説明

超音波診断装置

【課題】長時間の超音波診断を可能とし、かつ通信エラーの発生確率を低下させることができる、超音波プローブと装置本体とを無線で通信接続された超音波診断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】振動素子66毎の超音波の送波タイミングを規定したタイミングデータを外部から読取る読取部を設け、送信ビームフォーマ18に送信するデータを読取るようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に超音波を送受波して生体内組織に関する情報を取得する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内に超音波を送受波して生体内組織に関する情報を取得する超音波診断装置が広く普及している。超音波診断装置は生体内に超音波を送受波する超音波プローブと装置本体とから構成され、使用者は、超音波プローブを手で把持し、被検体の測定箇所に当接させながら超音波診断を行う。従来、超音波プローブと装置本体とはケーブルで接続され、装置本体から超音波プローブが制御されていた。このように超音波プローブが装置本体とケーブルで接続されている状態で使用者が超音波診断を行うと、ケーブルが超音波プローブのハンドリング性を悪化させる原因となる。
【0003】
この超音波プローブのハンドリング性を向上させる目的で、超音波プローブと装置本体とを無線で通信接続する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
従来使用されていたケーブルによって伝達される電気信号が、そのまま無線の電波信号に置き換えられている。無線による通信接続を採用することで、超音波プローブのハンドリング性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−141328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されている超音波診断装置においては、超音波プローブから送信される超音波が被検体内で集束されるように、送信ビームフォーマを搭載している。送信ビームフォーマは、超音波プローブから送信される超音波の位相に付与する遅延調整量を与える機能を有している。使用者は超音波診断に際してこの遅延調整量を変更したい場合がある。遅延調整量を変更するには、装置本体から無線を介して遅延調整量のデータを送信させる必要があり、無線通信によるバッテリの消費電力が無視できない。バッテリの消費電力が多くなると、超音波診断の診断時間を十分にとることができない。
【0007】
また、無線による通信接続の場合、通信エラーの発生確率が大きくなってしまい、超音波診断に支障を来す場合がある。
【0008】
本発明は、超音波プローブと装置本体とが無線で通信接続された超音波診断装置でありながら、送信ビームフォーマに用いる遅延調整量の変更に必要な電力消費量を抑えて長時間の超音波診断を可能とするとともに、通信エラーの影響を受けにくい超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0010】
1.被検体に超音波を送波し、被検体からの反射波を受波して受波信号を出力する複数の振動素子を搭載した振動部と、
前記振動素子毎の超音波の送波タイミングを規定したタイミングデータを外部から読取る読取部と、
前記タイミングデータを記憶する記憶部と、
前記タイミングデータに基づいて前記振動素子を駆動する振動部駆動信号を出力する送信部と、
前記受波信号を処理する受信部と、
前記受信部において処理された受波信号に対応する受波無線信号を送信する受波無線信号送信部と、
を備えた超音波プローブと、
前記超音波プローブから送信される受波無線信号を受信する受波無線信号受信部と、
前記受波無線信号受信部が受信した受波無線信号に対して、動作モードに応じた所定の信号処理を実行する信号処理部と、
を有する装置本体とからなることを特徴とする超音波診断装置。
【0011】
2.前記受信部は、前記各振動素子毎に出力される前記受波信号を整相加算処理することを特徴とする前記1記載の超音波診断装置。
【0012】
3.前記超音波プローブは、
少なくとも前記送信部の稼働状態を制御するスイッチ手段を有することを特徴とする前記1または2記載の超音波診断装置。
【0013】
4.前記装置本体は、
前記スイッチ手段を制御するスイッチ信号を生成するスイッチ制御部と、
前記スイッチ信号に対応するスイッチ無線信号を送信するスイッチ無線信号送信部と、
を有し、
前記超音波プローブは、
前記スイッチ手段に接続され、前記スイッチ無線信号を受信するスイッチ無線信号受信部を有することを特徴とする前記3記載の超音波診断装置。
【発明の効果】
【0014】
超音波プローブと装置本体とが無線で通信接続された超音波診断装置でありながら、送信ビームフォーマに用いる遅延調整量の変更に必要な電力消費量を抑えて長時間の超音波診断を可能とするともに、通信エラーの影響を受けにくい超音波診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態にかかる超音波診断装置10の外観構成を示す図である。
【図2】実施形態にかかる超音波診断装置10の全体構成を示すブロック図である。
【図3】超音波プローブにおける送信ビームフォーマ18等の内部構成を示す図である。
【図4】超音波プローブ12における受信ビームフォーマ22、光信号送信部24等の内部構成を示す図である。
【図5】実施形態にかかる超音波プローブ12の外観構成斜視図である。
【図6】超音波プローブ12にプッシュセンサ95を搭載させた状態の外観構成図である。
【図7】超音波プローブ12に、超音波プローブ12が超音波プローブホルダ5から取り外されたか否かを検出するプッシュセンサ95が取り付けられた状態を示す図である。
【図8】加速度センサ97の概要説明図である。
【図9】スイッチ手段を装置本体14に持たせ場合の超音波診断装置10の全体構成を示すブロック図である。
【図10】超音波プローブ12の動作を表すフローチャート図である。
【図11】装置本体14の動作を表すフローチャート図である。
【図12】受信ビームフォーマ22を装置本体14に持たせ場合の超音波診断装置10の全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面により説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限られるものではない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0017】
図1は、実施形態における超音波診断装置10の外観構成を示す図である。超音波診断装置10は、図1に示すように、無線を介して通信接続された超音波プローブ12と装置本体14とから構成される。
【0018】
超音波プローブ12は、被検体Hに対して超音波を送信すると共に、被検体Hで反射した反射波を受波して受波信号を出力し、受波信号に対応した受波無線信号を装置本体14へ送信する。
【0019】
装置本体14は、受波無線信号を受信し、動作モードに応じた超音波画像を表示する表示部40と、使用者が操作する操作入力部11と、超音波プローブホルダ5等とを備えて構成される。
【0020】
図2は、実施形態にかかる超音波診断装置10の全体構成を示すブロック図である。超音波プローブ12と装置本体14との間における無線による通信接続は、電波信号、特に光信号により行う。光は周波数が大きいことから通信帯域が広いので、通信容量を大きくとれる特長を有し好ましい。
【0021】
従来の超音波プローブ12と装置本体14装置本体との無線接続では、装置本体14から送信ビームフォーマ18に送信するデータを無線で送信していたが、本実施形態では、送信ビームフォーマ18に送信するデータは超音波プローブ12自体が保有するようにする。
【0022】
超音波プローブ12は、超音波送受ユニットとして機能し、スイッチ手段13、遅延テーブル記憶部16、端子17、送信ビームフォーマ18、ROMリーダ19、振動部20、受信ビームフォーマ22、光信号送信部24及びバッテリ26等で構成されている。超音波プローブ12は単一の筐体で形成された可搬型である。
【0023】
スイッチ手段13は、超音波プローブ12の稼働状態、すなわち超音波プローブ12の各部の動作の開始、停止を制御する機能を有する。
【0024】
端子17は、超音波プローブ12に、外部メモリとして機能するROM(Read Only Memory)15等を接続できる端子である。なお、外部メモリであれば、ROM以外にもRAMを用いてもよい。
【0025】
ROMリーダ19は、振動部20を構成する振動素子66毎の超音波の送波タイミングを規定したタイミングデータ(遅延調整量)がテーブル化された遅延テーブルをROM15から読取る読取部として機能する。遅延テーブルはROMリーダ19が読取り可能なデータ形式であればどのような形式でもよい。ROM以外にも、不揮発性の記憶デバイスであれば、どのような記憶デバイスを用いてもよい。
【0026】
使用者は主に遅延テーブルを変更したい場合に、新たな遅延テーブルを書かれたROMをROMリーダ19に同図に示すように接続する。ROMリーダ19にROM等が接続された場合、ROMリーダは自動的にROM等に記憶されている遅延テーブルを読取る。
【0027】
遅延テーブル記憶部16は、ROMリーダ19が読取った遅延テーブルを記憶する機能を有し、送信ビームフォーマ18は、遅延テーブル記憶部16に記憶された遅延テーブルに基づいて振動部駆動信号を生成する送信部として機能する。ROMリーダ19にROM等が接続されていない場合には、既に、遅延テーブル記憶部16に記憶されている遅延テーブルを読取ることとなる。
【0028】
振動部20は、振動部駆動信号に基づいて被検体Hに超音波を送波し、被検体Hからの反射波を受波して受波信号を出力する複数の振動素子を搭載している。
【0029】
受信ビームフォーマ22は、振動部20から出力される受波信号に対して整相加算処理等の受信処理を実行する受信部として機能する。
【0030】
光信号送信部24は、受信ビームフォーマ22において処理された受波信号に対応する受波無線信号(受波光信号)を装置本体14に向けて送信し、受波無線信号送信部として機能する。
【0031】
バッテリ26は、スイッチ手段13、送信ビームフォーマ18、ROMリーダ19、振動部20、受信ビームフォーマ22、光信号送信部24等に給電する電源(二次電池)の機能を有する。バッテリ26は取り付け外し可能な構成でもよい。バッテリ26を取り外し可能にすることで既に充電を行ったバッテリとの交換が容易になる。また、バッテリ26は、超音波プローブの筐体の外部に設けられる構成でもよい。
【0032】
図3は、超音波プローブ12における振動部20、送信ビームフォーマ18等の内部構成を示す図である。
【0033】
振動部20は、複数の振動素子66と、送信ビームフォーマ18が各振動素子へ出力する振動部駆動信号を増幅するアンプ68とを備えている。
【0034】
送信ビームフォーマ18は、遅延テーブル取得部60、及び遅延パルス発生回路64で構成されており、遅延テーブルに基づいて複数の振動素子66の各々に対してアンプ68を介して振動部駆動信号を出力する。
【0035】
遅延テーブルとは上記のように、振動素子66毎の超音波の送波タイミングを規定した遅延テーブル(各振動素子毎の遅延調整量)を規定するテーブルであり、遅延テーブルは上記のように遅延テーブル記憶部16に記憶されている。遅延テーブル取得部60は、遅延テーブルを遅延テーブル記憶部16から取得する。
【0036】
遅延テーブル記憶部16には、電子走査において必要とされる全てのステアリング角度に対応する遅延テーブルが予め登録されている。遅延パルス発生回路64は、遅延テーブル取得部60において取得された遅延テーブルに基づいて、その遅延テーブルが規定する超音波出力タイミングで各振動素子66に対してアンプ68を介して振動部駆動信号を出力する。
【0037】
また、例えば、様々なフォーカス位置を規定する遅延テーブルを遅延テーブル記憶部16に記憶させておき、送波制御信号により所望のフォーカス位置を特定することも可能である。
【0038】
図6は、超音波プローブ12における受信ビームフォーマ22、光信号送信部24等の内部構成を示す図である。受信ビームフォーマ22は整相加算部72及びアナログデジタルコンバータ(ADC)74で構成されている。各振動素子66は被検体Hの生体内から反射される超音波を受波して受波信号を出力する。受波信号は各振動素子66毎に設けられたアンプ76を介してローパスフィルタ78を通って受信ビームフォーマ22に出力される。受信ビームフォーマ22は各振動素子66が出力する受波信号毎に遅延調整を行い、遅延調整後の受波信号を加算処理するといういわゆる整相加算処理を行う。
【0039】
整相加算部72から出力される整相加算後の受波信号はADC74においてアナログデジタル変換されて光信号送信部24に出力される。
【0040】
光信号送信部24は、発光素子80及び光フィルタ82で構成されている。ADC74から出力されるデジタル化された整相加算後の受波信号は例えば赤外光を発する発光素子80により受波光信号に変換される。受波光信号は、例えばADC74の出力のハイレベル・ローレベルのそれぞれに対応して2値光強度変調された光信号である。発光素子80の出力は光フィルタ82を介して装置本体14に送信される。
【0041】
図5は、実施形態における超音波プローブ12の外観構成斜視図である。図5(a)は、斜め上方から見た図であり、図5(b)は、斜め下方から見た図である。図5(c)は、超音波プローブ12を超音波プローブホルダ5に装填する状態を示す図である。
【0042】
90は、被検体Hに当接して超音波を送信する窓である。92は、受波無線信号を送信する窓である。超音波プローブ12は、装置本体14と電気的に接触して充電される充電端子93を備えている。超音波プローブホルダ5には超音波プローブ12のバッテリ26を充電するための接触端子96が設けられている。使用者が超音波プローブ12を超音波プローブホルダ5に装填すると、超音波プローブ12には装置本体14から充電端子93を介して電力が供給され、供給された電力がバッテリ26に蓄えられる。超音波プローブ12と装置本体との間にケーブルが無いため、診断の際のケーブルの煩わしさを解消できる。
【0043】
次いで、スイッチ手段13について図6から図8を用いて説明する。
【0044】
スイッチ手段13には、例えば公知のプッシュセンサ95を用いることができる。図6は、超音波プローブ12にプッシュセンサ95を搭載させた状態の外観構成図である。プッシュセンサ95とは、電気的に導通、非導通を検出するセンサである。プッシュセンサ95への物理的接触により、プッシュセンサ95内に備えられた機構により、二つの導電線の接触、非接触を制御するものである。従って、プッシュセンサ95に物理的接触があった場合には、抵抗値の変化としてスイッチのオン、オフを検出できる。
【0045】
また、プッシュセンサ95を超音波プローブ12が超音波プローブホルダ5から取り外されたか否かを検出するセンサに用いてもよい。
【0046】
図7は、超音波プローブ12に、超音波プローブ12が超音波プローブホルダ5から取り外されたか否かを検出するプッシュセンサ95が取り付けられた状態を示す図である。
【0047】
プッシュセンサ95は同図に示すように、超音波プローブ12の後端に取り付けられ、超音波プローブ12を超音波プローブホルダ5に装填した際に、プッシュセンサ95が超音波プローブホルダ5の底面に接触してスイッチがオンされる位置に配置される。
【0048】
またスイッチ手段13としては、加速度センサを用いることができる。加速度センサとは、取り付けた被測定物が使用者の把持された際に、超音波プローブ12に生じる加速の方向と大きさを検知するセンサを言う。図8は、加速度センサ97の概要説明図である。加速度センサ97は相直交する3軸方向(x方向、y方向、z方向)の加速度を検出する。
【0049】
加速度センサの方式としては採用できる公知の様々なタイプがある。例えば、3次元MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)テクノロジーを使用したシリコンベースの容量センサが好適である。フォトリソグフラフィー技術により作製したシリコンの微細なコンデンサが加速度を受けると容量が変化することを利用した加速度センサである。
【0050】
かかる加速度センサ97を超音波プローブ12に内蔵させ、その加速度を3次元方向で検出し、合成した加速度が所定の大きさを上回った場合に、スイッチをオンにし、使用者が超音波プローブ12を把持したと判断する。
【0051】
以上のように、使用者が超音波診断を開始しようとするタイミングを、スイッチ手段13を用いて把握することができる。
【0052】
次いで、装置本体14について説明する。
【0053】
装置本体14は、図2に示すように、操作入力部11、光信号受信部34、信号処理部36、表示処理部38、表示部40、電源42、記憶部43、及び、これら各部を制御する制御部44で構成されている。
【0054】
光信号受信部34は、超音波プローブ12から送信される受波光信号を受信する受波無線信号受信部として機能し、光電変換処理を施した受波電気信号を信号処理部36に出力する。
【0055】
具体的には、光信号送信部24に備えられた光フィルタと同じ光学特性を有する光フィルタを介し、光電変換素子を用いて光を電気に変換する。
【0056】
記憶部43には、装置本体14で動作するプログラムが記憶されている。
【0057】
制御部44は図示しないCPU(セントラルプロセッシングユニット)を有し、記憶部43から操作に用いる一連の動作を実施するプログラムを呼び出し、制御部44内の図示しないRAM上に展開し、該プログラムに従って各部を制御する。
【0058】
信号処理部36は、光信号受信部34から出力される受波電気信号に基づいて、各種動作モードに対応する所定の信号処理、例えば、Bモード用信号処理あるいはドップラモード用信号処理を行う。
【0059】
表示処理部38は、信号処理部36の出力に対して画像表示処理を施した画像データを形成して表示部40に出力する。
【0060】
表示部40は、表示処理部38が形成した画像データを基に超音波画像を表示する。表示部40には液晶ディスプレイ等の高解像のディスプレイを採用することが望ましい。
【0061】
電源42は、装置本体14の各部へ給電する。
【0062】
操作入力部11は、使用者が超音波診断装置10への各種の操作を入力できるよう構成されている。
【0063】
なお、スイッチの機能を装置本体14に持たせ、超音波プローブ12のスイッチ手段13を、使用者の手動等で制御するのではなく、装置本体14の操作入力部11から使用者が制御するような構成を採用してもよい。すなわち、この場合のスイッチ手段13は、使用者の手動等で制御するスイッチではなく、信号で制御されるスイッチを指す。スイッチ手段13には、例えばリレーを採用できる。スイッチ手段13が受けとったスイッチ無線信号は例えばハイまたはローの電圧信号であり、リレーはハイまたはローの電圧信号に応じて送信ビームフォーマ18の駆動、非駆動を制御する。
【0064】
図9は、スイッチの機能を装置本体14に持たせ場合の超音波診断装置10の全体構成を示すブロック図である。以下に説明する。
【0065】
図2に示したブロック図との相違は、スイッチ制御部46、スイッチ無線信号送信部47、スイッチ無線信号受信部48を有している点である。
【0066】
スイッチ制御部46は、制御部44の指示を受け、超音波プローブ12におけるスイッチ手段13のオンオフの制御を実施するスイッチ信号を生成する。
【0067】
スイッチ無線信号送信部47は、該スイッチ信号に対応するスイッチ無線信号を送信する。
【0068】
スイッチ無線信号受信部48は、無線を介してスイッチ無線信号送信部47から送信されたスイッチ無線信号を受信し、スイッチ手段13に送信する。
【0069】
なお、無線信号は光信号であることが好ましい。光は周波数が大きくことから通信帯域が広いので、通信容量を大きくとれる特長を有している。
【0070】
次に、超音波診断装置10を用いた超音波診断の具体的なフローについて図10、図11のフローチャート図を用いて説明する。
【0071】
図10は、超音波プローブ12の動作を表すフローチャート図であり、図11は、装置本体14の動作を表すフローチャート図である。
【0072】
超音波プローブ12における具体的なフローについて図10を用いて説明する。超音波プローブ12には、例として図6を用いて説明した、使用者が押すプッシュセンサ95を搭載した超音波プローブ12を採用する。
【0073】
最初に、使用者は装置本体14の図示しない電源をONにする(ステップS1)。すると、制御部44等の各部が立ち上がり、制御部44は装置本体14内の各部の制御を開始する。
【0074】
次いで、使用者は超音波診断を開始するために、超音波プローブ12を把持し(ステップS2)、プッシュセンサ95をオンにする(ステップS3)。
【0075】
すると、送信ビームフォーマ18をはじめ、超音波プローブ12内の各部のバッテリ26からの給電が開始される(ステップS4)。
【0076】
使用者はROMをROMリーダ19に接続する。すると、ROMリーダは自動的にROM等に記憶されている遅延テーブルを読取る。遅延テーブル記憶部16は、ROMリーダ19が読取った遅延テーブルを記憶する。(ステップS5)。
【0077】
送信ビームフォーマ18内の遅延テーブル取得部60は、遅延テーブル記憶部16内に記録された遅延テーブルを読取る。遅延パルス発生回路64はビームフォーミングを行う遅延を生じたパルスを発生させる。各パルスはアンプ68を介して増幅され、各振動素子66に対して振動部駆動信号として出力される(ステップS6)。
【0078】
振動部駆動信号を入力された各振動素子66は超音波28を送信開始する(ステップS7)。
【0079】
被検体の中の音響インピーダンスの不整合が生じている部分から反射波が生じ、生じた反射波を振動素子66が受信し電気信号である受波信号に変換する(ステップS8)。
【0080】
受信ビームフォーマ22は、受波信号をビームフォーミングする。(ステップS9)。
【0081】
光信号送信部24は、受信ビームフォーマ22において処理された受波信号に対応する受波光信号を装置本体14に向けて送信する。以上が超音波プローブ12における動作である。
【0082】
次に装置本体14の動作について図11を用いて説明する。
【0083】
装置本体14が稼働している間、制御部44は光信号受信部34に超音波プローブ12から受波光信号が送信されるか否かを常時検出している状態にある。
【0084】
光信号受信部34に超音波プローブから受波光信号が送信されると、制御部44は受波電気信号を信号処理部36に出力するよう光信号受信部34を制御する(ステップS11)。
【0085】
信号処理部36は、受波電気信号に基づいて、例えば、Bモード用信号処理を行う(ステップS12)。Bモード用信号処理に限らずドップラモード用信号処理等の他の処理でもよい。どの処理を実施するかは操作入力部11から使用者が選択可能に構成される。
【0086】
表示処理部38は、信号処理部36の出力に対して画像表示処理を施した画像データを形成して表示部40に出力する(ステップS13)。表示部40は超音波画像を表示させる(ステップS14)。以上が装置本体14における動作である。
【0087】
以上のように、従来の超音波プローブ12と装置本体14との無線接続では、装置本体14から送信ビームフォーマ18に送信する遅延データを無線で送信していたところ、外部から読取る読取部を設け、送信ビームフォーマ18に用いることで、超音波プローブと装置本体とが無線で通信接続された超音波診断装置でありながら、送信ビームフォーマに用いる遅延調整量の変更に必要な電力消費量を抑えて長時間の超音波診断を可能とするともに、通信エラーの影響を受けにくい超音波診断装置を提供できる。
【0088】
なお、本実施形態の説明においては、受信BFを内蔵する形態で、動作を説明したが、図12に示すように、伝送レートは大きくなるが、複数の超音波プローブからの信号を直接、装置本体14側に伝送させ、装置本体14に設けた受信ビームフォーマ22を用いて受波信号をビームフォーミングする形態も、もちろん考えられる。
【0089】
受信ビームフォーマ22の大きな役目である整相加算に関しては、特開2003−339698号公報に記述されているように相関処理を行うアルゴリズムなどが提案され、このようなアルゴリズムを実現するには、非常に演算速度の速いハードウェアが必要であり、回路規模、電源消費電力、低発熱の点からして、装置本体14側でビームフォーミングを行うことが有利な場合がある。
【符号の説明】
【0090】
5 超音波プローブホルダ
10 超音波診断装置
11 操作入力部
12 超音波プローブ
13 スイッチ手段
14 装置本体
15 ROM
17 端子
18 送信ビームフォーマ
19 ROMリーダ
20 振動部
22 受信ビームフォーマ
24 光信号送信部
26 バッテリ
28 超音波
34 光信号受信部
36 信号処理部
38 表示処理部
40 表示部
42 電源
43 記憶部
44 制御部
46 スイッチ制御部
47 スイッチ無線信号送信部
48 スイッチ無線信号受信部
60 遅延テーブル取得部
64 遅延パルス発生回路
66 振動素子
68、76 アンプ
72 整相加算部
74 アナログデジタルコンバータ
78 ローパスフィルタ
80 発光素子
82 光フィルタ
93 充電端子
95 プッシュセンサ
96 接触端子
97 加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送波し、被検体からの反射波を受波して受波信号を出力する複数の振動素子を搭載した振動部と、
前記振動素子毎の超音波の送波タイミングを規定したタイミングデータを外部から読取る読取部と、
前記タイミングデータを記憶する記憶部と、
前記タイミングデータに基づいて前記振動素子を駆動する振動部駆動信号を出力する送信部と、
前記受波信号を処理する受信部と、
前記受信部において処理された受波信号に対応する受波無線信号を送信する受波無線信号送信部と、
を備えた超音波プローブと、
前記超音波プローブから送信される受波無線信号を受信する受波無線信号受信部と、
前記受波無線信号受信部が受信した受波無線信号に対して、動作モードに応じた所定の信号処理を実行する信号処理部と、
を有する装置本体とからなることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記受信部は、前記各振動素子毎に出力される前記受波信号を整相加算処理することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波プローブは、
少なくとも前記送信部の稼働状態を制御するスイッチ手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記装置本体は、
前記スイッチ手段を制御するスイッチ信号を生成するスイッチ制御部と、
前記スイッチ信号に対応するスイッチ無線信号を送信するスイッチ無線信号送信部と、
を有し、
前記超音波プローブは、
前記スイッチ手段に接続され、前記スイッチ無線信号を受信するスイッチ無線信号受信部を有することを特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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