説明

超音波診断装置及び超音波画像表示プログラム

【課題】 穿刺を行う場合に診断に使用するような画質の良い画像を表示しつつ穿刺針の視認性を向上させることができ、穿刺術に際して良好なモニタリングを行うことができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】 超音波プローブからの受信信号を処理して断層像を生成すると共に、超音波プローブに具備された穿刺アダプタの設定に基づき、穿刺針の刺入予定線である穿刺ガイドラインの画像を前記断層像に合成して穿刺針挿入部表示領域(第1の表示領域)と、組織画像表示領域(第2の表示領域)とを設定し、前記第1の表示領域及び前記第2の表示領域に異なる表示処理をした後にそれらを合成し、画像生成手段で生成された画像を表示する表示手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内部の断層像及び穿刺針情報を画像表示する超音波診断装置及び超音波画像表示プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体内に超音波を送信すると共に、反射エコーを受信して被検体内の検査を行う超音波診断装置は医用分野において広く用いられている。
【0003】
超音波診断装置は、超音波プローブを体表に当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査が行えるほか、システムの規模がX線、CT、MRIなど他の診断機器に比べて小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便である。
【0004】
また、超音波診断装置の大きさは、それが具備する機能の種類によって様々に異なるが、小型なものは片手で持ち運べる程度の装置が開発されている。超音波診断はX線などのように被曝の影響がないので、比較的安心して使用できる。
【0005】
一方、肝細胞癌の局所治療法としてラジオ波焼灼療法(RFA)や、肝臓に穿刺針を刺して肝細胞組織を検査する生検などで穿刺は広く行われている。
【0006】
穿刺は、超音波診断装置の画像から生体内での穿刺針の位置を確認しながら行われるが、腫瘍などの関心部位(治療対象)に正確に穿刺を行うことは、非常に重要である。
【0007】
関心部位(治療対象)に正確に穿刺を行うために、穿刺ガイドラインとよばれる線状のマーカーを超音波画像上に表示して、穿刺針が通る道筋を予め確認する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−353146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、一般に穿刺針の画像は生体の画像に埋もれてしまい、どこまで穿刺針が進んだかの把握が難しいという問題点があった。
【0010】
また、生体内の組織の影響により、穿刺針の歪みがおこり、穿刺ガイドラインが示す方向と同じ位置に穿刺針が進まず、所望とする位置に穿刺が行えないという問題点もあった。
【0011】
このような場合、組織の中に他の組織と異なる部位を見つけるため様々な画像処理を行うが、穿刺針を強調するためにダイナミックレンジを狭くするなどの処理を行うと、階調が狭くなってしまい、組織の見分けが困難になるという問題点があった。
【0012】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、穿刺を行う場合に診断に使用するような画質の良い画像を表示しつつ穿刺針の視認性を向上させることができ、穿刺術に際して良好なモニタリングを行うことができる超音波診断装置及び超音波画像表示プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための、請求項1記載の発明に係る超音波診断装置は、被検体内へ超音波を送信すると共に、反射してきた超音波を受信する超音波プローブと、その超音波プローブに固定されて、被検体内に刺入する穿刺針のガイドを行う穿刺アダプタと、前記超音波プローブからの受信信号を処理して断層像を生成すると共に、前記穿刺アダプタの設定に基づき、前記穿刺針の刺入予定線である穿刺ガイドラインの画像を前記断層像に合成して穿刺針挿入部表示領域である第1の表示領域と、組織画像表示領域である第2の表示領域とに振り分けた画像を生成する画像生成手段と、画像生成手段で生成された画像を表示する表示手段を有する超音波診断装置であって、前記画像生成手段は、前記第1の表示領域及び前記第2の表示領域の各表示領域に異なる表示処理を施したことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するための、請求項2記載の発明に係る超音波診断装置は、請求項1に記載の超音波診断装置において、前記異なる表示処理は、前記第1の表示領域に対しては、穿刺針の刺入態様を認識容易となる処理であり、前記第2の表示領域に対しては、組織像が見易くなる表示処理であることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するための、請求項3記載の発明に係る超音波診断装置は、請求項2に記載の超音波診断装置において、前記異なる表示処理は、前記第1の表示領域におけるダイナミックレンジを、前記第2の表示領域のダイナミックレンジよりも狭くした処理、前記第1の表示領域におけるゲインを前記第2の表示領域のゲインよりも大きくした処理、前記第1の表示領域におけるカラーマップの輝度と前記第2の表示領域におけるカラーマップの輝度とを変化させた処理の何れかの処理であることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するための、請求項4記載の発明に係る超音波診断装置は、請求項1〜3の何れかに記載の画像表示装置において、前記第1の表示領域の設定は、刺入目的組織を除く部分までの刺入範囲であることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するための、請求項5記載の発明に係る超音波診断装置は、請求項1〜4の何れかに記載の超音波診断装置において、前記画像生成手段は、前記第1の表示領域の形状を、穿刺針の刺入方向に広がった形状とすることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するための、請求項6記載の発明に係る超音波診断装置は、請求項1〜5の何れかに記載の超音波診断装置において、前記画像生成手段は、前記第1の表示領域の形状を、前記穿刺ガイドラインを軸として対照な形状とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、超音波表示画像を、穿刺針が通過する穿刺ガイドラインを含む領域(第1の表示領域)と、それ以外の領域(第2の表示領域)とに分割設定し、それぞれの領域について異なる画像処理(例えばダイナミックレンジ操作)を行ったので、穿刺ガイドラインが含まれる第1の表示領域において、穿刺針の画像が視認性よく表示でき、穿刺針の位置を確実に検者に知らしめることができるだけでなく、第2の領域では組織が明瞭に確認することができるので、結果として検者は穿刺術のモニタリングを良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0021】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本実施形態の超音波診断装置10は、超音波プローブ12、入力装置13、モニタ14、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22、ドプラ処理ユニット23、画像生成回路25、画像メモリ26、制御プロセッサ27、ソフトウェア格納部28、内部記憶装置29、インタフェース部30を具備している。装置本体11に内蔵される超音波送受信ユニット21等は、集積回路などのハードウェアで構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムとする場合もある。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0022】
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0023】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。
【0024】
モニタ14は、画像生成回路25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0025】
送受信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0026】
なお、送受信ユニット21は、制御プロセッサ27の指示に従って後述するスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0027】
また、送受信ユニット21は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0028】
Bモード処理ユニット22は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成回路25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニタ14に表示される。
【0029】
ドプラ処理ユニット23は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は画像生成回路25に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニタ14にカラー表示される。
【0030】
画像生成回路25は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。画像生成回路25は、画像データを格納する記憶メモリを搭載しており、例えば診断の後に操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっている。なお、当該画像生成回路25に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
【0031】
画像生成回路25の詳細を図2に示す。まず、信号処理ユニット25aは超音波スキャンの走査線信号列のレベルで画質を決定するようなフィルタリングを行う。信号処理ユニット25aの出力はスキャンコンバータ25bに送られると同時に、画像メモリ26に保存される。
【0032】
ここで、信号処理ユニット25aは、分波回路251a、穿刺針の刺入予定線である穿刺ガイドラインを含む所定幅で設定される穿刺針挿入部表示領域(第1の表示領域)における信号処理を行う第1の信号処理回路252a、前記穿刺針挿入部表示領域(第1の表示領域)以外の組織画像表示領域(第2の表示領域)における信号処理を行う第2の信号処理回路253a及び第1の信号処理回路252aと第2の信号処理回路253aとで行われた信号処理を合成する加算処理回路254aによって構成されている。
【0033】
なお、穿刺針挿入部表示領域(第1の表示領域)における信号処理とは、例えば、穿刺針の刺入態様を認識容易となる処理であり、組織画像表示領域(第2の表示領域)における信号処理とは、例えば、組織像が見易くなる表示処理である。さらには、前記第1の表示領域におけるダイナミックレンジを、前記第2の表示領域のダイナミックレンジよりも狭くした処理を行うことである。
【0034】
また、前記第1の表示領域の設定は、画像上の座標が決定された穿刺ガイドラインに対して、初期値として、所定の幅(例えば、超音波画像上の寸法で約1cm)を持たせ、かつ穿刺対象(刺入目的組織)手前までの領域が設定される。穿刺対象(刺入目的組織)が第1の表示領域に含まれてしまうと、穿刺対象(刺入目的組織)の確認が困難になり、穿刺術それ自体に影響を及ぼす可能性があるからである。この第1の表示領域の設定は、図示しない入力装置によって検者から入力されてもよく、穿刺ガイドラインに対してどの程度の幅を持たせるか、穿刺針が曲がりやすい部位に穿刺するために、穿刺針の刺入方向に広がった形状にするなど、任意の形状を選択できるようにしてもよい。
【0035】
スキャンコンバータ25bは、超音波スキャンの走査線信号列から、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する。この出力は画像生成回路25cへ送られ、ここでは、輝度やコントラストの調整や、空間フィルタなどの画像処理、もしくは種々の設定パラメータの文字情報や目盛などと共に合成され、ビデオ信号としてモニタ14に出力する。かくして被検体組織形状を表す断層像が表示される。
【0036】
画像メモリ26は、信号処理ユニット25aから受信した画像データを格納する記憶メモリからなる。この画像データは、例えば診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能でなる。また、画像メモリ26は、超音波送受信ユニット21直後の出力信号(radio frequency(RF)信号と呼ばれる)、送受信ユニット21通過後の画像輝度信号、その他の生データ、ネットワークを介して取得した画像データ等を必要に応じて記憶する。
【0037】
具体的には、信号処理ユニット25aから受信した画像データを保存する際に、デシベル表示されている情報から逆対数変換を行うための情報、例えば対数変換時の数式係数、ゲイン、ダイナミックレンジ、輝度スケール情報、画像処理パラメータなどが、画像データと同時に画像メモリ26に記録される。したがって、前記第1の表示領域におけるダイナミックレンジを、前記第2の表示領域のダイナミックレンジよりも狭くした処理の他にも、組織像が見易くなる表示処理として、前記第1の表示領域におけるゲインを前記第2の表示領域のゲインよりも大きくした処理、前記第1の表示領域におけるカラーマップの輝度と前記第2の表示領域におけるカラーマップの輝度とを変化させた処理、前記第2の領域からの信号に対する針の視認性を向上させるフィルタ処理、などが挙げられ、これらの処理の何れかが行われるか又は選択可能となっている。また、この他にも、前記第2の領域のスキャンに際しては、針の進行方向に対してなるべく直角に近い方向から超音波を送受信するようにしてもよい。
【0038】
内部記憶装置29は、後述のスキャンシーケンス、画像生成。表示処理を実行するための制御プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、その他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。内部記憶装置29のデータは、インタフェース回路30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0039】
制御プロセッサ27は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する制御手段である。制御プロセッサ27は、超音波プローブ12に内蔵されたエンコーダからの穿刺針位置情報及び内部記憶装置29から後述する画像生成・表示等を実行するための制御プログラムを読み出してソフトウェア格納部28上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する
【0040】
インタフェース部30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェース部30によって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0041】
次に、このように構成された超音波診断装置の画像生成回路の動作について図3〜図8を参照して説明する。なお、図3は、本発明に係る超音波診断装置の画像生成回路の動作を示すフローチャート、図4〜図8は、本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態において、穿刺術が行われている時の表示画面の図である。
【0042】
まず、信号処理ユニット25aは、穿刺針の位置に応じて第1の表示領域を設定する(S1)。
【0043】
この第1の表示領域の設定にあたっては、まず、図4又は図6に示すように、第1の表示領域の幅の設定がある。これは、前述したように、検者が入力装置などを用いて任意の幅で表示したい場合(S2−Yes)には、穿刺ガイドラインに対し、入力値の幅を設定する(S3)。また、検者による第1の表示領域の幅の設定がない場合(S2−No)は、穿刺ガイドラインに対し、初期値(例えば、穿刺ガイドライン両側1cm)の幅に設定する(S4)。これらの第1の表示領域の幅の設定は、穿刺ガイドラインに対して対称に設定される。
【0044】
次に、第1の表示領域を刺入方向に拡げるか否かの入力を受け付ける(S5)。第1の表示領域を図5に示すように刺入方向に拡げる必要がある場合、例えば、マウスやトラックボールなどの入力装置によって検者に任意に描画設定させたり、穿刺針の径が所定の値よりも小さいと穿刺アダプタ12aが検知することで、その径に応じた拡がり形状を初期値として適用してもよい(S6)。このように、第1の表示領域を刺入方向に拡げるように設定することで、穿刺針の径が所定の値よりも小さく、被検体P内で刺入路が曲がってしまった場合でも、穿刺針を認識しやすくすることが可能となる(図5参照)。
【0045】
次に、穿刺対象となる組織が画面上にあるか否かの入力を受け付ける(S7)。本発明は、穿刺対象及びそれ以外の組織と穿刺針とをそれぞれ良好に区別認識するために提案されたものであるため、穿刺針を明確に視認するために設定される第1の表示領域の中に穿刺対象が含まれていると、穿刺針を明確化する一方で、穿刺対象を視認しづらくさせてしまう。したがって、入力装置によって検者に穿刺対象を特定させ(穿刺ガイドラインは、表示上、穿刺対象を貫くように表示されている。)、その穿刺対象よりも手前(刺入口側)までを深さ方向の範囲とするように設定する(S8)。
【0046】
さらに、穿刺ガイドラインが1つとは限らないので、それが複数表示されているかの入力を受け付け(S9)、穿刺ガイドラインが複数表示される場合(S9―Yes)には、図8に示すように、複数の穿刺ガイドラインの全てを含むように、第1の表示領域を設定する(S10)。
【0047】
このようにして設定された第1の表示領域に対して、第1の信号処理回路252aは、穿刺針が認識しやすいようにダイナミックレンジを設定する。一方、第1の表示領域が設定されることによって第2の表示領域も自ずと設定されるので、その第2の表示領域に対して第2の信号処理回路253aは、第1の信号処理回路252aとは異なったダイナミックレンジの設定をして組織を認識しやすくする。具体的には、第1の信号処理回路252aにて設定されるダイナミックレンジは第2の信号処理回路253aにて設定されるダイナミックレンジよりも狭く設定される(S11)。第1の表示領域におけるダイナミックレンジを、第2の表示領域のダイナミックレンジよりも狭くした処理の他にも、組織像が見易くなる表示処理として、第1の表示領域におけるゲインを前記第2の表示領域のゲインよりも大きくした処理、前記第1の表示領域におけるカラーマップの輝度と前記第2の表示領域におけるカラーマップの輝度とを変化させた処理、第2の領域からの信号に対する針の視認性を向上させるフィルタ処理、などが挙げられ、これらの処理の何れかが行われるか又は選択可能となっている。
【0048】
そして、第1の信号処理回路252aによって処理された第1の表示領域と第2の信号処理回路253aによって処理された第2の表示領域とを加算処理回路254aが合成して(S12)、スキャンコンバータ25bに送られると共に、画像メモリ26に保存される。スキャンコンバータ25bは、超音波スキャンの走査線信号列から一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する。この出力は画像処理回路25cに送られ、輝度やコントラストの調整や、空間フィルタなどの画像処理、もしくは種々の設定パラメータの文字情報や目盛などと共に合成され、ビデオ信号としてモニタ14に出力する。
【0049】
(他の実施形態)
本発明に係る超音波診断装置の他の実施形態として、超音波プローブ12に、穿刺針を被検体P内に誘導するための穿刺アダプタ(図示せず)が取り付けられ、この穿刺アダプタの穿刺針導出口(図示せず)から被検体P内での刺入距離を計測して、これらの情報を穿刺針位置情報として出力するエンコーダ(図示せず)が超音波プローブ12又は前記穿刺アダプタに内蔵されていてもよい。
【0050】
このようなエンコーダを採用した場合、例えば、前述の第1の表示領域の設定(S1)において、当該エンコーダから得られた穿刺針位置情報を元に、画像上の座標が決定された穿刺ガイドラインに対して、初期値として、所定の幅(例えば、超音波画像上の寸法で約1cm)を持たせ、かつ穿刺対象(刺入目的組織)手前までの領域が設定される。穿刺対象(刺入目的組織)が第1の表示領域に含まれてしまうと、穿刺対象(刺入目的組織)の確認が困難になり、穿刺術それ自体に影響を及ぼす可能性があるからである。ただし、穿刺対象(刺入目的組織)が超音波表示画像上に表示されない場合にはこの限りではなく、その場合は、超音波表示画像において第1の表示領域が横断するような表示となり、第1の表示領域以外の領域として自ずと設定される第2の表示領域は分割された表示となる。一方、穿刺対象(刺入目的組織)が超音波表示画像上に表示される場合は、第1の表示領域の両側に設定される2つの第2の表示領域は連結されて表示される。この第1の表示領域の設定は、図示しない入力装置によって検者から入力されてもよく、穿刺ガイドラインに対してどの程度の幅を持たせるか、穿刺針が曲がりやすい部位に穿刺するために、穿刺針の刺入方向に広がった形状にするなど、任意の形状を選択できるようにしてもよい。
【0051】
なお、本実施形態の画像生成回路の動作については、上述の実施形態におけるS1において、まず、穿刺術中時、超音波プローブ12に設置された穿刺アダプタ12a(図1参照)にガイドされた穿刺針が被検体P内に刺入されることによって、超音波プローブ12に内蔵されたエンコーダから制御プロセッサ27に対して穿刺針の位置に関する情報(穿刺針位置情報)が出力され、この穿刺針位置情報を元に、制御プロセッサ27は穿刺ガイドライン表示のための情報を画像メモリ26に保存し、それを画像生成回路25は、超音波プローブ12から送受信ユニット21を介して得られた被検体Pの断層像に合成してモニタ14上に表示する。
【0052】
その後、信号処理ユニット25aは、穿刺針の位置に応じて第1の表示領域を設定する(S1)。
【0053】
この第1の表示領域の設定にあたっては、まず、図4に示すように、第1の表示領域の幅の設定がある。これは、前述したように、検者が入力装置などを用いて任意の幅で表示したい場合(S2−Yes)には、穿刺ガイドラインに対し、入力値の幅を設定する(S3)。また、検者による第1の表示領域の幅の設定がない場合(S2−No)は、穿刺ガイドラインに対し、初期値(例えば、穿刺ガイドライン両側1cm)の幅に設定する(S4)。
【0054】
次に、第1の表示領域を刺入方向に拡げるか否かの入力を受け付ける(S5)。第1の表示領域を刺入方向に拡げる必要がある場合、例えば、マウスやトラックボールなどの入力装置によって検者に任意に描画設定させたり、穿刺針の径が所定の値よりも小さいと穿刺アダプタ12aが検知することで、その径に応じた拡がり形状を初期値として適用してもよい(S6)。このように、第1の表示領域を刺入方向に拡げるように設定することで、穿刺針の径が所定の値よりも小さく、被検体P内で刺入路が曲がってしまった場合でも、穿刺針を認識しやすくすることが可能となる(図5参照)。
【0055】
次に、穿刺対象となる組織が画面上にあるか否かの入力を受け付ける(S7)。本発明は、穿刺対象及びそれ以外の組織と穿刺針とをそれぞれ良好に区別認識するために提案されたものであるため、穿刺針を明確に視認するために設定される第1の表示領域の中に穿刺対象が含まれていると、穿刺針を明確化する一方で、穿刺対象を視認しづらくさせてしまう。したがって、入力装置によって検者に穿刺対象を特定させ(穿刺ガイドラインは、表示上、穿刺対象を貫くように表示されている。)、その穿刺対象よりも手前(刺入口側)までを深さ方向の範囲とするように設定する(S8)。
【0056】
さらに、穿刺ガイドラインが1つとは限らないので、それが複数表示されているかの入力を受け付け(S9)、穿刺ガイドラインが複数表示される場合(S9−Yes)には、図8に示すように、全ての穿刺ガイドラインを含むように、第1の表示領域を設定する(10)。
【0057】
このようにして設定された第1の表示領域に対して、第1の信号処理回路252aは、穿刺針が認識しやすいようにダイナミックレンジを設定する。一方、第1の表示領域が設定されることによって第2の表示領域も自ずと設定されるので、その第2の表示領域に対して第2の信号処理回路253aは、第1の信号処理回路252aとは異なったダイナミックレンジの設定をして組織を認識しやすくする。具体的には、第1の信号処理回路252aにて設定されるダイナミックレンジは第2の信号処理回路253aにて設定されるダイナミックレンジよりも狭く設定される(S11)。
【0058】
そして、第1の信号処理回路252aによって処理された第1の表示領域と第2の信号処理回路253aによって処理された第2の表示領域とを加算処理回路254aが合成して(S12)、スキャンコンバータ25bに送られると共に、画像メモリ26に保存される。スキャンコンバータ25bは、超音波スキャンの走査線信号列から一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する。この出力は画像処理回路25cに送られ、輝度やコントラストの調整や、空間フィルタなどの画像処理、もしくは種々の設定パラメータの文字情報や目盛などと共に合成され、ビデオ信号としてモニタ14に出力する。
【0059】
上述の各実施形態は、本発明の一例であり、本発明は上記実施形態に限定されることはない。また、本実施形態では、超音波プローブとして、コンベックスタイプの超音波プローブを想定して説明したが、リニアタイプ、セクタタイプなどの超音波プローブを用いても同様の効果を奏する。そして、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態における構成を示したブロック図。
【図2】本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態における画像生成回路の構成を示すブロック図。
【図3】本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態における画像生成回路の動作を示すフローチャート。
【図4】本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態において、穿刺術が行われている時の表示画面の図。
【図5】本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態において、穿刺術が行われている時の表示画面の図。
【図6】本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態において、穿刺術が行われている時の表示画面の図。
【図7】本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態において、穿刺術が行われている時の表示画面の図。
【図8】本発明に係る超音波診断装置の一実施の形態において、穿刺術が行われている時の表示画面の図。
【符号の説明】
【0061】
10 超音波診断装置
11 装置本体
12 超音波プローブ
13 入力装置
14 モニタ
21 送受信ユニット
22 Bモード処理ユニット
23 ドプラ処理ユニット
25 画像生成回路
25a 信号処理ユニット
251a 分波回路
252a 第1の信号処理回路
253a 第2の信号処理回路
254a 加算処理回路
25b スキャンコンバータ
25c 画像処理回路
26 画像メモリ
27 制御プロセッサ
28 ソフトウェア格納部
29 内部記憶装置
30 インターフェース部
P 被検体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内へ超音波を送信すると共に、反射してきた超音波を受信する超音波プローブと、
その超音波プローブに固定されて、被検体内に刺入する穿刺針のガイドを行う穿刺アダプタと、
前記超音波プローブからの受信信号を処理して断層像を生成すると共に、前記穿刺アダプタの設定に基づき、前記穿刺針の刺入予定線である穿刺ガイドラインの画像を前記断層像に合成して穿刺針挿入部表示領域である第1の表示領域と、組織画像表示領域である第2の表示領域とに振り分けた画像を生成する画像生成手段と、
画像生成手段で生成された画像を表示する表示手段を有する超音波診断装置であって、
前記画像生成手段は、前記第1の表示領域及び前記第2の表示領域の各表示領域に異なる表示処理を施したことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記異なる表示処理は、前記第1の表示領域に対しては、穿刺針の刺入態様が認識容易となる処理であり、前記第2の表示領域に対しては、組織像が見易くなる表示処理であることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記異なる表示処理は、前記第1の表示領域におけるダイナミックレンジを、前記第2の表示領域のダイナミックレンジよりも狭くした処理、前記第1の表示領域におけるゲインを前記第2の表示領域のゲインよりも大きくした処理、前記第1の表示領域におけるカラーマップの輝度と前記第2の表示領域におけるカラーマップの輝度とを変化させた処理の何れかの処理であることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記第1の表示領域の設定は、刺入目的組織を除く部分までの刺入範囲であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記画像生成手段は、前記第2の表示領域の形状を、穿刺針の刺入方向に広がった形状とすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像生成手段は、前記第2の表示領域の形状を、前記穿刺ガイドラインを軸として対称な形状とすることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波診断画像表示面に穿刺針刺入領域を重畳表示する超音波画像表示プログラムであって、
前記穿刺針刺入領域を第1の表示領域とし、他の領域を第2の表示領域として分離する過程と、
前記第1の表示領域及び前記第2の表示領域の各表示領域に異なる表示処理を施す過程とを有する超音波画像表示プログラム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−195867(P2007−195867A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20506(P2006−20506)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】