説明

超音波診断装置及び超音波診断装置制御方法

【課題】S/Nを改善するとともにLNAの飽和を回避する超音波診断装置を提供する。
【解決手段】送受信部100は、受信したエコー信号を設定された増幅率で増幅するLNA200と、振幅が異なる複数種類の参照信号を発生する参照信号発生部105と、エコー信号の振幅と参照信号とを比較する比較部106と、参照信号の振幅に対応して受信したエコー信号の振幅の大きさを複数段階に分けて判断し、前記段階に応じエコー信号の振幅が大きくなる前記段階ほど小さい前記増幅率となるように、前記複数段階と前記増幅率との対応を予め記憶しており、判断された振幅の大きさの段階に対応する増幅率を選択し、LNA200の増幅率を選択した増幅率に設定する制御部107と、増幅されたエコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換部104と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に対して超音波を送受信し、受信した超音波に基づくエコー信号を用いて診断部位についての超音波画像を生成する超音波診断装置及びその制御方法に関する。さらに詳しくは、エコー信号のゲインの調整を行う超音波診断装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体内に向けて超音波を送信し、該被検体の臓器などから反射した超音波(以下では、この反射した超音波を「超音波エコー」という。)を受信し、その超音波エコーを電気信号(以下では、この電気信号を「エコー信号」という。)に変換し、そのエコー信号に対して、対数圧縮、包絡線検波、や遅延加算処理などの信号処理を施し、さらに座標変換などの画像処理を行うなどして、被検体内の断面の画像である超音波画像を生成する超音波診断装置が広く普及している。
【0003】
そして、上述した超音波診断装置には、エコー信号を一様に増幅する増幅部(これは、具体的にはアンプ(増幅器)で構成されており、より具体的には、LNA:Low Noise Amplifierなどが用いられている。)と、超音波の生体内減衰を補償するために体表からの深度に応じた感度でエコー信号を増幅するTGC(Time Gain Compensation)部と、アナログ信号であるエコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、これらを制御する制御部が設けられている。この増幅率はゲインとも呼ばれ、該増幅率の設定を以下では、「ゲイン設定」ということがある。またゲイン設定を行いゲインを変換することをゲインの調整ということがある。
【0004】
そして、入力されたエコー信号は、増幅部でエコー信号が増幅され、さらに、その増幅されたエコー信号に対しTGCで受信時間の経過とともに増加するゲインで増幅が行われ、そして、その増幅されたエコー信号がA/D変換部によってディジタル信号に変換された後に、そのディジタル信号に変更されたエコー信号に対し上述した信号処理や画像処理が行われる。
【0005】
ここで、超音波診断装置には、エコー信号の振幅値を用いた被検体の断層画像を生成するBモードや、位相情報を用いて血流情報を取得するドプラモード等の様々な撮像及び画像生成のモード(以下では、「撮像モード」という。)を有する。そして、撮像モードの種類によって取得されるエコー信号の強弱、言い換えれば、取得するエコー信号の振幅が異なる。例えば、ドプラモードにおけるエコー信号(すなわち、血流からのエコー信号。)は、Bモードにおけるエコー信号(すなわち、骨や臓器などからのエコー信号。)に比べて非常に弱い、すなわち振幅の小さい信号である。そのため、Bモードではゲインが小さくてよく、ドプラモードではゲインを大きくする必要がある。すなわち、Bモードにおけるゲインと同じゲインを用いてドプラモードで取得したエコー信号に対する増幅を行うと、ゲインが足りないためS/N比が悪くなってしまう。逆に、ドプラモードにおけるゲインと同じゲインを用いてBモードで取得したエコー信号に対する増幅を行うと、ゲインが大きすぎるためダイナミックレンジが不足して飽和してしまう。そのため、Bモードでは飽和の回避を重視したゲイン設定が必要となり、ドプラモードではS/Nの改善を重視したゲイン設定が必要となる。このように、撮像モード毎、すなわち、撮像の目的毎により超音波診断装置におけるゲイン設定は異なる。
【0006】
さらに、エコー信号の振幅は、スキャンする部位(対象部位)によっても異なるし、患者の体型によっても異なる。
【0007】
そのため、理想的には、撮像モードの種類、患者の体型、及び対象部位毎にエコー信号の振幅を測定し、その振幅で最良のS/Nを実現しかつ飽和が発生しないような最適なゲイン設定を行うことが望ましい。
【0008】
この様なゲインの調整を行うために従来、A/D変換部にA/Dコンバータのダイナミックレンジの閾値を設け、この閾値を基に増幅部のゲインの設定を変更する技術(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−85212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、増幅部に配置されたLNAが出力できる振幅は制限があり、この出力できる振幅の制限を実際にLNAが出力する信号が超えてしまうような場合(以下では、これを「LNAの飽和」という。)には、LNAの飽和を許容するしかなかった。ここで、LNAの飽和を許容するとは、その制限範囲以外の信号は使用しないということを指す。この点、特許文献1に記載された技術では、A/Dコンバータの飽和は防げるが、増幅部におけるLNAの飽和を回避することは困難である。
【0011】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、S/Nを改善するとともに増幅器(LNA)の飽和を回避する超音波診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の超音波診断装置は、複数の振動子を有する超音波プローブを介して被検体に向けて超音波を送信し、該被検体で反射した超音波エコーに基づくエコー信号を受信する送受信手段と、前記エコー信号に対数圧縮及び包絡線検波等を行う信号処理手段と、前記信号処理を施されたエコー信号に座標変換などの画像処理を行い画像データを生成する画像処理手段と、前記画像データを基に表示手段に超音波画像を表示させる表示制御手段と、を備えた超音波診断装置であって、前記送受信手段は、各前記振動子に接続され前記受信したエコー信号を設定された増幅率で増幅する第1増幅器を有する増幅手段と、振幅が異なる複数種類の参照信号を発生する参照信号発生手段と、前記受信したエコー信号の振幅と前記参照信号とを比較し、前記参照信号の振幅に対応して前記受信したエコー信号の振幅の大きさを複数段階に分けて判断する比較判断手段と、前記段階に応じ前記エコー信号の振幅が大きくなる前記段階ほど小さい前記増幅率となるように、前記複数段階と前記増幅率との対応を予め記憶しており、前記比較判断手段により判断された前記振幅の大きさの段階に対応する前記増幅率を選択し、前記第1増幅器の増幅率を前記選択した増幅率に設定する制御手段と、前記増幅されたエコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載の超音波診断装置制御方法は、超音波を被検体に送信する段階と、前記被検体で反射した前記超音波を受信しエコー信号に変換する段階と、前記受信したエコー信号の振幅と前記参照信号を比較し、前記参照信号の振幅に対応して前記受信したエコー信号の振幅の大きさを複数段階に分けて判断する比較判断段階と、予め記憶している、前記段階に応じ前記エコー信号の振幅が大きくなる前記段階ほど小さい前記増幅率となるような、前記複数段階と前記増幅率との対応に基づいて、前記比較判断手段により判断された前記振幅の大きさの段階に対応する前記増幅率を選択する増幅率選択段階と、前記受信したエコー信号の増幅率を前記選択した増幅率に設定する制御段階と、前記受信したエコー信号を前記設定した増幅率で増幅する増幅段階と、前記増幅されたエコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換段階と、前記ディジタル信号に変換された前記エコー信号に対し対数圧縮及び包絡線検波等を行う信号処理段階と、前記信号処理を施された前記エコー信号に座標変換などの画像処理を行い画像データを生成する画像処理段階と、前記画像データを基に表示部に超音波画像を表示させる画像表示段階と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の超音波診断装置及び請求項6に記載の超音波診断装置制御方法によると、入力されたエコー信号の振幅に応じて、該振幅が大きい場合には増幅器のゲインを小さくし、該振幅が小さい場合には増幅器のゲインを大きくするように調整できる構成である。これにより、増幅後のエコー信号のS/Nの改善とともに減衰器の飽和を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る超音波診断装置のブロック図
【図2】第1の実施形態に係る参照信号発生部、比較部、増幅部、及び制御部の構成を説明するための模式図
【図3】第1の実施形態に係る超音波診断装置によるゲインの調整の動作のフローチャートの図
【図4】第2の実施形態に係る超音波診断装置における増幅部の一例の図
【図5】第3の実施形態に係るゲインの設定を行うための入力画面の一例の図
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施形態〕
以下、この発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図1は本実施形態に係る超音波診断装置の機能を表すブロック図である。
【0017】
超音波プローブ001は、複数の振動子011が配置されている。この振動子011は、例えば2次元アレイプローブの場合には数千個が配置されることになる。そして、各振動子011は、個々に後述する送信回路101に接続されている。また、各振動子011は、個々に後述するLNA(Low Noise Amplifier)200に接続されている。そして、送信回路101から入力されたパルス電圧を受信する。そして、振動子011は受信したパルス信号により超音波を発生し、被検体に向けて超音波を送信する。さらに、振動子011は、被検体で反射した超音波エコーを受信し、受信したエコー信号を電圧に変換してエコー信号を生成し接続されているLNA200へ出力する。
【0018】
送受信部100は、図1に示すように送信回路101、増幅部102、TGC(Time Gain Compensation)103、A/D変換部104、参照信号発生部105、比較部106、及び制御部107を備えている。この送受信部100が本発明における「送受信手段」にあたる。
【0019】
送信回路101は、パルス電圧を発生し、超音波プローブ001に配置されている各振動子011にパルス電圧を送信する。
【0020】
増幅部102は、超音波プローブ001の各振動子011のそれぞれに接続されている複数のLNA200を備えている。すなわち、LNA200は振動子011と同数配置されている。そして、LNA200は、ゲインの変更が可能な増幅器(アンプ)である。ここで、ゲインとは、入力されたエコー信号の振幅を増幅する増幅率のことである。すなわち、ゲインが大きいほどエコー信号は大きく増幅され、ゲインが小さいほどエコー信号は小さく増幅される。以下では、ゲイン設定を行いゲインを変更することをゲインの調整ということがある。また、LNA200は出力できる信号の振幅の大きさが決まっている。すなわち、LNA200は、エコー信号を増幅したときにその増幅後の信号の振幅が、自己が出力できる信号の振幅の大きさを超えている場合には、その超えた部分は自己が出力できる信号の振幅の最大値として出力を行う。
【0021】
LNA200は、後述する制御部107からの制御信号の入力を受けて、その制御信号で指定された値にゲインが設定される。
【0022】
LNA200は振動子011からエコー信号の入力を受ける。そして、LNA200は、設定されたゲインによってエコー信号を増幅する。さらに、LNA200は、増幅したエコー信号をTGC103へ出力する。
【0023】
増幅部102が本発明における「増幅手段」にあたり、増幅部102に設けられた個々のLNA200が本発明における「第1増幅器」にあたる。
【0024】
TGC103は、メモリなどの記憶部を有している。そして、TGC103は、複数種類の時間経過とゲインとの対応の関数を自己の記憶部に記憶している。TGC103は、後述する制御部107からの制御命令を受けて、記憶している関数の中から該制御命令で指定された関数を選択する。
【0025】
TGC103は、LNA200からエコー信号の入力を受ける。そして、TGC103は、選択した関数を用いて経過時間に対応させてゲインを変化させ、入力された信号を増幅する。
【0026】
この、TGC103による増幅により、浅い部分での反射によるエコー信号から深い部分での反射によるエコー信号までのいずれのエコー信号も振幅が大きくなるように調整され、さらに、後述するA/D変換部104のダイナミックレンジの上限に近い値までになるようにエコー信号の振幅が増幅される。
【0027】
TGC103は、増幅を行ったエコー信号をA/D変換部104へ出力する。このTGC103が本発明における「ゲイン補正手段」にあたる。
【0028】
A/D変換部104は、A/Dコンバータで構成されている。そして、A/D変換部104は、TGC103からエコー信号の入力を受ける。A/D変換部104は、A/Dコンバータを用いてアナログ信号である入力されたエコー信号をディジタル信号に変換する。そして、A/D変換部104は、ディジタル信号に変換したエコー信号を信号処理部002へ出力する。このA/D変換部104が本発明における「A/D変換手段」にあたる。
【0029】
参照信号発生部105は、異なる振幅を有する複数の参照信号を発生する。本実施形態では、参照信号R1及び参照信号R2(振幅の大きさが参照信号R1<参照信号R2)という2種類の信号を発生する。ここで、図2は、増幅部102、参照信号発生部105、比較部106、及び制御部107の構成を説明するための模式図である。図2に点線で示される部分が参照信号発生部に当たる。具体的には、図2に示すように、参照信号発生部105は、複数の抵抗を並べることで出力する電圧を変え、異なる振幅の参照信号を生成している。ここで、本実施形態ではそれぞれが異なる振幅を有する2つの信号としたが、この数は他の数でもよい。そして、より振幅の種類が多いほどより細かくエコー信号の振幅を判断することができる。そして、参照信号発生部105は、生成した波長の異なる2種類の信号を比較部106へ出力する。この参照信号発生部105が本発明における「参照信号発生手段」にあたる。
【0030】
比較部106は、図2の一点鎖線で表わされる部分である。比較部106は、図2に示すように、参照信号発生部105で発生した参照信号と同数の比較器(Comparator)210で構成されている。本実施形態では、比較部106は、比較器211及び比較器212という2つの比較器を備えている。以下では、比較器211及び比較器212を区別しない場合には単に「比較器210」という。比較部106は、参照信号発生部105から入力された異なる波長の参照信号をそれぞれ異なる比較器210で受信する。本実施形態では、参照信号R1を比較器211で、参照信号R2を比較器212で受信する。さらに、各比較器210は、増幅部102が受信したエコー信号と同じ信号の入力を受ける。そして、各比較器210は、エコー信号の振幅と参照信号の振幅とを比較する。具体的には、比較器211はエコー信号の振幅と参照信号R1の振幅とを比較し、比較器212はエコー信号の振幅と参照信号R2の振幅とを比較する。そして、各比較器210は各参照信号とエコー信号との大小関係を制御部107へ出力する。以下の説明では、エコー信号の振幅が参照信号R1の振幅より大きく参照信号R2より小さいとする。すなわち、比較器211は、参照信号R1の振幅よりエコー信号の振幅が大きいという結果を制御部107へ出力する。また、比較器212は、参照信号R2の振幅よりエコー信号の振幅が小さいという結果を制御部107へ出力する。この各参照信号との大小関係を判断することが、本発明における「エコー信号の振幅の大きさを段階的に判断」にあたる。すなわち、参照信号の振幅が振幅の大きさを判断する段階になっており、参照信号との大小関係の比較によりその段階のいずれに当たるかが判断できる。本実施形態では、参照信号R1より以下、参照信号R1より大きく参照信号R2以下、参照信号R2より大きい、という3段階でエコー信号の振幅の大きさの判断が行われる。
【0031】
制御部107は、CPU及びハードディスクやメモリなどの記憶領域で構成されている。制御部107は、自己の記憶領域に参照信号の振幅との比較結果(すなわち、エコー信号の振幅の大きさの段階)とそれに対応するゲインを記載したテーブルを予め記憶している。本実施形態では、エコー信号をEとすると、制御部107は、E≦R1(この不等号はそれぞれの記号が表わす信号の振幅の大小関係を表している。以下同じ。)のとき、LNA200を図2に示すゲインが21dBであるLNA201とし、R1<E≦R2のとき、LNA200をゲインが18dBであるLNA202とし、R2<Eのとき、LNA200をゲインが15dBであるLNA203とするテーブルを記憶している。ここで説明の都合上、図2において模式的にLNA201、LNA202、及びLNA203という3つの増幅器を配した構成で表わしているが、実際には上述したようにLNA200はゲインが可変な1つの増幅器である。
【0032】
制御部107は、比較部106から比較結果の入力を受ける。本実施形態では、制御部107は、R1<E≦R2という結果の入力(実際には、比較器211からR1<E、比較器212からE≦R2という結果の入力)を受ける。制御部107は自己が記憶しているテーブルを参照し、対応するゲインを選択する。本実施形態では、制御部107はLNA202を選択する。
【0033】
制御部107は、選択したゲインにゲインを設定する制御命令を増幅部102へ出力する。本実施形態では、制御部107は、LNA200をLNA202に設定する制御信号を出力する。
【0034】
ここで、本実施形態に係る超音波診断装置は、被検体の特定の断面に対して送信した複数本の超音波ビームで生成される複数本の走査線を用いて1枚の被検体の該特定の断面に対応する超音波画像を生成する。この1枚の超音波画像に必要な走査線をまとめた単位をフレームという。すなわち、本実施形態に係る超音波診断装置はフレーム毎に超音波画像を生成していく。そして、フレームの途中でゲインが変化すると、1枚の超音波画像の中で強度が変わってしまい正常な画像が生成できなくなる。そこで、比較部106及び制御部107は、フレーム単位で上述のゲインの選択及び設定を行う。
【0035】
また、同じ患者、同じ部位、同じモードで撮像する場合には、一度ゲインの調整を行えば再度のゲインの調整は不要である。そこで、ある患者に対する検査を行う場合に、まず検査の開始時に制御部107は上述のゲインの調整を行う。そして、対象部位を変更した場合やモードの変更があった場合には、操作者からの入力を制御部107が受け、その入力を受けたタイミングで制御部107は上述のゲインの調整を再度行う。ここで、操作者はユーザインタフェース005に備わっている表示部006及び入力部007を用いて上述の入力を行う。
【0036】
ただし、受信したエコー信号は比較部106に入力されるとともに増幅部102へも入力される。すなわち、エコー信号の振幅の比較対象となるフレームは比較部106で比較されている段階ですでに増幅されTGC103へ出力されている。したがって、ゲインの調整は1つ後のフレームから行われることになる。よって、より正確には、制御部107は、検査が開始された1番目のフレームにおける画像生成で使用されたエコー信号を用いてゲインの調整を行い、2番目以降のフレームに対してその調整されたゲインを用いて画像生成が行われる。この場合、1番目のフレームにおいては予め決められたゲインを用いてエコー信号の増幅を行う。また、制御部107は、対象部位やモードの変更が入力され後の1番目のフレームにおける画像生成で使用されたエコー信号を用いてゲインの調整を行い、2番目以降のフレームに対してその調整されたゲインを用いて画像生成が行われる。
【0037】
さらに、制御部107は、設定したLNA200のゲインに合わせて、TGC103が使用する時間経過とゲインとの対応関数を選択し、該選択した関数を使用する制御命令をTGC103へ出力する。
【0038】
以上の比較部106及び制御部107が本発明における「比較判断手段」及び「制御手段」にあたる。
【0039】
また、図2にはスイッチ220が配置されているが、これは、実際には振動子011へのパルス電圧の送信と振動子011からのエコー信号の受信とは同じ信号線により送受信が行われるため、振動子011へパルス電圧を送信する場合に比較部106に該パルス電圧が入力されることを防ぐためである。すなわち、振動子011へパルス電圧を送信する場合にスイッチ220をオフにしておくことで、比較部106へのパルス電圧の入力を遮断する。
【0040】
信号処理部002は、エコー信号の振幅情報の映像化を行い、エコー信号からBモードデータやドプラデータといったデータを生成する。具体的には、信号処理部002は、送受信部100から入力されるエコー信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。そして、信号処理部002は、生成したデータを画像処理部003へ出力する。この信号処理部002が本発明における「信号処理手段」にあたる。
【0041】
画像処理部003は、DSC(Digital Scan Converter)を備える。画像処理部003は、信号処理部002から画像のデータの入力を受ける。DSCは、信号処理部002から出力された走査線信号列で表される信号処理後のデータ(ラスタデータ)を読み込んで、そのラスタデータを空間情報に基づいた直交座標系のデータに変換し(Scan Conversion処理)、超音波画像を生成する。画像処理部003は生成した超音波画像を表示制御部004へ出力する。この画像処理部003が本発明における「画像処理手段」にあたる。
【0042】
表示制御部004は、画像処理部003より入力された超音波画像をユーザインタフェース005が備える表示部006に表示させる。この表示制御部004が本発明における「表示制御手段」にあたる。また表示部006が本発明における「表示手段」にあたる。
【0043】
統括制御部008は、各機能部間のデータの受け渡しや各機能部の動作タイミングの調整などを行う。ただし、実際には統括制御部008を介してデータの受け渡しが行われるが、ここでは説明の都合上、各機能部が直接データをやり取りしているように説明している。
【0044】
次に、図3を用いて本実施形態に係る超音波診断装置によるゲインの調整の動作を説明する。ここで、図3は本実施形態に係る超音波診断装置によるゲインの調整の動作のフローチャートの図である。
【0045】
ステップS001:送受信部100の送信回路101は、パルス電圧を超音波プローブ001へ出力する。超音波プローブ001は入力されたパルス電圧を振動子011で超音波に変換し、被検体に向けて該超音波を送信する。
【0046】
ステップS002:超音波プローブ001に配置された振動子011は、被検体で反射した超音波エコーを受信してエコー信号に変換し、送受信部100へ出力する。送受信部100の増幅部102は、振動子011から入力されたエコー信号を受信する。
【0047】
ステップS003:制御部107は、ゲインの調整が必要か否かを判断する。具体的には、現在受信しているエコー信号のフレームが、検査開始から1番目のフレーム又は対象部位やモードの変更の入力が行われた後の1番目のフレームの場合には、制御部107は、ゲインの調整が必要と判断し、それ以外の場合にはゲインの調整が不要と判断する。ゲインの調整が必要と判断した場合には、ステップS004に進む。ゲインの調整が不要と判断した場合には、ステップS011へ進む。
【0048】
ステップS004:参照信号発生部105は、異なる振幅を有する参照信号R1及び参照信号R2を発生する。そして、参照信号発生部105は、発生させた参照信号R1及び参照信号R2を比較部106へ出力する。
【0049】
ステップS005:比較部106は、超音波プローブ001に配置された振動子011から入力されたエコー信号Eの振幅と参照信号発生部105から入力された参照信号R1及び参照信号R2の振幅とをそれぞれ比較し、エコー信号の振幅と参照信号R1及び参照信号R2の振幅それぞれとの大小関係を判断する。そして、比較部106は、比較結果を制御部107へ出力する。
【0050】
ステップS006:制御部107は、比較部106より入力された比較結果を基に、エコー信号Eの振幅が参照信号R1の振幅以下か否かを判断する。エコー信号Eの振幅が参照信号R1の振幅以下の場合には、ステップS007へ進む。エコー信号Eの振幅が参照信号R1の振幅より大きい場合には、ステップS008へ進む。
【0051】
ステップS007:制御部107は、LNA200をゲインが21dBであるLNA201に設定する。
【0052】
ステップS008:制御部107は、比較部106より入力された比較結果を基に、エコー信号Eの振幅が参照信号R2の振幅以下か否かを判断する。エコー信号Eの振幅が参照信号R2の振幅以下の場合には、ステップS009へ進む。エコー信号Eの振幅が参照信号R1の振幅より大きい場合には、ステップS010へ進む。
【0053】
ステップS009:制御部107は、LNA200をゲインが18dBであるLNA202に設定する。
【0054】
ステップS010:制御部107は、LNA200をゲインが15dBであるLNA203に設定する。
【0055】
ステップS011:増幅部102は、各振動子011に対応して接続されているLNA200を用いて、対応する各振動子011から入力されたエコー信号を増幅する。そして、増幅部102はTGC103に増幅したエコー信号を出力する。
【0056】
ステップS012:TGC103は、制御部107から指定された時間経過とゲインとの対応関数を用いて、増幅部102から入力されたエコー信号をさらに増幅する。そして、TGC103は、増幅したエコー信号をA/D変換部104へ出力する。
【0057】
ステップS013:A/D変換部104は、TGC103から入力されたエコー信号を、A/Dコンバータを用いてアナログ信号からディジタル信号に変換する。そして、A/D変換部104は、ディジタル信号に変換したエコー信号を信号処理部002へ出力する。
【0058】
ステップS014:信号処理部002は、A/D変換部104から入力されたエコー信号に対し、包絡線検波や大衆圧縮などの信号処理を施す。そして、信号処理部002は、信号処理を施したエコー信号を画像処理部003へ出力する。
【0059】
ステップS015:画像処理部003は、信号処理部002から入力されたエコー信号に対し座標変換などを施し超音波画像を生成する。そして、画像処理部003は、生成した超音波画像を表示制御部004へ出力する。
【0060】
ステップS016:表示制御部004は、画像処理部003から入力された超音波画像を表示部006に表示させる。
【0061】
ステップS017:統括制御部008は、検査が終了したか否かを判断する。検査が終了していない場合には、ステップS001に戻る。検査が終了した場合には、超音波診断装置における画像生成の動作を終了する。
【0062】
ここで、以上のフローの説明ではステップの番号順に説明したが、実際には検査開始から1番目のフレーム又は対象部位やモードの変更の入力が行われた後の1番目のフレームの信号の増幅を含む画像の生成とゲインの調整とは並列処理で行われている。すなわち、検査開始から1番目のフレーム又は対象部位やモードの変更の入力が行われた後の1番目のフレームにおいては、ステップS004〜ステップS010とステップS011〜ステップS016までは同時に実行されている。したがって、検査開始から1番目のフレーム又は対象部位やモードの変更の入力が行われた後の1番目のフレームにおいてはゲインの調整が行われずに画像の生成が行われている。
【0063】
また、以上のフローの説明では2種類の参照信号を使用してエコー信号の振幅の大きさを3段階で判断する構成で説明したが、参照信号の種類はさらに増やしエコー信号の振幅の大きさを判断する段階をより細かくすことも可能である。その場合には、ステップS013からステップS017までの間のステップがより細かく分かれることになる。
【0064】
さらに、本実施形態ではA/D変換部104のダイナミックレンジの有効利用及び深い深度の信号をより増幅するためにTGC103を設けたが、LNA200によるエコー信号の増幅で十分な場合には、TGC103を設けなくてもよい。
【0065】
以上で説明したように、本実施形態に係る超音波診断装置は、入力されたエコー信号の振幅に応じてLNAのゲインを調整することができる構成である。これにより、Bモードなどの振幅が大きいエコー信号を使用する場合や、患者の体型や対象部位などによりエコー信号の振幅が比較的大きい場合に、LNAのゲインを小さくすることでLNAの飽和を回避することができ、さらにドプラモードなどの振幅が小さいエコー信号を使用する場合や、患者の体型や対象部位などによりエコー信号の振幅が比較的小さい場合に、LNAのゲインを大きくすることでS/Nをより良くすることが可能となる。
【0066】
〔第2の実施形態〕
以下、この発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。本実施形態に係る超音波装置は、1つのエコー信号に対して複数のゲインが異なるLNAを用いて時間経過とともにゲインを変化させていく構成であることが第1の実施形態と異なるものである。そこで以下では、時間経過に対するLNAの切り替えによるゲインの調整を主に説明する。本実施形態に係る超音波診断装置のブロック図も図1で表わされる。以下の説明では、第1の実施形態と同一の符号を付された機能部は特に説明のない限り同じ機能を有するものとする。図4は本実施形態に係る超音波診断装置における増幅部の一例の図である。
【0067】
以下では、まず本実施形態に係る増幅部102の構成を説明したのち、制御部107及び増幅部102によるゲインの調整の動作を説明する。ここで、以下の説明では、第1の実施形態と同様に、参照信号として参照信号R1及び参照信号R2という2種類の信号を使用するものとし、LNA200は3段階のゲインの設定が可能なものとする。さらに、増幅部102に入力されたエコー信号をEと表す。
【0068】
本実施形態に係る増幅部102は、図4に記載したように、一つの振動子011に対して2つのLNA200(図4におけるLNA200a及びLNA200b)が接続している。このLNA200a及びLNA200bそれぞれがゲインを3段階に設定できるアンプであり、それぞれが図2で模式的に示されているLNA200と同様のアンプである。また、LNA200a及びLNA200bには乗算器401及び乗算器402が接続されており、さらに、その後加算器403によりLNA200aからの出力とLNA200bからの出力が加算される。ここで、乗算器401及び乗算器402としては例えば抵抗分割などを用いればよい。
【0069】
ここで、本実施形態では1つの振動子011に対し2つのLNA200としているが、接続されるLNA200の数に特に制限はない。多くのLNA200を使用するほど時間経過に対する細かい増幅率の変更を行うことが可能である。
【0070】
制御部107の記憶領域には、エコー信号の振幅の大きさの特定の段階に対応するゲインにLNA200aを設定したときに そのゲインに対していくつ上の段階のゲインをLNA200bに設定するかという値を予め記憶している。本実施形態では、制御部107は、LNA200aに対して1段階上のゲインをLNA200bに設定すると記憶している。ここで、本実施形態では1つの振動子011に対して2つのLNA200しか接続されていないため上述のような説明になっているが、2つ以上のLNA200が接続されている場合には、それぞれのLNA200に対して予め決められた段階を順次上げていくようにゲインを設定していけばよい。また、本実施形態ではエコー信号の振幅の大きさを3段階で識別するため、1段階上のゲインを使用しているが、さらに多くの段階を使用してエコー信号の振幅の大きさを識別する場合には、より大きな段階を上げたゲイン(例えば、2段階上や3段階上のゲイン)を次のLNA200に設定してもよい。
【0071】
さらに、制御部107は、1つの振動子011に接続されたLNA200のうち使用するLNA200の切り替えのタイミングを予め記憶している。ここでは、制御部107は切り替え時間をt秒として記憶しているとして説明する。さらに、制御部107は、切り替えが始まってから切り替えが完了するまでの切替時間を予め記憶しており、その切替時間内でLNA200aからの出力とLNA200bからの出力が徐々に変化していくように、切替時間に対応したそれぞれの出力の使用率を記憶している。ここで、それぞれの使用率を加算した時に1になるように設定されている。例えば、制御部107は、LNA200bの使用が時間に対して正比例になり、さらにLNA200aの使用率とLNA200bの使用率が反比例になるように記憶していればよい。
【0072】
制御部107は、比較部106より入力された参照信号の振幅とエコー信号の振幅との大小関係を基に記憶しているエコー信号の振幅の大きさの段階に対応するゲインが記載されたテーブルを参照し、増幅部102に配置されたLNA200aのゲインを選択し、該ゲインにLNA200aのゲインを設定する。さらに、制御部107は、予め決められている値分だけ上の段階に対応するゲイン(本実施形態では1段階上のゲイン)をLNA200bに設定する。具体的には、R2<Eの場合には、制御部107は、LNA200aを21dBのゲインに設定し、LNA200bを18dBのゲインに設定する。また、R1<E≦R2の場合には、制御部107は、LNA200aを18dBのゲインに、LNA200bを21dBのゲインに設定する。さらに、それ以上のゲインが存在しないゲインをLNA200aに設定した場合には、LNA200bにはゲインの割り当てを行わない、又はLNA200bにも同じ値のゲインを割り当てる。例えば、E≦R1の場合には、LNA200aを21dBに設定し、LNA200bにはゲインの設定を行わない。ここで、本実施形態におけるLNA200aが本発明における「第1増幅器」にあたり、LNA200bが本発明における「他の増幅器」にあたる。
【0073】
上述した制御部107によるゲインの設定は、第1の実施形態と同様に、検査が開始された1番目のフレームにおける画像生成で使用されたエコー信号を用いてゲインの調整を行い、2番目以降のフレームに対してその調整されたゲインを用いて画像生成が行われる。この場合、1番目のフレームにおいては予め決められたゲインを用いてエコー信号の増幅を行う。また、制御部107は、対象部位やモードの変更が入力された後の1番目のフレームにおける画像生成で使用されたエコー信号を用いてゲインの調整を行い、2番目以降のフレームに対してその調整されたゲインを用いて画像生成が行われる。そして、ゲインの調整を行った場合には、次のゲインの調整を行うタイミング、すなわち、対象部位やモードの変更が入力されるまでは、LNA200a及びLNA200bのゲインは固定され、変更は行われない。
【0074】
そして、制御部107は、振動子011から増幅部102にエコー信号が入力されてからt時間はLNA200aを使用するよう制御する。そして、制御部107は、t時間経過後、記憶している切替時間に対応したそれぞれの出力の使用率になるように乗算器401及び乗算器402を制御する。
【0075】
さらに、制御部107は、設定したゲインに基づいてTGC103が使用する時間経過とゲインとの対応関数を決定し、該決定した対応関数を使用する制御命令をTGC103に出力する。
【0076】
増幅部102は、制御部107から制御信号の入力を受けて、LNA200a及びLNA200bのゲインが設定される。
【0077】
増幅部102は、超音波プローブ001に配置された各振動子011のそれぞれに接続されたLNA200(本実施形態ではLNA200a及びLNA200b)で対応する振動子011からのエコー信号の入力を受ける。
【0078】
さらに、制御部107の制御信号に基づいて、エコー信号の入力が開始されてからt秒までは、乗算器401によりLNA200aからの出力に1が乗算され、乗算器402によりLNA200bからの出力に0が乗算される、加算器403においてそれらが加算されてTGC103へ出力される。すなわち、t秒まではLNA200aの信号のみが使用される。次に、t秒後から切替完了まで、制御部107の制御信号に基づいて、乗算器401によりLNA200aからの出力に対し1から0に徐々に減少する様に変化させた値が乗算され、乗算器402によりLNA200bからの出力に対し0から1に徐々に増加するように変化させた値が乗算される。そして、加算器403においてそれらが加算されてTGC103へ出力される。さらに、切替完了後、制御部107の制御信号に基づいて、乗算器401によりLNA200aからの出力に0が乗算され、乗算器402によりLNA200bからの出力に1が乗算される。そして、加算器403においてそれらが加算されてTGC103へ出力される。すなわち切替完了後は、LNA200bの信号のみが使用される。
【0079】
TGC103は、制御部107から入力された制御命令に基づいて、経過時間とゲインとの対応関数を選択し、該対応関数に基づいて増幅部102から入力されたエコー信号を増幅する。そして、TGC103は、増幅したエコー信号をA/D変換部104へ出力する。
【0080】
ここで、本実施形態では、制御部107によって切替時間内でそれぞれのLNA200の使用率を変更していき、徐々に変位させていく構成を採ったが、使用率の滑らかな変更による信号の加算を行わずに、いずれかのLNA200の出力のみを使用する構成でもよい。この場合には、乗算器401及び乗算器402は0か1をそれぞれの入力信号に掛けるよう制御される。
【0081】
以上で説明したように、本実施形態に係る超音波診断装置では、エコー信号が入力される時間経過に合わせてLNAを切り替えることによりゲインを変更することができる構成である。言い換えれば、深い場所で反射したエコー信号は浅い場所で反射したエコー信号よりも遅く受信されるため、超音波が反射した深度に合わせてゲインを調整することができる構成である。これにより、増幅部において振幅の小さい部分の信号(すなわち深い場所からのエコー信号)の増幅率を大きくすることができるため、S/Nをより向上させることが可能となる。
【0082】
さらに、より多くのLNAを振動子に配置すれば、より細かく時間経過に対応したゲインの調整が増幅部において可能になるため、TGCを設けずとも受信したエコー信号の全範囲にわたって深度に合わせた信号の増幅を行うことが可能となる。
【0083】
〔第3の実施形態〕
以下、この発明の第3の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置は、LNAのゲインを操作者が指定することができるようにしたことが第1及び第2の実施形態と異なるものである。これは、操作者によっては、LNA飽和などを犠牲にしても自分の好みのゲインを使用したい場合があるので、そのような状況に対応するためである。そこで以下では、操作者によるLNAのゲインの指定ついて主に説明する。本実施形態に係る超音波診断装置のブロック図も図1で表わされる。以下の説明では、第1の実施形態と同一の符号を付された機能部は特に説明のない限り同じ機能を有するものとする。図5は、本実施形態に係るゲインの設定を行うための入力画面の一例の図である。
【0084】
操作者は、予め増幅部102に設けられたLNA200に設定するゲインを指定し入力する。具体的には、ユーザインタフェース005に配置された表示部006に図5に示す入力画面が表示される。そして、操作者はマウスなどの入力部007を用いてポインタなどで、図5の入力画面に表示された、検査する対象部位である診断部位、検査モード、及び使用する周波数を指定することで入力する。それと同時に、操作者は、図5に示されたゲイン500のうちで、LNA200に設定しようとするゲインの値をポインタなどで指定し入力する。この入力のタイミングとしては、検査開始直後、撮像モードを変更する時、検査の対象部位を変更する時に図5に示す入力画面が表示され、上述した入力が行われる。
【0085】
制御部107は、入力されたLNA200のゲインの値を受けて、該ゲインをLNA200に設定する。ただし、第2の実施形態のゲイン設定と同様のゲイン設定の場合には、制御部107は、振動子011に接続された複数のLNA200のうちの特定のLNA200に対し入力されたゲインを設定し、その他のLNA200に対して予め決められている値に応じてゲイン設定を行う。そして、操作者によりLNA200のゲインの入力が行われた場合には、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の制御部107はゲイン設定の制御を行わない。
【0086】
これに対し、操作者によるLNA200の入力が行われない場合には、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様のゲイン設定が行われる。
【0087】
以上で説明したように、本実施形態に係る超音波診断装置は、操作者によりLNAのゲイン指定を優先して行うことができる構成である。これにより、特定の対象部位や撮像モードにおいて操作者が好むLNAのゲイン設定がある場合には、その値を優先して設定することが可能となり、操作者毎により適切な超音波画像の提供を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0088】
001 超音波プローブ
002 信号処理部
003 画像処理部
004 表示制御部
005 ユーザインタフェース
006 表示部
007 入力部
008 統括制御部
011 振動子
100 送受信部
101 送信回路
102 増幅部
103 TGC
104 A/D変換部
105 参照信号発生部
106 比較部
107 制御部
200 LNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動子を有する超音波プローブを介して被検体に向けて超音波を送信し、該被検体で反射した超音波エコーに基づくエコー信号を受信する送受信手段と、
前記エコー信号に対数圧縮及び包絡線検波等を行う信号処理手段と、
前記信号処理を施されたエコー信号に座標変換などの画像処理を行い画像データを生成する画像処理手段と、
前記画像データを基に表示手段に超音波画像を表示させる表示制御手段と、
を備えた超音波診断装置であって、
前記送受信手段は、
各前記振動子に接続され前記受信したエコー信号を設定された増幅率で増幅する第1増幅器を有する増幅手段と、
振幅が異なる複数種類の参照信号を発生する参照信号発生手段と、
前記受信したエコー信号の振幅と前記参照信号とを比較し、前記参照信号の振幅に対応して前記受信したエコー信号の振幅の大きさを複数段階に分けて判断する比較判断手段と、
前記段階に応じ前記エコー信号の振幅が大きくなる前記段階ほど小さい前記増幅率となるように、前記複数段階と前記増幅率との対応を予め記憶しており、前記比較判断手段により判断された前記振幅の大きさの段階に対応する前記増幅率を選択し、前記第1増幅器の増幅率を前記選択した増幅率に設定する制御手段と、
前記増幅されたエコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換手段と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記送受信手段は、超音波の送受信を1つの画像を生成するために必要なデータを取得する単位であるフレーム毎に超音波の送受信を行っており、
前記制御手段は、特定の前記フレームにおいて受信した前記エコー信号の振幅の大きさに基づいて行った増幅率の設定を用いて、次の前記フレームにおけるエコー信号の増幅を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記増幅手段は、一つの前記振動子からのエコー信号を増幅する前記第1増幅器と並列に配置された他の増幅器を複数有し、
前記制御手段は、前記他の増幅器の増幅率を、前記第1増幅器の前記設定された増幅率より大きく、且つそれぞれが異なるように設定し、時間経過に応じて前記第1増幅器から順次前記増幅率が大きい前記他の増幅器に切り替えて前記受信したエコー信号を増幅するよう前記増幅手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1増幅器及び前記他の増幅器における切り替えのときに、切り替え前の前記第1増幅器又は前記他の増幅器からの出力と切り替え後の前記他の増幅器の出力との使用比率を、前記切り替え後の前記他の増幅器の出力が徐々に大きな割合になるように、前記切り替え前の前記第1増幅器又は前記他の増幅器からの出力と前記切り替え後の前記他の増幅器の出力とを加算することで、前記受信したエコー信号を増幅した出力とし、前記出力の使用が前記切り替え後の前記他の増幅器の出力のみとなった時に前記切り替えを完了する、ことを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記送受信手段は、受信時間の経過とともに前記増幅率を増加させるゲイン補正手段を前記増幅手段と前記A/D変換手段との間にさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
超音波を被検体に送信する段階と、
前記被検体で反射した前記超音波を受信しエコー信号に変換する段階と、
前記受信したエコー信号の振幅と前記参照信号を比較し、前記参照信号の振幅に対応して前記受信したエコー信号の振幅の大きさを複数段階に分けて判断する比較判断段階と、
予め記憶している、前記段階に応じ前記エコー信号の振幅が大きくなる前記段階ほど小さい前記増幅率となるような、前記複数段階と前記増幅率との対応に基づいて、前記比較判断手段により判断された前記振幅の大きさの段階に対応する前記増幅率を選択する増幅率選択段階と、
前記受信したエコー信号の増幅率を前記選択した増幅率に設定する制御段階と、
前記受信したエコー信号を前記設定した増幅率で増幅する増幅段階と、
前記増幅されたエコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換段階と、
前記ディジタル信号に変換された前記エコー信号に対し対数圧縮及び包絡線検波等を行う信号処理段階と、
前記信号処理を施された前記エコー信号に座標変換などの画像処理を行い画像データを生成する画像処理段階と、
前記画像データを基に表示部に超音波画像を表示させる画像表示段階と、
を有することを特徴とする超音波診断装置制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−201110(P2010−201110A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53124(P2009−53124)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】