa202)。すなわち、図4に示すように、第m方向の送信遅延が設定され、第0方向の受信遅延が設定された超音波送受信が実行される。当該送受信によって取得されたエコー信号は、超音波受信ユニット22の受信遅延ユニット前段のメモリにおいてチャンネル毎に記録されると共に、受信遅延ユニットにおいて第0方向の受信遅延によって加算され、第0方向を受信方向(走査線方向)とするエコー信号(受信ビーム)が生成される。
【0032】
次に、制御プロセッサ28は、記録されたチャンネル毎のエコー信号を用いて、各受信方向の受信遅延を用いた加算処理を実行し、第1〜第nまでの各受信方向(各走査線方向)毎の受信ビームを生成する(ステップSa203)。すなわち、制御プロセッサ28は、図4に示すように、受信遅延ユニット前段のメモリにおいて記録された、第m方向に送信遅延が設定されたチャンネル毎のエコー信号を、第1方向の受信遅延により加算し、第1方向を受信方向(走査線方向)とする受信ビームを生成する。同様に、制御プロセッサ28は、記録されたチャンネル毎のエコー信号を用いて、第2方向、第3方向、・・・・、第n方向の各受信方向の受信遅延により加算し、各受信方向(走査線方向)毎の受信ビームを生成する。なお、第0〜第nまでの各受信方向に関する受信ビームの作成は、図4においてブロックBに対応する超音波イメージング(Img2)として示してある。このImg2により、第m方向を送信方向とする送信ビームに対する音場ビームプロファイルに相関した画像(ビームプロファイル画像)データが取得される。
【0033】
なお、通常のBモード画像を取得するためのImg1における走査断面と、ビームプロファイル画像を取得するためのImg2等における走査断面とは、実質的に同一であることが好ましい。
【0034】
また、本ステップSa2においては、送信方向を第m方向とする送信ビームのビームプロファイル画像データ取得について説明した。他の方向の送信ビームについても、Img3、Img4・・・として同様の処理を行うことで、ビームプロファイル画像データを取得することができる。このとき、操作者は入力装置13に付属するトラックボールなどを使用して送信方向の変更指示を入力することで、送信方向を任意に変化させることができる。
【0035】
本実施形態においては、ビームプロファイル画像データの生成する際(すなわち、Img2、或いは、さらに続くImg3、Img4・・・)、最初の超音波送信によって得られるチャンネル毎のエコー信号を受信加算前に記録し、これを用いて、各受信方向の受信遅延を用いて加算し、各方向に関する受信ビームを生成している。この様な構成を採用することにより、実際の所要時間を1送信程度とすることができる。また、各受信方向の受信遅延を用いて加算については、受信遅延ユニット、加算器を並列的に設け、同時に(並列的に)実行するようにしてもよい。
【0036】
[Bモード画像/ビームプロファイル画像の生成:ステップSa3]
次に、Img1,Img2の各イメージングにおいて取得された各画像データは、モード処理ユニット23において対数増幅、包絡線検波処理を受け、画像生成ユニット25に送られる。画像生成ユニット25は、受け取った各画像データを用いて、Img1に対応する通常のBモード画像と、Img2に対応する方向mについての送信ビームのビームプロファイル画像とを生成する(ステップSa3)。
【0037】
[重畳画像・ビームプロファイル画像の表示:ステップSa4]
画像合成ユニット27は、図5に示すように、Img1によって取得されたBモード画像とImg2によって取得されたビームプロファイル画像とを用いて、重畳画像を生成する。例えば、画像合成ユニット27は、ビームプロファイル画像に所定の色彩を割り当て、当該ビームプロファイル画像を、空間的位置を対応させてBモード画像に重畳させた重畳画像(或いは、Bモード画像をビームプロファイル画像に重畳させた重畳画像)を生成する。或いは、画像合成ユニット27は、ビームプロファイル画像とBモード画像との双方のグレースケールの輝度値を1/2にして、一方を他方に重畳させて重畳画像を生成する。
【0038】
生成された重畳画像或いはビームプロファイル画像は、例えば単独で、或いはImg1によって取得されたBモード画像と共に並列表示される(ステップSa4)。
【0039】
図6は、Img1によって取得されたBモード画像とImg2によって取得されたビームプロファイル画像との並列表示の一例を示した図である。また、図7は、図6の表示形態を模式図で示したものである。共に第m方向(送信方向)を中央直下方向とした例となっている。各図に示すように、ビームプロファイル画像と通常のBモード画像とを見比べることで、ある1本の走査線上の画像が一部確認でき、画像化されている範囲から、フォーカスの位置や絞り幅が反映されていることがわかる。またサイドローブ、グレーティングローブによって生じたエコーも表現されている。
【0040】
図8は、通常のBモード画像とビームプロファイル画像とから生成された重畳画像の表示形態を示した図である。図9は、図8の表示形態を模式図で示したものである。各図に示すように、重畳画像によれば、ある1本の走査線上の画像が一部確認でき、画像化されている範囲から、フォーカスの位置や絞り幅が反映されていることがわかる。またサイドローブ、グレーティングローブによって生じたエコーも表現されている。
【0041】
(利用例1)
次に、ビームプロファイル画像又は重畳画像の利用例について説明する。
【0042】
本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像を利用すれば、送信ビームの現実の焦点位置、音場の形状等を知ることができる。制御プロセッサ28は、例えばビームプロファイル画像上のある一定値以上の輝度を有する領域を抽出し、当該領域の幅(送信方向に直交する方向についての長さ)を計測し、最小幅の存在する深度を焦点位置(焦点深度)としてモニタ14に表示する。これにより、操作者は、送信条件として設定した焦点位置と、被検体内における現実の焦点位置との関係を迅速且つ簡単に視認することができる。
【0043】
(利用例2)
本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像を利用すれば、媒質の実際の音速を推定することができる。
【0044】
一般に、超音波診断装置の送信遅延は、予め仮定した音速値を元に、理論的な焦点位置に向かって収束するように設計されている。しかし、被検体内での音速が仮定した値と違っている場合、理論的な焦点位置と現実の焦点位置とは異なる。
【0045】
そこで、本超音波診断装置では、ビームプロファイル画像を利用した次の手法により、当該被検体内での正確な音速を推定する。すなわち、制御プロセッサ28は、所定のアルゴリズムを用いて、予め仮定する音速値を随時変化させてImg2を実行し、各音速値毎のビームプロファイル画像を取得し、例えば上記利用例1に示した手法により、各各音速値に対応する現実の焦点位置を計測する。制御プロセッサ28は、計測された現実の焦点位置のうち、理論的な焦点位置と一致する現実の焦点位置を判定し、当該焦点位置に対応する音速値を、被検体内での現実の音速値と推定する。推定された現実の音速値は、所定の形態でモニタ14に表示される。以降、当該被検体については、推定された現実の音速値を用いることで、より正確な超音波画像診断を実現することができる。
【0046】
(利用例3)
超音波受信信号を用いて生体の特徴量を分析する種々の方法が考案されている。例えば特開2003−61964号公報に記載の技術によれば、エコー信号の統計量を解析すれば、画像上に見える点状のパタンが、実際の微小な構造物を反映した信号なのか、あるいは単なる干渉縞で生じた模様(スペックルパタンよ呼ばれる)なのかが判別可能である。
【0047】
しかし、例えば上記統計量解析を行う場合、受信信号の信号−ノイズ比(S/N)がその精度を大きく左右する。例えば、受信信号に含まれるノイズ成分が著しく大きい場合や、他方向からのアーチファクトが混入した場合などは、解析結果の精度が劣化してしまう。
【0048】
このような解析を行う際に、本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像を利用すれば、解析結果の精度を評価することが可能である。すなわち、制御プロセッサ28は、メインローブ(メインビーム)方向(すなわち、送信方向)の主信号成分と、サイドローブやグレーティングローブを含んだその他の領域のノイズ信号成分とを抽出し、その強度比を計算して、主信号成分のS/N比を評価する。その結果、例えば、メインビーム方向の主信号成分のS/N比は所定の閾値より小さいと評価した場合には、制御プロセッサ28は、「解析の精度に影響を与える」等のメッセージをモニタ14に表示する。
【0049】
また、必要に応じて、主信号成分とノイズ信号成分との強度比そのものをモニタ14に表示するようにしてもよい。例えばノイズ信号成分が主信号成分の30%である場合には、ノイズ信号成分が支配的な状況であると言える。操作者は、モニタ14に表示された主信号成分とノイズ信号成分との強度比を視認することで、このままでは良好な分析が出来ないことを察知でき、プローブの照射角度を変えるなどの改善することを試みることができる。また、この様なプローブ照射角度の変更等の改善を行う場合には、重畳画像をリアルタイムで表示することで、送信ビームの被検体への入射状況を迅速且つ簡単に視認することができ、改善が一目で判別可能となる。
【0050】
(利用例4)
本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像は、超音波診断装置の操作に関する教育にも利用することができる。例えば、表示されたビームプロファイル画像や重畳画像を観察することで、送信音場の概形を視覚的に把握することができ、焦点位置又は焦点領域が実際にどこにあるのか、送信音場が想像よりも広いか狭いか等を判定することができる。或いは、理論的な焦点位置と被検体内の現実の焦点位置との一致やずれを判定することができる。これにより、医師や技師等の操作者は、各種パラメータの設定値と実際の被検体内における超音波の空間分解能、焦点の位置や大きさとの対応関係を直観的且つ客観的に把握することができる。その結果、超音波診断装置の各種パラメータを適切に設定するための感覚を養うための支援をすることができる。
【0051】
(利用例5)
本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像は、超音波診断装置や超音波プローブが正常に動作しているか否かの検査の支援情報としても利用することができる。例えば、所定のファントム(装置の動作試験に用いられる模型)を用いて、所定の送受信条件により各走査線方向毎の理想的なビームプロファイル画像を事前に取得しておく。この理想的なビームプロファイル画像と、同一ファントム及び同一送受信条件を用いて取得したビームプロファイル画像とを並列表示或いは重畳表示し比較することで、超音波プローブや超音波診断装置が正常に動作しているか否かを視覚的に判定することができる。
【0052】
(効果)
以上本超音波診断装置によれば、送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが送信され、当該送信ビームを用いて得られる各超音波振動子毎の各エコー信号に対して、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームが取得される。この様にして取得された各走査線毎のエコー信号を映像化することで、所定の送信方向についての送信ビームについてビームプロファイル画像が生成される。また、同様の処理を各送信方向について行うことで、各走査線毎の送信ビームについてビームプロファイル画像が生成される。生成されたビームプロファイル画像は、所定の色彩或いは輝度を割り当てられ、単独で、或いは同一断面の(通常の)Bモード画像と並列的に、或いはBモード画像に重畳して表示される。医師や技師等の操作者は、表示されたビームプロファイル画像や重畳画像を観察することで、送信音場の概形を視覚的に把握することができ、焦点位置又は焦点領域が実際にどこにあるのか、送信音場が想像よりも広いか狭いか等を判定することができる。その結果、空間分解能と焦点の位置や大きさとの対応関係や空間分解能の限界等を直観的且つ客観的に把握することができ、画像診断に対する過大評価/過小評価を回避することができる。
【0053】
さらに、Bモード画像にビームプロファイル画像を重畳した重畳画像を観察することで、送信ビームの被検体への入射状況を視覚的に把握することができる。これにより、例えば送信ビームが肋間や腹膜の影響で著しく乱れている場合、サイドローブの方向にガスなどの大きな反射体が存在する場合等、送信ビームの被検体への入射状況が良好であるか否かを直接的に察知することができる。また、この様な送信ビームの入射状況は、例えば現実の焦点位置や音速値の評価や、エコー信号を解析して所定の特徴量を抽出する分析を行う際において、当該抽出された特徴量の品質(精度)を判定に利用することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。第1の実施形態では、受信遅延前のエコー信号をチャンネル毎にメモリに記憶し、これを異なる受信遅延パタン毎に加算することで、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを生成した。これに対し、本実施形態に係る超音波診断装置1は、送信方向及び送信焦点が固定されたままの超音波送信と、受信方向及び受信焦点を変更しながらの(すなわち、受信遅延パタンを経時的に変化させながらの)超音波受信とを交互に実行することにより、ビームプロファイル画像データを取得するものである。
【0055】
なお、本実施形態に係るビームプロファイル画像生成・表示処理と第1の実施形態のビームプロファイル画像生成・表示処理とを比較した場合、ステップSa2の「ビームプロファイル画像データの取得」の処理内容のみが異なる。以下、本実施形態に係る「ビームプロファイル画像データの取得」について説明する。
【0056】
図10は、第2の実施形態に係るビームプロファイル画像データの取得処理の流れを示したフローチャートである。また、図11は、ビームプロファイル画像データの取得処理の概念を説明するための図である。
【0057】
まず、制御プロセッサ28は、走査線番号第0〜第nまでのn+1本の各走査線につき、送信方向と受信方向とを一致させた超音波送受信(すなわち、通常の超音波送受信)を実行する(ステップSb201)。この送受信は、図11においてブロックAに対応する超音波イメージング(Img1)として示してある。このImg1により、通常のBモード画像データが取得される。
【0058】
次に、第m方向と送信方向とし、例えば第0方向を受信方向とする超音波送受信が実行される(ステップSb202)。すなわち、図11に示すように、第m方向の送信遅延が設定され、第0方向の受信遅延が設定された超音波送受信が実行される。当該送受信によって取得されたエコー信号は、受信遅延ユニットにおいて第0方向の受信遅延によって加算され、第0方向を走査線とするエコー信号(受信ビーム)が生成される。
【0059】
次に、第m方向と送信方向とし、例えば第1方向を受信方向とする超音波送受信が実行される(ステップSb203)。すなわち、第m方向の送信遅延が設定され、第1方向の受信遅延が設定された超音波送受信が実行される。当該送受信によって取得されたエコー信号は、受信遅延ユニットにおいて第1方向の受信遅延によって加算され、第1方向を走査線とするエコー信号(受信ビーム)が生成される。同様に、制御プロセッサ28は、第m方向を送信方向とし、受信方向を第2方向(或いは、第3方向、第4方向、・・・、第n方向)とする超音波送受信を交互に実行し、送信方向を第m方向に固定した送信ビームについての、各受信方向(各走査線方向)に関するエコー信号を取得する。この各受信方向に関するエコー信号の生成は、図11においてブロックBに対応する超音波イメージング(Img2)として示してある。このImg2により、方向mの送信に対する音場ビームプロファイルに相関した画像(ビームプロファイル画像)データが取得される。
【0060】
なお、他の方向の送信ビームについても、Img3、Img4・・・として同様の処理を行うことで、ビームプロファイル画像データを取得することができる点は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
以上述べた構成によっても、第1の実施形態と同様の利用形態が可能であり、同様の効果を実現することができる。また、本実施形態の場合、送信は逐次行われるため、Img2の所要時間はImg1(通常Bモード画像の取得)の所要時間と実質的に同じである。しかし本実施方法は、プリアンプ後に特別なメモリを必要としないので、回路構成が簡単となるという利点がある。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0063】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0064】
(2)上記各実施形態においては、2次元領域を超音波走査する場合において、2次元画像としてのビームプロファイル画像を生成し表示する場合を例として説明した。しかしながら、本発明の技術的思想は、2次元の場合に拘泥されず、例えば、被検体を3次元的に走査してボリウムデータを取得し、そこから3次元的な診断画像を生成する、3次元超音波映像法にも応用可能である。係る場合には、例えば第m方向に送信方向を固定したビーム送信と、(同一平面に限定されない)3次元的な方位を持つ複数の受信方向毎の受信遅延パタンを用いたビーム受信を行うことで、3次元的なビームプロファイル画像を取得することができる。なお、この様に3次元的な超音波走査を行う場合には、超音波プローブ12として、1次元に配列された振動子を機械的に揺動させて得られる揺動プローブ、或いは超音波振動子が2次元的に配列されたマトリクスアレイプローブが用いられる。
【0065】
(3)ビームプロファイル画像の生成・表示は、ワークステーション等によって実現される超音波画像処理装置においても実現可能である。すなわち、送信方向を第m方向とした送信ビームによって得られるエコー信号を受信加算前にチャンネル毎に記憶しておき、これを事後的に読み出して、複数の受信方向に対応する複数の受信遅延パタンを用いて加算することで、各走査線方向についてのエコー信号(受信ビーム)を生成することができる。
【0066】
(4)上記各実施形態においては、一例として、超音波プローブの全ての超音波振動子を用いてエコー信号を取得し、各エコー信号を用いてビームプロファイル画像を生成する場合を例示した。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えばスパースアレイプローブ等の様に、全超音波振動子のうちの幾つかの超音波振動子を用いて(すなわち、超音波振動子を間引いて)エコー信号を取得し、当該取得した各エコー信号を用いてビームプロファイル画像を生成することも可能である。また、超音波プローブの全超音波振動子、或いは全超音波振動子のうちの幾つかの超音波振動子を用いてエコー信号を取得し、当該取得した複数のエコー信号のうちの幾つかを用いて(すなわち、エコー信号を間引いて)ビームプロファイル画像を生成することも可能である。
【0067】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…超音波診断装置、11…装置本体、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…画像生成ユニット、26…画像メモリ、27…画像合成ユニット、28…制御プロセッサ(CPU)、29…記憶ユニット、30…インターフェースユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内を超音波で走査(スキャン)して臓器等の断層を画像化し、疾患などを画像診断するために用いる超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波診断装置制御プログラム及び超音波画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は生体内情報の画像を表示する診断装置であり、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置などの他の画像診断装置に比べ、安価で被曝が無く、非侵襲性に実時間で観測するための有用な装置として利用されている。超音波診断装置の適用範囲は広く、心臓などの循環器から肝臓、腎臓などの腹部、抹消血管、産婦人科、乳癌の診断などに適用されている。
【0003】
通常、超音波診断装置は、1本の走査線につき収束超音波(送信ビーム)を1回送信し、当該送信方向に焦点を設定した受信を行うことで当該走査線上の診断情報(超音波画像データ)を取得し、さらに逐次走査方向を変えて各走査線につき同様の超音波送受信を繰り返すことで、最終的に2次元あるいは3次元の診断画像を生成する。また、近年では、1回の送信で複数の走査線上の診断情報を得る方法(同時受信)も用いられている。これは、収束超音波を送信し、これによって得られるエコー信号に対して複数の異なる受信遅延を与えて並列的に複数回の遅延加算を実行することで、複数方向に対応する複数の受信ビームを作り出すものである。なお、一般的には、送信方向上に受信焦点を設定すると、最も良質な診断画像を得ることができる。
【0004】
ところで、送信に用いられる収束超音波には、必ず焦点が存在する。この焦点は、通常、画像上にマークなどで現され、操作者がその位置や大きさを把握できるようになっている。一般的に、焦点付近の空間分解能は最も高い。従って、操作者は、関心領域の位置や大きさに応じて画像上の焦点位置等を変更し、設定する。超音波診断装置は、設定された焦点マークの位置等に対応させて送信遅延パタンを変化させることで、実際の送信焦点を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−61964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
送受信焦点の位置や形状等は、空間分解能に影響する。このため、検査者にとって送受信焦点の詳細は、画質を左右する重要な情報となる。例えば図12左から一番目に示すような送信パルスが形成する音場(ビームプロファイル)は、焦点あるいは焦点外の収束度が視覚的に把握可能である。ここで、輪郭線81は、音場中の音圧の等高線であり、輪郭線81内のエコー信号が診断画像の主要な構成要素と成ると考えてよい。図12左から一番目と図12左から二番目とは同じ焦点位置であるが、図12左から一番目に示すビームプロファイルの方が焦点での絞りは狭く、この場所での空間分解能は図12左から二番目よりも優れている。また図12左から一番目と図12左から三番目とは焦点での空間分解能は同じである。一方、焦点外も含めたビームプロファイルは図12左から三番目の方が狭く、総合的な空間分解能は図12左から三番目が優れていることが分る。
【0007】
しかしながら、従来の超音波診断装置では、焦点の存在位置程度の情報しか提供されないため、例えば上記図12左から一番目、図12左から二番目、図12左から三番目の間の違い等を把握することは不可能である。すなわち、従来の超音波診断装置では、送受信焦点の実際の位置や形状等が画質へどのように影響するのかを、直観的に把握することはできない。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、実際の音場そのものに関する画像(ビームプロファイル画像)を生成し、超音波送受信において形成される音場の形状、焦点位置等を直接的に視認することができる超音波診断装置、超音波画像処理装置、超音波診断装置制御プログラム及び超音波画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【0009】
一実施形態に係る超音波診断装置は、それぞれが供給される駆動信号に応答して超音波を発生し且つ受信した超音波に応答してエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、前記各超音波振動子毎に異なる送信遅延が与えられた前記駆動信号を前記各超音波振動子に供給することで、設定された送信方向と送信焦点とに基づく送信ビームを前記超音波プローブから送信させる送信ユニットと、前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、前記超音波振動子毎に異なる受信遅延を与えると共に、当該受信遅延が与えられた前記各エコー信号を加算して、所定の受信方向と受信焦点とを有する受信ビームを取得する受信ユニットと、送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが前記超音波プローブから送信されるように、前記送信ユニットを制御すると共に、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに基づく複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する制御ユニットと、前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成する画像生成ユニットと、前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示する表示ユニットと、を具備する超音波診断装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係るビームプロファイル画像生成・表示処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】図3は、ビームプロファイル画像の取得処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るビームプロファイル画像の取得処理の概念を説明するための図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係るビームプロファイル画像の取得処理の概念を説明するための図である。
【図6】図6は、ビームプロファイル画像の一例を示した図である。
【図7】図7は、ビームプロファイル画像を模式的に示したイラスト図である。
【図8】図8は、ビームプロファイル画像の一例を示した図である。
【図9】図9は、ビームプロファイル画像を模式的に示したイラスト図である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態に係るビームプロファイル画像生成・表示処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】図11は、第2の実施形態に係るビームプロファイル画像の取得処理の概念を説明するための図である。
【図12】図12は、超音波画像収集における音場を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置本体11は、超音波プローブ12、入力装置13、モニタ14、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、画像生成ユニット25、画像メモリ26、画像合成ユニット27、制御プロセッサ28、記憶ユニット29、インタフェースユニット30を具備している。
【0013】
装置本体11に内蔵される超音波送信ユニット21及び受信ユニット22等は、集積回路などのハードウェアで構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムである場合もある。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0014】
超音波プローブ12は、超音波受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに収束超音波(送信ビーム)が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0015】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボールの他、マウス、キーボード等を有している。
【0016】
モニタ14は、画像生成回路25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0017】
超音波送信ユニット21は、パルス発生器、送信遅延ユニット、パルサを有している。パルサでは、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、送信遅延ユニットでは、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性(送信方向)を決定するのに必要な遅延時間(送信遅延)が、振動子毎の各レートパルスに与えられる。パルス発生器は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動信号(駆動パルス)を印加する。
【0018】
超音波受信ユニット22は、プリアンプ、A/D変換器、受信遅延ユニット、加算器等を有している。プリアンプでは、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、アナログ信号としてのエコー信号をディジタル信号に変換する。受信遅延ユニットでは、振動子毎のエコー信号に対し受信指向性(受信方向)を決定するのに必要な遅延時間(受信遅延)を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。なお、図示しないが、受信遅延ユニットの前段には、各チャネル毎のエコー信号を記憶するメモリが設けられている。
【0019】
Bモード処理ユニット23は、受信ユニット22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成ユニット25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニタ14に表示される。
【0020】
ドプラ処理ユニット23は、受信ユニット22から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は画像生成ユニット25に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニタ14にカラー表示される。
【0021】
画像生成ユニット25は、超音波スキャンによって得られた走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。画像生成ユニット25は、画像データを格納する記憶メモリを搭載しており、例えば診断の後に操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっている。なお、当該画像生成ユニット25に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
【0022】
画像メモリ26は、画像生成ユニット25から受信した画像データを格納する記憶メモリから成る。この画像データは、例えば診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能でなる。また、画像メモリ26は、超音波受信ユニット22直後の出力信号(radio frequency(RF)信号と呼ばれる)、受信ユニット22通過後の画像輝度信号、その他の生データ、ネットワークを介して取得した画像データ等を必要に応じて記憶する。
【0023】
制御プロセッサ28は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する制御手段である。制御プロセッサ28は、記憶媒体29からビームプロファイル画像生成・表示機能を実現するための専用プログラム、各種計算処理を実行するための専用プログラムを読み出して各種処理に関する演算・制御等を実行する。特に、制御プロセッサ28は、記憶ユニット29に記憶された送信遅延パタン、受信遅延パタンを読み出して、送信方向や受信方向に応じて送信遅延及び受信遅延を切り替える。
【0024】
記憶ユニット29は、後述するビームプロファイル画像生成・表示機能を実現するための専用プログラム、送信遅延の複数の組み合わせパタン、受信遅延の複数の組み合わせパタン、後述する焦点位置の計算処理、被検体中(媒質中)の音速の計算処理、エコー信号を用いた特徴量の計算処理、信頼性を示す指標の計算処理等の各種計算処理を実行するための専用プログラム、所定のスキャンシーケンス、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、その他のデータ群が保管されている。また必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。記憶ユニット29のデータは、インタフェースユニット30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0025】
インタフェースユニット30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェースユニット30よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0026】
(ビームプロファイル画像生成・表示機能)
次に、本超音波診断装置が具備するビームプロファイル画像生成・表示機能について説明する。本機能は、各走査線に対して現実に送信される送信ビームのビームプロファイルを示す情報としてビームプロファイル画像として生成し、所定の形態で表示するものである。
【0027】
図2は、ビームプロファイル画像生成・表示機能に従う処理(ビームプロファイル画像生成・表示処理)の流れを示したフローチャートである。以下、各ステップにおける処理の内容について説明する。
【0028】
[ビームプロファイルモードの選択、送受信条件等の設定:ステップSa1]
まず、入力装置13を介してビームプロファイルモード(ビームプロファイル画像生成・表示機能を実行するためのモード)が選択され、送信音圧、焦点位置(深度)の送受信条件が入力される(ステップS1)。制御プロセッサ28は、選択・入力指示に応答して、専用プログラムを立ち上げてメモリ上に展開することでビームプロファイルモードを起動し、各種送受信条件を実現するための電圧、送信遅延、受信遅延等を設定する。
【0029】
[ビームプロファイル画像データの取得:ステップS2]
図3は、ビームプロファイル画像データを取得するための超音波送受信の流れを示したフローチャートである。また、図4は、ビームプロファイル画像データを取得するための超音波送受信の概念を説明するための図である。図4において、1つのボックス40は1回の超音波送受信を示している。各ボックス40に対応する超音波送受信において、T:iは超音波送信においてi方向に送信遅延を設定することを、R:jは超音波受信においてj方向に受信遅延を設定することを、それぞれ象徴的に示している。なお、i,jはそれぞれ0≦i≦n、0≦j≦nをみたす整数であり、nは走査線の最終番号ある(従って、本実施形態では、方向0から方向nまでのn+1方向(n+1本)の走査線で一枚の2次元画像が構成されるものとしている)。
【0030】
まず、制御プロセッサ28は、走査線番号第0〜第nまでのn+1本の各走査線につき、送信方向と受信方向とを一致させた超音波送受信(すなわち、通常の超音波送受信)を実行する(ステップSa201)。この送受信は、図4においてブロックAに対応する超音波イメージング(Img1)として示してある。このImg1により、通常のBモード画像データが取得される。
【0031】
次に、送信方向を第m方向(ただし、mはビームプロファイル画像の取得を所望するビーム送信方向であり、0≦m≦nとする。)とし、受信方向を第0方向とする超音波送受信が実行される(ステップSa202)。すなわち、図4に示すように、第m方向の送信遅延が設定され、第0方向の受信遅延が設定された超音波送受信が実行される。当該送受信によって取得されたエコー信号は、超音波受信ユニット22の受信遅延ユニット前段のメモリにおいてチャンネル毎に記録されると共に、受信遅延ユニットにおいて第0方向の受信遅延によって加算され、第0方向を受信方向(走査線方向)とするエコー信号(受信ビーム)が生成される。
【0032】
次に、制御プロセッサ28は、記録されたチャンネル毎のエコー信号を用いて、各受信方向の受信遅延を用いた加算処理を実行し、第1〜第nまでの各受信方向(各走査線方向)毎の受信ビームを生成する(ステップSa203)。すなわち、制御プロセッサ28は、図4に示すように、受信遅延ユニット前段のメモリにおいて記録された、第m方向に送信遅延が設定されたチャンネル毎のエコー信号を、第1方向の受信遅延により加算し、第1方向を受信方向(走査線方向)とする受信ビームを生成する。同様に、制御プロセッサ28は、記録されたチャンネル毎のエコー信号を用いて、第2方向、第3方向、・・・・、第n方向の各受信方向の受信遅延により加算し、各受信方向(走査線方向)毎の受信ビームを生成する。なお、第0〜第nまでの各受信方向に関する受信ビームの作成は、図4においてブロックBに対応する超音波イメージング(Img2)として示してある。このImg2により、第m方向を送信方向とする送信ビームに対する音場ビームプロファイルに相関した画像(ビームプロファイル画像)データが取得される。
【0033】
なお、通常のBモード画像を取得するためのImg1における走査断面と、ビームプロファイル画像を取得するためのImg2等における走査断面とは、実質的に同一であることが好ましい。
【0034】
また、本ステップSa2においては、送信方向を第m方向とする送信ビームのビームプロファイル画像データ取得について説明した。他の方向の送信ビームについても、Img3、Img4・・・として同様の処理を行うことで、ビームプロファイル画像データを取得することができる。このとき、操作者は入力装置13に付属するトラックボールなどを使用して送信方向の変更指示を入力することで、送信方向を任意に変化させることができる。
【0035】
本実施形態においては、ビームプロファイル画像データの生成する際(すなわち、Img2、或いは、さらに続くImg3、Img4・・・)、最初の超音波送信によって得られるチャンネル毎のエコー信号を受信加算前に記録し、これを用いて、各受信方向の受信遅延を用いて加算し、各方向に関する受信ビームを生成している。この様な構成を採用することにより、実際の所要時間を1送信程度とすることができる。また、各受信方向の受信遅延を用いて加算については、受信遅延ユニット、加算器を並列的に設け、同時に(並列的に)実行するようにしてもよい。
【0036】
[Bモード画像/ビームプロファイル画像の生成:ステップSa3]
次に、Img1,Img2の各イメージングにおいて取得された各画像データは、モード処理ユニット23において対数増幅、包絡線検波処理を受け、画像生成ユニット25に送られる。画像生成ユニット25は、受け取った各画像データを用いて、Img1に対応する通常のBモード画像と、Img2に対応する方向mについての送信ビームのビームプロファイル画像とを生成する(ステップSa3)。
【0037】
[重畳画像・ビームプロファイル画像の表示:ステップSa4]
画像合成ユニット27は、図5に示すように、Img1によって取得されたBモード画像とImg2によって取得されたビームプロファイル画像とを用いて、重畳画像を生成する。例えば、画像合成ユニット27は、ビームプロファイル画像に所定の色彩を割り当て、当該ビームプロファイル画像を、空間的位置を対応させてBモード画像に重畳させた重畳画像(或いは、Bモード画像をビームプロファイル画像に重畳させた重畳画像)を生成する。或いは、画像合成ユニット27は、ビームプロファイル画像とBモード画像との双方のグレースケールの輝度値を1/2にして、一方を他方に重畳させて重畳画像を生成する。
【0038】
生成された重畳画像或いはビームプロファイル画像は、例えば単独で、或いはImg1によって取得されたBモード画像と共に並列表示される(ステップSa4)。
【0039】
図6は、Img1によって取得されたBモード画像とImg2によって取得されたビームプロファイル画像との並列表示の一例を示した図である。また、図7は、図6の表示形態を模式図で示したものである。共に第m方向(送信方向)を中央直下方向とした例となっている。各図に示すように、ビームプロファイル画像と通常のBモード画像とを見比べることで、ある1本の走査線上の画像が一部確認でき、画像化されている範囲から、フォーカスの位置や絞り幅が反映されていることがわかる。またサイドローブ、グレーティングローブによって生じたエコーも表現されている。
【0040】
図8は、通常のBモード画像とビームプロファイル画像とから生成された重畳画像の表示形態を示した図である。図9は、図8の表示形態を模式図で示したものである。各図に示すように、重畳画像によれば、ある1本の走査線上の画像が一部確認でき、画像化されている範囲から、フォーカスの位置や絞り幅が反映されていることがわかる。またサイドローブ、グレーティングローブによって生じたエコーも表現されている。
【0041】
(利用例1)
次に、ビームプロファイル画像又は重畳画像の利用例について説明する。
【0042】
本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像を利用すれば、送信ビームの現実の焦点位置、音場の形状等を知ることができる。制御プロセッサ28は、例えばビームプロファイル画像上のある一定値以上の輝度を有する領域を抽出し、当該領域の幅(送信方向に直交する方向についての長さ)を計測し、最小幅の存在する深度を焦点位置(焦点深度)としてモニタ14に表示する。これにより、操作者は、送信条件として設定した焦点位置と、被検体内における現実の焦点位置との関係を迅速且つ簡単に視認することができる。
【0043】
(利用例2)
本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像を利用すれば、媒質の実際の音速を推定することができる。
【0044】
一般に、超音波診断装置の送信遅延は、予め仮定した音速値を元に、理論的な焦点位置に向かって収束するように設計されている。しかし、被検体内での音速が仮定した値と違っている場合、理論的な焦点位置と現実の焦点位置とは異なる。
【0045】
そこで、本超音波診断装置では、ビームプロファイル画像を利用した次の手法により、当該被検体内での正確な音速を推定する。すなわち、制御プロセッサ28は、所定のアルゴリズムを用いて、予め仮定する音速値を随時変化させてImg2を実行し、各音速値毎のビームプロファイル画像を取得し、例えば上記利用例1に示した手法により、各各音速値に対応する現実の焦点位置を計測する。制御プロセッサ28は、計測された現実の焦点位置のうち、理論的な焦点位置と一致する現実の焦点位置を判定し、当該焦点位置に対応する音速値を、被検体内での現実の音速値と推定する。推定された現実の音速値は、所定の形態でモニタ14に表示される。以降、当該被検体については、推定された現実の音速値を用いることで、より正確な超音波画像診断を実現することができる。
【0046】
(利用例3)
超音波受信信号を用いて生体の特徴量を分析する種々の方法が考案されている。例えば特開2003−61964号公報に記載の技術によれば、エコー信号の統計量を解析すれば、画像上に見える点状のパタンが、実際の微小な構造物を反映した信号なのか、あるいは単なる干渉縞で生じた模様(スペックルパタンよ呼ばれる)なのかが判別可能である。
【0047】
しかし、例えば上記統計量解析を行う場合、受信信号の信号−ノイズ比(S/N)がその精度を大きく左右する。例えば、受信信号に含まれるノイズ成分が著しく大きい場合や、他方向からのアーチファクトが混入した場合などは、解析結果の精度が劣化してしまう。
【0048】
このような解析を行う際に、本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像を利用すれば、解析結果の精度を評価することが可能である。すなわち、制御プロセッサ28は、メインローブ(メインビーム)方向(すなわち、送信方向)の主信号成分と、サイドローブやグレーティングローブを含んだその他の領域のノイズ信号成分とを抽出し、その強度比を計算して、主信号成分のS/N比を評価する。その結果、例えば、メインビーム方向の主信号成分のS/N比は所定の閾値より小さいと評価した場合には、制御プロセッサ28は、「解析の精度に影響を与える」等のメッセージをモニタ14に表示する。
【0049】
また、必要に応じて、主信号成分とノイズ信号成分との強度比そのものをモニタ14に表示するようにしてもよい。例えばノイズ信号成分が主信号成分の30%である場合には、ノイズ信号成分が支配的な状況であると言える。操作者は、モニタ14に表示された主信号成分とノイズ信号成分との強度比を視認することで、このままでは良好な分析が出来ないことを察知でき、プローブの照射角度を変えるなどの改善することを試みることができる。また、この様なプローブ照射角度の変更等の改善を行う場合には、重畳画像をリアルタイムで表示することで、送信ビームの被検体への入射状況を迅速且つ簡単に視認することができ、改善が一目で判別可能となる。
【0050】
(利用例4)
本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像は、超音波診断装置の操作に関する教育にも利用することができる。例えば、表示されたビームプロファイル画像や重畳画像を観察することで、送信音場の概形を視覚的に把握することができ、焦点位置又は焦点領域が実際にどこにあるのか、送信音場が想像よりも広いか狭いか等を判定することができる。或いは、理論的な焦点位置と被検体内の現実の焦点位置との一致やずれを判定することができる。これにより、医師や技師等の操作者は、各種パラメータの設定値と実際の被検体内における超音波の空間分解能、焦点の位置や大きさとの対応関係を直観的且つ客観的に把握することができる。その結果、超音波診断装置の各種パラメータを適切に設定するための感覚を養うための支援をすることができる。
【0051】
(利用例5)
本超音波診断装置によって取得されるビームプロファイル画像又は重畳画像は、超音波診断装置や超音波プローブが正常に動作しているか否かの検査の支援情報としても利用することができる。例えば、所定のファントム(装置の動作試験に用いられる模型)を用いて、所定の送受信条件により各走査線方向毎の理想的なビームプロファイル画像を事前に取得しておく。この理想的なビームプロファイル画像と、同一ファントム及び同一送受信条件を用いて取得したビームプロファイル画像とを並列表示或いは重畳表示し比較することで、超音波プローブや超音波診断装置が正常に動作しているか否かを視覚的に判定することができる。
【0052】
(効果)
以上本超音波診断装置によれば、送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが送信され、当該送信ビームを用いて得られる各超音波振動子毎の各エコー信号に対して、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームが取得される。この様にして取得された各走査線毎のエコー信号を映像化することで、所定の送信方向についての送信ビームについてビームプロファイル画像が生成される。また、同様の処理を各送信方向について行うことで、各走査線毎の送信ビームについてビームプロファイル画像が生成される。生成されたビームプロファイル画像は、所定の色彩或いは輝度を割り当てられ、単独で、或いは同一断面の(通常の)Bモード画像と並列的に、或いはBモード画像に重畳して表示される。医師や技師等の操作者は、表示されたビームプロファイル画像や重畳画像を観察することで、送信音場の概形を視覚的に把握することができ、焦点位置又は焦点領域が実際にどこにあるのか、送信音場が想像よりも広いか狭いか等を判定することができる。その結果、空間分解能と焦点の位置や大きさとの対応関係や空間分解能の限界等を直観的且つ客観的に把握することができ、画像診断に対する過大評価/過小評価を回避することができる。
【0053】
さらに、Bモード画像にビームプロファイル画像を重畳した重畳画像を観察することで、送信ビームの被検体への入射状況を視覚的に把握することができる。これにより、例えば送信ビームが肋間や腹膜の影響で著しく乱れている場合、サイドローブの方向にガスなどの大きな反射体が存在する場合等、送信ビームの被検体への入射状況が良好であるか否かを直接的に察知することができる。また、この様な送信ビームの入射状況は、例えば現実の焦点位置や音速値の評価や、エコー信号を解析して所定の特徴量を抽出する分析を行う際において、当該抽出された特徴量の品質(精度)を判定に利用することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。第1の実施形態では、受信遅延前のエコー信号をチャンネル毎にメモリに記憶し、これを異なる受信遅延パタン毎に加算することで、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを生成した。これに対し、本実施形態に係る超音波診断装置1は、送信方向及び送信焦点が固定されたままの超音波送信と、受信方向及び受信焦点を変更しながらの(すなわち、受信遅延パタンを経時的に変化させながらの)超音波受信とを交互に実行することにより、ビームプロファイル画像データを取得するものである。
【0055】
なお、本実施形態に係るビームプロファイル画像生成・表示処理と第1の実施形態のビームプロファイル画像生成・表示処理とを比較した場合、ステップSa2の「ビームプロファイル画像データの取得」の処理内容のみが異なる。以下、本実施形態に係る「ビームプロファイル画像データの取得」について説明する。
【0056】
図10は、第2の実施形態に係るビームプロファイル画像データの取得処理の流れを示したフローチャートである。また、図11は、ビームプロファイル画像データの取得処理の概念を説明するための図である。
【0057】
まず、制御プロセッサ28は、走査線番号第0〜第nまでのn+1本の各走査線につき、送信方向と受信方向とを一致させた超音波送受信(すなわち、通常の超音波送受信)を実行する(ステップSb201)。この送受信は、図11においてブロックAに対応する超音波イメージング(Img1)として示してある。このImg1により、通常のBモード画像データが取得される。
【0058】
次に、第m方向と送信方向とし、例えば第0方向を受信方向とする超音波送受信が実行される(ステップSb202)。すなわち、図11に示すように、第m方向の送信遅延が設定され、第0方向の受信遅延が設定された超音波送受信が実行される。当該送受信によって取得されたエコー信号は、受信遅延ユニットにおいて第0方向の受信遅延によって加算され、第0方向を走査線とするエコー信号(受信ビーム)が生成される。
【0059】
次に、第m方向と送信方向とし、例えば第1方向を受信方向とする超音波送受信が実行される(ステップSb203)。すなわち、第m方向の送信遅延が設定され、第1方向の受信遅延が設定された超音波送受信が実行される。当該送受信によって取得されたエコー信号は、受信遅延ユニットにおいて第1方向の受信遅延によって加算され、第1方向を走査線とするエコー信号(受信ビーム)が生成される。同様に、制御プロセッサ28は、第m方向を送信方向とし、受信方向を第2方向(或いは、第3方向、第4方向、・・・、第n方向)とする超音波送受信を交互に実行し、送信方向を第m方向に固定した送信ビームについての、各受信方向(各走査線方向)に関するエコー信号を取得する。この各受信方向に関するエコー信号の生成は、図11においてブロックBに対応する超音波イメージング(Img2)として示してある。このImg2により、方向mの送信に対する音場ビームプロファイルに相関した画像(ビームプロファイル画像)データが取得される。
【0060】
なお、他の方向の送信ビームについても、Img3、Img4・・・として同様の処理を行うことで、ビームプロファイル画像データを取得することができる点は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
以上述べた構成によっても、第1の実施形態と同様の利用形態が可能であり、同様の効果を実現することができる。また、本実施形態の場合、送信は逐次行われるため、Img2の所要時間はImg1(通常Bモード画像の取得)の所要時間と実質的に同じである。しかし本実施方法は、プリアンプ後に特別なメモリを必要としないので、回路構成が簡単となるという利点がある。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0063】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0064】
(2)上記各実施形態においては、2次元領域を超音波走査する場合において、2次元画像としてのビームプロファイル画像を生成し表示する場合を例として説明した。しかしながら、本発明の技術的思想は、2次元の場合に拘泥されず、例えば、被検体を3次元的に走査してボリウムデータを取得し、そこから3次元的な診断画像を生成する、3次元超音波映像法にも応用可能である。係る場合には、例えば第m方向に送信方向を固定したビーム送信と、(同一平面に限定されない)3次元的な方位を持つ複数の受信方向毎の受信遅延パタンを用いたビーム受信を行うことで、3次元的なビームプロファイル画像を取得することができる。なお、この様に3次元的な超音波走査を行う場合には、超音波プローブ12として、1次元に配列された振動子を機械的に揺動させて得られる揺動プローブ、或いは超音波振動子が2次元的に配列されたマトリクスアレイプローブが用いられる。
【0065】
(3)ビームプロファイル画像の生成・表示は、ワークステーション等によって実現される超音波画像処理装置においても実現可能である。すなわち、送信方向を第m方向とした送信ビームによって得られるエコー信号を受信加算前にチャンネル毎に記憶しておき、これを事後的に読み出して、複数の受信方向に対応する複数の受信遅延パタンを用いて加算することで、各走査線方向についてのエコー信号(受信ビーム)を生成することができる。
【0066】
(4)上記各実施形態においては、一例として、超音波プローブの全ての超音波振動子を用いてエコー信号を取得し、各エコー信号を用いてビームプロファイル画像を生成する場合を例示した。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えばスパースアレイプローブ等の様に、全超音波振動子のうちの幾つかの超音波振動子を用いて(すなわち、超音波振動子を間引いて)エコー信号を取得し、当該取得した各エコー信号を用いてビームプロファイル画像を生成することも可能である。また、超音波プローブの全超音波振動子、或いは全超音波振動子のうちの幾つかの超音波振動子を用いてエコー信号を取得し、当該取得した複数のエコー信号のうちの幾つかを用いて(すなわち、エコー信号を間引いて)ビームプロファイル画像を生成することも可能である。
【0067】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…超音波診断装置、11…装置本体、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…画像生成ユニット、26…画像メモリ、27…画像合成ユニット、28…制御プロセッサ(CPU)、29…記憶ユニット、30…インターフェースユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが供給される駆動信号に応答して超音波を発生し且つ受信した超音波に応答してエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、
前記各超音波振動子毎に異なる送信遅延が与えられた前記駆動信号を前記各超音波振動子に供給することで、設定された送信方向と送信焦点とに基づく送信ビームを前記超音波プローブから送信させる送信ユニットと、
前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、前記超音波振動子毎に異なる受信遅延を与えると共に、当該受信遅延が与えられた前記各エコー信号を加算して、所定の受信方向と受信焦点とを有する受信ビームを取得する受信ユニットと、
送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが前記超音波プローブから送信されるように、前記送信ユニットを制御すると共に、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに基づく複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する制御ユニットと、
前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成する画像生成ユニットと、
前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示する表示ユニットと、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記受信ユニットは、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームを用いて得られる前記各超音波振動子毎の各エコー信号を、前記加算前に記録する記録ユニットを有し、
前記制御ユニットは、前記加算前に記録された前記各超音波振動子毎の各エコー信号に対して、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、前記受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームの送信と、前記受信遅延のパタンを変化させた前記受信ビームの取得とを交互に繰り返すように、前記送信ユニット及び前記受信ユニットを制御する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像生成ユニットは、前記ビームプロファイル画像と被検体に関する超音波画像とを用いて重畳画像を生成し、
前記表示ユニットは、前記重畳画像を表示する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記ビームプロファイル画像を用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームの送信焦点に関する情報を推定する推定ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記推定された送信焦点に関する情報を表示する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記設定された送信焦点の位置と前記ビームプロファイル画像を用いて推定される送信焦点の位置とに基づいて、被検体内における音速値を推定する推定ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記推定された被検体の媒質音速を表示する請求項5記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記ビームプロファイル画像を用いて、送信ビームのメインローブ方向の主信号成分に関するS/N比を評価する評価ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記評価ユニットによる評価の結果を表示する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記制御ユニットは、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、2次元的に受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記制御ユニットは、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、3次元的に受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項10】
送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームを用いて得られた、超音波プローブの各超音波振動子毎のエコー信号を記憶する記憶ユニットと、
前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する加算処理を実行する加算処理ユニットと、
前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成する画像生成ユニットと、
前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示する表示ユニットと、
を具備する超音波画像処理装置。
【請求項11】
前記記憶ユニットは、前記受信遅延の各パタンに共通する前記複数のエコー信号を記憶し、
前記加算処理ユニットは、前記共通する前記前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、前記受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項12】
前記記憶ユニットは、前記受信遅延の各パタン毎に取得された前記複数のエコー信号を記憶し、
前記加算処理ユニットは、前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、対応する前記受信遅延のパタン毎に加算することにより、前記受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項13】
前記画像生成ユニットは、前記ビームプロファイル画像と被検体に関する超音波画像とを用いて重畳画像を生成し、
前記表示ユニットは、前記重畳画像を表示する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項14】
前記ビームプロファイル画像を用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームの送信焦点に関する情報を推定する推定ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記推定された送信焦点に関する情報を表示する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項15】
前記設定された送信焦点の位置と前記ビームプロファイル画像を用いて推定される送信焦点の位置とに基づいて、被検体内における音速値を推定する推定ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記推定された被検体の媒質音速を表示する請求項14記載の超音波画像処理装置。
【請求項16】
前記ビームプロファイル画像を用いて、送信ビームのメインローブ方向の主信号成分に関するS/N比を評価する評価ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記評価ユニットによる評価の結果を表示する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項17】
前記加算処理ユニットは、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、2次元的に受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項18】
前記加算処理ユニットは、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、3次元的に受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項19】
それぞれが供給される駆動信号に応答して超音波を発生し且つ受信した超音波に応答してエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブを用いて、被検体に対して超音波送受信を行う超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記超音波診断装置に内蔵されたコンピュータに、
前記各超音波振動子毎に異なる送信遅延が与えられた前記駆動信号を前記各超音波振動子に供給させることで、設定された送信方向と送信焦点とに基づく送信ビームを前記超音波プローブから送信させる送信機能と、
前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、前記超音波振動子毎に異なる受信遅延を与えると共に、当該受信遅延が与えられた前記各エコー信号を加算させて、所定の受信方向と受信焦点とを有する受信ビームを取得させる受信機能と、
送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが前記超音波プローブから送信されるように、前記送信ユニットを制御させると共に、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに基づく複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算させることにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得させるように、前記受信ユニットを制御させる制御機能と、
前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成させる画像生成機能と、
前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラム。
【請求項20】
送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームを用いて得られた、超音波プローブの各超音波振動子毎のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算させることにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する加算処理を実行させる加算処理機能と、
前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成させる画像生成機能と、
前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【請求項1】
それぞれが供給される駆動信号に応答して超音波を発生し且つ受信した超音波に応答してエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブと、
前記各超音波振動子毎に異なる送信遅延が与えられた前記駆動信号を前記各超音波振動子に供給することで、設定された送信方向と送信焦点とに基づく送信ビームを前記超音波プローブから送信させる送信ユニットと、
前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、前記超音波振動子毎に異なる受信遅延を与えると共に、当該受信遅延が与えられた前記各エコー信号を加算して、所定の受信方向と受信焦点とを有する受信ビームを取得する受信ユニットと、
送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが前記超音波プローブから送信されるように、前記送信ユニットを制御すると共に、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに基づく複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する制御ユニットと、
前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成する画像生成ユニットと、
前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示する表示ユニットと、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記受信ユニットは、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームを用いて得られる前記各超音波振動子毎の各エコー信号を、前記加算前に記録する記録ユニットを有し、
前記制御ユニットは、前記加算前に記録された前記各超音波振動子毎の各エコー信号に対して、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、前記受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームの送信と、前記受信遅延のパタンを変化させた前記受信ビームの取得とを交互に繰り返すように、前記送信ユニット及び前記受信ユニットを制御する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像生成ユニットは、前記ビームプロファイル画像と被検体に関する超音波画像とを用いて重畳画像を生成し、
前記表示ユニットは、前記重畳画像を表示する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記ビームプロファイル画像を用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームの送信焦点に関する情報を推定する推定ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記推定された送信焦点に関する情報を表示する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記設定された送信焦点の位置と前記ビームプロファイル画像を用いて推定される送信焦点の位置とに基づいて、被検体内における音速値を推定する推定ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記推定された被検体の媒質音速を表示する請求項5記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記ビームプロファイル画像を用いて、送信ビームのメインローブ方向の主信号成分に関するS/N比を評価する評価ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記評価ユニットによる評価の結果を表示する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記制御ユニットは、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、2次元的に受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記制御ユニットは、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、3次元的に受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得するように、前記受信ユニットを制御する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項10】
送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームを用いて得られた、超音波プローブの各超音波振動子毎のエコー信号を記憶する記憶ユニットと、
前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する加算処理を実行する加算処理ユニットと、
前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成する画像生成ユニットと、
前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示する表示ユニットと、
を具備する超音波画像処理装置。
【請求項11】
前記記憶ユニットは、前記受信遅延の各パタンに共通する前記複数のエコー信号を記憶し、
前記加算処理ユニットは、前記共通する前記前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、前記受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項12】
前記記憶ユニットは、前記受信遅延の各パタン毎に取得された前記複数のエコー信号を記憶し、
前記加算処理ユニットは、前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、対応する前記受信遅延のパタン毎に加算することにより、前記受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項13】
前記画像生成ユニットは、前記ビームプロファイル画像と被検体に関する超音波画像とを用いて重畳画像を生成し、
前記表示ユニットは、前記重畳画像を表示する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項14】
前記ビームプロファイル画像を用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームの送信焦点に関する情報を推定する推定ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記推定された送信焦点に関する情報を表示する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項15】
前記設定された送信焦点の位置と前記ビームプロファイル画像を用いて推定される送信焦点の位置とに基づいて、被検体内における音速値を推定する推定ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記推定された被検体の媒質音速を表示する請求項14記載の超音波画像処理装置。
【請求項16】
前記ビームプロファイル画像を用いて、送信ビームのメインローブ方向の主信号成分に関するS/N比を評価する評価ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記評価ユニットによる評価の結果を表示する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項17】
前記加算処理ユニットは、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、2次元的に受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項18】
前記加算処理ユニットは、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算することにより、3次元的に受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する請求項10記載の超音波画像処理装置。
【請求項19】
それぞれが供給される駆動信号に応答して超音波を発生し且つ受信した超音波に応答してエコー信号を発生する複数の超音波振動子を有する超音波プローブを用いて、被検体に対して超音波送受信を行う超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記超音波診断装置に内蔵されたコンピュータに、
前記各超音波振動子毎に異なる送信遅延が与えられた前記駆動信号を前記各超音波振動子に供給させることで、設定された送信方向と送信焦点とに基づく送信ビームを前記超音波プローブから送信させる送信機能と、
前記複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、前記超音波振動子毎に異なる受信遅延を与えると共に、当該受信遅延が与えられた前記各エコー信号を加算させて、所定の受信方向と受信焦点とを有する受信ビームを取得させる受信機能と、
送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームが前記超音波プローブから送信されるように、前記送信ユニットを制御させると共に、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに基づく複数のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算させることにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得させるように、前記受信ユニットを制御させる制御機能と、
前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成させる画像生成機能と、
前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラム。
【請求項20】
送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームを用いて得られた、超音波プローブの各超音波振動子毎のエコー信号のうちの少なくとも幾つかのエコー信号に対し、受信遅延のパタンを変化させてパタン毎に加算させることにより、受信方向及び受信焦点が異なる複数の受信ビームを取得する加算処理を実行させる加算処理機能と、
前記複数の受信ビームを用いて、前記送信方向及び送信焦点を固定した送信ビームに関するビームプロファイル画像を生成させる画像生成機能と、
前記ビームプロファイル画像、或いは前記ビームプロファイル画像を用いて生成される所定の画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−45708(P2011−45708A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169668(P2010−169668)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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