説明

超音波診断装置

【課題】エレベーション方向から刺された穿刺針を超音波画像に表示する超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波診断装置(100)は、複数の振動素子からなる振動部を有し超音波ビームを送波する超音波プローブ(10)と、超音波ビームを制御する超音波ビーム制御部(21)と、超音波ビームを被検体に送波し受波したエコー信号に基づいてアジマス方向の超音波画像データを生成する画像データ生成部(36)と、超音波画像データに基づいて超音波画像を表示する表示部(60)と、を備える。そして画像データ生成部(36)はエレべーション方向のデフォーカス時のエコー信号に基づいて被検体の表面に近い領域を含む超音波画像データを生成し、エレべーション方向のフォーカス時のエコー信号に基づいて被検体の超音波画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、穿刺針を刺入する際に超音波画像を表示する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブが接触された位置の断層画像情報を表示するため、被検体に穿刺針を刺し患部の一部を切り取る生検(biopsy)などの際に、被検体内の穿刺針の刺入位置を確認するのに適している。超音波診断装置を用いた穿刺では、超音波プローブに穿刺ガイドアタッチメントが装着されてこの穿刺ガイドアタッチメントを使って穿刺する場合と、穿刺ガイドアタッチメントを使用しないで穿刺する場合とがある。
【0003】
一般に、超音波診断装置を操作するオペレータは、診断する部位の焦点距離が浅い場合に超音波プローブのエレベーション方向(Elevation)の振動素子数である開口幅を狭くする。超音波プローブの開口幅を狭くすると超音波断面画像の厚みが薄いものとなり、エレベーション方向の分解能が向上するためである。しかし、開口幅を狭くすると、刺入を行う際に穿刺針が超音波断面画像から外れる頻度が高くなる。特許文献1には、オペレータがアジマス方向((Azimuth):走査方向)から穿刺針を穿刺する超音波診断装置が開示されている。この超音波診断装置では、穿刺針が超音波画像に表示されるように、エレベーション方向の開口幅を広くして超音波画像を取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−237788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、穿刺針が穿刺される方向に制限があることは穿刺針を刺す生検又は治療等において好ましくない。そこでエレベーション方向から穿刺針が刺される場合にも、穿刺針の穿刺状況が超音波画像に表示される超音波診断装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点の超音波診断装置は、アジマス方向及びアジマス方向と直交するエレべーション方向に並んだ複数の振動素子からなる振動部を有し超音波ビームを送波する超音波プローブと、超音波ビームを制御する超音波ビーム制御部と、超音波ビームを被検体に送波し受波したエコー信号に基づいて、アジマス方向の超音波画像データを生成する画像データ生成部と、超音波画像データに基づいて超音波画像を表示する表示部と、を備える。そして超音波ビーム制御部は超音波ビームをエレべーション方向にデフォーカスさせ、画像データ生成部はデフォーカス時のエコー信号に基づいて被検体の表面に近い領域を含む超音波画像データを生成するとともに、超音波ビーム制御部は超音波ビームをエレべーション方向にフォーカスさせ、画像データ生成部はフォーカス時のエコー信号に基づいて被検体の超音波画像データを生成する。
【0007】
超音波診断装置の超音波ビーム制御部はデフォーカスの超音波ビームをエレべーション方向に偏向させる。
また、超音波ビームをデフォーカスさせる際に、超音波ビーム制御部はエレべーション方向の全開口の振動素子を振動させる。
また、画像データ生成部はデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算し、表示部は加算された超音波画像を表示する。
【0008】
第2観点の超音波診断装置の超音波ビーム制御部はデフォーカスの超音波ビームをエレべーション方向の第1方向に偏向させ、且つエレべーション方向の第1方向とは異なるに第2方向に偏向させる。
画像データ生成部は第1方向に偏向したデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、第2方向に偏向したデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、フォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算し、表示部は加算された超音波画像を表示する。
【0009】
第3観点の超音波診断装置の超音波ビーム制御部はデフォーカスの超音波ビームをエレべーション方向に偏向させ、且つ超音波ビーム制御部はエレべーション方向の全開口の振動素子を振動させるとともにエレべーション方向の一部の開口の振動素子を振動させる。
画像データ生成部は全開口の偏向したデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、一部の開口の偏向したデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、フォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算し、表示部は加算された超音波画像を表示する。
【0010】
超音波診断装置の振動部は、アジマス方向に並んだ振動素子数がエレべーション方向に並んだ振動素子数よりも多い。
超音波診断装置の画像データ生成部は、デフォーカス時の超音波画像データに彩色する。
第4観点の超音波診断装置の画像データ生成部は、デフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データに加算係数を乗算し、フォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データに加算係数を乗算する。そして、乗算されたデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと乗算されたフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算する。
【0011】
第5観点の超音波診断装置の画像データ生成部は、超音波画像を構成する第1領域のデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、超音波画像を構成する第1領域とは異なる第2領域のフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算する。
【0012】
超音波プローブは、エレべーション方向において振動部の外側から中央に向かって穿刺針を刺入させる穿刺ガイドアタッチメントを備える。そして、穿刺ガイドアタッチメントは超音波プローブから着脱可能である。
【0013】
第6観点の超音波診断装置は、被検体に刺入される穿刺針の先端の位置を検出する針検出部を備える。そして、針検出部が穿刺針の先端が所定部位に到達したことを検出した際には、超音波ビーム制御部は超音波ビームのデフォーカスを停止する。
【0014】
第7観点の超音波診断装置は、アジマス方向及びアジマス方向と直交するエレべーション方向に並んだ複数の振動素子からなる振動部を有し、超音波ビームを送波する超音波プローブと、超音波ビームを制御する超音波ビーム制御部と、超音波ビームを被検体に送波し受波したエコー信号に基づいて、アジマス方向の超音波画像データを生成する画像データ生成部と、超音波画像データに基づいて超音波画像を表示する表示部と、を備える。そして、超音波ビーム制御部は超音波ビームをエレべーション方向に全開口の振動素子を振動させた際のエコー信号に基づいて被検体の表面に近い領域を含む超音波画像データを生成するとともにエレべーション方向の一部の開口の振動素子を振動させた際のエコー信号に基づいて被検体の超音波画像データを生成する。
【発明の効果】
【0015】
前記観点の発明である超音波診断装置は、エレベーション方向から穿刺針が刺される場合にも、浅い領域で穿刺針の穿刺状況が超音波画像に表示されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】超音波診断装置100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】超音波プローブ10を使いながら穿刺針90を刺入する状態を示した図である。
【図3】第1穿刺モードで超音波画像を表示する際のフローチャートである。
【図4】(a)は1.5D型プローブでエレベーション方向にデフォーカスさせた図である。 (b)は1.5D型プローブでエレベーション方向にフォーカスさせた図である。
【図5】(a)は1.5D型プローブで穿刺針90が刺入され始めた際の音波ビームUBと穿刺針90との関係を示した図である。 (b)は1.5D型プローブで穿刺針90が目的部位まで刺入した際の音波ビームUBと穿刺針90との関係を示した図である。
【図6】(a)は図3のステップS15で表示される超音波画像である。 (b)は図3のステップS18で表示される超音波画像である。
【図7】(a)は1.25D型プローブで穿刺針90が刺入され始めた際の音波ビームUBと穿刺針90との関係を示した図である。 (b)は1.25D型プローブで穿刺針90が目的部位まで刺入した際の音波ビームUBと穿刺針90との関係を示した図である。
【図8】(a)は1.75D型プローブでエレベーション方向にデフォーカスさせ且つマイナスのエレベーション方向(−X)に偏向させた図である。 (b)は1.75D型プローブでエレベーション方向にフォーカスさせた図である。
【図9】(a)は1.75D型プローブで穿刺針90が刺入され始めた際の音波ビームUBと穿刺針90との関係を示した図である。 (b)は1.75D型プローブで穿刺針90が目的部位まで刺入した際の音波ビームUBと穿刺針90との関係を示した図である。
【図10】第2穿刺モードで超音波画像を表示する際のフローチャートである。
【図11】(a)は1.75D型プローブで大きなデフォーカスで且つ偏向された音波ビームUB5が送波された図である。 (b)は1.75D型プローブで小さいデフォーカスで且つ偏向された音波ビームUB6が送波された図である。 (c)はフォーカスした音波ビームUB2が送波された図である。
【図12】図10のステップS25で表示される超音波画像である。
【図13】図10のステップS30で表示される超音波画像である。
【図14】(a)は1.75D型プローブでデフォーカスし且つ偏向された音波ビームUB5が送波された図である(全開口)。 (b)は1.75D型プローブでデフォーカスし且つ偏向された音波ビームUB7が送波された図である(一部開口)。
【図15】(a)は1.75D型プローブでデフォーカスし且つ大きく偏向された音波ビームUB8が送波された図である。 (b)は1.75D型プローブでデフォーカスし且つ小さく偏向された音波ビームUB9が送波された図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明にかかる超音波診断装置を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
<超音波診断装置100の構成>
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置100の構成を示すブロック図である。この超音波診断装置100は、超音波プローブ10と、走査制御部21と、送信制御部22と、駆動信号発生部23とを有している。さらに、超音波診断装置100は、受信信号処理部32と、受信制御部33と、ローデータメモリ34と、受信ビームフォーマ35と、画像生成部36と、針検出部37と、制御部40と、入力部45と、記憶部50と、表示部60とを有している。
【0019】
超音波プローブ10は、印加される複数の駆動信号に従って被検体に向けて超音波を送波すると共に、被検体から反射したエコー信号を受波することにより複数の受信信号を出力する複数の超音波トランスデューサ12を含んでいる。本実施形態では超音波トランスデューサ12は、二次元状に配列されたトランスデューサ素子からなる。また超音波プローブ10は、制御信号分配部14及びスイッチング回路16を有している。これらの詳細については後述する。
【0020】
超音波トランスデューサ12は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)などの圧電セラミック等の圧電材料の両端に電極を形成した振動素子によって構成されている。そのような振動素子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮する。この伸縮により、それぞれの振動素子からパルス状又は連続波の超音波が発生し、それらの超音波の合成によって超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動素子は、伝播した超音波を受信することによって伸縮し電気信号を発生する。それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0021】
図1では、1.5D型の超音波トランスデューサ12が示されている。またスイッチング回路16は超音波トランスデューサ12の+Y側の端の振動素子への配線が描かれているが、他の振動素子へも同様な配線がなされている。
【0022】
本実施形態では、超音波トランスデューサ12は、1.25D型、1.5D型、1.75D型及び2D型の多列配列である。1.25D型、1.5D型、1.75D型及び2D型の振動素子はエレベーション方向及びアジマス方向に配列されており、以下のように区分される。
【0023】
1.25D型:エレベーション方向のセンター軸について対称な2つの振動素子を共通結線し、接続配線をスイッチングにより切り換えることにより開口径を可変とした超音波トランスデューサ12である。従って焦点の形成は音響レンズ等でのみ行われ、焦点(フォーカス)距離は固定である。
【0024】
1.5D型:エレベーション方向のセンター軸について対称な2つの振動素子(例えば、本実施形態ではE1列とE7列、E2列とE6列、…)を共通結線し、各列の振動素子をセンター軸対称に独立して駆動するようにした超音波トランスデューサ12である。従って、エレベーション方向における開口径は可変(E1列〜E7列、E2列〜E6列又はE3列〜E5列)であり、振動素子の駆動タイミングを配線ごとに調節することにより、焦点(フォーカス)距離も変化させることができる。なお、超音波ビームの送波方向はセンター軸方向に固定である。
【0025】
1.75D型:各振動素子を独立に配線することにより、振動素子を独立のタイミングで駆動するようにした超音波トランスデューサ12である。それにより、開口径や焦点距離を変化させると共に、超音波ビームをエレベーション方向に偏向できるようになる。なお、エレベーション方向における振動素子の幅は波長よりも大きいので、超音波ビームを偏向できる範囲には制約がある。
【0026】
2D型:エレベーション方向における振動素子数及び配列ピッチを、アジマス方向の振動素子数及び配列を同程度にしたものである。従って、焦点形成や超音波ビームの偏向を完全に制御することができる。
【0027】
走査制御部21は、被検体内の所定の撮像エリアを超音波ビームによって走査する場合に、超音波プローブ10から送波される超音波ビームの送波方向、受波方向、焦点距離を設定する。また走査制御部21は、超音波トランスデューサ12のアパーチャーの形状を設定することができる。走査制御部21は、それらの設定に基づいて、制御信号分配部14、送信制御部22、スイッチング回路16、受信制御部33、及び受信ビームフォーマ35を制御する。
【0028】
送信制御部22は、走査制御部21によって設定された超音波ビームの送波方向、焦点距離、及びアパーチャーの形状に従って送信フォーカス処理を行うために、複数の駆動信号に与えるべき遅延時間(遅延パターン)を設定する。
【0029】
駆動信号発生部23は、複数のチャンネルを有しており、各チャンネルは、送信制御部22において設定された遅延時間に基づいて、超音波トランスデューサ12のうち選択されたトランスデューサ素子に供給すべき駆動信号を発生するパルサ等を含んでいる。スイッチング回路16は、選択されたトランスデューサ素子を駆動信号発生部23に接続する。
【0030】
受信信号処理部32は、複数のチャンネルを有している。マルチプレクサ16は、走査制御部21の制御の下で、超音波トランスデューサ12のうち選択されたトランスデューサ素子を受信信号処理部32に接続する。
【0031】
受信信号処理部32の各チャンネルは、超音波トランスデューサ12から出力される受信信号を増幅しディジタルの受信信号(ローデータ(Raw Data))に変換する。受信制御部33は、受信信号をローデータメモリ34に記憶する。走査制御部21、送信制御部22、及び受信制御部33は、超音波診断装置100の送受信動作を制御する。
【0032】
受信ビームフォーマ35は、エコー信号の受信方向及び焦点距離に応じた複数の遅延パターン(位相整合パターン)を有しており、走査制御部21によって設定された受信方向及び焦点距離に従って、ローデータメモリ34から読み出された複数の受信信号にそれぞれの遅延を与え、それらの受信信号を加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、エコー信号の焦点が絞り込まれた音線信号(音線データ)が形成される。
【0033】
画像生成部36は、音線信号に包絡線検波処理を施し、さらに、Log(対数)圧縮やゲイン調整等の処理を施して、Bモード画像データを生成する。また画像生成部36は、生成されたBモード画像データを通常のテレビジョン信号の走査方式に従う表示用の画像信号に変換する。これにより、表示部60において、Bモードの超音波画像が表示される。また、必要に応じてBモード画像データは記憶部50に記憶される。
【0034】
また画像生成部36は、超音波ビームの送波ごとに得られる複数のフレーム(Bモード画像データ)を加算したり、フレームごとに彩色して彩色された複数のフレームを加算したりして、加算されたBモード画像データを表示用の画像信号に変換にする。
【0035】
針検出部37は、画像生成部36で得られたBモード画像データから、穿刺針90の先端部92(図2を参照。)の位置を画像認識により検出する。画像処理ではなく、穿刺アタッチメント98(図2(b)を参照。)に穿刺針90の移動量を検出する移動量センサを取り付け、その移動量から穿刺針90の先端部92の位置を計算するようにしてもよい。
【0036】
入力部45は、トラックボール、キーボード、マウス等の入力手段を含んでおり、オペレータが命令や情報を超音波診断装置に入力する際に用いられる。制御部40は、入力部45を用いて入力された命令や情報に基づいて、超音波診断装置100の各部を制御する。本実施形態においては、走査制御部21、送信制御部22、受信制御部33、受信ビームフォーマ35、画像生成部36、針検出部37及び制御部40が、CPU(中央演算装置)と、CPUに各種の処理を行わせるためのソフトウエアとによって構成される。ソフトウエアは、ハードディスク等の記憶部50に記憶される。
【0037】
<超音波プローブの外観構成>
図2は、超音波プローブ10を使いながら穿刺針90を刺入する状態を示した図である。(a)はその斜視図であり(b)はそのアジマス方向からの平面図である。図2(b)には、超音波プローブ10に着脱自在に接続される穿刺アタッチメント98が取り付けられている。
【0038】
例えば生体組織診断などではオペレータは超音波診断装置100を用いて目的部位(例えば腫瘍)への穿刺を行う。生体組織診断は被検体における目的部位に穿刺針90を刺入し、この穿刺針90から被検体の目的部位の組織を採取したりする。このような生体組織診断において、オペレータは超音波診断装置100の表示部60で目的部位の超音波画像EGを観察しながら穿刺針90を被検体の目的部位に刺入する。特にエレベーション方向から穿刺針90を挿入する際に、被検体の表面から浅い位置であっても穿刺針90の先端部92が表示部60の超音波画像EG上で確認できるようにすることが好ましい。神経ブロック等への穿刺針90の刺入についても同様である。
【0039】
本実施形態では、超音波プローブ10のエレベーション方向から穿刺針90を所定角度θで被検体に刺入する際に、超音波診断装置100はそのアジマス方向の超音波画像EG(図6を参照。)を表示部60に表示する。図2(b)には、超音波プローブ10に着脱自在に接続される穿刺アタッチメント98が取り付けられている。なお、穿刺針90の刺入の際に必ずしも穿刺アタッチメント98を使用する必要は無い。また、図2ではリニア型超音波プローブが描かれているが、コンベックス型超音波プローブまたはセクタ型超音波プローブでも良い。また、1.25D型、1.5D型及び1.75D型の超音波プローブ10には、音響レンズが取り付けられていてもよい。
【0040】
<第1穿刺モードによる超音波画像の表示>
(1.5D型の超音波トランスデューサの例)
第1穿刺モードについて、図3から図6を使って説明する。図3は第1穿刺モードで超音波画像を表示する際のフローチャートである。図4は超音波トランスデューサ12(図1を参照)をエレべーション方向にデフォーカス/フォーカスさせる図である。図5はアジマス方向からみた超音波ビームUBの概念図である。図6は表示部60に表示された超音波画像EGの例である。
【0041】
図3のステップS11において、オペレータが超音波プローブ10のエレベーション方向から被検体に穿刺針90を刺入する際には、まず、入力部45を使って第1穿刺モードのソフトウエアを立ち上げる。
【0042】
ステップS12において、超音波トランスデューサ12はデフォーカスした超音波ビームUB1を被検体に送波する。図4(a)に示されるように遅延時間DL1〜DL4が与えられた駆動信号が振動素子に与えられることで、デフォーカスした超音波ビームUB1が送波される。
【0043】
図4(a)は1.5D型の超音波トランスデューサ12の振動素子であり、E1列とE7列、E2列とE6列、E3列とE5列が結線され、E4列が単独に配線されている。これらの振動素子に、送信制御部22において設定された遅延時間で駆動信号がそれぞれ供給される。本実施形態では、各駆動信号供給線上に示されたブロック(DL1〜DL4)の長さが、各駆動信号に与えられる遅延時間の長さを示している。図4(a)ではE4列の振動素子には短い遅延時間DL1が供給され、E4列から一番離れたE1列とE7列の振動素子に一番長い遅延時間DL4が供給されている。このような遅延時間に基づいて振動素子が振動し、ホイヘンスの原理に従い発散する超音波ビームUB1が形成される。発散する超音波ビームUB1はいわゆるデフォーカス状態であり、フォーカス(焦点)を結ばない。またエレベーション方向に超音波ビームUB1を送波するため、エレベーション方向の全開口(E1列〜E7列)の振動素子を振動させる。
【0044】
図5(a)に示されるように、デフォーカスの超音波ビームUB1はエレベーション方向に発散しているため、エレベーション方向(±X軸方向)に超音波ビームUB1が送波される。このため、被検体に穿刺針90がエレベーション方向から刺入されても、穿刺針90に超音波ビームUB1が当たり、その反射エコーが超音波トランスデューサ12に受波される。被検体である生体にデフォーカスの超音波ビームUB1が送波されても、超音波トランスデューサ12は明瞭なエコー信号を受波することができない。一方、金属等からなる穿刺針90は反射率が高いため、超音波トランスデューサ12はデフォーカスの超音波ビームUB1であっても明瞭なエコー信号を受波できる。すなわち、図5(a)に示される浅い領域DAで且つエレベーション方向から刺入された穿刺針90であっても、デフォーカスの超音波ビームUB1によって穿刺針90の先端部92のエコー信号を得ることができる。
【0045】
図3に戻り、ステップS13において、超音波トランスデューサ12は目的部位ROにフォーカスした超音波ビームUB2を被検体に送波する。図4(b)では送信制御部22はE5列の振動素子には短い遅延時間DL4を供給され、センターから一番離れたE1列とE7列の振動素子に一番長い遅延時間DL1を供給する。このような遅延時間に基づいて、ホイヘンスの原理に従い収束する超音波ビームUB2が形成される。超音波ビームUB2は目的部位ROの周辺にフォーカスする。
【0046】
図5(a)に示されるように、フォーカスされた超音波ビームUB2はエレベーション方向に収束しているため、浅い領域DAでは穿刺針90の先端部92には超音波ビームUB2が照射されない。このため、穿刺針90の反射エコーが超音波トランスデューサ12に受波されることはない。一方、図5(a)、(b)に示される目的部位ROを含む深い領域DBで超音波トランスデューサ12は明瞭なエコー信号を受波することができる。また、穿刺針90が刺入され、その先端部92が目的部位ROの周辺に到達すれば、超音波トランスデューサ12はフォーカスされた超音波ビームUB2で先端部92の明瞭なエコー信号を受波できる。なお、フォーカスされた超音波ビームUB2はエレベーション方向の開口径が狭く描かれている。例えばE3列〜E5列しか使用していないように描かれているが、目的部位ROの深度によってE1列〜E7列を適宜使用する。
【0047】
図3のステップS14において、画像生成部36は、デフォーカスした超音波ビームUB1が送波された際に得られたエコー信号(ステップS12)に基づいてBモード画像データBD1を生成し、フォーカスした超音波ビームUB2が送波された際に得られたエコー信号(S13)に基づいてBモード画像データBD2を生成する。また画像生成部36は、デフォーカスした超音波ビームUB1で得られたBモード画像データBD1とフォーカスした超音波ビームUB2で得られたBモード画像データBD2とを加算する。
【0048】
ステップS15において、画像生成部36は加算されたBモード画像データBEを表示用の画像信号に変換し、表示部60に超音波画像BG(BE)が表示される。
【0049】
図6(a)を使って加算された超音波画像BG(BE)の表示について説明する。この図6(a)に示された超音波画像BG(BE)は、穿刺針90が浅くエレベーション方向から刺入された状態である(図5(a)を参照。)。
【0050】
図6(a)の左上側はBモード画像データBD1に基づく超音波画像BG(BD1)である。デフォーカスした超音波ビームUB1で得られたエコー信号であるため、超音波画像BG(BD1)には、被検体の内部の部位が不鮮明にしか表示されていない。その一方で、浅くエレベーション方向から刺入された穿刺針90であっても、穿刺針90の先端部92が表示されている。
【0051】
図6(a)の右上側はBモード画像データBD2に基づく超音波画像BG(BD2)である。フォーカスした超音波ビームUB2で得られたエコー信号であるため、超音波画像BG(BD2)には、被検体の目的部位ROを含む内部の部位が明瞭に表示されている。その一方で穿刺針90の先端部92は表示されていない。
【0052】
画像生成部36は、Bモード画像データBD1とBモード画像データBD2とを加重加算する。加算されたBモード画像データBEは次のように示される。
BE = BD1×a + BD2×b
1 = a + b
但し、a、bは加重係数
加算されたBモード画像データBEに基づく超音波画像BG(BE)は、図6(a)の下側に示されているように、浅くエレベーション方向から刺入された穿刺針90が表示されるとともに、目的部位ROを含む内部の部位が明瞭に表示される。
【0053】
上記加重係数a、bは、例えばa=0.5、b=0.5でもよいし他の値でもよい。また、針検出部37が検出した先端部92(図2を参照。)の位置に応じて、加重係数a、bを適宜変更するようにしてもよい。また画像生成部36は、Bモード画像データBD1に赤色等を彩色してオペレータに穿刺針90を目立たせて表示することも可能である。
【0054】
図3に戻り、ステップS16において、針検出部37(図1を参照。)が穿刺針90の先端部92が目的部位ROに到達したか否かを判断する。先端部92が目的部位ROに到達していなければステップS12に戻り、引き続きデフォーカスした超音波ビームUB1で得られたBモード画像データBD1とフォーカスした超音波ビームUB2で得られたBモード画像データBD2とに基づいて加算された超音波画像BG(BE)が表示部60に表示される。先端部92が目的部位ROに到達していればステップS17に進む。
【0055】
ステップS17では、デフォーカスした超音波ビームUB1の送波を中止して、超音波トランスデューサ12は目的部位ROにフォーカスした超音波ビームUB2のみを被検体に送波する。目的部位ROにフォーカスした超音波ビームUB2を送波する回数が増え(フレームレートが上昇)、目的部位ROからの多くのエコー信号を受波することができる。
【0056】
ステップS18では、ステップS17で得られたエコー信号から画像生成部36は表示部60に超音波画像BGを表示する。図6(b)に示されるように、目的部位ROの周辺では鮮明な超音波画像が表示されるとともに穿刺針90の先端部92が表示される。フォーカスした超音波ビームUB1によりエコー信号がないため、浅い領域DA(図5を参照)の穿刺針90は表示されておらず、画面途中から穿刺針90が表示されている。
【0057】
ステップS16〜S18を施す代わりに、ステップS15で説明したように針検出部37が検出した先端部92が目的部位ROに達したら、加重係数a=0、b=1に変更するようにしてもよい。
【0058】
(1.25D型の超音波トランスデューサの例)
1.25D型の超音波トランスデューサを有する超音波プローブ10を使用した場合であっても、図3に示した第1穿刺モードを適用できる。但し、1.25D型の超音波プローブ10は音響レンズによる固定焦点(フォーカス)であるため、ステップS12からステップS14までが異なる。
【0059】
図7(a)は、1.25D型の超音波プローブ10において、エレベーション方向のすべての振動素子を振動させる。そのため超音波プローブ10はエレベーション方向の広い範囲から超音波ビームUB3を送波する。被検体に穿刺針90がエレベーション方向から刺入されても穿刺針90の先端部92に超音波ビームUB3が当たり、その反射エコーが超音波トランスデューサ12に受波される。但し、図5と図7とを比べてもわかるように、超音波ビームUB3は、超音波ビームUB1のように浅い領域DAで且つエレベーション方向には送波されない。このため、穿刺針90の刺入の開始時には超音波画像BGに穿刺針90が表示されないことがある。
【0060】
一方、図7(b)に示される目的部位ROを含む深い領域DBで超音波トランスデューサ12は目的部位RO及び穿刺針90の明瞭なエコー信号を受波することができる。
【0061】
(1.75D型の超音波トランスデューサの例)
1.75D型の超音波トランスデューサを有する超音波プローブ10を使用した場合であっても、図3に示した第1穿刺モードを適用できる。1.75D型の超音波プローブ10は、超音波ビームをデフォーカスさせるだけでなくさらに偏向させることができるため、ステップS12及びステップS13が異なる。
【0062】
図8(a)は1.75D型の超音波トランスデューサ12の振動素子であり、E1列〜E7列まで独立に配線されている。これらの振動素子に、送信制御部22において設定された遅延時間で駆動信号がそれぞれ供給される。図8では、各駆動信号供給線上に示されたブロック(DL11〜DL15)の長さが、各駆動信号に与えられる遅延時間の長さを示している。図8(a)ではE5列及びE6列の振動素子に短い遅延時間DL15が供給され、次にE4列とE7列の振動素子に次に短い遅延時間DL14が供給されている。そしてE3列からE1列の振動素子に行くに従い遅延時間が長くなっているこれらの遅延時間(DL11〜DL15)に基づいて、ホイヘンスの原理に従い発散する超音波ビームUB4が形成される。発散する超音波ビームUB4はいわゆるデフォーカス状態であり且つマイナス側のエレベーション方向(−X軸方向)に偏向されている。
【0063】
図9(a)に示されるように、デフォーカスの超音波ビームUB4はエレベーション方向に発散し且つ偏向されているため、マイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に超音波ビームUB4が送波される。このため、被検体に穿刺針90がエレベーション方向から浅く刺入されても、穿刺針90に超音波ビームUB4が当たり、その反射エコーが超音波トランスデューサ12に受波される。図9に示された超音波ビームUB4は、図5に示された超音波ビームUB1よりも浅い領域DAのエレベーション方向に照射できる。
【0064】
1.75D型の超音波トランスデューサ12も、図3のステップS13では、超音波トランスデューサ12は目的部位ROにフォーカスした超音波ビームUB2を被検体に送波する。各振動素子には、独立して配線されているため、送信制御部22はE5列の振動素子には短い遅延時間DL4を供給し、センターから一番離れたE1列とE7列の振動素子に一番長い遅延時間DL1を供給する。そして超音波ビームUB2は目的部位ROの周辺にフォーカスする。
【0065】
図9(b)に示される目的部位ROを含む深い領域DBで超音波トランスデューサ12は明瞭なエコー信号を受波することができる。また、穿刺針90が刺入され、その先端部92が目的部位ROの周辺に到達すれば、超音波トランスデューサ12はフォーカスされた超音波ビームUB2で先端部92の明瞭なエコー信号を受波できる。
【0066】
なお、図8及び図9を使って、1.75D型の超音波トランスデューサ12を説明したが、エレベーション方向とアジマス方向との振動素子数及び配列ピッチが同程度の2D型の超音波トランスデューサ12であっても、同様に超音波データをデフォーカスし且つ偏向させることができる。
【0067】
<第2穿刺モードによる超音波画像の表示>
(1.75D型の超音波トランスデューサの例:デフォーカス変更)
第2穿刺モードについて、図10から図12を使って説明する。図10は第2穿刺モードで超音波画像を表示する際のフローチャートである。図11はアジマス方向からみた超音波ビームUBの概念図である。図12は表示部60に表示された超音波画像EGの例である。
【0068】
図10のステップS21において、オペレータが超音波プローブ10のエレベーション方向から被検体に穿刺針90を刺入する際には、まず、入力部45を使って第2穿刺モードのソフトウエアを立ち上げる。
【0069】
ステップS22において、超音波トランスデューサ12は大きくデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に偏向した超音波ビームUB5を被検体に送波する。大きいデフォーカスとは発散角度ψ1が大きいこと、つまりデフォーカス量が大きいことを意味する。
【0070】
図11(a)に示されるように、超音波ビームUB5は大きくデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に偏向されて送波される。このため、被検体に穿刺針90がマイナスのエレベーション方向から刺入されても、穿刺針90に超音波ビームUB5が当たり、その反射エコーが超音波トランスデューサ12に受波される。そのため、図11(a)に示される浅い領域DAで且つマイナスのエレベーション方向から刺入された穿刺針90であっても、大きくデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向に偏向された超音波ビームUB5によって穿刺針90の先端部92のエコー信号を得ることができる。
【0071】
図10に戻り、ステップS23において、超音波トランスデューサ12は目的部位ROにフォーカスした超音波ビームUB2を被検体に送波する。
【0072】
図11(c)に示されるように、フォーカスされた超音波ビームUB2はエレベーション方向に収束しているため、目的部位ROを含む深い領域DCで超音波トランスデューサ12は明瞭なエコー信号を受波することができる。また、穿刺針90が刺入され、その先端部92が目的部位ROの周辺に到達すれば、超音波トランスデューサ12はフォーカスされた超音波ビームUB2で先端部92の明瞭なエコー信号を受波できる。
【0073】
図10のステップS24において、画像生成部36は、大きくデフォーカスした超音波ビームUB5が送波された際に得られたエコー信号(ステップS22)に基づいてBモード画像データBD5を生成し、フォーカスした超音波ビームUB2が送波された際に得られたエコー信号(S23)に基づいてBモード画像データBD2を生成する。また画像生成部36は、デフォーカスした超音波ビームUB5で得られたBモード画像データBD5とフォーカスした超音波ビームUB2で得られたBモード画像データBD2とを加算する。
【0074】
ステップS25において、画像生成部36は加算されたBモード画像データBEを表示用の画像信号に変換し、表示部60に超音波画像BG(BE)が表示される。
【0075】
図12を使って加算された超音波画像BG(BE)の表示について説明する。この図12に示された超音波画像BG(BE)は、穿刺針90が浅くエレベーション方向から刺入された状態である。
【0076】
図12の左上側はBモード画像データBD5に基づく超音波画像BG(BD5)である。デフォーカスした超音波ビームUB5で得られたエコー信号であるため、超音波画像BG(BD5)には、被検体の内部の部位が不鮮明にしか表示されていない。この超音波画像BG(BD5)は浅い領域DA以外はデータを削除し、浅い領域DAのみのデータからなる。
【0077】
図12の右上側はBモード画像データBD2に基づく超音波画像BG(BD2)である。フォーカスした超音波ビームUB2で得られたエコー信号であるため、超音波画像BG(BD2)には、被検体の目的部位ROを含む深い領域DCの周辺の部位が明瞭に表示されている。
【0078】
画像生成部36は、浅い領域DAのBモード画像データBD5(DA)と深い領域DCのBモード画像データBD2(DC)とを加算する。加算されたBモード画像データBEは次のように示される。
BE = BD5(DA) + BD2(DC)
加算されたBモード画像データBEに基づく超音波画像BG(BE)は、図12の下側に示されているように、浅くエレベーション方向から刺入された穿刺針90が表示されるとともに、目的部位ROを含む内部の部位が明瞭に表示される。
【0079】
また画像生成部36は、Bモード画像データBD5に赤色等を彩色してオペレータに穿刺針90を目立たせて表示することも可能である。
【0080】
図10に戻り、ステップS26において、針検出部37(図1を参照。)が穿刺針90の先端部92が中間領域DBに到達したか否かを判断する。先端部92が中間領域DBに到達していなければステップS22に戻り、引き続き大きくデフォーカスした超音波ビームUB5で得られたBモード画像データBD5とフォーカスした超音波ビームUB2で得られたBモード画像データBD2とに基づいて加算された超音波画像BG(BE)が表示部60に表示される。先端部92が中間領域DBに到達していればステップS27に進む。
【0081】
ステップS27において、超音波トランスデューサ12は小さくデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に偏向した超音波ビームUB6を被検体に送波する。小さいデフォーカスとはステップS22におけるデフォーカスよりも発散角度ψ2が小さいこと、つまりデフォーカス量が小さいことを意味する。
【0082】
図11(b)に示されるように、超音波ビームUB6は小さくデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に偏向されて送波される。超音波ビームUB6の偏向角度は超音波ビームUB5の偏向角度とほぼ同じである。図11(b)に示される超音波ビームUB6によって中間領域DBにある穿刺針90の先端部92のエコー信号を得ることができる。
【0083】
図10に戻り、ステップS28において、超音波トランスデューサ12は目的部位ROにフォーカスした超音波ビームUB2を被検体に送波する。
【0084】
ステップS29において、画像生成部36は、小さくデフォーカスした超音波ビームUB5が送波された際に得られたエコー信号(ステップS27)に基づいてBモード画像データBD6を生成し、フォーカスした超音波ビームUB2が送波された際に得られたエコー信号(S28)に基づいてBモード画像データBD2を生成する。また画像生成部36は、小さくデフォーカスした超音波ビームUB6で得られたBモード画像データBD6とフォーカスした超音波ビームUB2で得られたBモード画像データBD2とを加算する。
【0085】
ステップS30において、画像生成部36は加算されたBモード画像データBEを表示用の画像信号に変換し、表示部60に超音波画像BG(BE)が表示される。
【0086】
図13を使って加算された超音波画像BG(BE)の表示について説明する。この図13に示された超音波画像BG(BE)は、穿刺針90が中間まで刺入された状態である。
【0087】
図13の左上側はBモード画像データBD6に基づく超音波画像BG(BD6)である。デフォーカスした超音波ビームUB6で得られたエコー信号であるため、超音波画像BG(BD6)には、被検体の内部の部位が不鮮明にしか表示されていない。この超音波画像BG(BD6)は中間領域DB以外はデータを削除し、中間領域DBのみのデータからなる。
【0088】
図13の右上側はBモード画像データBD2に基づく超音波画像BG(BD2)である。フォーカスした超音波ビームUB2で得られたエコー信号であるため、超音波画像BG(BD2)には、被検体の目的部位ROを含む深い領域DCの周辺の部位が明瞭に表示されている。
【0089】
画像生成部36は、中間領域DBのBモード画像データBD6(DB)と深い領域DCのBモード画像データBD2(DC)とを加算する。加算されたBモード画像データBEは次のように示される。
BE = BD6(DB) + BD2(DC)
加算されたBモード画像データBEに基づく超音波画像BG(BE)は、図13の左下側に示されているように、刺入された穿刺針90が表示されるとともに、目的部位ROを含む内部の部位が明瞭に表示される。
【0090】
なお、画像生成部36は、記憶部50に記憶されている浅い領域DAのBモード画像データBD5(DA)をさらに加えてもよい。図13の右下側に点線で示されているように、浅い領域DAのBモード画像データBD5(DA)と中間領域DBのBモード画像データBD6(DB)と深い領域DCのBモード画像データBD2(DC)とを加算する。加算されたBモード画像データBEは次のように示される。
BE = BD5(DA) +BD6(DB) + BD2(DC)
加算されたBモード画像データBEに基づく超音波画像BG(BE)は、図13の右下側に示されている。
【0091】
また画像生成部36は、Bモード画像データBD6に青色等を彩色してオペレータに穿刺針90を目立たせて表示することも可能である。このようにBモード画像データBD5の彩色とBモード画像データBD6の彩色とが異なると、穿刺針90が刺入されるに従い穿刺針90が赤色から青色に変わるため、オペレータは穿刺針90が徐々に目的部位ROに近付いていることを容易に認識することができる。
【0092】
図10に戻り、ステップS31において、針検出部37(図1を参照。)が穿刺針90の先端部92が目的部位ROに到達したか否かを判断する。先端部92が目的部位ROに到達していなければステップS27に戻り、引き続き小さくデフォーカスした超音波ビームUB6で得られたBモード画像データBD6とフォーカスした超音波ビームUB2で得られたBモード画像データBD2とに基づいて加算された超音波画像BG(BE)が表示部60に表示される。先端部92が目的部位ROに到達していればステップS32に進む。
【0093】
ステップS32では、デフォーカスした超音波ビームUB5又はUB6の送波を中止して、超音波トランスデューサ12は目的部位ROにフォーカスした超音波ビームUB2のみを被検体に送波する。目的部位ROにフォーカスした超音波ビームUB2の送波回数が上がり、目的部位ROからの多くのエコー信号を受波することができる。
【0094】
ステップS33では、ステップS32で得られたエコー信号から画像生成部36は表示部60に超音波画像BGを表示する。
【0095】
(1.75D型の超音波トランスデューサの例:デフォーカス量一定、且つ開口径の変更)
図10のステップS22及びS27では、大きくデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に偏向した超音波ビームUB5と、小さくデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に偏向した超音波ビームUB6とが送波された。この方法以外に、ステップS27において、デフォーカス(発散角度)は同じで、エレベーション方向の開口径を異ならせるてもよい。
【0096】
ステップS22では、図11(a)で説明したと同様な超音波ビームUB5が送波される。なお、超音波ビームUB5は、図8に描かれたE1列からE7列までの振動素子が使われている。すなわち全開口で超音波ビームUB5が送波されている。なお、図14(a)は図14(b)との比較のために描かれている。
【0097】
ステップS27において、図14(b)に示されるように、超音波ビームUB7はデフォーカスし且つ一部の開口で送波されている。偏向角度(角度φ1)は14(a)と同じである。図8に描かれた例えばE2列からE6列までの振動素子が使われている。図14(b)に示される超音波ビームUB7によって中間領域DBにある穿刺針90の先端部92のエコー信号を得ることができる。
【0098】
(1.75D型の超音波トランスデューサの例:デフォーカス量一定、且つ偏向方向の変更)
図10のステップS22及びS27では、大きくデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に偏向した超音波ビームUB5と、小さくデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に偏向した超音波ビームUB6とが送波された。この方法以外に、ステップS22及びS27において、デフォーカス(発散角度)は同じで、エレベーション方向に偏向する偏向角度を異ならせてもよい。
【0099】
ステップS22において、図15(a)に示されるように、超音波ビームUB8はデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に大きく偏向(角度φ1)されて送波される。このため、被検体に穿刺針90がマイナスのエレベーション方向から刺入されても、穿刺針90に超音波ビームUB8が当たり、その反射エコーが超音波トランスデューサ12に受波される。そのため、図14(a)に示される浅い領域DAで且つマイナスのエレベーション方向から刺入された穿刺針90であっても、超音波ビームUB8によって穿刺針90の先端部92のエコー信号を得ることができる。
【0100】
ステップS27において、図15(b)に示されるように、超音波ビームUB8はデフォーカスし且つマイナスのエレベーション方向(−X軸方向)に小さく偏向(角度φ2)されて送波される。図15(b)に示される超音波ビームUB9によって中間領域DBにある穿刺針90の先端部92のエコー信号を得ることができる。
【0101】
なお、図10から図15では1.75D型の超音波トランスデューサ12を説明したが、2D型の超音波トランスデューサ12であっても、同様に超音波データをデフォーカスし且つ偏向させることができる。
【符号の説明】
【0102】
10 …… 超音波プローブ
12 …… 超音波トランスデューサ
14 …… 制御信号分配部、 16 …… スイッチング回路
21 …… 走査制御部、 22 …… 送信制御部
23 …… 駆動信号発生部
32 …… 受信信号処理部、 33 …… 受信制御部
34 …… ローデータメモリ、 35 …… 受信ビームフォーマ
36 …… 画像生成部、 37 …… 針検出部
45 …… 入力部、 50 …… 記憶部
60 …… 表示部
90 …… 穿刺針
98 …… 穿刺アタッチメント
100 …… 超音波診断装置
BG …… 超音波画像
DL1〜DL4、DL11〜DL15 …… 遅延時間
E1〜E7 …… エレベーション方向の素子列
UB1〜UB9 …… 超音波ビーム
RO …… 目的部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジマス方向及び前記アジマス方向と直交するエレべーション方向に並んだ複数の振動素子からなる振動部を有し、超音波ビームを送波する超音波プローブと、
前記超音波ビームを制御する超音波ビーム制御部と、
前記超音波ビームを被検体に送波し受波したエコー信号に基づいて、前記アジマス方向の超音波画像データを生成する画像データ生成部と、
前記超音波画像データに基づいて超音波画像を表示する表示部と、を備え、
前記超音波ビーム制御部は前記超音波ビームを前記エレべーション方向にデフォーカスさせ、前記画像データ生成部はデフォーカス時のエコー信号に基づいて前記被検体の表面に近い領域を含む超音波画像データを生成するとともに、
前記超音波ビーム制御部は前記超音波ビームを前記エレべーション方向にフォーカスさせ、前記画像データ生成部はフォーカス時のエコー信号に基づいて前記被検体の超音波画像データを生成する超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波ビーム制御部は前記デフォーカスの超音波ビームを前記エレべーション方向に偏向させる請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波ビームをデフォーカスさせる際に、前記超音波ビーム制御部は前記エレべーション方向の全開口の振動素子を振動させる請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像データ生成部は前記デフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと前記フォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算し、
前記表示部は加算された超音波画像を表示する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記超音波ビーム制御部は前記デフォーカスの超音波ビームを前記エレべーション方向の第1方向に偏向させ、且つ前記エレべーション方向の第1方向とは異なるに第2方向に偏向させる請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像データ生成部は前記第1方向に偏向したデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、前記第2方向に偏向したデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、前記フォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算し、
前記表示部は加算された超音波画像を表示する請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波ビーム制御部は前記デフォーカスの超音波ビームを前記エレべーション方向に偏向させ、且つ前記超音波ビーム制御部は前記エレべーション方向の全開口の振動素子を振動させるとともに前記エレべーション方向の一部の開口の振動素子を振動させる請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記画像データ生成部は前記全開口の偏向したデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、前記一部の開口の偏向したデフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、前記フォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算し、
前記表示部は加算された超音波画像を表示する請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
アジマス方向及び前記アジマス方向と直交するエレべーション方向に並んだ複数の振動素子からなる振動部を有し、超音波ビームを送波する超音波プローブと、
前記超音波ビームを制御する超音波ビーム制御部と、
前記超音波ビームを被検体に送波し受波したエコー信号に基づいて、前記アジマス方向の超音波画像データを生成する画像データ生成部と、
前記超音波画像データに基づいて超音波画像を表示する表示部と、を備え、
前記超音波ビーム制御部は前記超音波ビームを前記エレべーション方向に全開口の振動素子を振動させた際のエコー信号に基づいて前記被検体の表面に近い領域を含む超音波画像データを生成するとともに前記エレべーション方向の一部の開口の振動素子を振動させた際のエコー信号に基づいて前記被検体の超音波画像データを生成する超音波診断装置。
【請求項10】
前記振動部は、前記アジマス方向に並んだ振動素子数が前記エレべーション方向に並んだ振動素子数よりも多い請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記画像データ生成部は、デフォーカス時の超音波画像データに彩色する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記画像データ生成部は、前記デフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データに加算係数を乗算し、前記フォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データに加算係数を乗算し、乗算された前記デフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと乗算されたフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算する請求項4、請求項6又は請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記画像データ生成部は、前記超音波画像を構成する第1領域の前記デフォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データと、前記超音波画像を構成する前記第1領域とは異なる第2領域の前記フォーカス時のエコー信号に基づいた超音波画像データとを加算する請求項4、請求項6又は請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記超音波プローブは、前記エレべーション方向において前記振動部の外側から中央に向かって穿刺針を刺入させる穿刺ガイドアタッチメントを備える請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記穿刺ガイドアタッチメントは前記超音波プローブから着脱可能である請求項14のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記被検体に刺入される穿刺針の先端の位置を検出する針検出部を備え、
前記針検出部が前記穿刺針の先端が所定部位に到達したことを検出した際には、前記超音波ビーム制御部は前記超音波ビームのデフォーカスを停止する請求項1から請求項8、請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の超音波診断装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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