説明

超音波診断装置

【課題】超音波診断装置において、ルーチン検査を構成する各工程を実行する場合において、ユーザーの負担を軽減し、また検査時間を短縮する。
【解決手段】S103においてそれが自動最適化工程であるか否かが判断され、自動最適化工程であればS104において自動最適化工程が実行される。そうでなければS105においてマニュアル設定受付処理が実行される。自動最適化工程S104においては、複数のパラメータのそれぞれを注目パラメータとしつつ、注目パラメータの値を試行的に変化させながら、現画像と参照画像との間において相関値を演算することにより、注目パラメータの値が最適化される。すべてのパラメータについての最適化或いはマニュアル設定が完了した段階で、自動的なフリーズ処理が実行され、これにより静止画像又は動画像が保存される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に関し、特に、検査ルーチンを構成する各工程において必要なパラメータ設定を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
病院における様々な診療科目において、超音波診断装置が利用されている。例えば、心臓の超音波検査においては、超音波診断装置に対する初期設定あるいは初期登録の後、短軸断層像の観察、長軸断層像の観察、ドプラ波形の観測、血流画像(カラーフローマッピング画像あるいはカラードプラ画像)の観測、といった複数の工程が順番に実行される。一般に、検査種別ごとに定型的なルーチン(検査フロー)が決まっており、検査技師や検査医師は検査ルーチンに従って順番に複数の工程を順番に遂行している。各工程では、従来、画質が最良になるようにゲイン、コントラスト、レンジ(観察深度)、フォーカス深度等のパラメータがマニュアルで調整される(通常、プリセットされたパラメータ値が手動で調整される)。また、画像を記録する場合にはフリーズボタンがマニュアル操作され、その際の表示画像がユーザーの指示に基づいて保存等され、必要な場合にはシネメモリ上の動画像がユーザーの指示に基づいて保存等される。
【0003】
以上のような定型的なルーチン検査において、各工程では、画像が最適化されるように、検査者によって操作パネル上の多くのつまみやスイッチが操作される。特に熟練していない検査者の場合には操作時の負担が大きい。そのような負担を軽減し、全体としての検査時間を短縮化したいとの強い要請がある。一方、検査者はプローブの当接状態の視認や被検者の表情を含めた全体に対して気配りをすることが必要であり、特に画像を注視することが最も大切な事項であるから、視線を操作パネルへ頻繁に移動させないで一連のルーチン検査を進行させることが求められている。更に、被検者の負担軽減の観点から見ても検査時間の短縮化が要請される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−325345号公報
【特許文献2】特開2004−290404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、動作シーケンス(動作フロー)を予め登録しておき、特定の1つのスイッチ手段を操作する毎に、登録された動作シーケンスに従って各検査工程が順次実行される超音波診断装置が開示されている。しかし、各工程において画質の調整は自動化されていないようであり、つまり特許文献1に記載された方法では各検査工程において従来必要であった多数の操作が相変わらず必要になるものと推認される。特許文献2には、基準画像とリアルタイム画像とを並べて表示する超音波診断装置が記載されている。その場合には、基準画像と個々のリアルタイム画像との間における相関係数が演算され、相関係数が最も高いリアルタイム画像が表示されている。しかし、リアルタイム画像の内容を基準画像の内容に近付けるために、両画像を比較してゲイン等の動作パラメータを自動的に決定することまでは行われていない。
【0006】
本発明の目的は、検査者の操作負担を軽減することにある。あるいは、本発明の目的は、検査時間を短縮化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つのパラメータ自動最適化工程を含む複数の工程からなるルーチン検査で用いられる超音波診断装置において、検査者により入力された次工程実行命令を順次受け付けながら前記ルーチン検査を進行させる制御部と、前記パラメータ自動最適化工程に対応付けて、過去に取得された画像を参照画像として格納しておく参照画像記憶部と、を含み、前記制御部は、前記パラメータ自動最適化工程において、超音波の送受波により形成された現画像と当該パラメータ自動最適化工程に対応付けられた参照画像との比較により、前記現画像の生成に関係する少なくとも1つの自動最適化対象パラメータを最適化する最適化部と、前記パラメータ自動最適化工程において、前記自動最適化対象パラメータを含むパラメータ群についての設定完了後に生成された現画像の保存処理を実行する保存処理部と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、超音波診断装置を用いたルーチン検査において、ルーチン検査には少なくとも1つのパラメータ自動最適化工程が含まれ、当該工程においては、現画像と参照画像との比較により自動最適化対象パラメータが最適化される。すなわち、当該パラメータに与えられる値が自動的に最適化される。最適化は一定条件を満たす値の探索及び判定を意味する。そのようなパラメータ最適化に当たってユーザーは格別のパネル操作が求められないので、ユーザーの負担を軽減でき、また検査時間を短縮できる。しかも、パラメータ群の設定が完了した段階で現画像の保存処理に自動的に移行することができるから、その面においてもユーザーの負担を軽減でき、また検査時間を短縮できる。望ましくは、自動最適化対象パラメータに対して仮設定を繰り返しながらそれを反映して生成される現画像を参照画像と比較することにより、両画像の類似度に基づいて、例えば相関値に基づいて、最適値が探索される。複数の自動最適化対象パラーメータがある場合には、逐次的にあるいは同時に最適化を行うことが可能である。上記構成によれば、ユーザーは、基本的に見て、次工程実行命令を与えるボタンをオンにするだけで各工程を進行させることができるから、ルーチン検査全体としてかなり検査時間を短縮できる。そのようなボタン以外に、キャンセル(あるいは1つ前に戻る)ボタン、終了ボタン等の少数の基本ボタンを用意しておくのが望ましい。参照画像は過去に取得された最良と判断される画像であるのが望ましい。それをルーチン検査ごとに更新するようにしてもよい。被検者ごとに参照画像を異ならせてもよい。
【0009】
望ましくは、前記複数の工程には複数のパラメータ自動最適化工程が含まれ、前記参照画像記憶部には前記複数のパラメータ自動最適化工程に対応付けられた複数の参照画像が記憶され、前記各パラメータ自動最適化工程では、前記現画像の生成に関係する複数の自動最適化対象パラメータが最適化される。
【0010】
望ましくは、前記各パラメータ自動最適化工程では、当該工程において設定すべきパラメータ群の中で、検査者により値が入力されたパラメータについては入力値が優先的に設定されて自動最適化の対象から除外される。この構成によれば、自動処理を原則としつつもユーザーの意思や希望を尊重することができる。ユーザー設定対象となるパラメータについては事前にそれを登録しておいてもよいし、ユーザーの割り込み処理があったパラメータを自動最適化対象から除外するようにしてもよい。
【0011】
望ましくは、前記パラメータ群を構成する各パラメータについて当該パラメータが自動最適化対象パラメータであるか否かを管理するパラメータテーブルが設けられ、前記最適化部は、前記パラメータテーブルを参照することにより前記パラメータ群の中から自動最適化対象パラメータを特定する。
【0012】
望ましくは、前記保存処理部は、前記パラメータ群の全部が定まった時点でフリーズを判定する手段と、前記フリーズが判定された場合に前記現画像を記憶媒体に保存する手段と、を含む。望ましくは、前記フリーズが判定された時点での現画像が画面上に静止画像として表示され、当該現画像に対するユーザーの確認操作があった場合に当該現画像が保存される。フリーズの判定は、画像の取り込み命令あるいは保存命令の判断に相当し、シネメモリや画像メモリの内容がそのまま凍結されてもよい。画面上にフリーズ時点の現画像が静止画像として表示されてもよい。フリーズ時点で送受信が停止されるように構成するのが望ましい。フリーズタイミングは、現画像と参照画像との間の類似度が最良となった時点であってもよいし、そのような基準時以降であって他の条件が満たされた時点であってもよい。保存処理においてはフリーズ対象となった静止画像が保存されてもよいし、その時点までに格納されている動画像が保存されてもよい。画像保存の有無、保存画像の種別(静止画像、動画像)等を登録しておいて、それに従って処理を進行するようにするのが望ましい。
【0013】
望ましくは、前記制御部は、前記ルーチン検査を構成する複数の工程を管理するための管理テーブルを参照することにより当該ルーチン検査を進行させ、前記管理テーブルにおいては前記各工程ごとに自動的なフリーズにより画像を保存するか否かを示すフラグが登録される。
【0014】
望ましくは、前記最適化部は、前記自動最適化対象パラメータに対する仮設定を繰り返し行いながら、前記現画像と前記参照画像との相関値を繰り返し演算し、それらの演算結果に基づいて当該自動最適化対象パラメータの本設定を行う。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば検査者の操作負担を軽減できる。あるいは、検査時間を短縮化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【図2】操作パネルのレイアウトを示す模式図である。
【図3】図1に示したルーチン検査制御部の具体的な構成例を示す図である。
【図4】図3に示したステート管理テーブルの具体例を示す図である。
【図5】図3に示したパラメータテーブルの具体例を示す図である。
【図6】図1に示したルーチン検査制御部が実行する基本プロセスを示すフローチャートである。
【図7】図6に示した自動最適化工程の具体的内容を示すフローチャートである。
【図8】参照画像の輝度分布と現画像の輝度分布を示す図である。
【図9】二値化処理後の2つの輝度分布を示す図である。
【図10】レンジ変更による輝度分布のシフトを説明するための図である。
【図11】参照画像のヒストグラムと現画像のヒストグラムを示す図である。
【図12】ゲイン可変によるヒストグラムの変更を示す図である。
【図13】参照画像のヒストグラムと現画像のヒストグラムを示す図である。
【図14】コントラスト調整によるヒストグラムの変更を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。この超音波診断装置は医療の分野において用いられ、超音波の送受波により生体の超音波画像を形成する装置である。
【0019】
図1において、プローブ10は、体表面上に当接して用いられ、超音波の送受波を行う超音波探蝕子である。プローブ10は複数の振動素子からなる1Dアレイ振動子を有している。1Dアレイ振動子により超音波ビームが形成され、その超音波ビームは電子的に走査される。電子走査方式としては電子リニア走査、電子セクタ走査等が知られている。プローブ10に対して2Dアレイ振動子を設け、三次元データ取り込み領域を構築するようにしてもよい。
【0020】
送受信部12は送信ビームフォーマ及び受信ビームフォーマとして機能する。送信時において、送受信部12から1Dアレイ振動子へ複数の送信信号が並列的に供給される。これにより1Dアレイ振動子において送信ビームが形成される。生体内からの反射波は1Dアレイ振動子にて受波され、1Dアレイ振動子から複数の受信信号が並列的に送受信部12へ出力される。送受信部12においては、そのような受信時において、複数の受信信号に対して整相加算処理を実行し、整相加算後の受信信号すなわちビームデータを出力する。
【0021】
信号処理部14はビームデータに対する処理を実行するモジュールであり、具体的には、信号処理部14は検波処理、対数圧縮処理、ノイズ除去処理等の各種の信号処理を実行する。信号処理部14から出力されるビームデータは画像形成部16に送られる。なお、そのビームデータがシネメモリ15に格納されてもよい。シネメモリ15は動画像を保存する容量をもったリングバッファとして構成されるものである。画像形成部16の後段にシネメモリ15を設けることも可能である。
【0022】
画像形成部16は本実施形態においてデジタルスキャンコンバータ(DSC)により構成され、画像形成部16において複数のビームデータに基づいて超音波画像が構成される。その超音波画像には、Bモード画像、Mモード画像、二次元血流画像、カラードプラ画像(カラーフローマッピング画像)等が含まれる。選択された動作モードに応じて、超音波の送受信が実行され、その結果として当該モードに対応する超音波画像が構成される。表示処理部18は、画像合成機能等を有し、画像形成部16から出力された画像データに対して所定の処理を施し、当該画像データを表示部20に出力する。表示部20においては超音波画像が表示される。本実施形態においては、画像形成部16から出力される画像データが制御部22、具体的には制御部22が有するルーチン検査制御部24、へ送られている。
【0023】
制御部22は、図1に示される各構成の動作制御を行っており、制御部22はCPU及び動作プログラムによって構成される。制御部22は、図示されるようにルーチン検査制御部24として機能しており、ここでルーチン検査制御部24は、例えば心臓のルーチン検査において動作し、ルーチン検査を構成する複数の工程を順番に実行する際における各種制御を行っている。特に、本実施形態においてはユーザーの負担を軽減し、或いは検査時間を短縮化するため、各工程の内容ができる限り自動的に処理されるように制御されている。これについては後に詳述する。
【0024】
操作パネル26は制御部22に接続されている。操作パネル26は後に示すようにトラックボール、キーボード、各種のスイッチ等を備えている。ルーチン検査の制御においては、操作パネル内におけるいくつかのスイッチが、図示されるようにエンターボタン28、キャンセルボタン30、フリーズボタン32及び終了ボタン34として機能する。ここにおいて、エンターボタン28としてユニバーサルボタンのひとつを割り当てるようにしてもよいし、キャンセルボタン30についてもユニバーサルボタンのひとつを割り当てるようにしてもよい。フリーズボタン32として既存のフリーズボタンをそのまま利用してもよい。終了ボタン34についても同様である。後に説明するように、操作パネル26に含まれるサブディスプレイにいずれかのボタンを表示するようにしてもよい。サブディスプレイはタッチパネルとして構成されるものである。
【0025】
図2には、操作パネル26の上面図が模式的に示されている。操作パネルはその中央部にトラックボールを有し、その他に各種のボタンやスイッチを具備している。それらにはモード選択ボタン、ゲインボタン等が含まれる。符号28はエンターボタンを示しており、符号30はキャンセルボタンを示している。エンターボタン28は次工程実行命令を入力する際にユーザーにより押圧操作されるボタンである。ルーチン検査の実行にあたっては、基本的に各ステップの実行にあたりこのエンターボタン28が操作される。すなわち、そのようなエンターボタン28の操作だけで各ステップが自動的に実行されるように、図1に示したルーチン検査制御部が制御を行っている。
【0026】
キャンセルボタン30は現状の状態をキャンセルする命令を入力する際に操作され、このキャンセルボタン30はひとつ前に戻るボタンとして機能してもよい。フリーズボタン32は、通常の動作において、フリーズ状態にするためのボタンであるが、本実施形態においてはルーチン検査の実行にあたってもユーザーにより割り込みでフリーズ入力を行う場合に、このフリーズボタン32は操作される。終了ボタン34は、本実施形態においてサブディスプレイ36上にアイコンとして構成されている。すなわちサブディスプレイ36はメニュー画面や各種のアイコンを表示するタッチスクリーンパネルとして構成されており、そこに終了ボタン34がボタンの形で仮想的に表示される。ユーザーはその終了ボタン34に触れることにより、現状のルーチンを強制的に終了させること等が可能となる。
【0027】
このように定められたいくつかのボタン、本実施形態においては4つのボタン28,30,32,34を操作するだけで基本的に各工程を実行させることが可能であり、このような制御によればユーザーの負担を大幅に軽減でき、ルーチン検査全体の検査時間を短縮化できるから、被検者の負担も軽減できるという利点が得られる。
【0028】
図3には、図1に示したルーチン検査制御部24の構成例がブロック図として示されている。各ブロックはソフトウェアの機能として構成されてもよい。ステート管理テーブル36は、後に説明するようにルーチン検査を構成する複数の工程に関する各種の情報が登録されたテーブルとして構成されている。ステートコントローラ38は、ステート管理テーブル36を参照することにより各ステートすなわち各工程における動作モードや画像保存の必要性等を判断する。すなわち、ステートコントローラ38はルーチン検査における各工程の動作制御を行うものである。ステートコントローラ38は、本実施形態において特にパラメータ仮設定部及びパラメータ本設定部として機能する。それらの機能については後に詳述する。パラメータテーブル群40は複数のパラメータテーブル42により構成されている。すなわち、本実施形態においては、各工程毎に1つのパラメータテーブル42が用意されており、当該工程において必要なパラメータがそこで管理されている。その具体例については後に図5を用いて説明する。パラメータテーブル42上におけるパラメータに与える値は本実施形態において自動的に設定されており、すなわち自動的に最適化されており、また必要に応じてユーザーにより指定することが可能である。現在選択されている工程において、パラメータテーブル42における仮設定されたパラメータ値を用いて超音波の送受信が行われ、その結果形成される超音波画像が現画像メモリ44へ格納される。その一方、予め登録されている超音波画像が参照画像メモリ46に格納されている。参照画像メモリ46上の参照画像は理想的な画像であり、本実施形態においては、そのような参照画像に現状の超音波画像つまり現画像ができる限り近づくようにパラメータテーブル42内における各パラメータの値が試行的に変更される。
【0029】
相関値演算部48は、現画像と参照画像との間において相関演算を実行し、その結果としての相関値を出力する。類似度判定部50は、相関値に基づいて2つの画像間における類似度を判断する。その場合においては、各画素の値を構成するR値、G値及びB値のそれぞれについて求められた相関値に基づいて2つの画像の類似度が判定されてもよい。類似度の判定については各種の方法を採用することが可能である。類似度判定部50から出力される類似度を表す情報はステートコントローラ38に出力される。
【0030】
ステートコントローラ38は、パラメータテーブル内における各パラメータを順番に注目パラメータとし、注目パラメータについて与える値を順次変更しながら類似度を参照することにより、当該注目パラメータについての最適化を行う。そして、ある注目パラメータについての最適化が完了した後においては、次の注目パラメータについてその値を試行的に変更しながら類似度を参照することにより、当該次の注目パラメータについての最適化を行う。これを繰り返すことにより、現在選択されている工程において設定すべき複数のパラメータについて値を定めることが可能である。もちろん、一旦最適化が行われたパラメータについて他の1または複数のパラメータについての最適化が行われた後に再度最適化処理を適用するようにしてもよい。あるいは複数のパラメータについての最適化を順番に行っていく過程において、途中で類似度が所定値以上となった場合には、その段階で最適化処理を終了するようにしてもよい。すなわちパラメータ単位での個別的な評価とパラメータ群全体としての総合的な評価とを行いながら各工程において必要なパラメータ設定を自動的に進行させるのが望ましい。
【0031】
図4には、ステート管理テーブルの例が示されている。ここにおいて、ステート番号は各工程の識別子として機能する。但し、ステート番号1は初期入力工程を示し、ステート番号の最終値すなわちnは終了段階を示している。それ以外のステート番号2〜n−1までの各工程については、当該工程で実行される動作モードが指定されており、また当該工程において利用する参照画像の所在が登録されている。また当該工程において設定すべき複数のパラメータについてのパラメータ名が登録されている。さらに当該工程において複数のパラメータの全部が設定された後に自動的なフリーズによって画像を保存するか否かについてのオンまたはオフを表すフラグが登録されている。もちろん他の情報が合わせて登録されるようにしてもよい。
【0032】
動作モードの例としては、Bモード、Mモード、カラードプラモード等を挙げることができる。但し、ここにおいてステート番号2及びステート番号3で示すように、同じBモードであっても、心臓の短軸断層像を表示する場合と、心臓の長軸断層像を表示する場合とでは別のステート番号が付与されている。同じくステート番号4もBモードが指定されているが、当該BモードはMモードの実行に先立って実行されるBモードであり、すなわちMモードを表示させるラインをMカーソルとして指定する場合に実行されるBモードを表している。それらの動作モードにおいては、パラメータとして、ゲイン、コントラスト、レンジ(診断距離)、フォーカス(送信フォーカス点の深さ)等を設定する必要がある。本実施形態においてはそのようなパラメータの中において自動的設定が可能なパラメータが自動最適化対象パラメータとして管理されており、これについて以下に詳述する。
【0033】
図5には、パラメータテーブル群40が示されている。上述したようにパラメータテーブル群40は複数の工程に対応した複数のパラメータテーブル42により構成されている。図5に例示されるパラメータテーブル42においては、パラメータ名毎に設定種別及び値が登録されている。設定種別としては、AUTO又はMANUALのいずれかが定められ、前者は自動最適化処理の対象であることを示し、後者はユーザーによるマニュアル設定対象であることを示している。値はパラメータに代入される数値を表している。各パラメータを注目パラメータとしつつ個々の注目パラメータについての値を最適化する際においては、一番最初には各パラメータの値として初期値が与えられており、各注目パラメータについて値を順次変更させながら上述した類似度判定を行うことにより、注目パラメータ毎に値が最適化される。ちなみに、本実施形態においては、複数の工程に対応した複数のパラメータテーブルが用意されていたが、一部のパラメータについては共通テーブルを構成してもよいし、或いは検査ルーチン全体として一つのパラメータテーブルを構成してもよい。
【0034】
次に、図1に示したルーチン検査制御部の動作例を図6及び図7を用いて説明する。図6には基本プロセスが示されており、図7には図6に示すS104の工程の具体的な内容が例示されている。
【0035】
図6において、S101においては、ステート管理テーブルに設定された内容に従って、ステート番号1に対応する初期入力工程が実行される。ここにおいては、例えば被検者のID等が入力される。S102においては、操作パネル上に設定されたエンターボタンが入力されたか否かが判断される。当該エンターボタンの入力があった場合には、S103において、現在選択されている工程が自動最適化工程であるか否かが判断される。ここで、当該工程において自動最適化対象パラメータが1つでも含まれるならば、S104が実行され、そうでなければS105が実行される。S104においては、図7を用いて詳述する自動最適化プロセスが実行される。S105においては、従来同様に、当該工程において設定が必要なパラメータについてのマニュアル設定が受け付けられる。そして所望の設定が完了した後に必要に応じてユーザーによりフリーズ操作が行われ、フリーズされた静止画像或いは動画像を媒体に登録する或いは保存する処理が実行される。S106においては、現在選択された工程が最終工程であるか否かが判断され、最終工程でなければS102からの各工程が繰り返し実行される。但し、S102においてユーザーの入力が求められており、ユーザーは基本的にエンターボタンを順番に押していくだけで各工程を順番に進行させることが可能である。特に、S104において各パラメータについての自動的な最適化及び自動的なフリーズ処理がなされるならば、ユーザーはエンターボタンの入力だけで各工程を進行させることができるという利点が得られる。
【0036】
図7には、図6に示したS104の工程の具体例がフローチャートとして示されている。S201においては、現在選択されている工程に対応するパラメータテーブルが参照される。そして、注目パラメータが選択される。注目パラメータは自動最適化対象となるパラメータを意味する。S202においては、パラメータテーブル上における設定種別が参照され、注目パラメータが自動最適化対象となっているか否かが判断される。自動最適化の対象でなければ、すなわちマニュアル設定対象であれば、S203において当該注目パラメータについてのマニュアル設定が受け付けられる。そして当該注目パラメータについて入力値が確定される。S204では、注目パラメータが次のパラメータに変更される。但し、マニュアル設定対象となっているパラメータあるいはすでに確定しているパラメータについては最適化対象から除外される。
【0037】
S202において、自動最適化対象パラメータであると判断された場合、S205において、現状の超音波画像すなわち現画像と、登録されている参照画像との間において、相関値が演算される。現画像は現状において仮設定されている内容を有するパラメータテーブルに基づいて生成された画像である。相関値は上述したように画像間の類似度を表すものである。S206においては、ユーザー入力があったか否かが判断される。すなわちユーザーによって割り込み処理が発生した場合には、それに応じた処理を実行するためにS206が設けられている。
【0038】
S207においては、相関値に基づいて類似しているか否かが判断される。具体的には、相関値或いは類似度が所定値以上の場合において両画像が類似していると判断される。類似と判断されなかった場合、S208において、注目パラメータについての最適化がなされたか否かが判断される。この場合においても、2つの画像間における相関値が演算されてもよいし、画像ではなく他の情報についての相関値が演算されてもよい。注目パラメータ単位での最適化の達成の判断にあたっては各種の手法を利用することができる。注目パラメータについての最適化が完了したと判断された場合、上述したS204の工程が実行され、その一方、最適化が完了していないと判断されたには、S209が実行される。S209において、注目パラメータについての値が変更される。そしてS205以降の工程が繰り返し実行される。
【0039】
以上のように、注目パラメータについての値を変更しながら、しかも、注目パラメータの変更も行いながら、現画像の内容を変更していくことにより、最終的に現画像と参照画像との間における類似度が所定の基準を満たし、その結果として両画像が類似であると判断される。これによりS213が実行され、当該工程においては現在選択されているステート番号に対応する工程に対応づけられた画像保存フラグが参照され、それがオンであるかオフであるかが判断される。オンであれば、S214においてフリーズ処理が実行され、具体的には送受信が停止し、各記憶部に格納された画像内容が凍結される。S215においては、画面上に表示された静止画像の内容がユーザーにより確認される。その場合において、キャンセルボタンが入力されたならば本処理が終了し、一方、エンターボタンが入力されたならばS216において当該静止画像の保存処理が実行される。静止画像に換えてシネメモリ上の動画像が保存されるようにしてもよい。
【0040】
一方、S206においてユーザーによる何らかの入力が判断された場合には、S210において、フリーズボタンが操作されたか否かが判断され、当該ボタンが操作された場合にはS214においてフリーズ処理が実行される。すなわちユーザーの明示的なフリーズ入力によるフリーズ処理が実行される。S211において終了ボタンが操作されたと判断された場合には、本処理がそのまま終了する。それ以外の入力すなわち注目パラメータについてのユーザーによる値の設定が行われたと判断された場合には、S212において当該注目パラメータについて入力値がそのまま設定値として確定される。そしてS204以降の工程が繰り返し実行される。
【0041】
そのような繰り返し実行において、ユーザーにより値が直接的に定められたパラメータについてはその設定種別がAUTOからMUNUALに変更される。つまり、自動最適化対象となっているパラメータに限り、その値を繰り返し変更しながら2つの画像が最良になるまでパラメータ値の試行的な設定が繰り返される。S208において最適化の判断がなされたパラメータについても必要に応じて再度注目パラメータとしてより最適値を探索するようにしてもよい。
【0042】
なお、S208における最適化の判定或いはS209における注目パラメータ値の変更にあたっては、後に説明する図8乃至図14に示す手法を利用するようにしてもよい。
【0043】
図8には、現画像における特定ビーム方位上の輝度分布100と、参照画像における特定ビーム方位上の輝度分布102とが示されている。ここで特定のビーム方位は例えば中央ビーム方位である。図8における横軸は深さ方向を表しており、縦軸は輝度の大きさを表している。このような2つの輝度分布100,102に対して、所定の閾値104を用いて二値化処理を行った結果が図9に示されている。ここで符号106は二値化処理後の現画像の輝度分布を表しており、符号108は二値化処理後の参照画像の輝度分布を表している。このような2つの二値化波形106,108が得られた後、図10において符号110で示すようにレンジすなわち診断距離を浅い方へ変更すれば、二値化波形106が横軸方向に沿って伸長し、その結果として二値化波形108に近づくことになる。そのような伸長後の波形が112で示されている。二値化後における2つの波形108,112間における相関値が最大となるようにレンジを定めるならば、レンジを最適化することが可能である。或いは、そのような2つの波形間における相関値を参照することにより当該パラメータについての最適化の有無を判断することが可能である。
【0044】
図11には、現画像についてのヒストグラム114と、参照画像についてのヒストグラム116とが示されている。図11における横軸は輝度値を表しており、縦軸は頻度を表している。ヒストグラムは画像全体から生成されてもよいし、画像内における特定の領域から生成されてもよい。図12における符号118で示すように、ゲインを増加させるならば、現画像のヒストグラム114が横軸方向にシフトし、そのシフト後のヒストグラムが120で示されている。ここで、参照画像のヒストグラム116と現画像のシフト後のヒストグラム120との間において相関値を演算することにより、現状のゲインが最適化されているか否かを判断でき、或いはどの程度値を変更すればゲインを最適化できるのかを判断することが可能である。
【0045】
図13には現画像のヒストグラム122及び参照画像のヒストグラム124が示されている。図14において符号126で示すように、現画像についてコントラストを低減させるならば、現画像のヒストグラム122の幅を広げてすなわち分散値を大きくすることができる。そのコントラスト低減後のヒストグラムが符号128で示されている。現画像のヒストグラム128と参照画像のヒストグラム124との間において相関値を演算することにより両者の一致度すなわちコントラストの最適化度合いを評価することができ、或いは、両者間において相関値が最良となるシフト量を求めることにより、コントラストの最適な変化量を見出すことが可能である。
【0046】
以上説明した実施形態によれば、ステート管理テーブルにおいて各工程すなわち各ステートの内容を登録しておくだけで、パラメータ最適化処理を自動的に実行させることができ、また必要に応じて自動的な画像保存処理を実行させることができ、その結果ユーザーが関与すべき操作回数を大幅に低減して、ユーザーの負担を少なくできるという利点がある。これはルーチン検査時間の短縮化をもたらすものであり、ひいては被検者の負担を軽減できるという利点が得られる。図8に示した閾値104としては固定値であってもよいし、可変値であってもよい。画像を参照することにより適応的に閾値104を定めるようにしてもよい。固定値を採用する場合には例えば最大輝度値の半分の値とすることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
24 ルーチン検査制御部、26 操作パネル、28 エンターボタン、30 キャンセルボタン、32 フリーズボタン、34 終了ボタン、36 ステート管理テーブル、38 ステートコントローラ、40 パラメータテーブル群、42 パラメータテーブル、44 現画像メモリ、46 参照画像メモリ、48 相関値演算部、50 類似度判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのパラメータ自動最適化工程を含む複数の工程からなるルーチン検査で用いられる超音波診断装置において、
検査者により入力された次工程実行命令を順次受け付けながら前記ルーチン検査を進行させる制御部と、
前記パラメータ自動最適化工程に対応付けて、過去に取得された画像を参照画像として格納しておく参照画像記憶部と、
を含み、
前記制御部は、
前記パラメータ自動最適化工程において、超音波の送受波により形成された現画像と当該パラメータ自動最適化工程に対応付けられた参照画像との比較により、前記現画像の生成に関係する少なくとも1つの自動最適化対象パラメータを最適化する最適化部と、
前記パラメータ自動最適化工程において、前記自動最適化対象パラメータを含むパラメータ群についての設定完了後に生成された現画像の保存処理を実行する保存処理部と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記複数の工程には複数のパラメータ自動最適化工程が含まれ、
前記参照画像記憶部には前記複数のパラメータ自動最適化工程に対応付けられた複数の参照画像が記憶され、
前記各パラメータ自動最適化工程では、前記現画像の生成に関係する複数の自動最適化対象パラメータが最適化される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記各パラメータ自動最適化工程では、当該工程において設定すべきパラメータ群の中で、検査者により値が入力されたパラメータについては入力値が優先的に設定されて自動最適化の対象から除外される、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記パラメータ群を構成する各パラメータについて当該パラメータが自動最適化対象パラメータであるか否かを管理するパラメータテーブルが設けられ、
前記最適化部は、前記パラメータテーブルを参照することにより前記パラメータ群の中から自動最適化対象パラメータを特定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置において、
前記保存処理部は、
前記パラメータ群の全部が定まった時点でフリーズを判定する手段と、
前記フリーズが判定された場合に前記現画像を記憶媒体に保存する手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記フリーズが判定された時点での現画像が画面上に静止画像として表示され、当該現画像に対するユーザーの確認操作があった場合に当該現画像が保存される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置において、
前記制御部は、前記ルーチン検査を構成する複数の工程を管理するための管理テーブルを参照することにより当該ルーチン検査を進行させ、
前記管理テーブルにおいては前記各工程ごとに自動的なフリーズにより画像を保存するか否かを示すフラグが登録される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置において、
前記最適化部は、前記自動最適化対象パラメータに対する仮設定を繰り返し行いながら、前記現画像と前記参照画像との相関値を繰り返し演算し、それらの演算結果に基づいて当該自動最適化対象パラメータの本設定を行う、
ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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