超音波診断装置
【課題】連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術において目標位置の選択性を向上させる。
【解決手段】互いに相補関係にあるコードAとコードBが、時分割処理部23を介して交互にPSK変調処理部24へ出力される。PSK変調処理部24は、コードAとコードBを利用して、位相シフトキーイングによるデジタル変調処理を施す。受信ミキサ30は、生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ受信信号に対して復調処理を施す。時分割処理部42,44により、コードAに対応した復調信号とコードBに対応した復調信号が分けられる。そして、合成部52Iは、加算部46A,46Bから得られる信号を加算し、合成部52Qは、加算部48A,48Bから得られる信号を加算する。これにより、目標位置以外からの受信信号が低減されて目標位置の選択性が高められる。
【解決手段】互いに相補関係にあるコードAとコードBが、時分割処理部23を介して交互にPSK変調処理部24へ出力される。PSK変調処理部24は、コードAとコードBを利用して、位相シフトキーイングによるデジタル変調処理を施す。受信ミキサ30は、生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ受信信号に対して復調処理を施す。時分割処理部42,44により、コードAに対応した復調信号とコードBに対応した復調信号が分けられる。そして、合成部52Iは、加算部46A,46Bから得られる信号を加算し、合成部52Qは、加算部48A,48Bから得られる信号を加算する。これにより、目標位置以外からの受信信号が低減されて目標位置の選択性が高められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波である送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流など)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
【0003】
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願の発明者は、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
【0004】
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、本願の発明者は、特許文献2において、FMCWドプラにより選択的に生体内組織の所望の位置からドプラ情報を抽出することができる極めて画期的な技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253949号公報
【特許文献2】特開2008−289851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願発明者は、この画期的な技術の改良についてさらに研究開発を重ねてきた。特に、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術に注目して研究開発を重ねてきた。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術において目標位置の選択性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、互いに相補関係にある2つの周期的な第1信号列と第2信号列に基づいたデジタル変調処理により得られる、第1信号列に対応した連続波の第1送信信号と第2信号列に対応した連続波の第2送信信号とを交互に出力する送信信号処理部と、第1送信信号と第2送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより、第1送信信号に対応した第1受信信号と第2送信信号に対応した第2受信信号を得る超音波送受部と、生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ第1受信信号と第2受信信号に対して復調処理を施すことにより、第1受信信号に対応した第1復調信号と第2受信信号に対応した第2復調信号を得る受信信号処理部と、第1復調信号と第2復調信号に基づいて前記目標位置に対応した生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、を有することを特徴とする。
【0009】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、符号長Nの第1符号列Nを繰り返す第1信号列に基づいてデジタル変調処理された第1送信信号と、符号長Nの第2符号列Nを繰り返す第2信号列に基づいてデジタル変調処理された第2送信信号と、を交互に出力することを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記符号長Nは2の累乗であり、前記第1符合列Nと前記第2符合列Nの各々は、第1符合列N/2と第2符号列N/2に基づいて形成される、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記第1符合列Nは、符号列ANであり、前記第2符合列Nは符号列BNであり、符号列ANは、符号列AN/2と符号列BN/2を直列接続した符号列であり、符号列BNは、符号列AN/2と符号列−BN/2を直列接続した符号列であり、符号列−BN/2は、符号列BN/2の符号の値を反転させた符号列である、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記符号列ANと前記符号列BNの各々は、符号長2の符号列A2=(1,1)と符号列B2=(1,−1)から、前記直列接続を繰り返して形成される、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記第1符合列Nは、符号列ANであり、前記第2符合列Nは符号列BN´であり、符号列ANは、符号列AN/2と符号列BN/2を直列接続した符号列であり、符号列BN´は、符号列BN/2-1と符号列−AN/2-1を直列接続した符号列であり、符号列BN/2は、符号列AN/4と符号列−BN/4を直列接続した符号列であり、符号列BN/2-1は、符号列BN/2の符号の並び反転させた符号列であり、符号列−AN/2-1は、符号列AN/2の符号の値と並びを共に反転させた符号列であり、符号列−BN/4は、符号列BN/4の符号の値を反転させた符号列である、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記符号列ANと前記符号列BN´の各々は、符号長2の符号列A2=(1,1)と符号列B2=(1,−1)から、前記直列接続を繰り返して形成される、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記生体内情報抽出部は、第1復調信号と第2復調信号を合成処理して得られる合成復調信号に基づいて前記目標位置に対応した生体内情報を抽出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術において目標位置の選択性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】コードA8に関する自己相関の計算結果を示す図である。
【図3】コードB8に関する自己相関の計算結果を示す図である。
【図4】コードB8´に関する自己相関の計算結果を示す図である。
【図5】コードAに対応したPSK連続波の位置選択性を説明するための図である。
【図6】コードBに対応したPSK連続波の位置選択性を説明するための図である。
【図7】汎用の位相検波器の特性を示す図である。
【図8】コードAとコードBの時分割処理を説明するための図である。
【図9】コードAに関する平均化を説明するための図である。
【図10】コードBに関する平均化を説明するための図である。
【図11】ドプラ信号の抽出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。送信用振動子10は、生体内へ超音波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は、生体内から得られる超音波の反射波を連続的に受波する。このように、送信と受信がそれぞれ異なる振動子で行われ、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。なお、送信用振動子10は複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が制御されて超音波の送信ビームが形成される。また、受信用振動子12も複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子により得られた信号が処理されて受信ビームが形成される。
【0019】
送信ビームフォーマ(送信BF)14は、送信用振動子10が備える複数の振動素子に対して送信信号を出力する。送信ビームフォーマ14には、PSK変調処理部24から連続波の送信信号が供給され、送信ビームフォーマ14は、その送信信号に対して、各振動素子に応じた遅延処理を施して各振動素子に対応した送信信号を形成する。なお、送信ビームフォーマ14において形成された各振動素子に対応した送信信号に対して、必要に応じて電力増幅処理が施されてもよい。こうして、超音波の送信ビームが形成される。
【0020】
PSK変調処理部24は、搬送波発生部20から得られる搬送波(RF波)に対して、位相シフトキーイング(PSK)によるデジタル変調処理を施すことによりPSK連続波の送信信号を発生する。その位相シフトキーイングにおいて、互いに相補関係にある2つのコード(符号列)が利用される。つまり、コードA発生部22Aが発生するコードAとコードB発生部22Bが発生するコードBが、時分割処理部23を介して交互にPSK変調処理部24へ出力され、互いに相補関係にあるコードAとコードBを利用してPSK変調処理部24が位相シフトキーイングによるデジタル変調処理を施す。PSK変調処理部24により形成される連続波の送信信号については後にさらに詳述する。
【0021】
受信ビームフォーマ(受信BF)16は、受信用振動子12が備える複数の振動素子から得られる複数の受波信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。つまり、受信ビームフォーマ16は、各振動素子から得られる受波信号に対してその振動素子に応じた遅延処理を施し、複数の振動素子から得られる複数の受波信号を加算処理することにより受信ビームを形成する。なお、各振動素子から得られる受波信号に対して低雑音増幅等の処理を施してから、受信ビームフォーマ16に複数の受波信号が供給されてもよい。こうして受信ビームに沿った受信RF信号が得られる。
【0022】
受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
【0023】
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、PSK変調処理部24から出力される送信信号に基づいて生成される。つまり、PSK変調処理部24から出力される送信信号が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理された送信信号が参照信号として直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。
【0024】
π/2シフト回路26は、遅延処理された参照信号の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、2つのミキサ32,34の一方から同相信号成分(I信号成分)が出力されて他方から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。そして、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
【0025】
同相信号成分側の経路において、時分割処理部42は、LPF36から得られる復調信号を時分割処理する。これにより、コードAに対応した復調信号が加算部46Aへ出力され、コードBに対応した復調信号が加算部46Bへ出力される。そして、加算部46AにおいてコードAに対応した復調信号が所定期間に亘って加算され、加算部46BにおいてコードBに対応した復調信号が所定期間に亘って加算される。これにより、参照信号の符号パターンと一致する目標位置からの復調信号が選択的に抽出される。この位置選択性については後に詳述する。さらに、合成部52Iにおいて、加算部46Aから得られる信号と加算部46Bから得られる信号が加算され、合成後の復調信号(同相信号成分)が得られる。合成部52Iにおける合成処理により目標位置の選択性が高められる。この位置選択性の向上についても後に詳述する。
【0026】
直交信号成分側の経路においても同相信号成分側と同様な処理が実行される。つまり、LPF38から得られる復調信号が時分割処理部44により時分割処理され、コードAに対応した復調信号が加算部48Aへ出力され、コードBに対応した復調信号が加算部48Bへ出力される。そして、加算部48AにおいてコードAに対応した復調信号が所定期間に亘って加算され、加算部48BにおいてコードBに対応した復調信号が所定期間に亘って加算される。さらに、合成部52Qにおいて、加算部48Aから得られる信号と加算部48Bから得られる信号が加算され、合成後の復調信号(直交信号成分)が得られる。
【0027】
FFT処理部(高速フーリエ変換処理部)54は、合成部52I,52Qから得られる復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT処理部54において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT処理部54から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。
【0028】
ドプラ情報解析部56は、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ信号を抽出する。後に詳述するが、図1の超音波診断装置では、遅延回路25における遅延処理により目標位置が設定され、ドプラ情報解析部56において目標位置からのドプラ信号が選択的に抽出される。ドプラ情報解析部56は、例えば、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する。なお、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ信号を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力してもよい。また、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
【0029】
表示部58は、ドプラ情報解析部56において形成されたドプラ信号の波形などを表示する。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部60によって制御される。つまり、システム制御部60は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
【0030】
以上、概説したように、図1の超音波診断装置では、互いに相補関係にあるコードAとコードBを利用して得られるPSK連続波の送信信号を用いて超音波を送受することにより受信信号を得て、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整し、目標位置からの受信信号と参照信号との間の相関を強めて復調処理を施すことにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出している。そこで、図1の超音波診断装置におけるPSK変調処理と目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0031】
図1の超音波診断装置では、互いに相補関係にある2つのコード(符号列)を用いて位相シフトキーイング(PSK)が行われる。つまり、コードA発生部22Aから出力されるコードAとコードB発生部22Bから出力されるコードBが互いに相補関係にあり、コードAとコードBを利用してPSK変調処理部24が位相シフトキーイングによるデジタル変調処理を施す。
【0032】
まず、コードAとコードBの自己相関を数1式のように定義し、そして、数2式の条件を満足する具体的なコードを検討する。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
例えば、n=2の場合に、A2=(1,1)、B2=(1,−1)が上述した条件を満足する。数1式と数2式に基づいた具体的な計算結果を数3式に示す。
【0036】
【数3】
【0037】
n=2(2ビット)のコードを拡張したn=4(4ビット)のコードは、数4式から得られる。
【0038】
【数4】
【0039】
A2=(1,1)、B2=(1,−1)に基づいて得られるn=4のコードは、数5式に示すとおりである。
【0040】
【数5】
【0041】
数5式に示すコードA4の自己相関(数1式参照)は、数6式に示すとおりとなる。
【0042】
【数6】
【0043】
また、数5式に示すコードB4の自己相関は、数7式に示すとおりとなる。
【0044】
【数7】
【0045】
数6式と数7式に示すように、コードA4とコードB4の両コード共に、自己相関の値は、コードのずれが0(i=0)のときに極大値4となる。また、両コードの相関値の和についても、コードのずれが0(i=0)のときに極大値8となる。
【0046】
さらに、n=4(4ビット)のコードを拡張したn=8(8ビット)のコードは、数8式から得られる。
【0047】
【数8】
【0048】
数5式のA4,B4から得られるn=8のコードは、数9式に示すとおりである。
【0049】
【数9】
【0050】
数9式に示すコードA8の自己相関(数1式参照)は、数10式に示すとおりとなる。
【0051】
【数10】
【0052】
図2は、コードA8に関する自己相関の計算結果を示す図である。コードのずれを示すτ(=i)が1,2,4,6,7の場合に相関値が0となり、τが3,5の場合に相関値が4となり、τが0,8の場合に相関値が8となっている。極大値である8よりは小さいものの、τが3,5の場合には相関値が4であり0になっていない。
【0053】
一方、数9式に示すコードB8の自己相関は、数11式に示すとおりとなる。
【0054】
【数11】
【0055】
図3は、コードB8に関する自己相関の計算結果を示す図である。コードのずれを示すτ(=i)が1,2,4,6,7の場合に相関値が0となり、τが3,5の場合に相関値が−4となり、τが0,8の場合に相関値が8となっている。τが3,5の場合の相関値が−4であり、コードA8に関する自己相関の計算結果(図2)と比較すると、絶対値が等しく極性が逆になっている。
【0056】
そのため、コードA8とコードB8の両コードの相関値の和を算出すると、コードのずれを示すτが0,8の場合、つまりコードのずれが無い場合に、相関値の和が極大値16となり、τが他の値の場合、つまりコードのずれが有る場合に、相関値の和が常に0となる。このように、コードA8とコードB8は、コードがずれている場合に互いの相関値を打ち消し合う相補関係にある。
【0057】
なお、互いに相補関係にあるn=8のコードは、次の数12式から得ることもできる。数12式において、コードB4-1は、コードB4の符号の並び反転させたコードであり、コード−A4-1は、コードA4の符号の値と並びを共に反転させたコードである。
【0058】
【数12】
【0059】
数5式のA4,B4から、数12式に基づいて得られるコードA8は、数9式の場合と同じであり、数12式に基づいて得られるコードB8´は、数13式に示すとおりとなる。
【0060】
【数13】
【0061】
図4は、コードB8´に関する自己相関の計算結果を示す図である。コードのずれを示すτ(=i)が1,2,4,6,7の場合に相関値が0となり、τが3,5の場合に相関値が−4となり、τが0,8の場合に相関値が8となっている。つまり、コードB8に関する自己相関の計算結果(図3)と同じ結果が得られており、コードA8とコードB8´の組み合わせも、互いに相補関係にあることがわかる。
【0062】
さらに、n=8(8ビット)のコードを拡張したn=16(16ビット)のコードは、数14式または数15式から得られる。
【0063】
【数14】
【0064】
【数15】
【0065】
さらに、32ビット、64ビット、128ビット、256ビット等のコードも同様の法則を適用して拡張できる。数14式に対応した一般式を示すと数16式のようになり、数15式に対応した一般式を示すと数17式のようになる。数16式と数17式におけるNは、コードに含まれるビット数(符号長)であり2の累乗となる。
【0066】
【数16】
【0067】
【数17】
【0068】
図1の超音波診断装置では、A2=(1,1)、B2=(1,−1)から、数16式または数17式を利用して得られるコードANとコードBN(又はコードBN´)が用いられる。つまり、コードA発生部22AがコードANを発生し、コードB発生部22BがコードBN(又はコードBN´)を発生し、時分割処理部23がコードANとコードBN(又はコードBN´)を交互にPSK変調処理部24へ出力する。そして、PSK変調処理部24がコードANに対応した送信信号と、コードBN(又はコードBN´)に対応した送信信号を交互に出力する。さらに、受信系において、時分割処理部42,44により、コードANに対応した復調信号とコードBN(又はコードBN´)に対応した復調信号に時分割処理される。つまり、時分割処理により、コードANに対応したPSK連続波に関する送受信処理と、コードBN(又はコードBN´)に対応したPSK連続波に関する送受信処理が、個別的に実行される。そこで、2つのPSK連続波の各々に関する位置選択性について説明する。
【0069】
図5は、コードAに対応したPSK連続波の位置選択性を説明するための図である。図5には、8ビットのコードA8を用いて搬送波に対して2相の位相シフトキーイング(PSK)変調処理を施した例が図示されている。
【0070】
PSK変調処理部24は、コードA8が供給されている期間において、コードA8を用いて搬送波に対して2相の位相シフトキーイング(PSK)変調処理を施す。これにより、図5に示すようにPSK連続波の位相が調整される。図5には、このPSK連続波を利用して得られる受信信号の位相も示されている。
【0071】
本実施形態では、PSK連続波の位相を遅延回路25において遅延処理して得られる参照信号が、受信ミキサ30において受信信号と乗算される。図5には、参照信号の位相をφ1〜φ9まで変化させた場合における、参照信号と受信信号の位相差と、参照信号と受信信号の乗算結果(乗算器電圧)が示されている。
【0072】
例えば、参照信号の位相(φ2)は、PSK連続波の位相を1ビット期間だけ遅延して得られる参照信号である。そして、乗算器電圧は、参照信号と受信信号の位相差から、例えば、図7に示す汎用の位相検波器の特性に基づいて得られる電圧である。
【0073】
図5に示す合計は、8ビットの期間内における乗算器電圧の合計値であり、例えば加算部46A,48Aの各々において得られる。図5に示すように、受信信号の位相と完全に一致している参照信号の位相(φ1,φ9)の場合に、乗算器電圧が常に1となり合計値が極大値8となる。これに対し、受信信号の位相と一致していない参照信号の位相(φ2〜φ8)の場合には、乗算器電圧がランダムに変化して合計値が0または4となる。
【0074】
そのため、目標位置から得られる受信信号と参照信号の位相を一致させることにより、目標位置からの受信信号を選択的に抽出することが可能になる。例えば、遅延回路25における遅延時間を目標位置までの超音波の往復の伝播時間とすることにより、目標位置から得られる受信信号と参照信号の位相を一致させ、目標位置からの受信信号を選択的に抽出することが可能になる。なお、加算部46A,48Aに代えて、例えばローパスフィルタなどにより、乗算器電圧のランダムな変化を消去して、図5に示した常に1となる乗算器電圧を抽出してもよい。
【0075】
図5に示すように、参照信号の位相(φ4,φ6)の場合には、乗算器電圧の合計値が4となる。つまり、目標位置からの受信信号に関する選択性(極大値8)よりは小さいものの、目標位置以外からの受信信号も選択されている。この目標位置以外からの受信信号の選択性を抑えるために、コードBに対応したPSK連続波が併用されている。
【0076】
図6は、コードBに対応したPSK連続波の位置選択性を説明するための図である。図6には、8ビットのコードA8と相補関係にある8ビットのコードB8を用いていて搬送波Bに対して2相の位相シフトキーイング(PSK)処理を施した例が図示されている。
【0077】
PSK変調処理部24は、コードB8が供給されている期間において、コードB8を用いて搬送波に対して2相の位相シフトキーイング(PSK)変調処理を施す。これにより、図6に示すように、PSK連続波の位相が調整される。図6には、このPSK連続波を利用して得られる受信信号の位相も示されている。
【0078】
そして、PSK連続波の位相を遅延回路25において遅延処理して得られる参照信号が受信ミキサ30において受信信号と乗算される。図6には、参照信号の位相をφ1〜φ9まで変化させた場合における、参照信号と受信信号の位相差と、参照信号と受信信号の乗算結果(乗算器電圧)が示されている。乗算器電圧は、参照信号と受信信号の位相差から、例えば、図7に示す汎用の位相検波器の特性に基づいて得られる電圧である。
【0079】
図6に示す合計は、8ビットの期間内における乗算器電圧の合計値であり、例えば加算部46B,48Bの各々において得られる。なお、加算部46B,48Bに代えて、例えばローパスフィルタなどにより、乗算器電圧のランダムな変化を消去してもよい。
【0080】
図6に示すように、受信信号の位相と完全に一致している参照信号の位相(φ1,φ9)の場合に、乗算器電圧が常に1となり合計値が極大値8となる。そして、参照信号の位相(φ4,φ6)の場合には、乗算器電圧の合計値が−4となり、コードAに関する合計値(図5)と比較すると、絶対値が等しく極性が逆になっている。
【0081】
そのため、コードAに関する合計値とコードBに関する合計値の和を算出すると、参照信号の位相(φ1,φ9)の場合に合計値の和が極大値16となり、参照信号の位相(φ2〜φ8)の場合に合計値の和が常に0となる。この合計値の加算は、合成部52I,52Qの各々において実行される。
【0082】
図5に示す合計値と図6に示す合計値の加算は、図2および図3を利用して説明したコードA8とコードB8の両コードの相関値の和に相当する。つまり、互いに相補関係にあるコードA8とコードB8を利用して2つのPSK連続波を形成し、これら2つのPSK連続波を交互に送信して交互に得られる乗算結果(復調信号)を合成することにより、目標位置以外から得られる受信信号の成分を極端に小さくすることができ、望ましくは完全に0とすることができ、レンジサイドローブが著しく低減される。
【0083】
なお、図5,6においては、8ビットのコードA8とコードB8を利用してPSK変調処理と位置選択性を説明したが、装置の具現化においては、コードに含まれるビット数(符号長)が、例えば256ビット等に拡張されることが望ましい。ビット数を増やして1ビットの期間を小さくすることにより位置分解能を高めることができる。次に、図1の超音波診断装置による時分割処理の具体例について説明する。
【0084】
図8は、コードAとコードBの時分割処理を説明するための図である。図8(A)にはコードANの期間αにおける信号が図示されており、図8(B)にはコードBNの期間βにおける信号が図示されている。
【0085】
送信系において、時分割処理部23は、期間αにおいてコードANを繰り返し出力し、期間βにおいてコードBNを繰り返し出力する。そして、PSK変調処理部24は、期間αにおいてコードANを繰り返し用いてPSK変調処理を施し、図8(A)に示すように、コードANを繰り返すPSK連続波を形成する。また、PSK変調処理部24は、期間βにおいてコードBNを繰り返し用いてPSK変調処理を施し、図8(B)に示すように、コードBNを繰り返すPSK連続波を形成する。そして、PSK変調処理部24は、図8(C)に示すように期間αのPSK連続波と期間βのPSK連続波を交互に繰り返す送信信号を出力する。
【0086】
これにより、受信系において、期間αに対応した受信信号と期間βに対応した受信信号が交互に受信され、受信ミキサ30から、期間αに対応した復調信号と期間βに対応した復調信号が交互に出力される。そこで、時分割処理部42は、期間αに対応した復調信号を加算部46Aへ出力し、期間βに対応した復調信号を加算部46Bへ出力する。同様に時分割処理部44は、期間αに対応した復調信号を加算部48Aへ出力し、期間βに対応した復調信号を加算部48Bへ出力する。
【0087】
こうして、図5,6を利用して説明したように、コードANとコードBNに対応した2種類のPSK連続波に関する送受信処理が時分割で実行され、2種類のPSK連続波による受信結果が合成部52I,52Qにおいて合成される。
【0088】
なお、期間αと期間βの間に、特殊なコード(例えば全てのデータが0)に対応したPSK連続波を挿入して、期間αに対応したPSK連続波と期間βに対応したPSK連続波の送受信における干渉を低減または回避するようにしてもよい。もちろん、期間αと期間βの間で送信を停止させて干渉を低減または回避するようにしてもよい。
【0089】
また、受信系において、図8に示すように、コードANとコードBNの各々をnビットごとに区切り、nビットごとに得られる複数の乗算器出力(復調信号)を平均化して、目標位置に対応した復調信号を抽出してもよい。
【0090】
図9は、コードAに関する平均化を説明するための図である。図9には、コードA8(図2参照)を利用した場合に、d0からd8までの各深さにおいて、1ビットごとに得られる乗算器出力と、コードA8の1周期(8ビット)に亘って得られる乗算器出力の平均値が図示されている。
【0091】
図9に示す深さd0と深さd8は、参照信号との位相が一致した深さ(目標位置)であり、図2に示すτ=0とτ=8に対応している。また、図9に示す深さd1からd7の各々は、図2に示すτ=1から7に対応している。
【0092】
図9に示す深さd0と深さd8では、コードA8の1周期に亘って、参照信号と受信信号との間で符号が全て一致するため(図2参照)、「1」に相当する乗算器出力が連続的に得られる。これに対し、深さd1からd7では、参照信号と受信信号との間で符号がずれているため(図2参照)、「1」に相当する乗算器出力と「−1(図9においては0)」に相当する乗算器出力がランダムに得られる。
【0093】
そのため、時間軸方向に複数ビットに亘って乗算器出力を平均化することにより、目標位置である深さd0と深さd8において平均値が極大となり、複数の深さにおける平均値が混在する平均化された復調信号の中で、目標位置に対応した復調信号が支配的となり、目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。なお、コードAに関する復調信号を平均化する場合には、例えば、加算部46A,48Aに代えてローパスフィルタを利用すればよい。
【0094】
図10は、コードBに関する平均化を説明するための図である。図10にはコードB8(図3参照)を利用した場合に、d0からd8までの各深さにおいて、1ビットごとに得られる乗算器出力と、コードB8の1周期(8ビット)に亘って得られる乗算器出力の平均値が図示されている。
【0095】
図10においても、深さd0と深さd8は、参照信号との位相が一致した深さ(目標位置)であり、図3に示すτ=0とτ=8に対応している。また、図10に示す深さd1からd7の各々は、図3に示すτ=1から7に対応している。
【0096】
図10に示す深さd0と深さd8では、コードB8の1周期に亘って、参照信号と受信信号との間で符号が全て一致するため(図3参照)、「1」に相当する乗算器出力が連続的に得られる。これに対し、深さd1からd7では、参照信号と受信信号との間で符号がずれているため(図3参照)、「1」に相当する乗算器出力と「−1(図10においては0)」に相当する乗算器出力がランダムに得られる。
【0097】
そのため、時間軸方向に複数ビットに亘って乗算器出力を平均化することにより、目標位置である深さd0と深さd8において平均値が極大となり、複数の深さにおける平均値が混在する平均化された復調信号の中で、目標位置に対応した復調信号が支配的となり、目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。なお、コードBに関する復調信号を平均化する場合には、例えば、加算部46B,48Bに代えてローパスフィルタを利用すればよい。
【0098】
また、深さd3とd5における乗算器出力の平均値について、コードA8(図9)とコードB8(図10)を比較すると、絶対値が等しく極性が逆になっているため、合成部52I,52Qにおいて実行され合成処理により、深さd3とd5における乗算器出力の平均値がさらに低減(望ましくは除去)される。なお、コードA8に対応する復調信号とコードB8に対応する復調信号の合成は、FFT処理部54の後段で行うようにしてもよい。
【0099】
次に、復調信号を平均化する際のnビット(図8参照)の具体的な大きさについて検討する。なお、以下に説明する具体例は、好適な例の1つに過ぎず、例えば、装置の構成や診断対象などに応じて、他の具体例を利用してもよいことはいうまでもない。
【0100】
検出すべき信号は、受信信号と参照信号の位相が一致したときのドプラ信号である。図9,10では、深さd0,d8における信号がこれに相当する。この信号は、図9,10では、時間変動が無く一定の値として描いてあるが、実際にはドプラ周波数の周期で変動している。このドプラ信号はFFT解析のためにサンプリングされるが、そのサンプリング周期は、サンプリング定理により最大ドプラ周波数の2倍以上に設定する。サンプリングは、nビットの平均値に対して行うから、サンプリング周期ごとに平均値が出力されていればよいことになる。
【0101】
まず、最大10kHzのドプラ信号を検出することを想定し、サンプリング周波数を20kHz(以上)に設定する。コードAとコードBの繰り返し周期は、診断の深さにより決定する。例えば、最大診断距離Lを15cmとし、音速をcとすると、往復の伝搬時間は、次式のように算出される。
【0102】
【数18】
【0103】
したがって、繰り返し周期を往復の伝搬時間より大きく設定すれば、最大診断距離L内において目標位置を1つに限定することができる。そこで、例えば繰り返し周期Tを200μsに設定すると、繰り返し周波数fpは次式のとおりに決定される。
【0104】
【数19】
【0105】
位置選択特性、すなわち距離分解能は、繰り返し周期Tで一巡するコードAとコードBのビット数により決定される。1ビット長をσとすると、距離分解能ΔLは次式により表現できる。
【0106】
【数20】
【0107】
例えばΔLを1mmとすると、1ビット長σは次式のようになる。
【0108】
【数21】
【0109】
そして、コードAとコードBのビット数iは次式のように決定される。
【0110】
【数22】
【0111】
数16式と数17式を利用して説明したように、コードに含まれるビット数(符号長)は2の累乗となる。数22式の結果を踏まえると、コードAとコードBの各々のビット数(符号長)は、例えば128ビット又は256ビットに設定される。
【0112】
復調信号をnビットごとに平均化し、平均化された信号をサンプリングする場合、例えばサンプリング周期を50μs(20kHzの逆数)とすれば、平均化に必要なビット数は、次式のように決定される。
【0113】
【数23】
【0114】
さらに、ドプラ信号の周波数分解能について検討する。FFT出力におけるドプラスペクトラムの周波数分解能ΔFとデータ取り込み時間ΔTは、次式に示す関係にある。
【0115】
【数24】
【0116】
測定可能なドプラ周波数の最大値を例えば10kHzとし、ドプラスペクトラムの周波数分解能を例えば最大周波数の1/100とすると、周波数分解能ΔFは次式のとおりとなる。
【0117】
【数25】
【0118】
したがって、この具体例におけるデータ取り込み時間ΔTは次式のようになる。
【0119】
【数26】
【0120】
データ取り込み時間ΔTは、図8における期間αと期間βの長さに相当する。期間αと期間βで得られる2つの復調信号は、合成された後にFFT処理されて周波数スペクトラムに変換される。あるいは、期間αと期間βで得られる2つの復調信号がそれぞれFFT処理されて周波数スペクトラムに変換されてから合成されてもよい。
【0121】
図11は、ドプラ信号の抽出を説明するための図である。図11(A)には、送信信号の含まれるPSK連続波の周波数スペクトラムが示されている。周波数f0は、RF信号(搬送波信号)の周波数である。RF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、コードANとコードBNの繰り返し周波数fpである。また、周波数f0を中心として広がっている側帯波の電力が0(ゼロ)となる、いわゆるヌル(null)点が存在する。周波数f0からヌル点までの周波数間隔はコードANとコードBNの1ビットの時間間隔Tの逆数となる。
【0122】
図11(B)には、受信信号に含まれるPSK連続波の周波数スペクトラムが示されている。受信信号は、生体内における減衰を無視すると、送信信号と同じ波形となる。したがって、図11(B)に示す受信信号の周波数スペクトラムは、図11(A)に示す送信信号の周波数スペクトラムとほぼ同じである。但し、生体内における超音波の伝搬時間に応じて、送信信号と受信信号との間では位相が異なる。
【0123】
本実施形態では、PSK連続波に対して遅延処理を施して参照信号を形成し、受信ミキサ(図1の符号30)においてその参照信号を用いて受信信号に対してミキサ処理(参照信号と受信信号の乗算)が行われる。
【0124】
図11(C)には、ミキサ処理により得られる復調信号の周波数スペクトラムが示されている。図11(C)の復調信号は、相関が最大の場合における参照信号と受信信号の乗算結果に相当する。つまり、目標位置からの受信信号と、目標位置の深さに位相を合わせた参照信号との間の乗算結果が、図11(C)の復調信号となる。
【0125】
図11(C)に示す復調信号には、直流信号成分と、RF信号の周波数f0の2倍の高調波成分が含まれている。ドプラ信号は、こららの成分に付着した形で出現する。なお、LPF(図1の符号36,38)において、高調波成分がカットされて直流信号成分のみが抽出されるため、FFT処理部54においては、図11(C)に示す直流信号成分と周波数f0の2倍の高調波成分のうち、直流信号成分の周波数スペクトラムのみが形成される。
【0126】
そして、ドプラ情報解析部56において、図11(C)に示す直流信号成分の周波数スペクトラムからドプラ信号が抽出され、ドプラシフト量などに基づいて、目標位置に存在する血流の流速などが算出される。受信ミキサ(図1の符号30)において直交検波を施しているため、流速の極性を判断することもできる。また、直流信号成分の周波数スペクトラムからクラッタ信号を抽出して、目標位置に存在する血管壁の位置などを算出してもよい。
【0127】
なお、上述した実施形態においては、連続波をデジタル変調する際に位相シフトキーイング(PSK)を利用している。このPSKに換えて、デジタル変調方式として周波数シフトキーイング(FSK)を利用してもよい。また、デジタル変調された連続波のデータをメモリなどに記憶しておき、このメモリから読み出されるデータに基づいて、当該連続波を生成してもよい。
【0128】
さらに、図1では、遅延回路25と、π/2シフト回路26と、受信ミキサ30から合成部52I,52Qまでの受信系回路に関して、1つの目標位置に対応した単独の構成を示している。この図1に示す受信系の構成を拡張し、複数の目標位置に応じた複数の受信系回路を設けて、超音波ビームに沿った複数の目標位置から並列的にドプラ情報を抽出するようにしてもよい。
【0129】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0130】
22A コードA発生部、22B コードB発生部、23 時分割処理部、24 PSK変調処理部、25 遅延回路、30 受信ミキサ、42,44 時分割処理部、54 FFT処理部、56 ドプラ情報解析部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波である送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流など)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
【0003】
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願の発明者は、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
【0004】
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、本願の発明者は、特許文献2において、FMCWドプラにより選択的に生体内組織の所望の位置からドプラ情報を抽出することができる極めて画期的な技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253949号公報
【特許文献2】特開2008−289851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願発明者は、この画期的な技術の改良についてさらに研究開発を重ねてきた。特に、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術に注目して研究開発を重ねてきた。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術において目標位置の選択性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、互いに相補関係にある2つの周期的な第1信号列と第2信号列に基づいたデジタル変調処理により得られる、第1信号列に対応した連続波の第1送信信号と第2信号列に対応した連続波の第2送信信号とを交互に出力する送信信号処理部と、第1送信信号と第2送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより、第1送信信号に対応した第1受信信号と第2送信信号に対応した第2受信信号を得る超音波送受部と、生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ第1受信信号と第2受信信号に対して復調処理を施すことにより、第1受信信号に対応した第1復調信号と第2受信信号に対応した第2復調信号を得る受信信号処理部と、第1復調信号と第2復調信号に基づいて前記目標位置に対応した生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、を有することを特徴とする。
【0009】
望ましい具体例において、前記送信信号処理部は、符号長Nの第1符号列Nを繰り返す第1信号列に基づいてデジタル変調処理された第1送信信号と、符号長Nの第2符号列Nを繰り返す第2信号列に基づいてデジタル変調処理された第2送信信号と、を交互に出力することを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記符号長Nは2の累乗であり、前記第1符合列Nと前記第2符合列Nの各々は、第1符合列N/2と第2符号列N/2に基づいて形成される、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記第1符合列Nは、符号列ANであり、前記第2符合列Nは符号列BNであり、符号列ANは、符号列AN/2と符号列BN/2を直列接続した符号列であり、符号列BNは、符号列AN/2と符号列−BN/2を直列接続した符号列であり、符号列−BN/2は、符号列BN/2の符号の値を反転させた符号列である、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記符号列ANと前記符号列BNの各々は、符号長2の符号列A2=(1,1)と符号列B2=(1,−1)から、前記直列接続を繰り返して形成される、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記第1符合列Nは、符号列ANであり、前記第2符合列Nは符号列BN´であり、符号列ANは、符号列AN/2と符号列BN/2を直列接続した符号列であり、符号列BN´は、符号列BN/2-1と符号列−AN/2-1を直列接続した符号列であり、符号列BN/2は、符号列AN/4と符号列−BN/4を直列接続した符号列であり、符号列BN/2-1は、符号列BN/2の符号の並び反転させた符号列であり、符号列−AN/2-1は、符号列AN/2の符号の値と並びを共に反転させた符号列であり、符号列−BN/4は、符号列BN/4の符号の値を反転させた符号列である、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記符号列ANと前記符号列BN´の各々は、符号長2の符号列A2=(1,1)と符号列B2=(1,−1)から、前記直列接続を繰り返して形成される、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記生体内情報抽出部は、第1復調信号と第2復調信号を合成処理して得られる合成復調信号に基づいて前記目標位置に対応した生体内情報を抽出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、連続波を利用して選択的に目標位置から生体内情報を抽出する技術において目標位置の選択性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】コードA8に関する自己相関の計算結果を示す図である。
【図3】コードB8に関する自己相関の計算結果を示す図である。
【図4】コードB8´に関する自己相関の計算結果を示す図である。
【図5】コードAに対応したPSK連続波の位置選択性を説明するための図である。
【図6】コードBに対応したPSK連続波の位置選択性を説明するための図である。
【図7】汎用の位相検波器の特性を示す図である。
【図8】コードAとコードBの時分割処理を説明するための図である。
【図9】コードAに関する平均化を説明するための図である。
【図10】コードBに関する平均化を説明するための図である。
【図11】ドプラ信号の抽出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。送信用振動子10は、生体内へ超音波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は、生体内から得られる超音波の反射波を連続的に受波する。このように、送信と受信がそれぞれ異なる振動子で行われ、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。なお、送信用振動子10は複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が制御されて超音波の送信ビームが形成される。また、受信用振動子12も複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子により得られた信号が処理されて受信ビームが形成される。
【0019】
送信ビームフォーマ(送信BF)14は、送信用振動子10が備える複数の振動素子に対して送信信号を出力する。送信ビームフォーマ14には、PSK変調処理部24から連続波の送信信号が供給され、送信ビームフォーマ14は、その送信信号に対して、各振動素子に応じた遅延処理を施して各振動素子に対応した送信信号を形成する。なお、送信ビームフォーマ14において形成された各振動素子に対応した送信信号に対して、必要に応じて電力増幅処理が施されてもよい。こうして、超音波の送信ビームが形成される。
【0020】
PSK変調処理部24は、搬送波発生部20から得られる搬送波(RF波)に対して、位相シフトキーイング(PSK)によるデジタル変調処理を施すことによりPSK連続波の送信信号を発生する。その位相シフトキーイングにおいて、互いに相補関係にある2つのコード(符号列)が利用される。つまり、コードA発生部22Aが発生するコードAとコードB発生部22Bが発生するコードBが、時分割処理部23を介して交互にPSK変調処理部24へ出力され、互いに相補関係にあるコードAとコードBを利用してPSK変調処理部24が位相シフトキーイングによるデジタル変調処理を施す。PSK変調処理部24により形成される連続波の送信信号については後にさらに詳述する。
【0021】
受信ビームフォーマ(受信BF)16は、受信用振動子12が備える複数の振動素子から得られる複数の受波信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。つまり、受信ビームフォーマ16は、各振動素子から得られる受波信号に対してその振動素子に応じた遅延処理を施し、複数の振動素子から得られる複数の受波信号を加算処理することにより受信ビームを形成する。なお、各振動素子から得られる受波信号に対して低雑音増幅等の処理を施してから、受信ビームフォーマ16に複数の受波信号が供給されてもよい。こうして受信ビームに沿った受信RF信号が得られる。
【0022】
受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
【0023】
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、PSK変調処理部24から出力される送信信号に基づいて生成される。つまり、PSK変調処理部24から出力される送信信号が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理された送信信号が参照信号として直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。
【0024】
π/2シフト回路26は、遅延処理された参照信号の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、2つのミキサ32,34の一方から同相信号成分(I信号成分)が出力されて他方から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。そして、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
【0025】
同相信号成分側の経路において、時分割処理部42は、LPF36から得られる復調信号を時分割処理する。これにより、コードAに対応した復調信号が加算部46Aへ出力され、コードBに対応した復調信号が加算部46Bへ出力される。そして、加算部46AにおいてコードAに対応した復調信号が所定期間に亘って加算され、加算部46BにおいてコードBに対応した復調信号が所定期間に亘って加算される。これにより、参照信号の符号パターンと一致する目標位置からの復調信号が選択的に抽出される。この位置選択性については後に詳述する。さらに、合成部52Iにおいて、加算部46Aから得られる信号と加算部46Bから得られる信号が加算され、合成後の復調信号(同相信号成分)が得られる。合成部52Iにおける合成処理により目標位置の選択性が高められる。この位置選択性の向上についても後に詳述する。
【0026】
直交信号成分側の経路においても同相信号成分側と同様な処理が実行される。つまり、LPF38から得られる復調信号が時分割処理部44により時分割処理され、コードAに対応した復調信号が加算部48Aへ出力され、コードBに対応した復調信号が加算部48Bへ出力される。そして、加算部48AにおいてコードAに対応した復調信号が所定期間に亘って加算され、加算部48BにおいてコードBに対応した復調信号が所定期間に亘って加算される。さらに、合成部52Qにおいて、加算部48Aから得られる信号と加算部48Bから得られる信号が加算され、合成後の復調信号(直交信号成分)が得られる。
【0027】
FFT処理部(高速フーリエ変換処理部)54は、合成部52I,52Qから得られる復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT処理部54において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT処理部54から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。
【0028】
ドプラ情報解析部56は、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ信号を抽出する。後に詳述するが、図1の超音波診断装置では、遅延回路25における遅延処理により目標位置が設定され、ドプラ情報解析部56において目標位置からのドプラ信号が選択的に抽出される。ドプラ情報解析部56は、例えば、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する。なお、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ信号を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力してもよい。また、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
【0029】
表示部58は、ドプラ情報解析部56において形成されたドプラ信号の波形などを表示する。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部60によって制御される。つまり、システム制御部60は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
【0030】
以上、概説したように、図1の超音波診断装置では、互いに相補関係にあるコードAとコードBを利用して得られるPSK連続波の送信信号を用いて超音波を送受することにより受信信号を得て、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整し、目標位置からの受信信号と参照信号との間の相関を強めて復調処理を施すことにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出している。そこで、図1の超音波診断装置におけるPSK変調処理と目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0031】
図1の超音波診断装置では、互いに相補関係にある2つのコード(符号列)を用いて位相シフトキーイング(PSK)が行われる。つまり、コードA発生部22Aから出力されるコードAとコードB発生部22Bから出力されるコードBが互いに相補関係にあり、コードAとコードBを利用してPSK変調処理部24が位相シフトキーイングによるデジタル変調処理を施す。
【0032】
まず、コードAとコードBの自己相関を数1式のように定義し、そして、数2式の条件を満足する具体的なコードを検討する。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
例えば、n=2の場合に、A2=(1,1)、B2=(1,−1)が上述した条件を満足する。数1式と数2式に基づいた具体的な計算結果を数3式に示す。
【0036】
【数3】
【0037】
n=2(2ビット)のコードを拡張したn=4(4ビット)のコードは、数4式から得られる。
【0038】
【数4】
【0039】
A2=(1,1)、B2=(1,−1)に基づいて得られるn=4のコードは、数5式に示すとおりである。
【0040】
【数5】
【0041】
数5式に示すコードA4の自己相関(数1式参照)は、数6式に示すとおりとなる。
【0042】
【数6】
【0043】
また、数5式に示すコードB4の自己相関は、数7式に示すとおりとなる。
【0044】
【数7】
【0045】
数6式と数7式に示すように、コードA4とコードB4の両コード共に、自己相関の値は、コードのずれが0(i=0)のときに極大値4となる。また、両コードの相関値の和についても、コードのずれが0(i=0)のときに極大値8となる。
【0046】
さらに、n=4(4ビット)のコードを拡張したn=8(8ビット)のコードは、数8式から得られる。
【0047】
【数8】
【0048】
数5式のA4,B4から得られるn=8のコードは、数9式に示すとおりである。
【0049】
【数9】
【0050】
数9式に示すコードA8の自己相関(数1式参照)は、数10式に示すとおりとなる。
【0051】
【数10】
【0052】
図2は、コードA8に関する自己相関の計算結果を示す図である。コードのずれを示すτ(=i)が1,2,4,6,7の場合に相関値が0となり、τが3,5の場合に相関値が4となり、τが0,8の場合に相関値が8となっている。極大値である8よりは小さいものの、τが3,5の場合には相関値が4であり0になっていない。
【0053】
一方、数9式に示すコードB8の自己相関は、数11式に示すとおりとなる。
【0054】
【数11】
【0055】
図3は、コードB8に関する自己相関の計算結果を示す図である。コードのずれを示すτ(=i)が1,2,4,6,7の場合に相関値が0となり、τが3,5の場合に相関値が−4となり、τが0,8の場合に相関値が8となっている。τが3,5の場合の相関値が−4であり、コードA8に関する自己相関の計算結果(図2)と比較すると、絶対値が等しく極性が逆になっている。
【0056】
そのため、コードA8とコードB8の両コードの相関値の和を算出すると、コードのずれを示すτが0,8の場合、つまりコードのずれが無い場合に、相関値の和が極大値16となり、τが他の値の場合、つまりコードのずれが有る場合に、相関値の和が常に0となる。このように、コードA8とコードB8は、コードがずれている場合に互いの相関値を打ち消し合う相補関係にある。
【0057】
なお、互いに相補関係にあるn=8のコードは、次の数12式から得ることもできる。数12式において、コードB4-1は、コードB4の符号の並び反転させたコードであり、コード−A4-1は、コードA4の符号の値と並びを共に反転させたコードである。
【0058】
【数12】
【0059】
数5式のA4,B4から、数12式に基づいて得られるコードA8は、数9式の場合と同じであり、数12式に基づいて得られるコードB8´は、数13式に示すとおりとなる。
【0060】
【数13】
【0061】
図4は、コードB8´に関する自己相関の計算結果を示す図である。コードのずれを示すτ(=i)が1,2,4,6,7の場合に相関値が0となり、τが3,5の場合に相関値が−4となり、τが0,8の場合に相関値が8となっている。つまり、コードB8に関する自己相関の計算結果(図3)と同じ結果が得られており、コードA8とコードB8´の組み合わせも、互いに相補関係にあることがわかる。
【0062】
さらに、n=8(8ビット)のコードを拡張したn=16(16ビット)のコードは、数14式または数15式から得られる。
【0063】
【数14】
【0064】
【数15】
【0065】
さらに、32ビット、64ビット、128ビット、256ビット等のコードも同様の法則を適用して拡張できる。数14式に対応した一般式を示すと数16式のようになり、数15式に対応した一般式を示すと数17式のようになる。数16式と数17式におけるNは、コードに含まれるビット数(符号長)であり2の累乗となる。
【0066】
【数16】
【0067】
【数17】
【0068】
図1の超音波診断装置では、A2=(1,1)、B2=(1,−1)から、数16式または数17式を利用して得られるコードANとコードBN(又はコードBN´)が用いられる。つまり、コードA発生部22AがコードANを発生し、コードB発生部22BがコードBN(又はコードBN´)を発生し、時分割処理部23がコードANとコードBN(又はコードBN´)を交互にPSK変調処理部24へ出力する。そして、PSK変調処理部24がコードANに対応した送信信号と、コードBN(又はコードBN´)に対応した送信信号を交互に出力する。さらに、受信系において、時分割処理部42,44により、コードANに対応した復調信号とコードBN(又はコードBN´)に対応した復調信号に時分割処理される。つまり、時分割処理により、コードANに対応したPSK連続波に関する送受信処理と、コードBN(又はコードBN´)に対応したPSK連続波に関する送受信処理が、個別的に実行される。そこで、2つのPSK連続波の各々に関する位置選択性について説明する。
【0069】
図5は、コードAに対応したPSK連続波の位置選択性を説明するための図である。図5には、8ビットのコードA8を用いて搬送波に対して2相の位相シフトキーイング(PSK)変調処理を施した例が図示されている。
【0070】
PSK変調処理部24は、コードA8が供給されている期間において、コードA8を用いて搬送波に対して2相の位相シフトキーイング(PSK)変調処理を施す。これにより、図5に示すようにPSK連続波の位相が調整される。図5には、このPSK連続波を利用して得られる受信信号の位相も示されている。
【0071】
本実施形態では、PSK連続波の位相を遅延回路25において遅延処理して得られる参照信号が、受信ミキサ30において受信信号と乗算される。図5には、参照信号の位相をφ1〜φ9まで変化させた場合における、参照信号と受信信号の位相差と、参照信号と受信信号の乗算結果(乗算器電圧)が示されている。
【0072】
例えば、参照信号の位相(φ2)は、PSK連続波の位相を1ビット期間だけ遅延して得られる参照信号である。そして、乗算器電圧は、参照信号と受信信号の位相差から、例えば、図7に示す汎用の位相検波器の特性に基づいて得られる電圧である。
【0073】
図5に示す合計は、8ビットの期間内における乗算器電圧の合計値であり、例えば加算部46A,48Aの各々において得られる。図5に示すように、受信信号の位相と完全に一致している参照信号の位相(φ1,φ9)の場合に、乗算器電圧が常に1となり合計値が極大値8となる。これに対し、受信信号の位相と一致していない参照信号の位相(φ2〜φ8)の場合には、乗算器電圧がランダムに変化して合計値が0または4となる。
【0074】
そのため、目標位置から得られる受信信号と参照信号の位相を一致させることにより、目標位置からの受信信号を選択的に抽出することが可能になる。例えば、遅延回路25における遅延時間を目標位置までの超音波の往復の伝播時間とすることにより、目標位置から得られる受信信号と参照信号の位相を一致させ、目標位置からの受信信号を選択的に抽出することが可能になる。なお、加算部46A,48Aに代えて、例えばローパスフィルタなどにより、乗算器電圧のランダムな変化を消去して、図5に示した常に1となる乗算器電圧を抽出してもよい。
【0075】
図5に示すように、参照信号の位相(φ4,φ6)の場合には、乗算器電圧の合計値が4となる。つまり、目標位置からの受信信号に関する選択性(極大値8)よりは小さいものの、目標位置以外からの受信信号も選択されている。この目標位置以外からの受信信号の選択性を抑えるために、コードBに対応したPSK連続波が併用されている。
【0076】
図6は、コードBに対応したPSK連続波の位置選択性を説明するための図である。図6には、8ビットのコードA8と相補関係にある8ビットのコードB8を用いていて搬送波Bに対して2相の位相シフトキーイング(PSK)処理を施した例が図示されている。
【0077】
PSK変調処理部24は、コードB8が供給されている期間において、コードB8を用いて搬送波に対して2相の位相シフトキーイング(PSK)変調処理を施す。これにより、図6に示すように、PSK連続波の位相が調整される。図6には、このPSK連続波を利用して得られる受信信号の位相も示されている。
【0078】
そして、PSK連続波の位相を遅延回路25において遅延処理して得られる参照信号が受信ミキサ30において受信信号と乗算される。図6には、参照信号の位相をφ1〜φ9まで変化させた場合における、参照信号と受信信号の位相差と、参照信号と受信信号の乗算結果(乗算器電圧)が示されている。乗算器電圧は、参照信号と受信信号の位相差から、例えば、図7に示す汎用の位相検波器の特性に基づいて得られる電圧である。
【0079】
図6に示す合計は、8ビットの期間内における乗算器電圧の合計値であり、例えば加算部46B,48Bの各々において得られる。なお、加算部46B,48Bに代えて、例えばローパスフィルタなどにより、乗算器電圧のランダムな変化を消去してもよい。
【0080】
図6に示すように、受信信号の位相と完全に一致している参照信号の位相(φ1,φ9)の場合に、乗算器電圧が常に1となり合計値が極大値8となる。そして、参照信号の位相(φ4,φ6)の場合には、乗算器電圧の合計値が−4となり、コードAに関する合計値(図5)と比較すると、絶対値が等しく極性が逆になっている。
【0081】
そのため、コードAに関する合計値とコードBに関する合計値の和を算出すると、参照信号の位相(φ1,φ9)の場合に合計値の和が極大値16となり、参照信号の位相(φ2〜φ8)の場合に合計値の和が常に0となる。この合計値の加算は、合成部52I,52Qの各々において実行される。
【0082】
図5に示す合計値と図6に示す合計値の加算は、図2および図3を利用して説明したコードA8とコードB8の両コードの相関値の和に相当する。つまり、互いに相補関係にあるコードA8とコードB8を利用して2つのPSK連続波を形成し、これら2つのPSK連続波を交互に送信して交互に得られる乗算結果(復調信号)を合成することにより、目標位置以外から得られる受信信号の成分を極端に小さくすることができ、望ましくは完全に0とすることができ、レンジサイドローブが著しく低減される。
【0083】
なお、図5,6においては、8ビットのコードA8とコードB8を利用してPSK変調処理と位置選択性を説明したが、装置の具現化においては、コードに含まれるビット数(符号長)が、例えば256ビット等に拡張されることが望ましい。ビット数を増やして1ビットの期間を小さくすることにより位置分解能を高めることができる。次に、図1の超音波診断装置による時分割処理の具体例について説明する。
【0084】
図8は、コードAとコードBの時分割処理を説明するための図である。図8(A)にはコードANの期間αにおける信号が図示されており、図8(B)にはコードBNの期間βにおける信号が図示されている。
【0085】
送信系において、時分割処理部23は、期間αにおいてコードANを繰り返し出力し、期間βにおいてコードBNを繰り返し出力する。そして、PSK変調処理部24は、期間αにおいてコードANを繰り返し用いてPSK変調処理を施し、図8(A)に示すように、コードANを繰り返すPSK連続波を形成する。また、PSK変調処理部24は、期間βにおいてコードBNを繰り返し用いてPSK変調処理を施し、図8(B)に示すように、コードBNを繰り返すPSK連続波を形成する。そして、PSK変調処理部24は、図8(C)に示すように期間αのPSK連続波と期間βのPSK連続波を交互に繰り返す送信信号を出力する。
【0086】
これにより、受信系において、期間αに対応した受信信号と期間βに対応した受信信号が交互に受信され、受信ミキサ30から、期間αに対応した復調信号と期間βに対応した復調信号が交互に出力される。そこで、時分割処理部42は、期間αに対応した復調信号を加算部46Aへ出力し、期間βに対応した復調信号を加算部46Bへ出力する。同様に時分割処理部44は、期間αに対応した復調信号を加算部48Aへ出力し、期間βに対応した復調信号を加算部48Bへ出力する。
【0087】
こうして、図5,6を利用して説明したように、コードANとコードBNに対応した2種類のPSK連続波に関する送受信処理が時分割で実行され、2種類のPSK連続波による受信結果が合成部52I,52Qにおいて合成される。
【0088】
なお、期間αと期間βの間に、特殊なコード(例えば全てのデータが0)に対応したPSK連続波を挿入して、期間αに対応したPSK連続波と期間βに対応したPSK連続波の送受信における干渉を低減または回避するようにしてもよい。もちろん、期間αと期間βの間で送信を停止させて干渉を低減または回避するようにしてもよい。
【0089】
また、受信系において、図8に示すように、コードANとコードBNの各々をnビットごとに区切り、nビットごとに得られる複数の乗算器出力(復調信号)を平均化して、目標位置に対応した復調信号を抽出してもよい。
【0090】
図9は、コードAに関する平均化を説明するための図である。図9には、コードA8(図2参照)を利用した場合に、d0からd8までの各深さにおいて、1ビットごとに得られる乗算器出力と、コードA8の1周期(8ビット)に亘って得られる乗算器出力の平均値が図示されている。
【0091】
図9に示す深さd0と深さd8は、参照信号との位相が一致した深さ(目標位置)であり、図2に示すτ=0とτ=8に対応している。また、図9に示す深さd1からd7の各々は、図2に示すτ=1から7に対応している。
【0092】
図9に示す深さd0と深さd8では、コードA8の1周期に亘って、参照信号と受信信号との間で符号が全て一致するため(図2参照)、「1」に相当する乗算器出力が連続的に得られる。これに対し、深さd1からd7では、参照信号と受信信号との間で符号がずれているため(図2参照)、「1」に相当する乗算器出力と「−1(図9においては0)」に相当する乗算器出力がランダムに得られる。
【0093】
そのため、時間軸方向に複数ビットに亘って乗算器出力を平均化することにより、目標位置である深さd0と深さd8において平均値が極大となり、複数の深さにおける平均値が混在する平均化された復調信号の中で、目標位置に対応した復調信号が支配的となり、目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。なお、コードAに関する復調信号を平均化する場合には、例えば、加算部46A,48Aに代えてローパスフィルタを利用すればよい。
【0094】
図10は、コードBに関する平均化を説明するための図である。図10にはコードB8(図3参照)を利用した場合に、d0からd8までの各深さにおいて、1ビットごとに得られる乗算器出力と、コードB8の1周期(8ビット)に亘って得られる乗算器出力の平均値が図示されている。
【0095】
図10においても、深さd0と深さd8は、参照信号との位相が一致した深さ(目標位置)であり、図3に示すτ=0とτ=8に対応している。また、図10に示す深さd1からd7の各々は、図3に示すτ=1から7に対応している。
【0096】
図10に示す深さd0と深さd8では、コードB8の1周期に亘って、参照信号と受信信号との間で符号が全て一致するため(図3参照)、「1」に相当する乗算器出力が連続的に得られる。これに対し、深さd1からd7では、参照信号と受信信号との間で符号がずれているため(図3参照)、「1」に相当する乗算器出力と「−1(図10においては0)」に相当する乗算器出力がランダムに得られる。
【0097】
そのため、時間軸方向に複数ビットに亘って乗算器出力を平均化することにより、目標位置である深さd0と深さd8において平均値が極大となり、複数の深さにおける平均値が混在する平均化された復調信号の中で、目標位置に対応した復調信号が支配的となり、目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。なお、コードBに関する復調信号を平均化する場合には、例えば、加算部46B,48Bに代えてローパスフィルタを利用すればよい。
【0098】
また、深さd3とd5における乗算器出力の平均値について、コードA8(図9)とコードB8(図10)を比較すると、絶対値が等しく極性が逆になっているため、合成部52I,52Qにおいて実行され合成処理により、深さd3とd5における乗算器出力の平均値がさらに低減(望ましくは除去)される。なお、コードA8に対応する復調信号とコードB8に対応する復調信号の合成は、FFT処理部54の後段で行うようにしてもよい。
【0099】
次に、復調信号を平均化する際のnビット(図8参照)の具体的な大きさについて検討する。なお、以下に説明する具体例は、好適な例の1つに過ぎず、例えば、装置の構成や診断対象などに応じて、他の具体例を利用してもよいことはいうまでもない。
【0100】
検出すべき信号は、受信信号と参照信号の位相が一致したときのドプラ信号である。図9,10では、深さd0,d8における信号がこれに相当する。この信号は、図9,10では、時間変動が無く一定の値として描いてあるが、実際にはドプラ周波数の周期で変動している。このドプラ信号はFFT解析のためにサンプリングされるが、そのサンプリング周期は、サンプリング定理により最大ドプラ周波数の2倍以上に設定する。サンプリングは、nビットの平均値に対して行うから、サンプリング周期ごとに平均値が出力されていればよいことになる。
【0101】
まず、最大10kHzのドプラ信号を検出することを想定し、サンプリング周波数を20kHz(以上)に設定する。コードAとコードBの繰り返し周期は、診断の深さにより決定する。例えば、最大診断距離Lを15cmとし、音速をcとすると、往復の伝搬時間は、次式のように算出される。
【0102】
【数18】
【0103】
したがって、繰り返し周期を往復の伝搬時間より大きく設定すれば、最大診断距離L内において目標位置を1つに限定することができる。そこで、例えば繰り返し周期Tを200μsに設定すると、繰り返し周波数fpは次式のとおりに決定される。
【0104】
【数19】
【0105】
位置選択特性、すなわち距離分解能は、繰り返し周期Tで一巡するコードAとコードBのビット数により決定される。1ビット長をσとすると、距離分解能ΔLは次式により表現できる。
【0106】
【数20】
【0107】
例えばΔLを1mmとすると、1ビット長σは次式のようになる。
【0108】
【数21】
【0109】
そして、コードAとコードBのビット数iは次式のように決定される。
【0110】
【数22】
【0111】
数16式と数17式を利用して説明したように、コードに含まれるビット数(符号長)は2の累乗となる。数22式の結果を踏まえると、コードAとコードBの各々のビット数(符号長)は、例えば128ビット又は256ビットに設定される。
【0112】
復調信号をnビットごとに平均化し、平均化された信号をサンプリングする場合、例えばサンプリング周期を50μs(20kHzの逆数)とすれば、平均化に必要なビット数は、次式のように決定される。
【0113】
【数23】
【0114】
さらに、ドプラ信号の周波数分解能について検討する。FFT出力におけるドプラスペクトラムの周波数分解能ΔFとデータ取り込み時間ΔTは、次式に示す関係にある。
【0115】
【数24】
【0116】
測定可能なドプラ周波数の最大値を例えば10kHzとし、ドプラスペクトラムの周波数分解能を例えば最大周波数の1/100とすると、周波数分解能ΔFは次式のとおりとなる。
【0117】
【数25】
【0118】
したがって、この具体例におけるデータ取り込み時間ΔTは次式のようになる。
【0119】
【数26】
【0120】
データ取り込み時間ΔTは、図8における期間αと期間βの長さに相当する。期間αと期間βで得られる2つの復調信号は、合成された後にFFT処理されて周波数スペクトラムに変換される。あるいは、期間αと期間βで得られる2つの復調信号がそれぞれFFT処理されて周波数スペクトラムに変換されてから合成されてもよい。
【0121】
図11は、ドプラ信号の抽出を説明するための図である。図11(A)には、送信信号の含まれるPSK連続波の周波数スペクトラムが示されている。周波数f0は、RF信号(搬送波信号)の周波数である。RF信号の周波数f0を中心として広がっている側帯波の周波数間隔は、コードANとコードBNの繰り返し周波数fpである。また、周波数f0を中心として広がっている側帯波の電力が0(ゼロ)となる、いわゆるヌル(null)点が存在する。周波数f0からヌル点までの周波数間隔はコードANとコードBNの1ビットの時間間隔Tの逆数となる。
【0122】
図11(B)には、受信信号に含まれるPSK連続波の周波数スペクトラムが示されている。受信信号は、生体内における減衰を無視すると、送信信号と同じ波形となる。したがって、図11(B)に示す受信信号の周波数スペクトラムは、図11(A)に示す送信信号の周波数スペクトラムとほぼ同じである。但し、生体内における超音波の伝搬時間に応じて、送信信号と受信信号との間では位相が異なる。
【0123】
本実施形態では、PSK連続波に対して遅延処理を施して参照信号を形成し、受信ミキサ(図1の符号30)においてその参照信号を用いて受信信号に対してミキサ処理(参照信号と受信信号の乗算)が行われる。
【0124】
図11(C)には、ミキサ処理により得られる復調信号の周波数スペクトラムが示されている。図11(C)の復調信号は、相関が最大の場合における参照信号と受信信号の乗算結果に相当する。つまり、目標位置からの受信信号と、目標位置の深さに位相を合わせた参照信号との間の乗算結果が、図11(C)の復調信号となる。
【0125】
図11(C)に示す復調信号には、直流信号成分と、RF信号の周波数f0の2倍の高調波成分が含まれている。ドプラ信号は、こららの成分に付着した形で出現する。なお、LPF(図1の符号36,38)において、高調波成分がカットされて直流信号成分のみが抽出されるため、FFT処理部54においては、図11(C)に示す直流信号成分と周波数f0の2倍の高調波成分のうち、直流信号成分の周波数スペクトラムのみが形成される。
【0126】
そして、ドプラ情報解析部56において、図11(C)に示す直流信号成分の周波数スペクトラムからドプラ信号が抽出され、ドプラシフト量などに基づいて、目標位置に存在する血流の流速などが算出される。受信ミキサ(図1の符号30)において直交検波を施しているため、流速の極性を判断することもできる。また、直流信号成分の周波数スペクトラムからクラッタ信号を抽出して、目標位置に存在する血管壁の位置などを算出してもよい。
【0127】
なお、上述した実施形態においては、連続波をデジタル変調する際に位相シフトキーイング(PSK)を利用している。このPSKに換えて、デジタル変調方式として周波数シフトキーイング(FSK)を利用してもよい。また、デジタル変調された連続波のデータをメモリなどに記憶しておき、このメモリから読み出されるデータに基づいて、当該連続波を生成してもよい。
【0128】
さらに、図1では、遅延回路25と、π/2シフト回路26と、受信ミキサ30から合成部52I,52Qまでの受信系回路に関して、1つの目標位置に対応した単独の構成を示している。この図1に示す受信系の構成を拡張し、複数の目標位置に応じた複数の受信系回路を設けて、超音波ビームに沿った複数の目標位置から並列的にドプラ情報を抽出するようにしてもよい。
【0129】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0130】
22A コードA発生部、22B コードB発生部、23 時分割処理部、24 PSK変調処理部、25 遅延回路、30 受信ミキサ、42,44 時分割処理部、54 FFT処理部、56 ドプラ情報解析部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相補関係にある2つの周期的な第1信号列と第2信号列に基づいたデジタル変調処理により得られる、第1信号列に対応した連続波の第1送信信号と第2信号列に対応した連続波の第2送信信号とを交互に出力する送信信号処理部と、
第1送信信号と第2送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより、第1送信信号に対応した第1受信信号と第2送信信号に対応した第2受信信号を得る超音波送受部と、
生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ第1受信信号と第2受信信号に対して復調処理を施すことにより、第1受信信号に対応した第1復調信号と第2受信信号に対応した第2復調信号を得る受信信号処理部と、
第1復調信号と第2復調信号に基づいて前記目標位置に対応した生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、符号長Nの第1符号列Nを繰り返す第1信号列に基づいてデジタル変調処理された第1送信信号と、符号長Nの第2符号列Nを繰り返す第2信号列に基づいてデジタル変調処理された第2送信信号と、を交互に出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記符号長Nは2の累乗であり、
前記第1符合列Nと前記第2符合列Nの各々は、第1符合列N/2と第2符号列N/2に基づいて形成される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記第1符合列Nは、符号列ANであり、
前記第2符合列Nは、符号列BNであり、
符号列ANは、符号列AN/2と符号列BN/2を直列接続した符号列であり、
符号列BNは、符号列AN/2と符号列−BN/2を直列接続した符号列であり、
符号列−BN/2は、符号列BN/2の符号の値を反転させた符号列である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記符号列ANと前記符号列BNの各々は、符号長2の符号列A2=(1,1)と符号列B2=(1,−1)から、前記直列接続を繰り返して形成される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記第1符合列Nは、符号列ANであり、
前記第2符合列Nは、符号列BN´であり、
符号列ANは、符号列AN/2と符号列BN/2を直列接続した符号列であり、
符号列BN´は、符号列BN/2-1と符号列−AN/2-1を直列接続した符号列であり、
符号列BN/2は、符号列AN/4と符号列−BN/4を直列接続した符号列であり、
符号列BN/2-1は、符号列BN/2の符号の並び反転させた符号列であり、
符号列−AN/2-1は、符号列AN/2の符号の値と並びを共に反転させた符号列であり、
符号列−BN/4は、符号列BN/4の符号の値を反転させた符号列である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記符号列ANと前記符号列BN´の各々は、符号長2の符号列A2=(1,1)と符号列B2=(1,−1)から、前記直列接続を繰り返して形成される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記生体内情報抽出部は、第1復調信号と第2復調信号を合成処理して得られる合成復調信号に基づいて前記目標位置に対応した生体内情報を抽出する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
互いに相補関係にある2つの周期的な第1信号列と第2信号列に基づいたデジタル変調処理により得られる、第1信号列に対応した連続波の第1送信信号と第2信号列に対応した連続波の第2送信信号とを交互に出力する送信信号処理部と、
第1送信信号と第2送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより、第1送信信号に対応した第1受信信号と第2送信信号に対応した第2受信信号を得る超音波送受部と、
生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ第1受信信号と第2受信信号に対して復調処理を施すことにより、第1受信信号に対応した第1復調信号と第2受信信号に対応した第2復調信号を得る受信信号処理部と、
第1復調信号と第2復調信号に基づいて前記目標位置に対応した生体内情報を抽出する生体内情報抽出部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送信信号処理部は、符号長Nの第1符号列Nを繰り返す第1信号列に基づいてデジタル変調処理された第1送信信号と、符号長Nの第2符号列Nを繰り返す第2信号列に基づいてデジタル変調処理された第2送信信号と、を交互に出力する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記符号長Nは2の累乗であり、
前記第1符合列Nと前記第2符合列Nの各々は、第1符合列N/2と第2符号列N/2に基づいて形成される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記第1符合列Nは、符号列ANであり、
前記第2符合列Nは、符号列BNであり、
符号列ANは、符号列AN/2と符号列BN/2を直列接続した符号列であり、
符号列BNは、符号列AN/2と符号列−BN/2を直列接続した符号列であり、
符号列−BN/2は、符号列BN/2の符号の値を反転させた符号列である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記符号列ANと前記符号列BNの各々は、符号長2の符号列A2=(1,1)と符号列B2=(1,−1)から、前記直列接続を繰り返して形成される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記第1符合列Nは、符号列ANであり、
前記第2符合列Nは、符号列BN´であり、
符号列ANは、符号列AN/2と符号列BN/2を直列接続した符号列であり、
符号列BN´は、符号列BN/2-1と符号列−AN/2-1を直列接続した符号列であり、
符号列BN/2は、符号列AN/4と符号列−BN/4を直列接続した符号列であり、
符号列BN/2-1は、符号列BN/2の符号の並び反転させた符号列であり、
符号列−AN/2-1は、符号列AN/2の符号の値と並びを共に反転させた符号列であり、
符号列−BN/4は、符号列BN/4の符号の値を反転させた符号列である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記符号列ANと前記符号列BN´の各々は、符号長2の符号列A2=(1,1)と符号列B2=(1,−1)から、前記直列接続を繰り返して形成される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記生体内情報抽出部は、第1復調信号と第2復調信号を合成処理して得られる合成復調信号に基づいて前記目標位置に対応した生体内情報を抽出する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−217875(P2011−217875A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88460(P2010−88460)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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