超音波診断装置および送信装置
【課題】 波形精度の高い送信信号を生成することを可能とする。
【解決手段】 鉄心の3つの1次側ポールにそれぞれ1次側コイル回路を備える。これらの1次側コイル回路の1つには、中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、第1の巻線における中間タップを挟む二つの巻線N0A,N0Bの導通を個別にオン/オフするトランジスタQN0A,QN0Bと、トランジスタQN0A,QN0Bと同様に第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされるトランジスタQZ0A,QZ0Bとを備える。さらに1次側コイル回路には、トランジスタQN0AまたはトランジスタQN0BがオンであるときとトランジスタQZ0A,QZ0Bがオンであるときとで1次側コイル回路のインピーダンスを整合させるための構成として、トランジスタQZ0A,QZ0Bに抵抗R0A,R0Bを接続する。他の1次側コイル回路も、同等な構成とする。
【解決手段】 鉄心の3つの1次側ポールにそれぞれ1次側コイル回路を備える。これらの1次側コイル回路の1つには、中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、第1の巻線における中間タップを挟む二つの巻線N0A,N0Bの導通を個別にオン/オフするトランジスタQN0A,QN0Bと、トランジスタQN0A,QN0Bと同様に第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされるトランジスタQZ0A,QZ0Bとを備える。さらに1次側コイル回路には、トランジスタQN0AまたはトランジスタQN0BがオンであるときとトランジスタQZ0A,QZ0Bがオンであるときとで1次側コイル回路のインピーダンスを整合させるための構成として、トランジスタQZ0A,QZ0Bに抵抗R0A,R0Bを接続する。他の1次側コイル回路も、同等な構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子から放射される超音波を利用して被検体の診断を行う超音波診断装置と、この超音波診断装置にて超音波振動子を励起して超音波を放射させるための送信信号を生成する送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに設けられた振動子から超音波を放射させるための送信信号を生成する送信部を備える。
【0003】
このような超音波診断装置における送信部としては、トランスを使用する回路が特許文献1により知られている。また特許文献1では、送信パルス用電源として異なる電圧の2電源を持ち、それぞれの電圧のトランスへの印加タイミングを制御することにより、2値レベルのパルスを発生する方法も述べられている。
【0004】
特許文献1の技術を応用することで、1次側巻線を複数備えることにより、これらの1次側巻線のそれぞれで発生した磁束を2次側で加算することにより、多値レベルの送信パルスを発生させることが考えられる。この方式を以下においては磁束加算方式と称する。
【0005】
以下に、この磁束加算方式による任意波形発生の概略を3電源加算時の場合について説明する。
図6は磁束加算方式を利用した送信部の概略構成を示す図、図7は図6に示す送信部に含まれる電気回路の等価回路を示す図である。
【0006】
コア1は4本のポール(pole)1a,1b,1c,1dを持った形状をなす。これらのポール1a〜1dのうち、ポール1aは2次側ポールとなり、ポール1b〜1dは1次側ポールとなる。すなわちコア1は、3本の1次側ポール1b〜1dと1本の2次側ポール1aとを備えている。
【0007】
各々の1次側ポール1b〜1dにはそれぞれ、センタタップ付きの励磁用巻線N0,N1,N2と短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2が巻かれている。送信用電源TXV0,TXV1,TXV2は、側励磁用巻線N0,N1,N2のセンタタップにそれぞれ接続されている。スイッチSW1,SW2,SW3を閉じることにより、励磁用巻線N0,N1,N2に正極性のパルスを発生し、SW4,SW5,SW6を閉じることにより、励磁用巻線N0,N1,N2に負極性のパルスを発生させるようになっている。すなわち、加減算で考えると、SW1,SW2,SW3を閉じることは加算に相当し、SW4,SW5,SW6を閉じることは減算に相当する。
【0008】
短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2をSW7,SW8,SW9で短絡させることにより、その1次側ポール1b〜1dの励磁用巻線NZ0,NZ1,NZ2のセンタタップに入力されている電源を使用しない状態を実現できる。この状態は、加減算で考えるとゼロに相当する。
【0009】
図7に示すように、励磁用巻線N0,N1,N2は、巻線N0A,N1A,N2Aと巻線N0B,N1B,N2Bとがセンタタップを挟んで並んでいると捉えることができる。短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2は、巻線NZ0A,NZ1A,NZ2Aと巻線NZ0B,NZ1B,NZ2Bとがセンタタップを挟んで並んでいると捉えることができる。
このように3つの1次側ポールにはそれぞれ、互いに同等な構成の1次側コイル回路が備えられる。
【0010】
図8は送信用電源TXV0,TXV1,TXV2の電圧の比率を1:3:9とした場合に生成できる電圧値の一覧を表している。なお、トランスの昇圧比は1としている。すなわち、図7における巻線N0A,N0B,NZ0A,NZ0B,N1A,N1B,NZ1A,NZ1B,N2A,N2B,NZ2A,NZ2B,NTの巻線数は同一としている。
【0011】
図8においては、正極性パルスを発生させる場合(スイッチSW1,SW2,SW3を閉じた状態)を「1」、負極性パルスを発生させる場合(スイッチSW4,SW5,SW6を閉じた状態)を「−1」、スイッチSW7,SW8,SW9を閉じた状態を「0」と表現している。
【0012】
例えば、送信電圧レベル「6」を発生させる場合は、スイッチSW3,SW5,SW7を閉じることを示している。この状態では、スイッチSW3を閉じることが+9(1×9)に相当し、スイッチSW5を閉じることが−3(−1×3)に相当し、スイッチSW7を閉じることが0(0×1)に相当することから、+9−3+0という演算によりレベル「6」が得られる。
【0013】
このように3種類の電圧の加減算により±13レベルの波形を発生させる事が可能となる。例えば、送信用電源TXV0の電圧を2Vと設定した場合、送信用電源TXV1の電圧は6V、送信用電源TXV2の電圧は18Vとなり±26Vの電圧を±13レベル量子化にて発生させることができる。
また、1次側と2次側の巻線比を変えることにより任意の昇圧が可能である。
【0014】
さて、以上のような送信部の実用的な回路は、例えば図9に示すような構成とすることが考えられる。
励磁用巻線N0,N1,N2と短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2とが巻数および構造が異なっていると、1次側ポールにて任意の電圧を発生する時とゼロ電圧を発生する時とで、1次側と2次側間の結合係数等が変化してしまう。このため、励磁用巻線N0,N1,N2と短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2とは同一構造、同一巻線とする必要がある。
【0015】
また、数MHzから10数MHzの送信信号を発生可能とするためには、高速スイッチングが可能なMOS FETをスイッチSW1〜SW9として使用するのが妥当である。そこで図9に示すように、スイッチSW1〜SW3に代えてトランジスタ(MOS FET)QN0A,QN1A,QN2Aを、またスイッチSW4〜SW6に代えてトランジスタ(MOS FET)QN0B,QN1B,QN2Bを備える。スイッチSW7〜SW9については、トランジスタ(MOS FET)QZ0AとQZ0B、トランジスタ(MOS FET)QZ1AとQZ1B、トランジスタ(MOS FET)QZ2AとQZ2Bをそれぞれ備える。
【0016】
スイッチSW7〜SW9として、それぞれ2つのトランジスタを使用しているのは、以下の理由による。
図7におけるスイッチSW7を単にトランジスタ(MOS FET)Q1に代えた場合、図10に示すような回路が形成される。励磁用巻線N0A,N0Bが励磁することにより、図10におけるA点とB点とに電位差(A点の方がB点より高い電圧)が発生したとする。この発生した電圧の大きさがMOS FETに存在する寄生ダイオードDの順方向電圧以上になった場合、短絡用巻線NZ0A,NZ0Bが短絡される。このとき、1次側ポール1bで発生する電圧はゼロとなってしまい、所望の電圧を発生することができなくなってしまう。そこで、このような現象を防ぐため、図9に示すような回路を採用する必要がある。
【特許文献1】米国特許第6050945号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
近年、超音波診断の分野では,微小気泡を主成分とする超音波造影剤が開発され、特に循環器系の診断に効果を発揮している。超音波がこの種の造影剤で反射されると、基本周波数の整数倍に相当する高周波成分(ハーモニック成分)が生じることが知られている。そこで、このハーモニック成分だけを抽出して画像化すれば,造影剤のみを高コントラストで観測することができる。この影像法は、ハーモニックイメージングと呼ばれている。
【0018】
このハーモニックイメージングにおいて、送信波形として矩形波を用いた場合、矩形波には基本波成分のほか、その整数倍の成分を持つ高調波成分も多く含まれているため、反射波から抽出した成分には造影剤による非線形のハーモニック成分の他に、送信波形にもともと含まれている高周波成分も混在することになり造影剤の抽出能が低下してしまう。
【0019】
前述した構成の送信部を利用した場合、高周波成分の小さな波形を生成することが可能であるので、ハーモニックイメージングに適する。
【0020】
しかしながら、図9に示した回路構成であると、以下のような要因により送信波形精度が悪化し、送信波形に含まれる高周波成分を十分に抑圧しきれない恐れがあった。
【0021】
(1) 1次側ポールにて任意の電圧を発生する時には1つのトランジスタのみがオンされるのに対して、ゼロ電圧を発生する時には2つのトランジスタがオンされることにより、両状態の間でインピーダンスが変化してしまう。
このため、出力する送信電圧レベルに応じて送信回路の出力インピーダンスが変化することになり、送信電圧レベルの変化に応じた出力波高値の直線性が図11に示すよう悪化する。このため、波形精度が悪化する。
【0022】
(2) MOS FETが、オン時とオフ時とで制御信号の変化から実際にスイッチング状態が切り換わるまでに要する時間が異なることにより、この切り換えの過渡状態において各1次側ポールの状態が不安定になってしまう。
このため、送信波形に図12に示すようなグリッチ(電圧の落ち込み)が発生し、送信波形精度が悪化してしまう。図12は、レベル10からレベル13への遷移時の出力波形であるが、このレベル10からレベル13への切り替わり時にグリッチが発生している。
【0023】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、波形精度の高い送信信号を生成することが可能な超音波診断装置および送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
以上の目的を達成するために本発明は、鉄心と、前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、複数の1次側コイル回路とを具備し、さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチとを具備し、かつ前記1次側コイル回路は、前記第1または第2のスイッチがオンであるときと、前記第3および第4のスイッチがオンであるときとで前記2次側巻線から見たインピーダンスを同一とする構成を持たせた。
【0025】
前記の目的を達成するために別の本発明は、鉄心と、前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、複数の1次側コイル回路とを具備し、さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチと、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチまたは前記第3および第4のスイッチのオン/オフを指定する制御信号がオンを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオンするまでの遷移時間と、前記制御信号がオフを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオフするまでの遷移時間との差を補償するように前記制御信号を調整し、この調整したのちの前記制御信号をその制御対象とするスイッチへ与える手段とを備えた。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、出力レベル毎での出力インピーダンス変化や各スイッチのオン/オフタイミングのずれを防止でき、波形精度の高い送信信号を生成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0028】
本実施形態に係る送信装置は、原理的には図6に示す構成により磁束加算方式によって多値レベルの送信パルスを発生するものである。
【0029】
図1は本実施形態に係る送信装置の実用的な回路構成を示す図である。なお、図6および図9と同一部分には同一符号を付している。
【0030】
巻線NTは、2次側ポールであるポール1aに備えられた2次側巻線である。巻線NTには、超音波振動子Tと前置増幅器RXとが接続されている。
【0031】
巻線N0A,N0Bは、1次側ポールであるポール1bに備えられた励磁用巻線N0におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線N0Aには、正極性パルス発生用のスイッチSW1としてのトランジスタQN0Aが接続されている。巻線N0Bには、負極性パルス発生用のスイッチSW4としてのトランジスタQN0Bが接続されている。巻線N0A,N0Bの間のセンタタップは、送信用電源TXV0に接続される。
【0032】
巻線NZ0A,NZ0Bは、ポール1bに備えられた短絡用巻線NZ0におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線NZ0A,NZ0Bには、短絡用のスイッチSW7としてのトランジスタQZ0A,QZ0Bが、抵抗R0A,R0Bを介してそれぞれ接続されている。
これらの巻線N0A,N0B,NZ0A,NZ0B、トランジスタQN0A,QN0B,QZ0A,QZ0Bおよび抵抗R0A,R0Bにより、ポール1bに関する1次側コイル回路が形成されている。
【0033】
巻線N1A,N1Bは、1次側ポールであるポール1cに備えられた励磁用巻線N1におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線N1Aには、正極性パルス発生用のスイッチSW2としてのトランジスタQN1Aが接続されている。巻線N1Bには、負極性パルス発生用のスイッチSW5としてのトランジスタQN1Bが接続されている。巻線N1A,N1Bの間のセンタタップは、送信用電源TXV1に接続される。
【0034】
巻線NZ1A,NZ1Bは、ポール1cに備えられた短絡用巻線NZ1におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線NZ1A,NZ1Bには、短絡用のスイッチSW8としてのトランジスタQZ1A,QZ1Bが、抵抗R1A,R1Bを介してそれぞれ接続されている。
これらの巻線N1A,N1B,NZ1A,NZ1B、トランジスタQN1A,QN1B,QZ1A,QZ1Bおよび抵抗R1A,R1Bにより、ポール1cに関する1次側コイル回路が形成されている。
【0035】
巻線N2A,N2Bは、1次側ポールであるポール1dに備えられた励磁用巻線N2におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線N2Aには、正極性パルス発生用のスイッチSW3としてのトランジスタQN2Aが接続されている。巻線N2Bには、負極性パルス発生用のスイッチSW6としてのトランジスタQN2Bが接続されている。巻線N2A,N2Bの間のセンタタップは、送信用電源TXV2に接続される。
【0036】
巻線NZ2A,NZ2Bは、ポール1dに備えられた短絡用巻線NZ2におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線NZ2A,NZ2Bには、短絡用のスイッチSW9としてのトランジスタQZ2A,QZ2Bが、抵抗R2A,R2Bを介してそれぞれ接続されている。
これらの巻線N2A,N2B,NZ2A,NZ2B、トランジスタQN2A,QN2B,QZ2A,QZ2Bおよび抵抗R2A,R2Bにより、ポール1dに関する1次側コイル回路が形成されている。
【0037】
なお、トランジスタQN0A,QN0B,QZ0A,QZ0B,QN1A,QN1B,QZ1A,QZ1B,QN2A,QN2B,QZ2A,QZ2Bはいずれも、同一品種のMOS FETである。これらのトランジスタのオン抵抗値をRonと表す。このとき抵抗R0A,R0B,R1A,R1B,R2A,R2Bの抵抗値もRonと等しい値を用いることとする。
【0038】
トランジスタQN0Aの制御信号、トランジスタQN0Bの制御信号、トランジスタQZ0A,QZ0Bの制御信号、トランジスタQN1Aの制御信号、トランジスタQN1Bの制御信号、トランジスタQZ1A,QZ1Bの制御信号、トランジスタQN2Aの制御信号、トランジスタQN2Bの制御信号、ならびにトランジスタQZ2A,QZ2Bの制御信号は、いずれもタイミングジェネレータTGより出力される。タイミングジェネレータTGから出力された制御信号は、タイミング調整部TAにより、後述するように立ち下がりタイミングが調整された後に、各トランジスタへ与えられる。
【0039】
さて、図9に示す回路において送信電圧レベル2の場合、トランジスタQN0B,QN1A,QZ2A,QZ2Bがオン状態である。ポール1bでは、トランジスタQN0Bのみがオンしているので、その出力インピーダンスはRonである。ポール1cでは、トランジスタQN1Aのみがオンしているので、その出力インピーダンスはRonである。ポール1dでは、トランジスタQZ2A,QZ2Bがオンしているので、その出力インピーダンスは2×Ron/(2^2)=0.5×Ronである。従って、この状態におけるトランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスは、トータルでは2.5×Ronとなる。
【0040】
一方、図9に示す回路において送信電圧レベル5の場合、トランジスタQN0B,QN1B,QN2Aがオン状態である。ポール1b,1c,1dでは、いずれも1つのトランジスタのみがオンしているので、それらの出力インピーダンスはいずれもRonである。従って、この状態におけるトランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスは、トータルでは3×Ronとなる。
このような出力インピーダンスの変化により、図9に示す回路では波形精度が悪化している。
【0041】
これに対して本実施形態の送信装置において送信電圧レベル2の場合、ポール1bでは、トランジスタQN0Bのみがオンしているので、その出力インピーダンスはRonである。ポール1cでは、トランジスタQN1Aのみがオンしているので、その出力インピーダンスはRonである。ポール1dでは、トランジスタQZ2A,QZ2Bがオンし、これらのトランジスタQZ2A,QZ2Bには抵抗R2A,R2Bが接続されているので、その出力インピーダンスは4×Ron/(2^2)=Ronである。従って、この状態におけるトランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスは、トータルでは3×Ronとなる。
【0042】
本実施形態の送信装置において送信電圧レベル5の場合、オン状態であるトランジスタQN0B,QN1B,QN2Aにはいずれの抵抗も接続されていない。従って、この状態におけるトランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスは、図9に示す回路と同様にトータルでは3×Ronとなる。
【0043】
本実施形態の送信装置においては、他の送信電圧レベルにおいても、トランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスはトータルでは3×Ronとなる。
従って本実施形態の送信装置では、出力する送信電圧レベルによらず送信回路の出力インピーダンスは一定値(3×Ron)となり、送信波形精度が改善される。
【0044】
図2は図1に示す送信装置についての回路シュミレーション結果を示す図である。この図2と図11とを比較して明らかなように、本実施形態の送信装置によれば、図9に示す回路に比べて出力される送信電圧の線形性が改善されている。
【0045】
ところでタイミング調整部TAは、入力される制御信号のそれぞれに対して、HighからLowになるタイミングを一定の時間Tdだけ遅らせることにより、High期間を延ばすという処理を行う。すなわちタイミング調整部TAは、入力される制御信号をそれぞれ、図3に示すようにタイミングを調整した上で出力する。すなわちタイミング調整部TAは、制御信号の立ち上がりは入力されるタイミングのままで出力するが、立ち下がりは入力されるタイミングから時間Tdを遅延したタイミングで出力する。なお制御信号は各トランジスタのゲート駆動信号となるものであり、制御信号の極性はHighがオンを、Lowがオフを示す。
【0046】
上記の時間Tdは、各トランジスタとして使用されるMOS FETの特性に応じて決定される。すなわちMOS FETは、オンからオフへの遷移時間、すなわち制御信号の立ち上がりタイミングからオン状態となるまでの遷移時間と、オフからオンへの遷移時間、すなわち制御信号の立ち下がりタイミングからオフ状態となるまでの遷移時間とが異なるので、この遷移時間の差を上記の時間Tdとする。そして本実施形態では、オンからオフへの遷移時間が、オフからオンへの遷移時間より早い場合を想定しており、これを補償するように制御信号の立ち下がりタイミングを遅延させる。
【0047】
以下、ポール1cを「1」から「0」に変更する場合の動作について説明する。
この場合、オン状態にあるトランジスタQN1Aをオフすると同時に、オフ状態にあるトランジスタQZ1A,QZ1Bをオンする。
【0048】
タイミングジェネレータTGはデジタル的に制御されており、タイミングジェネレータTGが出力する各制御信号の切り換わりタイミングは高い精度で一致している。このため、タイミング調整部TAに入力されるトランジスタQN1A用の制御信号の立ち下がりタイミングとトランジスタQZ1A,QZ1B用の制御信号の立ち上がりタイミングとは、図4(a)に示すように一致している。
【0049】
しかしながらタイミング調整部TAの上述の処理によりタイミング調整部TAの出力においては、図4(b)に示すように、トランジスタQN1A用の制御信号の立ち下がりタイミングは、トランジスタQZ1A,QZ1B用の制御信号の立ち上がりタイミングに対して時間Tdだけ遅延される。
【0050】
このようにタイミング調整部TAから出力された制御信号がトランジスタQN1AおよびトランジスタQZ1A,QZ1Bのゲートにそれぞれ入力されると、まずトランジスタQZ1A,QZ1B用の制御信号の立ち上がりに応じてトランジスタQZ1A,QZ1Bがオフからオンへ遷移し始める。続いてトランジスタQN1A用の制御信号の立ち下がりに応じてトランジスタQN1Aがオンからオフへ遷移し始める。しかし各トランジスタは、オンからオフへの遷移時間よりもオフからオンへの遷移時間のほうが時間Tdだけ長い。従って、図4(c)に示すように、トランジスタQN1Aがオフになるのと同時にトランジスタQZ1A,QZ1Bがオンになる。
【0051】
各トランジスタとして使用されるMOS FETは、全て同一品種としているから、以上の動作はどのトランジスタについても同様である。従って、本実施形態の送信装置では、各トランジスタの切り換えタイミングを互いに同期させることができる。
【0052】
さて、図9に示した回路においてグリッチが発生するのは、MOS FETのオンからオフへの遷移時間とオフからオンへの遷移時間との差により、各トランジスタの切り換えタイミングがずれてしまうためである。
【0053】
このグリッチ発生のメカニズムを以下により具体的に述べる。
例えば送信電圧レベル10から送信電圧レベル13への遷移時に動作するのは,トランジスタQN1AとトランジスタQZ1A,QZ1Bの3個のトランジスタのみである。まず、送信電圧レベル10の時、トランジスタQZ1A,QZ1Bはオン、トランジスタQN1Aはオフとなっている。次に、送信電圧レベル13の時は、トランジスタQZ1A,QZ1Bはオフ、トランジスタQN1Aはオンとなる。この遷移時に、トランジスタQN1Aがオン状態になる前にトランジスタQZ1A,QZ1Bがオフ状態になり、ポール1cの磁気抵抗が低くなる。そうすると、他の1次側ポール1b,1dで発生している磁束が、ポール1cに流れ込むため、結果として2次側の出力電圧レベルが落ちてしまい、これがグリッチとなる。
【0054】
本実施形態の送信装置では、このような状況は生じないため、グリッチの発生を防止することができる。
【0055】
図5は図1に示す送信装置にて送信電力レベル10から送信電力レベル13へ遷移する時の出力波形を示す図である。この図5と図12とを比較して明らかなように、本実施形態の送信装置によれば、グリッチが改善されている。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、送信波形精度を改善することができ、送信信号に含まれる不必要な高調波を低減することが可能となる。
【0057】
従って、本実施形態の送信装置を用いれば、ハーモニックイメージング時のS/Nが改善され、より感度の高い超音波診断装置を提供することができる。
【0058】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
励磁回路のインピーダンスと短絡用回路のインピーダンスとを一致させるための構成は上記実施形態の構成には限定されない。例えば,本実施形態で短絡用の巻線に対して接続している2個の抵抗をまとめて1個の抵抗に置き換えることも可能である。または、励磁回路で使用するトランジスタと短絡用回路で使用するトランジスタとを別品種のものとすることも可能である。この場合は例えば、短絡用回路のトランジスタを、Ronが励磁回路のトランジスタのRonの2倍である品種とすることが考えられる。
【0059】
各トランジスタのスイッチングタイミングを一致させる手段としては、上記実施形態に示した手段には限定されない。例えば、使用するトランジスタの種類およびそのゲートをドライブするプリドライバの特性によっては、上記実施形態とは逆にLowからHighになる時のみ一定の期間Low期間を延ばすことで、スイッチングタイミングを一致させることができる場合もある。さらに,本実施形態のように全てのトランジスタについての制御信号に一律にタイミング調整を施すのではなく、各トランジスタの部品バラツキ等を加味して、個々の制御信号に対し異なるタイミング調整を施すようにしても良い。また、タイミングジェネレータの出力波形を調整するのではなく、タイミングジェネレータが、発生する制御信号の変化タイミングを各信号毎に個別に制御する等、種々の手段が考えられる。
1次側のポールは、2つまたは4つ以上とすることもできる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る送信装置の実用的な回路構成を示す図。
【図2】図1に示す送信装置についての回路シュミレーション結果を示す図。
【図3】図1中のタイミング調整部TAによる処理を説明する図。
【図4】図1に示す送信装置にて送信電圧レベルを変更する際のトランジスタの切り換え動作を説明するタイミング図。
【図5】図1に示す送信装置にて送信電力レベル10から送信電力レベル13へ遷移する時の出力波形を示す図。
【図6】磁束加算方式を利用した送信部の概略構成を示す図。
【図7】図6に示す送信部に含まれる電気回路の等価回路を示す図。
【図8】図6に示す送信部により生成できる電圧値の一覧を表す図。
【図9】図6に示す送信部の実用的な回路構成を示す図。
【図10】図7におけるスイッチSW7を単にトランジスタQ1に代えた場合に形成される回路を示す図。
【図11】図9に示した回路についての回路シュミレーション結果を示す図。
【図12】図9に示した回路による送信波形にグリッチが発生する様子を示す図。
【符号の説明】
【0062】
1…コア、N0A,N0B,NZ0A,NZ0B,N1A,N1B,NZ1A,NZ1B,N2A,N2B,NZ2A,NZ2B,NT…巻線、QN0A,QN0B,QZ0A,QZ0B,QN1A,QN1B,QZ1A,QZ1B,QN2A,QN2B,QZ2A,QZ2B…トランジスタ、R0A,R0B,R1A,R1B,R2A,R2B…抵抗、RX…前置増幅器、T…超音波振動子、TA…タイミング調整部、TG…タイミングジェネレータ、TXV0,TXV1,TXV2…送信用電源。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子から放射される超音波を利用して被検体の診断を行う超音波診断装置と、この超音波診断装置にて超音波振動子を励起して超音波を放射させるための送信信号を生成する送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに設けられた振動子から超音波を放射させるための送信信号を生成する送信部を備える。
【0003】
このような超音波診断装置における送信部としては、トランスを使用する回路が特許文献1により知られている。また特許文献1では、送信パルス用電源として異なる電圧の2電源を持ち、それぞれの電圧のトランスへの印加タイミングを制御することにより、2値レベルのパルスを発生する方法も述べられている。
【0004】
特許文献1の技術を応用することで、1次側巻線を複数備えることにより、これらの1次側巻線のそれぞれで発生した磁束を2次側で加算することにより、多値レベルの送信パルスを発生させることが考えられる。この方式を以下においては磁束加算方式と称する。
【0005】
以下に、この磁束加算方式による任意波形発生の概略を3電源加算時の場合について説明する。
図6は磁束加算方式を利用した送信部の概略構成を示す図、図7は図6に示す送信部に含まれる電気回路の等価回路を示す図である。
【0006】
コア1は4本のポール(pole)1a,1b,1c,1dを持った形状をなす。これらのポール1a〜1dのうち、ポール1aは2次側ポールとなり、ポール1b〜1dは1次側ポールとなる。すなわちコア1は、3本の1次側ポール1b〜1dと1本の2次側ポール1aとを備えている。
【0007】
各々の1次側ポール1b〜1dにはそれぞれ、センタタップ付きの励磁用巻線N0,N1,N2と短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2が巻かれている。送信用電源TXV0,TXV1,TXV2は、側励磁用巻線N0,N1,N2のセンタタップにそれぞれ接続されている。スイッチSW1,SW2,SW3を閉じることにより、励磁用巻線N0,N1,N2に正極性のパルスを発生し、SW4,SW5,SW6を閉じることにより、励磁用巻線N0,N1,N2に負極性のパルスを発生させるようになっている。すなわち、加減算で考えると、SW1,SW2,SW3を閉じることは加算に相当し、SW4,SW5,SW6を閉じることは減算に相当する。
【0008】
短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2をSW7,SW8,SW9で短絡させることにより、その1次側ポール1b〜1dの励磁用巻線NZ0,NZ1,NZ2のセンタタップに入力されている電源を使用しない状態を実現できる。この状態は、加減算で考えるとゼロに相当する。
【0009】
図7に示すように、励磁用巻線N0,N1,N2は、巻線N0A,N1A,N2Aと巻線N0B,N1B,N2Bとがセンタタップを挟んで並んでいると捉えることができる。短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2は、巻線NZ0A,NZ1A,NZ2Aと巻線NZ0B,NZ1B,NZ2Bとがセンタタップを挟んで並んでいると捉えることができる。
このように3つの1次側ポールにはそれぞれ、互いに同等な構成の1次側コイル回路が備えられる。
【0010】
図8は送信用電源TXV0,TXV1,TXV2の電圧の比率を1:3:9とした場合に生成できる電圧値の一覧を表している。なお、トランスの昇圧比は1としている。すなわち、図7における巻線N0A,N0B,NZ0A,NZ0B,N1A,N1B,NZ1A,NZ1B,N2A,N2B,NZ2A,NZ2B,NTの巻線数は同一としている。
【0011】
図8においては、正極性パルスを発生させる場合(スイッチSW1,SW2,SW3を閉じた状態)を「1」、負極性パルスを発生させる場合(スイッチSW4,SW5,SW6を閉じた状態)を「−1」、スイッチSW7,SW8,SW9を閉じた状態を「0」と表現している。
【0012】
例えば、送信電圧レベル「6」を発生させる場合は、スイッチSW3,SW5,SW7を閉じることを示している。この状態では、スイッチSW3を閉じることが+9(1×9)に相当し、スイッチSW5を閉じることが−3(−1×3)に相当し、スイッチSW7を閉じることが0(0×1)に相当することから、+9−3+0という演算によりレベル「6」が得られる。
【0013】
このように3種類の電圧の加減算により±13レベルの波形を発生させる事が可能となる。例えば、送信用電源TXV0の電圧を2Vと設定した場合、送信用電源TXV1の電圧は6V、送信用電源TXV2の電圧は18Vとなり±26Vの電圧を±13レベル量子化にて発生させることができる。
また、1次側と2次側の巻線比を変えることにより任意の昇圧が可能である。
【0014】
さて、以上のような送信部の実用的な回路は、例えば図9に示すような構成とすることが考えられる。
励磁用巻線N0,N1,N2と短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2とが巻数および構造が異なっていると、1次側ポールにて任意の電圧を発生する時とゼロ電圧を発生する時とで、1次側と2次側間の結合係数等が変化してしまう。このため、励磁用巻線N0,N1,N2と短絡用巻線NZ0,NZ1,NZ2とは同一構造、同一巻線とする必要がある。
【0015】
また、数MHzから10数MHzの送信信号を発生可能とするためには、高速スイッチングが可能なMOS FETをスイッチSW1〜SW9として使用するのが妥当である。そこで図9に示すように、スイッチSW1〜SW3に代えてトランジスタ(MOS FET)QN0A,QN1A,QN2Aを、またスイッチSW4〜SW6に代えてトランジスタ(MOS FET)QN0B,QN1B,QN2Bを備える。スイッチSW7〜SW9については、トランジスタ(MOS FET)QZ0AとQZ0B、トランジスタ(MOS FET)QZ1AとQZ1B、トランジスタ(MOS FET)QZ2AとQZ2Bをそれぞれ備える。
【0016】
スイッチSW7〜SW9として、それぞれ2つのトランジスタを使用しているのは、以下の理由による。
図7におけるスイッチSW7を単にトランジスタ(MOS FET)Q1に代えた場合、図10に示すような回路が形成される。励磁用巻線N0A,N0Bが励磁することにより、図10におけるA点とB点とに電位差(A点の方がB点より高い電圧)が発生したとする。この発生した電圧の大きさがMOS FETに存在する寄生ダイオードDの順方向電圧以上になった場合、短絡用巻線NZ0A,NZ0Bが短絡される。このとき、1次側ポール1bで発生する電圧はゼロとなってしまい、所望の電圧を発生することができなくなってしまう。そこで、このような現象を防ぐため、図9に示すような回路を採用する必要がある。
【特許文献1】米国特許第6050945号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
近年、超音波診断の分野では,微小気泡を主成分とする超音波造影剤が開発され、特に循環器系の診断に効果を発揮している。超音波がこの種の造影剤で反射されると、基本周波数の整数倍に相当する高周波成分(ハーモニック成分)が生じることが知られている。そこで、このハーモニック成分だけを抽出して画像化すれば,造影剤のみを高コントラストで観測することができる。この影像法は、ハーモニックイメージングと呼ばれている。
【0018】
このハーモニックイメージングにおいて、送信波形として矩形波を用いた場合、矩形波には基本波成分のほか、その整数倍の成分を持つ高調波成分も多く含まれているため、反射波から抽出した成分には造影剤による非線形のハーモニック成分の他に、送信波形にもともと含まれている高周波成分も混在することになり造影剤の抽出能が低下してしまう。
【0019】
前述した構成の送信部を利用した場合、高周波成分の小さな波形を生成することが可能であるので、ハーモニックイメージングに適する。
【0020】
しかしながら、図9に示した回路構成であると、以下のような要因により送信波形精度が悪化し、送信波形に含まれる高周波成分を十分に抑圧しきれない恐れがあった。
【0021】
(1) 1次側ポールにて任意の電圧を発生する時には1つのトランジスタのみがオンされるのに対して、ゼロ電圧を発生する時には2つのトランジスタがオンされることにより、両状態の間でインピーダンスが変化してしまう。
このため、出力する送信電圧レベルに応じて送信回路の出力インピーダンスが変化することになり、送信電圧レベルの変化に応じた出力波高値の直線性が図11に示すよう悪化する。このため、波形精度が悪化する。
【0022】
(2) MOS FETが、オン時とオフ時とで制御信号の変化から実際にスイッチング状態が切り換わるまでに要する時間が異なることにより、この切り換えの過渡状態において各1次側ポールの状態が不安定になってしまう。
このため、送信波形に図12に示すようなグリッチ(電圧の落ち込み)が発生し、送信波形精度が悪化してしまう。図12は、レベル10からレベル13への遷移時の出力波形であるが、このレベル10からレベル13への切り替わり時にグリッチが発生している。
【0023】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、波形精度の高い送信信号を生成することが可能な超音波診断装置および送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
以上の目的を達成するために本発明は、鉄心と、前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、複数の1次側コイル回路とを具備し、さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチとを具備し、かつ前記1次側コイル回路は、前記第1または第2のスイッチがオンであるときと、前記第3および第4のスイッチがオンであるときとで前記2次側巻線から見たインピーダンスを同一とする構成を持たせた。
【0025】
前記の目的を達成するために別の本発明は、鉄心と、前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、複数の1次側コイル回路とを具備し、さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチと、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチまたは前記第3および第4のスイッチのオン/オフを指定する制御信号がオンを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオンするまでの遷移時間と、前記制御信号がオフを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオフするまでの遷移時間との差を補償するように前記制御信号を調整し、この調整したのちの前記制御信号をその制御対象とするスイッチへ与える手段とを備えた。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、出力レベル毎での出力インピーダンス変化や各スイッチのオン/オフタイミングのずれを防止でき、波形精度の高い送信信号を生成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0028】
本実施形態に係る送信装置は、原理的には図6に示す構成により磁束加算方式によって多値レベルの送信パルスを発生するものである。
【0029】
図1は本実施形態に係る送信装置の実用的な回路構成を示す図である。なお、図6および図9と同一部分には同一符号を付している。
【0030】
巻線NTは、2次側ポールであるポール1aに備えられた2次側巻線である。巻線NTには、超音波振動子Tと前置増幅器RXとが接続されている。
【0031】
巻線N0A,N0Bは、1次側ポールであるポール1bに備えられた励磁用巻線N0におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線N0Aには、正極性パルス発生用のスイッチSW1としてのトランジスタQN0Aが接続されている。巻線N0Bには、負極性パルス発生用のスイッチSW4としてのトランジスタQN0Bが接続されている。巻線N0A,N0Bの間のセンタタップは、送信用電源TXV0に接続される。
【0032】
巻線NZ0A,NZ0Bは、ポール1bに備えられた短絡用巻線NZ0におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線NZ0A,NZ0Bには、短絡用のスイッチSW7としてのトランジスタQZ0A,QZ0Bが、抵抗R0A,R0Bを介してそれぞれ接続されている。
これらの巻線N0A,N0B,NZ0A,NZ0B、トランジスタQN0A,QN0B,QZ0A,QZ0Bおよび抵抗R0A,R0Bにより、ポール1bに関する1次側コイル回路が形成されている。
【0033】
巻線N1A,N1Bは、1次側ポールであるポール1cに備えられた励磁用巻線N1におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線N1Aには、正極性パルス発生用のスイッチSW2としてのトランジスタQN1Aが接続されている。巻線N1Bには、負極性パルス発生用のスイッチSW5としてのトランジスタQN1Bが接続されている。巻線N1A,N1Bの間のセンタタップは、送信用電源TXV1に接続される。
【0034】
巻線NZ1A,NZ1Bは、ポール1cに備えられた短絡用巻線NZ1におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線NZ1A,NZ1Bには、短絡用のスイッチSW8としてのトランジスタQZ1A,QZ1Bが、抵抗R1A,R1Bを介してそれぞれ接続されている。
これらの巻線N1A,N1B,NZ1A,NZ1B、トランジスタQN1A,QN1B,QZ1A,QZ1Bおよび抵抗R1A,R1Bにより、ポール1cに関する1次側コイル回路が形成されている。
【0035】
巻線N2A,N2Bは、1次側ポールであるポール1dに備えられた励磁用巻線N2におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線N2Aには、正極性パルス発生用のスイッチSW3としてのトランジスタQN2Aが接続されている。巻線N2Bには、負極性パルス発生用のスイッチSW6としてのトランジスタQN2Bが接続されている。巻線N2A,N2Bの間のセンタタップは、送信用電源TXV2に接続される。
【0036】
巻線NZ2A,NZ2Bは、ポール1dに備えられた短絡用巻線NZ2におけるセンタタップを挟んだ2つの部分にそれぞれ相当する。巻線NZ2A,NZ2Bには、短絡用のスイッチSW9としてのトランジスタQZ2A,QZ2Bが、抵抗R2A,R2Bを介してそれぞれ接続されている。
これらの巻線N2A,N2B,NZ2A,NZ2B、トランジスタQN2A,QN2B,QZ2A,QZ2Bおよび抵抗R2A,R2Bにより、ポール1dに関する1次側コイル回路が形成されている。
【0037】
なお、トランジスタQN0A,QN0B,QZ0A,QZ0B,QN1A,QN1B,QZ1A,QZ1B,QN2A,QN2B,QZ2A,QZ2Bはいずれも、同一品種のMOS FETである。これらのトランジスタのオン抵抗値をRonと表す。このとき抵抗R0A,R0B,R1A,R1B,R2A,R2Bの抵抗値もRonと等しい値を用いることとする。
【0038】
トランジスタQN0Aの制御信号、トランジスタQN0Bの制御信号、トランジスタQZ0A,QZ0Bの制御信号、トランジスタQN1Aの制御信号、トランジスタQN1Bの制御信号、トランジスタQZ1A,QZ1Bの制御信号、トランジスタQN2Aの制御信号、トランジスタQN2Bの制御信号、ならびにトランジスタQZ2A,QZ2Bの制御信号は、いずれもタイミングジェネレータTGより出力される。タイミングジェネレータTGから出力された制御信号は、タイミング調整部TAにより、後述するように立ち下がりタイミングが調整された後に、各トランジスタへ与えられる。
【0039】
さて、図9に示す回路において送信電圧レベル2の場合、トランジスタQN0B,QN1A,QZ2A,QZ2Bがオン状態である。ポール1bでは、トランジスタQN0Bのみがオンしているので、その出力インピーダンスはRonである。ポール1cでは、トランジスタQN1Aのみがオンしているので、その出力インピーダンスはRonである。ポール1dでは、トランジスタQZ2A,QZ2Bがオンしているので、その出力インピーダンスは2×Ron/(2^2)=0.5×Ronである。従って、この状態におけるトランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスは、トータルでは2.5×Ronとなる。
【0040】
一方、図9に示す回路において送信電圧レベル5の場合、トランジスタQN0B,QN1B,QN2Aがオン状態である。ポール1b,1c,1dでは、いずれも1つのトランジスタのみがオンしているので、それらの出力インピーダンスはいずれもRonである。従って、この状態におけるトランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスは、トータルでは3×Ronとなる。
このような出力インピーダンスの変化により、図9に示す回路では波形精度が悪化している。
【0041】
これに対して本実施形態の送信装置において送信電圧レベル2の場合、ポール1bでは、トランジスタQN0Bのみがオンしているので、その出力インピーダンスはRonである。ポール1cでは、トランジスタQN1Aのみがオンしているので、その出力インピーダンスはRonである。ポール1dでは、トランジスタQZ2A,QZ2Bがオンし、これらのトランジスタQZ2A,QZ2Bには抵抗R2A,R2Bが接続されているので、その出力インピーダンスは4×Ron/(2^2)=Ronである。従って、この状態におけるトランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスは、トータルでは3×Ronとなる。
【0042】
本実施形態の送信装置において送信電圧レベル5の場合、オン状態であるトランジスタQN0B,QN1B,QN2Aにはいずれの抵抗も接続されていない。従って、この状態におけるトランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスは、図9に示す回路と同様にトータルでは3×Ronとなる。
【0043】
本実施形態の送信装置においては、他の送信電圧レベルにおいても、トランス2次側から見た送信回路の出力インピーダンスはトータルでは3×Ronとなる。
従って本実施形態の送信装置では、出力する送信電圧レベルによらず送信回路の出力インピーダンスは一定値(3×Ron)となり、送信波形精度が改善される。
【0044】
図2は図1に示す送信装置についての回路シュミレーション結果を示す図である。この図2と図11とを比較して明らかなように、本実施形態の送信装置によれば、図9に示す回路に比べて出力される送信電圧の線形性が改善されている。
【0045】
ところでタイミング調整部TAは、入力される制御信号のそれぞれに対して、HighからLowになるタイミングを一定の時間Tdだけ遅らせることにより、High期間を延ばすという処理を行う。すなわちタイミング調整部TAは、入力される制御信号をそれぞれ、図3に示すようにタイミングを調整した上で出力する。すなわちタイミング調整部TAは、制御信号の立ち上がりは入力されるタイミングのままで出力するが、立ち下がりは入力されるタイミングから時間Tdを遅延したタイミングで出力する。なお制御信号は各トランジスタのゲート駆動信号となるものであり、制御信号の極性はHighがオンを、Lowがオフを示す。
【0046】
上記の時間Tdは、各トランジスタとして使用されるMOS FETの特性に応じて決定される。すなわちMOS FETは、オンからオフへの遷移時間、すなわち制御信号の立ち上がりタイミングからオン状態となるまでの遷移時間と、オフからオンへの遷移時間、すなわち制御信号の立ち下がりタイミングからオフ状態となるまでの遷移時間とが異なるので、この遷移時間の差を上記の時間Tdとする。そして本実施形態では、オンからオフへの遷移時間が、オフからオンへの遷移時間より早い場合を想定しており、これを補償するように制御信号の立ち下がりタイミングを遅延させる。
【0047】
以下、ポール1cを「1」から「0」に変更する場合の動作について説明する。
この場合、オン状態にあるトランジスタQN1Aをオフすると同時に、オフ状態にあるトランジスタQZ1A,QZ1Bをオンする。
【0048】
タイミングジェネレータTGはデジタル的に制御されており、タイミングジェネレータTGが出力する各制御信号の切り換わりタイミングは高い精度で一致している。このため、タイミング調整部TAに入力されるトランジスタQN1A用の制御信号の立ち下がりタイミングとトランジスタQZ1A,QZ1B用の制御信号の立ち上がりタイミングとは、図4(a)に示すように一致している。
【0049】
しかしながらタイミング調整部TAの上述の処理によりタイミング調整部TAの出力においては、図4(b)に示すように、トランジスタQN1A用の制御信号の立ち下がりタイミングは、トランジスタQZ1A,QZ1B用の制御信号の立ち上がりタイミングに対して時間Tdだけ遅延される。
【0050】
このようにタイミング調整部TAから出力された制御信号がトランジスタQN1AおよびトランジスタQZ1A,QZ1Bのゲートにそれぞれ入力されると、まずトランジスタQZ1A,QZ1B用の制御信号の立ち上がりに応じてトランジスタQZ1A,QZ1Bがオフからオンへ遷移し始める。続いてトランジスタQN1A用の制御信号の立ち下がりに応じてトランジスタQN1Aがオンからオフへ遷移し始める。しかし各トランジスタは、オンからオフへの遷移時間よりもオフからオンへの遷移時間のほうが時間Tdだけ長い。従って、図4(c)に示すように、トランジスタQN1Aがオフになるのと同時にトランジスタQZ1A,QZ1Bがオンになる。
【0051】
各トランジスタとして使用されるMOS FETは、全て同一品種としているから、以上の動作はどのトランジスタについても同様である。従って、本実施形態の送信装置では、各トランジスタの切り換えタイミングを互いに同期させることができる。
【0052】
さて、図9に示した回路においてグリッチが発生するのは、MOS FETのオンからオフへの遷移時間とオフからオンへの遷移時間との差により、各トランジスタの切り換えタイミングがずれてしまうためである。
【0053】
このグリッチ発生のメカニズムを以下により具体的に述べる。
例えば送信電圧レベル10から送信電圧レベル13への遷移時に動作するのは,トランジスタQN1AとトランジスタQZ1A,QZ1Bの3個のトランジスタのみである。まず、送信電圧レベル10の時、トランジスタQZ1A,QZ1Bはオン、トランジスタQN1Aはオフとなっている。次に、送信電圧レベル13の時は、トランジスタQZ1A,QZ1Bはオフ、トランジスタQN1Aはオンとなる。この遷移時に、トランジスタQN1Aがオン状態になる前にトランジスタQZ1A,QZ1Bがオフ状態になり、ポール1cの磁気抵抗が低くなる。そうすると、他の1次側ポール1b,1dで発生している磁束が、ポール1cに流れ込むため、結果として2次側の出力電圧レベルが落ちてしまい、これがグリッチとなる。
【0054】
本実施形態の送信装置では、このような状況は生じないため、グリッチの発生を防止することができる。
【0055】
図5は図1に示す送信装置にて送信電力レベル10から送信電力レベル13へ遷移する時の出力波形を示す図である。この図5と図12とを比較して明らかなように、本実施形態の送信装置によれば、グリッチが改善されている。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、送信波形精度を改善することができ、送信信号に含まれる不必要な高調波を低減することが可能となる。
【0057】
従って、本実施形態の送信装置を用いれば、ハーモニックイメージング時のS/Nが改善され、より感度の高い超音波診断装置を提供することができる。
【0058】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
励磁回路のインピーダンスと短絡用回路のインピーダンスとを一致させるための構成は上記実施形態の構成には限定されない。例えば,本実施形態で短絡用の巻線に対して接続している2個の抵抗をまとめて1個の抵抗に置き換えることも可能である。または、励磁回路で使用するトランジスタと短絡用回路で使用するトランジスタとを別品種のものとすることも可能である。この場合は例えば、短絡用回路のトランジスタを、Ronが励磁回路のトランジスタのRonの2倍である品種とすることが考えられる。
【0059】
各トランジスタのスイッチングタイミングを一致させる手段としては、上記実施形態に示した手段には限定されない。例えば、使用するトランジスタの種類およびそのゲートをドライブするプリドライバの特性によっては、上記実施形態とは逆にLowからHighになる時のみ一定の期間Low期間を延ばすことで、スイッチングタイミングを一致させることができる場合もある。さらに,本実施形態のように全てのトランジスタについての制御信号に一律にタイミング調整を施すのではなく、各トランジスタの部品バラツキ等を加味して、個々の制御信号に対し異なるタイミング調整を施すようにしても良い。また、タイミングジェネレータの出力波形を調整するのではなく、タイミングジェネレータが、発生する制御信号の変化タイミングを各信号毎に個別に制御する等、種々の手段が考えられる。
1次側のポールは、2つまたは4つ以上とすることもできる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る送信装置の実用的な回路構成を示す図。
【図2】図1に示す送信装置についての回路シュミレーション結果を示す図。
【図3】図1中のタイミング調整部TAによる処理を説明する図。
【図4】図1に示す送信装置にて送信電圧レベルを変更する際のトランジスタの切り換え動作を説明するタイミング図。
【図5】図1に示す送信装置にて送信電力レベル10から送信電力レベル13へ遷移する時の出力波形を示す図。
【図6】磁束加算方式を利用した送信部の概略構成を示す図。
【図7】図6に示す送信部に含まれる電気回路の等価回路を示す図。
【図8】図6に示す送信部により生成できる電圧値の一覧を表す図。
【図9】図6に示す送信部の実用的な回路構成を示す図。
【図10】図7におけるスイッチSW7を単にトランジスタQ1に代えた場合に形成される回路を示す図。
【図11】図9に示した回路についての回路シュミレーション結果を示す図。
【図12】図9に示した回路による送信波形にグリッチが発生する様子を示す図。
【符号の説明】
【0062】
1…コア、N0A,N0B,NZ0A,NZ0B,N1A,N1B,NZ1A,NZ1B,N2A,N2B,NZ2A,NZ2B,NT…巻線、QN0A,QN0B,QZ0A,QZ0B,QN1A,QN1B,QZ1A,QZ1B,QN2A,QN2B,QZ2A,QZ2B…トランジスタ、R0A,R0B,R1A,R1B,R2A,R2B…抵抗、RX…前置増幅器、T…超音波振動子、TA…タイミング調整部、TG…タイミングジェネレータ、TXV0,TXV1,TXV2…送信用電源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子から放射される超音波を利用して被検体の診断を行う超音波診断装置において、
鉄心と、前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、複数の1次側コイル回路とを具備し、前記2次側巻線に誘起される信号を超音波放射のために前記超音波振動子に供給する送信信号として出力する送信回路を備え、
さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、
中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、
前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチとを具備し、
かつ前記1次側コイル回路は、前記第1または第2のスイッチがオンであるときと、前記第3および第4のスイッチがオンであるときとで前記2次側巻線から見たインピーダンスを同一とする構成を持つことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記インピーダンスを同一とする構成として、前記1次側コイル回路が、前記第1および第2の1次側巻線の少なくともいずれか一方に接続してインピーダンス整合用の抵抗器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記インピーダンスを同一とする構成として、前記第1および第2のスイッチと前記第3および第4のスイッチとしてそれぞれ内部抵抗値が異なるスイッチング素子を使用することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
超音波振動子から放射される超音波を利用して被検体の診断を行う超音波診断装置において、
鉄心と、前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、複数の1次側コイル回路とを具備し、前記2次側巻線に誘起される信号を超音波放射のために前記超音波振動子に供給する送信信号として出力する送信回路を備え、
さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、
中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、
前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチと、
前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチまたは前記第3および第4のスイッチのオン/オフを指定する制御信号がオンを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオンするまでの遷移時間と、前記制御信号がオフを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオフするまでの遷移時間との差を補償するように前記制御信号を調整し、この調整したのちの前記制御信号をその制御対象とするスイッチへ与える手段とを具備したことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
超音波放射のために超音波振動子に供給する送信信号を生成する送信装置において、
鉄心と、
前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、
複数の1次側コイル回路とを具備し、
さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、
中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、
前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチとを具備し、
かつ前記1次側コイル回路は、前記第1または第2のスイッチがオンであるときと、前記第3および第4のスイッチがオンであるときとで前記2次側巻線から見たインピーダンスを同一とする構成を持つことを特徴とする送信装置。
【請求項6】
超音波放射のために超音波振動子に供給する送信信号を生成する送信装置において、
鉄心と、
前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、
複数の1次側コイル回路とを具備し、
さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、
中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、
前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチと、
前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチまたは前記第3および第4のスイッチのオン/オフを指定する制御信号がオンを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオンするまでの遷移時間と、前記制御信号がオフを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオフするまでの遷移時間との差を補償するように前記制御信号を調整し、この調整したのちの前記制御信号をその制御対象とするスイッチへ与える手段とを具備したことを特徴とする送信装置。
【請求項1】
超音波振動子から放射される超音波を利用して被検体の診断を行う超音波診断装置において、
鉄心と、前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、複数の1次側コイル回路とを具備し、前記2次側巻線に誘起される信号を超音波放射のために前記超音波振動子に供給する送信信号として出力する送信回路を備え、
さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、
中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、
前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチとを具備し、
かつ前記1次側コイル回路は、前記第1または第2のスイッチがオンであるときと、前記第3および第4のスイッチがオンであるときとで前記2次側巻線から見たインピーダンスを同一とする構成を持つことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記インピーダンスを同一とする構成として、前記1次側コイル回路が、前記第1および第2の1次側巻線の少なくともいずれか一方に接続してインピーダンス整合用の抵抗器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記インピーダンスを同一とする構成として、前記第1および第2のスイッチと前記第3および第4のスイッチとしてそれぞれ内部抵抗値が異なるスイッチング素子を使用することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
超音波振動子から放射される超音波を利用して被検体の診断を行う超音波診断装置において、
鉄心と、前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、複数の1次側コイル回路とを具備し、前記2次側巻線に誘起される信号を超音波放射のために前記超音波振動子に供給する送信信号として出力する送信回路を備え、
さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、
中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、
前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチと、
前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチまたは前記第3および第4のスイッチのオン/オフを指定する制御信号がオンを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオンするまでの遷移時間と、前記制御信号がオフを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオフするまでの遷移時間との差を補償するように前記制御信号を調整し、この調整したのちの前記制御信号をその制御対象とするスイッチへ与える手段とを具備したことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
超音波放射のために超音波振動子に供給する送信信号を生成する送信装置において、
鉄心と、
前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、
複数の1次側コイル回路とを具備し、
さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、
中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、
前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチとを具備し、
かつ前記1次側コイル回路は、前記第1または第2のスイッチがオンであるときと、前記第3および第4のスイッチがオンであるときとで前記2次側巻線から見たインピーダンスを同一とする構成を持つことを特徴とする送信装置。
【請求項6】
超音波放射のために超音波振動子に供給する送信信号を生成する送信装置において、
鉄心と、
前記鉄心に巻かれた2次側巻線と、
複数の1次側コイル回路とを具備し、
さらに前記複数の1次側コイル回路はそれぞれ、
中間タップを有する互いに同一の構成をなし、それぞれ前記鉄心に巻かれた第1および第2の1次側巻線と、
前記第1の巻線における前記中間タップを挟む二つの部位の導通を個別にオン/オフする第1および第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチと同様に前記第2の巻線に接続され、同時にオン/オフされる第3および第4のスイッチと、
前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチまたは前記第3および第4のスイッチのオン/オフを指定する制御信号がオンを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオンするまでの遷移時間と、前記制御信号がオフを指定する状態に変化してからこの制御信号が制御対象とするスイッチがオフするまでの遷移時間との差を補償するように前記制御信号を調整し、この調整したのちの前記制御信号をその制御対象とするスイッチへ与える手段とを具備したことを特徴とする送信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−26150(P2006−26150A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210109(P2004−210109)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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