説明

超音波診断装置

【課題】複数の身体部位の検査を効率的に行うことが可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る超音波診断装置は、被検体に対して超音波を送受信する超音波プローブを有し、この超音波プローブによる受信結果に基づいて被検体内の画像を生成して表示する。この超音波診断装置は、記憶部と、検出部と、選択部と、処理部とを有する。記憶部は、実空間における位置と、画質条件及び/又はアプリケーション種別を含む検査条件とを対応付けた対応情報を記憶する。検出部は、実空間における超音波プローブの位置を検出する。選択部は、検出された位置に対応する検査条件を対応情報に基づいて選択する。処理部は、選択された検査条件に基づいて処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブを用いて被検体内に超音波を送信し、その反射波を受信することにより、被検体の生体情報を取得するものである。
【0003】
超音波診断装置は様々な身体部位の検査に用いられる。これら身体部位の検査では、それぞれ異なる検査条件が適用される。検査条件とは、検査種別(検査部位や検査内容)に応じて選択的に適用される各種の条件を意味する。検査条件の例としては、画質条件やアプリケーションなどがある。検査条件は事前に設定されるものであり、プリセットとも呼ばれる。
【0004】
画質条件(画質プリセット)は、表示される超音波画像の画質を調整するためのパラメータである。その一例として、受信信号のゲイン、ダイナミックレンジ、輝度変調の入出力関係、ラスタ間スムージング処理のラスタ本数、フレーム間スムージング処理のフレーム枚数などがある。
【0005】
アプリケーション(アプリケーションプリセット)は、検査種別に応じて選択的に使用されるアプリケーションソフトウェアである。その一例として、心臓検査用アプリケーション、胎児検査用アプリケーション、検査プロトコルなどがある。心臓検査用アプリケーションは、心臓検査において、心臓のサイズ(面積、体積、長さ等)や壁運動などを解析するために用いられる。胎児検査用アプリケーションは、妊婦の検査において、胎児のサイズや心臓機能などを解析するために用いられる。検査プロトコルは、検査のワークフローに応じた検査手順や設定条件を定義したものであり、病院ごと或いは医師ごとに設けられる。
【0006】
良好な画像を得るための画質条件は、使用される超音波プローブや検査種別に応じて異なる。アプリケーションも、検査種別等に応じて選択的に使用される。従来の超音波診断装置では、検査種別とプリセットとを対応付けたテーブルを予め用意しておくことで、検査開始時に検査者が指定した検査種別に応じて、プリセットを選択的に使用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−328180号公報
【特許文献2】特開2001−137237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超音波検査においては、複数の身体部位を検査することがある。その場合、検査者は、検査部位を変更する度にプリセットを選択し直していた。これは、検査効率を低下させるものである。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、複数の身体部位の検査を効率的に行うことが可能な超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る超音波診断装置は、被検体に対して超音波を送受信する超音波プローブを有し、この超音波プローブによる受信結果に基づいて被検体内の画像を生成して表示する。この超音波診断装置は、記憶部と、検出部と、選択部と、処理部とを有する。記憶部は、実空間における位置と、画質条件及び/又はアプリケーション種別を含む検査条件とを対応付けた対応情報を記憶する。検出部は、実空間における超音波プローブの位置を検出する。選択部は、検出された位置に対応する検査条件を対応情報に基づいて選択する。処理部は、選択された検査条件に基づいて処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る超音波診断装置を示す概略ブロック図である。
【図2】実施形態に係る超音波診断装置を示す概略ブロック図である。
【図3】実施形態に係る超音波診断装置を示す概略ブロック図である。
【図4】実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施形態に係る超音波診断装置が表示する設定画面を示す概略図である。
【図6】実施形態に係る超音波診断装置の動作を説明するための概略図である。
【図7】実施形態に係る超音波診断装置の動作を説明するための概略図である。
【図8】実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】実施形態に係る超音波診断装置の動作を説明するための概略図である。
【図10】実施形態の変形例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態に係る超音波診断装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
[構成]
実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を説明する。図1に示すように、実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、送信部2と、受信部3と、信号処理部4と、画像生成部5と、表示制御部6と、表示部7と、制御部8と、入力部9と、記憶部10と、検出部11と、選択部12と、生成部13とを有する。送信部2、受信部3、信号処理部4、画像生成部5及び表示制御部6をまとめて処理部14と呼ぶ。
【0014】
(超音波プローブ1)
超音波プローブ1には、複数の超音波振動子が走査方向に1列に配置された1次元アレイプローブ、又は、複数の超音波振動子が2次元的に配置された2次元アレイプローブが用いられる。また、走査方向に1列に配置された複数の超音波振動子を、走査方向に直交する揺動方向に揺動させる機械式1次元アレイプローブを用いてもよい。超音波プローブ1は被検体に超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信する。
【0015】
超音波プローブ1の位置は検出部11により検出される。詳細は後述するが、超音波プローブ1には、検出部11による位置検出を実現するための構成が設けられている。
【0016】
(送信部2)
送信部2は、超音波プローブ1に電気信号を供給して所定の焦点にビームフォームした(つまり送信ビームフォームした)超音波を送信させる。
【0017】
(受信部3)
受信部3は、超音波プローブ1が受信したエコー信号を受信する。受信部3は超音波プローブ1が受信したエコー信号を受信し、そのエコー信号に対して遅延処理を行うことにより、アナログのエコー信号を整相された(つまり受信ビームフォームされた)デジタルのデータに変換する。
【0018】
受信部3は、たとえば図示しないプリアンプ回路と、A/D変換器と、受信遅延回路と、加算器とを有する。プリアンプ回路は、超音波プローブ1の各超音波振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換器は、増幅されたエコー信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、遅延時間が与えられたエコー信号を加算する。その加算によって、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。受信部3から出力される受信信号は、信号処理部4に出力される。
【0019】
(信号処理部4)
信号処理部4はBモード処理部を有する。Bモード処理部は受信信号を受信部3から受けて、受信信号の振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は、受信信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。
【0020】
信号処理部4はCFM(Color Flow Mapping)処理部を有していてもよい。CFM処理部は血流情報の映像化を行う。血流情報には、速度、分布、又はパワーなどの情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。
【0021】
信号処理部4はドプラ処理部を有していてもよい。ドプラ処理部は受信信号を位相検波することによりドプラ偏移周波数成分を取り出し、FFT処理を施すことにより血流速度を表すドプラ周波数分布を生成する。
【0022】
信号処理部4は、信号処理が施された受信信号(超音波ラスタデータ)を画像生成部5に出力する。
【0023】
(画像生成部5)
画像生成部5は、信号処理部4から出力された信号処理後の受信信号(超音波ラスタデータ)に基づいて超音波画像データを生成する。画像生成部5は、たとえばDSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)を有する。画像生成部5は、走査線の信号列で表される信号処理後の受信信号を、直交座標系で表される画像データに変換する(スキャンコンバージョン処理)。たとえば、画像生成部5は、Bモード処理部によって信号処理が施された受信信号にスキャンコンバージョン処理を施すことにより、被検体の組織の形態を表すBモード画像データを生成する。画像生成部5は、超音波画像データを表示制御部6に出力する。
【0024】
(表示制御部6)
表示制御部6は、超音波画像データを画像生成部5から受けて、超音波画像データに基づく超音波画像を表示部7に表示させる。また、表示制御部6は、制御部8による制御を受けて、各種の画面や情報を表示部7に表示させる。
【0025】
(表示部7)
表示部7は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されている。表示部7は、超音波画像を表示する。また、表示部7は、各種の画面や情報を表示する。
【0026】
(制御部8)
制御部8は、超音波診断装置の各部の動作を制御する。特に、制御部8は、選択部11による選択結果を受けて、処理部14に含まれる各部を制御する。また、制御部8は、記憶部10に対する情報やデータの書き込み及び読み出しを行う。
【0027】
(入力部9)
入力部9は、ユーザによる操作を受けて、その操作内容に応じた信号や情報を制御部8に入力する。特に、入力部9は、被検体の体格情報(詳細は後述する)の入力を行う。制御部8は、この信号や情報を受けて各部を制御する。また、入力部9は、ネットワークやメディアを介して信号や情報の入力を受ける機能を有していてもよい。
【0028】
(記憶部10)
記憶部10は、各種の情報やデータ、更にはコンピュータプログラムを記憶する。たとえば、記憶部10は、生成部13により生成された対応情報を記憶する。この対応情報は、実空間における位置と検査条件とを対応付けたものである。対応情報は、たとえばテーブル情報の形式を有する。なお、対応情報は、検査を行う前にその都度生成される。対応情報の生成処理及びこれに基づく制御については後述する。
【0029】
実空間とは、実際の空間であり、特に被検体が配置される空間を含んでいる。一般に、被検体は検査内容に応じた体位でベッド上に載置される。その場合、実空間はベッドの上面及びその周囲の空間を含むように設定される。また、後述の検出部11による位置の検出が可能な範囲として実空間を設定してもよい。なお、検出部11による検出対象は超音波プローブ1(或いはスキャン断面)であることを考慮すると、実空間は、この検出対象が超音波検査時に位置する範囲を含んでいればよい。
【0030】
検査条件とは、前述のように、検査種別に応じて選択的に適用される各種の条件を意味する。検査条件には、画質条件及びアプリケーション種別の一方又は双方が少なくとも含まれる。
【0031】
(検出部11)
検出部11は、実空間における超音波プローブ1の位置を検出する。この位置は、超音波プローブ1の向き、つまり超音波の照射方向を含んでいてもよい。その場合、検出部11は、超音波プローブ1によりスキャンされる被検体の断面位置を検出するものとも言える。断面位置は、超音波プローブ1の位置と向きに基づいて求めることができる。また、断面の深度の情報が必要な場合には、身体に対する超音波の深達度の決定要因(たとえば超音波の強度や波長等)を考慮することで、これを算出できる。なお、超音波プローブ1の位置から断面位置を求める処理は、検出部11が行ってもよいし、選択部12や生成部13が行ってもよい。
【0032】
検出部11は、たとえば磁気センサや光学センサ等の位置センサを含んで構成される。磁気センサを適用する場合には、たとえば、磁場を発生する磁場源を超音波プローブ1に設けるとともに、この磁場源が発生する磁場を検出する検出器を実空間内の所定位置に配置する。光学センサを適用する場合には、たとえば、光を発する光源を超音波プローブ1に設けるとともに、この光源からの光を検出する検出器を実空間内の所定位置に配置する。いずれの構成においても、検出器は、磁気や光の検出結果と、実空間における自身の位置とに基づいて、実空間における磁場源や光源の位置、すなわち実空間における超音波プローブ1の位置を求める。
【0033】
なお、検出部11は、これらに限定されるものではなく、実空間における超音波プローブ1の位置を検出可能であればその構成は任意である。検出部11は、超音波プローブ1(又はスキャン断面)の位置の検出結果を選択部12に入力する。
【0034】
(選択部12)
選択部12は、超音波プローブ1の位置の検出結果を検出部11から受けて、この検出結果に対応する検査条件を対応情報に基づいて選択する。より具体的に説明すると、この実施形態の選択部12は、超音波プローブ1の位置の検出結果を検出部11から受け、この検出結果に対応する検査条件を、入力部9により入力された体格情報と対応情報とに基づいて選択する。選択部12は、選択された検査条件を制御部8に入力する。制御部8は、選択部12から入力された検査条件に基づいて処理部14を制御する。それにより、この検査条件に示す画質条件やアプリケーション種別に基づく処理が実行される。なお、検査条件選択部12の詳細については後述する。
【0035】
(生成部13)
生成部13は、入力部9により入力された情報に基づいて対応情報を生成する。生成部13の詳細については後述する。
【0036】
[対応情報の生成に関する構成]
対応情報の生成に関する構成について図2を参照しつつ説明する。
【0037】
(記憶部10)
対応情報を生成する処理の開始時点では、記憶部10に対応情報は記憶されていない。この処理の開始時点では、図2に示すように、標準座標系リスト101及び検査条件リスト102が既に記憶されている。
【0038】
標準座標系リスト101は、ベッドに配置される被検者の体位と、標準座標系とを対応付けた情報である。体位の例としては、仰臥位(仰向けで寝ている状態)、伏臥位(うつ伏せで寝ている状態)、右側臥位(右横向きに寝ている状態)、左側臥位(左横向きに寝ている状態)などがある。標準座標系リスト101は、このような体位のそれぞれに標準座標系を対応付けている。
【0039】
標準座標系は、実空間に対してあらかじめ設定された座標系である。標準座標系のスケール(各座標軸における単位距離の長さ)は、たとえば、標準身長情報及び標準体幅情報に基づきあらかじめ設定される。標準身長情報とは、標準的な身長(たとえば平均身長)を意味する。標準体幅情報とは、標準的な体の幅を意味する。標準体幅情報としては、平均体重、平均胴囲、平均胸囲、平均肩幅などが用いられる。なお、平均体重のように直接に体幅を示さない情報を用いる場合には、たとえば体重等と体幅との関係を表す臨床データに基づいて平均体重等に対応する体幅を求め、これを標準体幅情報として用いる。
【0040】
なお、被検体が横向きに配置される場合には、体幅情報は体の厚さを表すものである。したがって、この実施形態における体幅とは、ベッドに横たわった状態の被検体の身長方向に直交する方向かつ水平方向における被検体の長さを意味する。つまり、この実施形態における体幅とは、ベッドの幅方向における被検体の長さを意味するとも言える。
【0041】
検査条件リスト102は、この実施形態に係る超音波診断装置により適用可能な検査条件(画質条件及び/又はアプリケーション種別)の一覧情報である。検査条件リスト102は、複数の検査条件の一覧情報(リスト)であってもよいし、複数の検査条件を分類したものであってもよい。この分類としては、たとえば次のようなものがある:(1)画質条件とアプリケーション種別との間での分類;(2)画質条件の種別(受信信号のゲイン、ダイナミックレンジ、輝度変調の入出力関係、ラスタ間スムージング処理のラスタ本数、フレーム間スムージング処理のフレーム枚数など)における分類;(3)アプリケーション種別(心臓検査用アプリケーション、胎児検査用アプリケーション、検査プロトコルなど)における分類;(4)身体部位(胸部、腹部、心臓、肝臓、胃、腸など)における分類。この分類は、互いに排他的なものであってもよいし、包含関係を考慮した分類であってもよい。排他的な分類の例としては、「胸部」と「腹部」の間での分類がある。また、包含関係を考慮した分類の例としては、臓器毎の分類項目(「心臓」、「肝臓」等)と、部位毎の分類項目(「胸部」、「腹部」等)とを併用する場合がある。
【0042】
(生成部13)
前述のように、生成部13は対応情報を生成する。生成部13は、入力部9により入力された情報と、検出部11により検出された超音波プローブ1の位置を表す情報とを受ける。更に、生成部13は、記憶部10に記憶された情報の読み出しを行う。生成部13には、座標変換情報生成部131(第1の生成部)と、検査条件情報生成部132(第2の生成部)とが設けられている。
【0043】
(座標変換情報生成部131)
座標変換情報生成部131は、入力部9から入力された情報に基づいて、図3に示す座標変換情報105(第1の対応情報)を生成する。この実施形態の入力部9は、被検体の体格情報を座標変換情報生成部131に入力する。体格情報とは、被検者の体格を表す情報である。座標変換情報生成部131は、入力された体格情報に基づいて、標準座標系と被検体座標系との間のスケール比を算出する。更に、座標変換情報生成部131は、算出されたスケール比に基づいて、座標変換情報105を生成する。
【0044】
被検体座標系は、各被検体に対して固有に設定される座標系である。各被検体は固有の体格を有する。したがって、当該被検体に対する検査部位と、実空間における超音波プローブ1の位置との間には、固有の位置関係がある。被検体座標系は、この固有の位置関係を考慮した座標変換を標準座標系に対して施すことによって生成される。
【0045】
座標変換情報105の生成方法、つまり被検体座標系の生成方法の一例を説明する。本例では、体格情報として、被検者の身長情報及び体幅情報(体重等)が入力される。この体格情報は、たとえば入力部9におけるキーボードやタッチパネル等を操作して入力される。また、当該被検者の電子カルテ情報から体格情報を自動的に取得して入力するようにしてもよい。この構成を採用する場合、入力部9には、電子カルテ情報を検索する構成(たとえば制御部8)が含まれる。なお、体格情報の入力態様はこれらには限定されない。
【0046】
また、入力部9は、当該被検体の体位情報を座標変換情報生成部131に入力する。体位情報とは、検査時における当該被検体の体位を示す情報である。入力可能な体位情報には、標準座標系リスト101に記載された仰臥位、伏臥位、右側臥位、左側臥位などが含まれる。座標変換情報生成部131は、記憶部10に記憶された標準座標系リスト101を読み出し、入力された体位情報に対応する標準座標系を選択する。
【0047】
更に、座標変換情報生成部131は、選択された標準座標系と、入力された身長情報及び体幅情報とに基づいて、被検体座標系を設定する。この処理の例を以下に説明する。なお、標準座標系は、ベッド上に配置された被検体の体軸方向(身長方向)の座標軸と、体幅方向の座標軸とを含む、2つ又は3つの座標軸によって定義されるものとする。
【0048】
座標変換情報生成部131は、標準身長情報に対する当該被検体の身長情報の比(身長方向のスケール比)を算出する。そして、座標変換情報生成部131は、算出されたスケール比の値を標準座標系の身長方向の座標軸のスケールに乗算する。それにより、被検体座標系の身長方向の座標軸のスケールが決定される。被検体座標系の体軸方向の座標軸のスケールについても同様にして決定される。このようにして被検体座標系が設定される。
【0049】
なお、被検体座標系として3次元座標系が用いられる場合、身長方向の座標軸及び体幅方向の座標軸の双方に直交する高さ方向について設定された任意の座標軸が用いられる。この高さ方向の座標軸としては、たとえば、標準座標系(3次元座標系)にあらかじめ設定されたものが適用される。また、高さ方向における被検体のサイズ(仰臥位や伏臥位では体厚、右側臥位や左側臥位では体幅)を含む体格情報の入力を受けて、この体格情報と、あらかじめ設定された標準的な体厚や体幅の値とに基づいて、被検体座標系における高さ方向の座標軸のスケールを決定するようにしてもよい。
【0050】
標準座標系、座標軸のスケール比、及び被検体座標系は、任意の2つが決定されれば残りの1つも自動的に決定される関係にある。更に、標準座標系はあらかじめ与えられているので、スケール比と被検体座標系は、一方が決定されれば他方も自ずと決定される関係にある。したがって、標準座標系が与えられているという前提の下、スケール比と被検体座標系とを同一視することができる。つまり、スケール比の決定と被検体座標系の設定とは同一とみなせる。
【0051】
また、座標変換情報生成部131には、実空間内の基準位置情報が入力部9から入力される。この基準位置情報は、標準座標系における基準座標に対応する実空間内の位置を示すものである。この基準座標は、標準座標系における位置の基準となる座標である。基準座標の典型例として、標準座標系の原点がある。また、超音波プローブ1の移動範囲は有限であり、検出部11による検出可能範囲も有限であるから、有限の大きさの標準座標系を設定できる。その場合、この標準座標系の端部の所定位置を基準座標とすることができる。また、標準身長情報等に基づいて標準座標系が設定されている場合には、この標準的な体格における所定の身体部位(たとえば臍、鼻など)に対応する標準座標系内の位置を基準座標とすることができる。
【0052】
基準位置情報を入力する方法の例を説明する。第1の例では、前述した検出部11の検出器をベッド上に配置された被検体の所定位置に載置し、この載置位置を基準位置として確定するための操作を入力部9で行う。第2の例では、実空間内の任意の位置に検出部11の検出器を配置し、この検出器の位置と基準座標に対応する位置との変位(標準座標系における変位)を求める。そして、入力部9に対する操作を受けて、この検出器の位置及びこの変位のペアが基準位置情報として入力される。なお、入力部9による確定操作を不要とする場合には、検出器からの信号が基準位置情報となる。この場合の検出器は入力部として機能する。
【0053】
基準座標情報が入力されることで、実空間内の所望の位置に対して、標準座標系及び被検体座標系のそれぞれの基準座標(原点等)を対応付けることができる。それにより、実空間内の位置と、この実施形態で考慮する座標系内の座標とが対応付けられることになる。このように、基準座標情報の入力は実空間と座標系とを対応付けるものであり、スケール比の決定は標準座標系と被検体座標系との間の座標変換に相当するものであるから、座標変換情報105は、実空間における位置と被検体座標系における座標とを対応付けた情報であり、また実空間における位置と標準座標系における座標とを対応付けた情報でもある。以上のような座標変換情報105の生成処理は、たとえば被検体の検査時(超音波検査の直前など)に行われる。
【0054】
(検査条件情報生成部132)
検査条件情報生成部132は、標準座標系内の領域に対して検査条件を対応付けた検査条件情報106(第2の対応情報)を生成する。この処理は、たとえば検査前の任意のタイミングで行われる。
【0055】
検査条件情報106の生成処理は、超音波プローブ1を用いて又は用いずに行われる。超音波プローブ1を用いずに行う場合、所定の表示画面や入力部9等のユーザインターフェイスが用いられる。このユーザインターフェイスの具体例については後述する。
【0056】
一方、超音波プローブ1を用いる場合においても同様のユーザインターフェイスが用いられる。ユーザは、実空間内の所望の位置に超音波プローブ1を配置する。この超音波プローブ1の位置(又はスキャン断面位置)は、検出部11により検出される。その検出結果は生成部13に入力される。なお、前述した基準位置情報の入力は既になされ、実空間と標準座標系との間の対応付けはなされているものとする。検査条件情報生成部132は、検出部11により検出された超音波プローブの位置に対応する標準座標系内の領域(検査領域)を特定する。
【0057】
この処理の第1の例では、超音波プローブ1の位置を移動させつつ複数の位置を指定する。検出部11は、これら複数の位置を検出する。検査条件情報生成部132は、検出された各位置に対応する標準座標系内の座標を求める。更に、検査条件情報生成部132は、得られた複数の座標を通過する閉曲線を求める。この閉曲線は、たとえばスプライン曲線やベジェ曲線である。この閉曲線で囲まれる領域が、当該複数の検出位置により指定された検査領域となる。
【0058】
第2の例では、超音波プローブ1の1つの検出位置に対応する座標を中心として円を描画し、この円で囲まれる領域を検査領域とする。この円の半径の設定方法は任意である。一例として、所望の半径をユーザが指定してもよいし、半径のデフォルト値を用いてもよい。このデフォルト値は、たとえば検査対象(臓器、部位等)のサイズに応じてあらかじめ設定される。
【0059】
更に、検査条件情報生成部132は、設定された各検査領域に対し、検査条件リスト102に含まれるいずれかの検査条件を対応付ける。この処理は、ユーザが手作業で行うようにしてもよいし、検査条件情報生成部132が自動で行うようにしてもよい。
【0060】
手作業の場合の例として、検査条件のリストをたとえばプルダウンメニューとして表示部7に表示させる。そして、ユーザは、入力部9を用いることで、表示されたリストのうちから所望の検査条件を指定する。このとき、検査条件リスト102に含まれる全ての検査条件を表示させる代わりに、当該検査領域に対応する身体部位に適用される検査条件を選択的に表示させることが可能である。その場合、たとえば、標準的な体格における各身体部位に対応する領域を標準座標系にあらかじめ設定しておく。また、検査条件リスト102に含まれる検査条件は、身体部位ごとに分類されているものとする(前述)。検査条件情報生成部132は、当該検査領域が属する標準座標系内の領域を特定し、特定された領域に対応する身体部位に分類されている検査条件のリストを表示させる。ユーザは、入力部9を操作して、このリストから所望の検査条件を選択する。以上の処理を各検査領域について行うことにより検査条件情報106が生成される。
【0061】
検査条件を自動で選択する場合の例として、被検者に対する過去(たとえば前回)の検査で使用された検査条件を電子カルテ情報から取得して、これを今回の検査でも適用する。この例は、経過観察や術前術後観察など、同一部位を複数回にわたって検査する場合に有利と考えられる。また、特定の身体部位の検査を主として行う場合や、特定の疾患の診断を主として行う場合にも有効と考えられる。別の例について説明する。この例は、手作業の場合で説明したケースと同様に検査条件リスト102に含まれる検査条件が身体部位ごとに分類されている場合において、当該検査領域に対応する検査条件を自動で選択するものである。このとき、当該検査領域に対応する検査条件が1つしかない場合、この検査条件を当該検査領域に対応付ける。複数の検査領域が存在する場合には、たとえば、電子カルテ情報等から疾患名を取得し、この疾患の患者に対して適用すべきとされている検査条件を対応付ける。なお、疾患名と検査条件とを対応付けた情報(テーブル情報等)が、あらかじめ記憶部10に記憶されているものとする。以上の処理を各検査領域について行うことにより検査条件情報106が生成される。
【0062】
(重畳領域を有する検査領域がある場合)
複数の検査領域が設定された場合、そのいくつかの検査領域が重なりを持つ場合がある。たとえば、胸部全体を或る検査条件で観察した後に、心臓を他の検査条件で観察する場合には、心臓に対する検査領域は胸部全体に対する検査領域に含まれる。また、たとえば心臓を異なる角度から検査する場合、対応する複数の検査領域はその一部が重なりを持つ。このような場合、重なりを持つ検査領域のうちのどの検査領域を優先して観察するか設定できれば便利である。たとえば、重畳領域を共有する2以上の検査領域を設定するとともにその検査順序を設定し、その検査順序に応じて検査条件を逐次に切り換えられれば便利である。以下、このような処理を実現するための構成を説明する。
【0063】
ユーザは、入力部9を操作して、重畳領域を有する2以上の検査領域に対して優先順位を指定する。その指定結果は入力部9から検査条件情報生成部132に入力される。検査条件情報生成部132は、入力部9から入力された優先順位の指定結果を当該2以上の検査領域に対応付けて検査条件情報106を生成する。なお、優先順位の指定方法については後述する。
【0064】
検査時において、超音波プローブ1の位置が検出部11により検出されると、選択部12(後述の検査条件選択部121)は、この検出位置に対応する座標が重畳領域に属するが判定する。なお、各検査領域の座標は既知であるので、この判定処理は容易である。検出位置に対応する座標が重畳領域に属すると判定された場合、選択部12は、当該2以上の検査領域のうち優先順位が最も高い検査領域を特定し、特定された検査領域に対応する検査条件を選択する。それにより、優先順位が最も高い検査領域を用いて当該重畳領域の検査を行うことができる。なお、検査領域の切り換えは、入力部9を操作して行ってもよいし、超音波プローブ1の検出位置に応じて自動で行うようにしてもよい。それにより、設定された優先順位に応じて検査条件を順次に切り換えつつ、重畳領域を有する2以上の検査領域の検査を行うことができる。
【0065】
[検査時に動作する構成]
以上のようにして作成された対応情報は検査時に用いられる。以下、検査時に動作する構成について図3を参照しつつ説明する。図3に示すように、検査開始時には、対応情報100が記憶部10に記憶されている。対応情報100には、座標変換情報105と検査条件情報106が含まれる。なお、座標変換情報105は、実空間における位置と被検体座標系(及び標準座標系)における座標とを対応付けるものである。また、検査条件情報106は、標準座標系内の検査領域と検査条件とを対応付けるものである。したがって、対応情報100を参照することで、標準座標系と被検体座標系との間の座標変換を介して、実空間における位置と検査条件とを対応付けることが可能となる。
【0066】
(選択部12)
選択部12は、検出部11により検出された超音波プローブ1(又はスキャン断面)の位置に対応する検査条件を、対応情報100に基づいて選択する。この処理は、座標特定部121と検査条件選択部122により実行される。
【0067】
(座標特定部121)
座標変換情報105により、実空間についてあらかじめ設定された標準座標系は、当該被検体の被検体座標系に変換されている。座標特定部121は、検出部11による超音波プローブ1の位置の検出結果を受ける。この検出結果は被検体座標系における座標である。座標特定部121は、この被検体座標系内の座標に対応する標準座標系における座標を、座標変換情報105に基づいて特定する。つまり、座標特定部121は、超音波プローブ1の検出位置を座標変換情報105で変換することにより、標準座標系において当該検出位置に対応する座標を得る。取得された座標の情報は、検査条件選択部122に入力される。
【0068】
(検査条件選択部122)
検査条件選択部122は、座標特定部121により取得された座標の情報を受ける。そして、検査条件選択部122は、検査条件情報106に基づいて、この座標が属する標準座標系内の検査領域に対応する検査条件を選択する。この処理は、検査領域を特定する処理と、検査条件を選択する処理とに分けられる。前者は、標準座標系において、座標特定部121により特定された座標が属する検査領域を特定するものである。後者は、検査条件情報106を参照することにより、前者の処理で特定された検査領域に対応する検査条件を特定するものである。
【0069】
(超音波プローブの位置の監視)
検査中における超音波プローブ1の位置を監視し、その位置の経時的な変化(つまり超音波プローブ1の移動)に伴って検査条件を逐次切り換えることができる。そのために、検出部11は、超音波プローブ1の位置の検出を定期的に行う。位置検出の時間間隔は、超音波プローブ1の位置を実質的にリアルタイムで検出できるように、たとえば超音波プローブ1の移動速度などを考慮して設定される。この時間間隔は、超音波プローブ1の移動速度に影響を与えるファクタに基づき設定できる。このファクタとしては、ユーザの個人差や、検査の熟練度などがある。また、この時間間隔を手動で任意に設定できるようにしてもよい。また、この時間間隔は、所定のデフォルト値であってもよい。このようにして定期的に得られる検出結果は、検出の都度、選択部12に入力される。
【0070】
選択部12は、検出部11から位置の検出結果が入力される度に、前述の検査条件の選択処理を行う。選択部14は、検査条件の選択結果を制御部8に送る。なお、今回の選択処理で選択された検査条件が前回のそれと異なる場合にのみ、選択結果を制御部8に送るようにしてもよい。制御部8は、選択された検査条件に基づいて処理部14を制御することにより、当該検査条件に応じた処理を実行させる。
【0071】
このように構成することで、処理部14は、前回と同じ検査条件が選択された場合には、この検査条件に応じた処理を継続し、他方、前回と異なる新たな検査条件が選択された場合には、前回までの検査条件での処理を終了し、新たな検査条件に基づく処理を開始する。
【0072】
(処理部14)
処理部14は、前述のように、送信部2、受信部3、信号処理部4、画像生成部5、及び表示制御部6を含んで構成される。各部2〜6は、制御部8による制御の下に、選択部12により選択された検査条件に応じた動作を行う。
【0073】
[動作]
この実施形態に係る超音波診断装置の動作の例を説明する。以下、この超音波診断装置が実行する処理を事前処理と検査時の処理とに分けて説明する。また、ユーザインターフェイスの例についても説明する。
【0074】
〔事前処理〕
事前処理の例を図4に示す。事前処理では、特に、被検体によらない共通の検査条件情報106の生成を行う。事前処理は、たとえば検査前の任意のタイミングで行われる。事前処理を行う際には、ベッドに被検体が載置されている必要はない。事前処理の開始時点では、図2に示すように記憶部10には標準座標系リスト101と検査条件リスト102が記憶されており、未だ対応情報100は記憶されていない。
【0075】
(S01:設定画面の表示)
まず、ユーザは入力部9を操作して設定画面の表示を指示する。この指示を受けた制御部8は、記憶部10にあらかじめ記憶された設定画面のデータ(図示せず)を読み出し、表示部7に設定画面を表示させる。この設定画面は、事前処理に必要な情報を表示したり、情報を入力したりするために用いられるユーザインターフェイスである。
【0076】
設定画面の例を図5に示す。ここで、動作例の説明を一時中断し、設定画面200の構成を説明する。設定画面200には、全体表示部210と、設定操作部220と、体位指定部230と、ボタン部240とが設けられている。
【0077】
全体表示部210には、被検者の体位や超音波プローブ1の位置やスキャン断面位置が表示される。全体表示部210には、被検者像211、プローブ像212、断面位置像213、検査部位像214などが表示される。なお、ステップS01で設定画面200を表示させた段階では、これらの像211〜214は未だ表示されていなくてもよいし、これらの標準的な情報が表示されていてもよい。
【0078】
被検者像211は、人体を模した概略図である。記憶部10には、体位の選択肢ごとに被検者像のデータがあらかじめ記憶されている。表示される被検者像211は、体位指定部230による体位の指定結果に応じて選択される。
【0079】
プローブ像212は、超音波プローブ1の位置を表す。プローブ像212の表示位置は、検出部11による検出結果に基づいて決定される。また、実際に超音波プローブ1を用いずに事前処理を行う場合などには、入力部9(たとえばマウス等のポインティングデバイス)を用いてプローブ像212の表示位置を変更できるようにしてもよい。
【0080】
断面位置像213は、超音波プローブ1によってスキャンしている被検体の断面位置を表している。この動作例の検出部11は、前述のように、超音波プローブ1の位置を検出し、これに基づいて断面位置を検出するものとする。また、実際に超音波プローブ1を用いずに事前処理を行う場合などには、プローブ像212と同様に、入力部9を用いて断面位置像213の表示位置を変更できるようにしてもよい。
【0081】
検査部位像214は、全体表示部210内において設定操作部220に拡大表示される領域を表している。検査部位像214は、超音波プローブ1の位置に応じた全体表示部210内の位置に表示される。検査部位像214の表示位置は、たとえば、比較的大きな区分の身体部位(腹部、胸部等)ごとに設定される。検査部位像214を選択表示する処理の例として、超音波プローブ1の位置の検出結果から標準座標系の座標を求め、この座標に対応する身体部位を特定し、この身体部位に対応する検査部位像を選択して表示させる。なお、検査部位像214の表示位置やサイズは、あらかじめ設定されていてもよいし、ユーザが任意に設定できるようになっていてもよい。
【0082】
設定操作部220には、対応情報100を設定するための各種の情報が表示される。設定操作部220内に表示される内容は、検査部位像214が囲む領域に相当する。図5に示す設定操作部220には、断面位置像221が表示されている。設定操作部220における断面位置像221の表示位置は、検査部位像214における断面位置像213の表示位置に相当する。なお、ステップS01で設定画面200が表示された段階では、断面位置像221は未だ表示されていない。
【0083】
体位指定部230は、被検体の体位を指定するために使用される。体位指定部230には、体位の選択肢として、仰臥位ボタン231と、伏臥位ボタン232と、右側臥位ボタン233と、左側臥位ボタン234とが設けられている。各ボタン231〜234は、ソフトウェアキー(アイコン)である。ユーザは、入力部9を操作して所望のボタン231〜234を指定する。その指定方法の例として、ポインティングデバイス(図示せず)によるクリック操作がある。
【0084】
ボタン部240には、対応情報100を設定するために使用される各種のボタンが設けられている。この動作例のボタン部240には、頂点設定ボタン241、頂点削除ボタン242、領域設定ボタン243、領域削除ボタン244、優先度上昇ボタン245、優先度下降ボタン246、及びプリセット選択ボタン247が設けられている。
【0085】
頂点設定ボタン241は、検査領域を設定するための頂点を設定するために使用される。頂点削除ボタン242は、既に設定された頂点を削除するために使用される。領域設定ボタン243は、検査領域を設定するために使用される。領域削除ボタン244は、既に設定された検査領域を削除するために使用される。優先度上昇ボタン245及び優先度下降ボタン246は、2以上の検査領域に対して優先順位(優先度)を設定するために用いられる。優先度上昇ボタン245は或る検査領域の優先順位を上げるために使用され、優先度下降ボタン246はその優先順位を下げるために使用される。プリセット選択ボタン247は、検査領域に対してプリセット(検査条件)を割り当てるために使用される。各ボタン241〜247は、ソフトウェアキー(アイコン)である。ユーザは、たとえばポインティングデバイスを操作して所望のボタンをクリックすることで、そのボタンに応じた動作を指示する。以上で、設定画面200の構成の説明を終了し、動作例の説明に戻る。なお、ユーザインターフェイスとして設定画面200が用いられるものとする。
【0086】
(S02:体位の指定)
前述のように、設定画面200が表示された段階では、被検者像211、プローブ像212、断面位置像213、検査部位像214及び断面位置像221は表示されていなくてもよい。ユーザは、体位指定部230のボタン231〜234のいずれかをクリックすることで、被検者の体位を指定する。この動作例では、仰臥位ボタン231がクリックされたものとする。
【0087】
仰臥位ボタン231がクリックされると、制御部8は、仰臥位に対応する被検者像211を全体表示部210に表示させる(図5を参照)。また、生成部13は、選択された体位(仰臥位)に対応する標準座標系を、標準座標系リスト101から取得する。全体表示部210内の位置と標準座標系の座標は対応付けられている。
【0088】
(S03:検査領域の設定)
続いて、検査領域の設定がなされる。前述のように、検査領域の設定は、超音波プローブ1又は入力部9(ポインティングデバイス等)を操作しつつ行われる。本動作例では、入力部9を用いて行う場合について説明する。なお、超音波プローブ1を用いる場合には、入力部9で位置を指定する代わりに、検出部11による超音波プローブ1の位置の検出結果を基に検査領域が設定される。
【0089】
ユーザは、入力部9を操作して、全体表示部210に表示された被検者像212内における所望の検査部位を指定する。制御部8は、指定された検査部位に応じた検査部位像214を表示させる。また、制御部8は、この検査部位像214に囲まれた領域と、設定操作部220内の領域とを対応付ける。
【0090】
更に、ユーザは、入力部9を操作して、設定操作部220内に検査領域を設定する。この操作の例を説明する。ユーザは、ポインティングデバイスのクリック操作により、設定操作部220内の所望の位置を指定する。制御部8は、指定された位置に断面位置像221を表示させるとともに、これに対応する全体表示部210内の位置にも断面位置像213を表示させる(図5を参照)。なお、被検者像211における所望の位置を指定するようにしてもよい。
【0091】
ユーザは、断面位置像213、221の位置が適当か判断する。この判断は、たとえば、被検者像211における断面位置像213の位置を参照して行われる。その際、被検者像211内に、各種臓器の標準的な位置を表す画像を表示させてもよい。指定された適当である場合、ユーザは入力部9を操作して頂点設定ボタン241をクリックする。この操作に対応し、検査条件情報生成部132は、当該スキャン断面位置に対応する標準座標系の座標を記録する。
【0092】
以上の処理を繰り返すことで複数のスキャン断面位置が記録される。そして、ユーザは、領域設定ボタン243をクリックする。これを受けた検査条件情報生成部132は、これらスキャン断面位置を結ぶ閉曲線(スプライン曲線等)を求める。制御部8は、得られた複数のスキャン断面と閉曲線に基づいて、図6に示すような断面位置像221i(i=1〜M:Mはスキャン断面位置の個数)と閉曲線像222を設定操作部220内に表示させる。閉曲線像222に囲まれた領域が検査領域となる。なお、断面位置像221iの表示を省略して閉曲線像222のみを表示させるようにしてもよい。
【0093】
検査領域の他の設定方法を説明する。ユーザは、スキャン断面位置を1つ設定し、領域設定ボタン243をクリックする。検査条件情報生成部132は、このスキャン断面位置を中心としかつ所定の半径を有する円形の領域を検査領域として設定する。また、ポインティングデバイスのドラッグ操作によって検査領域を指定するように構成することも可能である。更に、各種形状の検査領域に対応するアイコンを設定画面200に設けるとともに、所望のアイコンの指定と、検査領域の位置及びサイズの指定を通じて検査領域を設定するように構成することも可能である。
【0094】
ユーザは、以上の処理を繰り返すことで、所望の個数の検査領域を設定する。このときの表示態様の例を図7に示す。図7の設定操作部220には、3つの検査領域2221、2222、2223が表示されている。検査領域2221は、たとえば腹部を広範囲に検査するためのものである。また、各検査領域2222、2223は、たとえば腹部において特に注目する部位を検査するためのものである。なお、図7において断面位置像の図示は省略されている。
【0095】
(S04:検査条件の割り当て)
検査領域の設定が完了したら、各検査領域に対して検査条件を割り当てる。そのためにまず、ユーザは、検査領域2221〜2223のうちの1つを指定する。この指定操作は、たとえば所望の検査領域をクリックするものである。
【0096】
次に、ユーザは、プリセット選択ボタン247をクリックする。これを受けた制御部8は、指定された検査領域(たとえば腹部)に対応する検査条件を検査条件リスト102から選択し、その一覧を表示部7に表示させる。ユーザは、表示された一覧のうちから所望の検査条件をクリックする。検査条件情報生成部132は、この選択された検査条件を、指定された検査領域に対応付ける。なお、指定された検査領域に対応する検査条件を1つに絞り込める場合(たとえば、対応する検査条件が1つしかない場合)、検査条件情報生成部132は、上記の一覧を表示させることなく、その検査条件を自動で割り当てることができる。
【0097】
各検査領域に対して以上の処理を行う。それにより、3つの検査領域2221、2222、2223のそれぞれに対して検査条件が割り当てられる。
【0098】
(S05:優先順位の設定)
本動作例では、設定された検査領域2221、2222、2223が重畳領域を有するので、必要に応じて優先順位の設定を行う。一例として、ユーザは、任意の検査領域をクリックし、この検査領域の優先順位を優先度上昇ボタン245及び優先度下降ボタン246を用いて設定する。なお、重畳領域がない場合には、このステップS08を行う必要はない。
【0099】
(S06:検査条件情報の生成)
検査条件情報生成部132は、ステップS03で設定された各検査領域に対し、ステップS04で指定された検査条件と、ステップS05で設定された優先順位とを対応付けることにより、検査条件情報106を生成する。検査条件情報生成部132は、この検査条件情報106を対応情報100として記憶部10に記憶させる。なお、検査において複数の検査条件情報106を選択的に使用する場合には、各検査条件情報106に対してIDを付与し、これらを関連付けて記憶部10に格納する。以上で、本動作例の事前処理の説明を終わる。
【0100】
〔検査時の処理〕
検査時の処理の例を図8に示す。ベッド上には、検査用の体位で被検体が配置されている。また、被検体の所定位置(つまり実空間内の基準位置)には、検出部11の検出器が配置されている。制御部8は、記憶部10から検査条件情報106を読み出して選択部12に送る。以下、図7に示す検査領域2221、2222、2223を検査するものとする。優先順位は、検査領域2221が最も高く、次が検査領域2222、最後が検査領域2223であるとする。検査時の処理では、実際の検査に先立って、当該被検者に固有の設定処理を行う。この設定処理は、当該被検者の座標変換情報105を生成するためのものである。
【0101】
(S21:設定画面の表示)
まず、ユーザは入力部9を操作して設定画面200の表示を指示する。この指示を受けた制御部8は、設定画面200を表示させる。
【0102】
(S22:体位の指定)
ユーザは、体位指定部230のボタン231〜234のうち、当該被検者の検査時の体位に対応するものをクリックする。制御部8は、指定された体位に対応する被検者像211を全体表示部210に表示させる(図5等を参照)。また、制御部8は、指定された体位に対応する標準座標系を、標準座標系リスト101から選択する。
【0103】
(S23:基準位置の指定)
続いて、基準位置の指定がなされる。基準位置は、標準座標系内の基準座標に対応する実空間内の位置である。この動作例では、検出部11の検出器を被検体の所定位置に配置し、更に、入力部9を操作して、この所定位置を基準位置として確定する。座標変換情報生成部131は、入力部9(又は検出器)からの基準位置情報に基づいて、ステップS22で選択された標準座標系内の基準座標と、実空間内の基準位置(上記所定位置)とを対応付ける。この処理の例として、被検体の臍上に検出器が配置された場合、この臍上の位置と標準座標系の原点とが対応付けられる。
【0104】
(S24:体格情報の入力)
次に、被検体の体格情報が入力される。この動作例の体格情報は、身長情報及び体重情報を含んでいるとする。
【0105】
(S25:座標変換情報の生成)
前述のように、標準座標系は、標準身長情報及び標準体幅情報(標準体重情報)に基づいて設定されたものである。座標変換情報生成部131は、標準身長情報と身長情報との比を算出し、標準体重情報と体重情報との比を算出する。更に、座標変換情報生成部131は、これらスケール比に基づいて座標変換情報105を生成する。生成された座標変換情報105は、対応情報100として記憶部10に記憶される。
【0106】
スケール比に基づく座標変換の概要を図9に示す。標準座標系300は、原点301を基準位置とし、標準的な体格に応じた有限の領域を有する。つまり、体軸方向の座標軸302は標準身長情報に応じた長さを有し、体幅方向の座標軸303は標準体幅情報(標準体重情報)に応じた長さを有する。標準座標系300内の座標は、たとえば、原点301を(0,0)とし、当該有限領域の左上、右上、左下、右下の角をそれぞれ(−1,−1)、(1,−1)、(−1,1)、(1,1)とする。
【0107】
このような標準座標系300の座標軸302、303に対して上記のスケール比を乗算することで、被検体座標系400が得られる。つまり、標準座標系300の体軸方向の座標軸302に対して身長のスケール比を乗算することで、被検体座標系400の座標軸402が得られる。体幅方向の座標軸403も同様にして得られる。原点401は座標軸402、403の交点である。
【0108】
被検体座標系400内の座標は、標準座標系300の座標と同様に、原点401を(0,0)とし、当該有限領域の左上、右上、左下、右下の角をそれぞれ(−1,−1)、(1,−1)、(−1,1)、(1,1)とする。原点401の座標(0,0)は、標準座標系300の原点301の座標(0,0)を介して、実空間内の基準位置、つまり検出器の位置に対応付けられる。なお、この対応付けは基準位置情報に基づくものである。このように、本動作例の座標変換情報105は、基準位置情報を加味したものである。被検者像500は、標準的な被検者像211に対してスケール比を反映させたものである。なお、本動作例では、被検体座標系400を求めれば十分であり、被検者像500を作成する必要はない。
【0109】
全体表示部210の表示態様は、被検体に対する超音波プローブ1の位置(スキャン断面位置)を認識できるものであればよい。したがって、設定画面200に表示される被検者像211は、標準的な体格を表す像であってもよいし、この像に対してスケール比を反映させて得られる被検者像500であってもよい。なお、標準座標系300と被検体座標系400との間には座標変換情報105による対応がなされているので、どちらの像を表示させるとしても、全体表示部210の表示に特段の影響はない。
【0110】
この動作例では、座標変換情報105に基づいて、実空間内の座標系を標準座標系300から被検体座標系400に置き換える。それにより、ベッドに載置された被検体の体格に対応する被検体座標系400が実空間内に設定される。そして、被検体座標系400の座標として得られる実空間内の位置は、座標変換情報105によって標準座標系300の座標に変換されて検査条件の選択が行われる。以上の準備の下、実際の検査に移行する。
【0111】
(S26:検査開始)
ユーザは、被検体の体表に超音波プローブ1を当てる。このとき、最も優先順位が高い検査領域2221内に超音波プローブ1を当接するのが一般的である。
(S27:断面位置の検出)
検出部11は、超音波プローブ1(つまりスキャン断面)の位置を定期的に検出する。それにより、検出部11は超音波プローブ1の移動を監視する。
【0112】
(S28:検査条件の選択)
選択部12は、ステップ27での検出位置が検出領域2221〜2223のいずれか(この場合、包含関係から検出領域2221)に属するか判定する。検出領域2221に属さないと判定された場合、選択部12は、検出位置が検査領域2221に属すると判断されるまで待機する。ユーザは、検出位置が検査領域2221に属すると判定されるように、超音波プローブ1を移動させる。なお、この場合において、所定の検査条件を設定するようにしてもよい。また、検査対象が検査領域2221〜2223だと事前に特定されている場合には、たとえば優先順位が最も高い検査領域2221に対応する検査条件を選択するようにしてもよい。
【0113】
他方、スキャン断面位置の検出結果が検査領域2221に属すると判定された場合、選択部12は、この検出位置が重畳領域に属するか判定する。重畳領域に属さないと判定された場合、つまりこの検出位置が検査領域2221内かつ検査領域2222、2223外に属すると判定された場合、選択部12は、検査条件情報106を参照し、検査領域2221に対応する検査条件を選択する。
【0114】
また、検出位置が重畳領域に属すると判定された場合、選択部12は、前述の優先順位に基づいて、最も優先順位が高い検査領域2221を特定する。そして、選択部12は、検査条件情報106を参照し、この検査領域2221に対応する検査条件を選択する。
【0115】
(S29、S30、S31:検査)
選択部12により選択された検査条件は、制御部8に入力される。制御部8は、この検査条件に基づいて処理部14を制御する。それにより、検査領域2221に対応する検査条件で、検査領域2221の検査を行うことができる。この段階では検査は継続される(S30:NO、S31:NO)。
【0116】
検査領域2221の検査が終了したら、次の検査領域内にスキャン断面位置が属するように超音波プローブ1を移動させる。スキャン断面位置の移動は検出部11により検出される(S31:YES)。なお、この動作例では、検査領域2222、2223を含む検査領域2221を先に検査するため、ユーザの指示に対応して検査領域2221の検査が終了したと判断するようにしてもよい。なお、これ以降の段階における検査領域の変更は、スキャン断面位置の移動に対応して自動で行うことができる。
【0117】
検出部11はスキャン断面位置の移動を監視している。選択部12は、スキャン断面位置が検査領域2222に入ったことに対応し、これに対応する検査条件を選択する(S28)。その選択結果は制御部8に送られる。制御部8は、この新たな検査条件に基づく処理を処理部14に実行させる。それにより、処理部14の動作モードが、検査領域2221用の検査条件に基づく処理から、検査領域2222用の検査条件に基づく処理に切り換わる(S29)。スキャン断面位置が他の検査領域に移動するまで、この処理が継続される(S30:NO、S31:NO)。
【0118】
引き続き、検出部11はスキャン断面位置の移動を監視している。選択部12は、スキャン断面位置が検査領域2223に入ったことに対応し、これに対応する検査条件を選択する(S28)。制御部8は、この新たな検査条件に基づく処理を処理部14に実行させることにより、処理部14の動作モードを、検査領域2222用の検査条件に基づく処理から、検査領域2223用の検査条件に基づく処理に切り換える(S29)。この最後の検査領域2223の検査が終了するまで、この処理が継続される(S30:NO、S31:NO)。検査領域2223の検査の終了とともに、本動作例の処理も終了となる(S30:YES)。
【0119】
[効果]
この実施形態に係る超音波診断装置の効果について説明する。
【0120】
この実施形態に係る超音波診断装置は、検査時において、実空間における位置と検査条件とを対応付けた対応情報100を記憶している。検出部11は実空間における超音波プローブ1の位置(つまりスキャン断面位置)を検出する。選択部12は、検出部11による検出位置に対応する検査条件を対応情報100に基づいて選択する。処理部14は、選択部12で選択された検査条件に基づいて処理を行う。
【0121】
このような実施形態によれば、超音波プローブ1の位置に応じて検査条件が自動的に切り換えることができるので、検査部位を変更する度に検査条件を選択し直す必要がなくなる。したがって、複数の身体部位の検査を効率的に行うことが可能となる。なお、前述のように、検査条件には画質条件やアプリケーションが含まれる。検査部位に応じた画質条件を自動で選択することにより、良好な画質の画像を得つつ検査の効率化を図ることができる。また、検査部位に応じたアプリケーションを自動で選択することにより、検査部位に対応する検査種別やワークフローでの検査を効率的に行うことができる。
【0122】
また、この実施形態の検出部11は、スキャン断面位置の検出を定期的に行うことで、その移動を監視する。選択部12は、検出部11による位置検出がなされる度に検査条件の選択を行う。処理部14は、選択部12により前回の選択時と異なる新たな検査条件が選択されたことに対応し、この新たな検査条件に基づく処理を開始する。このような実施形態によれば、超音波プローブ1が他の検査領域内に移動されたことに対応し、当該他の検査領域に応じた検査条件に自動的に切り換わる。したがって、検査領域の変更に伴う検査条件の変更をユーザが行う必要がなくなり、検査の効率化を図ることが可能となる。
【0123】
また、この実施形態の対応情報100は、標準座標系内の基準座標に対応する実空間内の基準位置情報や、被検体の体格情報に基づいて生成される。それにより、実空間内の任意の位置に配置された被検体について、その体格に応じて検査条件を自動的に特定することが可能となる。したがって、実空間における被検体の位置や被検体の体格にかかわらず、検査条件の選択を高い確度で行うことができる。
【0124】
[変形例]
上記した実施形態の変形例を説明する。以下の変形例は、超音波プローブ1の移動に伴う検査条件の切り換えに関する。
【0125】
この変形例は、隣接する検査領域がある場合、つまり第1の検査領域と第2の検査領域が互いの境界を共有する場合、又は重畳領域を有する第1、第2の検査領域がある場合に適用される。
【0126】
検出部11は、超音波プローブ1の位置(スキャン断面位置)の検出を定期的に行うことで、超音波プローブ1の移動を監視する。選択部12は、検出部11により定期的に検出された位置に対応する座標の属する検査領域を特定する。特定される検査領域が第1の検査領域から第2の検査領域に切り換わったことを検出すると、検査条件選択部122は、検出部11により検出される位置に対応する座標と、第1の検査領域と第2の検査領域との境界(又は重畳領域の境界)との距離が所定距離以上であるか判定する。この所定距離は、検出部11による検出間隔等に応じて事前に設定される。更に、検査条件選択部122は、当該距離が所定距離以上になったことに対応し、第2の検査領域に対応する検査条件を選択する。制御部8は、この選択結果を受けて、処理部14の動作モードを第1の検査領域用のものから第2の検査領域用のものに切り換える。
【0127】
この処理の例について図10を参照しつつ説明する。図10に示す2つの検査領域601、602は重畳領域を有している。なお、検査領域が隣接している場合についても処理内容は同様である。
【0128】
検査領域601は検査領域602の一部であるから、これらの境界は検査領域601の境界(つまり外縁)である。この境界から所定距離だけ検査領域602に入った位置に第1の切換境界611が設定されている。同様に、この境界から所定距離だけ検査領域601に入った位置に第2の切換境界612が設定されている。なお、双方の「所定距離」は等しくてもよいし、異なっていてもよい。矢印A、Bは、超音波プローブ1(スキャン断面位置)の移動方向を示している。
【0129】
超音波プローブ1が矢印Aの向きに移動される場合、検査領域601が上記第1の検査領域となり、検査領域602が上記第2の検査領域となる。矢印Aの向きに移動される超音波プローブ1が検査領域601の境界を越えると、選択部12により特定される検査領域が検査領域601から検査領域602に切り換わる。
【0130】
その後、検査条件選択部122は、検出部11により位置検出がなされる度に、その検出位置に対応する座標と検査領域601との境界との距離を算出し、この距離が所定距離以上であるか判定する。この距離が所定距離以上になると、検査条件選択部122は、対応情報100に基づいて、検査領域602に対応する検査条件を選択する。制御部8は、この選択結果を受けて、処理部14の動作モードを検査領域601用のものから検査領域602用のものに切り換える。
【0131】
矢印Bの向きに超音波プローブ1を移動させる場合も同様に、検査領域601の境界から所定距離だけ検査領域601に超音波プローブ1が移動されたタイミングで、処理部14の動作モードが検査領域602用のものから検査領域601用のものに切り換えられる。
【0132】
このような変形例によれば、検査領域の境界における検査条件の切り換えをスムースに行うことができる。また、検査条件の切り換え以前の検査領域の検査を、その境界まで確実に行うことができる。
【0133】
この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0134】
1 超音波プローブ
2 送信部
3 受信部
4 信号処理部
5 画像生成部
6 表示制御部
7 表示部
8 制御部
9 入力部
10 記憶部
100 対応情報
101 標準座標系リスト
102 検査条件リスト
105 座標変換情報
106 検査条件情報
11 検出部
12 選択部
121 座標特定部
122 検査条件選択部
13 生成部
131 座標変換情報生成部
132 検査条件情報生成部
14 処理部
200 設定画面
210 全体表示部
220 設定操作部
230 体位指定部
240 ボタン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波を送受信する超音波プローブを有し、前記超音波プローブによる受信結果に基づいて前記被検体内の画像を生成して表示する超音波診断装置であって、
実空間における位置と、画質条件及び/又はアプリケーション種別を含む検査条件とを対応付けた対応情報を記憶する記憶部と、
前記実空間における前記超音波プローブの位置を検出する検出部と、
前記検出された位置に対応する検査条件を前記対応情報に基づいて選択する選択部と、
前記選択された検査条件に基づいて処理を行う処理部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記被検体の体格情報を入力する入力部を備え、
前記対応情報は、
前記実空間における位置と前記被検体に対して設定された被検体座標系における座標とを対応付けた第1の対応情報と、
あらかじめ設定された標準座標系内の複数の領域のそれぞれに対して前記検査条件を対応付けた第2の対応情報と、
を含み、
前記選択部は、
前記第1の対応情報及び前記入力された体格情報に基づいて、前記検出部により検出された位置に対応する前記標準座標系における座標を特定する座標特定部と、
前記第2の対応情報に基づいて、前記特定された座標が属する前記標準座標系内の領域に対応する検査条件を選択する検査条件選択部と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記座標特定部は、前記第1の対応情報に基づいて、前記検出された位置に対応する前記被検体座標系における座標を特定し、前記体格情報に基づいて、該特定された前記被検体座標系における座標に対応する前記標準座標系における座標を特定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記位置の検出を定期的に行い、
前記選択部は、前記検出部により前記位置が検出される度に前記検査条件の選択を行い、
前記処理部は、前記選択部により前回と異なる新たな検査条件が選択されたことに対応し、前記新たな検査条件に基づく処理を開始する、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記位置の検出を定期的に行い、
前記複数の領域のうちの第1の領域と第2の領域とが境界を共有する場合又は重畳領域を有する場合において、前記検査条件選択部は、前記定期的に検出された位置に対応する座標の属する領域が前記第1の領域から前記第2の領域に切り換わった後、前記検出部により検出される位置に対応する座標と、前記境界又は前記重畳領域の境界との距離が所定距離以上であるか判定し、前記距離が所定距離以上になったことに対応して前記第2の領域に対応する検査条件を選択する、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
あらかじめ設定された標準座標系における基準座標に対応する前記実空間内の基準位置情報と、前記被検体の体格情報とを入力する入力部と、
前記入力された基準位置情報及び体格情報に基づいて前記対応情報を生成する生成部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記入力された体格情報と前記標準座標系とに基づいて前記被検体座標系を設定し、該設定された被検体座標系に基づいて前記第1の対応情報を生成する第1の生成部を更に備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記第1の生成部は、前記入力された体格情報に基づいて前記標準座標系のスケールを変更することにより前記被検体座標系を設定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記標準座標系のスケールは、標準身長情報及び標準体幅情報に基づきあらかじめ設定され、
前記入力部は、前記体格情報として、前記被検体の身長情報及び体幅情報を入力し、
前記第1の生成部は、前記標準身長情報と前記身長情報との比、及び、前記標準体幅情報と前記体幅情報との比を算出し、これら比の値に基づいて前記スケールの変更を行う、
ことを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記記憶部は、複数の体位に対応する複数の前記標準座標系をあらかじめ記憶し、
前記入力部は、前記被検体の体位情報を更に入力し、
前記第1の生成部は、前記入力された体位情報に対応する標準座標系を前記複数の標準座標系のうちから選択し、この選択された標準座標系に基づいて前記被検体座標系を設定し、この被検体座標系についての前記第1の対応情報を生成する、
ことを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記記憶部は、複数の前記検査条件をあらかじめ記憶し、
前記入力部は、前記標準座標系における基準座標に対応する前記実空間内の基準位置情報を更に入力し、
前記検出部により検出された前記超音波プローブの位置及び前記入力された基準位置情報に基づいて前記標準座標系内の領域を特定し、この領域に対して前記複数の検査条件のいずれかを対応付けることにより前記第2の対応情報を生成する第2の生成部を更に備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記入力部は、前記複数の領域のうち重畳領域を有する2以上の領域について、優先順位を入力し、
前記第2の生成部は、この入力された優先順位を前記2以上の領域に対応付けて前記第2の対応情報を生成し、
前記検査条件選択部は、前記検出部により検出された位置に対応する座標が前記重畳領域に属する場合に、前記2以上の領域のうち前記優先順位が最も高い領域に対応する検査条件を選択する、
ことを特徴とする請求項11に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記検出部は、磁気センサ又は光学センサを含む、
ことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−161353(P2012−161353A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21601(P2011−21601)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】