説明

超音波診断装置

【課題】乳房超音波検査における診断を効率よく行なうこと。
【解決手段】全体支持部11は、第一プローブ支持部12および第二プローブ支持部13を支持し、第一プローブ支持部12および第二プローブ支持部13それぞれは、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15それぞれを支持する。全体支持部11は、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15が仰向けとなった被検体の乳房に密着された状態で乳頭に対して対称に配置されるように設置され、第一プローブ支持部12および第二プローブ支持部13それぞれは、全体支持部11の2本の滑動用レールに沿って被検体の体軸方向に対して垂直方向に連動してスライドする。これにより、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15は、被検体の乳房に密着した状態で連動してスライドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、乳がんの早期発見を目的とする乳がん健診において、医師による視触診とともに、乳房X線撮影装置や超音波診断装置を用いた乳房の画像診断が行なわれている。
【0003】
乳房X線撮影装置を用いて乳房のX線画像の撮影を行なうマンモグラフィは、腫瘍のみならず、乳がんの初期症状のひとつである微小石灰化を発見することに適した検査方法であるが、乳房X線画像においては、乳腺と腫瘍とのコントラストが微弱である。このため、乳腺組織の密度が高い患者の場合、乳房X線画像において腫瘍と乳腺との区別がつきにくくなってしまい、乳がんの兆候を見逃してしまう可能性がある。特に、日本女性において乳がんの罹患率が高いとされる40歳代では、乳腺組織の密度が高い(乳腺が発達した)患者が多い。
【0004】
一方、超音波診断装置によって得られる断層画像においては、乳腺は白く、腫瘍は黒く映し出されるため、乳腺組織の密度に左右されることなく、画像診断を行なうことができる。従って、特に、乳腺組織の発達している若い年齢層においては、乳房超音波検査法によって画像診断を行なうことが有効とされている。
【0005】
ここで、乳房超音波検査においては、通常、技師が、仰向けとなった被検体の乳房に対して超音波プローブを手動で移動させて走査することで、超音波データを収集して断層画像の撮影が行なわれる。すなわち、技師は、乳房に当てたプローブをずらしながら撮影を行なって断層画像を記録し、医師は、技師により記録された断層画像を読影して診断を行なう。従って、異常部位(腫瘍部位)の撮影が的確に行なわれるか否か、また、集団検診などで大勢の受診者の断層画像の撮影が短時間で効率よく行なわれるか否かなど、乳房超音波検査における検査効率は、技師の技量に大きく依存する。
【0006】
このため、近年、超音波プローブを機械的に走査することで、技師の技能に依存することなく乳房の断層画像を撮影する超音波診断装置の開発が進められている。具体的には、超音波プローブを、仰向けとなった被検体の乳房に接触するように、乳頭を中心に機械的に旋回させることで、超音波データを収集して断層画像を撮影する超音波診断装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−310614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した従来の技術は、乳房超音波検査における診断を効率よく行なうことが困難であるという課題があった。
【0009】
すなわち、上記した従来の技術を用いて、超音波プローブを機械的に回転させて複数の断層画像を撮影した場合、乳房は柔軟な組織であるため、乳房の形状は、撮影ごとに大きく変化してしまう。このため、医師は、撮影ごとに大きく異なる形状となった乳房の断層画像を読影して診断を行なうこととなり、乳房超音波検査における効率のよい診断を行なうことが困難であった。
【0010】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、乳房超音波検査における診断を効率よく行なうことが可能となる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、超音波を送受信する超音波プローブを仰向けとなった被検体の乳房に沿って走査し、当該被検体の乳房の断層画像を撮影する超音波診断装置であって、前記超音波プローブとして第一の超音波プローブおよび第二の超音波プローブを有し、前記被検体の乳房に対して密着した状態で、当該被検体の乳房における所定の対象物に対して対称に配置された前記第一の超音波プローブおよび前記第二の超音波プローブを水平方向に滑動させる滑動機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、乳房超音波検査における診断を効率よく行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る超音波診断装置の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
まず、本実施例における超音波診断装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施例における超音波診断装置の構成を説明するための図である。
【0015】
図1に示すように、本実施例における超音波診断装置1は、超音波走査部10と、装置本体20と、ユーザインタフェース30とから構成される。
【0016】
超音波走査部10は、寝台に仰向けに寝た状態にある被検体の乳房に対して超音波を送信し、当該被検体の乳房からの反射波を受信する超音波プローブを備え、装置本体20に接続される。
【0017】
ここで、本実施例における超音波走査部10は、図1に示すように、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15からなる2つの超音波プローブを有する。
【0018】
なお、本実施例では、超音波プローブとして、複数の超音波振動子が所定方向(走査方向)に1例に配列された1次元超音波プローブを用いる場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、超音波振動子がマトリックス(格子)状に配置された2次元超音波プローブを用いる場合であってもよい。
【0019】
第一プローブ支持部12は、第一超音波プローブ14を支持し、第二プローブ支持部13は、第二超音波プローブ15を支持する。例えば、図2に示すように、第一プローブ支持部12または第二プローブ支持部13は、それぞれの揺動軸を介して、第一超音波プローブ14または第二超音波プローブ15を支持する。これにより、第一超音波プローブ14または第二超音波プローブ15は、揺動軸を中心にして自在に傾斜することが可能となる。なお、図2は、第一プローブ支持部および第二プローブ支持部を説明するための図である。
【0020】
図1に戻って、全体支持部11は、第一プローブ支持部12および第二プローブ支持部13を支持する。例えば、全体支持部11は、図3の(A)に示すように、アルファベットの「H」の形状を有する2つの支柱が2本の滑動用レールによって連結されており、第一プローブ支持部12および第二プローブ支持部13は、これら2本の滑動用レールそれぞれにて支持される。なお、図3は、全体支持部を説明するための図である。
【0021】
そして、全体支持部11は、図3の(B)に示すように、超音波診断装置1を操作する技師により、寝台に仰向けとなった被検体の体軸方向に対して滑動用レールが垂直となるように配置される。なお、第一プローブ支持部12に支持された第一超音波プローブ14と、第二プローブ支持部13に支持された第二超音波プローブ15とは、被検体の乳房における乳頭に対して対称に配置されるように、技師により調整される。ここで、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15それぞれは、図2に示した揺動軸により、被検体の乳房に対して密着するように傾斜する。なお、全体支持部11は、滑動用レールの高さが被検体の乳房の高さに応じて調整可能となるように構成されている場合であってもよい。
【0022】
図1に戻って、ユーザインタフェース30は、入力部31と表示部32とを備え、装置本体20に接続される。
【0023】
入力部31は、ボタン、マウス、キーボードなどを備え、超音波診断装置1を操作する技師からの断層画像の撮影条件、撮影開始要求などを受け付けて入力し、入力された情報は、後述する装置本体20が備える滑動制御部21、送受信制御部22および表示制御部27に転送される。
【0024】
表示部32は、後述する装置本体20が備える表示制御部27の制御に従って、生成された断層画像を表示したり、入力部31によって各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりするためのモニタを備える。
【0025】
装置本体20は、超音波走査部10およびユーザインタフェース30に接続され、入力部31が受け付けた技師からの断層画像の撮影開始要求に基づいて、超音波走査部10および表示部32を制御する装置であり、図1に示すように、滑動制御部21と、送受信制御部22と、送信部23と、受信部24と、信号処理部25と、画像生成部26と、表示制御部27とを備える。
【0026】
送信部23は、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15に電気信号を供給して超音波を発生させる。受信部24は、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15が受信した反射波のデータ(エコー信号)を取得する。ここで、受信部24は、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15それぞれの各超音波振動子から出力される反射信号の増幅、A/D変換および加算を行なう。
【0027】
送受信制御部22は、送信部23および受信部24による超音波の送受信のタイミングを制御するが、これについては、後に詳述する。
【0028】
信号処理部25は、受信部24が取得したエコー信号に対してバンドパスフィルタ処理、検波処理、対数増幅処理、包絡線検波処理などの処理を行なうことで、エコー信号の強度が輝度で表現されるデータを生成する。
【0029】
画像生成部26は、信号処理部25が生成したデータから断層画像(Bモード画像)を生成する。
【0030】
表示制御部27は、画像生成部26が生成した断層画像(Bモード画像)を表示部32のモニタにて表示するように制御する。
【0031】
このように、本実施例における超音波診断装置1は、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15を被検体の乳房に沿って走査し、当該被検体の乳房の断層画像を撮影するが、以下で説明する滑動制御部21および送受信制御部22の処理により、乳房超音波検査における診断を効率よく行なうことが可能となることに主たる特徴がある。
【0032】
この主たる特徴について、図4〜6を用いて説明する。なお、図4は、滑動制御部を説明するための図であり、図5は、滑動機構の一例を説明するための図であり、図6は、送受信制御部を説明するための図である。
【0033】
図3の(B)を用いて説明したように、技師によって全体支持部11が寝台に仰向けとなった被検体の上に配置されることで、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15は、被検体の乳房に対して密着された状態で、被検体の乳房における乳頭に対して対称に配置される。これにより超音波走査部10の設置、すなわち、断層画像の撮影準備が終了する。
【0034】
撮影準備が終了すると、技師は、入力部31を介して断層画像の撮影開始要求を入力し、入力部31は、技師から受け付けた断層画像の撮影開始要求を滑動制御部21に転送する。
【0035】
滑動制御部21は、断層画像の撮影開始要求を受信すると、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15を被検体の乳房に密着した状態で水平方向に滑動させるように、全体支持部11を制御する。
【0036】
具体的には、滑動制御部21は、図4に示すように、全体支持部11が備える2本の滑動用レールそれぞれに沿って第一プローブ支持部12と第二プローブ支持部13とを連動して水平方向にスライドさせるように制御する。これにより、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15は、乳房に対して密着された状態のまま、被検体の体軸に対して垂直方向に連動してスライドする。
【0037】
例えば、図5に示すように、滑動用レールそれぞれは、その両端に2つのモータを有し、これら2つのモータには、ベルトが取り付けられている。そして、滑動制御部21が滑動用レールの両端にある2つのモータを同時に回転させることにより、ベルトの上に設置される第一プローブ支持部12または第二プローブ支持部13は、滑動用レールに沿って連動して水平移動し、その結果、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15も、乳房に対して密着された状態のまま、連動してスライドする。
【0038】
上述した送受信制御部22は、滑動制御部21の制御により第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15が水平移動を開始すると、図6に示すように、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15それぞれにおける超音波の送受信が交互に実行されるように、送信部23および受信部24を制御する。
【0039】
なお、水平移動を開始した第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15それぞれが受信した反射波それぞれから、上述した受信部24、信号処理部25および画像生成部26の処理により断層画像が順次生成され、表示制御部27は、第一超音波プローブ14が受信した反射波に基づく複数の断層画像と、第二超音波プローブ15が受信した反射波に基づく複数の断層画像とを表示部32にて表示するように制御する。また、生成された断層画像は、第一超音波プローブ14が受信した反射波に基づく画像であるのか、第二超音波プローブ15が受信した反射波に基づく画像であるのかを示す付帯情報が付与されたうえで、図示しない装置本体20の記憶部に格納される。
【0040】
上述してきたように、本実施例では、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15は、仰向けとなった被検体の乳房に密着された状態で乳頭に対して対称に配置される。そして、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15は、滑動制御部21の制御により、被検体の乳房に密着した状態で被検体の体軸方向に対して垂直方向に水平移動する。これにより、2つの超音波プローブによって乳房の形を整えながら乳房を走査して複数の断層画像が撮影され、医師は形状が一定した状態での乳房の断層画像を読影することができ、上記した主たる特徴の通り、乳房超音波検査における診断を効率よく行なうことが可能となる。また、乳房全体を2本の超音波プローブによって同時に走査するので、検査時間を半減することができ、乳房超音波検査を短時間で行なうことが可能となる。
【0041】
また、本実施例では、送受信制御部22は、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15それぞれにおける超音波の送受信が交互に実行されるように、送信部23および受信部24を制御するので、超音波の送受信時に第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15の間で干渉が発生することが回避されて断層画像の画質を保証することができ、乳房超音波検査における診断をさらに効率よく行なうことが可能となる。
【0042】
なお、本実施例では、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15が被検体の体軸方向に対して垂直方向に水平移動する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15が被検体の体軸方向に沿って水平移動する場合であってもよい。これについて、図7を用いて説明する。図7は、本実施例における変形例を説明するための図である。
【0043】
具体的には、図7に示すように、全体支持部11を構成する滑動用レールにより支持される第一プローブ支持部12と第二プローブ支持部13との長さを非対称とすることで、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15を被検体の乳房に密着させた状態で、かつ、被検体の乳房における乳頭に対して対称となるように、超音波走査部10を設置することができる。これにより、第一超音波プローブ14および第二超音波プローブ15は、滑動制御部21の制御により、被検体の体軸方向に沿って連動してスライドすることができる。
【0044】
また、超音波プローブの走査により乳房の形状が変化することを回避するのみならば、2つの超音波プローブのうちどちらか一方を、ダミーとする場合であってもよい。例えば、第一超音波プローブ14と同様の形状および重さを有するダミープローブを第二超音波プローブ15とし、ダミープローブと第二プローブ支持部13とが揺動軸を介して連結される場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る超音波診断装置は、超音波を送受信する超音波プローブを仰向けとなった被検体の乳房に沿って走査し、当該被検体の乳房の断層画像を撮影する場合に有用であり、特に、乳房超音波検査における診断を効率よく行なうことに適する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施例における超音波診断装置の構成を説明するための図である。
【図2】第一プローブ支持部および第二プローブ支持部を説明するための図である。
【図3】全体支持部を説明するための図である。
【図4】滑動制御部を説明するための図である。
【図5】滑動機構の一例を説明するための図である。
【図6】送受信制御部を説明するための図である。
【図7】本実施例における変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0047】
1 超音波診断装置
10 超音波走査部
11 全体支持部
12 第一プローブ支持部
13 第二プローブ支持部
14 第一超音波プローブ
15 第二超音波プローブ
20 装置本体
21 滑動制御部
22 送受信制御部
23 送信部
24 受信部
25 信号処理部
26 画像生成部
27 表示制御部
30 ユーザインタフェース
31 入力部
32 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する超音波プローブを仰向けとなった被検体の乳房に沿って走査し、当該被検体の乳房の断層画像を撮影する超音波診断装置であって、
前記超音波プローブとして第一の超音波プローブおよび第二の超音波プローブを有し、
前記被検体の乳房に対して密着した状態で、当該被検体の乳房における所定の対象物に対して対称に配置された前記第一の超音波プローブおよび前記第二の超音波プローブを水平方向に連動して滑動させる滑動機構を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記第一の超音波プローブおよび前記第二の超音波プローブそれぞれにおける超音波の送受信を交互に実行するように制御する送受信制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−99387(P2010−99387A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275347(P2008−275347)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】