説明

超音波診断装置

【課題】卵胞などの診断対象に関する計測結果を格付けする技術を提供する。
【解決手段】計測結果評価部は、卵胞に関するデータの状態を評価して得られる評価結果に基づいて、複数の階級A〜Cのいずれかを対応付けることにより計測値を格付けする。計測結果評価部は、複数の評価項目に関する個別の評価結果に基づいて総合評価を判定する。例えば、個別の評価結果の全てがaであれば総合評価を階級A(良好)と判定する。また、例えば、個別の評価結果に一つでもbが含まれており且つcが含まれていなければ総合評価を階級B(普通)と判定する。そして、例えば、個別の評価結果に一つでもcが含まれていれば総合評価を階級C(不良)と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
組織等の超音波画像を表示する技術が従来から知られており、その表示画像は、組織等の種類や診断内容に応じて多種多様である。そして、その組織等として、生体内の複数の卵胞も超音波診断の対象とされる。例えば、特許文献1には、超音波を利用して卵胞径を計測し、計測された卵胞径に基づいて排卵日を予測する旨の技術が記載されている。
【0003】
また、体外受精を行う際には、排卵誘発剤により良好な卵胞を発育させ、自然に排卵する前に卵胞内の卵子が体外に採り出される。その際に、例えば複数の卵胞を映し出した超音波画像が利用され、卵胞の大きさなどが確認されつつ、採卵のタイミングなどが決定される。
【0004】
なお、卵胞は比較的狭い卵巣(3〜4cm程度)内に複数個がひしめきあって成長するため、球形に近い本来の形から歪んだ形状となっている。そのため、例えば、超音波画像内において複数の卵胞が特定され、各卵胞を球と仮定した場合の直径などが計測される。
【0005】
ところが、超音波データに基づいて得られる卵胞に関する計測結果は、元となる超音波データの影響を受けている。例えば、分解能が比較的悪い状態の超音波データから計測結果が得られる場合もあれば、卵胞そのものの状態が好ましくない超音波データから計測結果が得られる場合なども考えられる。
【0006】
したがって、単に卵胞の計測結果のみをユーザに提供しても、ユーザは超音波データの状態などの影響の度合いを知ることが極めて難しい。また、卵胞以外の診断対象についても、単に計測結果のみをユーザに提供しただけでは、ユーザは超音波データの状態などの影響の度合いを知ることが極めて難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−285315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した背景事情において、本願の発明者は、卵胞などの診断対象の診断に適した超音波診断について研究開発を重ねてきた。
【0009】
本発明は、この研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、診断対象に関する計測結果を格付けする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、診断領域に対して超音波を送受するプローブと、プローブを制御することにより診断領域から超音波のデータを収集する送受信部と診断領域から収集された超音波のデータ集合内において診断対象を特定する特定部と、診断対象を特定されたデータ集合に基づいて診断対象の診断のための計測結果を得る計測部と、データ集合内における診断対象の状態を評価して前記計測結果を格付けする評価部とを有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、データ集合内における卵胞などの診断対象の状態を評価して計測結果が格付けされるため、例えば、計測結果に対する超音波データの状態などからの影響の度合いをユーザが把握できる。
【0012】
望ましい具体例において、前記評価部は、前記計測結果に複数の階級のいずれかを対応付けることにより当該計測結果を格付けすることを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記評価部は、データ集合内における診断対象の内部のエコーデータを評価して得られる評価結果に基づいて、前記計測結果に複数の階級のいずれかを対応付ける、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記評価部は、データ集合内における診断対象の形態を評価して得られる評価結果に基づいて、前記計測結果に複数の階級のいずれかを対応付ける、ことを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記評価部は、データ集合内における診断対象に関するプローブからの距離を評価して得られる評価結果に基づいて、前記計測結果に複数の階級のいずれかを対応付ける、ことを特徴とする。
【0016】
また、上記目的にかなう好適なプログラムは、超音波を送受して得られる超音波のデータ集合内において診断対象を特定する機能と、診断対象を特定されたデータ集合に基づいて診断対象の診断のための計測結果を得る機能と、データ集合内における診断対象の状態を評価して前記計測結果を格付けする機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0017】
上記プログラムは、例えば、ディスクやメモリなどのコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、その記憶媒体を介してコンピュータに提供される。もちろん、インターネット等の電気通信回線を介して上記プログラムがコンピュータに提供されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により診断対象に関する計測結果を格付けする技術が提供される。これにより、例えば、計測結果に対する超音波データの状態などからの影響の度合いをユーザが把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】卵胞特定部における処理を説明するための図である。
【図3】三次元データ空間内におけるフィルタの走査を説明するための図である。
【図4】膨張処理におけるフィルタ処理を説明するための図である。
【図5】計測結果評価部による卵胞の計測値の格付けを説明するための図である。
【図6】表示部に表示される表示画像の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。プローブ10は、診断対象を含む領域に対して超音波を送受波する超音波プローブである。診断対象の具体例は、例えば生体内の卵胞などである。プローブ10は、超音波を送受する複数の振動素子を備えており、複数の振動素子が送受信部12によって送信制御されて送信ビームが形成される。また、複数の振動素子が診断対象を含む領域内から得られる超音波を受波し、これにより得られた信号が送受信部12へ出力され、送受信部12が受信ビームを形成して受信ビームに沿ってエコーデータが収集される。
【0021】
プローブ10は、超音波ビーム(送信ビームと受信ビーム)を三次元空間内において走査して立体的にエコーデータを収集する三次元プローブが好適である。例えば、一次元的に配列された複数の振動素子(1Dアレイ振動子)によって電子的に形成される走査面を機械的に動かすことにより超音波ビームが立体的に走査される。また、二次元的に配列された複数の振動素子(2Dアレイ振動子)を電子的に制御して超音波ビームを立体的に走査してもよい。もちろん、超音波ビームを断層面内において走査する二次元の超音波プローブが利用されてもよい。なお、プローブ10は、例えば、患者の体表に接して利用されるものでもよいし、患者の体腔内に挿入されて利用されるものでもよい。
【0022】
三次元空間内において超音波ビームが走査されてエコーデータが収集されると、その三次元空間に対応した三次元データ空間を構成する複数のボクセルについてのエコーデータ(ボクセルデータ)が図示しないメモリなどに記憶される。そして、三次元データ空間を構成する複数のボクセルからなるボリュームデータに対して、卵胞特定部20以降の各部において各種の処理が実行される。そこで、それら各種の処理について説明する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明において図1の符号を利用する。
【0023】
図2は、卵胞特定部20における処理を説明するための図である。図2(A)は、二値化処理を示している。卵胞特定部20は三次元データ空間を構成する複数のボクセルに対して二値化処理を施すことにより、図2(A)に示す二値化処理後の画像データを形成する。卵胞特定部20は、二値化のための閾値と各ボクセルのボクセル値(エコーデータの大きさ)を比較することにより、卵胞Fに対応するボクセルとそれ以外のボクセルとを識別する。そして、例えば、卵胞Fに対応するボクセルのボクセル値を「1」とし、それ以外のボクセルのボクセル値を「0」とする。図2(A)においては卵胞Fに対応するボクセル群が白で描かれており、それ以外の背景に相当するボクセル群が黒で描かれている。
【0024】
なお、ボリュームデータ内において、卵胞Fに対応したボクセルのボクセル値(エコー値)は比較的小さいため、エコー値の大きさを輝度値に対応付けると、卵胞Fの部分が黒く抜けて画像化される。しかし、図2の二値化処理では、卵胞Fに注目しているため、卵胞Fに対応するボクセルのボクセル値を「1」とし、それ以外のボクセルのボクセル値を「0」としている。
【0025】
生体内において複数の卵胞は互いに密着して密集している。そのため、超音波画像内においては、図2(A)に示すように、複数の卵胞Fが互いに連結した状態で画像化され、各卵胞Fの大きさや形状等を個別に確認することは難しい。そこで、本実施形態においては、後に説明する各種の処理により複数の卵胞Fが互いに分割される。なお、図2においては各画像データが二次元的に描かれているものの、各種の処理は三次元データ空間内において三次元的に実行される。
【0026】
図2(B)は、収縮分離処理を示している。卵胞特定部20は、三次元データ空間を構成する二値化処理後のボクセルデータ内において、つまり図2(A)に示す二値化画像データ内において、複数の卵胞Fに対して収縮処理を施し、図2(B)に示すように複数の卵胞Fを卵胞F1〜F3に分離する。卵胞特定部20は、段階的に卵胞Fを収縮させる収縮処理をn回(nは自然数)に亘って繰り返し実行する。その各段階における収縮処理には、収縮処理用のフィルタが利用され、そのフィルタが三次元データ空間内の全域に亘って走査される。
【0027】
図3は、三次元データ空間100内におけるフィルタ120の走査を説明するための図である。図3において、三次元データ空間100は、xyz直交座標系で示されている。また、フィルタ120は、x軸方向とy軸方向とz軸方向のそれぞれの長さが3個のボクセルに相当し、合計27個のボクセルに相当する立体的な構成となっている。フィルタ120の中心に位置するボクセルが注目ボクセルであり、それを取り囲む26個のボクセルが周辺ボクセルである。そして、三次元データ空間100内の全てのボクセルが注目ボクセルとなるように、フィルタ120がx軸方向とy軸方向とz軸方向に移動されて三次元データ空間100内の全域に亘って走査される。
【0028】
収縮分離処理では、各走査位置において、フィルタ120内の26個の周辺ボクセルの中に1つでもボクセル値「0」のボクセルがあれば、フィルタ120の中心に位置する注目ボクセルのボクセル値が「0」とされる。例えば、注目ボクセルが「1(卵胞)」であり、周辺ボクセルの中に1つでもボクセル値「0(背景)」のボクセルがあれば、その注目ボクセルが「0(背景)」に変換される。そして、フィルタ120が三次元データ空間100内の全域に亘って一通り走査され、各走査位置においてフィルタ処理が施されることにより、1段階の収縮処理が終了する。なお、注目ボクセルに関するボクセル値の変換は、フィルタ120が三次元データ空間100内の全域に亘って一通り走査された後に実行される。つまり、フィルタ120が走査されている途中においては、ボクセル値の変換は行われず、どの走査位置においても変換前のボクセル値を対象としてフィルタ処理が実行される。
【0029】
こうして、1段階の収縮処理が終了し、その結果に基づいてボクセル値の変換が行われると、その変換後のボクセル値で構成される三次元データ空間100に対して、2段階目の収縮処理が実行される。2段階目の収縮処理においても、1段階目と同じフィルタ処理が実行される。つまり、各走査位置において、フィルタ120内の26個の周辺ボクセルの中に1つでもボクセル値「0」のボクセルがあれば、フィルタ120の中心に位置する注目ボクセルのボクセル値が「0」とされ、フィルタ120が三次元データ空間100内の全域に亘って一通り走査された後に、ボクセル値が変換される。
【0030】
卵胞特定部20は、この段階的な収縮処理をn回(nは自然数)に亘って繰り返し実行する。この繰り返し回数nは、各ボクセルの大きさやフィルタの大きさなどに応じて適宜に決定され、例えば10以内程度に設定される。もちろん、ユーザが回数nを調整できるようにしてもよい。
【0031】
なお、二次元の場合には、図3に示すフィルタ120に代えて、縦と横の長さがそれぞれ3個のボクセルに相当する合計9個のボクセルに対応した二次元フィルタを利用し、中心に位置するボクセルを注目ボクセルとし、それを取り囲む8個のボクセルを周辺ボクセルとすればよい。
【0032】
図2に戻り、収縮処理により図2(B)に示すように複数の卵胞F1〜F3に分離されると、卵胞特定部20は、三次元データ空間を構成する収縮処理後のボクセルデータ内において、つまり、図2(B)に示す収縮処理後の画像データ内において、ラベリング処理を施し、複数の卵胞F1〜F3に対して互いに異なるラベルを割り当てる。ラベリング処理としては公知の手法を用いることができ、例えば三次元データ空間内において同じボクセル値を持つ複数のボクセルの塊が検出されて各塊ごとにラベル番号が付与される。例えば、図2(C)に示すように、ボクセル値「0」の塊である背景部分に対してラベル0が割り当てられ、ボクセル値「1」の塊である卵胞F1〜F3に対して、それぞれラベル1〜3が割り当てられる。
【0033】
ラベリング処理が施されると、卵胞特定部20は、三次元データ空間を構成するラベリング処理後のボクセルデータ内において、つまり図2(C)に示すラベリング処理後の画像データ内において、複数の卵胞の各々に対して膨張処理を施す。その膨張処理において各卵胞から得られる膨張部分には、その卵胞のラベルが割り当てられ、さらに、膨張処理されることにより互いに重なり合う膨張部分(膨張した卵胞)同士の重複部分に境界を形成しつつ、複数の卵胞の大きさが復元される。これにより、図2(D)に示すように、互いに異なるラベルに対応した卵胞間に境界(背景画素)が形成されつつ、各卵胞の大きさが収縮処理前(二値化処理直後)の大きさに復元される。
【0034】
卵胞特定部20は、段階的に卵胞Fを膨張させる膨張処理をn回(nは収縮処理の回数と同じ)に亘って繰り返し実行する。その各段階における膨張処理には、膨張処理用のフィルタが利用され、そのフィルタが三次元データ空間内の全域に亘って走査される。膨張処理においても、図3に示した合計27個のボクセルに相当する立体的なフィルタ120が利用され、フィルタ120の中心に位置するボクセルが注目ボクセルとされ、それを取り囲む26個のボクセルが周辺ボクセルとされる。そして、三次元データ空間100内の全てのボクセルが注目ボクセルとなるように、フィルタ120がx軸方向とy軸方向とz軸方向に移動されて三次元データ空間100内の全域に亘って走査される。但し、収縮処理と膨張処理とではフィルタ処理が異なっている。
【0035】
図4は、膨張処理におけるフィルタ処理を説明するための図であり、図4には、境界を形成しつつ膨張させる処理(膨張境界処理)におけるボクセル値の変換に関する条件テーブルが示されている。膨張境界処理においては、各ボクセルのラベル値が参照される。
【0036】
フィルタ120(図3)の中心に位置する注目ボクセルがラベル0(背景)の場合において、26個の周辺ボクセルの全てがラベル0(背景)であれば、注目ボクセルはラベル0とされる。また、注目ボクセルがラベル0(背景)の場合において、26個の周辺ボクセルの中にラベル0以外(卵胞)のラベルがあり、それらの全てが同じラベルN(同一の卵胞)であれば、注目ボクセルはラベルNに変換される。つまり、ラベルNの卵胞が膨張されることになる。
【0037】
さらに、注目ボクセルがラベル0(背景)の場合において、26個の周辺ボクセルの中にラベル0以外(卵胞)のラベルがあり、それらの中に互いに異なるラベル番号(互いに異なる卵胞)が含まれていれば、注目ボクセルはラベル0とされる。つまり、注目ボクセルがラベル0に維持され、互いに異なる卵胞の境界となる。
【0038】
一方、フィルタ120の中心に位置する注目ボクセルがラベルM(卵胞)の場合には、周辺ボクセルの状況に関わらず、注目ボクセルがラベルMに維持される。
【0039】
そして、図3に示すフィルタ120が三次元データ空間100内の全域に亘って一通り走査され、各走査位置において、図4に示した条件に従ってフィルタ処理が施されることにより、1段階の膨張境界処理が終了する。なお、注目ボクセルに関するラベル値の変換は、フィルタ120が三次元データ空間100内の全域に亘って一通り走査された後に実行される。つまり、フィルタ120が走査されている途中においては、ラベル値の変換は行われず、どの走査位置においても変換前のラベル値を対象としてフィルタ処理が実行される。
【0040】
こうして、1段階の膨張境界処理が終了し、その結果に基づいてラベル値の変換が行われると、その変換後のラベル値で構成される三次元データ空間100に対して、2段階目の膨張境界処理が実行される。2段階目の膨張境界処理においても、1段階目と同じフィルタ処理が実行される。つまり、各走査位置において、図4に示した条件に従ってフィルタ処理が施され、フィルタ120が三次元データ空間100内の全域に亘って一通り走査された後に、ラベル値が変換される。
【0041】
卵胞特定部20は、この段階的な膨張境界処理をn回に亘って繰り返し実行する。この繰り返し回数nは、収縮処理の繰り返し回数nと同じであることが望ましい。こうして、図2(D)に示したように、互いに異なるラベルに対応した卵胞間に境界(背景画素)が形成されつつ、各卵胞の大きさが収縮処理前の大きさに復元される。
【0042】
なお、膨張境界処理においても、二次元の場合には、図3に示すフィルタ120に代えて、縦と横の長さがそれぞれ3個のボクセルに相当する合計9個のボクセルに対応した二次元フィルタを利用し、中心に位置するボクセルを注目ボクセルとし、それを取り囲む8個のボクセルを周辺ボクセルとすればよい。
【0043】
本実施形態においては、図2に示したように、互いに密着して密集していた複数の卵胞が互いに分離されて特定される。さらに、図2(D)に示したように、各卵胞に対して個別のラベルが対応付けられていれば、各ラベルにより対応する卵胞を特定することが可能になる。例えば、ユーザが所望のラベルを指定することにより、そのラベルに対応した卵胞を特定することなどが可能である。また、各卵胞が分離されているので、複数の卵胞が表示された画像上において、ユーザがカーソル等の表示態様を操作して所望の卵胞を指定し、これにより特定された卵胞の画像のみを表示するようにしてもよい。
【0044】
図1に戻り、卵胞特定部20により、互いに密着して密集していた複数の卵胞が互いに分離されて特定されると、卵胞計測部30は、各卵胞ごとにその卵胞の大きさや形状に関する計測値を算出する。例えば、各ラベルごとにそのラベルに対応した各卵胞の体積や長軸の長さや短軸の長さなどが算出されてもよい。また、各卵胞を球とみなして卵胞径が算出されてもよい。そして、計測結果評価部40は、ボリュームデータ内における卵胞に関するデータの状態を評価することにより、卵胞計測部30において得られた計測値を格付けする。
【0045】
図5は、計測結果評価部40による卵胞の計測値の格付けを説明するための図である。計測結果評価部40は、ボリュームデータ内における卵胞に関するデータの状態を評価して得られる評価結果に基づいて、計測値に複数の階級A〜Cのいずれかを対応付けることによりその計測値を格付けする。図5には、計測値を格付けする際の評価項目の具体例が示されている。
【0046】
図5に示される評価項目のうち「卵胞の内部のエコー評価」は、ボリュームデータ内において特定された卵胞の内部のエコーに関する評価である。ボリュームデータ内において卵胞に対応したボクセルのボクセル値(エコー値)は比較的小さい。特に、卵胞そのものの状態が比較的良好な場合には、ボリュームデータ内において、卵胞に対応した部分が黒く抜けて観測される。一方、卵胞そのものが黄体化している場合や、チョコレート嚢胞の場合や、卵巣が繊維化している場合には、卵胞に対応した部分における黒抜けが比較的悪い。
【0047】
そこで、計測結果評価部40は、卵胞の内部のエコーを評価する評価値を算出し、その評価値に基づいて、卵胞に対応した部分が黒く抜けているか否かを判断する。例えば、卵胞計測部30において計測値を算出された卵胞について、計測結果評価部40は、その卵胞の内部のエコー値とその卵胞の周囲のエコー値の比αを評価値として算出する。なお、卵胞の内部のエコー値として、例えば、その卵胞の内部におけるエコー値の平均値などが利用されてもよい。また、卵胞の周囲のエコー値としては、例えば、卵巣に対応したボクセルのエコー値などが好適である。
【0048】
そして、計測結果評価部40は、評価値αに関する評価基準に基づいて、卵胞の内部のエコー評価に関する個別の評価結果を判定する。例えば、図5に示すように、評価値αが0.2よりも小さければ、個別の評価結果をa(良好)とし、評価値αが0.2以上であれば、個別の評価結果をb(普通)と判定する。
【0049】
また、図5に示される評価項目のうち「卵胞の形状評価」は、ボリュームデータ内において特定された卵胞の形状に関する評価である。卵胞そのものの状態が比較的良好な場合には、卵胞は比較的丸みを帯びた形状で観測される。これに対し、卵胞そのものの状態が好ましくない場合には、卵胞の形状が歪んでおり、また、卵胞の表面に複雑な凹凸などが観測される。
【0050】
そこで、計測結果評価部40は、卵胞の形状を評価する評価値を算出し、その評価値に基づいて卵胞の歪みなどを判断する。例えば、卵胞計測部30において計測値を算出された卵胞について、計測結果評価部40は、その卵胞に関する評価値として次式の球形度Sを算出する。
【0051】
【数1】

【0052】
そして、計測結果評価部40は、評価値Sに関する評価基準に基づいて、卵胞の形状に関する個別の評価結果を判定する。例えば、図5に示すように、評価値Sが0.6よりも大きければ、個別の評価結果をa(良好)とし、評価値Sが0.6以下であれば、個別の評価結果をb(普通)と判定する。なお、計測結果評価部40は、卵胞の形状を評価する評価値として、次式の円形度や表面の複雑度などを利用してもよい。
【0053】
【数2】

【0054】
そして、図5に示される評価項目のうち「卵胞のプローブからの距離」は、ボリュームデータ内において特定された卵胞のうち、最もプローブに近い卵胞とプローブとの間の距離である。卵胞がプローブの送受波面から遠い位置にあると、超音波データから得られる超音波画像の横流れなどにより、超音波データの分解能が悪化する。そのため、ユーザ(検査者)は、より良い卵胞の画像を得るために、例えばプローブを被検者の膣などに押し付けて診断するが、その押し付ける度合いなどは検査ごとに異なる場合もある。
【0055】
そこで、計測結果評価部40は、その押し付け度合いの目安として、最もプローブに近い卵胞とプローブとの間の距離Dを評価値として算出する。例えば、ボリュームデータのプローブ側の端部の位置からその端部に最も近い卵胞までの距離が算出される。そして、計測結果評価部40は、評価値Dに関する評価基準に基づいて、卵胞のプローブからの距離に関する個別の評価結果を判定する。例えば、図5に示すように、評価値Dが3cmよりも小さければ、個別の評価結果をa(良好)とし、評価値Dが3cm以上で4cm以下であれば、個別の評価結果をb(普通)と判定し、評価値Dが4cmよりも大きければ、個別の評価結果をc(不良)と判定する。
【0056】
さらに、計測結果評価部40は、複数の評価項目に関する個別の評価結果に基づいて、総合評価を判定する。例えば、図5に示すように、個別の評価結果の全て(図5の例では3個)がaであれば、総合評価を階級A(良好)と判定する。また、例えば、個別の評価結果に一つでもbが含まれており且つcが含まれていなければ、総合評価を階級B(普通)と判定する。そして、例えば、個別の評価結果に一つでもcが含まれていれば、総合評価を階級C(不良)と判定する。
【0057】
こうして、最終的に判定された総合評価が計測値の階級とされる。例えば、卵胞径に関する計測値として18mmと計測された場合に、図5の例に従ってその卵胞に関する評価が行われ、その結果として「階級Aの18mm」「階級Cの18mm」などと階級が付された表示画像が表示画像形成部50において形成されて表示部60に表示される。
【0058】
図6は、表示部60に表示される表示画像62の具体例を示す図である。図6に示す表示画像62を構成する画像のうち、<3D>は、複数の卵胞に関する三次元画像である。この三次元画像は、三次元空間内から収集されたエコーデータ(ボクセルデータ)に基づいて、例えばボリュームレンダリング処理により形成される。そのボリュームレンダリング処理における視点の位置をユーザが変更できる構成とすることにより、所望の方向から複数の卵胞を映し出した三次元画像を得ることができる。
【0059】
例えば、図6に示す三次元画像内において、ユーザが、所望の方向から複数の卵胞を映し出し、さらに、カーソル等の表示態様を移動させ、その表示態様を所望の卵胞の位置に合わせることにより、ユーザが診断したい卵胞を選択することができる。これにより、例えば図6の三次元画像内において卵胞F1が特定される。なお、三次元画像内において、色などの表示態様やマーカなどにより、特定された卵胞を他の卵胞と視覚的に識別できるように表示してもよい。
【0060】
図6において、表示画像62を構成する画像のうち、<断面A>は、卵胞F1についての長軸と1つの短軸(短軸1)を含んだ断面Aにおける断層画像であり、<断面B>は、卵胞F1についての2つの短軸(短軸1,2)を含んだ断面Bにおける断層画像であり、<断面C>は、卵胞F1についての長軸と1つの短軸(短軸2)を含んだ断面Cにおける断層画像である。
【0061】
また、特定された卵胞F1について、長軸の長さや2つの短軸の長さや体積などの計測値が表示画像62の一部として表示される。さらに、卵胞F1に関する総合評価の結果である階級も表示される。図6の表示例においては、卵胞F1の計測値について階級Aが付されている。なお、複数の卵胞に関する計測値の一覧を表示するようにしてもよい。さらに、これら計測値の一覧の中からユーザが所望の卵胞を特定し、これにより特定された卵胞の断面が表示されてもよい。
【0062】
図6に示す表示画像62により、ユーザ(検査者)は、どのような状態の卵胞のデータから得られた計測値なのかを把握することができる。例えば、階級Aであればその計測値に基づいて診断が行われ、階級Cであればその計測値が再計測される。なお、階級Cの場合には、再計測を薦める旨の表示を形成してもよい。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態である超音波診断装置について説明したが、例えば、図1に示した卵胞特定部20と卵胞計測部30と計測結果評価部40と表示画像形成部50のうちの少なくとも一つをコンピュータにより実現してもよい。
【0064】
なお、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。また、上述した実施形態では、診断対象の具体例として卵胞を説明したが、例えば、乳腺において腫瘍が近接して発生する多発小嚢胞などが診断対象とされてもよい。多発小嚢胞の診断においても、図2を利用して説明した分離処理などが適用される。また、図5を利用して説明した格付けにおいて、乳腺の診断では、例えば、乳頭からの距離などを評価項目とすることが望ましい。もちろん、腹部などにおける嚢胞性の症例などが診断対象とされてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 プローブ、20 卵胞特定部、30 卵胞計測部、40 計測結果評価部、50 表示画像形成部、60 表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断領域に対して超音波を送受するプローブと、
プローブを制御することにより診断領域から超音波のデータを収集する送受信部と、
診断領域から収集された超音波のデータ集合内において診断対象を特定する特定部と、
診断対象を特定されたデータ集合に基づいて診断対象の診断のための計測結果を得る計測部と、
データ集合内における診断対象の状態を評価して前記計測結果を格付けする評価部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、前記計測結果に複数の階級のいずれかを対応付けることにより当該計測結果を格付けする、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、データ集合内における診断対象の内部のエコーデータを評価して得られる評価結果に基づいて、前記計測結果に複数の階級のいずれかを対応付ける、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、データ集合内における診断対象の形態を評価して得られる評価結果に基づいて、前記計測結果に複数の階級のいずれかを対応付ける、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記評価部は、データ集合内における診断対象に関するプローブからの距離を評価して得られる評価結果に基づいて、前記計測結果に複数の階級のいずれかを対応付ける、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
超音波を送受して得られる超音波のデータ集合内において診断対象を特定する機能と、
診断対象を特定されたデータ集合に基づいて診断対象の診断のための計測結果を得る機能と、
データ集合内における診断対象の状態を評価して前記計測結果を格付けする機能と、
をコンピュータに実現させる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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